【発達凸凹×心理検査】ASDとマインド・ブラインドネス
こんにちは!ディーキャリア川崎オフィス 職業指導員の吉村です。
発達に凸凹がある、とりわけASD傾向の強い方は、
独特なものごとの捉え方や、人との距離感が分からないという方も多いですよね。
それはASD特性である「相手の心が読めない」ことが、関係していると思われます。
知的な遅れがなく、判断力は十分にあるにも関わらず、
他の人が考えていることを推測しにくいと言うことから、
「マインド・ブラインドネス」と表現が使われることもあります。
ASD傾向の強い方には、割とよく聞くお悩みのひとつですよね。
イギリスの発達心理学者サイモン・バロン・コーエンは、
このマインド・ブラインドネスが、ASDの障害の中核をなしていると考え、
『心の理論』という仮説を提唱しました。
ASD傾向のある方の行動原理を『心の理論』という他者理解の能力障害として、
理解しようとするものになります。
■ 心の理論とは
心の理論(Theory of Mind:ToM)とは、他者の行動の意味を理解し、
行動を予測するための、他者の視点に立つ能力のことを指します。
具体的には、目に見えない他者の内側にある、意図や知識、思考、感情などの、
「心の状態」を理解、推測することです。
心の論理の獲得は、社会性発達においてとても重要な役割を果たすと考えられています。
心の論理を獲得しているかを確認する課題を『誤信念課題』と言います。
誤信念課題の最も有名なものに『サリーとアンの課題』があります。
一般的に誤信念課題は、障害の子どもは通常、4歳から5歳ごろに通過することが知られています。
また、知的に遅れがある子でもたちも、知的な発達年齢が5歳相当になった段階で、
通過することが分かっています。
■ サリーとアンの課題
以下の短い劇を子どもに見せた後に、
「サリーはビー玉を見つけるためにどこを探すでしょう?」という課題です。
1つの部屋にサリーとアンがいます。
部屋には「サリーの青い箱」と「アンの赤い箱」が置いてあります。
サリーはお気に入りのビー玉を「サリーの青い箱」の中にしまいました。
サリーは部屋から出ていきました。
アンは、「サリーの青い箱」からビー玉を取り出し、「アンの赤い箱」の中にしまいました。
サリーが部屋に戻ってきました。
お気に入りのビー玉で遊ぼうとしています。
さて、サリーはどこを探すでしょうか?
答えは、もちろん「サリーの青い箱を探す」です。
サリーはアンが自分の赤い箱に、自分のお気に入りのビー玉をしまったことを知らないからです。
心の理論が獲得できていれば「サリーの青い箱」と答えることになり、
もし獲得できていなければ「アンの赤い箱」と答えることになります。
サイモン・バロン・コーエンらが1985年に行った研究では、
実験に参加した臨床的に障害のない27人のうち23人が正解し、
ダウン症の14人のうち12人が正解しました。
しかし、ASDの20人のうち正解したのは4人のみという結果となりました。
もちろん、年齢が上がるにつれて、経験から正解を出せる方は増えてきます。
しかし、もう少し複雑な課題になると、理解が追い付かない方もいるんですね。
『サリーとアンの課題』のような「〇〇さんは△△と思っている」という
他者の状況を理解することを一時的誤信念課題と言われていますが、
「〇〇さんは△△と思っていると、□□さんは思っている」というような、
構造が複雑になることを、二次的誤信念課題と言います。
二次的誤信念課題で有名なものに『アイスクリーム課題』があります。
参考までにご紹介しますので、皆さん、正解が導き出せるか試してみてはいかがでしょうか?
■ アイスクリーム課題
ジョンとメアリーは公園にいます。
公園にはアイスクリーム屋さんの車も来ていました。
メアリーはお金を持っていなかったのでアイスクリームが買えませんでした。
アイスクリーム屋さんは、午後も同じ公園にいるというので、メアリーはお金を取りに戻りました。
しばらくして、アイスクリーム屋さんは教会に行くとジョンに伝え、去っていきました。
その途中、メアリーの家の前を通ったアイスクリーム屋さんは、メアリーに教会に行くことを伝えました。
しばらくして自宅に戻ったジョンは、宿題のことで聞きたいことがあり、メアリーの家に向かいましたが、
メアリーはすでにアイスクリームを買いに出かけていました。
ジョンはメアリーを追いかけていきました。
さて、ジョンはメアリーがどこに行ったと思っているでしょうか?
皆さんは、正解が分かりましたか?
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