【当事者が語る大人の発達障害】自己受容とは何か?生きやすく・働きやすくなるために
医師から精神障害(うつ病、統合失調症、双極性障害等)や発達障害(ADHD、ASD等)の診断を受けた時、
正面から向き合い、受け入れることは、簡単なことではありません。
「障害」の診断を受けた時の反応は人それぞれで、「ほっとした」とポジティブに捉える人もいれば、
「なんで自分が」「もう終わりだ」などネガティブな気持ちにとらわれて動けなくなってしまう人もいます。
障害を自分の一部として受け入れ、良い面とも悪い面とも寄り添いながら生きていくことを、「自己受容」といいます。
この自己受容は、障害のある方が社会参加していく上で欠かすことのできない重要な要素だといわれています。
そのため、障害があることを開示して働く障害者採用の選考の現場では、
「自己理解・自己受容ができているか」というポイントが繰り返し問われます。
それが不十分な状態だと、就労が安定しない・短期離職に繋がる傾向にあるためです。
この記事では、「自己受容」とは何か、またどうすれば自己受容できるのか、
自己受容することのメリットやそのサポートが受けられる場所について、ご紹介していきます。
●この記事を書いた人
ADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を2019年10月頃受けた当事者支援員です。
短期離職を繰り返し、「人の役に立っているという実感のある仕事がしたい」と支援職に。
現在障害者雇用にて勤務しており、今年で四年目を迎えます。
当事者としての葛藤の経験をなるべく目の前の利用者様に活かしたいと思い、日々支援に臨んでいます。
【目次】
☑️自己受容とはなにか
☑️自己受容するとどんないいことがあるの?
・自分が許せるようになり、落ち込みが減る
・障害特性への対策が立てられるようになる
・自分にあった働き方や生き方を選べるようになる
☑️自己受容のプロセス:5段階のプロセスとは?
☑️自己受容・自己理解は一人では難しい。サポートを受けるなら?
☑️自己受容に「完璧」はない。凸凹を抱えながら生きていくには
◼️自己受容とはなにか
冒頭でも述べたとおり、「自己受容」への道は、障害を自分の一部として認めることから始まります。
とくに精神・発達障害の場合、状態が安定せず、
良い状態の時・悪い状態の時の波が激しく、自分自身が振り回されて疲弊してしまうことも多いです。
その良い状態も悪い状態も「自分の一部」であると受け入れて、
障害による困りごとの対処策を前向きに考え、実行していくということが、
すなわち「自己受容ができている」とされている状態です。
自己受容がすすんでくると、以前よりも自分のことをポジティブに捉えられるようになったり、
「他人と自分」を比べることが少なくなり、落ち込みが減るといった変化が生まれます。
それが結果的に体調の安定や生きづらさの軽減につながるのです。
私自身も、以前は自分で自分のことがわかっておらず、
「他の人は〇〇できるのに、どうして私はこうなんだろう」という思いにとらわれて、
無気力になり1ヶ月ほど家から出られなくなったことがありました。
障害理解がすすんだことで「私はこういう障害特性があるからこれが苦手なんだな」と納得できるようになり、
「今回はダメだったけど、今後はこうしていこう」と気持ちを切り替えられるようになりました。
それでは、具体的に「自己受容のメリット」を3つ挙げてみていきましょう。
◼️自己受容のメリット
①自分が許せるようになり、落ち込みが減る
精神・発達障害の診断を大人になってから受ける方の多くは、
病院の精神科やメンタルクリニックへの通院に至るまでに、多くの挫折や困難を経験されています。
「頑張っているのになぜかうまくいかない」「頑張るのに疲れてしまった」
そんなお悩みを抱え、何か状況を好転させるためのヒントやサポートを求めて、診察室に足を運ぶのです。
障害理解がすすむことにより、自分の得意なことと苦手なこと、体調不良を起こすサインなどが
自分でわかってくるようになります。
そうすると、以前は「自分はダメなやつだ」とただ落ち込む原因になっていた失敗体験が、
「私にはこういう苦手もあるんだな。自分で対策できるところは対策して、難しいことはサポートしてもらおう」
と切り替えることができるようになるのです。
【筆者の体験談①:「だらしないどうしようもないやつ」という自己認知が変わった】
昔から、やりっぱなしやうっかりミスが多く、「だらしがない」と怒られることが多かったです。
大学時代、「人の話を最後まで聞けない」「朝起きられず出席していればいいだけの授業を落とす」
「大事な場面でのうっかりミスで人の信頼を失う」「いつも遅刻してしまう」などから、
「自分は人間以下の存在だ」と思い詰め、逃避から過眠・昼夜逆転の負のスパイラルに陥ってしまったことも。
自己否定の根底には、「できて当たり前のことを自分はできていない」という思いがありました。
しかし、自分の障害のことを知ってからは、
自分には得意なことと苦手なことがあることや、
今まで自分が「できて当たり前」と思っていたことをできない人は想像以上にたくさんいること、
自分だけではないことに気づき、自分を許してあげやすくなりました。
②障害特性への対策が立てやすくなる
また、障害の理解がすすむことにより、自分自身の障害特性への対策が立てやすくなります。
自分の「苦手」がどういった特性からくるのかを理解すると、自分に向いた対策を選ぶことができ、
以前はできなかったことや苦手だったことが、「苦手だけどできなくはない」に変わることがあります。
また、「対策を頑張ってもできないこと」に関しては、周囲のサポートをお願いすることもできます。
【筆者の体験談②:指示の取り違え・ミスを減らすことができた】
私は人の話を聞くことが昔から苦手でした。
一生懸命聞こうとはしているのにいつの間にか別のことを考えてしまったり、業務指示を受けているときにも気が散ってしまうため、
断片的に聞き取れた情報から「こういうことか」と推測して対応して、結局間違っていたということがよくありました。
その対策としてメモを必死にとっていましたが、どうまとめていいかを考えているうちに
話を聞けなくなっていて、気が付いたときには会議に取り残されていた、ということが頻発。
しかし、自己理解が進むことで、
この背景にはワーキングメモリという脳内の情報処理をする機能が関係していることがわかりました。
私はこのワーキングメモリが人よりも少ないことと、ADHDの多動性により思考が派生しやすいため、
脳内で情報が処理しきれずパンクしてしまうのです。
私がやっていた「メモを必死にとる」という対策は、逆にワーキングメモリを圧迫して、
より自分の首を絞めるものだったこともわかりました。
それ以後、メモは極力取らず、とりあえず聞くことに全力集中。その後、復唱確認。
これを徹底することで、業務指示の取り違えが起こりにくくなりました。
③自分にあった生き方や働き方を選べるようになる
「自己受容」「自己理解」をすることにより、「自分に向いている生き方・働き方」は何かを見定め、
様々な職業や職務内容、雇用形態の中から自分にあったものを選ぶことができるようになります。
その代表的な例としては、障害者手帳の取得により、
一般雇用だけではなく障害者雇用を選択することができるようになることが挙げられます。
弊社を一般雇用として入社し、その後障害者雇用に切り替えた私の例をご紹介します。
【筆者の体験談③:一般雇用→障害者雇用への切り替え】
障害の診断を受けた時点では、障害者雇用という制度は知っていても、特にぴんときていませんでした。
まさか一年後、自分が障害者雇用に切り替えることになるとは思っていませんでした。
しかし、自分の得意なことと苦手なことが徐々にわかってくるにつれ、
苦手なことに対してサポートをもらいながら働いたほうが安心して働けて、
結果的に高いパフォーマンスを発揮できるのではないかと思ったことから、障害者雇用に切り替えました。
障害特性上不安が強いため、小さなことでも相談できること、
定期的に面談をしてもらい不安を解消できることなどが大きな利点でした。
■自己受容のプロセス:5段階のプロセスとは?
これまで、障害受容による3つの代表的なメリットを見てきました。
この自己受容には、5段階のプロセスがあるといわれています。
最初から自分の障害を完璧に理解し、受け入れられる人はいません。
「自分に障害がある」ということを受け止めることは容易ではありません。
特に、精神・発達障害の方の場合、大人になってから診断を受けたという方も少なくなく、
自分の人生に突如として沸いてきた「障害」という概念をどう受け止めたら良いのかと混乱する方も多くいらっしゃいます。
それでは、どのようにして「障害受容」に至るのか、その道のりを追ってみましょう。
①ショック期
精神・発達障害の診断を受けたが、それがどのような障害なのか、
自分にどのような影響があるのかを冷静に理解できていない状態です。
受容に至るまでのスタート地点であると言えます。
②否認期
自分の障害から目を背け、正面から見ることを避けようとする時期です。
「もしかしたら診断は間違いかもしれない」と思ったり、
「そんなに大したことはないんじゃないか」と楽観的に考えて向き合うことを回避しようとします。
③混乱期
障害による困りごとに直面したり、なかなか症状が安定しないことにより思うように動けないことで、
フラストレーションが溜まったり、怒りや悲しみを感じる時期です。
「もしかしたら一生このまま状況が好転しないのではないか」と絶望したり、無気力になったりすることもあります。
④解決への努力期
様々なきっかけにより、自分に障害に向き合い、理解しようとし始める時期です。
この時期から、少しずつ受容に向けての心の動きがすすんでいきます。
⑤受容期
自分の障害を前向きに受け止められるようになる時期です。
障害があっても社会参加の方法はたくさんあることや、
自分なりの困りごとへの対策や周りの人のサポートによりさらに可能性が広がっていくことを実感し、
「障害」を自分の一側面として受け入れることができるようになります。
もちろん全ての人が同じような道のりをたどるわけではありません。
しかし、多くの方にこのような心理的変化が現れると考えられています。
◼️自己受容・自己理解は一人では難しい。サポートを受けるなら?
「自己受容」に至るまでの心理的な道のりを簡単にみてきました。
しかし、精神・発達障害は「目に見えない障害」であるため、
(周囲の人はもちろんですが)自分自身で障害のことを理解するのはかなり難しいことであると言えます。
また、かなりストレスのかかる作業でもあるため、
寄り添い、励まし、客観的なアドバイスをくれる誰かがいてくれると理想的ですよね。
そこで、障害理解や自己受容のサポートを受けられる場所をご紹介します。
◆発達障害のある方の「働く」をサポート|就労移行支援事業所ディーキャリア
ディーキャリア は、障害のある方の「働く」をサポートする就労移行支援事業所です。
利用する方の8〜9割以上が、精神障害・発達障害をお持ちの方であるため、
発達障害の特性に応じたコンテンツが用意されています。
発達障害のある方の退職理由をヒントに作られた、「働きやすさ」を目指すための独自開発プログラムです。
また、できる限り「職場」に近い環境で自分の障害の特性を知っていくため、
オフィス環境を模した訓練環境の中でさまざまな模擬業務に取り組んでいただき、
その中でどのような困りごとが発生するか、またそれにどのように対処すると良いのかを考えていきます。
障害理解・自己受容への道のりは、山あり谷ありです。
投げ出したくなることもあるかもしれません。
そんなときは、精神・発達障害の知識を持ち、経験豊かな支援員があなたをサポートします!
合わせて読みたい▶︎『私がディーキャリア を選んだ理由|Kさんの場合』
◼️自己受容に「完璧」はない。凸凹を抱えながら生きていくには
私自身が障害の診断を受けたときのことを思い出すと、
まず「ああやっぱりそうだった」という安堵が胸いっぱいにひろがったことを覚えています。
とくに仕事の面でたくさんの困りごとがあり、自分のダメさ加減に絶望していた時期だったので、
「これがもし障害でなかったら、自分の努力不足だったらどうしよう」とむしろそれを恐れていました。
しかし、そのような背景からわりと好意的に障害の診断を受け止めた私にとっても、
それからの「自分の障害を理解する」という道のりは決して平坦なものではありませんでした。
自分の得意・不得意を知っていく作業の中では、必然的に「できない」ことと向き合わなくてはいけません。
「どうしてなの?」という自分に対しての怒りや、「できないこと」に直面するからこその将来への不安、無気力、絶望……。
さまざまな負の感情に振り回された期間だったように思います。
けれど、その期間があったからこそ自己理解がすすみ、今はずっと生きやすくなったので、
今となっては価値のある苦しみだったなと感じています。
「自己受容」の道のりに終わりはありません。
ここで完璧といったラインはなく、自分を取り巻く環境や自分自身の変化に合わせて、
私自身も日々浮き沈みを繰り返しています。
「自己理解」を絶えずアップデートしていくこと。
それが自分の凸凹と上手く付き合っていくために大事なことのような気がしています。
◆まずは、あなたの不安を打ち明けてみませんか?
もし、あなたが障害の診断を受けて、不安や絶望感が募り、どうしていいかわからずに立ち止まっているとしたら、
それはまったくおかしなことではありません。
「自己受容」の道のりのスタートに立ったというだけです。
まずは、その不安な気持ちを話してみませんか。
ディーキャリア ITエキスパート中野オフィスでは、個別相談会(対面・オンライン・電話可)を随時開催しています。
就労移行支援事業所の利用を検討していない方からのご相談も、大歓迎です!
- 発達・精神障害と診断され、今後について悩んでいるので、専門家のアドバイスが欲しい
- 現在就労移行支援事業所に通っているが、不安や不満がある
- 障害者雇用での就職に興味がある
- クローズ(障害者雇用以外)就労を目指しているが、障害特性への対処に不安がある
- 発達障害の特性を活かして、IT就労を目指したい
このようなお悩みがある方は、ぜひご相談ください!
ディーキャリア ITエキスパート中野オフィスでは、
障害者雇用枠だけではなく、一般雇用枠の就職サポートも積極的におこなっています。
まずは、あなたのお話を聞かせてください!
スタッフ一同、お待ちしております。
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