「指示通りに作業できない」大人の発達障害の特性によるものかもしれない|原因と対処法
組織で仕事をする場合、他者から指示を受けて業務に取り組むことが基本となります。
しかし「指示されても理解できない」「指示通りに作業遂行することが苦手」と感じる瞬間があります。
特に、大人の発達障害を持つ人々にとって
この苦手さは仕事や生活の面で顕著に現れることがあります。
この記事では
そんな発達障害の特性としての「指示通りに作業することが難しい」
という問題に焦点を当て、その原因と対処法についてお伝えします。
このような人におすすめの記事です。
「指示が理解しにくい」
「手順が理解できない」
「作業結果の見直しをすることが難しい」
「時間を守って作業を進められない」
実はそのような傾向は
発達障害の一つである「ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)」の特性である可能性があります。
発達障害は外見では分かりません。
そのため障害特性からくる苦手さをその人の職務怠慢だと思われてしまい、
「仕事ができない人」「アドバイスしても改善しない人」と捉えられることが多いのです。
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目次
1.発達障害の基本的な理解(業務遂行の課題)
発達障害は主に「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「注意欠如・多動性障害(ADHD)」「限局性学習障害(SLD)」に分類され、発達障害の併存をする場合もあります。
これらの障害はコミュニケーション、社会的スキル、学習能力そして日常生活の適応に影響を与えることがあり、生まれつきの特性のため親のしつけや育った環境により発症するものではありません。
また、発達障害がある方は、ADHD・ASD・SLDにかかわらず、人が行動したり、物事を知覚するときの「情報処理(認知)過程」に特徴がみられることがあり、この情報処理過程の特徴によって、業務遂行の課題や指示理解の苦手さが出ている可能性が考えられます。
大人の発達障害
発達障害は幼年期に必ず診断されるものではなく、青年期以降になってから診断を受ける場合もあります。青年期以降に診断を受けた方は特に、障害に対する否定的な考えを持っていたり、障害がわかりにくく多様であることから、特性を障害として受容する難しさがあると考えられています。
しかし、自覚のないまま進路選択や職業選択をすることで、不適応や二次障害として鬱や適応障害が生じる場合もあり、福祉サービスを中心とした支援の選択や合理的配慮をもらって就労するなど、特性理解と配慮を得られる生活環境の選択ができるようになることが、非常に重要となります。
2.指示理解、業務遂行の難しさ【大人の発達障害】
発達障害がある場合、情報処理過程の特徴によって、業務遂行の課題や指示理解の苦手さが出ることがあります。
この苦手さは、ASDの特性である「シングルフォーカス特性(一度に一つの事しか目に入らない、一つの刺激に集中してしまう)」や「コミュニケーションの苦手さ」、「実行機能の弱さ」が影響している可能性があります。
【特性が業務で影響する範囲】
・指示の要旨を理解しにくい。細部に集中してしまい、全体像の把握が困難になる。
ある場面で経験したルール、手順、コツなどを、他の場面で流用して活用することが難しい。
・注意や行動の切り替えが苦手で、突発的な予定変更などに臨機応変に対応することが難しい。
・ワーキングメモリー(*1)の弱さから、複数の指示を一度にされると、覚えきれなかったり、混乱したりしてしまう。タスクを同時並行で処理することが苦手。
・時間を適切に見積もったり、優先順位を付けたりすることが苦手で、計画の立案や始動、計画的な実行が難しい。
・セルフモニタリングが苦手で、エラーチェックや、自分の行動や進捗の振り返りが難しい。
・他者の視点を理解しにくい。暗黙の意図・意味の推測など、抽象的な表現を理解しにくい。数値や期日、程度などを曖昧にされると理解しにくい。
*1ワーキングメモリーとは
一時的に情報を溜めておき、処理する記憶スペースのこと。脳の中の作業スペースといったイメージ。
作業スペースが一つの机だとした場合、机が大きければたくさんのものをおける、もののの入れ替えや整理も簡単なのに対して、机が小さければおけるものの数も少なく、入れ替えや整理も難しくなりますよね。
ワーキングメモリーが弱いということは、この脳の作業スペースが小さいということになるので、保持しておける記憶が少ない、記憶の整理やまとめることが難しくなる、ということです。
話をまとめることが難しい、聞き漏らし、物忘れが多い原因はここにある可能性があります。
3.発達障害のある方が業務遂行に及ぼす影響【会社での指示理解・作業課題】
職場や家庭でのコミュニケーション問題や指示理解、業務遂行について
発達障害を持つ人々が直面する困難を詳しく説明します。
発達障害を持つ人々は
話の流れを読み取る、相手の発言の意図を推測する、曖昧な表現の苦手さ等、
コミュニケーションの苦手さから、職場や家庭でのコミュニケーションに課題を持ちやすいです。
例えば、報連相の不足から指示されていない作業をしてしまう、
介入への抵抗が出やすい、といったコミュニケーションの苦手さから、
他人との相互理解が不足し、指示者の意図と異なる手順や作業を進めてしまうコミュニケーション面での課題。
こだわりの強さから、自身のやり方を優先させて手順通りに進められない。
手順が抜けてもきちんとできていると自己判断してしまう。
といった思考面、特性面の課題。
知識の応用や以前学んだ手順を他の作業に流用することが難しく
せっかくスキルを獲得しても別の場面でそれを活用することが難しい。
結果、メモを取っていたとしても適切な場面でそれを利用して取り組むことが苦手。
これらにより、誤解や間違った印象を与えてしまうことがあり
職場での関係構築や維持に影響を及ぼす可能性があります。
発達障害を持つ人々の行動や言動は誤解されやすい傾向があり、
その特性に自身で気づけないまま、社会的な孤立や偏見の原因となることがあります。
特に指示理解や業務遂行については、本人の自己対処の他、指示者側の配慮も必要となる場合が多く、
それぞれに表出する特性や性格、個性の面も複合的にかかわってくるため、
本人による自身の特性理解と自己対処、適切な配慮依頼が不可欠となってきます。
自身の苦手さがどこにあって、それがどんな特性から発生しているのか
どうすればそれらの特性に対して対処できて、
どんな配慮をもらえると働きやすくなるのか。
発達障害がある方は、自身の特性を適切に理解することや適応しやすい環境に身を置くことで
より効果的にコミュニケーションを取り、適切な業務遂行をすることができます。
4業務遂行の課題あるある、5特性による業務遂行への対処と配慮例にて
実例を確認していきましょう。
4.業務遂行の課題あるある
4-1.あるある① ~指示通りに作業をおこなうことができない(受信編)~
発達障害がある方は「情報受診の特性」「理解力の特性」から
視覚、聴覚、触覚といった「感覚特性」、不注意、集中持続の難しさなど「注意・集中」、
視覚的情報の理解が得意、聴覚的情報の理解が得意など、さまざまな凸凹があります。
この受信特性により、そもそも指示の理解が難しい場合があり、
正しい情報理解ができていないことで、指示通りの作業ができないことがあります。
たとえば、以下のような場合が当てはまります。
・視覚情報による指示理解
⇒視覚過敏によりPCの光や自然光にまぶしさを感じてしまい、指示内容が読み取れない
・口頭による指示の聞き取り
⇒聴覚過敏により周りの環境情報に意識が向き、指示内容が聞き取れない
・注意、集中持続の難しさ
⇒注意や集中を相手に向け続けることが難しく、指示されている間に別のことに意識が向いてしまう
それぞれ「指示を理解できない」という苦手さは同じですが、原因が異なるため
一つの対処や配慮で解決することは難しく、
「自分はどんな特性により指示理解が苦手なのか」を把握して、
「特性に合わせた自己対処と配慮」を理解しておくことが、
指示理解の苦手さを解決するためには必要となります。
4-2.あるある② ~指示通りに作業をおこなうことができない(処理編)~
発達障害がある方は「情報処理(判断・思考)」に特性が表出することもあります。
理解の優位性として「視覚優位」「聴覚優位」
手順や段取り、スケジュール管理、優先順位付け、意思決定等の「プランニング」
思考の偏りや思い込みの強さから、情報処理の課題が発生することもあります。
たとえば、以下のような場合が当てはまります。
・マニュアルの読み込みによる指示の苦手さ
⇒視覚情報の苦手さから、文章を読んで理解することに苦手さがある。
定型的な表現が理解できず、完全に作業意図を汲み取ることができない。
・口頭による指示の苦手さ
⇒聴覚情報の苦手さから、聴きながら内容を整理することが難しい
ワーキングメモリーの苦手から、聴きながらの情報整理が難しい
・プランニングの苦手さ
⇒適切な手順や段取りを組んで作業に取り組むことが苦手
優先順位付けの苦手さから、誤った順番で作業に取り組んでしまったり、
指示者の想定と異なる動き方をしてしまう
スケジュールから外れたイレギュラーに対して、パニックを起こしてしまう
業務には締め切りや想定される優先度の違い、正しい手順がありますが、
情報処理の特徴から、独自の手順にこだわってしまう、優先度を誤り重要な業務を後回しにしてしまうことなどがあります。
また、ワーキングメモリの苦手さから多くの指示を受けてしまうと最初に聞いた内容が抜けてしまったり、指示の内容が交錯し、内容が混ざってしまうといった勘違いを起こしてしまうこともあるそうです。
4-3.あるある③ ~指示通りに作業をおこなうことができない(送信・行動編)~
最後に「作業・日常場面の特性」として、送信・行動における特性について
手先の動きや全身運動能力の特徴から、作業の正確性や速度に難しさや遅さが出ることがあります。
また、社会的場面での特性により、社会で求められるルールやマナーの理解、言語・非言語での表出行動に問題が発生することが想定されます。
たとえば、以下のような場合が当てはまります。
・社会的なルールやマナーの理解ができない
⇒職場での定式化されたルールや暗黙の了解の理解が難しい(明文化されていないルール)
・手先の不器用さ、体の動かし方が独特
⇒手先の使い方の苦手さから、作業スピードに遅れが発生する
5.特性による業務遂行への対処と配慮例
このようなコミュニケーションの問題や、情報処理過程の特徴から発生する業務遂行の難しさに対して、どのように対処していくのか、配慮をもらえばいいのか確認していきましょう。
【合理的配慮・対処の工夫例】
【対処】
- 感覚過敏については対策できるグッズを用意しておく(聴覚⇒イヤマフ、ノイズキャンセリングイヤホン など 視覚⇒サングラス、PCの照度を下げる、ナイトモードにする など)
- 指示に対して理解できているか確認するため、復唱をおこなう
- 指示された後、自分なりに内容や優先順位を整理したものを指示者へ確認し、認識のすり合わせをおこなう
- 中間報告や相談を意識しておこない、手順にミスがあってもすぐに修正できる状態をつくる
- 進捗の状況が分かりやすいように、タスクをチェックリスト化して終わったらチェックしたり、線を引いたりするなど、視覚的に進捗状況がわかるツールを作る
- 時間を可視化できるタイマーやアプリなどを活用し、時間の経過が具体的に確認できるようにする
【合理的配慮】
- 口頭だけなく、視覚的に確認できる手順書やマニュアルを準備してもらう
- ストレートで簡潔かつ具体的な指示にしてもらう(特に程度や期日、期待水準などは具体的に)
- 複数指示ではなく1回に1つの指示にしてもらう。
- マルチタスクではなく、1つのタスクに絞って依頼してもらう
- 一つが完了してから次の指示やタスクを出してもらう
- 継次的に業務を進めていけるように、業務設計をしてもらう
- 柔軟な対応や持っているスキルの応用が求められる業務よりも、ルーティン的、定型的、見通しや枠組みがわかりやすい業務にしてもらう
自己対処として想定されることは「指示の理解が難しい」特性があることを前提として、
指示を確認しなおすことで、抜け漏れや勘違いを減らすことが考えられます。
苦手なことを無理やりできるようにする、ではなく、できないのであればどうすればできるようになるか、を考えるということですね。
その他定期的な報告や進捗確認を他者とおこなうことで、大きなミスや間違いにつながる前に対処したり、自身の状況を整理することも効果的です。
途中経過でミスや間違いがあっても、最終的にそれらがなくなっていれば問題ないわけですから、ミスや間違いがある前提で動くことで、調整していこうという考え方です。
合理的配慮の面では、指示する際の伝え方を工夫してもらうとよいでしょう。
自身の苦手さに合わせて伝え方を変えてもらう、継次的に指示してもらうことで、業務手順が理解しやすくなったり、仕事のつながりや流れが理解しやすくなり、取り組みやすくなることが想定されます。
特性上セルフモニタリングが苦手な場合は
他者視点での見解や、専門家の意見などを有効的に活用していくことで
自身の特性や必要な対処、配慮について自己理解を進めていくことも可能です。
最後の章では発達障害の疑いがある場合相談できる場所、特性に対して対処を学んだり、苦手さに対して訓練を受けることができる場所を見ていきましょう。
6.障害者雇用を支援する機関/発達障害の疑いがある場合に相談できる場所
①ハローワーク(公共職業安定所)
障害のある・なしに関わらず、就職を希望する方に対して、職業相談や紹介をおこなう機関です。
職業相談では専門の職員を配置するなど、きめ細やかな相談をおこなっています。
また支援については、公共職業訓練のあっせんやトライアル雇用などの支援策も活用されています。
②障害者職業センター
障害がある方に対して、ハローワークと協力して就職に向けての相談、職業能力などの評価、就職前の支援から、就職後の職場適応のための援助まで、個々の状況に応じた継続的なサービスを提供しています。自身の職業適性を評価する「職業評価」や休職中の方が企業への復職を図る「リワークプログラム」なども実施されています。
③障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
障害がある方に対して、就労面と生活面の一体的な相談や支援をおこなう機関です。
関係機関と連絡調整しながら、窓口での相談や、職場・家庭の訪問をおこないます。
就業面では、就労準備や定着支援。生活面では、生活習慣の形成や健康管理・金銭管理などの日常生活の自己管理支援や地域生活の設定について助言したりしています。
④就労移行支援事業所
障害福祉サービスの一つで、就労を希望する障害のある方で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる方に対して、訓練や求職活動の支援、就職後の職場定着のために必要な相談などの支援をおこなう機関です。標準利用期間は2年となり、基本的には2年間の中で就職を目指します。
ディーキャリア新潟オフィスはこの「就労移行支援事業所」に当たります。
ディーキャリア新潟オフィスでは
ディーキャリア新潟オフィスには、就職して働き続けるための3つのコースがあります。
①ライフスキルコース
②ワークスキルコース
③リクルートコース
まずは「ライフスキルコース」でストレス対処やコミュニケーション、感情のコントロールなど、生きづらさを軽減できるような技術を学んでいただくことになります。
特性上の生きづらさは技術を使うことで0にすることは難しくても、軽減することができます。特性上の課題で悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
①ライフスキルコース
主に「健康管理/日常生活管理/対人技法」を身に着けるコースです。
訓練内容としては
コミュニケーション/考え方/ストレス対処/
目標設定/問題解決/障がい理解/セルフケア/障害者雇用の現状 などがあります。
②ワークスキルコース
ライフスキルコースを修了すると、模擬職場での業務をおこなう中で自身の「働く上での特性や必要な配慮」を探る「ワークスキルコース」に移行することになります。
ここでは主に基本的な労働習慣/働く中での特性課題と配慮の整理/電話応対やPC技能など、
必要な事務能力とビジネスマナーを身に着けることができます。
訓練内容としては
・模擬職場での業務実施(電話応対、オフィスソフトを使った資料作成やデータ分析業務など)
・職場での困りごとに対する対処と配慮の検証・発見と実践
などをおこなうことになります。
③リクルートコース
働くための準備がしっかり整ったら、就職活動のコース「リクルートコース」に移行です。
ここでは主に「職業適性の見極めと就職活動」を支援します
支援内容としては
・履歴書、職務経歴書の添削
・面接練習
・職場実習
などをおこなうことになります。
一人で就職活動、特に障害者雇用で探すとなると、一般とは勝手が違うことも考えられ、大きなストレスになるかもしれません。
リクルートコースでは担当スタッフと個別に相談しながら就職活動を進めることができるので、安心して作業を進めることができますし、わからないことがあれば相談できる環境です。
一期一会の相手に相談するのではなく、ライフスキルコース、ワークスキルコースと一緒に取り組んできたスタッフに相談しながら就職活動を進められるのも、大きなメリットでしょう。
【休日・祝日イベント】
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ディーキャリア 新潟オフィスは大人の発達障害に応じたプログラムの就労移行支援事業所です。
精神障害・発達障害を対象に就労支援を受けることができ、 「働き続けるためのプログラム」で高い職場定着率を実現しています。
随時見学を受け付けております。就労移行支援ってどんなところ? どんなプログラムをしているのかな・・・
興味がある方はお気軽にお問合せください(^^♪
見学・体験へのお申込み・相談は 電話 tel:025-384-0165(受付時間 平日10時~17時)
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