【発達凸凹×特性理解】こころのメモ帳・ワーキングメモリーとは
こんにちは!ディーキャリア川崎オフィス 職業指導員の吉村です。
ディーキャリアでは、発達障害特性を、より深く知るための「特性理解」に関するプログラムがいくつかあります。
心理検査などの客観的指標やデータから数値的に理解を進めたり、実践的な対処法の共有をしたり、色々な角度から発達の凸凹について理解を深める取り組みを行っています。
先日こちらのブログでご紹介した「ナビゲーションブック」も、特性理解のプログラムのひとつです。
ナビゲーションブックとは、特性が理由で起こる困りごとと配慮して欲しいことを、職場の方に分りやすく伝えることを目的としたツール
なので、ご自身を俯瞰的に観察する視点が必要となってきます。
どのように記載すれば困りごとが伝わるか相手目線で考え、客観的に自分を見るといった過程の中で、障害特性を正しく理解することの重要性を知り、自己理解へと繋がっていきます。
ところで、最近よく感じるのですが、こういった、ご自身の特性に向き合う取り組みの中で、大抵の利用者さんが
「どうも、自分はワーキングメモリーとやらに問題があるようだ。」と思い当たるようなんですね。
ワーキングメモリーが担う役割は、マルチタスクと言われる同時に並行して処理する能力や、口頭のみの情報をどれくらい記憶して理解できるかなど、発達凸凹が苦手なことばかりです。
優先順位をつけたり、ミスをしないように気をつけるなんてことも、ワーキングメモリーの働きです。
なので、発達障害のある方は、遺伝的にワーキングメモリーに弱さがあると考えられており、実際に弱さを訴える当事者の方は少なくありません。
ワーキングメモリー(Working Memory:作業記憶)とは
考えたり、行動したりするなど、何らかの課題を遂行するために、一時的に記憶を保持したり使用するメカニズムのことです。
脳のメモ帳や、こころのメモ帳とも言われます。
発達障害のある方は、ワーキングメモリーの容量が少ない場合が多くあることが知られています。
一度に保持できる量がそれほど多くないということですね。
特にADHD傾向のある方は、ワーキングメモリーの問題を伴うことが多いと言われています。
たまに、ワーキングメモリー=短期記憶と解釈しているものを見ますが、これは正確ではありません。
ワーキングメモリーとは、短期記憶を用いて情報を処理する能力のことなので、どのように情報をインプット(記憶)して、どのようにアウトプット(処理)するか、それぞれ分析して傾向を知ります。
ちなみに、ワーキングメモリー指標と言えば、WAISという知能検査が、日本で多く利用されていますが、数字を読んで聞かせ、逆の順番から復唱するなど聴覚的な課題が多く、主に耳から捉えた情報の処理能力を測定しています。
WAISの指標得点も参考にしながら、実際に起こる現象を分析することで、自分自身の傾向を知り、自己理解を深めていきましょう。
ワーキングメモリーのインプット分析
「情報量が多かったり、頭の中で複雑な情報処理を求められたりすると、うまく行動できなくなるかどうか」
一度にたくさんの情報が流れこみ、それを処理するなかで、情報を保持できる容量が少なく、漏れていってしまうことが、ワーキングメモリーの問題ですよね。
情報の量や複雑さが増すと、いきなりできなくなる、といった現象があるかないかで、その傾向を見ていきます。
容量の範囲内であれば全く問題はないのに、超えた途端にクオリティが下がるという特徴があれば、ワーキングメモリーに弱さがあると見られます。
<具体例>
・同時に指示を複数与えると行動が抜ける
・手順を一度全部に伝えられると、途中で手順が分からなくなる
・3つ以上の数字を使う暗算ができない
・文字や文を書き写すときに、少しずつしか書き写せない
ワーキングメモリーのアウトプット分析
「課題実行の注意事項や状況情報を忘れてしまうことが多いかどうか」
頭のすみに置いておかなければならない注意事項がポロっと抜けてしまい、その結果、ミスをしてしまった経験はありませんか?
同時に2つ以上のことを意識すると、必ず抜け漏れが発生するのが特徴的です。
アウトプット分析は、主に間違え方や失敗の仕方の傾向を見て、分析することが多くなります。
<具体例>
・英文の最初の文字を大文字にすることや、文末の「。」や「?」を忘れる。
・計算は合っているのに、単位を忘れて答えを書いてしまう。
・長文を読んでいると、どこまで読んだか分からなくなり、また最初から読む。
・納期には間に合ったが、指定されたファイル名の変更は忘れた。
「課題目標を見失うことが多いかどうか」
こちらも典型的なアウトプットで、あれ?今何をしているんだっけ?が、頻繁に起こりやすいかどうかです。
今の自分はどういう状況下で、何をすれば良いのか抜け落ちて、訳が分からなくなる現象です。
<具体例>
・仕事に必要な調べものをしていると、何の仕事をしていたか忘れる。
・自転車で買い物に行き、帰りは歩いて帰ってきた。
・本を取りにきたはずなのに、洗濯物を畳んでいた。
・作業を途中で終わってしまう。
ワーキングメモリーに弱さがある方は、怠けていたり、手を抜いていると誤解されることがあります。
容量内であればできることも、容量を超えたらできなくなる。
「やればできる」というような根性の問題ではなく、記憶と処理の能力の問題だと、正しい理解が広がるといいですね。
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