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発達障害のある方に「障害者トライアル雇用」はおすすめ?メリット・注意点は

「就職しても続けられるか不安…」そんなADHD・ASDの方へ。障害者トライアル雇用の仕組みやメリット、注意点をADHD当事者が分かりやすく解説。

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「就職したいけど、職場や仕事が自分に合うか不安」「次の職場では長く働きたいけど、続けられるか心配」「障害への配慮をしてもらいたいけど、何をお願いすればいいか分からない」 発達障害の特性による「働きづらさ」があり、就職や転職に関する悩みを抱えている方は少なくありません。 発達障害のある方の場合、求人票や面接だけでは「実際の仕事内容が自分に合っているか」「職場の環境で無理なく働けるか」を判断しにくいことがあります。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの特性による困りごとは人によって異なるため、実際に働いてみなければ必要な工夫や配慮が見えてこないこともあります。 そこで選択肢の一つになるのが、障害者トライアル雇用です。 この記事では、ADHD当事者である筆者が、発達障害のある方に向けて、障害者トライアル雇用の仕組みや対象者、メリット、注意点、利用までの流れをご紹介します。制度を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / 障害者トライアル雇用とは:障害のある方を一定期間試行的に雇用し、本人と企業の相互理解を深めながら長く働くことを目指す制度 発達障害のある方にとってのメリット:実際の仕事や職場環境との相性、得意・不得意、必要な合理的配慮などを働きながら確認できる 利用するときの注意点:トライアル終了後の雇用が保証されている制度ではなく、労働条件も事前に確認する必要がある 利用までの流れ:ハローワークなどへの相談・求職申込みから求人への応募、トライアル雇用、トライアル期間後の雇用の判断へと進む \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害のある方も利用できる「障害者トライアル雇用」とは 障害者トライアル雇用とは、簡単にいうと、企業で一定期間「お試し」で働く制度です。実際に働きながら、本人と企業がお互いに仕事や職場との相性、必要な配慮などを確認し、長期的な就労につなげます。 単なる「職場体験」ではなく、実際に企業で従業員として働きながら、以下の点を確認していきます。 仕事や職場が自分に合っているか 特性による困りごとが起こりにくい働き方や仕事は何か どのような仕事なら力を発揮しやすいか どのような合理的配慮が必要か 障害者トライアル雇用の期間は原則3か月(精神障害の場合は6か月) 厚生労働省の「障害者トライアル雇用事業実施要領」では、トライアル雇用の期間は以下のように定められています。 原則:3か月 制度上の「精神障害者」に該当する人└原則6か月(必要に応じて最長12か月)└本人と企業の合意があれば、3か月以上5か月以内とすることも可能 ※発達障害のある方でも、障害者手帳の有無など制度の条件によっては「精神障害者」に該当しないことがあります。その場合、利用できる期間が異なることがあります。詳しくはハローワークなどで確認してください。 発達障害・精神障害のある方には「障害者短時間トライアル雇用」もある 「いきなり週20時間以上働くのは不安」という方には、障害者短時間トライアル雇用があります。対象は、長く働き続けたいと考えている精神障害者または発達障害者です。 入社後まずは週10時間以上20時間未満の働きやすい時間から始め、体調や職場への適応状況を見ながら、3か月以上12か月以内のトライアル期間中に週20時間以上働けるようになることを目指します。 週20時間以上働くことに不安がある方、まずは短い時間から職場に慣れたい方、離職期間が長い方にとって、選択肢の一つとなるでしょう。 障害者トライアル雇用の対象になる人 障害者トライアル雇用を利用するためには、まず次の2つを満たしている必要があります。 ハローワーク(または民間の職業紹介事業者) に求職の申し込みをしている トライアル雇用期間の後も、その会社で長く働くことを希望している そのうえで、次のいずれかの条件に当てはまる必要があります。 ※下記条件にある「紹介日」とは、ハローワークなどからトライアル雇用の求人を紹介された日のことです。 紹介日時点で、これまで就労経験のない職業への就職を希望している 紹介日前2年以内に、2回以上離職または転職をしている 紹介日前の離職期間が6か月を超えている 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者に該当する 精神障害者については、転職回数などの要件にかかわらず対象になる仕組みがあります。 また、障害者手帳を持っていない場合でも対象となる可能性があります。個別の状況によって異なるため、利用を希望する場合はハローワークなどに相談しましょう。 発達障害のある方にはどのような就職の選択肢がある? 発達障害のある方が就職を考える際には、いくつかの選択肢があります。障害者トライアル雇用の位置づけを理解するために、主な働き方を簡単に整理します。 一般就労 一般就労には、主に次のような働き方があります。 一般雇用枠└障害の有無を問わず一般に募集されている求人に応募して働く└障害があることを勤務先に伝えて働く「オープン就労」と、伝えずに働く「クローズ就労」がある└障害特性に応じた配慮やサポートの内容・体制は、職場によって異なる(申し出がしづらい、十分な配慮を受けられない等のケースもある) 障害者雇用枠└障害のある方を対象とした求人に応募して働く└障害特性や必要な合理的配慮について、企業と相談しながら働ける└障害者雇用を促進するための環境がある「特例子会社」で働く方法もある 障害者トライアル雇用は、これらと並ぶ別の雇用形態ではありません。障害のある方が企業で継続して働くことを目指し、一定期間実際に働きながら、仕事や職場との相性、得意・不得意、必要な合理的配慮などを本人と企業の双方が確認するための制度です。 福祉的就労 福祉的就労には、就労継続支援A型・B型があります。いずれも障害福祉サービスを利用しながら働く方法です。 A型 事業所と雇用契約を結んで働く B型 雇用契約を結ばず、就労や生産活動の機会の提供を受ける このように、発達障害のある方には複数の働き方があります。自分の特性や希望、必要な配慮に合った働き方を選ぶことが大切です。 では、障害者トライアル雇用には、発達障害のある方にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。 発達障害のある方にトライアル雇用がおすすめできる理由 発達障害のある方の場合、仕事内容そのものだけではなく、「どのような職場環境・人間関係か」が働きやすさに大きく関係することがあります。 実際の職場で一定期間働けるトライアル雇用には、求人票や面接だけでは分からないことを確認できるメリットがあります。 1.実際の業務を通して「自分に合う仕事か」を確認できる 同じ「一般事務」でも、電話や来客対応が多い職場、複数の仕事を同時進行する職場、自分で優先順位を判断する職場など、仕事の進め方はさまざまです。 発達障害のある方の中には、仕事の切り替えや優先順位づけ、抽象的な指示への対応などで困難を感じる方もいます。JEEDの「障害者雇用マニュアル 発達障害者と働く」でも、優先順位づけ、指示の理解、質問や説明、感覚面などに関する事例が紹介されています。 トライアル雇用なら、「この職種なら向いているはず」と頭の中だけで考えるのではなく、実際にやってみた結果から自分の適性を考えることができます。漠然とした不安を、具体的な確認事項に変えていくことにもつながります。 筆者は、発達障害のある方に向けて、タスク管理など仕事の進め方を伝える活動をしています。 その中で、働き方に関する相談を受ける機会が多いのですが、仕事の進め方は職場の環境に左右されやすい印象があります。どのようなシステムが使われているか、デスク周辺にどのようなものがあるか、リモートワークと出社勤務の割合はどれくらいかによって、タスク管理の仕組みも変わります。 実際に働いてみると、紙とペンが一番仕事を管理しやすかったり、会社で導入している業務管理システムが自分と相性が良かったりすることがあります。そうした経験を重ねながら、自分に合う仕事の進め方を探していくほうが、うまくいきやすい印象があります。 2.新しい環境に少しずつ慣れることができる 就職や転職では、通勤、生活リズム、人間関係、仕事のルールなど、一度に多くの変化が起こります。新しい環境への適応に大きなエネルギーを使う方の場合、仕事内容以外の変化も負担になることがあります。 特に障害者短時間トライアル雇用では、週10時間以上20時間未満から始め、職場への適応状況や体調を見ながら勤務時間を増やすことができます。「働けるか、働けないか」の二択ではなく、段階的に調整できることが特徴です。 ADHD当事者である筆者も以前働いていたときに、通勤時間の見積もりに苦労した経験があります。自宅から会社まで「約1時間」と見込んでいました。しかし、実際には混雑した電車で40分ほど立ち続ける必要がありました。 そこで始発電車を利用するようにしましたが、座るためには早めに駅へ行く必要があり、結果として通勤には1時間半ほどかかるようになりました。 このように、通勤一つをとっても、実際に続けてみなければ分からない負担があります。 3.必要な合理的配慮を具体的にできる 障害者雇用では「どんな配慮が必要ですか?」と聞かれることがあります。しかし、初めての職場では、自分でも具体的に答えられない場合があります。 実際に働くことで、たとえば「口頭で複数の指示を受けると抜けやすいので、メモでも残してほしい」「優先順位が変わったときは、どれを先にするか確認したい」といった配慮を具体化しやすくなります。 重要なのは、診断名だけから「ASDだからこの配慮」「ADHDだからこの配慮」と決めることではありません。実際にどの場面で困り、どのような工夫があれば仕事がしやすくなるのかを、本人と企業が確認することが大切です。 たとえば「自分は仕事が遅い」と感じても、原因によって必要な対策は変わります。 その作業が苦手⇒可能であれば作業の変更を相談する、作業を分解してマニュアルを作成する 目的意識が持てない(モチベーションが上がらない)⇒仕事のゴール(どんな成果や貢献につながるか)を明確に教える 口頭の指示が頭に残らない⇒メモに書いて渡す、メールやチャットで指示を出す 困りごとの原因を具体的にできれば、必要な配慮もよりきめ細かく検討できます。本人・企業の双方にとって、働きやすい環境づくりにつながります。 もし、「自分にどんな配慮が必要かまだ分からない」「いきなり企業で働くのは不安」と感じた場合は、トライアル雇用を利用する前に、就職に向けた訓練や相談ができる障害福祉サービスである「就労移行支援」を利用し、自分に合う働き方を整理する方法もあります。就労移行支援事業所ディーキャリアでは、「働きづらさ」や「働き方」に関する無料相談会を随時開催しています。お近くのオフィスにお問い合わせください。お問い合わせフォーム▶ 就労移行支援について詳しく知りたい方は以下のコラムをお読みください。就労移行支援とは|リアルに役立つまるわかりガイド 4.本人だけでなく企業側も適性を確認できる トライアル雇用では、企業側も、どの業務なら力を発揮できるか、どのような指示や配慮が適しているかなどを確認します。 これは「会社から評価される期間」であるだけではありません。長く働くためには、本人と企業の双方が「この働き方なら続けられそうだ」と確認することが重要です。 厚生労働省も、障害者トライアル雇用の目的として、求職者と求人者(企業)の相互理解の促進を掲げています。 企業側にとっても、トライアル期間中に仕事との相性や必要な配慮を確認できるため、採用後のミスマッチを減らすことにつながります。また、一定の要件を満たした企業には助成金が支給されるなど、国による支援もあります。 このように企業側にもメリットがあるので、「配慮をお願いすると企業に迷惑をかけるのでは」と心配しすぎず、必要なことを相談していきましょう。 発達障害のある方がトライアル雇用を利用するときの注意点 メリットのある制度ですが、利用すれば必ず希望どおりにその後も働き続けることができるわけではありません。事前に知っておきたい注意点があります。 1.トライアル終了後の雇用が保証されているわけではない トライアル期間が終わったあと、その会社で働き続けるかどうかは、本人と企業の双方で決めます。本人が希望してもそのまま働き続けられない場合もあれば、企業から希望されても、本人が「自分には合わなかった」と判断する場合もあります。 令和6年度の厚生労働省の集計では、発達障害者を含む障害者トライアル雇用の利用者の約8割が、トライアル雇用後に常用雇用へ移行しています。 トライアル期間は、採用されるためだけの期間ではなく、自分に合う仕事や働き方を確かめる期間として活用しましょう。 2.トライアル中の「できなかった」だけで辞退しない 仕事がうまくいかなかったからといって、すぐに「この仕事には向いていない」と決まるわけではありません。指示を書面にする、手順書を作る、優先順位を確認するなど、仕事の進め方を変えることで取り組みやすくなる場合があります。 大切なのは、「なぜ難しかったのか」「何を変えればできるようになるのか」まで確認することです。 筆者に「仕事の進め方」について相談していた発達障害当事者の方も、なかなか締切を守れないという悩みを抱えていました。そこで、最終締切だけでなく中間締切も上司と確認するようにしたところ、締切までに出せるようになりました。 「締切が守れない」ことから「だから自分はダメだ」と考えるだけではなく、「だったら、こうしよう」と仕事の仕組みを変えるきっかけにすることもできます。 3.給与・勤務時間などの労働条件を確認する 障害者トライアル雇用は「職場体験」ではなく、企業と雇用契約を結んで働く制度なので、給与が支払われます。原則として、地域ごとに定められた最低賃金も適用されます。 また、トライアル雇用だからといって、一般の求人より賃金が低くなると決まっているわけではありません。原則として、トライアル期間中の給与や勤務時間などの条件は、その後も同じ会社で働く場合と同じです。 ただし、障害者短時間トライアル雇用では働く時間が短いため、月の収入が少なくなることがあります。 応募する際には、給与、勤務時間、交通費、社会保険のほか、トライアル期間中と、その後も働く場合で条件に違いがあるかを確認しておきましょう。 4.制度を使うこと自体が目的にならないようにする 障害者トライアル雇用は、あくまでもその会社で「働き続けられるかどうか」を見極めるための期間のため、「お試しだけ」をする場ではありません。 また、就職活動をするときの選択肢の一つ、としてとらえるようにしましょう。トライアル雇用を利用できるかだけで求人を選ぶのではなく、仕事内容、通勤、勤務時間、得意・不得意、必要な配慮なども含めて、自分に合う職場かを考えることが大切です。 障害者トライアル雇用を利用する流れ 利用する場合は、基本的に次のように進みます。 1.ハローワークなどに相談・求職申込みをする ハローワークなどで求職申込みをし、障害者トライアル雇用を希望していることを相談します。自分が制度の対象になるか分からない場合も確認しましょう。 厚生労働省によれば、障害者トライアル雇用は、ハローワークまたは制度を取り扱う民間の職業紹介事業者などの紹介によって雇い入れられることが要件となっています。 2.求人を探して応募する 希望する職種、仕事内容、勤務地、勤務時間などをもとに求人を探し、選考を受けます。 面接では、得意なことだけでなく、苦手なこと、仕事で起こりやすい困りごと、自分で取り組んでいる対策、企業にお願いしたい配慮などを整理しておくと、その後のトライアル期間にもつなげやすくなります。 3.雇用契約を結び、トライアル雇用を開始する 採用が決まったら、企業と有期の雇用契約を結び、トライアル雇用が始まります。 期間中は、次のようなことを記録しておくと、自分の働き方を振り返りやすくなります。 やりやすかった仕事・負担が大きかった仕事 ミスが出やすかった場面 理解しやすかった指示の出し方 疲れやすい時間帯 役立った配慮 発達障害当事者の方から「仕事の進め方」に関する相談を受けたときには、毎日次の4点を振り返ることをお勧めしています。 できたこと できなかったこと 意識したいこと 今日の点数(10点満点) トライアル雇用の期間中に続ければ、自分ならではの気付きが得られやすくなります。 4.本人と企業が、その後も働き続けるかを決める トライアル期間が終わると、本人と企業が、その会社で働き続けるかを話し合います。双方が希望し、条件が合えば、そのまま働き続けます。 その会社で働き続けないことになった場合でも、「どんな仕事の進め方が自分にあっているか」「どんな環境が働きやすいのか」「次の職場ではどのような配慮をお願いしたいのか」を整理しておくと、次の就職活動に活かせます。 「次の就職で失敗したくない」と思ったときは、「自分に合う働き方」から考えよう 「働くことに自信がない」「次の就職では長く働きたい」という方にとって、障害者トライアル雇用は、実際の仕事を通して自分と職場の相性を確認できる選択肢です。 一方で、トライアル雇用が唯一の正解ではありません。一般雇用枠、障害者雇用枠、特例子会社など、ほかの選択肢が合う場合もあります。 大切なのは、自分の特性や希望、必要な配慮を理解し、自分に合った働き方を選ぶことです。 就職活動を始める前に、 自分は何が得意なのか どんなときに困りやすいのか どうすれば働きやすくなるのか を整理しておくと、トライアル雇用を利用する場合にも、それ以外の働き方を選ぶ場合にも役立ちます。 一人で整理することが難しい場合は、就労移行支援などの支援機関を利用し、訓練やキャリア相談を通じて自己理解を深める方法もあります。ディーキャリアのリクルートコースなどのプログラムについて、体験会や個別相談会で相談してみるのも一つの方法です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害・精神疾患のセルフケア|マインドフルネスの効果と実践法

ADHD・ASDのセルフケア「マインドフルネス」について、発達障害当事者が解説。本当に効果がある?どう取り組めばいい?そんな疑問にお答えします。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「頭の中がごちゃごちゃして、目の前のことに集中できない」「嫌なことや失敗したことを、何度も繰り返し思い出してしまう」「マインドフルネスを試したけれど、続かなかった・合わないと感じた」 ADHDやASDの特性による困りごと、メンタル不調やストレスへの対処法を探していませんか。 マインドフルネスは、発達障害や精神疾患に伴うストレス、ADHDの注意の散りやすさ、ASDの反すう思考などへの対策として広く活用されているセルフケアの一つです。 一方で、「スピリチュアルなものではないか」「頭を空っぽにできない」「自分の特性・性格には合わない」と感じる方は少なくありません。また、心身の状態によっては、無理に取り組むことで、かえってストレスが強まることや状況が悪化するリスクがあるため、注意が必要です。 この記事では、マインドフルネスの意味や、発達障害・精神疾患のある方に期待される効果、うまくいかないときの対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / マインドフルネスは、今の自分の状態に気づくためのトレーニング 発達障害や精神疾患の困りごとへのセルフケアとして役立つ可能性がある ADHDやASDの特性に合わせて、やり方を変えてよい 強い不安やフラッシュバックが起きた場合は、無理に続けないことが大切 \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害や精神疾患のセルフケアにマインドフルネスは有効? マインドフルネスは、発達障害や精神疾患の症状そのものを治す方法ではありません。医療機関での治療や服薬、環境調整に代わるものでもありません。 一方で、次のような困りごとへの自己対処やセルフケアとして役立つ可能性があります。 頭の中がごちゃごちゃする 嫌な出来事や過去の失敗を繰り返し思い出す 不安や焦りを感じやすく、気持ちを切り替えにくい 感情のコントロールが効かず衝動的に反応する 疲労や緊張に気づかず無理をしてしまう マインドフルネスでは、考えや感情を消そうとするのではなく、 「今、自分は焦っている」「失敗した場面をまた思い出している」「肩に力が入りすぎている」 と、自分の状態に気づくことを大切にします。早めに自分の変化へ気づくことができれば、休憩する、仕事量を減らす、人に相談するなどの対処につなげやすくなります。 マインドフルネスは、簡単にいうと、過去の出来事や未来への不安などにとらわれすぎず、「今この瞬間」に意識を向けることです。 ADHD等の発達障害がある方の場合、仕事を進めるうえでも「あれもやらなければ」「これも忘れてはいけない」と頭の中にたくさんのやることが浮かんでしまい、優先順位やスケジュール管理が苦手という方がいらっしゃいます。そのような苦手がある方のタスク管理のコツとして、「やること」を一覧にして書き出すというものがあります。書き出すことで、余計なことにとらわれすぎず、いま目の前にあることに意識を向けやすくなるからです。 マインドフルネスのやり方について調べてみると、このタスク管理のコツと共通する考え方であると気づきました。「頭に浮かぶ考えにとらわれすぎず、目の前のことに意識を戻す」という点です。 発達障害当事者である筆者も、週に1~2回程度、椅子に座って目を閉じ、3分ほどマインドフルネスを実践しています。仕事を始める前や終えた後に行うと、気持ちを切り替えやすくなる感覚があります。 そもそもマインドフルネスとは? マインドフルネスとは、「今この瞬間」に起きていることへ注意を向け、良い・悪いとすぐに判断せず観察することです。米国心理学会(American Psychological Association:APA)の心理学辞典では、マインドフルネスを、自分の内的な状態と周囲の環境への気づきとして説明しています。 たとえば、仕事でミスをして、「また失敗した。自分は何をやっても駄目だ」という考えが浮かんだとします。マインドフルネスでは、この考えを打ち消すのではなく、「今、自分は『何をやっても駄目だ』と考えている」という自分の状態を客観的に見る、ということをやっていきます。 考えを事実と決めつけず、自分のことを少し離れて観察することで、感情に巻き込まれたまま反応する前に、次の行動を選びやすくします。 マインドフルネスは「無になること」ではない マインドフルネスは、頭を空っぽにしたり、雑念を完全になくしたりする練習ではありません。仕事の予定や過去の失敗が浮かんでも、それ自体は失敗ではありません。まず、「別のことを考えていた」と気づけるようになることが第一歩です。 英国の国民保健サービス(National Health Service:NHS)も、マインドフルネスは思考をなくすことではなく、思考を心の中に生じる出来事として捉える方法だと説明しています。 スピリチュアルなものではないの? 瞑想には、宗教的な伝統を背景にしたものもあります。そのため、マインドフルネスにスピリチュアルな印象を持つ方もいるでしょう。 一方、医療や心理支援では、宗教的な信念を必要としない、マインドフルネスストレス低減法やマインドフルネス認知療法などが活用されています。 米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)によると、マインドフルネスについては、脳の働きや構造との関連も研究されています。研究結果の解釈は難しく、実生活上どのような意味を持つのかはまだ明確ではありませんが、単なる精神論ではなく、脳活動との関係も含めて科学的な研究が進められています。 マインドフルネスはどんな人におすすめ?発達障害の特性別に解説 ADHD:注意の散りやすさや自分の衝動に気づく ADHDのある方は、集中力を継続できず、頭の中に複数の考えが次々と浮かんだり、目の前の作業から注意がそれたりすることがあります。また、行動や感情のコントロールができなくなる(例:やってはいけないことをしたい!欲しいものを買わずにいられない!等の衝動にかられる)こともあります。 マインドフルネスでは、注意がまったくそれない状態を目指すのではなく、 「今、別のことを考えていた」「焦って、すぐに返信しようとしている」「集中が切れてきた」 と気づく練習をします。 マインドフルネスによってADHDの症状が改善されたという報告があります。一方で、標準的な治療に代わるほど十分な根拠が確立しているわけではありません。治療の代わりではなく、困りごとへの対処を補助する方法と考えましょう。 筆者も、目の前の仕事に集中したいのに、「そういえば、これとあれもやらなければ」と別の用事が頭に次々と浮かぶことがあります。そんなとき、「今は考えないようにしよう」と無理に追い出そうとするのではなく、いったんメモやタスクリストに書き出します。書いておけば、忘れないように頭の中で覚えておく必要がなくなるので、安心して目の前の仕事に戻ることができます。 これはADHD特性のある筆者自身が実践しているタスク管理の方法の一つですが、「別のことに意識が向いている自分に気づき、それをいったん脇に置いて、今やっていることへ戻る」という点で、マインドフルネスの観点と通じるところがあるように思います。 ASD:反すう思考と距離を取る ASDのある方は、嫌なことや過去の失敗、人との会話等を何度も思い返す「反すう(反芻)思考」に陥りやすいといわれています。反すう思考は、発達障害のある方が「不安を感じやすい」と言われる原因のひとつで、ネガティブな出来事や感情が頭から離れず、何度も同じことを繰り返し考えてしまう状況を指します。 なお、「不安な気持ちの原因」と「反すう思考」について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 マインドフルネスでは、 「また、あのときの会話を考えている」「今、胸のあたりが苦しい」 と、反すう思考やそれに伴う身体感覚(例:動悸、呼吸の苦しさ)が起きていることに気づきます。 考えを完全に止めるのではなく、考えと少し距離を取ることで、目の前の行動へ戻りやすくなる可能性があります。 ASDのある人を対象とした研究でも、心理的苦痛などに対する肯定的な結果が報告されています。ただし、対象者や実施方法に違いがあり、今後も研究が必要です。 筆者も、不安やネガティブな考えが頭の中を巡る感覚には心当たりがあります。頭の中で「失敗したらどうしよう」「あれもやらなければ」といった考えが巡っていることに気づいたとき、筆者はタスク管理を使って、その考えを具体的な行動へと変換することがあります。 たとえば、タスクを手順に分解して書き出すことで、それらは感情を伴った考えから、無機質な「行動指示」に変わります。すると、「どうしよう」と考え続けるよりも、「まずこれをする」という行動そのものに注目しやすくなり、ネガティブな想像にとらわれにくくなることを実感しています。 これも、頭に浮かぶ考えそのものに巻き込まれるのではなく、そこから少し距離を取って目の前のことへ意識を戻すという意味で、マインドフルネスと似たところがあるのかもしれません。 初心者でも取り組みやすいマインドフルネス マインドフルネスは、静かな場所で長時間をかけなくても実践できます。じっとしていることが苦手な方の場合は、段階的に取り入れていくことがおすすめです。 呼吸を一回だけ観察する 息を吸っている、吐いているという感覚を、一回だけ観察します。呼吸へ注意を向けると息苦しくなる方は、無理に続けず、足の裏や周囲の物へ注意を向けましょう。 足の裏の感覚や目に入る物を観察する 床に触れている足の感覚や、目に入る物の形、色を確認します。 かかとが床に触れている 手元の物の形を見る 目を閉じる必要はありません。 歩行瞑想をする 歩行瞑想とは、足を上げる、前へ運ぶ、地面へ下ろすという動きへ注意を向ける方法です。じっと座ることが苦痛な方は、座る瞑想より取り組みやすい場合があります。 筆者の場合、座って静かにするよりも、シャワーを浴びているときのほうが、今の自分の感覚に意識を向けやすいと感じます。お湯の温度や肌に当たる感覚、シャワーの音などに自然と意識が向き、仕事中のように「あれもやらなければ」「これも忘れてはいけない」と考え続ける状態から、いったん離れやすくなります。 筆者にとっては、シャワーのお湯や音といった感覚に意識を向けることも、「今この瞬間」に戻るきっかけの一つになっています。マインドフルネスも、必ずしも目を閉じて静かに座る方法だけにこだわる必要はありません。 特性によってマインドフルネスが続かないときの対策 じっとしていることが苦痛 座る瞑想にこだわる必要はありません。 歩きながら足の感覚を観察する 立ったまま取り組む ストレッチしながら身体の動きを感じる 30秒だけ取り組む マインドフルネスの目的は、動かないことではなく、現在の体験に気づくことです。 考えが次々に浮かぶ 考えが浮かぶこと自体を、失敗と捉えないようにしましょう。 「別の考えが浮かんだ」と気づけば成功と考える 頭に浮かんでしまったことは一言だけメモする 瞑想に集中するためのガイド音声を使う タイマーで時間を区切る 雑音が気になる ASDなどの感覚過敏がある場合は、環境を調整しましょう。 時計や空調から離れる 耳栓やイヤーマフを使う 音ではなく、目に見える物へ注意を向ける 一定の環境音を流す 無音がよい人もいれば、適度な音があるほうが落ち着く人もいます。 目を閉じると不安になる 目を閉じることは必須ではありません。 視界が閉ざされることで不安を感じる場合は、目を開けたままみましょう。 壁や床の一点を見る 植物や水面の動画を見る 手元の物を観察する 出口が見える位置に座る 静かになると過去の記憶が浮かぶ 静かな状態になることで、過去の記憶やフラッシュバックが起きる場合があります。 その際は、無理に観察を続けず、目を開けて周囲へ注意を戻してください。 部屋にある物を声に出して確認する 足の裏で床を押す 冷たい水で手を洗う 安全な場所へ移動する 強いフラッシュバックがある方は、自己流で続けず、主治医や心理職へ相談しましょう。 筆者は、何かを続けるときに「三日坊主になってはいけない」とはあまり考えないようにしています。三日坊主になっても、しばらくしてまた三日やって、さらに思い出したときにまた三日やる。それを繰り返していけば、長い目で見れば「緩く続けられている」とも考えられるからです。 うまくできなかった日や、しばらく続かなかった期間があっても、「また続かなかった」とクヨクヨ考えるより、「さぁ、また三日坊主をしよう!」くらいに考える。 考えてみれば、これはマインドフルネスそのものにも少し似ています。注意がそれても、気づいたらまた戻せばよい。それと同じように、習慣も途切れたら、気づいたときにまた始めればよいのだと思います。 マインドフルネスが逆効果になるケース マインドフルネスは、すべての人に合うわけではありません。Fariasら(2020)が83件の研究を対象に行ったシステマティックレビューでは、有害事象の割合は約8%と推定され、主なものとして不安や抑うつなどが報告されています。 精神疾患の症状が強いときや、過去のつらい体験を思い出して大きく動揺する場合は、自己流で無理に取り組まず、主治医や心理職などの専門家へ相談しましょう。現在通院中の方も、事前に主治医へ相談すると安心です。 また、実践中や実践後に、強い恐怖や不安、息苦しさや動悸、フラッシュバックなどが起きた場合は、無理に続けず中止してください。マインドフルネスは、つらさを我慢してまで続けるものではありません。 仕事中にマインドフルネスを取り入れる方法 仕事中に長い瞑想をおこなう必要はありません。 メールを送る前に一呼吸置く 作業を始める前に足の裏の感覚に目を向ける 焦りを感じたら、今の状態を言葉にする 休憩中に周囲の物を3つ観察する 頭に浮かんだ用事をメモへ移す 自分の状態に気づいた後、具体的な行動へつなげることが大切です。 イチロー選手がバッターボックスに入るとき、毎回決まったルーティンをおこなっていたことはよく知られています。筆者にも、それに少し似た行動があります。 新しいタスクに取りかかるときや、焦りや不安が強いときには、まず「タスク管理ツールにタスクを書き入れる」ことにしています。いつもと同じ手順を踏むことで、「まずはここから始めればいい」と気持ちを落ち着かせ、目の前の仕事に向き合いやすくなるからです。 タスクを書き出すだけなら、短いものであれば数秒で終わります。不安なときほど、いきなり仕事をうまく進めようとするのではなく、まずいつもの行動に戻る。これも、自分の状態に気づいたあと、目の前の行動へ意識を戻す一つの方法だと考えています。 一人で取り組むことが難しい場合は? 自宅で一人で実践することが難しい場合は、次のような場所で学べることがあります。 医療機関やカウンセリング機関 マインドフルネスや瞑想のスタジオ ヨガスタジオ 寺院などで開かれる瞑想会 就労移行支援事業所 精神疾患やトラウマがある場合は、指導者に十分な知識があるか、途中でつらくなったときに中止できるかを確認しましょう。 発達障害のある方の場合は、マインドフルネスだけでなく、自分の特性や仕事で困りやすい場面を理解し、環境を調整することも重要です。 自分の特性に合わせて無理なく取り組もう マインドフルネスは、考えを完全になくしたり、常に穏やかな状態になったりするための方法ではありません。自分の中で何が起きているかに気づき、次の行動を選びやすくするための練習です。発達障害や精神疾患のある方にとっても、注意の散りやすさ、反すう思考、ストレスなどへ対処する選択肢の一つになり得ます。 ただし、一般的な方法がすべての人に合うわけではありません。自分の特性や体調に合わせて、以下のように方法を変えて構いません。 座ることが難しければ歩く 目を閉じることが難しければ開けておく 長く続かなければ30秒にする つらくなったら中止する また、マインドフルネスだけで仕事上の困りごとのすべてが解決するわけではありません。自分の特性を理解し、仕事の進め方や環境を調整し、必要な配慮を周囲へ相談することも、長く働くための重要な対策です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、自分に合ったセルフケア方法探しサポートしています。その他にも、発達障害のある方の働きづらさ・生きづらさに対するさまざまなプログラムを提供しています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害のある方が職場でパニックになる原因と仕事中の対策

大人のASD・ADHDがあると「パニック」になりやすい?発達障害のある方のパニックの原因、職場での対処法について、ADHD当事者が解説。

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「仕事中に急に頭が真っ白になり、何をすればいいか分からなくなる」「職場でパニック症状が出てしまうことがあり、このまま働き続けられるのか不安」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害のある方の中には、職場で強いストレスがかかったときに、涙が止まらなくなる、固まって動けなくなる、怒りや不安が抑えられなくなる、呼吸が苦しくなる、頭が真っ白になるといった、いわゆるパニック状態になる方がいます。 この記事では、その原因と対処法をご紹介します。今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / 発達障害のパニックとは:医学的な「パニック発作」に近い状態や、発達障害の特性・強いストレスによって起こる「メルトダウン」「フリーズ」に近い状態がある。 パニックの原因:ASDやADHDの特性がある人にとって負荷になりやすい急な変更、感覚刺激、マルチタスク、過去のつらい経験などが関係する。 仕事中のパニック対策:安全な場所への移動や、状況を伝える短い定型文の用意などによって、落ち着く時間を確保する。 パニックの予防策:トリガーの記録、予定・指示・優先順位の見える化、必要な合理的配慮の相談が役立つ。 \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害のある方が職場で直面しがちな「パニック」とは 日常会話で使われる「パニック」からは、以下のような状態が想像されるのではないでしょうか。 急に不安が強くなる 呼吸が苦しくなる 頭が真っ白になる 涙が止まらなくなる 怒りや焦りが抑えられなくなる 体が固まり言葉が出なくなる 指示を聞いても理解できなくなる 本記事では、職場で強い不安や混乱が生じ、普段どおりに考えたり行動したりすることが難しくなる状態を、総称して「パニック」と表現します。 その中には、医学的な意味での「パニック発作」に近い状態もあれば、発達障害の特性や強いストレスによって起こる「メルトダウン」や「フリーズ」に近い状態もあります。 パニック発作 パニック発作とは、突然強い不安や恐怖に襲われ、動悸、息苦しさ、めまい、震えなどの身体症状が表れる状態です。こうしたパニック発作が繰り返され、生活や仕事に支障が出ている場合、パニック障害と診断されることがあります。 メルトダウン メルトダウンは、強いストレスや感覚刺激に圧倒され、一時的に行動のコントロールが難しくなる状態を説明する言葉として使われます。英国の自閉症支援団体であるNational Autistic Societyも、メルトダウンを「圧倒される状況への強い反応」と説明しています。 職場では、涙が止まらなくなる、怒りが爆発する、大きな声を出してしまう、その場から逃げ出したくなる、周囲の言葉が入ってこなくなる、といった形で表れることがあります。 フリーズ 強いストレスや混乱によって、動けなくなる、話せなくなる、考えられなくなる状態をフリーズといいます。頭が真っ白になる、返事ができない、体が固まる、パソコンの前で止まってしまう、といった形で表れることがあります。 外から見ると、「黙っている」「ぼーっとしている」「やる気がない」と見えるかもしれません。しかし本人の内側では、強い緊張や混乱が起きていることがあります。 パニック発作、メルトダウン、フリーズのいずれも、本人にとっては非常につらい状態です。職場で繰り返し起こると、休職や退職につながることもあります。だからこそ、自分に何が起こっているのかを整理し、対策を考えることが大切です。 発達障害のある方が職場でパニックになりやすい原因 発達障害のある方が職場でパニックになりやすい背景には、本人の性格だけではなく、特性と環境のミスマッチ、体調、業務量、人間関係など、複数の要因が関わっていることがあります。 ASDやADHDの特性がある方にとっては、こうした負荷が積み重なることで、パニックにつながることがあります。 ASD(自閉スペクトラム症)のある方に見られやすい原因 ASDのある方は、見通しの立たなさ、急な変更、感覚刺激、人間関係のあいまいさなどによって強いストレスを感じることがあります。 CDC(米国疾病予防管理センター)は、ASDの特徴として以下のような反応があるとしています。 小さな変化に強く動揺する 特定のルーティンを必要とする 音・におい・味・見た目・触感などへの通常とは異なる反応 たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。 今日やる予定だった仕事が急に変わる 予定になかった来客対応を頼まれる 作業途中で別の仕事を割り込まれる 電話の音や周囲の会話がつらい 照明やにおいなどの刺激がつらい 「いい感じに」「なるべく早めに」など、あいまいな指示を受ける 周囲から見ると、よくある予定変更や指示に見えるかもしれません。しかし本人にとっては、頭の中で組み立てていた段取りが崩れたり、判断材料が足りないまま作業を求められたりするため、大きな混乱につながることがあります。 また、過去に強く叱責された経験や、職場でつらい思いをした経験がある場合、似た場面でその記憶がよみがえり、強い不安や緊張につながることもあります。いわゆる「フラッシュバック」のように感じられることもあります。 ADHD(注意欠如・多動症)のある方に見られやすい原因 ADHDのある方の場合、以下のような特性によって、仕事中の負荷や混乱が高まりやすくなることがあります。 注意の切り替えが難しい 優先順位づけが苦手 指示を覚えておくことが難しい 感情のコントロールが難しい 特に職場で見られがちなこととして、NIMH(米国国立精神衛生研究所)は、以下についての困りごとを挙げています。 整理 仕事の継続 日々のタスクの遂行 大きなプロジェクトの完了 マルチタスク たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。 複数の仕事が同時に発生し、どれから手をつければよいか分からない 口頭指示の一部を聞き漏らす 席に戻ると、何を頼まれたか分からなくなる 注意されたときに強く落ち込む 焦りが強くなり、落ち着いて考えられない 筆者にも、「焦り」によって確認が漏れてしまった経験があります。社用車のリースに関する手続きで、急いで書類を送る必要があった際、レターパックに入れて送付したところ、誤って全く関係のない自分のノートを送ってしまったのです。今振り返ると、焦りで頭の中がいっぱいになり、「何を入れたか」を確認する余裕がなくなっていたのだと思います。このように、焦りが強くなると、普段なら当然できる確認作業が抜け落ちてしまうことがあります。 職場でパニックが起こったときの対処法・仕事中の対策 職場でパニックが起こったときに大切なのは、「その場で完璧に立て直そう」としないことです。 パニック状態のときは、普段できる判断や会話が難しくなっています。まずは安全を確保し、刺激を減らし、落ち着くための時間を取りましょう。 いったんその場から物理的に離れる 可能であれば、刺激の多い場所から離れましょう。空いている会議室、休憩室、廊下、トイレ、建物の外、人の少ないスペースなどに移動できるとよいでしょう。このように、混乱が強くなったときに一時的にその場を離れ、落ち着く時間を取る方法は「タイムアウト法」と呼ばれることもあります。 職場で使える言い方としては、次のようなものがあります。 「少し席を外します」 「体調が悪いので、5分だけ休憩します」 「落ち着いてから戻ります」 事前に職場と相談できる場合は、「パニックになりそうなときに一時的に離席してよいか」「どこでクールダウンしてよいか」を決めておくと安心です。 短い定型文を用意しておく パニック状態になると、言葉を考えること自体が難しくなります。あらかじめ職場で使う定型文を用意しておくと安心です。 「少し混乱しているため、5分ほど休憩します」 「今すぐ返答が難しいため、落ち着いてから確認します」 「指示をメモでいただけると助かります」 「優先順位を確認させてください」 筆者は、判断に迷って混乱しそうなとき、使うようにしている言い回しがあります。それは、「迷っているんですが~」「困っているんですけど~」で話し始めるというものです。先に、自分の状況を端的に伝えることで、相手にも「ああ、迷っているんだな」「困っているんだな」と伝わりやすくなります。また、自分自身も「迷っている」「困っている」と口に出すことで、状況を少し客観視しやすくなります。 職場でのパニックは「起こる前」の対策が重要 職場でのパニック対策では、起こったあとの対応も大切ですが、それ以上に重要なのは、パニックが起こりにくい環境を作ることです。そのためには、パニックが起こった場面を以下のように記録し、そのきっかけになる刺激(トリガー)を知ることが大事です。 いつ起こったか 何をしていたか 直前に何があったか どんな症状が出たか 何をしたら少し楽になったか 周囲にどう対応してもらえるとよかったか すべての項目を埋める必要はありません。たとえば、会議中に急に発言を求められて頭が真っ白になった場合は、「会議中」「発言を求められた」「何も言葉が出てこなかった」といった具合です。 その場合、「人前で突然答えること」がトリガーになっている可能性があります。そこから、会議前に議題を共有してもらう、その場で答えられない場合はあとで回答してよいことにする、といった対策を考えられます。 また、こういったときは気持ちが落ち込み、自分を責めてしまいがちです。それを避けるためには、パニックになった事実は認めつつ、「だったら、今後どうすれば良いか」という対策の材料とする視点があると良いです。 「できなかったことを責める」のではなく、「次の対策を作るための記録」として扱いましょう。そう考えることで、「この経験が次に活きる」と前向きにとらえやすくなります。仕事をよりスムーズに進めるうえでも、自分の気持ちを落ち着けるうえでも、とてもおすすめです。 職場でできる予防策 ASDのある方の場合は、特に以下のポイントがパニックの予防につながります。 見通しを持てること 刺激を減らすこと あいまいさを減らすこと たとえば、次のような工夫があります。 前日に翌日の予定を共有してもらう 急な変更は早めに知らせてもらう 急ぎの依頼は、締切と優先順位をセットで伝えてもらう 依頼内容を口頭だけでなく、チャットやメモでも共有してもらう 耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使う 静かな場所で休憩できるようにする ADHDのある方の場合は、以下のポイントがパニックの予防につながります。 頭の中だけで抱えないこと 優先順位を見える化すること 指示を記録に残すこと たとえば、次のような工夫があります。 やることを一か所に書き出す 仕事で使うもの(書類やファイル等)の置き場を決める 上司に優先順位を確認する 口頭指示をメモやチャットに残す 作業手順をチェックリスト化する 締切が重なる場合は、どちらを先にするか相談する とはいえ、「わざわざ書き出すのが面倒」「今すぐやってしまった方が早い」と感じることもあるでしょう。筆者は、最初から完璧に書き出そうとしなくてもよいと考えています。ただ、その後も続く業務であれば、ひと区切りついたあとに、あらためて今やったことを書き出しておくと、次回以降、より安全・確実に進めやすくなります。 職場に相談・依頼できる合理的配慮 発達障害のある方が職場でパニックを防ぐためには、自分だけで対策するのではなく、職場に合理的配慮を相談・依頼することも大切です。 合理的配慮とは、障害のある人が社会の中にあるバリアによって困らないよう、事業者側が負担が重すぎない範囲でおこなう対応のことです。 内閣府は、令和3年の障害者差別解消法改正により、令和6年4月1日から事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたと説明しています。 なお、雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主は過重な負担にならない範囲で障害者に合理的配慮を提供することが義務付けられています。 たとえば、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の合理的配慮事例では、業務の優先順位や目標を明確にする、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する、といった対応が紹介されています。 職場で依頼できる合理的配慮には、次のようなものがあります。 口頭だけでなく文字でも指示をもらう 締切や優先順位を明確にしてもらう 急な変更は早めに知らせてもらう 静かな席に変更してもらう 耳栓やイヤホンの使用を認めてもらう クールダウンできる場所を決めておく パニックになりそうなときは離席を認めてもらう 復帰後に業務の優先順位を再確認する 合理的配慮を依頼するときは、「配慮してください」だけではなく、具体的に伝えることが大切です。 「急な予定変更があると混乱しやすいため、変更が分かった時点でチャットで知らせていただけると助かります」 「口頭指示だけだと聞き漏れが起こることがあるため、重要な指示はメモやチャットでも共有していただけると、正確に対応しやすくなります」 このように、困りごと、仕事への影響、必要な配慮をセットで伝えると、職場側も対応を検討しやすくなります。 合理的配慮について詳しく知りたい方は以下のコラムもあわせてお読みください。 受診や専門家への相談が必要な場合 職場でのパニックが繰り返し起こる場合や、動悸、息苦しさ、強い恐怖感、外出への不安などがある場合は、医療機関への相談も検討しましょう。 特に、パニックの頻度が増えている、通勤や出社が怖くなっている、職場に行こうとすると体調が悪くなる、発作のような症状が繰り返し起こる、休んでも回復しない、眠れない状態が続いている、といった場合は、早めに相談することをおすすめします。 職場での工夫だけでは十分でないこともあります。主治医、精神科、心療内科、カウンセラー、支援機関などに相談し、自分に合った支援を受けることが大切です。 職場でのパニックは「自分を責める」より「対策を作る」 発達障害のある方が職場でパニックになる背景には、ASDやADHDの特性、職場環境、業務量、人間関係、過去の経験など、さまざまな要因があります。 パニック発作のように、強い不安や身体症状が起こる場合もあります。メルトダウンやフリーズのように、感情や行動のコントロールが難しくなったり、頭が真っ白になって動けなくなったりする場合もあります。 いずれの場合も、「本人の努力不足」と決めつけるのではなく、原因と対策を整理することが大切です。 パニックが起こったら、いったん安全な場所に移動する 落ち着くための定型文を用意しておく 自分のトリガーを記録する 急な予定変更やあいまいな指示への対策を作る 口頭指示を文字に残してもらう 優先順位を上司と確認する 感覚刺激を減らす 必要な合理的配慮を職場に依頼する 医療や支援機関にも相談する パニックは、気合いや根性だけで防ぐものではありません。自分の特性を理解し、自分に合った対処法を持ち、必要に応じて職場に配慮を依頼することで、働きやすさは少しずつ整えていくことができます。 そのためには、自分の特性やトリガーを知る「自己理解」、パニックが起こりそうなときに自分を落ち着ける「自己対処・ストレスコーピング」、そして必要な配慮を職場に伝えることが大切です。 一人で悩まず、サポートを受けるのも選択肢のひとつ とはいえ、自分一人だけで、自己理解を深めたり、自分に合った対策を見つけたりすることにハードルの高さを感じる方も多いと思います。そんなときに頼れる相談先のひとつに「就労移行支援」があります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、一人ひとりの特性理解を深め、発達障害による「働きづらさ」との付き合い方を学ぶプログラムを用意しています。パニックの原因や対策を知るだけでなく、リアルな職場を想定した環境で、パニックの予防策やパニックが起こったときの対処法を実践することができます。さらに、自分に必要な配慮事項を見つけ、就職先にサポートを依頼するためのフォローもおこないます。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が語る】オープン就労とクローズ就労の後悔しない選び方

就活先や勤め先に「障害を開示するか」悩む方に向け、オープン・クローズの両方で働いた経験のある発達障害当事者が「働き方探し」のコツを紹介。

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「発達障害があることを、会社に伝えた方がいいのだろうか」「障害について会社に開示するオープン就労と、開示しないクローズ就労、どっちがいいのだろうか 」 そんな悩みを抱えていませんか。 オープン就労とクローズ就労のどちらを選ぶべきかについて、全員に共通する正解はありません。大切なのは、自分の特性や困りごと、働く環境を整理しながら、「自分らしく働き続けるためには、今の自分にどちらの働き方が合っているのか」を考えることです。 発達障害の診断を受けたあと、就職活動や転職活動、あるいは今の職場で働き続けることを考えたときに、多くの方が悩むのが「障害を開示するかどうか」という問題です。 障害があることを会社に伝えれば、必要な配慮を相談しやすくなるかもしれません。一方で、「理解してもらえなかったらどうしよう」「採用で不利になるのではないか」「職場で特別扱いされるのではないか」と不安になる方もいるでしょう。 反対に、障害を伝えずに働けば、求人や職種の選択肢は広がるかもしれません。しかし、困りごとを一人で抱え込み、体調を崩したり、仕事が続かなくなったりするリスクもあります。 この記事では、オープン就労とクローズ就労の違い、それぞれのメリット・デメリット、当事者の体験談、そして「後悔しない」「自分らしく働くため」の選び方をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 【発達障害のある方向け】オープン就労とクローズ就労、どちらがいい? 結論から言うと、オープン就労とクローズ就労のどちらがよいかは、人によって異なります。まずは、それぞれの特徴を簡単に整理しておきましょう。 オープン就労└メリット:障害特性による困りごとや、必要な配慮を会社に相談しやすい└デメリット:障害者雇用枠の場合、求人や職種の選択肢が限られることがある└向いている人:仕事上の困りごとがあり、職場に配慮を相談しながら働きたい人 クローズ就労└メリット:一般雇用枠で応募できるため、求人や職種の選択肢が広がりやすい└デメリット:障害特性に基づく配慮を受けにくく、困りごとを一人で抱え込みやすい└向いている人:自分なりの対処法があり、仕事内容や職場環境との相性がよい人 ただし、これはあくまで大まかな目安です。オープン就労とクローズ就労の違いや、それぞれのメリット・デメリット、後悔しない選び方については、このあと詳しく解説します。 オープン就労とクローズ就労の違いとは? オープン就労とは、発達障害や精神障害など、障害があることを会社に伝えたうえで働くことです。一方、クローズ就労とは、障害があることを会社に伝えずに働くことです。 ただし、「オープン就労=障害者雇用枠」「クローズ就労=一般雇用枠」と単純に分けられるわけではありません。 「オープン就労=障害者雇用」「クローズ就労=一般雇用」と考えてしまいがちですが、実際には以下の3つのパターンがあります。 障害者雇用枠で働く(オープン就労) 一般雇用枠で障害を非開示にして働く(クローズ就労) 一般雇用枠で障害を開示して働く(オープン就労) このように、オープン就労とクローズ就労は、「障害者雇用枠か一般雇用枠か」だけで決まるものではありません。 1つ目は、障害者雇用枠で働くオープン就労です。障害者雇用枠で応募するためには、基本的に障害者手帳が必要です。応募時点で障害があることを会社に伝えるため、入社前後に必要な配慮を相談しやすいという特徴があります。 2つ目は、一般雇用枠で障害を開示して働くオープン就労です。たとえば、一般雇用枠で働いていた方が、在職中に発達障害の診断を受け、その後も一般雇用枠のまま会社に配慮を相談しながら働くケースがあります。 3つ目は、一般雇用枠で障害を伝えずに働くクローズ就労です。障害特性による困りごとをセルフケアでカバーできている場合や、仕事内容と特性の相性がよい場合には、クローズ就労で安定して働いている方もいます。 筆者も、この3つの働き方を経験しています。筆者がはじめて就職したのは30歳のときで、300名程度のIT企業に障害者雇用枠で入社しました。 入社時には「配慮事項はありますか?」と確認してもらったのですが、当時の筆者は「配慮してもらうなんて申し訳ない」と感じてしまい、「大丈夫です」と答えてしまいました。 今振り返ると、オープン就労であっても、自分に必要な配慮を自分で理解し、言葉にして伝えなければ、支援にはつながりにくいのだと感じます。 その後、2社目では一般雇用のクローズ就労を経験し、3社目では障害者雇用で入社しましたが、筆者のADHD特性と自認している「忘れっぽさ」からか、障害者手帳の更新を失念してしまい、意図せず一般雇用のオープン就労となってしまいました。 合理的配慮とオープン就労の関係 オープン就労を考えるうえで重要なのが、合理的配慮です。 合理的配慮とは、障害のある方が社会生活や職業生活を送るうえで生じるバリアについて、本人から申し出があった場合に、事業者や事業主が過度な負担にならない範囲で必要な調整を行うことです。 雇用分野では、障害者雇用促進法により、事業主には障害者への合理的配慮の提供が義務付けられています。また、その対象は障害者手帳を持っている方に限定されず、発達障害を含む精神障害などにより、長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける方も対象になり得ます。 さらに、障害者差別解消法の改正により、2024年4月1日からは、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。 そのため、障害者雇用枠だけでなく、一般雇用枠で働いている場合でも、医師の診断書などをもとに、仕事上の困りごとや必要な配慮を会社に相談できるケースがあります。 ただし、合理的配慮は「希望すれば何でも受け入れてもらえる」というものではありません。本人の困りごと、業務内容、会社側の負担、職場全体への影響などを踏まえて、本人と会社が話し合いながら調整していくものです。 【発達障害】 オープン就労のメリット オープン就労の大きなメリットは、仕事上の困りごとを会社に相談しやすくなることです。 発達障害のある方の場合、働く場面で以下のような困りごとが起こることがあります。 口頭だけで指示を受けると、内容を忘れてしまう 複数の仕事を同時に頼まれると、何から手をつければよいか分からなくなる 急な予定変更があると、気持ちや段取りの切り替えが難しい 雑音や人の話し声が多い環境では、集中しにくい 曖昧な指示を、自分で判断して進めることが苦手 オープン就労では、こうした困りごとに対して、たとえば以下のような配慮を相談しやすくなります。 指示は口頭だけでなく、チャットやメールなど文章でも残してもらう 複数の依頼がある場合は、優先順位を確認する時間を設けてもらう 予定変更がある場合は、できるだけ早めに共有してもらう 集中しやすい席や作業場所について相談する 定期的に進捗確認や相談の時間を設けてもらう また、障害を隠し続ける心理的な負担が軽くなるというのも大きなメリットです。クローズ就労では、困っていても「自分で何とかしなければ」と抱え込みがちです。しかし、オープン就労では、少なくとも会社の一部には障害特性を伝えたうえで働くことになります。その安心感が、仕事を続けるうえで大きな支えになる場合があります。 さらに、就労移行支援事業所、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、医療機関などの支援機関と連携しやすくなる点もメリットです。職場で困りごとが起きたとき、本人だけで会社に説明するのが難しい場合でも、支援者と一緒に状況を整理できることがあります。 【発達障害】オープン就労のデメリット 一方で、オープン就労にも注意点があります。 まず、障害者雇用枠で働く場合、一般雇用枠と比べて求人や職種の選択肢が限られることがあります。地域や時期、本人の経験、希望条件によっては、希望に合う求人がなかなか見つからないこともあるでしょう。 また、障害を伝えれば必ず理解されるわけではありません。会社によって、障害者雇用や発達障害への理解、支援体制には差があります。人事担当者は理解していても、現場の上司や同僚がどのように関わればよいか分からないこともあります。 さらに、オープン就労では「配慮してもらっているのに成果を出せない」という苦しさが生まれることもあります。こちらの記事では、このような体験が紹介されています。 私が発達障害を疑って病院を受診し、診断を受けたのは、転職して4か月目のことでした。 転職前の会社はマニュアルが整備されており、スケジュールや手順がキッチリと決まっている仕事が多かったため、苦手を感じつつもどうにか仕事になっていました。 ところが転職後の会社では、段取りをすべて自分で考えて仕事を進めなければならず、仕事がまったく回らなくなってしまったのです。 筆者が経験したオープン就労のデメリットとしては、「会社の規模によっては、開示されている範囲が明確にならないことがある」ということがありました。 筆者の職種は総務であり、会社のほぼ全員とのやり取りが発生します。全社に共有される新入社員の情報は、せいぜい所属部署と名前程度のもので、筆者が発達障害であることを知っていた社員は、自部署とその関係する社員数名程度でした。そうなると、自分としては障害を開示して働いているつもりでも 、相手はそれを知らない、つまり配慮を受けることが難しい状況でした。 もちろん、適正なフローで全社員に共有される会社もあるとは思いますが、オープン就労で働いているからと言って、どの職場でも合理的配慮が得られるとは限らない、ということを実感しました。 オープン就労は、魔法の解決策ではありません。大切なのは、会社に配慮を求めることと同時に、自分自身も特性への対策を学び、働き方を調整していくことです。 【発達障害】クローズ就労のメリット クローズ就労は、一般雇用枠の求人に応募できることから、以下のようなメリットがあります。 経験やスキルを活かせる仕事を選びやすい 給与やキャリアアップの選択肢が広がりやすい 仕事内容と特性の相性がよければ、力を発揮しやすい 自分なりの対処法があれば、安定して働きやすい また、クローズ就労では、障害の有無ではなく、仕事の成果で評価されやすいという面もあります。 職業柄、仕事の成果は「記事」という成果物で測られることになります。お客様にご満足いただける記事を書けていれば、書いているのが障害者かどうかはまったく関係がありません。 人よりも人付き合いが苦手だったり忘れ物が多かったりしても、それで成果に悪影響がなければ問題にならないのです。 筆者も、一般雇用枠のクローズ就労で入社した会社で、細かな事務処理には苦手さを感じていました。一方で、大勢の前で話すことや、内容を整理して伝えることには比較的強みがありました。 自部署20名規模のコンプライアンス研修を任されたことをきっかけに、その後、本社の部長クラス向けの説明会のファシリテーターや、全国の店長・支店長クラスが集まる研修会の講師を務める機会もいただけました。 この経験から、クローズ就労であっても、自分の苦手が出にくく、強みが活きる業務に出会えれば、評価につながる場合があると感じています。 【発達障害】クローズ就労のデメリット 一方で、クローズ就労では、障害特性に基づく配慮を受けにくいという大きなデメリットがあります。 会社に障害を伝えていない以上、職場は本人の困りごとを障害特性として理解することが難しくなります。そのため、口頭指示だけでは忘れやすい、曖昧な依頼が苦手、急な変更に弱い、感覚過敏があるといった困りごとがあっても、単に「注意不足」「理解力が低い」「協調性がない」などと言われることがあります。 また、困りごとを一人で抱え込みやすい点にも注意が必要です。「配慮を受けられないのだから、自分で何とかしなければ」と考え続けると、ミスが増えても相談できない、体調が悪くなっても言い出せない、仕事が回らなくなっても助けを求められない、という状態になりかねません。 クローズ就労を選んだからといって、「誰にも相談しない」と抱え込まないことが大切です。会社にはクローズ(伝えない)だったとしても、医師、カウンセラー、支援機関、家族など、職場の外に相談先を持っておくことは大事です。 オープン就労とクローズ就労の選び方 オープン就労とクローズ就労のどちらを選べばよいのか。結論から言えば、万人に共通する正解はありません。 大切なのは、「後悔しない」「自分らしく働くための」判断基準を持つことです。 まず考えたいのは、仕事上の困りごとが自己対処で対応できる範囲かどうかです。メモを取る、チェックリストを使う、カレンダーで予定を管理する、上司に優先順位を確認するなど、自分の工夫である程度対応できている場合は、クローズ就労を選択しても働ける可能性があります。 一方で、どれだけ工夫してもミスが続く、体調を崩す、職場との関係が悪化する、仕事が続かないといった状態であれば、オープン就労を検討した方がよいかもしれません。 配慮がなければ働き続けることが難しいかどうかも重要です。勤務時間の調整、業務量の調整、指示の出し方の変更、感覚過敏への対応、定期面談などがなければ働き続けることが難しい場合、障害を開示して相談する必要性は高くなります。 また、障害を隠すことによるストレスが大きいかどうかも判断材料になります。「本当は困っているのに言えない」「できない理由を説明できない」「いつかばれるのではないかと不安」という状態が続くと、仕事そのもの以上に精神的な負担が大きくなることがあります。 筆者は、就労後ではなく、入社直前にばれるのではないかと不安を覚えたときがありました。最終面接、面接官は役員と部長でした。ひととおりの質疑応答を問題なくクリアしていき、雰囲気も良く進みました。締めくくりに、笑顔で部長がこう切り出しました。 「それでは最後に、心身ともに健康ですか?」 通常なら、なんのひっかかりもなく「はい」と答えて面接は終わりです。念のための確認でしかない、いわばおまけのような質問です。しかし、「はたして自分は心が健康なのか?」と一瞬ひるんでしまいました。「いいえ......実は私ADHDという特性がありまして」と伝えるべきなのではないかと、ものすごい速さで頭の中を思考が駆け巡りました。 その間、おそらく実際には1秒にも満たなかったと思います。まるでスローモーションのように感じられたその時間の後、一呼吸おいて「...はい」と答えて、若干のうしろめたさを抱えながら入社したことを今でも覚えています。 そして、オープンかクローズかを考える前に、「そもそもその仕事が自分に合っているか」を確認することも大切です。どれだけ配慮があっても、仕事内容そのものが特性と大きく合っていなければ、働き続けることは難しくなります。反対に、クローズ就労であっても、自分の強みが活かせる仕事であれば、安定して働けることもあります。 筆者自身も、前述したとおり、細かな事務処理は苦手な一方、人前で話す業務では評価された経験があります。だからこそ、オープンかクローズかだけでなく、「自分の強みが活きる仕事かどうか」を考えることも大切です。 就職に悩んだときの相談先 オープン就労かクローズ就労かで悩んだときは、一人で判断しないことが大切です。相談先には、いくつかの選択肢があります。 ハローワークには、障害のある方のための専門窓口があります。障害者求人の紹介だけでなく、就職活動の相談や職場定着に関する支援を受けられる場合があります。また、精神・発達障害者雇用サポーターが配置されているハローワークでは、精神障害や発達障害のある方に対して、障害特性を踏まえた専門的な就職支援を行っています。 障害者就業・生活支援センター、いわゆる「なかぽつ」では、就業面と生活面の両方から相談できます。仕事の悩みだけでなく、生活リズム、体調管理、職場との関係など、働き続けるために必要な生活面の相談もできます。 障害者専門の就職エージェントを利用する方法もあります。求人紹介だけでなく、履歴書や職務経歴書の作成、面接対策、配慮事項の整理などをサポートしてもらえる場合があります。 そして、就労移行支援事業所も重要な相談先の一つです。就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指すために、就労に必要な知識や能力を身につける訓練、就職活動、職場定着などを支援する障害福祉サービスです。 就労移行支援事業所では、自己理解、職業訓練、生活リズムの安定、応募書類の作成、面接練習、職場実習、就職後の定着支援など、就職に向けた幅広いサポートを受けられます。 オープン就労にするか、クローズ就労にするかを考えるうえでも、自分の特性や必要な配慮を整理する場として活用できます。 大切なのは「どちらが正しいか」ではなく「自分らしく働き続けられるか」 オープン就労とクローズ就労には、それぞれメリットとデメリットがあります。 オープン就労は、必要な配慮を相談しやすく、支援機関とも連携しやすい働き方です。一方で、求人や職種が限られることや、障害を伝えれば必ず理解されるわけではないという難しさもあります。 クローズ就労は、求人やキャリアの選択肢が広がりやすく、成果で評価されやすい働き方です。一方で、必要な配慮を受けにくく、困りごとを一人で抱え込みやすいというリスクがあります。 どちらが正解ということではありません。 大切なのは、自分の特性を理解し、困りごとの程度を把握し、必要な支援や配慮を整理したうえで、「自分らしく働き続けるためには、今どの選択が現実的なのか」を考えることです。 発達障害のある方にとって、就職や転職は、単に仕事を見つけるだけのものではありません。自分の特性を知り、自分に合う環境を探し、働き続けるための工夫を身につけていくプロセスでもあります。 一人で悩み続ける必要はありません。迷ったときは、支援機関に相談しながら、自分に合った働き方を一緒に考えていきましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
大人の発達障害|燃え尽き症候群(バーンアウト)の原因と対処法

ADHD・ASDがあると「燃え尽き症候群」になりやすい?その原因と、過集中・過剰適応のリスク、そして無理なく働き続けるための対処法を紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「特性上苦手な業務を、どうにか気合でやりすごした」「締め切り直前まで仕事が手につかず、前日徹夜をして乗り切った」 周囲に迷惑をかけないように頑張り続けた結果、ある日突然、糸が切れたように動けなくなった…そんな経験はありませんか。 ADHDやASDなどの発達障害がある方の中には、特性による仕事上の困りごとを抱えながらも、周囲に合わせようと無理を重ねたり、締め切り直前に過集中でなんとか乗り切ったりしてきた方が少なくありません。 一見すると、「頑張って乗り切っている」「なんとか仕事ができている」ように見えるかもしれません。しかし、その状態が長く続くと、心身のエネルギーを使い果たし、燃え尽き症候群、いわゆるバーンアウトに近い状態になってしまうことがあります。 この記事では、発達障害のある方が燃え尽き症候群になりやすい原因と、過集中・過剰適応のリスク、そして無理なく働き続けるための対処法をご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 燃え尽き症候群(バーンアウト)とは 「燃え尽き症候群のサイン」チェックリスト 燃え尽き症候群は、ある日突然起こるとは限りません。少しずつ心や体にサインが表れ、気が付いたときには「もう頑張れない」と感じるほど疲れ切っていることもあります。  朝どうしても起き上がれない 休日に一日中寝ていても疲れがとれない 趣味や好きなことに取り組む気力がない いつもなら数分で終わる業務に、何倍も時間がかかるようになった 人付き合いが過剰なまでに億劫に感じる 指摘や注意を受けると、過度に落ち込んでしまう 特性によるミス(ケアレスミス・聞き洩らし)が増えてきた いつもよりも特性が強く出ている(些細なことでパニックになる・感覚過敏が以前よりも辛い等) このようなサインが続いている場合は、無理を重ねすぎていないか、一度立ち止まって確認してみることが大切です。必要に応じて、医療機関や行政機関の窓口、(お勤め中の場合には)産業医などに相談することも検討しましょう。 燃え尽き症候群(バーンアウト)は、単なる疲労ではない 燃え尽き症候群とは、仕事や活動に熱心に取り組み続けた結果、強いストレスや過度な努力によって、心身のエネルギーを使い果たしてしまった状態を指します。 厚生労働省の「こころの耳」では、燃え尽き症候群を「活発に仕事をしていた人が、何らかのきっかけで燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状」と説明しています。またWHOもICD-11において、「うまく管理されなかった慢性的な職場ストレスの結果」とし、エネルギーの枯渇、仕事から心理的に距離を置く感覚、職業上の有効性の低下を特徴として挙げています。 燃え尽き症候群は単なる「疲れ」ではありません。朝起きるのがつらい、以前はできていた仕事に手がつかない、人と関わるのがしんどい、仕事への達成感が持てなくなる。そうした状態が続く場合は注意が必要です。 また、燃え尽き症候群は、「弱い人がなるもの」ではありません。むしろ、責任感が強く、周囲の期待に応えようと無理を重ねてきた人ほど陥りやすい状態でもあります。 筆者も、最初に就職した会社で、燃え尽きに近い状態になり、休職を経験しました。当時は、強い疲れを「頑張っている証拠」だと思い込み、むしろ充実していると感じていました。 しかし次第に、以前なら15分ほどで終わっていた名刺増刷のような定型業務にも、1時間以上かかるようになりました。「なんて自分はダメなんだろう」と自分を責め、それを取り返そうとしてさらに無理を重ねた結果、休職に至りました。 燃え尽きの前兆は、このような日常的な変化に表れることがあります。 発達障害がある方の場合、特性による困りごとを抱えたまま無理を続けることで、心身に大きな負担がかかることがあります。苦手な作業を一人で抱え込む・周囲に合わせようとして過剰に頑張る・ミスを防ごうとして常に緊張している…こうした状態が続くと、燃え尽き症候群だけでなく、うつ病や適応障害などの「二次障害」につながることもあります。 二次障害とは、発達障害の特性そのものではなく、特性による困りごとや強いストレスなどが重なることで、あとから生じる心身の不調を指します。だからこそ、早い段階で困りごとに気づき、必要に応じて相談や支援につながることが大切です。 大人の発達障害(ADHD・ASD)のある方が「燃え尽き症候群」になりやすい理由 ADHDやASDなどの発達障害がある方は、特性による困りごとをカバーしようとして、人一倍頑張ったり、周囲に合わせようとしたりすることがあります。その無理が積み重なると、心身のエネルギーを使い果たし、燃え尽き症候群につながることがあります。 ADHDの場合は、「やらなければいけない」と分かっていても締め切りが近づくまで着手できず、報酬や興味、直前の焦りや緊急性によってようやく集中できることがあります。一方、ASDの場合は、こだわりの強さ、予定変更の苦手さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの負荷などによって、仕事の中で強い疲れを感じることがあります。こうした負荷が長期的に続き、強い消耗状態に陥ることは「自閉的バーンアウト」として研究・議論されています。 つまり、ADHDの場合は「着手の難しさ」や「締め切り直前の過集中」、ASDの場合は「こだわり」「予定変更への負荷」「感覚的な疲れ」などが、燃え尽き症候群につながる要因になることがあるのです。 ここからは、発達障害のある方が仕事の中で無理を重ねやすい代表的な傾向として、「過集中」「過剰適応」「こだわり・完璧主義」「自己関連付け」の4つを見ていきます。 過集中:「エネルギーの前借り」で走り続ける ADHDのある方は、締め切り直前の焦りや緊張感によって、一気に集中できることがあります。その結果、普段はなかなか進まなかった仕事を短時間で仕上げられることもあります。 しかし、毎回この方法に頼ると、心身には大きな負荷がかかります。筆者は、こうした締め切り直前の過集中を「エネルギーの前借り」と考えています。短期的には仕事を終えられても、そのたびに翌日以降の体力や気力を使っていると、いずれ返済できない日が来るからです。 筆者も、この「エネルギーの前借り」を多用していました。会社員時代、毎月はじめに、同じビルに入っているグループ会社各社へ請求書を作成する仕事がありました。前任の先輩社員が、ある程度自動で計算できるExcelを残してくれていたものの、請求総額が確定してから各社分を計算し、請求書を作成して渡すまでの時間は限られていました。 毎月第一営業日の夕方になると、「今日中に出さなければ」と焦りながら、一気に集中して作業を進める。結果的には何とか間に合うのですが、終わったあとはぐったりしていました。当時は「短時間でやりきった」と思っていましたが、今振り返ると、まさに翌日以降の体力や気力を前借りするような働き方だったと思います。 「短期集中型」は、うまくいけば成果につながります。しかし、こうした働き方が続くと、心身ともに摩耗してしまいます。 過剰適応:困っていないように見せ続けてしまう 過剰適応とは、自分の本来の状態や限界を押し殺して、周囲の期待や職場のルールに過度に合わせ続けることです。 たとえば、本当は困っているのに「大丈夫です」と言う、苦手な作業を苦手と言えない、ミスを隠すために人一倍確認する、家に持ち帰って仕事をする、配慮を求めることに罪悪感を持つ、といった状態です。 こうした過剰適応は、ある意味ではサバイバルの方法です。しかし、続けていると自分の疲れや困りごとに気づきにくくなり、ある日突然、糸が切れたように動けなくなることがあります。 筆者もまさにこの典型でした。総務の庶務を担当していた頃、毎日のルーチン業務にも時間がかかるようになり 、先輩社員から「最近、社内の評判がすごく悪いよ。どうしたの?」と言われるようになりました。さらに、業務中の電話対応でうまく切り上げられず、同僚から「早く電話を切って」とジェスチャーされた瞬間、「もう駄目だ」と緊張の糸が切れました。その後、上司に休職の意向を伝えました。 こだわり・完璧主義:終われないことで消耗してしまう ASD特性として、こだわりの強さや予定変更への苦手さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの負荷などがある場合、仕事の中で強く消耗することがあります。 たとえば、完成度にこだわりすぎて終われない、手順を変えられない、曖昧な指示に不安が強くなる、予定変更で大きく消耗する、といった状態です。 完璧に仕上げようとすること自体は悪いことではありません。しかし、すべての仕事に100点を目指していると、時間もエネルギーも足りなくなります。 「100点を目指しているつもりはない」と感じる方もいるかもしれません。完璧主義は、「良いものを作りたい」という思いだけでなく、「悪く思われたくない」「ネガティブな指摘を受けたくない」という不安から生じることもあります。筆者は、とにかく「怒られたくない」「注意されたくない」という一心で、到達することのない「完璧」を目指して毎日終電ギリギリまで職場に残るなど、体力や精神力を消耗してしまった経験があります。 この場合、仕事量を減らすだけでなく、仕事の進め方、指示の受け方、完成度の基準、相談のタイミングを見直すことが大切です。 自己関連付け:「自分がやらなければ」と引き受けすぎてしまう ADHDやASDのある方の中には、周囲の状況や相手の表情を強く受け取り、「自分がやらなければ」と思い込みやすい方もいます。誰かが困っていそうに見えると自分の仕事でなくても引き受ける、少し注意されただけで「自分が全部悪い」と感じる、といった状態です。 気配りや責任感は大切な力です。しかし、引き受け続けると、自分の限界を超えていることに気づきにくくなり、過剰な負荷を背負い続けることがあります。 うつ状態に近づくと、特性による困難が強く出ることもある こうした無理が続き、燃え尽き症候群やうつ状態に近づくと、ADHDやASDの特性による困りごとが、より強く出ることがあります。 たとえば、もともと不注意が出やすい方は、疲労や睡眠不足によってさらにミスが増えることがあります。もともと着手が苦手な方は、気力の低下によってますます仕事に取りかかれなくなることがあります。 このとき、「自分は怠けている」「またダメになった」と責めてしまう方もいるかもしれません。しかし、燃え尽きに近い状態では、脳や体のエネルギーそのものが落ちています。普段できていたことができなくなるのは、気合いが足りないからではありません。 大切なのは、「無理をすれば働ける」ではなく、「無理をしすぎなくても働き続けられる」状態を目指すことです。 そのために次の章では、燃え尽き症候群を防ぐためにできる具体的な対処法を紹介します。 発達障害による燃え尽き症候群を防ぐ!無理なく働くため対処法 ここからは、発達障害のある方が、燃え尽き症候群を防ぐためにできることを紹介します。特性や現れる困りごとは一人ひとり異なるため、自分に合ったものから取り組んでみましょう。 大前提として大切なのは、「もっと頑張る」ではなく、「頑張りすぎなくても回る仕組みを作る」ことです。燃え尽きやすい方の多くは、すでに十分頑張っています。必要なのは、気合いではなく、負荷の調整です。 ① 過集中は「終わり方」を決めておく 過集中は、完全になくそうとしても難しいものです。大切なのは、過集中に入ったときの「終わり方」をあらかじめ決めておくことです。 たとえば、終了時刻を決める、アラームを複数回セットする、作業が終わる条件を決めておく、といった方法があります。特におすすめなのは、終了条件を具体的にすることです。 時間で区切って終わりにすることが苦手な場合には、タスクが完了したときの状態(ゴール)を明確にしておくこともおすすめです。たとえば「資料の確認」では終わりが曖昧ですが、「資料の数字の間違いを修正する」なら、どこまでやれば終わりかが分かります。筆者も、「時間が来たから終わり」と強制終了するより、「ここまでやった」と一段落して終える方が、無理なく切り替えやすいと感じています。 ② タスクを「見えるもの」に変える ADHDのある方にとって、頭の中だけでタスクを管理するのは大きな負荷になります。そこで大切なのが、タスクを書き出すことです。 ただし、おおざっぱに「資料作成」とするのではなく、タスクを細分化し「目的を書き出す」「締め切りの日付を書き添える」「構成案を書く」「最初の項目を書く」「上司に送る」など、小さな行動に分解することがポイントです。 タスクを書き出すことは、これからやらなければいけないことを目の前に置く行為となります。その意味では、抵抗感を覚えるかもしれません。しかし、それは同時にタスクを終わらせる道しるべでもあります。小さな行動まで書き出されたタスクは、自分がつまずかないように助けてくれる心強い同伴者となってくれることでしょう。 ③ 休息も予定に入れる 燃え尽きやすい方は、仕事の予定は入れていても、休む予定を入れていないことがあります。しかし、休息は「余った時間に取るもの」ではなく、働き続けるために必要な予定です。 たとえば、夜21時以降は仕事をしない、外出の翌日は軽めの仕事にする、会議が続く日は作業量を減らす、締め切り翌日は回復日として扱う、といったルールを作ります。 これは甘えではありません。長期的に働くためのメンテナンスです。 ④ 困りごとを言語化する 過剰適応をしていると、自分が何に困っているのか分からなくなることがあります。そのため、まずは困りごとを具体的に書き出してみましょう。 たとえば、指示が口頭だけだと忘れてしまう、締め切りが曖昧だと着手できない、優先順位を自分で決めるのが苦手、急な予定変更があると混乱する、完璧にやろうとして時間がかかりすぎる、などです。 困りごとが言語化できると、指示はチャットやメールでもらう、締め切りを日付で確認する、優先順位を上司に確認する、完成度の基準を事前に確認する、といった対策につなげやすくなります。 ⑤ 完璧主義には「合格ライン」を決める ASD特性や不安の強さがある方は、仕事の完成度にこだわりすぎてしまうことがあります。しかし、すべての仕事において100点満点を目指していると、時間もエネルギーも足りなくなります。 そこで、「この仕事は何点で出せばよいか」を確認しましょう。社内確認用なら70点、まずはたたき台なら60点など、仕事ごとに合格ラインを変えることが大切です。 完璧に仕上げる前に見せることで、手戻りを減らせることもあります。一人で抱え込んで100点を目指すより、途中で確認して方向性を合わせたほうが、結果的に負担は小さくなります。 一人で抱え込まず、無理のない働き方を探す もし、すでに燃え尽きてしまったように感じている場合は、まず回復を優先してください。燃え尽きている状態でさらに自分を追い込むと、回復が遅れてしまうことがあります。睡眠、食事、休息を整え、必要に応じて医療機関や相談窓口につながることが大切です。 回復してきたら、「なぜ燃え尽きたのか」を自分を責めるためではなく、再発を防ぐために振り返ってみましょう。どの時期から無理が始まっていたのか、何を我慢していたのか、どの場面で過集中や過剰適応が起きていたのかを整理することで、自分に合った働き方を考えやすくなります。 とはいえ、一人で特性を整理し、働き方を見直すのは簡単ではありません。だからこそ、支援機関や専門家に相談することも選択肢の一つです。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
人の話が理解できない…発達障害の「脳の特性」が原因かも

ADHD/ASD/APDの特性があり「聞こえているのに、内容を理解できない」という悩みを抱える方へ。今すぐできる具体的な対処法を紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「口頭で指示されたことが、頭に全然入ってこない」「複数のことを一度に言われると、混乱してしまいがち」「話をちゃんと聞いていないと叱られることがある」「何度も同じことを聞いてしまい、嫌な顔をされてしまった」 このような「話を理解すること」への苦手意識やお悩みを抱えていませんか。 「自分は理解力がないのだろうか」「仕事ができないのかもしれない」と、自己嫌悪に陥ってしまう方は少なくありません。しかし、それは努力不足や仕事スキル不足が原因ではなく、発達障害(神経発達症)による脳機能の特性が関係している可能性があります。 この記事では、発達障害のある大人が職場で「人の話が理解できない」と感じる原因と対処法を、筆者の体験も交えてご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 「人の話が理解できない」あるあるチェック まずは、発達障害のある方が職場で経験しやすい「理解困難」の場面をチェックしてみましょう。 特性は一人ひとり異なるため、人によってみられる「苦手」もさまざまですが、よくあるお悩みを10個あげます。 ▼ 職場での「理解困難」チェックリスト 口頭で指示されたことが、頭に入ってこない(聞いているはずなのに残らない) 複数のことを同時に指示されると、混乱して何から手をつければいいかわからなくなる 指示の意図を取り違えてしまい、まったく違う方向で仕事を進めてしまう 「あれ、これ、それ」といった代名詞が何を指しているのかわからなくなる 会議中に話を聞いているつもりなのに、途中から内容についていけなくなる 同僚や上司の言葉の「行間」や「ニュアンス」が読み取れない 何度も同じことを聞き直してしまい、叱られたり呆れられたりする 音は聞こえているのに、言葉として意味が入ってこない感覚がある 電話での会話が特に苦手で、内容を正確に把握できないことが多い 発達障害の特性がある方で、いくつか当てはまった場合には、それが「性格の問題」でも「怠慢」でもなく、脳機能の特性によるものである可能性があります。 「何度言ってもわからないのか」と叱責され、自分を責めてきた方もいるのではないでしょうか。しかし、理解するための「回路」が一般的な人と異なるだけで、あなたに問題があるわけではありません。その特性を正しく理解し、自分に合った方法を取ることが、何よりの解決策になります。 「人の話が理解できない」原因となりやすい発達障害の特性 発達障害には、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、SLD(限局性学習症)などがありますが、同じ診断名であっても、「人の話が理解できない」原因は一人ひとり異なります。 診断名だけに縛られず、「自分はどの特性が原因で理解に困難を抱えているのか」を把握することが、最初の大切な一歩です。ここでは、主な原因となりやすい特性を4つご紹介します。 ① 聴覚情報の処理が苦手 「聴覚情報」とはその名の通り「耳から入る音を通じて得る情報」を指します。 人によって、口頭など耳から入る情報を処理しやすい人もいれば、文字や図などの視覚的な情報のほうが理解しやすい人もいます。発達障害のある方の場合には「聴覚情報の処理」に困難がある方が多いと言われています。 このタイプの方は、耳から入った情報を脳内で処理・記憶する速度が、話のスピードに追いつかないことがあります。口頭で指示されると情報が頭に入らない、会話の内容がすぐ抜けてしまうといった困りごとが起きやすいです。 ② ワーキングメモリの弱さ ワーキングメモリとは、情報を一時的に頭の中に保持しながら処理する能力のことです。いわば「脳内のメモ帳」です。 ADHDのある方でみられることが多い特性の一つで、ワーキングメモリが弱いと、複数の指示を同時に受け取ったときに最初のほうを忘れてしまったり、話を聞きながら理解する処理が追いつかなかったりします。 「3つお願いしたいことがあって…」と言われた途端、3つ目を聞いた頃には1つ目が飛んでしまう、という経験に覚えがある方も多いのではないでしょうか。 聴覚情報の処理の「口頭指示の苦手」とは原因が異なり、「頭に情報が入ってくるが、記憶として留めておくことができない」という状況が起こります。 ③ 曖昧な表現の理解の難しさ ASDのある方に多い特性として、「言葉の字義通りの意味しか受け取れず、文脈やニュアンスが読み取りにくい」というものがあります。 「適当にやっておいて」「いい感じにまとめて」のような曖昧な指示は、どう解釈すればいいのかわからず混乱します。また、「さっきの件」「例のアレ」といった指示語も、何を指しているのかが理解できないことがあります。 「なぜ、こんな当たり前のことが分からないのか」と怒られる経験を繰り返すうちに、自己肯定感が著しく低下してしまうケースも多く見られます。 ④ APD(聴覚情報処理障害)や聞き取り困難の可能性 APDは「音は聞こえている(聴力に問題はない)のに、言葉が理解できない」障害で、発達障害(とくにADHD・ASD)と併存しやすいと言われています。「聞こえにくい・聞き取れない」という症状がみられるため、その結果「人の話が理解できない」と見られてしまうケースがあります。とくに、騒がしい環境、複数人での会話、電話、会議などで困りやすいのが特徴です。 なお、APDと発達障害の関連を示す研究(Riccio CA, Hynd GW, Cohen MJ, Hall J, Molt L. Comorbidity of central auditory processing disorder and attention-deficit hyperactivity disorder. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 1994)はありますが、よく引用される発達障害とAPDの併存率「50%」という数字は、小規模な子ども対象研究に由来するもので、そのまま一般化することはできません。 実際には、注意、ワーキングメモリ、言語理解など、複数の要因が重なって「聞き取りづらさ」として現れることも多く、背景を個別に見極めることが大切です。 こうした特性や困りごとを自分でもうまく説明できないまま、職場で無理を重ねてしまう人は少なくありません。 ただし、「人の話が理解しにくい」という現象は、発達障害だけが原因とは限りません。以下のような要因による「一時的な認知機能の低下」が影響している場合もあります。 過度なストレス・心理的負荷 慢性的な睡眠不足 うつ病や適応障害などのメンタル疾患 疲れが溜まっている時や環境が激変した時などは、誰しも脳の処理能力が落ちるものです。「自分はダメだ」と責める前に、今の生活環境や体調を振り返ってみることも大切です。 発達障害のある大人が陥りがちな「職場での悪循環」 特性による困難を抱えながらも、多くの方が職場でとってしまう行動があります。それが「無理をして特性を隠す」ことです。 「わかりました」と言ってしまう問題 「また聞き返したら怒られる」「仕事ができないと思われたくない」といった不安から、本当は理解できていないまま「わかりました」と言ってしまうことがあります。 指示内容がよく分からないときでも、質問をしたら相手に「そんなことも理解できないのか」と思われそうで、「知ったかぶり」を筆者はよくしていました。 理解できていない状態で業務を進めると、成果物が的外れになり、やり直しが増え、さらに叱責される…という悪循環に入ってしまいます。それは分かっているのですが、どうしても「わかりました」と反射的に言ってしまいがちでした。 「無理に隠す」ことの二次障害リスク 特性を隠すために毎日多大なエネルギーを使い続けると、慢性的な疲労・不眠・抑うつなどの二次障害につながるリスクがあります。 「みんなと同じようにできなければいけない」という思い込みが強い方ほど、SOSを出せずに限界まで頑張ってしまいがちです。しかし、無理に隠し続けることは長期的に見て、自分の健康にとっても、仕事の継続にとっても得策ではありません。 実際、ADHDのある筆者の知人が、クローズ(障害を開示しない)で働き続けた結果、体調を崩して休職をしてしまったことがありました。 大切なのは、自分の特性を正しく理解したうえで、自分に合ったやり方を「仕組み」として取り入れることです。その知人は、復職して自分に合ったタスク管理の「仕組み」を構築することで、継続的に働けるようになりました。 こうした「一時的な不調」の背景には、過剰適応や二次障害といった状態が隠れていることも少なくありません。以下の記事では、その仕組みや注意すべきサインが分かりやすくまとめられていますので、あわせてご覧ください。 無理をして「普通」に見せようと擬態し、エネルギーを使い果たしてしまう「過剰適応」について紹介しています。 職場での「話が理解できない」を防ぐ対処法 ここからは、特性ごとに有効な対処法を具体的にご紹介します。「全部試す必要はない」というのが重要なポイントです。まず自分の困りごとの原因に合いそうなものを1〜2つ試してみるところから始めましょう。 聴覚情報の処理が苦手・ワーキングメモリが弱い方向け メモを「見える化」して会話の記録を残す 聴覚情報が苦手な方にとって、最も基本的かつ効果的な方法は「その場でメモを取ること」です。ただし、話のスピードに手書きが追いつかない場合もあります。 ボイスレコーダー(スマートフォンの録音アプリ含む)を活用し、後で聞き返せる状態にする 上司に了承を得た上で、指示内容をその場でスマートフォンにメモする 手書きメモをその日のうちに、デジタルに打ち込み直す(情報を一元管理することが目的。Google Keep、Notionなどのアプリが便利) ADHDのある筆者の知人の中に、とにかく仕事のメモを書くための手帳を肌身離さず持っている方がいました。 あるとき、「なぜ自分がその習慣を続けているのか」に気づきました。それは、「自分はワーキングメモリが弱い。だから、メモ帳は命綱だと思って肌身離さず持ち歩き、すぐにメモを取れるようにしている」というものでした。それが分かった後、ワーキングメモリが弱いという特徴に負い目を感じなくなったそうです。 「指示確認シート」を自分で作る 筆者がおすすめしているのが、自分専用の「指示確認シート」を作ることです。指示を受けるときに使う、自分なりの「質問テンプレート」を事前に用意しておくのです。 ▼ 指示確認シートの例 この仕事のゴール(完成形)はどんな状態ですか? 期限はいつですか? わからないことが出たとき、誰に聞けばいいですか? このような質問を整理して手元に置いておくことで、「何を確認すればいいか」がわからない状態を防ぐことができます。最初は「こんなことを聞いたら失礼かな」と感じるかもしれませんが、むしろ「確認してから動く人」は周囲から信頼されます。 筆者は「知ったかぶり」をよくしていたと前述しました。その対策としてこの「仕事の完成形」「期限」「誰に聞けば良いか」だけは分かるまで聞くようにしていました。それが曖昧なまま話が終わりそうなとき、つい分かったふりをしそうになります。 そういう場面では、「今ここで確認したほうが、あとで必ずラクになる」と自分に言い聞かせて、勇気を出して確認していました。 どうしても「習慣化」が難しいときは… こうした対策を知っても、「やり方はわかったけれど、それを続けるのが難しいんだよな…」と感じる方も多いかもしれません。実際、特性がある場合、新しい行動を「習慣化」すること自体が非常に高いハードルになります。 そこで、無理なく続けるための「習慣化のコツ」を2つお伝えします。 1. 新しく始めず「今やっていること」に乗せる「メモ帳を取り出して書く」という新しい習慣を作ろうとすると、脳に大きな負担がかかります。そうではなく、今すでに無意識にやっている行動に組み込んでしまいましょう。 例: 毎日必ずLINEを開くなら、自分一人の「マイグループ」を作り、メモ帳代わりにする。 例: PC作業がメインなら、モニターの縁(必ず目がいく場所)に付箋を貼っておく。 「新しいツール」を使いこなそうとせず、今ある環境をそのまま使うのがコツです。 2. メモを取る時間を「堂々と」確保する「メモを取っている間に相手を待たせてしまう」という焦りから、メモを断念してしまうことはありませんか? 実は「待たせてはいけない」というのは思い込みであることが多く、相手はあなたが正確に仕事をしようとする姿を、意外と好意的に待ってくれるものです。 おすすめは、あえて相手の言葉を意図的にゆっくり復唱しながら書くことです。 「(書きながら)……はい、〇〇を......××までに......ですね...」 このように「今、私はメモを取っています」と明示することで、周囲に気兼ねなく時間を確保できます。復唱することで、その場で理解のズレも修正できるため、一石二鳥です。 曖昧な指示の理解が難しい方向け 「具体化」を習慣にする 「適当にやっておいて」という指示を受けたとき、曖昧(抽象度が高く、不明瞭)な表現が苦手というASDの特性がある方は何をどうすればいいのかわからず固まってしまうことがあります。こういう場面では、「具体化する」ことを習慣にしましょう。 「適当にやる」→「○○のフォーマットを使って、△△の項目を埋める、ということで合っていますか?」と言い換えて確認する 「なるべく早く」→「今日中・明日の朝まで、どちらでしょうか?」と具体的な期限に変換する 「いい感じに」→「前回の資料のようなイメージで合っていますか?」と参考例を確認する 曖昧な表現を「具体的な行動」に変換することで、自分が動きやすくなります。この習慣を取り入れると、指示の取り違えを減らしやすくなります。 ここでは「曖昧な表現の理解の難しさ」と書きましたが、筆者はこれを一方的な弱みだとは考えていません。むしろ、曖昧な事柄を見逃さないセンサーとして働くことがあるからです。 「復唱確認」を取り入れる 指示を受けた後に「では、○○をして、△△の状態にする、ということでよいですか?」と自分の言葉で復唱して確認する習慣も非常に効果的です。 この際、「自分の言葉」にすることが大事だと筆者は考えます。ただ相手の一言一句を再現するだけだと、意味内容をしっかり捉えていない可能性があるからです。自分の言葉にするプロセスがあることで、自分の中に内容が入っていくのだと実感しています。 復唱することで、自分の理解に間違いがないか確認できるだけでなく、丁寧に確認してから動こうとしていることも相手に伝わりやすくなります。多少時間を取っても、やり直しが減ることを考えれば、ずっと効率的です。 APD(聴覚情報処理障害)や聞き取り困難の可能性がある方向け 環境を整える・伝達手段を変えてもらう APDや聞き取り困難がある場合は、騒がしい環境で困りごとが強まりやすいとされています。可能であれば、環境自体を変えることが最も効果的です。 個室や静かなスペースで指示を受けることを相談する ノイズキャンセリングイヤホンを使用する(周囲の雑音をシャットアウトする) 口頭だけでなく、メールやチャットでも指示を送ってもらえるよう相談する 電話対応を最小限にし、テキストでのやり取りを主にしてもらう 筆者は、周囲の話し声と、目の前の相手の声が、同じくらいの強さで耳に入ってきてしまう感覚があります。そんなときには、相手の方に視線を合わせ、耳に手を添えて「もうちょっとよく聞かせてくれませんか」というジェスチャーをします。シンプルですが、それだけに汎用性のある工夫として筆者は幾度となく助けられています。 クローズ就労(障害非開示)の方向け 相手に負担をかけずに聞く 「クローズ就労」とは、職場に自身の障害や特性を開示せずに働くスタイルのことを指します。 その対となる「オープン就労(障害を開示して働く)」であれば、企業から「合理的配慮」として業務の進め方の調整を受けやすいですが、クローズ就労ではそうしたサポートを前提にできません。 そのため、 「合理的配慮を依頼できない」(自分一人でなんとかしなければならない) 「特性を隠しているため、不器用な自分を見せられない」(評価への不安や強いプレッシャー) といった精神的なハードルから、聞き方一つでも「仕事ができないと思われないか」「相手の時間を奪ってしまうのではないか」と、つい抱え込んでしまいがちです。 筆者はクローズ就労も経験しています。そこでは、配慮を「お願いする」のではなく「相手の説明する負担をこちらで半分引き受ける」という姿勢を見せることで、スムーズに周囲の協力を得る工夫をしていました。以下の3ステップをセットで実践してみましょう。 ①「悩んでいる」と先に開示するいきなり質問に入るのではなく、「今、ここで行き詰まって(悩んで)おりまして…」と一言添えます。この前提情報があるだけで、相手は「あ、助けが必要な場面なんだな」と話を聞くモードに入りやすくなります。 「〇〇の件で少しご相談なのですが、今、ここの解釈で少し悩んでおりまして…」 ②「不完全でもいいから自分の仮説」をぶつける「分かりません、教えてください」とゼロから聞くのではなく、「私は~~だと理解したのですが、この認識で合っていますでしょうか?」と、自分の解釈を提示します。たとえその解釈が間違っていても構いません。あなたが「理解しようと試みた」という事実が、相手の「どこから説明すればいいか」という負担を大きく減らしてくれます。 「私は『Aという進め方』だと理解したのですが、この認識で合っていますでしょうか?」 ③「選択肢」を用意する可能であれば「これはAでしょうか、それともBでしょうか?」と選べる形で聞くとさらに親切です。相手は「そう、Bの方だよ」と答えるだけで済むため、やり取りのコストが最小限で済みます。 「それか、『Bという進め方』という考え方もあると思うのですが、AとBどちらが良いでしょうか?」 自己対処で賄えない場合は「合理的配慮」を活用しよう 上記の対処法を試しても十分でない場合や、職場の理解を得ることが必要な場合は、「合理的配慮」という制度を活用することを検討しましょう。 合理的配慮とは 合理的配慮とは、障害のある人が働くうえで生じる困りごとに対して、職場が過重な負担にならない範囲で必要な調整や配慮をおこなうことです。2024年4月からは企業での合理的配慮が義務化され、障害のある方がサポートを依頼しやすくなりました。 相談する際は、「何が苦手か」だけでなく、「どんな場面で困るのか」「どうしてもらえると仕事がしやすくなるのか」まで具体的に伝えることが大切です。 「人の話が理解できない」ことへの配慮事例 口頭での指示に加えて、メール・チャット・書面でも内容を共有してもらう 複数の指示は、一つひとつ順番に出してもらう 会議の議事録を必ず作成し、共有してもらう 指示の優先順位を明確に伝えてもらう 録音やメモを取ることを許可してもらう 騒がしい環境での作業を避け、静かな席に配置してもらう 合理的配慮を求めるには、自分の特性を言語化して説明することが必要です。「なぜ困っているのか」「どのような配慮があれば改善するか」を具体的に伝えられるよう、日頃から自己理解を深めておくことが重要です。 「自分の特性の理解」こそ、最大の対処法 ここまでご紹介してきた対処法に共通するのは、「自分の特性を正確に理解することが出発点」だということです。 「なんとなく話を理解するのが苦手」ではなく、「自分はワーキングメモリが弱いから複数の指示が苦手だ」「聴覚処理が苦手で、文字情報のほうが入ってきやすい」というように、自分の困りごとの原因を具体的に把握していると、対策が格段に立てやすくなります。 一方で、「自分の特性を自分だけで正確に分析する」ことは、非常に難しい作業でもあります。長年の経験から思い込みが生まれていることもありますし、客観的な視点を持ちにくいこともあります。 そこで、一人で悩まずに専門家のサポートを活用することをおすすめします。就労移行支援などの専門機関では、自己理解を深めるためのプログラムや、特性に合わせた就労支援を受けることができます。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、あなたが「なぜ人の話が理解しにくいのか」「どんな工夫や環境があれば働きやすくなるのか」という特性の分析を、専門スタッフと一緒におこなっています。 それ以外にも、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。