障害者雇用における「合理的配慮」とはなに?|大人の発達障害(ASD/ADHD)
こんにちは!ITエキスパート海老名オフィスです。
みなさんは「合理的配慮」について知っていますか?
発達障害を含む障害を持った方は、「障害者雇用枠」での就職、つまり企業に配慮を求めたうえで就職し仕事をしていくことが可能です。その際に求められる配慮は「合理的配慮」である必要があります。
ここまではこの記事を読んでいる方にとっては知っている情報かもしれませんね。
ただ、「合理的配慮」と言われてもどういうことかよくわからない…と疑問に思っている方もいると思います。
今回は、障害者雇用における「合理的配慮」についてお話ししようと思います。
合理的配慮ってなに?
合理的配慮とは、“障害者が社会の中で出会う、困りごと・障壁を取り除くための調整や変更”のことです。
2006年に国連で採択された、障害者権利条約(障害者の権利に関する条約:日本は2014年批准)の条文で盛り込まれたこの考えは、障害者権利条約の実効性を持たせるための国内法でもある、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)においても取り入れられるようになり、広く知られるようになりました。
2021年の第204回通常国会において改正 障害者差別解消法が成立したことにより、民間事業者においても合理的配慮が法的義務化されています。
合理的配慮の考えを取り入れた法律「障害者差別解消法」とは?
この法律はすべての国民が障害がある・ないによって分け隔てられることなく、お互いに人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すために、2016年4月1日に施行されました。
行政や民間事業者に対して障害を理由とした不当な差別的な取り扱いを禁止するほかに、障害者から社会的障壁の除去の意思表明があった場合は、過重な負担にならないときは必要かつ合理的な配慮をするように努めなくてはならないということが定められています。
※この法律は「障害者」を以下のように定めています。
「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるものであって、障害および社会的障壁によって継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」
合理的配慮の意味
障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)では下記のように述べられています。
「合理的配慮」とは、障害者が他のものと平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享受し、又は行使することを確保する為の必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失したまたは過度な負担を課さないものをいう。
そして障害者差別解消法では、これに付随して行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(「合理的配慮」)を行うことを求めています。
なぜ合理的配慮は義務なのか?
2021年5月時点の障害者解消法では、合理的配慮は、国や自治体などは法的義務、民間企業・事業者は努力義務とされています。
ただし、第204回通常国会において改正 障害者差別解消法が成立し、民間事業者の合理的配慮提供が法的義務化され、公布から3年以内に施行されます。
“配慮”という言葉を聞くと、思いやりの行為と思われがちです。
「配慮なんだから思いやりでやればいいのは?なぜわざわざ義務にするのか?」と思うかもしれません。
合理的配慮は、社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すためのものです。
例えば、車いす利用者が、入口にスロープが無く、階段しかない店を利用しようとしている状況があります。階段しかない入口という障壁を作っているのは事業者側です。
障害を作っているのが事業者側であるとすれば、その原因を取り除くのは障害者自身が努力・工夫すべきことでも、事業者が思いやりでやるものでもなく、事業者の義務であるということが分かります。
また、英語のReasonable accommodationから”合理的便宜・調整”と捉えると、その意義がより理解できるでしょう。
「合理的かどうか」は誰が決めるのか?
合理的配慮、の“合理的”とは、何を、誰の視点から見て“合理的”なのでしょうか。
障害者の立場からの“合理的”でしょうか?
障害者差別解消法において‘実施に伴う負担が過重でないとき’とあるので、事業者の立場からの‘合理的’でしょうか?
事業者・障害者どちらか一方の要望や事情のみを考慮するものではなく、双方の建設的な対話から相互に理解・納得し、その手段や方法、代替手段の検討されたものが合理的配慮です。
必要としている配慮はその人の障害の程度やその場の状況などで常に変化するもので、絶対的なものは存在しません。
サービス介助士でホスピタリティ・マインドや介助の学びにおいて、‘ケアをフィットすること’、「対話」を重要視しているのは、このような理由があるためです。
なぜ合理的配慮を提供しないことが差別になるのか?
例えば、契約に関する情報を墨字(点字に対して一般的に使われている文字)の書類だけでしか提供しておらず、視覚障害者から契約内容の読み上げや、データによる情報提供を求められたとします。
人によっては、
●全ての人に同じ対応をしているから、要望のあった視覚障害者を差別しているわけではない
ということを思い浮かべるかもしれません。
先述の通り、合理的配慮は、社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すためのものです。
上記の状況で言うと、既存のルールでは、紙の書類を読む人だけに情報提供をしていることになり、すでに情報提供という機会に不均衡が生じています。
このように考えると、視覚障害者に代筆代読などの合理的配慮を提供しないことが差別にあたることが分かります。
合理的配慮に対する企業の取り組み・事例
まず前提として、合理的配慮は事業者と障害者双方の対話から落としどころを決めることになります。
その上で下記のような事例が考えられるでしょう。
●視覚障害者との契約の際に、複数人で確認の立ち合いのもと、契約内容の代読や、契約書記入の代筆を対応する。
●講演の際に、聴覚障害者に対して手話通訳者の配置や講演内容の字幕化、要約筆記の対応をする。 など
発達障害と合理的配慮
ここまで例に挙げてきた、視覚障害や車椅子利用等の身体障害は、人によって程度や症状に違いはありますが、比較的目に見えてわかりやすく、配慮事項も明確なため、企業等も配慮をしやすいです。
ですが、発達障害は一見障害があるとは気づかれにくく、「甘え」や「わがまま」「だらしない」などと誤解されがちな特性が多いのが現実です。配慮を求めても適切な配慮を受けられない場合もあるかもしれません。
また、自分でも自分自身の特性を把握できていない場合もあり、配慮を求めようにもどう配慮してもらえばいいのかこちらもうまく説明できない…なんてことも。
発達障害の特性は、定義や多く見られる症状もありますが、代表的な特性の中でも人によってある・ないまたは程度が変わる等、人それぞれです。つまり、相手がどんなに障害のことについて理解していても、あなたのことをすべて理解することは難しいのです。
そのため、まず自分はどんな特性を持っていて、それによりどのような困りごとが起こるのか、どんな配慮をもらえれば能力を発揮できるのかなど、”自分を理解すること”が必要です。そして、自分のことを自分のことを伝えていくことで、必要な配慮を受けることができ、自分の能力を発揮できる機会も増えていきます。
自分から発信し相手に理解してもらうことが、発達障害の方が仕事や生活において生きやすくなるコツなんですね!
まとめ
合理的配慮と聞くと、思いやりの行為と思いがちですが、例えば店舗で階段しかない入口などの社会的障壁は、それを取り除くのは事業者の責務であるということ、そして、合理的配慮には正解はなく、対話を通じた個別の調整であるということをお伝えしました。
障害者差別解消法が改正されることで、接客などの業務だけでなく、提供サービスそのものを見直す機会にもなります。
発達障害の特性は一見わかりづらく、周囲に誤解されてしまうこともあります。ですが、自分のことを伝えていくことで、必要は配慮を受けることができ、自分の能力を発揮できる機会も増えていきます。
自分が生きやすい環境を作れるかどうかは、あなた次第です!ぜひ自分に合った環境づくりをしていってくださいね♪
ディーキャリアITエキスパート海老名オフィスでは、訓練を通して自分はどんな特性があるのか、その特性上働く上でどんなことが困るのか、その上でどんな配慮を求める必要があるのかなどの自己理解を進めることができます。
自己理解をすすめていくと、今まで何となくうまくいかなかったことの原因や自分の得意なこと、強みを発見し、どうすればうまくいくのかのヒントを見つけることもできるんです。
また合理的配慮は、お互いが納得した上での、必要最低限の配慮です。求めることが多すぎては、相手にとっては大きな負担になり得ます。自分を知ることで、適切な配慮を検討していくことができ、自ずと就職への第一歩になりますよ。
ここまで合理的配慮について書いてきましたが、自分にとってどんな配慮が必要なのかわからないこともありますよね。
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監修者:佐藤 秀祐(サービス管理責任者/社会福祉士・介護福祉士)
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