発達障害当事者による【障害者手帳ガイド】手続き方法、メリット/デメリット、実際に取得してみた体験談

このように、さまざまなメリットがある障害者手帳ですが、一方で取得することのデメリットは何かあるのでしょうか。

目次

2-2. デメリット

申請にかかる時間とお金(医師の診断書の発行手数料等)以外に、特にデメリットはありません。

手帳を持っていることは自分で話さない限り公にはなりませんし、手帳で利用できる支援やサービスを受ける/受けないは、あくまで本人の自由だからです。

会社や学校等へ報告する義務もありません。また、不要となった場合に手帳を返還したり、更新を行わないことも自由です。

例えば、「最初は障害者雇用で配慮を受けながら働き、仕事が安定して支援が不要となったら、一般雇用に挑戦する」という使い方も可能です。

しかし、「さまざまなメリットがある」とは分かっていても、大人の発達障害がある方にとっては「手帳を取得することで、自分が障害者として認定されてしまうことへの抵抗感や、不安感を感じる」という方がいらっしゃることも事実です。

精神障害者保健福祉手帳は、すべての発達障害のある方に必要なものとは限りません。

  • ・自分はどのような困りごとを抱えているのか。
  • ・自分には今、どのような支援が必要なのか。
  • ・これからどのように働き、どのような人生を送っていきたいのか。

これらをふまえ、手帳を取得する/しないを考えることが大切です。

3. 障害者手帳に関するよくあるご質問

Q1. 取得した場合は、勤務先に報告する必要がある?

A1. 報告の義務はありません。

働いている方が障害者手帳を取得した場合、勤務先に報告する法律上の義務はありません。

一方、報告の必要性が生じるのは、自分が「障害への配慮を受けながら働きたい」というときです。

例えば、勤務先に障害者雇用の制度があり、一般雇用から切り替えたい場合には、手続きのためには手帳を勤務先に提示する必要があります。

また、住民税が軽減される「障害者控除」を利用したい場合は、勤務先で行う年末調整で申告する必要があるため、会社側へ報告するのと結果的には同じになります。

なお、障害があることを勤務先へ伝え、業務への合理的配慮について相談すること自体は、手帳を持っていなくても可能です。

「合理的配慮について相談したいが、手帳がないからできない」ということはありません。詳しくは下記のコラムもご参照ください。

Q2. 手帳を持っていることが周囲にバレることはある?

A2. 基本的にバレることはありませんが、支援やサービスを受ける場合、間接的に知られてしまう可能性はあります。

「2. 障害者手帳を取得するメリットとデメリット」でも解説したとおり、手帳を取得したとしても使う/使わないは本人の自由ですので、自分で公にしない限り周囲に知られてしまうことは基本的にはありません。

しかし、手帳を使って実際に支援やサービスを受けようとする場合、間接的に周囲に知られてしまう可能性はあります。

例えば、先ほどQ1.で解説した「住民税の障害者控除」の制度ですが、会社に提出する年末調整ではなく、個人で行うことができる確定申告で申告する方法があります。

一見すると会社に知られないまま控除を受けられそうですが、住民税は会社の給与から天引きされますので、納税する金額や控除の内訳は、自治体から会社へ直接通知が送られる仕組みになっています。

そのため、住民税の通知で間接的に、会社に障害者手帳を持っていることが知られてしまうことになります。

Q3. 申請をしても、交付されないことはある?

A3. 申請しても却下され、手帳が交付されない場合もあります。

障害者手帳の申請は、書類の内容をもとに自治体が審査を行い、交付する/しないを決定しますので、却下され、交付されない可能性もゼロではありません。

申請の却下や、交付される手帳の等級に対して不服がある場合には、自治体に対して申し立てを行うことができます。

まだ発達障害の社会的な認知度が低く、発達障害を支援する法律や制度が整っていなかった時代には、「発達障害単独では障害者手帳は取得できず、他の障害と組み合わせないと取得できない」という事例もあったそうです。

しかし、現在では支援法制度の整備や、社会的認知度の高まりにより、「発達障害単独だから、障害者手帳が交付されない」ということは少なくなっているようです。

Q4. 障害福祉サービスを利用するのに必要?

A4. 手帳がなくても利用できるサービスがあります。

「1-5. 発達障害に関する、障害者手帳の基本情報のまとめ」でご紹介した、就労移行支援のような障害福祉サービスを利用したい場合は、障害福祉サービス受給者証が必要です。

この受給者証の申請手続きでは、書類として障害者手帳を求められることもありますが、医師の診断書や意見書で「支援が必要であること」を証明できる場合には、自治体の判断により、手帳がなくても受給者証が交付されるケースがあります。

Q5. どのように申請すればいい?

A5. 下記の項目にて解説しています。

「1-3. 精神障害者保健福祉手帳の申請方法は?」にて、詳しくご紹介していますので、ご参照ください。

Q6. 更新は必要?

A6. 下記の項目にて解説しています。

「1-4. 取得した精神障害者保健福祉手帳は、更新手続きが必要か?」にて、詳しくご紹介していますので、ご参照ください。

Q7. 障害年金をもらうためには、障害者手帳を先に取っておかなければならないの?

A7. 障害年金と障害者手帳とは別の制度のため、直接的には関係ありません。

障害年金と障害者手帳は、元となる法律や制度が異なりますので、直接的な関係はありません。

申請手続きの際に、障害の状態を証明する書類としてお互いを利用できる場合がありますが、「障害者手帳がないと、障害年金が受けられない」「障害年金を受けていないと、障害者手帳が取れない」ということはありません。

次ページ:実際に障害者手帳を取得した筆者が「しくじった」こととは?

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