#4「優先順位を見誤ることなかれ、自己犠牲は時に諸刃の剣となる」
今回の登場人物
オロろー
優しい性格で、誰かの力になることに喜びを感じることできる。お願いされると断ることができない。
クリスマスパーティー(クリパ)成功のため、あちこちの出し物の準備を手伝っている。
カチお
融通は利かないが頭は切れる、理論派委員長。「前回のことは、どうか記憶からデリートを…」とは本人の談。今回の話では、クリパ実行委員長として、そのキレッキレの手腕を遺憾なく振るっている。
はじまり
待ちに待ったクリスマス。誰もが心を躍らせ、ちょっぴりソワソワしています。
そんな中、学園では恒例行事として「クリスマスパーティー」通称「クリパ」が催される予定です。
各クラス・部活動はそれぞれに趣向を凝らした催し物の準備に大忙し。
今年最後にして最大のイベントに、みんなのテンションは否応なく右肩上がり。
たこ焼き屋、おばけ屋敷に喫茶店、バンド演奏、演劇、中にはひつじ喫茶なんて変わり種も…
いよいよ準備も大詰め、みんな作業に追われていますが、その中でも一際忙しそうな影がひとつ。
・
・
・
「カチおー、たこ焼き屋のタコの量ってこれでいいの?多くない?」
「ええ、昨年の売り上げデータから導き出された最適数です、問題ありません。」
(ダダダダダダダッ!)
「カチオくーん、飲食店の営業許可証をまだ出してないクラスがあるみたい!」
「今日中に提出させてください!どんな手を使っても!私が許可します!」
(ダダダダダダダッ!)
「あ!…アイス当たったわ!流石、持ってるわね~ア・タ・シ!」
「コラエーヌさん、あなたは真面目に働いてください!」
「えーと次は…(ダダダダダダダ!)」
「大変です!B組のお化け屋敷にホンモノが出ちゃったらしいです!」
「キエェェイ!!悪霊退さぁぁぁん!!」
・
・
・
「…ふぅ、ようやく、ひと段落しましたか…」
「どいてどいてー!」
「今度はいったい何ですか…って、どわぁ!!」
ドカーン!
「いてててて…」
「あたたた…気を付けたまえ!」
「ご、ごめんなさい!」
「誰かと思えば、オロろーではありませんか。どうしたのです?そんなに急いで。…というか、先ほどから何度もあなたの姿が視界に入っていた気がするのですが…。」
「うん、出し物やお店の準備を手伝ってたんだ~。」
「それは熱心でよろしいですね。この後はどこを手伝う予定なんですか?」
「えーと、剣道部のお好み焼き屋さんのチラシ作りと、演劇部のセット作りと、看板の塗装と、あと・・・」
「ちょ、ちょっと待ってください、そんなにですか!?」
「うん!僕…みんなで協力して一つのなにかを作り上げようっていう、この雰囲気が大好きなんだ。だから、僕ができることなんて大したことじゃないけど、少しでもみんなの力になりたいんだ。」
「そのお気持ちは素晴らしいですが、いくらなんでも多すぎではありませんか?今日はここまでにして、残りは明日にしたほうが良いのでは…何でしたら、先方には、私から話しておきますが…」
「ありがとうカチお。でも、大丈夫!みんなも頑張っているし、僕も頑張らなきゃ!じゃあ、またね!」
「ちょ、待ちなさ…!・・・何事もなければ良いのですが。」
~実行委員会本部~
「カチおくん!オロろーくんが…!」
「なんですって!?すぐに行きます!」
~保健室~
「・・・う、うーん。」
「目が覚めましたか?」
「カチお…ここは?僕はいったい。」
「ここは保健室です。あなたは作業中に倒れたんですよ。偶然、近くを通りかかった原先生がここまで運んできてくれたそうです。」
「そっか…。僕、またみんなに迷惑かけちゃったんだ。」
「だから、あれほど言ったんですよ!自分のキャパシティーを超えての働きは、たとえ我々ロボットであっても身体や人工頭脳にダメージを与えるんです!」
「ごめん、なさい…。あの時、ちゃんとカチおのアドバイスを聞いていれば、こんなことにはならなかったのに…。」
「・・・私も以前、あなたと同じようなことがあったんです。」
「え、カチおも?」
「ええ。委員長になったばかりの頃の私は、学園内のあらゆる意見や要望、問題を解決しようと躍起になっていました。最初こそは順調だったのですが、ある時、頭から煙を吹いて倒れました…。」
「そんなことがあったんだ。」
「その時、先生に言われたんです。”頑張ることは良いことだけど、自分の体調を把握できるのは自分だけなんだ。体調が万全じゃないときは、無理をしない。自分で自分をしっかりとマネジメントすることが大事なんだよ。カチおも、自分が何かを頼んだ相手が倒れたりしたら、責任を感じちゃうだろ?”と。」
「そっか…相手を喜ばせたくて、お手伝いを引き受けても、それが原因で体調を崩しちゃったら、逆に相手に迷惑をかけちゃうんだね。」
「ええ、自分の限界値を知っておくことが大事なんですよ。」
「僕、自分のこと、全然わかってなかった。みんなには悪いことしちゃった。みんな、怒ってるよね・・・」
「そんなことはないと思いますよ。」
「でも・・・」
ガラッ
「オロろー、大丈夫か!?」
「いろいろ、頼んじゃってごめん!」
「オロろーくんが手伝ってくれたおかげで、バッチリ準備できたよ!」
「たこ焼きの試作品持ってきたんだ、一緒に食おうぜ!」
「ほら、言ったでしょう?」
「うん…!みんな、心配かけてごめんね…ありがとう!!」
#4「優先順位を見誤ることなかれ、自己犠牲は時に諸刃の剣となる」
あとがき
こんにちは、生活支援員の原です。
すっかり年の瀬ですね。今年は特に早かったような気がします。
1年を通してみると「あっという間」と感じるのですが、1週間単位だと「あぁ、まだ水曜か…」と長く感じるのは何故なのでしょうか(笑)
さて、今回のお話では、自分に自信はないけれど、誰かのために何かしたいという気持ちが強い「オロろー」が主役でした。「誰かのために」という気持ちはとても大事なものなので、ずっと持ち続けてほしいところですが、自分に余裕がない時に、この気持ちが強いとどうなるでしょうか?
「誰かのために何かする」ということは、リソース(資源)を必要とするものであると、僕は考えています。自分の心、体力、財産などに余裕がある時であれば、誰かにお裾分けしてもいいと思います。
しかし、自分に余裕がない時に、誰かに何かを与えるためには何をリソースとするのでしょうか。
お察しのとおり「自分のためのリソース」を削って、誰かに与えることになります。
今回のお話でみれば、オロろーは連日のお手伝いが原因で、かなり疲れが溜まっていたにも関わらず、
「誰かのために何かしなきゃ」という気持ちが先行してしまい、結果、自分が倒れてしまいました。
これは一見、自己犠牲精神による美談のようにも見えますが、オロろーは「みんなに迷惑をかけてしまった」と自責の念を感じていますし、手伝いを頼んだほうからすれば「俺たちが頼んだせいで、倒れてしまったのでは…?」と後悔の気持ちを抱きかねません。これでは、両方にとってマイナス「Lose-Lose」の関係になってしまいます。
今回の問題点は「オロろーが自身の心身の状態を把握していなかった」という点が挙げられるでしょう。意識的に自身の状態を把握し、万全な状態でなければ休養を取り、回復に努める。あるいは、引き受ける手伝いの数をセーブするなどのセルフマネジメントが必要だったといえるでしょう。言われたことを何でも断らないことが優しさとイコールではないのです。時には、断ることが必要な場面もあるのです。
自分の体調を正確に把握できるのは、自分だけです。ましてや、彼らロボットは顔色が変わるわけでもないので、よりセルフケアの重要度が増します。(リンクから厚生労働省のページにジャンプします)
ディーキャリア郡山オフィスでは、先ほど出てきました「セルフケア」についての訓練や、人はもちろん自分のことも大切にするコミュニケーションである「アサーティブコミュニケーション」、ストレスの上手い発散方法について説明した「ストレスコーピング」など、様々な訓練を提供しております。
今回は名前だけ登場しました原先生こと、僕(生活支援員の原)の訓練も体験できますので、ご興味を持たれた方は、ご連絡をお待ちしております!
えらい、長々と書いてしまいましたが、この辺で締めたいと思います…
ここまで読んでいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
本年は大変お世話になりました。
また来年も、ロボットたちの成長を一緒に見守っていただければ幸いです。
来年もどうぞよろしくお願いいたします!
メリークリスマス!
そして、よいお年を!!
ディーキャリア郡山オフィスは「大人の発達障害」の方を中心に支援をしている「就労移行支援事業所」です。
就職・復職に向けての支援や訓練、就職活動の支援をおこなっております。
無料ご相談・見学を随時承っていますので、お気軽にお問合せください。
〈ディーキャリア郡山オフィス〉
ライフスキルコース担当 原先生の中の人 書いた人 : 原
電話:024-973-5305
メール:koriyama@dd-career.com
※このブログ内の画像の著作権は全て「ディーキャリア郡山オフィス」に帰属します。無断使用・転載は御遠慮ください。
郡山オフィスのブログ一覧
オフィス情報
郡山オフィス
- アクセス
- JR線「郡山駅」西口より徒歩7分
- 電話番号
- 024-973-5305