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発達障害のある方が職場でパニックになる原因と仕事中の対策

大人のASD・ADHDがあると「パニック」になりやすい?発達障害のある方のパニックの原因、職場での対処法について、ADHD当事者が解説。

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「仕事中に急に頭が真っ白になり、何をすればいいか分からなくなる」「職場でパニック症状が出てしまうことがあり、このまま働き続けられるのか不安」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害のある方の中には、職場で強いストレスがかかったときに、涙が止まらなくなる、固まって動けなくなる、怒りや不安が抑えられなくなる、呼吸が苦しくなる、頭が真っ白になるといった、いわゆるパニック状態になる方がいます。 この記事では、その原因と対処法をご紹介します。今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / 発達障害のパニックとは:医学的な「パニック発作」に近い状態や、発達障害の特性・強いストレスによって起こる「メルトダウン」「フリーズ」に近い状態がある。 パニックの原因:ASDやADHDの特性がある人にとって負荷になりやすい急な変更、感覚刺激、マルチタスク、過去のつらい経験などが関係する。 仕事中のパニック対策:安全な場所への移動や、状況を伝える短い定型文の用意などによって、落ち着く時間を確保する。 パニックの予防策:トリガーの記録、予定・指示・優先順位の見える化、必要な合理的配慮の相談が役立つ。 \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害のある方が職場で直面しがちな「パニック」とは 日常会話で使われる「パニック」からは、以下のような状態が想像されるのではないでしょうか。 急に不安が強くなる 呼吸が苦しくなる 頭が真っ白になる 涙が止まらなくなる 怒りや焦りが抑えられなくなる 体が固まり言葉が出なくなる 指示を聞いても理解できなくなる 本記事では、職場で強い不安や混乱が生じ、普段どおりに考えたり行動したりすることが難しくなる状態を、総称して「パニック」と表現します。 その中には、医学的な意味での「パニック発作」に近い状態もあれば、発達障害の特性や強いストレスによって起こる「メルトダウン」や「フリーズ」に近い状態もあります。 パニック発作 パニック発作とは、突然強い不安や恐怖に襲われ、動悸、息苦しさ、めまい、震えなどの身体症状が表れる状態です。こうしたパニック発作が繰り返され、生活や仕事に支障が出ている場合、パニック障害と診断されることがあります。 メルトダウン メルトダウンは、強いストレスや感覚刺激に圧倒され、一時的に行動のコントロールが難しくなる状態を説明する言葉として使われます。英国の自閉症支援団体であるNational Autistic Societyも、メルトダウンを「圧倒される状況への強い反応」と説明しています。 職場では、涙が止まらなくなる、怒りが爆発する、大きな声を出してしまう、その場から逃げ出したくなる、周囲の言葉が入ってこなくなる、といった形で表れることがあります。 フリーズ 強いストレスや混乱によって、動けなくなる、話せなくなる、考えられなくなる状態をフリーズといいます。頭が真っ白になる、返事ができない、体が固まる、パソコンの前で止まってしまう、といった形で表れることがあります。 外から見ると、「黙っている」「ぼーっとしている」「やる気がない」と見えるかもしれません。しかし本人の内側では、強い緊張や混乱が起きていることがあります。 パニック発作、メルトダウン、フリーズのいずれも、本人にとっては非常につらい状態です。職場で繰り返し起こると、休職や退職につながることもあります。だからこそ、自分に何が起こっているのかを整理し、対策を考えることが大切です。 発達障害のある方が職場でパニックになりやすい原因 発達障害のある方が職場でパニックになりやすい背景には、本人の性格だけではなく、特性と環境のミスマッチ、体調、業務量、人間関係など、複数の要因が関わっていることがあります。 ASDやADHDの特性がある方にとっては、こうした負荷が積み重なることで、パニックにつながることがあります。 ASD(自閉スペクトラム症)のある方に見られやすい原因 ASDのある方は、見通しの立たなさ、急な変更、感覚刺激、人間関係のあいまいさなどによって強いストレスを感じることがあります。 CDC(米国疾病予防管理センター)は、ASDの特徴として以下のような反応があるとしています。 小さな変化に強く動揺する 特定のルーティンを必要とする 音・におい・味・見た目・触感などへの通常とは異なる反応 たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。 今日やる予定だった仕事が急に変わる 予定になかった来客対応を頼まれる 作業途中で別の仕事を割り込まれる 電話の音や周囲の会話がつらい 照明やにおいなどの刺激がつらい 「いい感じに」「なるべく早めに」など、あいまいな指示を受ける 周囲から見ると、よくある予定変更や指示に見えるかもしれません。しかし本人にとっては、頭の中で組み立てていた段取りが崩れたり、判断材料が足りないまま作業を求められたりするため、大きな混乱につながることがあります。 また、過去に強く叱責された経験や、職場でつらい思いをした経験がある場合、似た場面でその記憶がよみがえり、強い不安や緊張につながることもあります。いわゆる「フラッシュバック」のように感じられることもあります。 ADHD(注意欠如・多動症)のある方に見られやすい原因 ADHDのある方の場合、以下のような特性によって、仕事中の負荷や混乱が高まりやすくなることがあります。 注意の切り替えが難しい 優先順位づけが苦手 指示を覚えておくことが難しい 感情のコントロールが難しい 特に職場で見られがちなこととして、NIMH(米国国立精神衛生研究所)は、以下についての困りごとを挙げています。 整理 仕事の継続 日々のタスクの遂行 大きなプロジェクトの完了 マルチタスク たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。 複数の仕事が同時に発生し、どれから手をつければよいか分からない 口頭指示の一部を聞き漏らす 席に戻ると、何を頼まれたか分からなくなる 注意されたときに強く落ち込む 焦りが強くなり、落ち着いて考えられない 筆者にも、「焦り」によって確認が漏れてしまった経験があります。社用車のリースに関する手続きで、急いで書類を送る必要があった際、レターパックに入れて送付したところ、誤って全く関係のない自分のノートを送ってしまったのです。今振り返ると、焦りで頭の中がいっぱいになり、「何を入れたか」を確認する余裕がなくなっていたのだと思います。このように、焦りが強くなると、普段なら当然できる確認作業が抜け落ちてしまうことがあります。 職場でパニックが起こったときの対処法・仕事中の対策 職場でパニックが起こったときに大切なのは、「その場で完璧に立て直そう」としないことです。 パニック状態のときは、普段できる判断や会話が難しくなっています。まずは安全を確保し、刺激を減らし、落ち着くための時間を取りましょう。 いったんその場から物理的に離れる 可能であれば、刺激の多い場所から離れましょう。空いている会議室、休憩室、廊下、トイレ、建物の外、人の少ないスペースなどに移動できるとよいでしょう。このように、混乱が強くなったときに一時的にその場を離れ、落ち着く時間を取る方法は「タイムアウト法」と呼ばれることもあります。 職場で使える言い方としては、次のようなものがあります。 「少し席を外します」 「体調が悪いので、5分だけ休憩します」 「落ち着いてから戻ります」 事前に職場と相談できる場合は、「パニックになりそうなときに一時的に離席してよいか」「どこでクールダウンしてよいか」を決めておくと安心です。 短い定型文を用意しておく パニック状態になると、言葉を考えること自体が難しくなります。あらかじめ職場で使う定型文を用意しておくと安心です。 「少し混乱しているため、5分ほど休憩します」 「今すぐ返答が難しいため、落ち着いてから確認します」 「指示をメモでいただけると助かります」 「優先順位を確認させてください」 筆者は、判断に迷って混乱しそうなとき、使うようにしている言い回しがあります。それは、「迷っているんですが~」「困っているんですけど~」で話し始めるというものです。先に、自分の状況を端的に伝えることで、相手にも「ああ、迷っているんだな」「困っているんだな」と伝わりやすくなります。また、自分自身も「迷っている」「困っている」と口に出すことで、状況を少し客観視しやすくなります。 職場でのパニックは「起こる前」の対策が重要 職場でのパニック対策では、起こったあとの対応も大切ですが、それ以上に重要なのは、パニックが起こりにくい環境を作ることです。そのためには、パニックが起こった場面を以下のように記録し、そのきっかけになる刺激(トリガー)を知ることが大事です。 いつ起こったか 何をしていたか 直前に何があったか どんな症状が出たか 何をしたら少し楽になったか 周囲にどう対応してもらえるとよかったか すべての項目を埋める必要はありません。たとえば、会議中に急に発言を求められて頭が真っ白になった場合は、「会議中」「発言を求められた」「何も言葉が出てこなかった」といった具合です。 その場合、「人前で突然答えること」がトリガーになっている可能性があります。そこから、会議前に議題を共有してもらう、その場で答えられない場合はあとで回答してよいことにする、といった対策を考えられます。 また、こういったときは気持ちが落ち込み、自分を責めてしまいがちです。それを避けるためには、パニックになった事実は認めつつ、「だったら、今後どうすれば良いか」という対策の材料とする視点があると良いです。 「できなかったことを責める」のではなく、「次の対策を作るための記録」として扱いましょう。そう考えることで、「この経験が次に活きる」と前向きにとらえやすくなります。仕事をよりスムーズに進めるうえでも、自分の気持ちを落ち着けるうえでも、とてもおすすめです。 職場でできる予防策 ASDのある方の場合は、特に以下のポイントがパニックの予防につながります。 見通しを持てること 刺激を減らすこと あいまいさを減らすこと たとえば、次のような工夫があります。 前日に翌日の予定を共有してもらう 急な変更は早めに知らせてもらう 急ぎの依頼は、締切と優先順位をセットで伝えてもらう 依頼内容を口頭だけでなく、チャットやメモでも共有してもらう 耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使う 静かな場所で休憩できるようにする ADHDのある方の場合は、以下のポイントがパニックの予防につながります。 頭の中だけで抱えないこと 優先順位を見える化すること 指示を記録に残すこと たとえば、次のような工夫があります。 やることを一か所に書き出す 仕事で使うもの(書類やファイル等)の置き場を決める 上司に優先順位を確認する 口頭指示をメモやチャットに残す 作業手順をチェックリスト化する 締切が重なる場合は、どちらを先にするか相談する とはいえ、「わざわざ書き出すのが面倒」「今すぐやってしまった方が早い」と感じることもあるでしょう。筆者は、最初から完璧に書き出そうとしなくてもよいと考えています。ただ、その後も続く業務であれば、ひと区切りついたあとに、あらためて今やったことを書き出しておくと、次回以降、より安全・確実に進めやすくなります。 職場に相談・依頼できる合理的配慮 発達障害のある方が職場でパニックを防ぐためには、自分だけで対策するのではなく、職場に合理的配慮を相談・依頼することも大切です。 合理的配慮とは、障害のある人が社会の中にあるバリアによって困らないよう、事業者側が負担が重すぎない範囲でおこなう対応のことです。 内閣府は、令和3年の障害者差別解消法改正により、令和6年4月1日から事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたと説明しています。 なお、雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主は過重な負担にならない範囲で障害者に合理的配慮を提供することが義務付けられています。 たとえば、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の合理的配慮事例では、業務の優先順位や目標を明確にする、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する、といった対応が紹介されています。 職場で依頼できる合理的配慮には、次のようなものがあります。 口頭だけでなく文字でも指示をもらう 締切や優先順位を明確にしてもらう 急な変更は早めに知らせてもらう 静かな席に変更してもらう 耳栓やイヤホンの使用を認めてもらう クールダウンできる場所を決めておく パニックになりそうなときは離席を認めてもらう 復帰後に業務の優先順位を再確認する 合理的配慮を依頼するときは、「配慮してください」だけではなく、具体的に伝えることが大切です。 「急な予定変更があると混乱しやすいため、変更が分かった時点でチャットで知らせていただけると助かります」 「口頭指示だけだと聞き漏れが起こることがあるため、重要な指示はメモやチャットでも共有していただけると、正確に対応しやすくなります」 このように、困りごと、仕事への影響、必要な配慮をセットで伝えると、職場側も対応を検討しやすくなります。 合理的配慮について詳しく知りたい方は以下のコラムもあわせてお読みください。 受診や専門家への相談が必要な場合 職場でのパニックが繰り返し起こる場合や、動悸、息苦しさ、強い恐怖感、外出への不安などがある場合は、医療機関への相談も検討しましょう。 特に、パニックの頻度が増えている、通勤や出社が怖くなっている、職場に行こうとすると体調が悪くなる、発作のような症状が繰り返し起こる、休んでも回復しない、眠れない状態が続いている、といった場合は、早めに相談することをおすすめします。 職場での工夫だけでは十分でないこともあります。主治医、精神科、心療内科、カウンセラー、支援機関などに相談し、自分に合った支援を受けることが大切です。 職場でのパニックは「自分を責める」より「対策を作る」 発達障害のある方が職場でパニックになる背景には、ASDやADHDの特性、職場環境、業務量、人間関係、過去の経験など、さまざまな要因があります。 パニック発作のように、強い不安や身体症状が起こる場合もあります。メルトダウンやフリーズのように、感情や行動のコントロールが難しくなったり、頭が真っ白になって動けなくなったりする場合もあります。 いずれの場合も、「本人の努力不足」と決めつけるのではなく、原因と対策を整理することが大切です。 パニックが起こったら、いったん安全な場所に移動する 落ち着くための定型文を用意しておく 自分のトリガーを記録する 急な予定変更やあいまいな指示への対策を作る 口頭指示を文字に残してもらう 優先順位を上司と確認する 感覚刺激を減らす 必要な合理的配慮を職場に依頼する 医療や支援機関にも相談する パニックは、気合いや根性だけで防ぐものではありません。自分の特性を理解し、自分に合った対処法を持ち、必要に応じて職場に配慮を依頼することで、働きやすさは少しずつ整えていくことができます。 そのためには、自分の特性やトリガーを知る「自己理解」、パニックが起こりそうなときに自分を落ち着ける「自己対処・ストレスコーピング」、そして必要な配慮を職場に伝えることが大切です。 一人で悩まず、サポートを受けるのも選択肢のひとつ とはいえ、自分一人だけで、自己理解を深めたり、自分に合った対策を見つけたりすることにハードルの高さを感じる方も多いと思います。そんなときに頼れる相談先のひとつに「就労移行支援」があります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、一人ひとりの特性理解を深め、発達障害による「働きづらさ」との付き合い方を学ぶプログラムを用意しています。パニックの原因や対策を知るだけでなく、リアルな職場を想定した環境で、パニックの予防策やパニックが起こったときの対処法を実践することができます。さらに、自分に必要な配慮事項を見つけ、就職先にサポートを依頼するためのフォローもおこないます。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が語る】オープン就労とクローズ就労の後悔しない選び方

就活先や勤め先に「障害を開示するか」悩む方に向け、オープン・クローズの両方で働いた経験のある発達障害当事者が「働き方探し」のコツを紹介。

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「発達障害があることを、会社に伝えた方がいいのだろうか」「障害について会社に開示するオープン就労と、開示しないクローズ就労、どっちがいいのだろうか 」 そんな悩みを抱えていませんか。 オープン就労とクローズ就労のどちらを選ぶべきかについて、全員に共通する正解はありません。大切なのは、自分の特性や困りごと、働く環境を整理しながら、「自分らしく働き続けるためには、今の自分にどちらの働き方が合っているのか」を考えることです。 発達障害の診断を受けたあと、就職活動や転職活動、あるいは今の職場で働き続けることを考えたときに、多くの方が悩むのが「障害を開示するかどうか」という問題です。 障害があることを会社に伝えれば、必要な配慮を相談しやすくなるかもしれません。一方で、「理解してもらえなかったらどうしよう」「採用で不利になるのではないか」「職場で特別扱いされるのではないか」と不安になる方もいるでしょう。 反対に、障害を伝えずに働けば、求人や職種の選択肢は広がるかもしれません。しかし、困りごとを一人で抱え込み、体調を崩したり、仕事が続かなくなったりするリスクもあります。 この記事では、オープン就労とクローズ就労の違い、それぞれのメリット・デメリット、当事者の体験談、そして「後悔しない」「自分らしく働くため」の選び方をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 【発達障害のある方向け】オープン就労とクローズ就労、どちらがいい? 結論から言うと、オープン就労とクローズ就労のどちらがよいかは、人によって異なります。まずは、それぞれの特徴を簡単に整理しておきましょう。 オープン就労└メリット:障害特性による困りごとや、必要な配慮を会社に相談しやすい└デメリット:障害者雇用枠の場合、求人や職種の選択肢が限られることがある└向いている人:仕事上の困りごとがあり、職場に配慮を相談しながら働きたい人 クローズ就労└メリット:一般雇用枠で応募できるため、求人や職種の選択肢が広がりやすい└デメリット:障害特性に基づく配慮を受けにくく、困りごとを一人で抱え込みやすい└向いている人:自分なりの対処法があり、仕事内容や職場環境との相性がよい人 ただし、これはあくまで大まかな目安です。オープン就労とクローズ就労の違いや、それぞれのメリット・デメリット、後悔しない選び方については、このあと詳しく解説します。 オープン就労とクローズ就労の違いとは? オープン就労とは、発達障害や精神障害など、障害があることを会社に伝えたうえで働くことです。一方、クローズ就労とは、障害があることを会社に伝えずに働くことです。 ただし、「オープン就労=障害者雇用枠」「クローズ就労=一般雇用枠」と単純に分けられるわけではありません。 「オープン就労=障害者雇用」「クローズ就労=一般雇用」と考えてしまいがちですが、実際には以下の3つのパターンがあります。 障害者雇用枠で働く(オープン就労) 一般雇用枠で障害を非開示にして働く(クローズ就労) 一般雇用枠で障害を開示して働く(オープン就労) このように、オープン就労とクローズ就労は、「障害者雇用枠か一般雇用枠か」だけで決まるものではありません。 1つ目は、障害者雇用枠で働くオープン就労です。障害者雇用枠で応募するためには、基本的に障害者手帳が必要です。応募時点で障害があることを会社に伝えるため、入社前後に必要な配慮を相談しやすいという特徴があります。 2つ目は、一般雇用枠で障害を開示して働くオープン就労です。たとえば、一般雇用枠で働いていた方が、在職中に発達障害の診断を受け、その後も一般雇用枠のまま会社に配慮を相談しながら働くケースがあります。 3つ目は、一般雇用枠で障害を伝えずに働くクローズ就労です。障害特性による困りごとをセルフケアでカバーできている場合や、仕事内容と特性の相性がよい場合には、クローズ就労で安定して働いている方もいます。 筆者も、この3つの働き方を経験しています。筆者がはじめて就職したのは30歳のときで、300名程度のIT企業に障害者雇用枠で入社しました。 入社時には「配慮事項はありますか?」と確認してもらったのですが、当時の筆者は「配慮してもらうなんて申し訳ない」と感じてしまい、「大丈夫です」と答えてしまいました。 今振り返ると、オープン就労であっても、自分に必要な配慮を自分で理解し、言葉にして伝えなければ、支援にはつながりにくいのだと感じます。 その後、2社目では一般雇用のクローズ就労を経験し、3社目では障害者雇用で入社しましたが、筆者のADHD特性と自認している「忘れっぽさ」からか、障害者手帳の更新を失念してしまい、意図せず一般雇用のオープン就労となってしまいました。 合理的配慮とオープン就労の関係 オープン就労を考えるうえで重要なのが、合理的配慮です。 合理的配慮とは、障害のある方が社会生活や職業生活を送るうえで生じるバリアについて、本人から申し出があった場合に、事業者や事業主が過度な負担にならない範囲で必要な調整を行うことです。 雇用分野では、障害者雇用促進法により、事業主には障害者への合理的配慮の提供が義務付けられています。また、その対象は障害者手帳を持っている方に限定されず、発達障害を含む精神障害などにより、長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける方も対象になり得ます。 さらに、障害者差別解消法の改正により、2024年4月1日からは、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。 そのため、障害者雇用枠だけでなく、一般雇用枠で働いている場合でも、医師の診断書などをもとに、仕事上の困りごとや必要な配慮を会社に相談できるケースがあります。 ただし、合理的配慮は「希望すれば何でも受け入れてもらえる」というものではありません。本人の困りごと、業務内容、会社側の負担、職場全体への影響などを踏まえて、本人と会社が話し合いながら調整していくものです。 【発達障害】 オープン就労のメリット オープン就労の大きなメリットは、仕事上の困りごとを会社に相談しやすくなることです。 発達障害のある方の場合、働く場面で以下のような困りごとが起こることがあります。 口頭だけで指示を受けると、内容を忘れてしまう 複数の仕事を同時に頼まれると、何から手をつければよいか分からなくなる 急な予定変更があると、気持ちや段取りの切り替えが難しい 雑音や人の話し声が多い環境では、集中しにくい 曖昧な指示を、自分で判断して進めることが苦手 オープン就労では、こうした困りごとに対して、たとえば以下のような配慮を相談しやすくなります。 指示は口頭だけでなく、チャットやメールなど文章でも残してもらう 複数の依頼がある場合は、優先順位を確認する時間を設けてもらう 予定変更がある場合は、できるだけ早めに共有してもらう 集中しやすい席や作業場所について相談する 定期的に進捗確認や相談の時間を設けてもらう また、障害を隠し続ける心理的な負担が軽くなるというのも大きなメリットです。クローズ就労では、困っていても「自分で何とかしなければ」と抱え込みがちです。しかし、オープン就労では、少なくとも会社の一部には障害特性を伝えたうえで働くことになります。その安心感が、仕事を続けるうえで大きな支えになる場合があります。 さらに、就労移行支援事業所、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、医療機関などの支援機関と連携しやすくなる点もメリットです。職場で困りごとが起きたとき、本人だけで会社に説明するのが難しい場合でも、支援者と一緒に状況を整理できることがあります。 【発達障害】オープン就労のデメリット 一方で、オープン就労にも注意点があります。 まず、障害者雇用枠で働く場合、一般雇用枠と比べて求人や職種の選択肢が限られることがあります。地域や時期、本人の経験、希望条件によっては、希望に合う求人がなかなか見つからないこともあるでしょう。 また、障害を伝えれば必ず理解されるわけではありません。会社によって、障害者雇用や発達障害への理解、支援体制には差があります。人事担当者は理解していても、現場の上司や同僚がどのように関わればよいか分からないこともあります。 さらに、オープン就労では「配慮してもらっているのに成果を出せない」という苦しさが生まれることもあります。こちらの記事では、このような体験が紹介されています。 私が発達障害を疑って病院を受診し、診断を受けたのは、転職して4か月目のことでした。 転職前の会社はマニュアルが整備されており、スケジュールや手順がキッチリと決まっている仕事が多かったため、苦手を感じつつもどうにか仕事になっていました。 ところが転職後の会社では、段取りをすべて自分で考えて仕事を進めなければならず、仕事がまったく回らなくなってしまったのです。 筆者が経験したオープン就労のデメリットとしては、「会社の規模によっては、開示されている範囲が明確にならないことがある」ということがありました。 筆者の職種は総務であり、会社のほぼ全員とのやり取りが発生します。全社に共有される新入社員の情報は、せいぜい所属部署と名前程度のもので、筆者が発達障害であることを知っていた社員は、自部署とその関係する社員数名程度でした。そうなると、自分としては障害を開示して働いているつもりでも 、相手はそれを知らない、つまり配慮を受けることが難しい状況でした。 もちろん、適正なフローで全社員に共有される会社もあるとは思いますが、オープン就労で働いているからと言って、どの職場でも合理的配慮が得られるとは限らない、ということを実感しました。 オープン就労は、魔法の解決策ではありません。大切なのは、会社に配慮を求めることと同時に、自分自身も特性への対策を学び、働き方を調整していくことです。 【発達障害】クローズ就労のメリット クローズ就労は、一般雇用枠の求人に応募できることから、以下のようなメリットがあります。 経験やスキルを活かせる仕事を選びやすい 給与やキャリアアップの選択肢が広がりやすい 仕事内容と特性の相性がよければ、力を発揮しやすい 自分なりの対処法があれば、安定して働きやすい また、クローズ就労では、障害の有無ではなく、仕事の成果で評価されやすいという面もあります。 職業柄、仕事の成果は「記事」という成果物で測られることになります。お客様にご満足いただける記事を書けていれば、書いているのが障害者かどうかはまったく関係がありません。 人よりも人付き合いが苦手だったり忘れ物が多かったりしても、それで成果に悪影響がなければ問題にならないのです。 筆者も、一般雇用枠のクローズ就労で入社した会社で、細かな事務処理には苦手さを感じていました。一方で、大勢の前で話すことや、内容を整理して伝えることには比較的強みがありました。 自部署20名規模のコンプライアンス研修を任されたことをきっかけに、その後、本社の部長クラス向けの説明会のファシリテーターや、全国の店長・支店長クラスが集まる研修会の講師を務める機会もいただけました。 この経験から、クローズ就労であっても、自分の苦手が出にくく、強みが活きる業務に出会えれば、評価につながる場合があると感じています。 【発達障害】クローズ就労のデメリット 一方で、クローズ就労では、障害特性に基づく配慮を受けにくいという大きなデメリットがあります。 会社に障害を伝えていない以上、職場は本人の困りごとを障害特性として理解することが難しくなります。そのため、口頭指示だけでは忘れやすい、曖昧な依頼が苦手、急な変更に弱い、感覚過敏があるといった困りごとがあっても、単に「注意不足」「理解力が低い」「協調性がない」などと言われることがあります。 また、困りごとを一人で抱え込みやすい点にも注意が必要です。「配慮を受けられないのだから、自分で何とかしなければ」と考え続けると、ミスが増えても相談できない、体調が悪くなっても言い出せない、仕事が回らなくなっても助けを求められない、という状態になりかねません。 クローズ就労を選んだからといって、「誰にも相談しない」と抱え込まないことが大切です。会社にはクローズ(伝えない)だったとしても、医師、カウンセラー、支援機関、家族など、職場の外に相談先を持っておくことは大事です。 オープン就労とクローズ就労の選び方 オープン就労とクローズ就労のどちらを選べばよいのか。結論から言えば、万人に共通する正解はありません。 大切なのは、「後悔しない」「自分らしく働くための」判断基準を持つことです。 まず考えたいのは、仕事上の困りごとが自己対処で対応できる範囲かどうかです。メモを取る、チェックリストを使う、カレンダーで予定を管理する、上司に優先順位を確認するなど、自分の工夫である程度対応できている場合は、クローズ就労を選択しても働ける可能性があります。 一方で、どれだけ工夫してもミスが続く、体調を崩す、職場との関係が悪化する、仕事が続かないといった状態であれば、オープン就労を検討した方がよいかもしれません。 配慮がなければ働き続けることが難しいかどうかも重要です。勤務時間の調整、業務量の調整、指示の出し方の変更、感覚過敏への対応、定期面談などがなければ働き続けることが難しい場合、障害を開示して相談する必要性は高くなります。 また、障害を隠すことによるストレスが大きいかどうかも判断材料になります。「本当は困っているのに言えない」「できない理由を説明できない」「いつかばれるのではないかと不安」という状態が続くと、仕事そのもの以上に精神的な負担が大きくなることがあります。 筆者は、就労後ではなく、入社直前にばれるのではないかと不安を覚えたときがありました。最終面接、面接官は役員と部長でした。ひととおりの質疑応答を問題なくクリアしていき、雰囲気も良く進みました。締めくくりに、笑顔で部長がこう切り出しました。 「それでは最後に、心身ともに健康ですか?」 通常なら、なんのひっかかりもなく「はい」と答えて面接は終わりです。念のための確認でしかない、いわばおまけのような質問です。しかし、「はたして自分は心が健康なのか?」と一瞬ひるんでしまいました。「いいえ......実は私ADHDという特性がありまして」と伝えるべきなのではないかと、ものすごい速さで頭の中を思考が駆け巡りました。 その間、おそらく実際には1秒にも満たなかったと思います。まるでスローモーションのように感じられたその時間の後、一呼吸おいて「...はい」と答えて、若干のうしろめたさを抱えながら入社したことを今でも覚えています。 そして、オープンかクローズかを考える前に、「そもそもその仕事が自分に合っているか」を確認することも大切です。どれだけ配慮があっても、仕事内容そのものが特性と大きく合っていなければ、働き続けることは難しくなります。反対に、クローズ就労であっても、自分の強みが活かせる仕事であれば、安定して働けることもあります。 筆者自身も、前述したとおり、細かな事務処理は苦手な一方、人前で話す業務では評価された経験があります。だからこそ、オープンかクローズかだけでなく、「自分の強みが活きる仕事かどうか」を考えることも大切です。 就職に悩んだときの相談先 オープン就労かクローズ就労かで悩んだときは、一人で判断しないことが大切です。相談先には、いくつかの選択肢があります。 ハローワークには、障害のある方のための専門窓口があります。障害者求人の紹介だけでなく、就職活動の相談や職場定着に関する支援を受けられる場合があります。また、精神・発達障害者雇用サポーターが配置されているハローワークでは、精神障害や発達障害のある方に対して、障害特性を踏まえた専門的な就職支援を行っています。 障害者就業・生活支援センター、いわゆる「なかぽつ」では、就業面と生活面の両方から相談できます。仕事の悩みだけでなく、生活リズム、体調管理、職場との関係など、働き続けるために必要な生活面の相談もできます。 障害者専門の就職エージェントを利用する方法もあります。求人紹介だけでなく、履歴書や職務経歴書の作成、面接対策、配慮事項の整理などをサポートしてもらえる場合があります。 そして、就労移行支援事業所も重要な相談先の一つです。就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指すために、就労に必要な知識や能力を身につける訓練、就職活動、職場定着などを支援する障害福祉サービスです。 就労移行支援事業所では、自己理解、職業訓練、生活リズムの安定、応募書類の作成、面接練習、職場実習、就職後の定着支援など、就職に向けた幅広いサポートを受けられます。 オープン就労にするか、クローズ就労にするかを考えるうえでも、自分の特性や必要な配慮を整理する場として活用できます。 大切なのは「どちらが正しいか」ではなく「自分らしく働き続けられるか」 オープン就労とクローズ就労には、それぞれメリットとデメリットがあります。 オープン就労は、必要な配慮を相談しやすく、支援機関とも連携しやすい働き方です。一方で、求人や職種が限られることや、障害を伝えれば必ず理解されるわけではないという難しさもあります。 クローズ就労は、求人やキャリアの選択肢が広がりやすく、成果で評価されやすい働き方です。一方で、必要な配慮を受けにくく、困りごとを一人で抱え込みやすいというリスクがあります。 どちらが正解ということではありません。 大切なのは、自分の特性を理解し、困りごとの程度を把握し、必要な支援や配慮を整理したうえで、「自分らしく働き続けるためには、今どの選択が現実的なのか」を考えることです。 発達障害のある方にとって、就職や転職は、単に仕事を見つけるだけのものではありません。自分の特性を知り、自分に合う環境を探し、働き続けるための工夫を身につけていくプロセスでもあります。 一人で悩み続ける必要はありません。迷ったときは、支援機関に相談しながら、自分に合った働き方を一緒に考えていきましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
大人の発達障害|燃え尽き症候群(バーンアウト)の原因と対処法

ADHD・ASDがあると「燃え尽き症候群」になりやすい?その原因と、過集中・過剰適応のリスク、そして無理なく働き続けるための対処法を紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「特性上苦手な業務を、どうにか気合でやりすごした」「締め切り直前まで仕事が手につかず、前日徹夜をして乗り切った」 周囲に迷惑をかけないように頑張り続けた結果、ある日突然、糸が切れたように動けなくなった…そんな経験はありませんか。 ADHDやASDなどの発達障害がある方の中には、特性による仕事上の困りごとを抱えながらも、周囲に合わせようと無理を重ねたり、締め切り直前に過集中でなんとか乗り切ったりしてきた方が少なくありません。 一見すると、「頑張って乗り切っている」「なんとか仕事ができている」ように見えるかもしれません。しかし、その状態が長く続くと、心身のエネルギーを使い果たし、燃え尽き症候群、いわゆるバーンアウトに近い状態になってしまうことがあります。 この記事では、発達障害のある方が燃え尽き症候群になりやすい原因と、過集中・過剰適応のリスク、そして無理なく働き続けるための対処法をご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 燃え尽き症候群(バーンアウト)とは 「燃え尽き症候群のサイン」チェックリスト 燃え尽き症候群は、ある日突然起こるとは限りません。少しずつ心や体にサインが表れ、気が付いたときには「もう頑張れない」と感じるほど疲れ切っていることもあります。  朝どうしても起き上がれない 休日に一日中寝ていても疲れがとれない 趣味や好きなことに取り組む気力がない いつもなら数分で終わる業務に、何倍も時間がかかるようになった 人付き合いが過剰なまでに億劫に感じる 指摘や注意を受けると、過度に落ち込んでしまう 特性によるミス(ケアレスミス・聞き洩らし)が増えてきた いつもよりも特性が強く出ている(些細なことでパニックになる・感覚過敏が以前よりも辛い等) このようなサインが続いている場合は、無理を重ねすぎていないか、一度立ち止まって確認してみることが大切です。必要に応じて、医療機関や行政機関の窓口、(お勤め中の場合には)産業医などに相談することも検討しましょう。 燃え尽き症候群(バーンアウト)は、単なる疲労ではない 燃え尽き症候群とは、仕事や活動に熱心に取り組み続けた結果、強いストレスや過度な努力によって、心身のエネルギーを使い果たしてしまった状態を指します。 厚生労働省の「こころの耳」では、燃え尽き症候群を「活発に仕事をしていた人が、何らかのきっかけで燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状」と説明しています。またWHOもICD-11において、「うまく管理されなかった慢性的な職場ストレスの結果」とし、エネルギーの枯渇、仕事から心理的に距離を置く感覚、職業上の有効性の低下を特徴として挙げています。 燃え尽き症候群は単なる「疲れ」ではありません。朝起きるのがつらい、以前はできていた仕事に手がつかない、人と関わるのがしんどい、仕事への達成感が持てなくなる。そうした状態が続く場合は注意が必要です。 また、燃え尽き症候群は、「弱い人がなるもの」ではありません。むしろ、責任感が強く、周囲の期待に応えようと無理を重ねてきた人ほど陥りやすい状態でもあります。 筆者も、最初に就職した会社で、燃え尽きに近い状態になり、休職を経験しました。当時は、強い疲れを「頑張っている証拠」だと思い込み、むしろ充実していると感じていました。 しかし次第に、以前なら15分ほどで終わっていた名刺増刷のような定型業務にも、1時間以上かかるようになりました。「なんて自分はダメなんだろう」と自分を責め、それを取り返そうとしてさらに無理を重ねた結果、休職に至りました。 燃え尽きの前兆は、このような日常的な変化に表れることがあります。 発達障害がある方の場合、特性による困りごとを抱えたまま無理を続けることで、心身に大きな負担がかかることがあります。苦手な作業を一人で抱え込む・周囲に合わせようとして過剰に頑張る・ミスを防ごうとして常に緊張している…こうした状態が続くと、燃え尽き症候群だけでなく、うつ病や適応障害などの「二次障害」につながることもあります。 二次障害とは、発達障害の特性そのものではなく、特性による困りごとや強いストレスなどが重なることで、あとから生じる心身の不調を指します。だからこそ、早い段階で困りごとに気づき、必要に応じて相談や支援につながることが大切です。 大人の発達障害(ADHD・ASD)のある方が「燃え尽き症候群」になりやすい理由 ADHDやASDなどの発達障害がある方は、特性による困りごとをカバーしようとして、人一倍頑張ったり、周囲に合わせようとしたりすることがあります。その無理が積み重なると、心身のエネルギーを使い果たし、燃え尽き症候群につながることがあります。 ADHDの場合は、「やらなければいけない」と分かっていても締め切りが近づくまで着手できず、報酬や興味、直前の焦りや緊急性によってようやく集中できることがあります。一方、ASDの場合は、こだわりの強さ、予定変更の苦手さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの負荷などによって、仕事の中で強い疲れを感じることがあります。こうした負荷が長期的に続き、強い消耗状態に陥ることは「自閉的バーンアウト」として研究・議論されています。 つまり、ADHDの場合は「着手の難しさ」や「締め切り直前の過集中」、ASDの場合は「こだわり」「予定変更への負荷」「感覚的な疲れ」などが、燃え尽き症候群につながる要因になることがあるのです。 ここからは、発達障害のある方が仕事の中で無理を重ねやすい代表的な傾向として、「過集中」「過剰適応」「こだわり・完璧主義」「自己関連付け」の4つを見ていきます。 過集中:「エネルギーの前借り」で走り続ける ADHDのある方は、締め切り直前の焦りや緊張感によって、一気に集中できることがあります。その結果、普段はなかなか進まなかった仕事を短時間で仕上げられることもあります。 しかし、毎回この方法に頼ると、心身には大きな負荷がかかります。筆者は、こうした締め切り直前の過集中を「エネルギーの前借り」と考えています。短期的には仕事を終えられても、そのたびに翌日以降の体力や気力を使っていると、いずれ返済できない日が来るからです。 筆者も、この「エネルギーの前借り」を多用していました。会社員時代、毎月はじめに、同じビルに入っているグループ会社各社へ請求書を作成する仕事がありました。前任の先輩社員が、ある程度自動で計算できるExcelを残してくれていたものの、請求総額が確定してから各社分を計算し、請求書を作成して渡すまでの時間は限られていました。 毎月第一営業日の夕方になると、「今日中に出さなければ」と焦りながら、一気に集中して作業を進める。結果的には何とか間に合うのですが、終わったあとはぐったりしていました。当時は「短時間でやりきった」と思っていましたが、今振り返ると、まさに翌日以降の体力や気力を前借りするような働き方だったと思います。 「短期集中型」は、うまくいけば成果につながります。しかし、こうした働き方が続くと、心身ともに摩耗してしまいます。 過剰適応:困っていないように見せ続けてしまう 過剰適応とは、自分の本来の状態や限界を押し殺して、周囲の期待や職場のルールに過度に合わせ続けることです。 たとえば、本当は困っているのに「大丈夫です」と言う、苦手な作業を苦手と言えない、ミスを隠すために人一倍確認する、家に持ち帰って仕事をする、配慮を求めることに罪悪感を持つ、といった状態です。 こうした過剰適応は、ある意味ではサバイバルの方法です。しかし、続けていると自分の疲れや困りごとに気づきにくくなり、ある日突然、糸が切れたように動けなくなることがあります。 筆者もまさにこの典型でした。総務の庶務を担当していた頃、毎日のルーチン業務にも時間がかかるようになり 、先輩社員から「最近、社内の評判がすごく悪いよ。どうしたの?」と言われるようになりました。さらに、業務中の電話対応でうまく切り上げられず、同僚から「早く電話を切って」とジェスチャーされた瞬間、「もう駄目だ」と緊張の糸が切れました。その後、上司に休職の意向を伝えました。 こだわり・完璧主義:終われないことで消耗してしまう ASD特性として、こだわりの強さや予定変更への苦手さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの負荷などがある場合、仕事の中で強く消耗することがあります。 たとえば、完成度にこだわりすぎて終われない、手順を変えられない、曖昧な指示に不安が強くなる、予定変更で大きく消耗する、といった状態です。 完璧に仕上げようとすること自体は悪いことではありません。しかし、すべての仕事に100点を目指していると、時間もエネルギーも足りなくなります。 「100点を目指しているつもりはない」と感じる方もいるかもしれません。完璧主義は、「良いものを作りたい」という思いだけでなく、「悪く思われたくない」「ネガティブな指摘を受けたくない」という不安から生じることもあります。筆者は、とにかく「怒られたくない」「注意されたくない」という一心で、到達することのない「完璧」を目指して毎日終電ギリギリまで職場に残るなど、体力や精神力を消耗してしまった経験があります。 この場合、仕事量を減らすだけでなく、仕事の進め方、指示の受け方、完成度の基準、相談のタイミングを見直すことが大切です。 自己関連付け:「自分がやらなければ」と引き受けすぎてしまう ADHDやASDのある方の中には、周囲の状況や相手の表情を強く受け取り、「自分がやらなければ」と思い込みやすい方もいます。誰かが困っていそうに見えると自分の仕事でなくても引き受ける、少し注意されただけで「自分が全部悪い」と感じる、といった状態です。 気配りや責任感は大切な力です。しかし、引き受け続けると、自分の限界を超えていることに気づきにくくなり、過剰な負荷を背負い続けることがあります。 うつ状態に近づくと、特性による困難が強く出ることもある こうした無理が続き、燃え尽き症候群やうつ状態に近づくと、ADHDやASDの特性による困りごとが、より強く出ることがあります。 たとえば、もともと不注意が出やすい方は、疲労や睡眠不足によってさらにミスが増えることがあります。もともと着手が苦手な方は、気力の低下によってますます仕事に取りかかれなくなることがあります。 このとき、「自分は怠けている」「またダメになった」と責めてしまう方もいるかもしれません。しかし、燃え尽きに近い状態では、脳や体のエネルギーそのものが落ちています。普段できていたことができなくなるのは、気合いが足りないからではありません。 大切なのは、「無理をすれば働ける」ではなく、「無理をしすぎなくても働き続けられる」状態を目指すことです。 そのために次の章では、燃え尽き症候群を防ぐためにできる具体的な対処法を紹介します。 発達障害による燃え尽き症候群を防ぐ!無理なく働くため対処法 ここからは、発達障害のある方が、燃え尽き症候群を防ぐためにできることを紹介します。特性や現れる困りごとは一人ひとり異なるため、自分に合ったものから取り組んでみましょう。 大前提として大切なのは、「もっと頑張る」ではなく、「頑張りすぎなくても回る仕組みを作る」ことです。燃え尽きやすい方の多くは、すでに十分頑張っています。必要なのは、気合いではなく、負荷の調整です。 ① 過集中は「終わり方」を決めておく 過集中は、完全になくそうとしても難しいものです。大切なのは、過集中に入ったときの「終わり方」をあらかじめ決めておくことです。 たとえば、終了時刻を決める、アラームを複数回セットする、作業が終わる条件を決めておく、といった方法があります。特におすすめなのは、終了条件を具体的にすることです。 時間で区切って終わりにすることが苦手な場合には、タスクが完了したときの状態(ゴール)を明確にしておくこともおすすめです。たとえば「資料の確認」では終わりが曖昧ですが、「資料の数字の間違いを修正する」なら、どこまでやれば終わりかが分かります。筆者も、「時間が来たから終わり」と強制終了するより、「ここまでやった」と一段落して終える方が、無理なく切り替えやすいと感じています。 ② タスクを「見えるもの」に変える ADHDのある方にとって、頭の中だけでタスクを管理するのは大きな負荷になります。そこで大切なのが、タスクを書き出すことです。 ただし、おおざっぱに「資料作成」とするのではなく、タスクを細分化し「目的を書き出す」「締め切りの日付を書き添える」「構成案を書く」「最初の項目を書く」「上司に送る」など、小さな行動に分解することがポイントです。 タスクを書き出すことは、これからやらなければいけないことを目の前に置く行為となります。その意味では、抵抗感を覚えるかもしれません。しかし、それは同時にタスクを終わらせる道しるべでもあります。小さな行動まで書き出されたタスクは、自分がつまずかないように助けてくれる心強い同伴者となってくれることでしょう。 ③ 休息も予定に入れる 燃え尽きやすい方は、仕事の予定は入れていても、休む予定を入れていないことがあります。しかし、休息は「余った時間に取るもの」ではなく、働き続けるために必要な予定です。 たとえば、夜21時以降は仕事をしない、外出の翌日は軽めの仕事にする、会議が続く日は作業量を減らす、締め切り翌日は回復日として扱う、といったルールを作ります。 これは甘えではありません。長期的に働くためのメンテナンスです。 ④ 困りごとを言語化する 過剰適応をしていると、自分が何に困っているのか分からなくなることがあります。そのため、まずは困りごとを具体的に書き出してみましょう。 たとえば、指示が口頭だけだと忘れてしまう、締め切りが曖昧だと着手できない、優先順位を自分で決めるのが苦手、急な予定変更があると混乱する、完璧にやろうとして時間がかかりすぎる、などです。 困りごとが言語化できると、指示はチャットやメールでもらう、締め切りを日付で確認する、優先順位を上司に確認する、完成度の基準を事前に確認する、といった対策につなげやすくなります。 ⑤ 完璧主義には「合格ライン」を決める ASD特性や不安の強さがある方は、仕事の完成度にこだわりすぎてしまうことがあります。しかし、すべての仕事において100点満点を目指していると、時間もエネルギーも足りなくなります。 そこで、「この仕事は何点で出せばよいか」を確認しましょう。社内確認用なら70点、まずはたたき台なら60点など、仕事ごとに合格ラインを変えることが大切です。 完璧に仕上げる前に見せることで、手戻りを減らせることもあります。一人で抱え込んで100点を目指すより、途中で確認して方向性を合わせたほうが、結果的に負担は小さくなります。 一人で抱え込まず、無理のない働き方を探す もし、すでに燃え尽きてしまったように感じている場合は、まず回復を優先してください。燃え尽きている状態でさらに自分を追い込むと、回復が遅れてしまうことがあります。睡眠、食事、休息を整え、必要に応じて医療機関や相談窓口につながることが大切です。 回復してきたら、「なぜ燃え尽きたのか」を自分を責めるためではなく、再発を防ぐために振り返ってみましょう。どの時期から無理が始まっていたのか、何を我慢していたのか、どの場面で過集中や過剰適応が起きていたのかを整理することで、自分に合った働き方を考えやすくなります。 とはいえ、一人で特性を整理し、働き方を見直すのは簡単ではありません。だからこそ、支援機関や専門家に相談することも選択肢の一つです。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
人の話が理解できない…発達障害の「脳の特性」が原因かも

ADHD/ASD/APDの特性があり「聞こえているのに、内容を理解できない」という悩みを抱える方へ。今すぐできる具体的な対処法を紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「口頭で指示されたことが、頭に全然入ってこない」「複数のことを一度に言われると、混乱してしまいがち」「話をちゃんと聞いていないと叱られることがある」「何度も同じことを聞いてしまい、嫌な顔をされてしまった」 このような「話を理解すること」への苦手意識やお悩みを抱えていませんか。 「自分は理解力がないのだろうか」「仕事ができないのかもしれない」と、自己嫌悪に陥ってしまう方は少なくありません。しかし、それは努力不足や仕事スキル不足が原因ではなく、発達障害(神経発達症)による脳機能の特性が関係している可能性があります。 この記事では、発達障害のある大人が職場で「人の話が理解できない」と感じる原因と対処法を、筆者の体験も交えてご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 「人の話が理解できない」あるあるチェック まずは、発達障害のある方が職場で経験しやすい「理解困難」の場面をチェックしてみましょう。 特性は一人ひとり異なるため、人によってみられる「苦手」もさまざまですが、よくあるお悩みを10個あげます。 ▼ 職場での「理解困難」チェックリスト 口頭で指示されたことが、頭に入ってこない(聞いているはずなのに残らない) 複数のことを同時に指示されると、混乱して何から手をつければいいかわからなくなる 指示の意図を取り違えてしまい、まったく違う方向で仕事を進めてしまう 「あれ、これ、それ」といった代名詞が何を指しているのかわからなくなる 会議中に話を聞いているつもりなのに、途中から内容についていけなくなる 同僚や上司の言葉の「行間」や「ニュアンス」が読み取れない 何度も同じことを聞き直してしまい、叱られたり呆れられたりする 音は聞こえているのに、言葉として意味が入ってこない感覚がある 電話での会話が特に苦手で、内容を正確に把握できないことが多い 発達障害の特性がある方で、いくつか当てはまった場合には、それが「性格の問題」でも「怠慢」でもなく、脳機能の特性によるものである可能性があります。 「何度言ってもわからないのか」と叱責され、自分を責めてきた方もいるのではないでしょうか。しかし、理解するための「回路」が一般的な人と異なるだけで、あなたに問題があるわけではありません。その特性を正しく理解し、自分に合った方法を取ることが、何よりの解決策になります。 「人の話が理解できない」原因となりやすい発達障害の特性 発達障害には、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、SLD(限局性学習症)などがありますが、同じ診断名であっても、「人の話が理解できない」原因は一人ひとり異なります。 診断名だけに縛られず、「自分はどの特性が原因で理解に困難を抱えているのか」を把握することが、最初の大切な一歩です。ここでは、主な原因となりやすい特性を4つご紹介します。 ① 聴覚情報の処理が苦手 「聴覚情報」とはその名の通り「耳から入る音を通じて得る情報」を指します。 人によって、口頭など耳から入る情報を処理しやすい人もいれば、文字や図などの視覚的な情報のほうが理解しやすい人もいます。発達障害のある方の場合には「聴覚情報の処理」に困難がある方が多いと言われています。 このタイプの方は、耳から入った情報を脳内で処理・記憶する速度が、話のスピードに追いつかないことがあります。口頭で指示されると情報が頭に入らない、会話の内容がすぐ抜けてしまうといった困りごとが起きやすいです。 ② ワーキングメモリの弱さ ワーキングメモリとは、情報を一時的に頭の中に保持しながら処理する能力のことです。いわば「脳内のメモ帳」です。 ADHDのある方でみられることが多い特性の一つで、ワーキングメモリが弱いと、複数の指示を同時に受け取ったときに最初のほうを忘れてしまったり、話を聞きながら理解する処理が追いつかなかったりします。 「3つお願いしたいことがあって…」と言われた途端、3つ目を聞いた頃には1つ目が飛んでしまう、という経験に覚えがある方も多いのではないでしょうか。 聴覚情報の処理の「口頭指示の苦手」とは原因が異なり、「頭に情報が入ってくるが、記憶として留めておくことができない」という状況が起こります。 ③ 曖昧な表現の理解の難しさ ASDのある方に多い特性として、「言葉の字義通りの意味しか受け取れず、文脈やニュアンスが読み取りにくい」というものがあります。 「適当にやっておいて」「いい感じにまとめて」のような曖昧な指示は、どう解釈すればいいのかわからず混乱します。また、「さっきの件」「例のアレ」といった指示語も、何を指しているのかが理解できないことがあります。 「なぜ、こんな当たり前のことが分からないのか」と怒られる経験を繰り返すうちに、自己肯定感が著しく低下してしまうケースも多く見られます。 ④ APD(聴覚情報処理障害)や聞き取り困難の可能性 APDは「音は聞こえている(聴力に問題はない)のに、言葉が理解できない」障害で、発達障害(とくにADHD・ASD)と併存しやすいと言われています。「聞こえにくい・聞き取れない」という症状がみられるため、その結果「人の話が理解できない」と見られてしまうケースがあります。とくに、騒がしい環境、複数人での会話、電話、会議などで困りやすいのが特徴です。 なお、APDと発達障害の関連を示す研究(Riccio CA, Hynd GW, Cohen MJ, Hall J, Molt L. Comorbidity of central auditory processing disorder and attention-deficit hyperactivity disorder. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 1994)はありますが、よく引用される発達障害とAPDの併存率「50%」という数字は、小規模な子ども対象研究に由来するもので、そのまま一般化することはできません。 実際には、注意、ワーキングメモリ、言語理解など、複数の要因が重なって「聞き取りづらさ」として現れることも多く、背景を個別に見極めることが大切です。 こうした特性や困りごとを自分でもうまく説明できないまま、職場で無理を重ねてしまう人は少なくありません。 ただし、「人の話が理解しにくい」という現象は、発達障害だけが原因とは限りません。以下のような要因による「一時的な認知機能の低下」が影響している場合もあります。 過度なストレス・心理的負荷 慢性的な睡眠不足 うつ病や適応障害などのメンタル疾患 疲れが溜まっている時や環境が激変した時などは、誰しも脳の処理能力が落ちるものです。「自分はダメだ」と責める前に、今の生活環境や体調を振り返ってみることも大切です。 発達障害のある大人が陥りがちな「職場での悪循環」 特性による困難を抱えながらも、多くの方が職場でとってしまう行動があります。それが「無理をして特性を隠す」ことです。 「わかりました」と言ってしまう問題 「また聞き返したら怒られる」「仕事ができないと思われたくない」といった不安から、本当は理解できていないまま「わかりました」と言ってしまうことがあります。 指示内容がよく分からないときでも、質問をしたら相手に「そんなことも理解できないのか」と思われそうで、「知ったかぶり」を筆者はよくしていました。 理解できていない状態で業務を進めると、成果物が的外れになり、やり直しが増え、さらに叱責される…という悪循環に入ってしまいます。それは分かっているのですが、どうしても「わかりました」と反射的に言ってしまいがちでした。 「無理に隠す」ことの二次障害リスク 特性を隠すために毎日多大なエネルギーを使い続けると、慢性的な疲労・不眠・抑うつなどの二次障害につながるリスクがあります。 「みんなと同じようにできなければいけない」という思い込みが強い方ほど、SOSを出せずに限界まで頑張ってしまいがちです。しかし、無理に隠し続けることは長期的に見て、自分の健康にとっても、仕事の継続にとっても得策ではありません。 実際、ADHDのある筆者の知人が、クローズ(障害を開示しない)で働き続けた結果、体調を崩して休職をしてしまったことがありました。 大切なのは、自分の特性を正しく理解したうえで、自分に合ったやり方を「仕組み」として取り入れることです。その知人は、復職して自分に合ったタスク管理の「仕組み」を構築することで、継続的に働けるようになりました。 こうした「一時的な不調」の背景には、過剰適応や二次障害といった状態が隠れていることも少なくありません。以下の記事では、その仕組みや注意すべきサインが分かりやすくまとめられていますので、あわせてご覧ください。 無理をして「普通」に見せようと擬態し、エネルギーを使い果たしてしまう「過剰適応」について紹介しています。 職場での「話が理解できない」を防ぐ対処法 ここからは、特性ごとに有効な対処法を具体的にご紹介します。「全部試す必要はない」というのが重要なポイントです。まず自分の困りごとの原因に合いそうなものを1〜2つ試してみるところから始めましょう。 聴覚情報の処理が苦手・ワーキングメモリが弱い方向け メモを「見える化」して会話の記録を残す 聴覚情報が苦手な方にとって、最も基本的かつ効果的な方法は「その場でメモを取ること」です。ただし、話のスピードに手書きが追いつかない場合もあります。 ボイスレコーダー(スマートフォンの録音アプリ含む)を活用し、後で聞き返せる状態にする 上司に了承を得た上で、指示内容をその場でスマートフォンにメモする 手書きメモをその日のうちに、デジタルに打ち込み直す(情報を一元管理することが目的。Google Keep、Notionなどのアプリが便利) ADHDのある筆者の知人の中に、とにかく仕事のメモを書くための手帳を肌身離さず持っている方がいました。 あるとき、「なぜ自分がその習慣を続けているのか」に気づきました。それは、「自分はワーキングメモリが弱い。だから、メモ帳は命綱だと思って肌身離さず持ち歩き、すぐにメモを取れるようにしている」というものでした。それが分かった後、ワーキングメモリが弱いという特徴に負い目を感じなくなったそうです。 「指示確認シート」を自分で作る 筆者がおすすめしているのが、自分専用の「指示確認シート」を作ることです。指示を受けるときに使う、自分なりの「質問テンプレート」を事前に用意しておくのです。 ▼ 指示確認シートの例 この仕事のゴール(完成形)はどんな状態ですか? 期限はいつですか? わからないことが出たとき、誰に聞けばいいですか? このような質問を整理して手元に置いておくことで、「何を確認すればいいか」がわからない状態を防ぐことができます。最初は「こんなことを聞いたら失礼かな」と感じるかもしれませんが、むしろ「確認してから動く人」は周囲から信頼されます。 筆者は「知ったかぶり」をよくしていたと前述しました。その対策としてこの「仕事の完成形」「期限」「誰に聞けば良いか」だけは分かるまで聞くようにしていました。それが曖昧なまま話が終わりそうなとき、つい分かったふりをしそうになります。 そういう場面では、「今ここで確認したほうが、あとで必ずラクになる」と自分に言い聞かせて、勇気を出して確認していました。 どうしても「習慣化」が難しいときは… こうした対策を知っても、「やり方はわかったけれど、それを続けるのが難しいんだよな…」と感じる方も多いかもしれません。実際、特性がある場合、新しい行動を「習慣化」すること自体が非常に高いハードルになります。 そこで、無理なく続けるための「習慣化のコツ」を2つお伝えします。 1. 新しく始めず「今やっていること」に乗せる「メモ帳を取り出して書く」という新しい習慣を作ろうとすると、脳に大きな負担がかかります。そうではなく、今すでに無意識にやっている行動に組み込んでしまいましょう。 例: 毎日必ずLINEを開くなら、自分一人の「マイグループ」を作り、メモ帳代わりにする。 例: PC作業がメインなら、モニターの縁(必ず目がいく場所)に付箋を貼っておく。 「新しいツール」を使いこなそうとせず、今ある環境をそのまま使うのがコツです。 2. メモを取る時間を「堂々と」確保する「メモを取っている間に相手を待たせてしまう」という焦りから、メモを断念してしまうことはありませんか? 実は「待たせてはいけない」というのは思い込みであることが多く、相手はあなたが正確に仕事をしようとする姿を、意外と好意的に待ってくれるものです。 おすすめは、あえて相手の言葉を意図的にゆっくり復唱しながら書くことです。 「(書きながら)……はい、〇〇を......××までに......ですね...」 このように「今、私はメモを取っています」と明示することで、周囲に気兼ねなく時間を確保できます。復唱することで、その場で理解のズレも修正できるため、一石二鳥です。 曖昧な指示の理解が難しい方向け 「具体化」を習慣にする 「適当にやっておいて」という指示を受けたとき、曖昧(抽象度が高く、不明瞭)な表現が苦手というASDの特性がある方は何をどうすればいいのかわからず固まってしまうことがあります。こういう場面では、「具体化する」ことを習慣にしましょう。 「適当にやる」→「○○のフォーマットを使って、△△の項目を埋める、ということで合っていますか?」と言い換えて確認する 「なるべく早く」→「今日中・明日の朝まで、どちらでしょうか?」と具体的な期限に変換する 「いい感じに」→「前回の資料のようなイメージで合っていますか?」と参考例を確認する 曖昧な表現を「具体的な行動」に変換することで、自分が動きやすくなります。この習慣を取り入れると、指示の取り違えを減らしやすくなります。 ここでは「曖昧な表現の理解の難しさ」と書きましたが、筆者はこれを一方的な弱みだとは考えていません。むしろ、曖昧な事柄を見逃さないセンサーとして働くことがあるからです。 「復唱確認」を取り入れる 指示を受けた後に「では、○○をして、△△の状態にする、ということでよいですか?」と自分の言葉で復唱して確認する習慣も非常に効果的です。 この際、「自分の言葉」にすることが大事だと筆者は考えます。ただ相手の一言一句を再現するだけだと、意味内容をしっかり捉えていない可能性があるからです。自分の言葉にするプロセスがあることで、自分の中に内容が入っていくのだと実感しています。 復唱することで、自分の理解に間違いがないか確認できるだけでなく、丁寧に確認してから動こうとしていることも相手に伝わりやすくなります。多少時間を取っても、やり直しが減ることを考えれば、ずっと効率的です。 APD(聴覚情報処理障害)や聞き取り困難の可能性がある方向け 環境を整える・伝達手段を変えてもらう APDや聞き取り困難がある場合は、騒がしい環境で困りごとが強まりやすいとされています。可能であれば、環境自体を変えることが最も効果的です。 個室や静かなスペースで指示を受けることを相談する ノイズキャンセリングイヤホンを使用する(周囲の雑音をシャットアウトする) 口頭だけでなく、メールやチャットでも指示を送ってもらえるよう相談する 電話対応を最小限にし、テキストでのやり取りを主にしてもらう 筆者は、周囲の話し声と、目の前の相手の声が、同じくらいの強さで耳に入ってきてしまう感覚があります。そんなときには、相手の方に視線を合わせ、耳に手を添えて「もうちょっとよく聞かせてくれませんか」というジェスチャーをします。シンプルですが、それだけに汎用性のある工夫として筆者は幾度となく助けられています。 クローズ就労(障害非開示)の方向け 相手に負担をかけずに聞く 「クローズ就労」とは、職場に自身の障害や特性を開示せずに働くスタイルのことを指します。 その対となる「オープン就労(障害を開示して働く)」であれば、企業から「合理的配慮」として業務の進め方の調整を受けやすいですが、クローズ就労ではそうしたサポートを前提にできません。 そのため、 「合理的配慮を依頼できない」(自分一人でなんとかしなければならない) 「特性を隠しているため、不器用な自分を見せられない」(評価への不安や強いプレッシャー) といった精神的なハードルから、聞き方一つでも「仕事ができないと思われないか」「相手の時間を奪ってしまうのではないか」と、つい抱え込んでしまいがちです。 筆者はクローズ就労も経験しています。そこでは、配慮を「お願いする」のではなく「相手の説明する負担をこちらで半分引き受ける」という姿勢を見せることで、スムーズに周囲の協力を得る工夫をしていました。以下の3ステップをセットで実践してみましょう。 ①「悩んでいる」と先に開示するいきなり質問に入るのではなく、「今、ここで行き詰まって(悩んで)おりまして…」と一言添えます。この前提情報があるだけで、相手は「あ、助けが必要な場面なんだな」と話を聞くモードに入りやすくなります。 「〇〇の件で少しご相談なのですが、今、ここの解釈で少し悩んでおりまして…」 ②「不完全でもいいから自分の仮説」をぶつける「分かりません、教えてください」とゼロから聞くのではなく、「私は~~だと理解したのですが、この認識で合っていますでしょうか?」と、自分の解釈を提示します。たとえその解釈が間違っていても構いません。あなたが「理解しようと試みた」という事実が、相手の「どこから説明すればいいか」という負担を大きく減らしてくれます。 「私は『Aという進め方』だと理解したのですが、この認識で合っていますでしょうか?」 ③「選択肢」を用意する可能であれば「これはAでしょうか、それともBでしょうか?」と選べる形で聞くとさらに親切です。相手は「そう、Bの方だよ」と答えるだけで済むため、やり取りのコストが最小限で済みます。 「それか、『Bという進め方』という考え方もあると思うのですが、AとBどちらが良いでしょうか?」 自己対処で賄えない場合は「合理的配慮」を活用しよう 上記の対処法を試しても十分でない場合や、職場の理解を得ることが必要な場合は、「合理的配慮」という制度を活用することを検討しましょう。 合理的配慮とは 合理的配慮とは、障害のある人が働くうえで生じる困りごとに対して、職場が過重な負担にならない範囲で必要な調整や配慮をおこなうことです。2024年4月からは企業での合理的配慮が義務化され、障害のある方がサポートを依頼しやすくなりました。 相談する際は、「何が苦手か」だけでなく、「どんな場面で困るのか」「どうしてもらえると仕事がしやすくなるのか」まで具体的に伝えることが大切です。 「人の話が理解できない」ことへの配慮事例 口頭での指示に加えて、メール・チャット・書面でも内容を共有してもらう 複数の指示は、一つひとつ順番に出してもらう 会議の議事録を必ず作成し、共有してもらう 指示の優先順位を明確に伝えてもらう 録音やメモを取ることを許可してもらう 騒がしい環境での作業を避け、静かな席に配置してもらう 合理的配慮を求めるには、自分の特性を言語化して説明することが必要です。「なぜ困っているのか」「どのような配慮があれば改善するか」を具体的に伝えられるよう、日頃から自己理解を深めておくことが重要です。 「自分の特性の理解」こそ、最大の対処法 ここまでご紹介してきた対処法に共通するのは、「自分の特性を正確に理解することが出発点」だということです。 「なんとなく話を理解するのが苦手」ではなく、「自分はワーキングメモリが弱いから複数の指示が苦手だ」「聴覚処理が苦手で、文字情報のほうが入ってきやすい」というように、自分の困りごとの原因を具体的に把握していると、対策が格段に立てやすくなります。 一方で、「自分の特性を自分だけで正確に分析する」ことは、非常に難しい作業でもあります。長年の経験から思い込みが生まれていることもありますし、客観的な視点を持ちにくいこともあります。 そこで、一人で悩まずに専門家のサポートを活用することをおすすめします。就労移行支援などの専門機関では、自己理解を深めるためのプログラムや、特性に合わせた就労支援を受けることができます。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、あなたが「なぜ人の話が理解しにくいのか」「どんな工夫や環境があれば働きやすくなるのか」という特性の分析を、専門スタッフと一緒におこなっています。 それ以外にも、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害があると「生活リズム」が乱れやすい?5つの原因と整え方

夜更かし・朝寝坊や日中の眠気で仕事に支障が出ている…発達障害がある方が生活リズムを崩しやすい原因・対処法についてADHD当事者が紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「夜になると目が冴えて、気づけば深夜まで起きてしまう」「朝起きられず、遅刻や欠勤をしてしまう」「日中の眠気が強く、仕事に集中できない」「昼夜逆転生活がやめられない」 このような「生活リズムの乱れ」に悩みを抱える発達障害の方は少なくありません。 生活リズムの乱れは、気合いや根性の問題にされがちです。ですが、発達障害(ADHD・ASD)のある方の場合は、脳の特性・体内時計のズレ・感覚過敏・ストレス反応などが絡み合い、そもそも「整えにくい構造」を抱えていることがあります。 この記事では、発達障害のある方が生活リズムを崩しやすい原因を紐解きながら、今日からできる対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] なぜ発達障害がある人は「生活リズム」が乱れやすいの?5つの原因 まず、発達障害は先天的な脳機能の特性によって「生活の中での困りごと」が生じるということ(能力の優劣ではない)を理解しなければなりません。最近では、発達障害は「神経発達症」と呼ばれることが増えてきており、障害ではなく「脳の特性」ととらえられるようになってきています。具体的な特性について、代表例を紹介します。 ADHD:先延ばし、衝動性、過集中、時間感覚のズレ、切り替えの苦手さ ASD:感覚過敏/鈍麻、こだわり、見通し不安、対人ストレスの蓄積 これらは、睡眠や生活リズムの「整え方」に強く影響します。つまり、同じ「生活リズムが乱れる」という困りごとであったとしても、原因となる特性は人それぞれで、特性に合わせた対策を講じる必要性があるというのが前提です。その上で、発達障害のある人によく見られる「生活リズムの乱れ」の原因を挙げていきます。 1. 脳の働きによる影響 生活リズムが乱れる大きな原因の1つに、脳内にある「モード切替スイッチ」がスムーズに動かないことが挙げられます。2007年のSonuga-Barkeらの研究によると、私たちの脳には大きく分けて2つのモードがあるとされています。  「バリバリ集中モード」→ 仕事や家事、スマホ操作など、外の世界に意識を向けて活動している時の状態です。  「アイドリング内省モード」→ ぼーっとしている時や、自分の内面を見つめている時、リラックスしている時の「脳の休憩」状態であり、寝る前にこのモードになると、睡眠にスムーズに入ることができます。 通常、この2つはシーソーのように、一方がオンの時はもう一方がオフになります。しかし、発達障害の特性がある場合、このシーソーがうまく機能しない(バランスがとれない)ことがあります。 その結果、夜寝ようとしても脳が「バリバリ集中モード」から抜け出せず、強制終了できない状態が続きます。逆に朝は、脳が「アイドリング内省モード」に居座ってしまい、活動モードに切り替えるのに膨大なエネルギーを必要とします。 つまり、本人のやる気とは関係なく、「脳のギアチェンジ」がそもそも難しいことが、夜更かしや朝寝坊といった生活の乱れにつながりやすくなるのです。 筆者は、仕事が夜に入ると、かなりの確率でそのまま仕事を続けてしまう傾向があります。締切が特に指定されていなかったにもかかわらず、「今、これをやりたい!」という衝動が抑えきれなくなり、企業研修の企画書を一晩で一気に書き上げてしまったことがあります。 翌朝、完成したばかりの企画書を企業担当者の方に送ったところ、「えっ、もう出来たんですか!?」「いつ寝てるんですか……?」と、驚きを通り越して若干引かれてしまいました。 このようにスイッチが入って衝動を抑えられない状態は、実は自分自身の心身を無理に削ってエンジンを回している状態でもあります。実際、それから数日は、夜寝ても1時半や2時台などの不規則な時間に目が覚めてしまうことが増え、結果として生活リズムが大きく崩れてしまいました。 ただ、正直に言えば、早く終わって喜ばれると「やってやった」という嬉しさの方が勝ってしまい、生活リズムの乱れに対してあまり危機感を抱けない自分がいます。 しかし、客観的に見れば、これは寝不足や疲労という「しわよせ」を翌日以降に無理やり先送りしているだけです。その「負の貯金」がいずれ生活リズムを破綻させる引き金になることは、忘れてはならないのだと感じています。 2. 体内時計のズレ 発達障害のある方が「朝起きられない」「夜目が冴える」背景には、単なる夜更かしではなく、脳内の「体内時計」そのものが社会のリズムとズレやすいという特性があります。海外の「発達障害と睡眠」にまつわる研究情報を紹介します。 最新の研究(Bijlengaら, 2019)では、ADHDのある人の約75%に体内時計のズレが見られると報告されています。眠気を誘うホルモン「メラトニン」が分泌されるタイミングが、定型発達の人より平均して1.5時間〜2時間ほど後ろにズレています。本人が寝ようとしても、脳がまだ「昼間」だと認識しているため、物理的に眠ることが難しいのです。 自閉スペクトラム症(ASD)の方に関する研究(Gamlielら, 2018)では、メラトニンを体内で作るための遺伝子(ASMT)の働きが弱く、ホルモン量自体が慢性的に不足している可能性が指摘されています。これにより、「自然に眠くなる」という感覚が掴みにくく、眠りが浅くなりやすいという特徴があります。 発達障害のある方は、脳の中の時計が少し後ろにずれているため、脳が「今はまだ昼間だ」と言っているのに、外の世界はもう寝る時間…というギャップに悩まされることが多いのです。 その結果、寝つきの悪さや睡眠不足がどうしても起こりやすくなり、結果として社会のリズムに合わせるために必要な「朝起きること」が人一倍辛くなってしまうのです。さらに「夜寝られないから、朝起きられない」ということに加えて、脳が目覚めて活動するために必要なホルモン(コルチゾールやセロトニン)が適切に分泌されない傾向があるため、「夜も朝も、体内時計が狂ってしまいがち」になるのです。 3. リベンジ夜更かし 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすい理由としてよく言われているのが「リベンジ夜更かし」というものです。 リベンジ夜更かしとは、日中に失敗を積み上げてしまい、夜になって自分の時間が取れるようになると、まるで日中の失敗を取り返すように動画・ゲーム・SNS・趣味に深夜まで没頭してしまうことです。 これは、報酬がすぐ得られる刺激(スマホ等)に引っ張られやすかったり、先延ばしで日中のタスクが夜に残りやすかったり、過集中で切り上げどきが分かりづらくなるといったADHD特性との相性が非常に悪く、生活に支障が出ることも少なくありません。 なお、「リベンジ夜更かし」については、関連コラムでも、発達障害との関係や対策が整理されていますのでご覧ください。 4. 感覚過敏 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすいもう一つの大きな原因が「感覚過敏」です。 これは、周囲の環境からの刺激を人一倍強く受け取ってしまう特性で、寝ようとする時に脳を邪魔する「刺激」が多すぎる状態を指します。 例えば、布団のチクチクした感触やパジャマのタグ、エアコンの動作音や外を通る車の音、わずかなLEDの光や街灯の漏れ、さらには微かな匂いなど、定型発達の人には気にならない程度の些細な刺激が、脳にとっては無視できない不快感として刺さります。 こうした刺激があると、寝ようとしても脳が「安全じゃない」「気になる」を処理し続け、入眠が遅れます。結果として、寝る時間が後ろ倒しになり、生活リズムも崩れがちになってしまいます。 5. 日々のストレス蓄積と自律神経の乱れ 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすい5つ目の原因が、日常的な「ストレスの蓄積」です。これは、日々の生活で生じる「小さな負荷」を人一倍受け取りやすく、脳が常に緊張状態に置かれてしまうことを指します。 例えば、マルチタスクや急な予定変更への対応、対人コミュニケーションでの気疲れ、自分のこだわりと現実との摩擦、そして失敗経験の積み重ねなど、避けがたい日常の要素が大きな負担となります。ストレスが慢性化すると自律神経のバランスが崩れ、寝つきの悪さや中途覚醒、早朝覚醒といった睡眠トラブルを招きやすくなります。 こうした負荷があると、寝ようとしても脳が「安全じゃない」「休めない」と警戒し続け、入眠が遅れがちになってしまいます。 なお、日々の生活で溜まったストレスを「どう軽減し、どう付き合っていくか」という実践的な対処法については、こちらのコラムに分かりやすく整理されています。 生活リズムの乱れが仕事や日常に与える悪影響 一度生活のリズムが崩れると、単なる「寝不足」では済まない「負のループ」が始まってしまうことがあります。具体的にどんな悪影響があるのか、整理してみました。 1. 仕事の「信頼」と「質」が削られてしまう 日中の強い眠気は、本人のやる気とは関係なく、判断力を奪います。 集中力が落ちる:普段ならしないような「うっかりミス」が重なり、仕事の質が落ちてしまいます。 信頼の貯金が減る:朝起きられずに遅刻が増えると、職場の信頼関係にもヒビが入りかねません。 「気合でカバー」しようとしても、脳のパフォーマンスが落ちている状態では限界があります。 2. 心の元気がなくなっていく(メンタルへの影響) リズムの乱れは、心を安定させる脳内物質のバランスを崩してしまいます。 頭が働かない:常に頭の中にモヤがかかったような状態(ブレインフォグ)になり、集中できなくなります。 気持ちが沈む:気分の落ち込みを招きやすく、それがさらに「何もしたくない」という悪循環を加速させてしまいます。 イライラしやすくなる:感情のブレーキが利きにくくなり、些細なことで激しい怒りや自己嫌悪に陥ります。その興奮でさらに眠れなくなるという二次被害も招きます。 3. 身体の「土台」が崩れてしまう(健康への影響) 不規則な生活リズムが続くと、自覚のないまま深刻な身体的なダメージを蓄積させます。 自律神経の乱れ:活動と休息のスイッチがうまく切り替わらなくなります。動悸や慢性的な疲労感など、本人のやる気では制御できない「体の不調」を招きます。 生活習慣病リスク:不規則な生活は、高血圧や糖尿病のリスクを押し上げます。ストレスによる過食や運動不足も重なり、将来への「負の貯金」を溜めてしまいがちです。 ここまでの話は、現在お仕事をされている方だけへの話ではありません。今お休みしている方や、新しい仕事を探している方にとっても、生活リズムを保つことは「いつでも戦線復帰できるための準備」として極めて重要です。 リズムを戻すのは大変:いざ復職が決まった際、仕事の感覚を思い出すこと以上に、勤怠時間に合わせた生活リズムに調整することは、膨大なエネルギーが必要です。 最強の保険:仕事がない時期であっても、決まった時間に起きて光を浴びる。この「自分なりの心地よいリズム」を維持しておくことが、スムーズな再スタートを切るための「最強の保険」になります。 筆者も、実家で暮らしていた休職期間中、とにかく「朝起きて夜寝る」ことだけを家族と約束して生活していました。当時は「なんでそんなことを重視するのだろう」と思っていましたが、今考えるとそれこそが近道だったのだと感じています。実際に、リワーク(復職支援)では、休んでいる間も「規則正しい生活を送ること」を目指すサポートをおこなうことが多いです。 【今日からできる】生活リズムを整える具体的な対策 まずはここから!一般的な生活習慣の改善策 リズムを立て直すには、一度にすべてを変えようとしないことが大切です。ここは王道ですが、効果が大きい順(効果の出やすい順)に並べました。 起きる時間を固定する(最優先):土日も含め、まずは「何時に布団から出るか」を一定にします。ここがリズムのすべての起点になります。 朝に光を浴びる(カーテン全開・外に出る):目から光が入ることで、脳のタイマーがリセットされます。カーテンを開ける、あるいはベランダに出るだけでも効果があります。 朝食をとる(少量でも可):バナナ1本やヨーグルトだけでも構いません。食べ物が胃に入ることで、体の中の「第2の時計」が目覚めます。 日中に適度な運動(散歩で十分):昼間に体を動かすことで、夜に「ほどよい疲れ」が溜まり、寝つきを助けます。近所のコンビニまで歩く程度で十分です。 昼寝は短く(15〜20分程度に):もし昼寝をするなら、深い眠りに入る前の20分以内に抑えます。それ以上寝てしまうと、夜の眠気が逃げてしまいます。 生活のリズムを整えるために「早寝早起き」とよく言われます。筆者はその語順を逆にして「早起き早寝」を勧めています。眠くても一度頑張って起き、太陽の光を浴びて活動すれば、夜には自然と眠気がやってきます。この逆転の発想は、無理なく生活リズムを安定させられる有効な方法だと考えています。 発達障害ならではのコツと工夫 発達障害の特性のある人は、一般的な「早寝」の努力がうまくいかない場合もあります。そんなときは、以下の5つの視点を取り入れてみてください。 1. 寝る前の行動をルーティン化する(入眠儀式を作る) 脳が切り替えにくい人ほど、「今寝よう」という意思決定に頼ると負けやすくなります。毎晩同じ順番で行動し、脳に「これが来たら1日終わり」と条件付けをして覚え込ませます。「何度も繰り返し、習慣化させる」ことが、特性への対処をするための重要ポイントです。とくにASD特性の「マイルールへのこだわり」がある方は行動のルーティン化が効果的です。 例:└22:00 お風呂(シャワー)に入る└22:30 ストレッチを3分だけする└22:40 歯を磨く└22:45 ベッドへ行く(スマホは持ち込まない)└21:30 照明を少し落とす コツ:完璧にできなくてOK。「同じ流れ」をなぞること自体に意味があります。 2. スマホをベッドに持ち込まない(物理で勝つ) ADHD特性があると、スマホは「無限に報酬(刺激)が出る装置」になり、自力で止めるのは至難の業です。意志の力で戦わず、物理的な距離で解決します。 ベッドから手が届かない場所にスマホを置く 充電場所を寝室の外(リビングなど)にする アラームはスマホではなく、専用の「目覚まし時計」を使う 夜間は通知を完全に切る(おやすみモードを自動設定する) あるいは、もっと強力な「物理での勝ち方」として、スマホロックボックスを活用する手もあります。時間を設定し、時間が来るまでスマホを閉じ込めて強制的にスマホを使えなくするのです。 3. 過集中対策は「開始」ではなく「終了」を設計する 夜の趣味や作業が止まらない人は、「やらない」と決めるより、「終わる仕組み」を先に置いておくのが現実的です。 〇時になったら自動でWi-Fiが切れるように設定する タイマーが鳴ったら、反射的に立ち上がって歯を磨くルールにする 画面の明るさが自動で落ちる設定にして、視覚的に「終了」を促す 家族や支援者に「〇時になったら声をかけて」と、外部の力を借りる 4. 感覚過敏がある人は「寝具と環境」に優先投資する 眠れない原因が「刺激」なら、我慢したりするのではなく環境を整えることが大きな助けになります。睡眠環境の改善は、努力よりもコストパフォーマンスが高い領域です。 肌触りが気になるなら、タグが当たらない寝間着や、肌触り重視のシーツを選ぶ 光が気になるなら、アイマスクや完全遮光カーテンを使う 音が気になるなら、耳栓やホワイトノイズ(換気扇のような一定の音)を流す 「重み」があると安心するタイプなら、加重ブランケット(ウェイトブランケット)を試す 筆者の場合、寝間着の首元にある小さなタグが肌に触れる感覚で目が冴えてしまうことがありました。今では、タグは根元から切り取るようにしています。 5. 「夜に考えない」仕組み(不安・反省の暴走を止める) 夜は不安が増幅されやすい時間帯です。反省が止まらず脳が仕事を始めてしまうのを防ぎます。 不安はメモに吐き出す:明日の予定や不安は紙に書き、「紙に預けた」として脳から追い出す。 反省は朝に回す:夜の反省は禁止。「続きは明日の朝、明るいところで考える」と決める。 頭がうるさい日は音を流す:無音だと思考が暴走するため、単調な音声(ラジオや朗読など)を小さく流して、脳の注意をそらす。 自力で改善するのが難しいときは無理せず頼ろう 生活リズムは、努力だけではどうにもならないことがあります。特に、長期間の不眠や日中の強い眠気が続く場合、「生活習慣」だけでは片づかない領域に入っていることがあります。 睡眠障害が疑われる場合は医療機関へ 発達障害のある方は、日常の「小さな負荷」を人一倍受け取りやすく、それが慢性化することで「二次障害」としての睡眠障害を抱えやすくなります。 これは、周囲に合わせようとする過度な適応努力(マスキング)や、失敗経験の積み重ねにより、脳が常に「警戒モード(過緊張)」になってしまうことが原因です。この状態では、リラックスを司る副交感神経がうまく働かず、心身が休まらない悪循環に陥ります。 筆者も、前職で休職に至る直前、この過緊張による「早朝覚醒」に苦しみました。「明日は絶対に失敗できない」「誰よりも早く会社に行って準備しなければ」という強烈なプレッシャーから、まだ外も暗い午前3時や4時にパッチリと目が冴えてしまうのです。 一度目が覚めると、頭の中は仕事の不安で埋め尽くされ、二度寝など到底できませんでした。 こうした「早く行かなければ」という焦燥感による早起きは、決して健康的なものではなく、脳が疲弊しきった末に出していた「悲鳴」でした。 このように、心理的な負荷が自律神経を乱し、寝つきの悪さや中途覚醒、そして深刻な早朝覚醒を引き起こすことは、発達障害の特性のある方にとって決して珍しいことではありません。 ここまで紹介したセルフケアや工夫だけでは改善が難しい場合、あるいは以下のような状況に当てはまるなら、早めに心療内科・精神科・睡眠外来などを受診することを検討してください。 眠れない/起きられない状態が数週間以上続く (一時的なものではなく、慢性化している) 日中の眠気で仕事や運転にリスクがある (自身の安全や、他者の安全に関わるレベル) 気分の落ち込みや不安が強くなってきた (睡眠の問題がメンタルに波及し、二次障害が深まっている) いびき・無呼吸が疑われる (物理的な呼吸のトラブルが睡眠の質を下げている可能性がある) 生活を維持するのにしんどさを感じる (食事や入浴などの日常生活の動作に負担を感じる) 「病院は他に打つ手がなくなった時の最後の手段」と考えてしまいがちですが、決してそうではありません。医療機関や専門家は、あなたの生活を壊さないための、心強い「守る手段」の一つです。 自分だけで抱え込まず、プロの力を借りて脳のスイッチをメンテナンスしていくことも、生活リズムを立て直すための非常に現実的な選択肢です。 障害福祉サービスやサポートツールの活用 生活リズムは、自分ひとりの意志で立て直そうとするよりも、外部の「伴走」があるほうが圧倒的に安定しやすくなります。 1. 専門の支援サービス 生活面の土台づくりや就労準備をプロが支えてくれる仕組みがあります。 自立訓練(生活訓練):自立した日常生活や社会生活を営むために必要となるスキル習得のサポートやアドバイスをおこなうサービスです。 就労移行支援:一般就労に向けたスキル向上や就職活動をサポートするサービスです。生活リズムの安定は働くための「基礎体力」として、個別のアドバイスを受けることができます。 2. 日々の習慣を支えるツール 特性による「切り替え」や「忘れ」を補うために、以下のようなツールを「少数に絞って」使うのが効果的です。 生活・睡眠ログ:現状を客観的に把握する(ウェアラブル端末など)。 リマインダー:服薬、入浴、消灯など、ついつい先延ばしにする行動を通知する。 ブロッカーアプリ:夜間のSNSや動画視聴を物理的に制限する。 筆者の経験からも、「便利なツールを増やす」より「これだけは頼れる仕組みを一つ作る」ことの方が重要だと実感しています。 筆者はリマインダーアプリを一つに絞って愛用していますが、これがあるからこそ今の生活と仕事が成り立っています。つい最近も、月初に「経費のレシートまとめ」を無事終えられましたが、これは1か月前の自分がリマインダーをセットしておいてくれたおかげでした。 「未来の自分」に指示を出す仕組みを一つ定着させるだけで、日常生活も仕事もぐっと楽になります。 セルフモニタリングで自分のリズムを知ろう これまで色々と「生活リズムの整えかた」をお伝えしましたが、その大事な第一歩は、「正しい生活をしよう」ではなく、自分の好調・不調のパターンを知る、いわゆる「セルフモニタリング」をおこなうことです。 セルフモニタリングでは、こんな項目を1〜2週間だけ記録します。 寝た時間/起きた時間 寝付くまでの時間 夜更かしした日の「直前の行動」(スマホ、仕事、趣味、反省など) 日中の眠気(強い時間帯) カフェイン、昼寝、運動の有無、その日の満足度(リベンジ夜更かしの指標) その日のストレス(ざっくりでOK) すると、「夜更かしの引き金」や「眠くなる波」が見えてきます。見えれば対策は、気合いではなく設計に変えられます。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、セルフモニタリングの方法や生活リズムを整えるためのプログラムを提供しています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害】転職を繰り返すのはなぜ?原因と長く働くためのコツ

仕事が続かないのは、ADHD/ASDの特性とのミスマッチが背景にあることも。発達障害のある方の短期離職の原因と長期就労を目指すコツを紹介。

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「長く働くつもりだったのに、またすぐに辞めてしまった…」「次の職場でも、どうせすぐに辞めてしまう気がする…」 そんな悩みを抱えていませんか。 転職回数が増えてくると、「自分は社会に向いていないのでは」「また短期間で辞めてしまうのでは」と、不安や自己否定の気持ちが強くなることがあります。しかし、転職を繰り返すことは、必ずしも「忍耐や努力が足りない」「性格の問題」というだけではありません。発達障害の特性と、仕事内容や職場環境が噛み合わないことで、働き続けることが難しくなる場合もあります。 特性が「退職理由」の背景にある場合、辞めたくなる気持ちは、「合わない場所から離れる」という一種の防衛反応とも言えます。 この記事では、転職を繰り返しやすい方のパターンと発達障害の特性との関連を整理しながら、ADHDの特性がある筆者の経験も交えつつ、長期就労につながりやすい対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 【チェックリスト】転職を繰り返す人に多い「短期離職」のパターン まずは、発達障害がある方の短期離職の原因を整理してみます。いくつ当てはまるかを確認しながら読み進めてみてください。 あなたの退職理由は? 気持ちが高ぶった勢いで「辞めます」と言ってしまった 仕事が覚えられず、職場にいることがつらくなった ミスが続き、注意されるのが怖かった 頑張っているのに、仕事がうまくこなせなかった 人間関係がうまくいかず、職場での居心地が悪かった 朝起きられず遅刻が増え、会社に行きづらくなった 「普通にできるふり」を続けてしまい、心身が限界になった これらは、発達障害がある方の退職理由の中でもとくに多いものです。当てはまる場合は単なる「努力不足」ではなく、発達障害の特性と職場環境のミスマッチが退職の背景にあった可能性があります。これから、なぜこうしたことが起きやすいのかを、特性との関連で見ていきます。 発達障害の特性と「早期離職」の深い関係 発達障害の特性は人によってさまざまですが、ここでは短期離職と関連しやすい特性のうち代表的なものをいくつか紹介します。診断の有無にかかわらず、「似た傾向があることで働きづらさを感じている」という方にも参考になる部分があると思います。 ADHD|「衝動性」によってその場の感情で動いてしまう 職場で嫌なことがあったとき、気持ちが強く揺れた勢いで、退職を伝えてしまうことがあります。たとえば以下のような状況です。 上司に注意された直後に、反射的に辞意を伝えてしまう 相談する前に「辞めるしかない」と結論を出してしまう その場を離れたい気持ちが強く、選択肢を考える余裕がなくなる 衝動性が強いと、「一度落ち着いて考える」「他の方法を検討する」といった「間」を作りづらくなることがあります。その結果、退職以外の選択肢(業務の調整、配置換え、相談、休職など)を検討する前に、退職に進んでしまうことがあるのです。 筆者は、会社勤めから個人事業主へ働き方を変えましたが、退職を決めた発端はまさに衝動性によるものだったと思います。 自分がやりたい仕事があり、会社では別の仕事をしている 本業として会社の仕事を、副業としてやりたい仕事をしてきたが、一日の大部分の時間を会社の仕事に取られるのが我慢できなくなった 会社の仕事に興味を失い、「辞めるしかない」としか考えられなくなった ADHD|「不注意」によって仕事のミスが生じる 短期離職の理由として多いのが、「仕事が合っていない気がする」という感覚です。この言葉はとても曖昧になりやすいのですが、実際には次のような流れで「合わなさ」が強まっていくケースが見られます。 ミスや抜け漏れ、遅れが増える 指摘される回数が増え、評価が下がったと感じる 自信がなくなり、緊張や不安が強くなる さらにパフォーマンスが落ち、ミスが増える 「自分は向いていない」と思い込み、退職につながる ここで大切なのは、「向いていない=能力がない」と決めつけないことです。合わない仕事や環境では力が出にくくなります。 ADHD特性と相性が悪くなりやすい業務例 単調な作業が長時間続く(集中が切れた時にミスが起きやすい) 精密な確認作業が多い(細かな抜け漏れが問題になりやすい) マルチタスクが前提(切り替えの負担が大きい) 割り込みが多い環境(集中が途切れやすい) 筆者も、管理部門の総務という典型的な事務職の職場で働いていました。そこでは、絶えず発生する社内外の問い合わせにタイミングよく対応しながら、社内の備品を定期的にチェックしたり、権限設定の複雑な入退室のカードを適切に管理したりしなければなりませんでした。当時の筆者にとって、一番相性が悪い仕事のオンパレードでした。 一方で、特性に合う条件がそろうと就業が安定しやすいことがあります。筆者は、人前でプレゼンテーションをしたり文章を書くことに抵抗が無かったので、社内イベントの司会や形式的に整った文書の作成などとは相性が非常に良く、「この仕事は合っている」と感じていました。 面倒なことに、この「相性が悪い仕事」も「相性が良い仕事」も、同じ「総務の職場」でのものでした。今までを振り返ると、素の自分が100%合わない職場は無かったように思いますが、100%合う職場というのも無かったという印象です。 ASD|「コミュニケーションの苦手」によって人間関係がうまくいかない ASDのある方は、言葉の受け取り方や伝え方に「ズレ」が生じやすく、以下のようなケースが積み重なって人間関係のストレスにつながることがあります。 冗談や遠回しな言い方が読み取りづらい 暗黙のルールが分からない 会話のタイミングが合わない また、本人は真面目に対応しているつもりでも「冷たい」「空気が読めない」と受け取られてしまい、注意や指摘が増え、職場に居づらくなるケースがあります。こうした状況が続くと、疲れやすさや自己否定が強まり、結果として退職に至る方も少なくありません。 筆者は診断はADHDですが、こういった傾向を自覚しています。総務として働いていたとき、会社の飲み会の仕切りが非常に苦手でした。周囲に気を配って食べ物やお酒を追加注文しつつ、タイミングよく会話を盛り上げる。気の利いた締めの一言で会を終わらせる。「それも総務の仕事のひとつ」と言われて頑張りましたが、苦痛以外の何物でもありませんでした。 ASDのコミュニケーション特性は、指示の捉え違いによる仕事の失敗、接客や営業職でのお客様とのやりとりがうまくいかない等、業務上の「苦手」につながることもあります。 ASD|「感覚過敏」によって職場環境にストレスを感じる ASDの特性の一つに、音・光・におい・肌ざわりなどの刺激に敏感な「感覚過敏」があります。たとえば、以下のような刺激が強い負担となり、集中が途切れたり疲労が急激に増えたりします。 電話の音や周囲の雑音 蛍光灯の光 香水や柔軟剤のにおい 本人の努力だけでは対処が難しく、「仕事の内容」以前に「環境がつらい」状態になってしまうこともあります。結果として、体調を崩したり、通勤や出社が苦痛になったりして、離職の引き金になることがあります。 筆者は、スーツが苦手です。衣服が体にフィットする感覚は苦痛でしかなく、それを着るだけで思考力が落ちるような気がします。服装自由のIT企業でも、「スーツはサラリーマンの戦闘服だ」と言われてスーツでの勤務を推奨され、比較的大きさに余裕のある服装で出勤すると「あれ?夏休み?」と嫌味を言われたことがあります。 これら以外にも、発達障害の特性によって、以下のような困難が生じ、退職につながるケースがあります。 ADHD:日中の眠気・やる気が起きない ADHD:先延ばしグセや時間見積もりに苦手があり、締め切りに間に合わない ADHD:忘れ物や失くし物などが続き、注意や叱責を受ける ASD:指示が曖昧・抽象的なときに、理解ができなかったり不安になったりする ASD:急な変更やイレギュラー対応が重なると、負荷が一気に高まりやすい ASD:複数の仕事をバランスよくこなすことが難しい ASD:こだわりが強く、業務フローの変更を受け入れられない 上記以外にも、さまざまな「特性による働きづらさ」が生じることがあります。 こうした困難を「自分の努力で何とかしなければ」と抱え込んでしまうと、必要以上に頑張りすぎて心身がすり減ってしまうことがあります。頑張りすぎることで、「過剰適応」「二次障害」といったさらなる悪影響につながることもあります。 人間関係や環境によるストレス(過剰適応・二次障害) もう一つ、短期離職につながりやすい要因として「過剰適応」があります。周囲に合わせるために無理を続け、特性を隠して「普通にできているように見せる」「困難がないように振る舞う」状態、いわゆる「擬態」を長く続けてしまうと、心身の負担が大きくなりやすいです。 相談したいけれど、迷惑をかけたくなくて言えない ミスをしても助けを求められず、抱え込んでしまう 人に合わせ続けて疲弊し、ある日突然動けなくなる このストレスが蓄積すると、うつ状態や適応障害などの二次的な不調、いわゆる「二次障害」につながることもあります。こうしたつらさを少しでも感じたら、無理に一人で抱え込まず、医療機関や支援機関に相談することも大切です。 なお、「擬態」をしていると、このストレスを溜め込んでいてもなお、それを無視して擬態を続けてしまう悪循環に陥りがちな傾向があります。 筆者もこの「擬態」スキルを磨きに磨いてしまった結果、ある時期を境に「普通なら15分程度で終わる仕事が、1時間半経っても終わらない」「会社に向かおうとしても足が動かない」といった状態に陥り、医者から「抑うつ」と診断されて休職を余儀なくされた経験があります。 「過剰適応」「擬態」「二次障害」について思い当たる方は、ぜひ下記の関連コラムをあわせてお読みください。理解が深まり、対策の参考になることでしょう。 転職を繰り返さないためにできること【自己対処と環境選び】 ここからは、「精神論」ではなく、現実的に取り入れやすい対処の方向性を整理していきます。ポイントは、自分にムチ打って頑張り続けるのではなく、続けやすい形に整えることです。 自己理解を深めて「自分に合った働き方」を知る 長く働くためには、「好き・嫌い」だけではなく、特性を踏まえた「向き・不向き」を整理しておくことが役立ちます。たとえば以下のような観点です。 集中しやすい条件は何か(静かな環境、時間制限がある、動きがある等) 特性による苦手が出やすい条件は何か(割り込み、曖昧な指示、同時並行等) どんなときに調子を崩しやすいか(睡眠不足、叱責が続く、相談できない等) どんな工夫があると安定しやすいか(手順書、チェックリスト、メモの許可等) 「自分の取扱説明書(ナビゲーションブック)を作る」ようなイメージで、条件を言語化していくと、仕事選びや職場選びの精度が上がりやすくなります。 以前、筆者はこのようなことを「甘え」だと捉えていました。集中できない環境でも集中する頑張りを見せる、苦手を克服する、調子が悪くても無理矢理根性で乗り切る、工夫よりも執念、そういったことを良しとしていました。 もちろん、頑張ることや諦めないメンタリティなどは大切です。一方で、特性を踏まえて「向き・不向き」を把握し、より自分が力を発揮できるようにする努力も大事なものです。それは決して「甘え」ではありません。発達障害の特性がある方に向いている仕事選びのコツについては、以下の関連コラムもぜひあわせてお読みください。 現在「一般雇用枠」で働いている方の場合は、障害や特性を開示したうえで、必要な配慮を受けながら働ける「障害者雇用枠」を検討するのも一つの方法です。 必ず切り替えるべき、という意味ではありませんが、業務の進め方や職場環境について相談しやすくなり、働きやすさにつながることもあります。ご自身の体調や働き方の希望を踏まえ、支援機関や専門家と一緒に、開示の範囲や選択肢を整理してみると安心です。 自分を守るための「セルフケア」と「相談」 衝動性が強い方の場合、「辞めたい気持ち」を無理に消すより、決断する前に立ち止まる仕組みを作ることが役立ちます。 その場で結論を出さない(時間を置く) 退職を言う前に、必ず相談する相手を決めておく 「辞めます」ではなく「相談したいことがあります」と言い換える 生活リズム(睡眠・食事・服薬管理など)を整える 土台が安定すると、同じストレスでも受け止めやすくなることがあります。「やる気の問題」ではなく、調子の波を小さくする「セルフケア」を行うことが大切です。自分の「感情のコントロール」の仕方を身につける方法(認知行動療法など)を学んでみてもよいかもしれません。 このセルフケアのタイミングですが、筆者は過去を振り返って、「思うより早くすべきだった」と考えています。日常的に繰り返していることに少しでも変化があれば、気に留めておくと良いでしょう。 混雑するターミナル駅での乗り換えを避け、ちょっと回り道をして別の駅で乗り換えをする 時間はかかるが確実に座れる別の路線で帰宅する 電車賃の何倍ものお金をかけて職場から家へタクシーで帰る これらはいずれも筆者の休職直前の変化です。しかし当時は、「ちょっとした通勤の工夫」「頑張っている自分へのご褒美」という感覚でした。今振り返ると、それはセルフケアをすべきサインであったように思います。 職場での「合理的配慮」を検討する 働き続けるためには、本人の工夫だけでなく、「合理的配慮」が助けになることがあります。合理的配慮とは、障害や特性によって生じる困難を軽減するために、職場が可能な範囲で行う調整のことです。 発達障害の特性に対する配慮事例 指示を口頭だけでなく、チャットやメモで残してもらう 優先順位を一緒に整理してもらう チェック工程を仕組みとして組み込む(抜け漏れ防止) 席配置の工夫、騒音や刺激の調整 手順書・テンプレート・チェックリストの活用 「合理的配慮」という字面から、「会社に一方的に配慮してもらうなんて申し訳ない」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。筆者もそう考えたうちの一人でした。約20年前、初めて会社に就職したとき、採用担当者から配慮事項を聞かれて「いえ、ありません。ご迷惑をおかけせず、一生懸命頑張ります」と答えてしまいました。 合理的配慮は、もちろん職場側との調整ではありますが、それをすることによって職場全体にも良い影響を与えることが多いです。指示の言語化、優先順位の共有、働きやすい職場、手順書による業務の平準化など、その恩恵を受けるのは本人にとどまらないこともよくあります。 なお、合理的配慮については、下記の関連コラムでより詳しくご説明しています。よろしければこちらもあわせてお読みください。 【事例紹介】「続かない」を克服し、長期就労を実現したケース ここでは、短期離職を繰り返していた発達障害のある方が、工夫と環境調整によって安定して働けるようになった例をご紹介します(個人が特定されないよう内容は一部調整しています)。 事例:Nさん(20代後半・ASD)「ミスマッチの修正」と「外部サポートの活用」で安定 Before 広告系スタートアップ企業に入社するも、タスクが納期通りに終わらないことや業務のミス、職場でのコミュニケーションの難しさが重なり、自責が強まる。3年目の終わりに適応障害で休職し、療養中にASDの診断を受けた。 Action 平日毎日の記録と週1回の面談で状況を整理できる、発達障害当事者向けの個人コンサルを活用し、負担を減らす工夫を具体化しました。付箋・手帳・Notionなどを試しながら自分に合う形を整えていきました。 After 転職活動と資格勉強、繁忙期が重なる時期でも、個人コンサルで教わった方法でリソースを見積もって調整できるようになり、内定を獲得し、資格試験にも合格。新しい職場で一般雇用枠での就労を継続中。 ポイント 「気合い」ではなく、記録と振り返りの仕組みで立て直したこと 配慮が得にくい環境だったので、外部サポートでカバーする体制を確保したこと 繁忙期に崩れやすい局面で、リソース見積もりと調整ができるようになったこと 事例:筆者「過剰適応をやめ、無理のない働き方」へ Before 職場に合わせようとして無理を重ね、「できているふり」を続けていました。しかしミスなどから業務に支障が出てくるようになり、突然休職。その後退職してクローズド就労(障害を開示しない働き方)で転職するも、まったく同じ理由でまた休職し、「また続かなかった」と自分を責める気持ちが強くなっていました。 Action 自身のミス発生事例と向き合い、「できなくても頑張る」ではなく「できないものはできないと認めた上で自己対処をする」姿勢へ転向。一般には「タスク管理」と呼ばれる方法で自己対処をし始めました。 After 勤怠が安定し、残業もほぼなしで無理なく仕事を回すことができるようになりました。「忘れがち」「先送り癖」「段取り苦手」といった自身の特性を受け入れ共存しながらも、仕事で結果を出せるようになりました。 ポイント 「無理をして頑張り続ける」ではなく、自身の特性を受け入れて無理を減らしたこと 特性をカバーする「やり方」を身に付けたこと 結果的に生活リズムが安定し、より働きやすい環境を作れたこと 一人で悩まず、就労支援のプロを頼ってみませんか? 転職を繰り返してしまうと、「次もダメかもしれない」という不安が大きくなり、相談すること自体が難しくなることがあります。ですが、短期離職の背景には、特性と環境のミスマッチや、過剰適応による疲弊など、整理できる要因があることも少なくありません。 自分だけで抱え込まず、ときには第三者を交えながら「何が起きているのか」「どうすれば続けやすくなるのか」を整理していくことで、少しずつ選択肢が増えていく可能性があります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。