ある利用者からの質問
「最近のニュースについて疑問が生じましたので、お時間に支障のない範囲で構いませんのでお話を聞きたいです。
マイナンバーを利用したコンビニ交付サービスで他人の情報が発行されるなどの事故が発生しています。
関わっている企業のX社と聞くと、イギリスの「ホライゾン」の事件を連想します。システム障害やトラブルは発生自体を無くすことは不可能だと存じますが、冤罪や自殺につながるトラブルの発生は潜在的なリスクを抱えている結果ではないかと感じました。(自分の知識の偏りがあるかと思いますが)行政や金融機関から技術的に受注できる企業が限られていたためX社のトラブルが目立つのか、1次請け2次請けなどの縦割りのトラブルがこういった事故を起こしやすいのか、どちらが要因として大きいでしょうか?」
こんにちは。ディーキャリアITエキスパート名古屋丸の内オフィスの志村です。
ディーキャリアITエキスパート名古屋丸の内オフィスのある利用者が、わたしに質問があると送ってきたメッセージです。
(ご本人の了解の上、掲載させていただきました。ちなみに企業名をアルファベットに変えています。イニシャルではありません)
う〜ん、ディーキャリアでこんな質問を受けるとは、ちょっと想像しませんでした。
いい意味でね。
スゴイなぁ、この利用者。こんなこと聞きますか。めちゃくちゃハイレベルです。
それでわたしは真面目に答えるのです。
「わたしたちに直接関係しそうなことをまず考えれば、マイナンバーをめぐるシステム化が日本社会に与える影響が確かに大事なのだけれど、X社が関わった「ホライゾン」の事件を挙げられたので、それについてコメントしますね。」
「(ホライゾンの事件について)これはね、非常に奥の深い問題で確定的な答えがありません。・・・報道されている内容もある面からの一つの事実を切り取っているだけで、報道しているマスコミの意思というか見方が出ている。・・・煽っていると思われる節も正直ある。・・・もちろん、X社に責任が無いということも言えない。ある面から考えれば、(これこれという)責任があるし・・・別の面から言えば、責任を問われないとも言える」
・・・ということを、まずお話して「わたし(志村)の」感じたある一面での「見方」を参考までにお話しました。
(それがこの利用者にとって意味ある内容だと思ったのです)
このブログ記事で紹介しようと思ったのは、この質問を通して「志村が」思い出し、感じたある一面(技術者としての経験と記憶と思い)のことです。
前もって申し上げておくと、良し悪しを言っていません。どっちが優れているとか、そうじゃないとかでもありません。
考え方、価値観、選択の違いについて、ご紹介しようかと。
「ある一面からの問題として(わたしが)思うのは、システムの開発をしていて、欧米と日本とでは何を意識するか、何に重点を置くかの考えや基準が随分違うと思うことがあります」
そう、話を続けました。
随分以前のことですが、おそらくは20年以上も前じゃないかな・・・と薄れている記憶をたどりながらお話します。
東京で情報処理に関する大きなカンファレンスがあって、専門の学者の皆さんの発表があったのです。確か米国から招待されてやって来られた学者さんの講演もあった。
かなり立派な権威ある学者さんだったかと思います。名前とかすっかり失念しました(苦笑)
覚えているのは、その先生がおっしゃるには、
「日本は(日本のソフトウェア業界、企業、技術者は)テストに時間を掛け過ぎだ」
と・・・そう言ったのです。
う〜ん、そうだね。テスト、随分やります。不具合、エラーがないか徹底的にやる。
確かに時間かけてる。労力もかけてるなぁ。
でもなぁ・・・と思ったのです。
先生おっしゃるには、
「だから日本はソフトウェアで遅れを取っているのだ」
と言う。
そうですね、テストにかけるコスト(労力、時間)が大きければ、その分、利益も圧迫するし納品までに時間かかるね。
「もっと、素早く開発し納品しないと、利益も出せないし、展開を速くしないと新しいことにも踏み込めない」
・・・というような話だったかと(苦笑)
旧態然としたやり方はいかんと。そうですね。もっともです。
まあ、日本のソフトウェア業界は「ウォーターフォール(型)」開発をずっとやってきたし、今もそれが続いている。「アジャイル(型)」開発を広めたい進歩的な考えの学者さんだったのでしょう。
新しいやり方は「スピード重視」「顧客の要望に素早く対応し」「利益を上げる」、そういうことをしないと(日本のソフトウェア業界は)どんどん、取り残されるよ、
という警告だった・・・かと思います。ちなみに、
「テストに時間をかけると「品質」は上がるかもしれないが、そこまで品質あげなくても良いのだ」
・・・とか言っていたように思います。
新しいことにスピーディーに対応、スピード重視、利益アップこそが重要ですと。
まあねぇ、おっしゃることはよく分かります。
でもね・・・
わたしの経験からして、まあ何というか、全体的な雰囲気ですけれどね・・・う〜ん。
確かに日本は品質重視、テストに時間を(過剰に)かけます。
欧米は利益重視、またはスピード重視で、
スピードが速くないと儲からないと思っている雰囲気があります。
くれぐれも言っておけば、明確なそういう方針やルールがあったりとか、そういうことではないですよ。
国民性?空気?考え方?
・・・みたいな違いがあるような気がする。
IT業界、ソフトウェア業界が直接関わっているかというと、そうでもないかもしれませんが・・・
日本の新幹線は無事故で何十年も事業継続しているでしょ。
他国ではどうでしょうね・・・事故、起きてません?
事故が起きないって・・・品質、意識してるってことじゃありません?
新幹線作った技術者の皆さん、きっとテスト随分やったと思いますよ。
でね、最初のX社が絡んだ「ホライゾン」事件、ホライゾンという会計システムがエラーを出しまくって、それを放置していたユーザー企業が、従業員に責任転嫁して冤罪にまで発展した事件です。
ホライゾンを開発したのは英国企業です。その企業をちょっと前に日本のX社が買収してたんです。X社がホライゾンの致命的な不具合を放置した?ということで話題になりました。
放置したのかどうか、親会社としての監督責任がどの程度あったのか、そもそもなんでその会社を買収したのか、ホントのところはよく分かりません。
わたしが情報不足で、経緯を完全に知らないから間違っていたらゴメンナサイ。
だから、X社に責任があるとか無いとかは、わたしは言えません。
ただね、ホライゾンというシステムを開発した英国の会社・・・テストどのくらいやったのだろう・・・システム開発のやり方は?どうなの?
もしかしてだけれど、スピード重視、利益重視で作ったのじゃない?
(これはわたしの勘繰りです。そうじゃないかもしれない)
もう少し品質を意識していたら、こういう事、そもそも起きなかったのじゃない?
(くれぐれもわたしの想像ですからね)
わたしが経験から知っているのは、米国の偉い学者さんが「日本はテストに時間掛け過ぎ・・・」と言ったこと、それでちょっと納得しがたかったこと。
(ちなみに、テストの効率をアップして、短時間でテストができるっていうことなら・・・それは大事な話で、是非ともすべきです。それは生産性の向上の問題です)
日本の企業や技術者は、作ったものの「品質」とか不具合の無さとかにこだわりがあるってこと。
見栄えはどうあれ、ちゃんと動く、エラーを出さない、なかなか壊れない・・・
って日本の(日本人の)美意識でしょ・・・ってこと。
(ホライゾン事件という)一つの社会事象にも、そういうこと現れてない?と思ったのです。
そういうことを思い出した。
質問してくれた利用者に感謝です。もしかしたら、忘れていた自分の思いを再確認できた。
皆さん、どう思います?(^o^)
最初に言ったように、良し悪しではなく、どっちを選ぶか・・・自分にとってはどっちが良いか・・・くらいのお話です。
ディーキャリアのある利用者からの質問で、いろいろ思い出したり、お話したり・・・なかなか良い時間でした。
これからIT技術者とか、ITを活用して仕事をしていく皆さん、日本人の見方、考え方っていうこともあるんだよと分かってもらえらたら、ちょっと嬉しいです。
ちなみに、利用者が言っていた「1次請け、2次請け」の業界構造についてはどうなのか・・・は、また別の機会に紹介できたら、と思っています。
それでは、ディーキャリアITエキスパート名古屋丸の内オフィスをよろしくです。(^_-)-☆
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