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【発達障害当事者が解説】「仕事がうまくいかない」対策と継続のコツ

「仕事がうまくいかない…」を乗り越えるための対策を筆者の実体験をまじえご紹介。対策を立てた後に『継続』するためのコツもお伝えします。

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「仕事がうまくいかない」「同じようなミスを繰り返してしまう」 発達障害の特性がある方にとって、「仕事がうまくいくかどうか」はかなり大きなテーマでしょう。注意欠如・多動性障害(ADHD)の当事者である筆者も、過去に仕事でミスや失敗をして落ち込み、不安感にさいなまれる経験をしてきました。 平成29年に発表された厚生労働省の発表によると、精神障害者の障害者雇用の離職理由について「仕事内容があわない」「作業、能率面で適応できなかった」という項目が上位にきています。また、日本国内の企業の99.7%を占める中小企業のうち、障害者雇用の定着の理由として「作業を遂行する能力」を挙げる企業が一番多いという調査結果も出ています。 参考文献:障害者雇用の現状等|厚生労働省 発達障害特性への対策は世にたくさん発信されています。一方で、発達障害のある方の離職率が劇的に低くなったという話は聞きません。つまり、対策を知ったとしても、それを実際の自分の業務に生かすことが難しいのではないでしょうか。 今回の記事では、発達障害のある方によくある失敗とその対策、そして、対策を継続し習慣化していった筆者の体験談をお伝えします。皆さんが少しでも職場で長く違和感なく働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害当事者によくある失敗 発達障害の特性があると、以下のような失敗をしがちです。それぞれについて、原因と対策を挙げてみます。今回ご紹介をする【原因】は、あくまでも一例です。特性は一人ひとり異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。 ① ケアレスミスが多い 【原因】 一般に、「記憶の抜け漏れ・忘れ」はケアレスミスにつながりやすいと考えられます。発達障害の特性の有無と、「ワーキングメモリ」と呼ばれる作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力の間には関連性があることが指摘されています。 参考文献:「ワーキングメモリと実行機能の発達」|発達心理学研究 2019,第30巻,第4号,173-175 【対策】 ワーキングメモリの働きを自分でコントロールすることはなかなかできません。頭の中だけで覚えておこうとするのではなく、紙のノートやPCのメモ帳に書き出して保存することが、簡単ながら一番効果的な対策です。電話を受けたらメモをする、口頭で指示を受けたらToDoリストに書き出すなど、確実に残る記録としていつでも参照できるようにしておくことが大切です。 ② 納期を守れない 【原因】 発達障害の特性の1つとして、不安が強く心配性であるため、失敗・挫折への恐怖が強いという傾向があり、仕事(やるべきこと)の先延ばしをして納期を破ってしまいがちだとされています。 参考文献:ひきこもり支援者読本 第2章「ひきこもりと発達障害」|内閣府 【対策】 「できないかもしれない」と思ってしまう仕事は「失敗せずやれる」と思えるような細かい作業手順に分解することでその不安や恐怖を取り除きます。すると、とりあえず手を付けることができるようになります。その結果、先延ばしを避けて納期通りにやるべきことを終わらせることができます。 ③ 優先順位を間違える 【原因】 やるべきことが複数あり、そのどれから着手するかを決める、いわゆる「優先順位づけ」についてもまた、発達障害当事者は困難を抱えがちです。それは、目の前の作業に没頭するあまり、全体と部分の把握を適切に切り替えることが難しかったり、先々の展開を想像することが苦手だったりすることが原因といっても良いでしょう。 参考文献:注意欠陥/多動性障害児を対象とした課題解決場面におけるメタ認知を促すための支援方法に関する事例的研究|上越教育大学大学院 【対策】 「手を付けなければいけない順番」の指標として締切を意識します。締切を意識することで、早く終わらせなければいけないのはどれかが分かり、正しく優先順位づけをすることができます。 このように、それぞれ原因を知り対策を講じることで、よくある失敗を事前に避け、仕事の質を上げることができます。しかし、対策を講じたは良いが続かなかった、飽きて途中で辞めてしまったといった経験がある方も多いのではないでしょうか。 そこで、筆者の「挫折してしまった(継続できなかった)経験」と「うまく継続できた経験」を対比して、対策を習慣化するコツをお伝えします。
卒業生インタビュー「就労移行支援を利用して良かったことは?」

ディーキャリア卒業生に「実際に就労移行支援を利用してみて良かったこと」をうかがいました。今の社会人生活に役立っていることなど、リアルな体験談をお伝えします。

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ディーキャリアの卒業生の方に、「就労移行支援(ディーキャリア)を利用して良かったこと・メリット」についてインタビューをおこないました。 今回インタビューに応じてくださったNさんは、4年前にディーキャリアをご卒業、現在は障害者雇用枠で事務のお仕事をされています。そんなNさんに、ディーキャリアで学んだこと・身につけたことで、実際に社会人生活で役立っているものがあるかについて聞いてみました。 インタビューの前半では、就労移行支援を利用したきっかけについてお伺いしました。 【こんなお悩み・疑問のある方にオススメ】□ 就職を目指しているものの、うまくいかない□ 発達障害の特性があり、働くことに自信がない□ 就労移行支援(ディーキャリア)で身につくスキルを知りたい□ 就労移行支援(ディーキャリア)で解決できる悩みを知りたい 就労移行支援に興味はあるものの、利用すべきか悩んでいる方に、お役立ていただける情報満載です。 ぜひ、最後までお読みください。 参考記事本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 [toc] インタビューにこたえてくれた方Nさん ■所属オフィス:ディーキャリア柏オフィス(卒業)■在籍期間:2018年6月~2019年10月■診断名:ASD(自閉症スペクトラム障害)■障害による特徴(特性):・耳から入る情報の処理が苦手 (口頭での指示などが聞き取れない、聞き洩らしがある等)・複数の指示を同時にされると混乱してしまうことがある・過集中(過剰に集中しすぎる)がある・感覚過敏があり、周りの音が気になって集中できないことがある・約束や納期を忘れてしまうことがある■現在のお仕事:障害者雇用枠で人材派遣会社での事務職として勤務。現在は求人情報のデータ入力、Wチェックを担当。 Q.就労移行支援事業所をどのように知りましたか? 精神障害の診療で通っていたクリニックの先生に「就労移行支援」を勧められたのがきっかけです。就職について相談したかったことと、自分の障害特性への理解を深めたいと考えたことから、利用を検討しはじめました。 Q.次の就職に向けて、検討していたサービスはありましたか? 就労移行支援事業所以外は、とくににありませんでした。就労移行支援事業所は、ディーキャリアを含めて2~3か所、見学や体験に行きました。 Q. 就労移行支援事業所の利用を決めた理由について教えてください。 ■就職に関する相談ができる まず、就職についての相談をしたかったことが理由です。前職はクローズ就労(障害を開示しない勤務形態)だったのですが、次は障害者雇用枠にするのか、どんな仕事が向いているのか・向いていないのかについて相談したいと考えていました。「障害者雇用」に興味はあったものの、当時は不安のほうが大きかったので、実態などを聞いてみたかったですね。 ■障害特性の理解を深められる 自分の障害特性の理解を深めたいと考えていたことも大きな理由です。前職の仕事で失敗をした経験があったので、次の仕事では同じ過ちをしないように対策をしたいと考えていました。 Q.前職での困りごとを詳しく教えてください。 前職はシステムエンジニアの仕事をしていました。口頭での指示が苦手で、聞き洩らしをしまったり、同時にいくつもの指示がくると混乱してしまって、ミスをしてしまったりすることがありました。例えば、指示をされた仕事が10個あるとしたら、8個は覚えていられるのですが、2つ抜けてしまうという…。業務の抜け漏れによる失敗を何度も繰り返してしまって、3年ほどで退職しました。お客様先での常駐勤務であったことから、相談できる相手がいなかったことも退職理由です。 Q.ディーキャリアの利用を決めた理由について教えてください。 ディーキャリアのプログラムは、3つのステップになっていて、段階的に学んでいけるのですが、それが自分に合っていると思いました。見学にいったときのスタッフや利用者の方の様子も決め手のひとつです。相談や質問がしやすい雰囲気で、安心することができました。 Q.実際に「就労移行支援」や「ディーキャリア」を利用して良かったこと(メリット)について教えてください。 ■障害特性への理解を深めることができた 自分の障害特性の理解を深めることができたことです。診断がでたときにクリニックでも説明を受けていたので、自分の特性は「なんとなく」は理解していたのですが、自分の仕事上のミスがどの特性によって起こっているかは分かっていませんでした。実際にどの特性が仕事に影響しているかを明確にすることができました。 ■自分と同じ悩みのある人と交流ができた 自分と同じ障害のある利用者の方と一緒にプログラムに参加できたのも、良い経験でした。ライフスキルコースでは、座学形式で他の利用者の方とプログラムを受け、チームに分かれて共有をする機会があるのですが、他の方の意見を聞くことができたことが良かったです。例えば「ストレスコーピング」といってストレスの解消方法を学ぶプログラムでは、自分もやってみたいと思える対策を知ることができました。 ■就職活動のサポートを受けることができた 障害者雇用枠での就職活動をサポートしてもらえたことも、ありがたかったです。履歴書や職務経歴書だけではなく、ナビゲーションブックという自分の障害を説明する資料の添削をしてくれました。面接の練習もよかったです。自分の障害についてうまく伝えることに自信がなかったので、助かりました。ディーキャリアの利用前は、障害者雇用枠と一般雇用枠どちらで働くか悩んでいたのですが、スタッフの方と話し合ったり、いろんな会社の説明会に参加したりしたうえで、障害者雇用枠で就職することに決めました。障害への配慮や相談しやすい環境を重視したかったからです。気軽にいろんなことを相談できたので、とても助かりました。 ■通所へのモチベーションを保つことができた 毎週土曜日のイベントも気に入っていました。平日は真面目な雰囲気でプログラムを受けるのですが、土曜日はヨガやカードゲームなどのイベントに参加することができます。他の利用者の方と交流ができて、リフレッシュすることができたので、来週も頑張ろうとモチベーションを保つことができました。 Q.ディーキャリアで学んだことで、今の社会人生活で役立っていることについて教えてください。 ■障害特性による困りごとへの対処法 自分の障害特性への理解を深めて、どのようにすれば苦手なことに対処できるかを学んだのですが、今の仕事でも役立っています。 【現在の勤め先での合理的配慮と自己対処】 ・耳から入る情報の処理が苦手 ⇒業務指示や説明は「書面(チャットやメール等)」でおこなってもらう ・複数の指示を同時にされると混乱してしまうことがある ⇒タスクを一つずつ説明してもらう、メモを取る時間をもらう ・過集中(過剰に集中しすぎる)がある ⇒スマホアプリを活用し、適宜休憩をとるためにアラームを設定している ・約束や納期を忘れてしまうことがある ⇒カレンダーのアプリを活用し、アラームが鳴るように設定している このような対策をすることによって、以前感じていた働きづらさや、前職と同じようなミスが起こりづらくなりました。 ■コミュニケーションスキル ディーキャリアを利用する前は、コミュニケーションに苦手意識はなかったのですが、利用をする中で課題に気づいて、対策を学ぶことができました。例えば、「人の話を遮って話し始めてしまう」という癖があることです。相手の立場になって、会話をする方法を学びました。以前から仕事の話などはできたものの、自分から話題を振ることが少なかったのですが、日々の訓練の中でコミュニケーションを通じて、雑談がしやすくなりました。 Q.就労移行支援事業所を利用するか迷っている当事者の方に、何かアドバイスがあればお願いいたします。 発達障害のある方は、自分の特性について知ることがとても大切だと考えています。自分にどのような特性があるかを知って、どのように具体的に対策をすればよいかを知ることで、働きやすくなると思います。働くことに不安がある方は、まずは相談してみるのがおすすめです。 Q.最後に、ディーキャリアの利用満足度を10点評価してください。その理由も教えてください。 10点です。プログラムがとてもためになりました。例えば、「リフレーミング」というプログラムでは、自分自身のとらえ方を変えるだけで気分が楽になることを学びました。自分らしく就職が目指せたことも、高評価の理由です。無理して就職をするのではなく、体調を優先しつつ、自分のペースで進めることができました。障害者雇用枠での就職を決めることができたのも、ディーキャリアで、自分に合っている働き方を知れたことが理由です。 担当スタッフよりコメント 就労移行支援事業所ディーキャリアに通うメリットは、「仕事スキル」だけでなく、「社会スキル」を身につけられることだと考えています。働くうえでは、もちろん実務に必要な技術や知識も必要ですが、社会生活の中では、人との関わり方やストレスケアを身につけることも非常に重要です。 今回のNさんのインタビューでもあったように、発達障害の特性によって「働きづらさ」を感じている方は、特性の理解を深めることも必要です。 ディーキャリアでは、3つのコースを用意しており、それぞれ、①自分の発達障害の特性を知り、②自分の特性に応じた対策を実践・検証し、③自分に合った就職先を探す、ことを目的にしています。 特性による「働きづらさ」を感じている方、「働くこと」に自信がない方は、お気軽にご相談ください! ディーキャリア柏オフィス オフィス詳細▶問い合わせフォーム▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアについて 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスのひとつです。(厚生労働省の許認可事業)ディーキャリアでは、発達障害の特性による働きづらさをフォローするプログラムと自分の価値観や適職を見極めるカリキュラムで、「やりがいを感じられる仕事探し」×「あなたらしい働き方探し」を目指す支援を提供しています。 全国のディーキャリアで、無料相談・体験会を随時開催しています。障害特性による「生きづらさ」「働きづらさ」を感じている方は、お気軽にご相談ください。 お近くのディーキャリアを探したい方は こちら▶ディーキャリアを詳しく知りたい方は こちら▶ ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 全国共通お問い合わせフリーダイヤル(0120-802-146)はこちら▶お問い合わせフォームはこちら▶
利用者インタビュー「就労移行支援を利用したきっかけは?」

ディーキャリア利用者に「就労移行支援の利用を決めた理由」をうかがいました。自分に合っているか、どんなことが学べるか知りたい方に役立つ情報をお伝えします。

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ディーキャリアの利用者の方に、「就労移行支援を利用したきっかけ」についてインタビューをおこないました。 今回インタビューに応じてくださったYさんは、就労移行支援事業所を利用する前に、「職業訓練校」を利用した経験と一般企業で働いた経験があるそうです。なぜ、そんなYさんが「就労移行支援事業所ディーキャリア」を利用するに至ったのか、実際に通ってみてどうだったのかについて聞いてみました。 【こんなお悩み・疑問のある方にオススメ】□ 就労移行支援が自分に合うか分からない□ 就職を支援するサービスについて知りたい□ 自分に合う就労移行支援の選び方を知りたい□ 就労移行支援(ディーキャリア)で身につくスキルを知りたい 就労移行支援に興味はあるものの、利用すべきか悩んでいる方に、お役立ていただける情報満載です。ぜひ、最後までお読みください。 参考記事本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 [toc] プロフィール インタビューにこたえてくれた方Yさん ■所属オフィス:ディーキャリアITエキスパート中野オフィス・芝浦オフィス■在籍期間:2020年5月~2023年5月 ※インタビュー時は在籍中■診断名:ADHD(注意欠如・多動性障害)、うつ病■障害による特徴(特性):・衝動性が高く、やらなくていいことをしたり、突発的に発言をしたりすることがある・話をまとめることが苦手で、要点をまとめることや必要な情報だけを伝えるのが苦手・聴覚過敏があり、周りの音や声が気になり、集中ができないことがある・思い込みによって、早合点してしまうことがある■就職先:金融事業をおこなう大手グループ会社で一般事務職(障害者雇用枠)として勤務。現在は、契約書の整理電子化、システムの運用を担当。 インタビューをした人藤森ユウワ 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 就労移行支援事業所を知ったきっかけは? 今回は「就労移行支援」をテーマにお話をお伺いできればと思います。最初に「就労移行支援」を知ったきっかけについて教えてください。 5年前くらいになるんですけど、発達障害がインターネット、テレビ、新聞などのメディアで多く取り上げられて、そのときに「就労移行支援」というサービスがあることを知りました。 なるほど。私も自分の障害に気づいた頃も、発達障害に関するメディアがあったんですけど、私は「就労移行支援」にまではたどり着けなくて、「発達障害とは何か」みたいな情報しか取れなかったですね。Yさんは、何か意図的に自分が利用できる障害福祉サービスや障害者雇用に関する情報を探していたんですか? そうですね、意図的に探していましたね。当時ちょうど、未経験からIT業界に転職をしようと考えていたので、職業訓練と就労移行支援のどっちが自分にとってメリットがあるかなと調べていました。当時は、ディーキャリアではなく別の就労移行支援事業所に行ってみたのですが、軽作業系が中心だったので、自分のやりたいことやスキルアップのためにはならないのではないかと考えて、職業訓練を選びました。職業訓練校の利用後は、IT系の会社を2社ほど経験したのですが、3年前に新型コロナウイルス流行の影響で、会社都合で退職をしなければならなくなって。就職活動が長期戦になりそうだなと思って、改めて自分の特性を見つめたうえで、ITスキルを学べるところを探していて、就労移行支援事業所ディーキャリアITエキスパートの利用に至りました。 最初の転職を考えていたときに、すでに就労移行支援がひとつの選択肢としてあったということなんですね。 発達障害の診断を受けたきっかけは? 先ほど「自分の特性」というキーワードが出てきましたが、ご自身の障害についてはいつ頃知りましたか?発達障害の診断を受ける(検査をする)ことになった、きっかけについて教えてください。 2010年代中頃に発達障害に関するニュースがあって、それを見ていた友人から「あなたもそういう病気(発達障害)じゃないか」と指摘をされたんですね。少し周りと違うということはなんとなく感じていたので、自分自身でもそう(発達障害がある)ではないかと思って、受診をしました。最初の転職活動を検討する頃には、発達障害の診断が出ていたので、発達障害の当事者であることを前提に転職活動をしていました。 なるほど。自分の障害特性に合った環境や仕事を探して転職活動をされていたということでしょうか? 正直に言うと、そのときは自分の障害に合う環境っていうのが分かりませんでした。発達障害の特性とITの仕事が合うという情報を見つけて、私自身もITに興味があったので、IT系の仕事を選んでみようかなと思いました。そこで、ITスキルを身につけるために職業訓練校に通って、IT業界の仕事に就いたという流れですね。 「就労移行支援」と「職業訓練」、どっちがいい? 就労移行支援と職業訓練と両方経験をされたうえで、どちらのほうが良いと思われますか? 就労労移行支援と職業訓練とでは、目的がほぼ違うと考えているので、比較は難しいですね。 Yさんとしては、それぞれにどのような目的があるとお考えですか? 就労移行支援の目的は「障害への対処法=ヒューマンスキル/ソーシャルスキルを学ぶこと」、一方で職業訓練は「職業スキルを学ぶこと」だと考えています。就労移行支援では、自分の障害特性や、発達障害のみならず精神疾患による課題に対して、自分で対処をするためのスキルを身につけて、課題の解決の糸口を探していくことができる。職業訓練では、業務で使う専門知識や技術面を身につけることができる、と考えています。 それぞれ良さがあり、目的に応じて使い分けるのがよさそうですね。
【発達障害当事者が解説】無理なく働き続けるための特性理解と対策

長く健康的に働き続けるためにはどうすればいいのか。筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。

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「仕事がうまくいかず長続きしない」「職場の環境と合わなくて、短期離職を繰り返してしまう」 令和2年に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害のある方が1年間就労を継続できている割合は50%を切っており、定着が困難な方が多いと解説されています。 参考文献:障害者雇用の促進について関係資料|厚生労働省 発達障害の注意欠如・多動性障害(以下ADHDと表記)の当事者である筆者の就労経験からしても、最後に勤めた会社を除き、思ったほど長続きしなかった印象があります。障害者雇用枠で就労していた会社は4年強で休職し、一般雇用枠で就労していた会社は2年と持たずに休職してしまいました。実際は休職に至るまでかなり長い期間をかけて「就労環境とのミスマッチ」が生じていたので、適切な環境で就労できていた年数は、それよりもずっと短いという印象です。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。皆さんが健康で長く働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害のある方が仕事が長続きしない原因とは 仕事が長続きしない原因は「①仕事内容とのミスマッチ」「②職場環境とのミスマッチ」の2つと考えられます。 仕事内容とのミスマッチ 曖昧な内容が理解できないことで空気が読めなかったり、衝動的に思いついたことをしゃべったりといった発達障害の傾向は、周囲の人たちとのコミュニケーションがうまくいかなくなることにつながりがちで、仕事内容とのミスマッチが発生する可能性があります。 例えば、接客業はお客様とのコミュニケーションありきの仕事なので、お客様とのやりとりがうまくいかなければ、そもそもその仕事にマッチしないということになります。 職場環境とのミスマッチ さらに、せっかく仕事内容とはマッチしていても、例えば遠隔地にあるオフィスに通うための長時間の満員電車の混雑に耐えられなかったり、騒がしいオフィス内で発達障害の特性による聴覚過敏から集中できなかったりといった、職場環境とのミスマッチを生んでしまうこともあります。 筆者の事例 筆者も発達障害の特性によるミスマッチに悩まされた一人です。 「先延ばしグセ」がもとで期日に厳しい公共機関へ提出する報告書に手を付けずクレームを受ける「段取り下手」で社内イベントの準備がうまくできない「マルチタスクが苦手」なあまり名刺発注業務と社内備品の発注と来客対応の優先順位がうまくつけられない「抜け漏れ」でついさっき頼まれた仕事を忘れる「自己関連付け」(何か良くないことが起こったとき自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう)で通常どおりに使用していたプリンターが壊れた際に自分が原因があると考えてしまう このようなことが多発し仕事がうまくいかなくなる→ストレスが溜まりその傾向に拍車がかかる→より仕事がうまくいかなくなる、という悪循環に陥りました。 また、仕事がうまくいかないことで、周囲の方々との関係も悪化し、あるいはそう自分が勝手に思い込んでしまい、居場所感のようなものがだんだんなくなっていき、「これ以上仕事を続けられない」という心理状態になっていきました。 この悪循環を断ち切るには、自らの特性に応じた対策を打つことが必要です。そのためには、自分にはどういった特性があるのかをまず知ることが大事です。
【発達障害当事者が実践】職場の対人関係を円滑にするビジネスマナー3選

ASDのある方が困りごとを感じやすい「職場でのコミュニケーション」。筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコツをお伝えします。

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「普通に振る舞っているつもりなのに、周囲の人たちとの壁を感じることがある」「日頃の行動について注意されたが、どうしたら良いか分からない」 多かれ少なかれ、どんな人でも職場に溶け込むための悩みはあるものでしょう。ただ、周囲の様子や反応から、職場における適切な振る舞いを学ぶのは、発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(以下、ASDと表記)の特性がある方にとって苦手なことではないでしょうか。 筆者は、診断として受けているのは注意欠如・多動性障害(以下、ADHDと表記)のみですが、発達障害はスペクトラム(連続性)のあるものであり、ASDに由来する(と思われる)困りごとも体験してきました。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコミュニケーションのコツを3つお伝えします。 今回は「職場のコミュニケーション」のなかでも社会人として問われる機会の多い「ビジネスマナー」に絞ってお届けします。 皆さんが少しでも働きやすくなるように、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 ASDのある方が、ビジネスマナーが苦手な原因とは ASDの特性がある方は、場の空気を読むなどして暗黙のルールを認識することが苦手とされています。 参考文献:発達障害者の就労上の困難性と具体的対策 ─ASD 者を中心に|独立行政法人労働政策研究・研修機構 なぜ、ASDの特性がある方は、暗黙のルールを認識するのが苦手なのでしょうか。 一般に、発達障害の特性がない定型発達の方は、「①理解できていない」状態から「②なんとなく分かる」という段階を経て「③理由が説明できて分かる」という順番で理解が進みます。 しかし、ASDの特性がある方は、「②なんとなく分かる」というプロセスがないことが研究で分かっています。つまり、「①理解できていない」の次が「③理由が説明できて分かる」なのです。 これは、言葉で分かるようにならないと理解ができないということと、一度理解したことを「なんとなく」変更する柔軟な対応が難しい(マイルールへのこだわりがある)ことを意味します。 参考文献:他者理解の発達再考―直感的他者理解をめぐるASD(自閉症スペクトラム)研究を通して―|東洋大学 どの職場でも「これは言わなくても守って当たり前」と思う「暗黙のルール」は存在します。そして、色々な職場に共通する暗黙のルールが「ビジネスマナー」としてまとめられ、明文化されないまま社会全体に広まっていったと考えて良いでしょう。これは、言葉以外の意味合いを重要視する日本ならではの文化かもしれません。 ただし、ASDの特性がある方がこのような文化の中でうまくコミュニケーションをとっていくのは、上記の内容から分かる通り、難しいと言わざるを得ません。 そんな発達障害の、特にASDの特性がある方が、職場でのコミュニケーションを円滑にするためにはどうすればいいのでしょうか。具体的な対策としてのビジネスマナーを、筆者の失敗事例を通してお伝えしていきます。
働きやすい職場の探し方|発達障害のある方の「求人検索」ポイント

「自分に合った職場を選びたい」発達障害のある方が就職・転職時に求人検索をするときのチェックポイントを、当事者の体験談を交えてご紹介します。

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「転職しようと思っているけど、自分に合った職場をどうやって見つければいいんだろう」 誰にとっても、自分に合った職場を見つけるのは難しいもの。特に発達障害のある方の場合、仕事の経験やスキルだけでなく、自分の障害の特性も考慮して選ばないと、転職先で働きづらさを感じる原因となってしまいます。 実際に、筆者も転職の際に自分とは合わない職場を選んでしまったことで二次障害になり、1年もたたない間に離職することになってしまった経験があります。 そこで今回は、発達障害のある方が就職・転職活動で求人を検索する際に、調べておいた方がいいポイントをご紹介します。皆さんが自分にあった働きやすい職場を見つけるために、この記事がお役に立てれば幸いです。 [toc] 自分に合わない職場を選んでしまうとどうなる? もしも、自分に合わない職場を選んでしまったら、どのような困りごとが起こるのでしょうか。まずは失敗例として、筆者の体験談をご紹介します。 私は、注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)と自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受けています。失敗経験をしたのは、35歳で2度目の転職をしたときでした。 職場の環境が合わなかった 転職前はオフィスが比較的広く、デスクが一人ひとりパーテーションで区切られていました。黙々と作業するタイプの業務をおこなっている企業でしたので、職場は比較的静かで、電話が鳴ることもあまりありませんでした。 しかし、転職後は小さな会社だったので、一つの部屋で10名弱の社員全員が働いており、個人のスペースはほとんどありませんでした。誰かが話していれば耳に入りますし、電話もしょっちゅう鳴っていました。 私はADHDの特性から、周囲の様子がとても気になってしまい、自分の作業にうまく集中することができませんでした。 仕事の進め方が合わなかった 転職前の職場は人数が多く、チームで仕事を進めることが多かったため、困ったときにも相談しやすく、自分からヘルプを出さなくてもサポートを受けやすい環境でした。 しかし、転職後の職場は人数が少なく、個人で仕事を進めることが多かったため、誰かの協力が必要な場合には周囲に対して自分から積極的にコミュニケーションを取り、巻き込んでいく必要がありました。 私はASDの特性から、コミュニケーションを取ることが苦手だったため、周囲を巻き込めずに一人で問題を抱え込んでしまい、うまく仕事を進めることができませんでした。 社内制度(福利厚生)が合わなかった 転職前の職場は社員が50名以上でしたので、産業医を設置する義務があり、いつでも相談できました。また、従業員へ定期的なアンケートをおこなったり相談窓口が置かれたりしており、従業員の健康を管理する制度が整っていました。 しかし、転職後の職場は人数が少なかったため産業医の設置義務がなく、また、設立から数年の若い会社だったため、社内制度(福利厚生)がまだ十分に整備されていませんでした。 一概には言えませんが、一般的には会社規模が大きくなるほど社内制度(福利厚生)は手厚くなると言われています。そのため、小さな会社ではメンタルヘルスケアや障害者雇用に詳しい担当者がいないこともあるのです。 ※もちろん、会社規模が小さくても社内制度(福利厚生)が整っている会社もたくさんあります。 当時の上司は親身に相談に乗ってくれたのですが、特別に専門知識があるわけではありませんでした。私も、当時はまだ自分の障害について理解が浅かったため、合理的配慮の調整がうまくできず、お互いにとって負担だけが大きい状態に陥ってしまいました。結果的に、私は仕事を辞めることになってしまったのです。 自分に合った職場を選ぶ大切さ 就職・転職活動において、自分の持っているスキルや経験に合った職場を見つけることはもちろん大切です。それに加えて、発達障害のある方の場合は「自分の特性に合っているか」という観点がとても重要です。 筆者の場合、転職前も後も営業職で、同じ職種での転職でした。しかし、転職前はどうにか仕事ができていたのに、転職後に困りごとが表面化しました。つまり、同じ職種であったとしても、職場の環境が変わるだけで大きな影響があるのです。 自己分析を行って自分の特性を理解したうえで、どのような職場であれば自分に合うのかを考え、求人を検索することが大切です。 なお、発達障害のある方向けの自己分析や、企業研究については、以下の記事もご参照ください。 就活HACK|発達障害のある方のためのお役立ちコラム
当事者対談企画「就労移行支援事業所ってどう?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「就労移行支援事業所」をテーマに、実際に通った立場/通わなかった立場から「当事者のリアル」をお伝えします。

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今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 第3回となる今回は、障害のある方が働くための支援をおこなう障害福祉サービス、『就労移行支援事業所』の利用をテーマに対談をおこないました。 対談した2名のうち、1名は事業所を利用し、もう1名は利用せず現在に至ります。なぜ就労移行支援事業所を利用した/利用しなかったのか、実際に利用してみてどうだったのかなど、当事者のリアルな体験談が、何か皆さまのお役に立てれば幸いです。 参考記事 第1回・第2回の対談記事は、以下よりご覧いただけます。 本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 就労移行支援事業所のことをどうやって知ったの? 私は、インターネットや書籍で発達障害についてかなり調べていたつもりだったのですが、『就労移行支援事業所』についてはまったく知らなくて。再就職活動をしていたときに偶然、就労移行支援事業所を運営している会社の求人を見つけて、「こんな障害福祉サービスがあるんだ!」と驚いたんです。とりさんは実際に就労移行支援事業所をご利用されたそうですが、最初に知ったきっかけは何でしたか? 私は診断を受けたあと、障害者手帳を取得したり仕事を休職したりするタイミングで、まず『障害者雇用』について知り、そこから広がって、就労移行支援事業所の情報にもたどりつきました。実は、診断を受ける前から「障害者専用のハローワークみたいな障害福祉サービスがあるらしい」ということを何となく知っていたのですが、自分が診断を受けるまでは、調べてみようとは思わなかったですね。
【発達障害当事者が解説】「不安な気持ち」の原因とその対処法

発達障害のある方は「不安な気持ち」が強くなりやすいと言われています。当事者である筆者が実践している「不安への対処法」について紹介します。

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「いやな出来事がずっと頭の中でぐるぐる回って、落ち込んでしまう」「仕事でミスをしていないか心配で夜も眠れない」 発達障害のある方はその特性から、不安な気持ちが強くなりやすいと言われており、このようなお悩みをお持ちの方も多いかもしれません。 何を隠そう、筆者もその一人です。発達障害の当事者として、過去のしくじり体験や仕事上のミスによる不安を抱え、それが原因で自分を追い詰め仕事ができなくなるという経験をしてきました。 そこで今回は、筆者の体験談を交えながら、発達障害のある方に向けて「不安な気持ち」になってしまう原因と対処法をご紹介します。 不安を完全になくすことは難しいですが、原因と対策を知れば、うまく付き合っていくことはできます。皆さんが不安な気持ちとの折り合いをうまく付けられるように、この記事がお役に立てれば幸いです。 [toc] 1. 「不安な気持ち」の原因とは 「大丈夫かなぁ」「うまくいくかなぁ」 このような『不安な気持ち』は、多くの人がごく自然に持っている感情です。人間は何かストレスにさらされたときに不安を感じてその原因を避けようとします。「不安を感じる」ということは、本来は自分の身を守るために必要な機能なのです。 しかし、行き過ぎた不安は、身を守るどころか逆に心身のバランスを崩してしまいます。なぜ、発達障害のある方は行き過ぎた不安を感じやすくなるのでしょうか。原因は大きく分けて3つあります。 原因① 反すう思考(反芻思考) 「反すう思考」とは、嫌な出来事や自分の欠点などを繰り返し考えてしまうことでネガティブな感情がどんどん強まってしまう思考のことです。「頭の中で同じことをぐるぐると考えてしまう」という様子から『ぐるぐる思考』と呼ばれることもあります。 筆者の例をご紹介しましょう。 私は、特に週末になると、よく反すう思考になっていました。本当は仕事のことなど忘れてリフレッシュすればいいのに、ふとしたタイミングで 「あの仕事、もっとこうしておけばよかった」「あのミスが地雷になって、休み明けに爆発するじゃないか」 と仕事のことを考えはじめてしまうのです。いったん考え出すと、友人と遊んでいても、家族と美味しいものを食べていても、何をしていても上の空。夜になりベッドに入っても過去の失敗経験が思い出され、ぐるぐると頭の中を回って寝付けず、睡眠不足のまま月曜の朝を迎えることも多くありました。 発達障害、特に、自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)のある方は、脳の特性から反すう思考に陥りやすいと言われており、それが原因でうつ病や適応障害などの二次障害を起こしてしまう場合もあります。 参考文献:反芻思考に焦点づけた認知行動療法の自閉スペクトラム症への効果とその脳基盤の検討(浜松医科大学)|科学研究費助成事業データベース 原因②ストレスを感じやすい 先ほど「不安な気持ちとは、ストレスを回避し自分の身を守るための機能」であることをご紹介しました。発達障害のある方の場合、脳の特性が原因となってストレスを感じやすく、その回避のために不安な気持ちを感じやすくなる傾向があります。 例えばASDのある方の場合、変化が苦手という特性があるため、「予想外の場面」に遭遇したときに強いストレスを感じやすくなります。また、ADHDのある方の場合、衝動性の特性により「欲しいものが手に入らない・やりたいのにできない」ときに感情が抑えきれず、ストレスとなってしまうことがあります。 原因③ 認知の歪み 認知の歪み(ゆがみ)とは、何かの出来事に遭遇したときに、偏ったとらえ方をしてしまうことです。 筆者の例をご紹介しましょう。 私は仕事で上司や同僚からミスを指摘されると「またやってしまった。自分はなんてダメな人間なんだ…」といつも落ち込んでいました。 落ち着いて考えれば、上司や同僚にミスを責める気持ちはなく、アドバイスのつもりだったのかもしれません。あるいは、「すみません、次回から○○の対策をして気を付けます。ご指摘ありがとうございます」と、もう少し前向きな返事ができたかもしれません。しかし、私の場合は不安な気持ちが自動的に湧き上がってきて、どうしてもネガティブな方向に考えてしまったのです。 このように、ネガティブな方向に偏って出来事をとらえたり、一度のことで「自分はダメな人間だ」と決めつけてしまったりするのが認知の歪みであり、発達障害のある方は脳の特性から認知の歪みが起こりやすいと言われています。 次ページ:では、不安な気持ちにどう対処したらいいの?
発達障害のある方の合理的配慮事例|職場コミュニケーション編

発達障害の特性により「職場でのコミュニケーションが苦手」という方に向け、実際に提供されている合理的配慮事項と自己対処法をセットで紹介します。

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合理的配慮とは、「障害による困りごとへの配慮を、企業や自治体、教育機関等の事業主(※)に求めることができる」という制度です(※以下、本文では「職場」と表記します)。合理的配慮について職場と調整をすることは、発達障害のある方が安定して長く働いていくために大切なポイントとなります。 では、具体的にどんな内容であれば、職場に合理的配慮を求めることができるでしょうか。 今回は、発達障害の特性がある方が抱えやすい「コミュニケーション」の苦手に対する配慮事例を紹介をします。 [toc] 相談前に押さえておこう〜合理的配慮の前提となる自己対処〜 「合理的」と付いているのには理由がある。 「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」などの法律では、障害のある方に対し職場は合理的配慮の提供をおこなうことを義務づけています。 ただし、「障害者が求めたことは、どんな内容でも配慮してもらえる」というわけではありません。 法律では、職場が合理的配慮を提供する場合に「負担が重すぎない範囲で」と定められています。職場の側に配慮を求めるだけでなく、障害者の側も「自分でおこなえる対処」を提示して、互いに無理のない範囲をすり合わせることが必要です。 これが、単に「配慮」ではなく「合理的配慮」と書かれている理由です。 「合理的であるかどうか」を判断するポイントは、「障害が原因となる困難さのうち自己対処では対応しきれないことであり、かつ職場側にとっても重い負担がなく提供可能な範囲かどうか」ですので、しっかりと押さえておきましょう。 なお、合理的配慮については以下の記事で詳しく解説しています。実際に職場と合理的配慮の相談をする前に、ぜひご一読ください。 参考・合理的配慮とは?基礎知識をまとめました。・「合理的配慮」申請マニュアル 流れとポイントを紹介・合理的配慮のよくある質問集 次ページ:具体的にどのような相談をしたらいいの?
【2023年最新】発達障害者が押さえておきたい「法改正」

発達障害当事者が押さえておきたい法改正のポイントを紹介します。今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」について分かりやすく説明します。

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近年、発達障害がある方を支援するための、国の制度が強化されているのをご存じでしょうか。 2023年1月、厚生労働省は「障害者雇用率」の引き上げをおこなう方針を発表しました。また、2024年4月1日から施行される法律(改正 障害者総合支援法)では、「就労選択支援」という制度が新たに盛り込まれる予定です。 これらの制度は、「だまっていても自動的に助けてくれる」というものではありません。障害者の側も「どのような支援を・どうすれば受けられるのか」を知り、自分に必要な支援が受けられるよう、適切な窓口に相談することが必要になってきます。 今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」の2つの制度について、当事者として押さえておきたいポイントを解説します。 [toc] ポイント① 障害者雇用率が引き上げられます 障害者雇用率制度とは? 障害者雇用率制度とは、「障害者が能力を発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指す」ことを目的として、事業主に一定の割合で障害者の雇用を義務づける制度です。障害者雇用促進法という法律で定められています。 企業や公的機関など、すべての事業主は、常時雇用する従業員のうち、一定の割合以上の障害者を雇用することが法律で義務付けられています。この「法律で義務づけられた、障害者を雇用しなければならない割合」のことを法定雇用率と言います。 法定雇用率を満たしていない企業等は、国に納付金を納めなければなりません(満たしている企業には、国から調整金を支給)。厚生労働省の発表[1] によると、2022年12月時点での法定雇用率達成企業の割合は48.3%でした。半数以上の事業主が法律上の義務を達成できず、納付金を支払っているのが現状です。 納付金の支払いだけでなく、実雇用率(実際に雇用されている障害者の割合)が低い企業に対しては指導が行われ、改善が見られない場合には企業名が公表されるという罰則もあります。 制度についてのより詳しい内容は、以下のコラムもご参照ください。 参考:障害者雇用とは?オープン就労を目指す方に向け、基礎情報をまとめました。 実績の数字だけを見ると、日本における障害者雇用の推進はまだ道半ばです。ただ、近年は「CSR(企業の社会的責任)」や「SDGs」の観点から、障害者雇用に力を入れる企業が増えています。毎年9月には「障害者雇用月間」に合わせて民間メディアから「『障害者雇用率が高い会社』ランキング TOP100社」が発行[2] されるなど、社会的な注目度も高まり続けています。 参考[1] 令和4年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省[2] 「障害者雇用率が高い会社」ランキングTOP100社 | CSR企業総覧 | 東洋経済オンライン どう変わるの? 法定雇用率は、事業主の区分によって割合が定められています。例えば、民間企業(従業員45.5人以上)の法定雇用率の割合は、2.7%(現在より0.4ポイントアップ)に、以下の2段階で引き上げられることが予定されています。 現在は2.3%→ 2024年4月から2.5%に引き上げ(現在より0.2ポイントアップ)→ さらに、2026年度中に2.7%に引き上げ(現在より0.4ポイントアップ) これまで、法定雇用率の引き上げが発表された際の上げ幅は0.1または0.2ポイントずつでしたしかし、今回は合計0.4ポイントが引き上げられることが発表されており、国の障害者雇用率に対する姿勢が、より積極的になっている様子がうかがえます。 さらに、今回は法定雇用率の引き上げと合わせて「障害者を積極的に雇用する事業主」への新たな支援も発表されました。支援の概要は以下のとおりです。 ・障害者を雇用するための助成金を設立・中小企業などには助成金を上乗せ・短い労働時間(週10〜20時間)で働く障害者も、法定雇用率の計算に含めて良い 詳しい内容は、厚生労働省が公開している以下の資料で確認できます。 参考:令和5年度からの障害者雇用率の設定等について 発達障害の当事者にどんな影響があるの? 法定雇用率の引き上げにより、事業主には「法定雇用率を満たすために、今よりも多くの障害者を雇用しよう」というモチベーションが生まれます。これにより、発達障害のある方にとっても働く機会が増えることが期待されます。障害者を雇用したい事業主が増えることで競争が生まれ、雇用条件(給与や福利厚生など)がより良くなる可能性もあります。 また、中小企業に対する新たな支援がつくられることで、これまでは大企業中心だった障害者雇用が、今後は中小企業でも広がっていくことが期待できます。 次ページ:「就労選択支援」とはどんな制度?