【発達障害】「完璧主義」なわたしたち ~特性対談録~【訓練生ブログ】
突然ですが、「べき思考」という言葉はご存じですか?
こんにちは、ディーキャリア新潟オフィス訓練生のTです。
「べき思考」というのは、「自分(相手)は~であるべきだ」、「~くらいはできる
べきだ」、「こんなときは~するべきでない」という考え方のことです。
ルールや決まりを守らなければと思うとき、誰しも考えることでしょう。
この考え方が適度であればなにも問題はないのですが、過度に支配されてしまった時は大変です。
例えば、
「私がこんなにも頑張っているのだから、他の人にも頑張ってもらわないと!」
「せめてこのくらいのクオリティまで仕上げないと自分が許せない!」
……こんなふうに考えが強く出過ぎてしまうと、相手に価値観を押し付けて不快にさせてしまったり、自分にとって大きな心の負担になってしまったりすることがあるのです。
この「べき思考」、発達障害にはままある「こだわりが強い」、「完璧主義」という特性から来ていることもあります。
かといって、この「完璧を目指す」という行為は、必ずしも積極的な意欲からきているものではありません。
当事者の私の感覚を言えば、必要のないときでも無意識にやってしまっているもので、「気づいたらとにかく完璧を目指しちゃっている」のです。
ありがたいことに「立派なもんじゃないか」と褒められることもあるのですが、場合によってはなかなかに厄介な性質なのです。
今回はこのような「べき思考」で悩むわたくしTと、同じく訓練生であるIさんで、詳しい悩みや原因、それぞれ取っている対策についてオープンに対談してみました。
「もしかしたら私も同じことで悩んでいるのかも……」と思われたそこの貴方も、この記事を読むことで心が少しでも軽くなったなら幸いです。
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その前に私たちについて軽い自己紹介!
訓練生T:大人になってから発達障害と診断されました。
(自閉スペクトラム症ASD+注意欠如多動性障害ADHD)
障害というよりも自分の性質とライトにとらえています。
物語を考えることが大好きで、カフェでオリジナル小説を書くのが趣味。
甘いものとコーヒーが好物。
訓練生I:はじめまして、ディーキャリア新潟オフィス訓練生のIです。
私は、成人してから発達障害(ASDとADHD)の診断を受けました。
障害というと、辛く悲しいものに感じられますが、
私は性格診断みたいなものだと思ってあまり重く受け止めていません。趣味はアイドル観賞です!
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1.「べき思考」についての悩み
T「本日はよろしくお願いします!」
I「よろしくおねがいします!」
T「ではさっそく、Iさんはどんなお悩みがありますか?」
I「はい。私の悩みは自分が描いた通りの完成像ができあがるまで、
作業をし続けるべき(簡単にいうと、完璧主義)という考え方になることが悩みです。
このべき思考が原因で、頭痛がしても休まず作業を続けたり、
気分転換をしたいのに作業を続けた結果、動けなくなるまで体調が悪くなったり、
モチベーションが下がることが頻繁にありました」
T「それは大変ですね・・・疲れに自分で気づけないまま頑張りすぎてしまう、
ということで合っていますか?」
I「はい、そういう感じです」
T「なるほど。クオリティを追い求めて集中できるという意味ではいいこと
かもしれませんが、動けなくなるまでというのはつらいところですね」
I「そうですね。短期集中型の良いところもあると思うのですが、
働き続けるとなると課題になるのかなと感じています」
T「私の場合は、元々きょうだいや周囲の友人よりも
ぼーっとしていることが多かった子どもなので(おそらくこれも発達障害の特性)、
『せめてこれくらいはできないと!』というラインが
自然と自分の中にできたのだと思います。
『自分はこうあるべきだ』と思うタイプですね。
『これくらいはできないと』という理想のラインに現実の自分が追い付かないと、
『周りのみんなはできているのにどうして自分は……』
とできない自分を責めて追い詰めてしまいます。
それで周りに合わせようと頑張りすぎて疲れてまたネガティブ思考に……
なんて悪循環に陥っていたこともありました」
I「自分の理想や周りの人とのギャップが大きいとつらいですよね、わかります」
T「もともと自分に自信がないのもあって、それだけに頑張りすぎるんですよね。
それがかえってつらい思考に陥るという・・・」
I「頑張り続けるしかない、みたいな思考になると本当に苦しいですよね」
T「終わりが見えない苦しみという感じですね。
悩みは違っていますが似通った部分を感じます」
2.原因や背景について浮かぶこと
I「私の考えられる原因は、全体像を把握する能力が弱いことだと思います。
細かな部分までこだわってしまうから、
目標に到達する前に力尽きてしまうのかなと思います」
T「一点集中型、ということですか?」
I「はい! そのとおりだと思います」
T「一つ一つを丁寧にやろうとする傾向は私にもあります。
趣味の小説を書く時もそういったことが多いですし……
〆切がある業務をする上では厄介かもしれませんね」
I「そうですね。
趣味ならこだわれることも、仕事だと優先順位が低いこともあるので、
難しいところだと思います」
T「私は大人になってから発達障害が発覚したので、
それまでは周りと同じ定型発達だと思っていたんです。
だからこそ、『みんなと同じはずなのに、どうして自分はできないことが多いんだろう。
みんなどうしてそんなに要領がいいんだろう……』
という思考に陥っていたんだと思います。
発達障害と分かった時は
『あ、これは気を付けてもダメだな。苦手なのは仕方なかったんだ』
という考え方になりましたね。
障害が分かってショックを受けたというよりも、
今までのことが腑に落ちたという感じでした」
I「私も大人になるまで自分が発達障害なことに気づきませんでした。
努力してもできないことがあるってわかったら、楽な気持になりますよね」
T「無理して頑張りすぎていたことに気づく、というのが、
心を楽にして生きるための第一歩なんじゃないかと思います」
3.実践している対処・対処法のアイデア
T「Iさんがなにか対策をとっていることってありますか??」
I「私は完璧主義より完遂主義! っていう考え方と、
作業に取り掛かる前に目的を確認するっていう対処をとっています」
T「完遂主義! いい言葉ですね、シンプルで判りやすい!」
I「スタッフさんが訓練中にいっていた言葉をまねしました(笑)。
仕事をする上で一番大切なのは〆切を守ることであって、
クオリティは誤字脱字や数値ミスに気を付けるなど、
最低限のところを守ればいいと思っています」
T「目的はなにか? っていうのを考えるのもいいですね。
要は仕事として成り立っていればいいわけですから、
クオリティは一定のラインを守っていれば問題ない、ってことですね」
I「そうです! そのとおりです」
T「これはIさんの苦手だと言っていた、
『全体を把握すること』を意識的にやっているということにもなりそうです」
I「Tさんの対処はありますか?」
T「私の場合は2つ対処していることがありまして、
1つ目が自分の出来たことを褒めてあげることです。
できなかったことは『仕方がない、今日の自分は出せる力で頑張ったんだ』
ということにしています。
具体的に実践していることとしては、
『今日は〇〇ができたからカフェでコーヒーと好きなお菓子を買ってよし!』
ってわざわざ口に出します。
勿論、周りに怪しまれないようにですよ(笑)」
I「すてき! 口に出すと、思っているだけよりも実行しやすくなりそうです(^^)」
T「日頃お世話になっている方に教えてもらったのを実践しています(笑)。
自分をいたわってあげてね、とのことで自分をよしよししています」
I「よしよしするの大事です。よしよしヾ(・ω・`)」
T「かわいい(笑)」
I「自分をほめるのってハードル高い人もいると思うので、
声に出すっていうのはいい対処だと思いましたヾ(・ω・`)」
T「あと、私は周りの人を見て『みんなしっかりしてるなぁ……』
って勝手に思い込んでいる部分があるので、
例えば業務でミスをして『また自分は~』と落ち込みそうになった時は
『みんな意外とどっかでミスってるよ』
ともう一人の気楽な自分に登場してもらっています」
I「落ちこんだ時にポジティブな考え方が出てくるのは大事なことだと思います。
本当のことは誰にも分からないですもんね」
T「ポジティブな、楽観的な自分を抑え込まない、っていうのも大事ですよね。
最近つくづく感じています」
I「まわりと比べるとどうしても悲観的になりがちになりますもんね。
生きやすくなるコツとして、ポジティブな自分は大切にしたいです。自分の中に味方がいると心強いですね(^^)」
T「そう、自分の味方になるべきはまず自分です!」
4.以前と比べ現在どう変わったか?
I「私の変わったことというか、対処後に気づいたことなんですけど。
自分のこだわりがその後の自分のためになっていることって少ないなあ・・・
と感じたことです」
T「自分のためになってない、ですか。
ちなみにどんなところがですか?」
I「具体的に言うと、体調が悪くなっていたり、
他にやろうとしていたことができなくなっていたりするところですね」
T「確かに、冒頭でも動けなくなっちゃうって言ってましたね」
I「そうですね(泣)。
完璧主義だとエネルギーを最後の最後まで使いきりがちなんですけど、
それって自分を大切にしていないんじゃないかなあと気づくことができました」
T「限界まで頑張りすぎていたことにIさんも気づけたんですね!
自分をいじめてしまいがちな傾向は私にもあるので、本当に共感しきりです」
I「ディーキャリア新潟にきて気づけたので通所してよかったと思います。
Tさんとも知り合えたし!」
T「ありがとうございます! そう言ってもらえると嬉しいですね。
私もIさんとお話しできて毎日楽しく過ごさせてもらっています」
I「なんだかこそばゆい気持ちに・・・」
T「ふふふ(笑)」
I「Tさんはべき思考に対処してみて、なにか変化はありましたか?」
T「私はミスをしてもあまり深く落ち込むことが無くなりました。
すると、次にどうやってミスを防ごうか? と前向きに考えられるようになったんです。『前向きに行こう!』なんてわざわざ無理に自分を励ますまでもなく。
気持ちの落ち込みが抑えられれば、自然と心が次に目を向けてくれるんです」
I「おおおー! 自分を大切にしていて素敵です。
自分に合ったポジティブ思考をできるようになった、という感じですかね」
T「そういうことです! 無理に励ますよりもできたことを褒める!
ポジティブ思考って落ち込んでいるとなかなかできないので、
まずは自分をいたわって回復させるのが大事なんじゃないかなと」
I「たしかに。
気持ちを切り替えるためにも、自然なポジティブ思考は必要だと思います」
T「そうそう、とりあえずリカバリーは大事ですよ。
その後でできなかったことに目を向ければいいんじゃないかと思うんです」
T「ただ、やっぱり『こうあるべきだ』と考えがちな性質そのものはなかなか変わりません。
それとどう付き合っていくかはまだまだディーキャリアで模索中です。
スタッフさんに相談に乗ってもらいつつ、
心の状態を整理しているというのが現状ですね」
I「考え方にはどうしても癖がありますもんね。
周りに悩みを共有して、自分一人で悩まないこともいい対処ですよね。
私もよくスタッフさんに相談しています」
T「相談が苦手という悩みも私にはありますが、
とにかく相談しないことには状況を打開することはできないな、
というのが数カ月くらい前の気づきです(笑)」
I「悩みに気づいていることが大事だと思いますよー!
べき思考も気づくことで対処できるようになったので、
相談にもなにかいい対処があるかもしれませんね」
T「そこも含めて模索中ですね。まだまだスタッフさんにはお世話になりそうです」
I「私もです・・・みんなで一緒に考えられるのがここのいいところですね」
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まとめ
1.完璧主義より「完遂主義」! クオリティ<〆切を守ること
2.作業に取り掛かる前に「目的」を確認する
3.反省より先に自分ができたところを「褒める」
4.「ポジティブな自分」は大切に!
5.自分ひとりで悩まない! 周りに「悩みを共有」する
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いかがでしたでしょうか?
私やIさんと同じように、「べき思考」で悩んでいる方も意外と多いのではないでしょうか。
私もIさんも、以前は理想と現実のギャップに苦しんでいましたが、今はディーキャリアのスタッフさんの手も借りて対処しながら、生きやすくなる方法を模索しています。
私たちの悩みや対策、ディーキャリアでの体験などの話が、同じ悩みを抱える方にとって少しでも参考になるものであれば幸いです。
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