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ADHDにいつ気付いた?大人になるまで分からないことも

社会人になってからADHDと診断された筆者が、障害と向き合いながら「生きづらさ」を軽減させたエピソードについて紹介します。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「頑張っているんだけど、なぜか仕事がうまくいかない」「学生時代は気付かなかったけど、社会人になってミスや失敗が目立つようになった」 筆者は発達障害のADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を20代後半に受けました。今になって振り返ると、幼少期や学生時代にも、ADHDの特性が出ていたと思います。しかし、そのときは「発達障害」という言葉自体を知らなかったこともあり、ただ単に「なぜだか分からないが、とにかくうまくいかない」という思いを抱えていました。 その後、発達障害の診断を受け、自分の障害特性を理解し受け入れたことで、具体的な対策を打って「生きづらさ」を軽くしていけたという実感があります。そんな「発達障害の気付き」「障害特性の受け容れ」「特性への対策」について、経験談を交えながらお伝えしていこうと思います。 発達障害による「生きづらさ・働きづらさ」を感じている皆さまに、この記事がお役に立つことを願っています。 発達障害の診断を受けるべきか悩んでいる方は、以下のコラムもあわせてお読みください。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ADHDとは まず、ADHD(注意欠如・多動性障害)について、その脳の特性とその特性による影響について簡単にまとめたものをお伝えします。 脳の特性 判断や抑制をつかさどる脳の部位の機能低下・行動や思考のブレーキが効きにくい。・思いついたことをよく考えず衝動に任せて言ってしまったり行動したりしてしまう。ワーキングメモリーの機能低下・臨機応変な対応が難しい。・不注意が起こりやすい。 特性による困りごとの例 ケアレスミスや忘れ物・無くし物が多い 落ち着きがないと言われることがある 人の話を聞き続けることや同じ資料を読み続けることが苦手 予定や約束を忘れてしまうことがある 遅刻を繰り返してしまうことがある 部屋の片付けや物を探すことが苦手 思ったことをそのまま口に出してしまうことがある 衝動買いや計画性のない行動をしてしまうことがある 仕事中や授業中など大事な場面で寝てしまうことがある 計画通りに物事を進めることや、締切を守ることが苦手である このように、脳の特定の機能が低下することで日常生活や仕事上で多くの困りごとが発生することがあります。もっと詳細を知りたい方は、大人の発達障害とは|注意欠如・多動性障害(ADHD)をご覧ください。 ADHDの気付き 「自分がADHDである」という気付きは、幼少期に親が気付いて診断をしてもらったり、逆に大人になって困りごとに直面してはじめて気付いたりと、人によって千差万別です。それぞれの時期別に、よくある気付きのパターンを、筆者の経験談も交えてご紹介します。 幼少期 まだ成長段階であることが多い幼少期は、「忘れ物が多い」「落ち着きがない」「衝動的に行動する」といったことが、先天的な発達障害の症状によるものなのか、それとも成長の一過程だからなのかが判別つかないことがあります。 そんな中でも、以下のような傾向が見られ、それにより保護者の方などから注意を受けることで、本人や周囲が気が付くことが多いと考えられます。 不注意によるもの・ 話を聞き続けられない・ 遊びや活動に集中できない・ 忘れ物や失くし物が多い多動性によるもの・じっとしていられない・ 落ち着きがなく、絶えず動き回る・ 静かな活動が苦手衝動性によるもの・ 順番を待てない・ 思い付きで行動をする・ お友達に手が出てしまう・ 感情の起伏が激しい 今思い返してみると、ADHDの特性や、さらには同じく発達障害の一類型であるASD(自閉スペクトラム症)の特性が影響していると思われる困りごとがよく発生していました。※ASDの特性について詳しく知りたい方は、大人の発達障害とは|自閉症スペクトラム障害(ASD)をご覧ください。 幼稚園の運動会でリレーでのことです。チームに分かれて1人1周ずつ走っていました。第3コーナーにさしかかる直前に先生から「内側を走って!」と言われ、向きをグイッと変えてコースを外れてゴールへほぼ一直線に向かってしまいました。もちろんルール違反で失格です。先生の言う「内側」は、「コースの中で、他の選手よりもなるべく内側」という意味だったのですが、そういった理解をせず独自の解釈をしてしまったのです。「なんでそうするの!?」と先生に叱られながら、心の中では、内側と言われたから内側を走っただけなのにと不満を抱いたことを覚えています。 後年筆者が受けた診断はADHDですが、発達障害は併存することがよくあります。このリレーでの出来事は、ASDによく見られる「言葉の意図が読めない・文字通りに言葉を受け取る」という特性の影響も少なからずあったのではないかと考えています。 学生時代 学生時代は、幼少期より人格形成がされつつあり社会性も求められるので、本人もその特性に比較的気が付きやすくなります。 そのような状況で、以下のような傾向があり、周囲との差を認識することで、自身のADHD特性に気が付くことがあります。 学習の困難・集中力が持続しない・授業中にぼんやりしている・宿題や課題を忘れることが多い行動管理の困難・計画的に勉強や課題をこなすのが難しい・物忘れや失くし物が多い行動抑制の困難・教室内で落ち着かない、席を立ち歩く・過度に話す・ 質問が終わる前に答えたがる社会性の困難・衝動的な発言や行動が多い・危険な行動をとりやすい・友人関係がうまく築けない・いじめの対象になりやすい 筆者は、学習の困難や行動管理の困難、さらにはその社会的な困難があり、「忘れ物が多い」「宿題を忘れる」「計画的に課題をこなせない」「衝動的な行動」といった多くの困りごとに直面していました。 小学生のとき、市のイベントでキャンプにいったときがありました。そこで知り合った友人たちと、近くにある山に登りました。その山はかなり斜面が急で、山道には道に沿って綱がひいてあり、当然その綱につかまりつつ山道を歩かなければ危険なのですが、ふと「この綱から手を放してみたらどうだろう」と考え、パッと手を放してしまったのです。 それから数歩は余裕で歩けたので、調子に乗ってちょっと「ホラ大丈夫!」と速度を早めたところ、その加速が止まらなくなってしまいました。運悪くつまづいて転び、ゴロゴロ転がっていく形になりました。その先は急カーブで、そのままだと自分で曲がることができず深い谷に投げ出されてしまう状況でした。 幸い、急カーブの手前にある大きな木にぶつかって止まり鎖骨骨折で済みましたが、木がなかったら谷底へ落ちていました。まさに、衝動性による危険な行動と言えます。 ただ、幼少期も学生時代も、「発達障害」や「ADHD」という言葉自体があまり知られていなかったこともあり、そういった困りごとがあったにもかかわらず、自分自身も周囲も、特段対策を打つという考えすら思い浮かびませんでした。 社会人以後 幼少期や学生時代において、自身のADHD特性に気が付かず過ごしてきても、社会人として自立・自律して仕事や日常生活をおこなうようになってはじめて気が付くことがあります。 多くの場合は、仕事をする上での困りごとに直面することで否応なしに自身の特性を自覚せざるを得ないというパターンになります。 職務遂行の困難・プロジェクトの計画が立てられない・ケアレスミスが多い・時間管理が苦手(遅刻や納期遅れが多い)・時間配分がうまくできない・優先順位付けが苦手対人関係の困難・上司や同僚とのコミュニケーションがうまく取れない・衝動的な発言や行動でトラブルが生じる日常生活等における困難・感情の起伏が激しいことが多い・ストレスやフラストレーションを感じやすい・家事の管理や金銭管理が苦手・日常生活のルーチンを維持できない 筆者は、職務遂行の困難や時間管理の問題などにより、仕事がうまくいかないと悩むことが非常に多く、さらに、その影響で周囲との関係性が悪化してなおさら仕事がうまくいかなくなるという悪循環に陥りました。 司法書士の資格試験の勉強をしていた20代後半で就いた、ある不動産屋でのアルバイトの話です。最初は快く迎え入れてくれたものの、送付すべき書類を頻繁に間違ったり、お客様を入居候補物件へ案内するのに事前に地図をチェックせず道に迷って結局満足に案内できなかったりとミスや失敗をしていたので、次第に人間関係が悪化していきました。 あるとき、経理をしている社長夫人から、従業員全員にジュースの差し入れがありました。当然自分ももらえるものと思っていたのですが、私だけスルーされてしまいました。また、その社長夫人へ、とある物件についての報告をしたときに、とにかく「言っていることが分からない」とだけしか言われず、どこをどう直して報告すれば良いかも分からず完全に自信を失い、簡単な仕事すらうまくいかないという状況になってしまいました。 そんなこともあり、「自分がこんなにうまくいかないのは、何か理由があるのかもしれない」と思い、「仕事 できない」「仕事 ケアレスミス」といった検索ワードで調べてみたところ、はじめて発達障害やADHDという言葉を知ったのです。その後、公的機関に相談して診療所を紹介してもらい、ADHDの診断を受けました。 障害に気付いて、どうしたか 筆者は、「自分はADHDである」と気付いてから比較的速やかに診断を受けることができました。しかし、診断を受けたからと言って、特性がなくなるわけではありません。むしろ、自分の障害に気が付き診断を受けたところがスタート地点だったと言っても過言ではありません。 そこで、障害に気が付いたあとに得た心構えとしての「障害とうまく付き合う考え方」、その考え方を生かして「筆者が実際におこなった対策」、その前提としての「特性との向き合い方」をお伝えします。 障害とうまく付き合う考え方「ニーバーの祈り」 障害とうまく付き合う、いわゆる「障害受容」をするために大事な考え方があります。ADHDとは直接関係ありませんが、「ニーバーの祈り」という話がそれを端的に表しているのでご紹介します。 神よ 変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。 変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。 そして、 変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。 学校法人聖学院:ラインホールド・ニーバーの祈りの言葉より ADHDの特性は、基本的には変えられないものです。筆者が仕事をする上で特に感じた、困りごとに直結する特性は、「抜け漏れ・忘れ」「先送り癖がある」「なんでも背負い込みすぎる」「段取りをつけるのが苦手」でした。それを変えようとせず、まずは受け容れることが大事だと考えます。 しかし、締切を破ってもいい職場や、延々と先送っても問題が発生しない会社などありません。自分の特性と向き合い、その対策を練る必要があります。 筆者が実際におこなった対策 障害特性への対策は、「頑張る」「気をつける」といった精神論・根性論で解決できるものではないと考えます。具体的で現実的な、実行できる「やり方」に落とし込んではじめて対策と言えます。筆者の場合は、以下のように考えました。 抜け漏れ・忘れ↓忘れても大丈夫なように、必要なことは書きだそう! 先送り癖がある↓「できる」と思える手順に分解して、手を付けやすくしよう! なんでも背負い込みすぎる↓自分がすべき手順と他人にお願いできる手順とを分けて、自分がすべき作業に注目できるようにしよう! 段取りをつけるのが苦手↓分解した手順それぞれに細かい締切をつけて、「締切を守るためにはいつまでにどの作業を終わらせていれば大丈夫か」が分かるようにしよう! このように書きだすことで、自分の特性をカバーしてくれる表ができあがりました。もちろん、この表を作っただけですべてうまくいくわけではありませんが、少なくとも「締切までに過不足なく仕事を終えられる」ということができるようになりました。この表から生まれたツールは、仕事を遂行しやすくする秘書のような存在として、今も筆者の心強い味方となってくれています。 特性との向き合い方 自分の特性への対策として筆者の経験をお伝えしましたが、そこに至るには長い時間がかかり、そのほとんどを自分の特性と向き合うことに費やしました。 特性と向き合うには、具体的には「失敗事例を洗い出す」「洗い出した失敗事例から自分の特性を知る」という2つのことが必要です。さらに、失敗事例を洗い出すためには、失敗事例を多く経験しなければなりません。 筆者は、会社員として働く中で、多くのミスや失敗を重ねてきました。それが結果的に「失敗事例の洗い出し」につながりました。さらに、そういった仕事がうまくいかない状況から休職に至るという流れを2度続けて経験したこともあり、自然と自分の特性と向き合って把握することができました。 しかし、この形での特性との向き合い方は、あまりお勧めできません。時間もかかりますし、精神的負担も大きいです。筆者は10年近くかかり、2度の休職と抑うつの適応障害を起こしてしまいました。それよりは、障害に理解のある第三者の助けを借りて自分の特性を知る方が、より時間もかからず、精神的な負担も少なくなります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
ADHD当事者が編み出した「片付け苦手」克服法を紹介

片付け・整理整頓が苦手なADHD当事者が、失敗体験から見出したライフハックを紹介。日常生活はもちろん、職場で活かせる特性対処のヒントに!

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「片付けをしようとしても、何から手を付ければいいか分からない」「会社のデスクの上に物が散乱していて、仕事に支障が…」 ADHDの特性のある人にとって、物を片付けて整理整頓するハードルは高いものです。「先延ばし・注意力散漫・やる気になりづらい」といった傾向は、キチンとまめに片付けをするという行動に立ちはだかる大きな壁になります。 筆者も、片付けに対して長年苦手感を抱いていました。特に職場での物の整理整頓は、仕事上のロスタイムやミス・失敗の原因にもなりかねません。そこで、まず日常生活において小さな行動をきっかけにしてなんとか人並み程度にはできるようになりました。さらに、職場では、仕事の整理をすることで結果的に物の整理ができるようになりました。 今回は、そういった日常生活上での片付けの工夫、職場での物の整理への取り組み方をお伝えします。 皆さんの日常生活での困りごとが少しでも「ラク」になるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 筆者の「片付けられない」エピソード まずは、どれだけ筆者が片付けや整理整頓が苦手だったかをお伝えいたします。 幼稚園のお泊り保育 整理整頓への苦手感でまず思い出すのは、幼稚園のお泊り保育でのことです。 親がリュックサックに服や下着、靴下やその他必要な物をビニール袋に小分けして入れてくれたはずなのに、着替えなどのタイミングでかならず「・・・はて?」と困っていたのを覚えています。どの服を着ればいいのか分からない、どれがすでに履いた下着でどれがこれから履くべき下着なのかが分からない、そんな状態でした。 同じ組の友達がチャッチャと着替えて集合場所に向かう中、自分ひとりだけ部屋にポツーンと取り残されて、リュックサックの中のものを出したり入れたりしては、「どれを着るんだろう?」と頭をひねっていました。 机の中から靴下が1足 小学生になっても自分が持っている物の整理ができず、そのせいか頻繁に忘れ物や失くし物をしていました。学校の担任と親との連絡事項を書く連絡帳には、担任からの「また忘れ物をしたようです」、そして親からの「申し訳ございません、よく言って聞かせるようにいたします」のやりとりの連続でした。しかも、連絡帳自体持って帰るのを忘れるという始末でした。 特に夏休みなどの直前は大変で、ロッカーの中や机の中などは、開けてはいけないパンドラの箱でした。ロッカーの中はとにかく大量の物が乱雑に押し込まれプレスされた状態で、取り出すことすら大変でした。また、本来教科書やノートなどしか入っていないはずの机の中ですが、なぜか奥の方から靴下が1足だけでてきたことがありました。 ずさんな来客カードキー管理 時は過ぎ、会社員として働くようになってからのことです。相変わらず整理整頓が下手でした。例えば、会社に来客があった際に必ずお渡しする貸出用のカードキーの管理など。来客があったらカードキーを貸し出し、お客様の用件が済んだら、カードキーの返却を受けて管理用の引き出しに戻し、貸出簿に返却のチェックを入れる。たったそれだけのことです。 それがうまくいかず、どのカードキーを貸し出しているのか、貸出簿と現実とがまったく合わず、行方不明になったカードキーの入室権限を止め、新たな貸出用のカードキーを頻繁に作らねばならず、非常にずさんな管理しかできていませんでした。 日常から始める「物の管理」対策 そんな私ですが、取っ掛かりとして家にある物の片付けから手をつけてみることで、片付けへの苦手感を少しずつ克服することができるようになりました。 まず声を大にして言いたいのは、「捨てることを制する者、片付けを制する」です。「整理整頓(せいり→せいとん)」と言いますが、「整頓整理(せいとん→せいり)」とは言いません。整理は「物を捨てること(不要なものを取り除く)」、整頓は「必要なものをいつでも誰でも取り出せるよう、秩序立てて配置すること」です。まず最初に「整理=捨てること」ありきなのです。 とにかく、捨てる!捨てる!捨てる!片付けの第一歩はそこからです。 とは言うものの、ADHDのある人は捨てることも苦手だったりします。そのための、筆者が実践している小さな工夫を1つだけご紹介します。まずはこれだけやってみてください。 一日一善ならぬ「一日一捨」 ADHD特性のある筆者は、色々な物に目がいってしまい集中できなくなってしまいがちです。また、ゴチャッとうずたかく積まれた物を見てやる気をなくし、すぐに先延ばしをしてしまいます。そんな筆者でも実践できたのが、 一日一捨 です。今日、目の前の1個だけ捨てる。明日もまた、目の前の1個だけ捨てる。ただそれを繰り返していくのみです。色々な物に注意がそれる前に「1個捨てる」という行動は完了します。ものの数秒、長くて十数秒です。 「じゃあ、まとまった時間をとって10個や20個捨てたほうがいいんじゃないか」と思うかもしれません。でも、1個にしておきます。中断させられたような気持ちになり、次の1個をやりたくなります。そのまま自分をじらすことで、翌日に片付けたい気持ちを持ち越すことができるのです。その繰り返しで、先延ばしすることなく、いつの間にか多くの「捨てるべき物」がなくなっているのです。 我慢できなくて一日に2個以上捨てることもあるかもしれません。ただし、原則は「一日一捨」。これだけを考えてやってみると、無理なく自然に物を整理することができます。 片付け苦手は、仕事をスムーズに進められない 片付けが苦手だったとしても、日常生活の範囲で終わるのであれば、自分や近しい人が我慢すれば良いかもしれません。しかし仕事においては、片付けがうまくできないのは、スムーズな業務遂行に影響を与えてしまいます。それは、大別して少なくとも以下の3点になります。 探しものが見つからない 片付けができないと、物がどこにあるか把握できなくなります。例えば、上司から「あの書類を見せて欲しい」などと言われたとき、すぐにスッと出せれば良いのですが、「お待ちください」と言って自分の机の上や引き出しの中などをよく探し回っていました。 探す時間もかかりますし、その間ずっと「もしかしたら見つからないかもしれない」という恐怖と戦うことになります。そのようなことが多発すれば、落ち着いて仕事に取り組むことは難しいです。 かつてヒットした「気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ(リズ・ダベンポート 著)」という本では、平均的なビジネスパーソンは探し物で年間150時間も浪費しているとしています。平均であってもそうなのですから、とりわけ片付けが苦手なタイプは、それ以上のタイムロスをしていることになるでしょう。 余計なものに反応してミスを誘発してしまう 物を片付けておかないと、やりかけの仕事に関する書類などがふと目に入ることがよくあります。そうなると、筆者の経験上、今やっている仕事から外れて、やりかけの仕事の方に手を付けてしまうことが非常に多くなります。 そもそも、ADHDの特性の1つとして、注意力散漫というものがあります。注意がそれないように頑張って集中できれば問題ないのですが、意志の力で集中し続けるのは、特にADHDの特性のある人にとっては至難の業です。 会社員時代の筆者も、名刺の発注対応をしていたにも関わらず、ふと目に入った補充用の社内備品が気になって補充しにおこなってしまい、名刺の記載を満足にチェックする時間がとれず焦って誤植を見逃したりしていました。このように、やりかけの仕事からまた他のやりかけの仕事に次々と興味が移ってしまい、全部中途半端になって締切に遅れたり、遅れそうになって焦ってミスをしてしまったり、そもそも集中力が削がれた状態で作業をしてしまって失敗をしてしまったりするのです。 逆に何も動けなくなる 片付けができないと、多くの物が散乱・山積してしまい、いっぺんにたくさんの物が目に入ってくることになります。すると、「もう無理」「自分では処理できない」と、優先順位をつけて仕事に取り組むことができなくなりがちです。 筆者も、机の上にうず高く積まれた書類のタワーを前に、なすすべもなく時が過ぎていった経験があります。高さにして数十センチにもなったその書類タワーは、それぞれが過去引き受けた仕事に関する書類ばかりです。しかも、おそらく一番下から順番に締切が早いのです。そう考えると、触れるのも怖くなり、結局何も動けなくなるのです。 部署内で「あれどうなった?」と騒ぎが発生して、恐る恐るタワーの下から書類を引っ張り出すと、締切を過ぎた、騒ぎの原因の書類が出てきてしまう。そんな経験を筆者は何度もしてきました。 職場での具体的な対策 片付けが苦手な人でも職場で最低限の整理整頓ができるようになるにはどうしたら良いでしょうか。もちろん、先ほど挙げた「一日一捨」も有効ですが、筆者が経験した劇的な変化についてお伝えしたいと思います。 それは、物の整理と同じくらい、頭の中やパソコン上で管理する「タスクの管理(整理)」がカギを握っています。下記のようにタスクを整理することで、物の整理整頓がしやすくなるのです。 今取り組んでいるタスクに関する物であれば、机上に置いておきます。それに対して、今取り組んでおらず、社内の誰かや取引先の対応待ちをしているタスクであれば、いったん引き出しなどに収納して、すぐに取り出せるようにしておきます。一方、自分が今取り組んでおらず、すでに完了したタスクに関しては、保存しておくべき書類以外は、適宜PDF(データ)化して容赦なくシュレッダーにかけて捨てます。 どのタスクが今生きていて、どのタスクが完了しているかを明確にすることで、自信を持って「捨てる」ことができます。このお陰で、どんどん捨てられるようになり、机上の物はびっくりするくらいきれいになりました。 その結果、次のような良い影響がありました。 探しものが見つけやすくなった 自分が抱えている「物」の総量が単純に少なくなったので、探しものは見つけやすくなりました。 余計なものが目に入らなくなった これも上記と同様で、目に入る「物」が少なくなるので、集中が削がれるようなことが少なくなりました。 どの「物」を手に取っても仕事の進捗に直結して動けるようになった 今取り組んでいるタスクに関する「物」しか視界に入らないので、書類を見てじっと考えて、「はて、これは何をするんだったっけ」などと無駄な時間を過ごすことが非常に少なくなりました。 職場での席替えも怖くない 余談ですが、職場では組織変更などが原因で席替えが発生します。以前、筆者はこの席替えが一苦労でした。かさばっているたくさんの机上の物を捨て、それでもなお残っているよく分からない書類の束などを席替え先の机に持って行くのが大変だったのです。 しかも、そんなときに限って「本当はすでに処理しておくべきだった書類」「返しておかなければいけなかった備品」などが大量に出て、暗たんたる気持ちになったものです。また、そんな状態だったので、席替えの準備と実行には優に一日や二日を要する「大がかりなプロジェクト」になってしまっていました。 それが、職場での物の整理整頓ができるようになってからは、5分とかからず移動できるようになりました。そんな風に「片付け」に対して苦手意識をあまり持たなくなったのも、筆者自身の特性を理解し、受け容れたからだと考えています。 ただ、これはあくまで筆者の例であって、参考にはなっても、厳密にいえば一人ひとり対策は違うものです。それに対処するためには、まずは困りごとからその対策を考えていくことが大事です。自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害と金銭管理】実際に効果があった対策を紹介

金銭管理が苦手な発達障害のある方に向け、ADHD当事者が実際に効果のあった対策を紹介します。特性別の困りごとと支援制度についても解説。

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「衝動買いが止められない」「お金がいつの間にか残り少なくなっている」「貯金がどうしてもできない」 発達障害のある方は、金銭管理に関する苦労がついてまわるといっても過言ではありません。筆者も、期限まで払うべきお金を延滞させてしまったり、計画的なお金の使い方ができず月末に翌月分の前借りをしなければならなくなったりと、お金の管理にはだいぶ手を焼いてきました。 今回の記事は、特性別のよくある困りごと、それらに対する対策、さらには相談先や支援制度の紹介をいたします。まずは自分で困りごとを把握して対策を立てることが大事です。しかし、自分だけでどうにかできない可能性もあり、相談先や支援制度も知っておくこともまた大切なこととなります。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、「先天的な脳機能の障害」です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 【特性別】お金の困りごとあるある 本記事では、ASDとADHDにフォーカスして、お金の困りごとを列挙していきます。 ASD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある将来の見通しを立てることへの苦手感計画をもってお金を使うことや、クレジットカードの引き落としなどの管理が難しいこだわりの強さ興味関心があることへの執着から、強い購買意欲を抑えられなくなる他者の気持ちが汲み取りづらい相手の言うことの真偽を見抜くことが苦手で騙されやすく詐欺被害にあうことがある ADHD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある衝動的に行動してしまう「ほしい」という感情や行動の抑制ができず衝動買いしてしまう継続することへの苦手感飽きっぽい・集中力が続かない等の理由で家計簿をつけ続けられない ASDやADHDの特性をお持ちの方は、多かれ少なかれ当てはまるところがあったのではないでしょうか。このような特性由来の「困りごと」を把握することは、対策をとるうえで大事になってきます。まずは、上記の「困りごと」のうち、自分がどれによく当てはまるかを確認してみてください。 実際に効果のあった対策 当てはまる「困りごと」が分かったら、その対策を考えることになります。筆者の経験上、まず失敗するパターンは「意思の力で乗り越えようとする」です。「お金を使うのを我慢する」「頑張って家計簿をつける」といった心がけは立派ですが、うまくいく可能性が高いとは言えません。 筆者は、社会人になってからも親元で生活している期間が長かったこともあり、金銭管理についてもたびたび親から注意を受けていました。その困りごとは、まさに上記で挙げたようなものです。しかし、現在では、フリーランスで生活しているくらい、なんとか破綻なくいけるようになりました。その経験をもとに、実際に効果のあった「お金に関する困りごと」対策を5つほど挙げてみます。 1.金銭管理アプリを使う 筆者は、「毎日の予算」という家計簿アプリを使っています。このアプリを使うようになって、劇的にお金の管理がうまくいくようになりました。 以前は、仮に月3万円の予算があったとして、1,000円使ったら残りは29,000円です。翌日に500円使ったら残りは28,500円です。当たり前の話ですが、ここで大事なのは「把握する残額は、減る一方」になってしまうということです。 それに対してこのアプリは、表示される金額が減らないのです。むしろ、減らないどころか増えていきさえするのです。月3万円であれば、1か月30日だったとして、日割で一日当たりに使える金額を計算して、それを表示してくれます。ある月の1日(ついたち)には、「1,000円」と表示されます。使わなければその1,000円が繰り越され、翌日2日には「2,000円」と表示されます。そこで500円使ったとしたら、残額1,500円が繰り越され、翌日3日の分がプラスされて「2,500円」と表示されます。つまり、「把握する残額は、使わなければ使わないほど増える」のです。 「使わなければ現状維持、使ったらその分だけ残額が減っていく」のではなく、「使わなければ表示される金額が増えていく」という仕組みは非常にうまいと思いました。ただただ減っていく金額のプレッシャーに耐え続けるのではなく、「節約した(使わなかった)」→「表示金額が上がる」という、ある種の精神的な報酬を得られるのです。 特に筆者が診断を受けたADHDは「報酬系が弱い」とされ、何かしらの見返りや満足がないとなかなかその行動を継続できない特性を持ちます。家計簿を継続してつけるモチベーションとして、この仕組みはとても有効だと、身をもって実感しています。 2.絶対使いたい用途を1つだけ決める 「衝動買い」は、ASDでもADHDでも共通する悩みになることが多いと思います。繰り返しになりますが、ただ単に「衝動買いを減らそう!」と心に決めても、なかなかうまくいくとは限りません。そこでお勧めなのが、「これには絶対使いたい」という用途を1つだけ決めて、それにはお金を使うのです。 「それではお金を使う方に振り切ってしまうのではないか」とお思いかもしれませんが、逆に「この用途にこれだけ使いたい」と強く思うことで他の用途に使わないようにもっていくのです。「これ」と決めた1つの用途と、それ以外とで濃淡の差があればあるほど、この対策は効果的です。そういう意味では、特定のことに関心を持ちがちなASDの特性のある方にはうってつけかもしれません。 3.衝動買い用クレジットカードを作る 家で気軽にショッピングができるネット通販は便利ですが、衝動買いをしてしまいがちな人にとっては、諸刃の剣です。とはいえ、「クレジットカードを使わない」「ネットで買い物をしない」と決めたところで、なかなかそれをキープするのは難しいものです。 そこで、「貯めておく用の口座とクレジットカード」と「衝動買い用の口座とクレジットカード」の2つを用意しておくのをお勧めします。そして、「貯めておく用の口座のクレジットカード」は信頼できる人に預け、できれば定期的に「衝動買いしても良い金額」を衝動買い用の口座に入金してもらいます。 預けることができなくても、口座を分けて「衝動買い口座へお金を入金する」という行動が必要になるだけでもある程度お金を使いすぎるハードルを高くすることができます。そうすることで、ネット通販で必要以上にお金を使い込んでしまうといった展開を避けやすくなります。 4.FP(フィナンシャルプランナー)に相談する FPとは、資産状況、収入・支出、家族構成などから将来的な資金計画についてのアドバイスをしてくれる職種です。「収入に応じた月ごとの支出の適切な額」や「今後の将来設計に応じた必要年収」といった計算をしてくれるので、ふわっとした目標や目的レベルではなく、年単位、月単位での身近な金銭管理についてもアドバイスをしてくれます。 FPさんも色々といらっしゃいますが、筆者は「発達障害専門FP」という方に相談しています。ご本人も発達障害当事者ということもあり、上記のような特性を加味して、より適切な資産管理、資産形成、お金との向き合い方を親身になって教えてくれます。 お金に関することを自分だけでどうにかするのも大事ですが、その一方で第三者の、できれば専門的な知識と経験を持つFPさんの意見も取り入れて自分の生活に生かすのも、とても有用です。 5.消費者ホットラインに相談する 実際にお金に関する困りごとが発生したときは、「発達障害情報・支援センター」や「独立行政法人国民生活センター」のホームページを通じて、または直接に、消費者庁の「消費者ホットライン」へ相談することができます。相談は、電話だけでなく、各地域の消費生活センターや消費生活相談窓口で対面で相談することもできます。 代表的な支援制度 最後に、お金に関する発達障害者への支援制度をいくつかご紹介します。これらを知り積極的に使うことで、より快適な生活を送ることが可能になります。 1.自立支援医療制度 所得に応じて、心療内科などの通院費や薬代などの1か月あたりの負担上限額が設定されます。例えば、生活保護受給世帯は負担額が無しになり、年収約290~400万円未満の世帯は1割負担(例外あり)になります。 参考資料:自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み(厚生労働省) 2.医療費の減額 自立支援医療制度の他にも、都道府県ごとに障害者を対象とした医療費についての助成制度があります。 参考資料:重度心身障害者医療費助成制度一覧(一般社団法人日本ALS協会) 3.障害年金 障害によって仕事や生活などが制限されている方は、公的な年金を受給できます。受給できる額は、その障害の程度によります。 障害年金は、「障害基礎年金」「障害厚生年金」に大きく分けられます。障害基礎年金は、障害の状態や納付実績についてクリアしていれば受給できます。さらに、障害に関する初診日が厚生年金保険の被保険者である間であれば、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受給することができます。 参考資料:障害年金(日本年金機構) 4.税金の控除 納税者本人もしくはその家族に障害がある場合、障害者控除を受けることができます。障害者控除は、主に所得税、住民税、相続税などに適用されます。控除される金額は、障害の程度などによります。 参考資料:障害者に関する税制上の特別措置一覧(内閣府) 5.公共サービスの割引 公共交通機関では、一部(都営交通など)で、精神障害者の利用金額割引制度があります。なお、JRの運賃は、現在、身体障害者と知的障害者が障害者割引の対象ですが、2025年4月から精神障害者も一定条件下で対象となります。また、航空についても、大手2社(ANA・JAL)をはじめとする航空各社が、国内線に限り精神障害者への割引を実施しています。 参考資料:精神障害者割引制度の導入について(JRグループ)/国内定期航空において障害者割引運賃を設定している事業者(国土交通省) 自分に合う「金銭管理」方法を! 一言に「発達障害」と言っても、特性や性格によって一人ひとり合う対策法は異なります。「ADHDだからこのサービス」「ASDだからこの助成制度」といった簡単な話ではありません。 まずは困りごとからその対策を考えていくことが大事です。その際、自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。就労移行支援事業所ディーキャリアは、利用者様一人ひとりに合う金銭管理方法を見つけるサポートも行なっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害の治療と薬】実際に服薬してみてどうだった?

発達障害の治療法には服薬と心理療法があります。服薬の体験談と効果についてインタビューしました。薬に頼らず自己対処をすることも大切です。

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「発達障害の特性を治療でどうにかしたい」 「服薬をすることでもっとスムーズに毎日を送りたい」 発達障害と診断を受けた場合、服薬や心理療法を勧められることがあると思います。そこで、発達障害の治療法にはどんなものがあるのか、そして治療薬はどのようなものがあり、どんな効果があるのかをお伝えします。特に治療薬については、体験談を織り交ぜながらご説明していきたいと思います。 皆さんが少しでも過ごしやすい社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、先天的な脳機能の障害です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 発達障害の治療について 一般に、医師から病気であると診断された場合、治療を受けたり薬を処方されたりします。発達障害も同じです。成育歴や日々の行動の聞き取りや、考え方や知能等の心理検査の結果をもとに診断され、治療を受けます。発達障害の治療には、大きく分けて「心理社会的治療」と「薬物療法」の2つがあります。 心理社会的治療 心理社会的治療は、「発達障害は先天的なものであり、障害そのものを『治癒』することは困難である」という見地に立ちます。そのため、本人が自らの特性と向き合い、社会に適応していくためのスキルを身に付けることが目的となります。 心理社会的治療の代表格といえば「認知行動療法」です。自身の「認知(ものごとのとらえ方)」を観察することで、そこから生まれる「感情」「行動」を変化させて生きづらさやストレスを軽くしていく治療法です。 認知行動療法については、下記記事を合わせてお読みください。 その他にも報告・連絡・相談のロールプレイなどをする「ソーシャルスキルトレーニング」、特性による困りごとが発生している状況において、そもそも本人の周囲を調整して困りごとが発生しないようにする「環境調整」というものが挙げられます。 薬物療法 心理社会的治療に対して、直接身体に作用する薬物を用いて困りごとに対処していくのが「薬物療法」です。ただし、現在はADHDの治療薬はあるものの、ASDやSLDへの治療薬はありません。また、症状を根治するものではなく、一時的に症状を抑えるものとなります。 とはいえ、服用した経験のある人からは、「頭の中がスッキリ静まり返ってびっくりした」「集中力が劇的に上がった」といった感想があがることがあり、一定の効果が得られるところは見逃せません。ADHDの治療薬として承認を受けている薬は以下の4つです。 名称内容コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩徐放錠)・即効性あり・約12時間程度で効果が消失・ADHDの子どもの7割に効果・2013年に18歳以上の成人投与承認ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)・効果が現れるまで約8週間ほど・1日2回服用で24時間効果が継続・2012年に18歳以上の成人投与承認インチュニブ(グアンファシン塩酸塩徐放性製剤)・2017年3月に承認・特に多動性・衝動性について新たな治療の選択肢となることが期待されるビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル塩酸)・2019年3月に「小児期におけるADHD」の適応において承認・ADHDの診断治療に精通した医師に限り、薬物依存にも対応できる医療機関薬局においてのみ取り扱い可・他のADHD治療薬が効果不十分のときのみに使用 なお、ASDやSLDの特性を持つ人に対しては何も薬物療法をおこなわないかというとそうではありません。例えば二次障害として不安や不眠などの症状が出ている場合には精神安定剤などの治療薬を用いたりしています。 二次障害については、下記記事を合わせてお読みください。 薬物療法の事例 ここでは、実際にお二人の方の薬物療法の経験談をご紹介します。 ストラテラを服用しているAさん ●診断名:ADHD ①ご自身が感じる服薬のメリットデメリットについて教えてください。 メリットは「衝動性が抑えられること」です。服薬前は「これをやりたい」「これを言いたい」「これを食べたい」という思いつきを即行動に移してしまっていました。特に過食に関しては深刻で、成人してから食欲が抑えられず、食費と体重が上がり続け、自己効力感を著しく下げてしまっていました。 しかし、服薬をしたところ、食欲を感じても、実際に食べ物を購入して口に入れるかどうかをいったん待って考えられるようになりました。すると、食費も下がり適正体重をキープすることもでき、自己効力感も上がりました。そんな自分を好きになることができました。 デメリットは、「自分の持つ特性を『障害』と深刻に捉えてしまうこと」です。服薬をしているということは、「服薬をして抑えなければいけない障害がある」ということだと考えるようになりました。 ②服薬だけでは特性対策は難しいと感じたことはありますか。 服薬し始めた当時は「これで忘れ物もミスも全部なくなるかもしれない」と期待しましたが、なくなりませんでした。服薬は「忘れ物やミスの軽減」をもたらすものではなく、忘れ物やミスをしたときでも落ち着いて「次はこうしたらいいかもしれない」と考えられるきっかけに過ぎませんでした。 ただ、そのきっかけをもとに、対策を考えたりこれからの働き方や生き方を考えたりすることができるようになりました。最初は落ち込んだこともありましたが、結果的に医師に診断書を書いてもらって支援機関に頼ることもでき、そうして成し遂げてきた自分の足跡を振り返ると、前向きに考えるきっかけになったことは大事だったような気がします。 ③「服薬し忘れ」や「飲み忘れ対策」のエピソードがあれば教えてください。 ストラテラは服薬をしていないとき、私は「服薬していない」という感じがあり、自宅での飲み忘れに対しては気付いて服薬することができていました。しかし、外出先で飲み忘れに気付いたときは、手元に薬がないため困ることがありました。 対策としては、絶対にカバンに入れるポーチに1回分のストラテラを入れておいて、外出先でも服薬できるようにしています。ポーチは目立つように金色のものを使用しています。 過去にストラテラ、現在はコンサータを服用しているBさん ●診断名:ADHD、ASD ①ご自身が感じる服薬のメリットデメリットについて教えてください。 個人的には、服薬の効果があまり感じられていません。飲み忘れたとしてもほとんど何も変わらない、というのが正直な感想です。強いてメリットを言えば「お守り的に気休めになる」という程度です。ただ、飲み忘れたことで「薬を飲んでいないから、なんとなくいつもより仕事がはかどらないかもしれない...」と不安になることはあります。 デメリットとしては、「自分に合う薬を見つけるのに時間がかかる」ということです。ストラテラは低用量と高用量の2つを試したのですが、低用量の時は効果が感じられず、逆に高用量になってからは「眠気」「だるさ」という副作用がひどく、仕事に支障が出てしまいました。このことがはっきり分かってコンサータに切り替えるまで1年ほどかかってしまいました。 また、転院したいと思った際に障害になるかもしれない点もデメリットだと感じました。コンサータは登録を受けた患者が、登録を受けた医師や薬剤師から処方してもらわなければいけません。そのため、転院したいと思っても、その手続きが煩雑になるのではないかと思い、転院の足かせになるように思います。 ②服薬だけでは特性対策は難しいと感じたことはありますか。 ①で挙げたとおり、私にはほとんど効果が感じられないので「大いにYES」です。自立支援医療費制度のおかげで金銭的負担を抑えられるため、お守りとして飲み続けていますが、薬以外でなんとか対処するしかないと感じています。 対処法としては、以下2点を実行しています。 【自分の特性を理解する】 インターネットや発達障害関連の書籍、それと私がアルバイトさせてもらっていた就労移行支援事業所で自分の特性への理解を深めることができました。インターネットは玉石混交なので注意が必要ですが、およそ公的機関や大手就労移行支援事業所の発信する情報であれば信頼できると考えています。個人的には、就労移行支援事業所でのアルバイトがとても学びが大きかったです。 【自分に合った自己対処を見つける】 仕事の抜け漏れ防止のためのタスク管理/メモアプリや、スケジュール管理ができるリマインダー/カレンダーアプリなどを使ってきました。ただし、管理の時間がうまくとれず、忙しくなると面倒になって崩壊してしまいがちでした。でも、管理しなければ確実に崩壊してしまうのです。「どちらにせよ崩壊するなら、管理の時間を捻出する方向で頑張ろう」と考えると、ちょっと気持ちが楽になります。 また、自分で管理をしていくのと同時に、環境を調整することも大事だと考えています。ただ、これは本当に難しくて、「もっと努力すればできるのではないか」「対処法を駆使すればできるようになるのではないか」「今の業務に慣れたら、より上位の業務や役割に挑戦すべきではないか」など、ともすれば「自分を変える」方向にいきがちになってしまいます。挑戦と失敗を繰り返しながら少しずつ調整をしていくようなイメージが自分には合っているかなと思います。 また、眠気や集中力低下の予防としてカフェインサプリ「カフェロップ」をたまに飲んでいます。 ③「服薬し忘れ」や「飲み忘れ対策」のエピソードがあれば教えてください。 スマホのリマインダーアプリを使って飲み忘れ防止アラートを鳴らすようにしています。ただ、アラートが鳴っても「どうせ飲んでも変わらないしな…」と思ってスルーしてしまうことも多いです。 薬物療法と心理社会的治療の両軸が鍵! このように、薬物療法による効果には個人差があります。ただし、服薬によって状態が少しでも改善できるのであれば、やらない手はありません。医師の処方にしたがって服薬し、さらに心理社会的治療もやってみるというのがベストなのではないでしょうか。 特に、心理社会的治療の代表格である「認知行動療法」は、自己理解のための王道であると言っても過言ではありません。薬物療法とあわせてやってみることを推奨します。就労移行支援事業所ディーキャリアは、この「認知行動療法」に基づいたプログラムを提供しています。自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が解説】職場に発達障害を隠すとどうなる?

障害者雇用と一般雇用の両方で就労経験がある筆者が、自身の体験談を交えながら、障害開示をするメリットとデメリットをお伝えします。

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「発達障害を隠して働いているが、問題ないのか」「診断がある場合は、障害者雇用枠で働かないといけないのか」「発達障害があることが、会社にバレてしまうことはあるのか」 発達障害があることを職場に言わずに働いている(以下表②)場合、「自分の障害のことが知られてしまうのではないか」「知られたら辞めさせられるのではないか」という不安がつきまとうのではないでしょうか。 <発達障害のある人の働き方> No雇用枠障害のオープン/クローズ①障害者雇用枠オープン(障害を開示)②一般雇用枠クローズ(障害を非開示)③一般雇用枠オープン(障害を開示) 発達障害のある人の働き方に関する基礎情報と体験談は以下のコラムでもお伝えしています。あわせてお読みください。 発達障害の1つであるADHDの特性のある筆者は、上記①②③いずれも経験があり、一般雇用枠でのクローズ就労のときは、自分の障害がバレてしまうのではないかと考えてヒヤッとしたことがあります。そんな経験談も交えながら、「発達障害の診断が出ているが、会社に言わないとどうなる?」と気になっている方々へ、一般雇用枠でのクローズ就労のメリットとデメリット・発達障害当事者としての働き方についての考えをお伝えします。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 障害を伝えずに働くことは可能です! まず第一にお伝えしたいのは、「障害を伝えずに働くことは可能」だということです。障害があったら、それを必ず伝えなければいけないと考える必要はありません。また、こちらから言わなければ、原則的に会社は知ることはありません。 また、仮に自分の障害が会社に知られたとしても、「障害がある」という理由だけで解雇する権利は会社にはありません。障害者雇用促進法第35条では、障害者であることを理由に不当な差別的取り扱いをしてはならないと定められています。 障害者雇用促進法 第35条事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。 したがって、まずは「障害が知られても不当な扱いは受けないと制度的に保障されている」と安心していただければと思います。 障害を開示せず一般雇用枠で働くメリット そもそも、なぜ「一般雇用枠で」「障害を開示しない」クローズ就労で働くという選択肢があるのか考えてみたいと思います。 なお、冒頭でご案内したとおり、一般雇用枠でオープン就労をするという選択肢もあります。ただし、多くの場合は「一般雇用枠でクローズ就労」か「障害者雇用枠でオープン就労」のどちらかを選ぶことになるため、今回はこの2つを対比させながら考えていきたいと思います。 給料が高い 障害者雇用枠で障害を開示して働くオープン就労に比べて、一般雇用枠で障害を開示せず働くクローズ就労の方が、給料が高い傾向があります。 オープン/クローズの就労タイプ別に特徴などを図にまとめてみました。会社によって雇用条件や業務内容はさまざまですが、一般的にこのような傾向があると理解して良いと思います。 就労タイプ特徴筆者の経験事例給料障害者雇用枠オープン就労障害特性への配慮の面から、比較的負荷の低い業務が中心書類のPDF化郵便物の集配など低め一般雇用枠クローズ就労負荷が高く責任が重い業務も担う全国の社用車の配置案株主総会準備など高め キャリアパスが豊富 また、一般雇用枠のクローズ就労は、負荷の低い業務から負荷の高い業務まで幅広くこなすのが想定されるため、「将来どんな仕事をしたいか」について、より多くの選択肢があることが多いです。 それに対して、負荷の低い業務のみを担当することが多い障害者雇用枠のオープン就労では、より負荷の高い業務を行なうポジションにステップアップすることは難しいのではないでしょうか。 より多くの業務をこなせるようになるのは、将来的に自分の価値を高めることにつながります。その点で、一般雇用枠のクローズ就労にはメリットがあると考えられます。 このように、一般雇用枠でクローズ就労をするメリットとして、「給料が比較的高いこと」「キャリアパスが豊富であること」があると言えそうです。 障害者雇用枠では高い給与や豊富なキャリアパスは不可能? なお、近年では、これまでの実務スキルや知識を活かし、一般雇用枠と同様の業務を担当し同等の給与をもらえる障害者枠求人も増えてきました。また、スキルや知識がなくても、積極的に多くの仕事をしたいと伝えれば色々やらせてもらえる職場も、まれにですがあります。 筆者も、1社目の会社で、障害者雇用枠で採用されたものの、当初求人票に書かれていた業務以外の仕事を多くするようになった経験があります。しかし、その結果「あの人は普通に仕事を振っても大丈夫」と思われて、どんどん仕事が増えていつしかコントロールが効かなくなってしまい、負荷に耐えきれず筆者は休職することになってしまいました。 障害者雇用枠で働きながらも、一般雇用枠と同様の業務を担当し同等の給与をもらえるようになるためには、体調管理や業務量の管理、きちんと障害特性への配慮が受けられるような環境でいられるかなどについて相当気を付けなければならず、まだまだ課題があると言えます。 障害を開示せず一般雇用枠で働くデメリット それでは、障害を開示しないクローズ就労で働くデメリットについて考えてみたいと思います。 障害が知られないか不安になる 障害があることを言わずに働いていると、常に「知られてしまうのではないか」と不安に駆られながら働くことになります。このプレッシャーは無視できません。「こちらから言わなければ、会社側は障害の事実を知ることはない」と前述しましたが、意図せず知られてしまう例外があります。3つほど具体的な事例を挙げてみます。 障害者控除の申請会社で毎年配られる年末調整の書類に障害者控除記入欄がある。会社の労務などの担当者がチェックするので、その際に知られる場合がある。障害年金・傷病手当金の申請障害年金が支給されているときに、重ねて傷病手当金の申請をする場合、障害年金の受給の事実を記載する必要がある。傷病手当金は会社を通して申請するので、その際に知られてしまうことがある。健康診断問診で精神科で処方された薬を服用していると回答した場合、それが会社側に伝わることがあります。その薬がどんな病状のときに処方されるかを調べられたら、それによって障害が知られる可能性がある。 障害がバレるかもしれなかった筆者の事例 障害があることが知られる場面は他にもあります。1社目に障害者雇用枠でオープン就労をし、2社目に一般雇用枠でクローズ就労に転職をした筆者がヒヤッとした事例をご紹介します。 1社目の休職中、給与が出ない代わりに傷病手当金の支給を受けていた筆者は、休職してそのまま退職となったため、1社目の最後の数か月は「給与ゼロ」でした。そのため、1社目の源泉徴収票の年収や所得の欄には、ありえないくらい低い額が記載されていました。 2社目の年末調整には1社目の源泉徴収票を提出しなければいけないことが分かり、筆者は気が気ではありませんでした。源泉徴収票を確認され、「どうして年収がこんなに低いのですか?」と訊かれたら、障害があること、その影響から仕事がうまくいかなくなって休職したことを話さないといけないと考えたからです。 2社目の入社面接の最後に「心身ともに健康ですか?」と面接官に質問されたときのことが思い出されました。その際、「発達障害が影響して二次障害を起こして休職したのだけど、それは健康と言えるのだろうか?」と一瞬疑問がよぎったものの、ここで言いよどんでしまうと入社に支障が出るのではないかと思い、「はい」とだけ返答しました。 面接で「心身ともに健康」と伝えておきながら、実はその数か月前まで休職していましただなんて言えない。そう思うと、隠していたことがバレてしまってとがめられるのではないかと内心不安でいっぱいでした。 しかし、話さずに済みました。2社目の入社が12月半ばだったので、すでに社内の年末調整の手続きは終わっており、「年末調整の手続きはもう終わってしまったので、自分で確定申告をしてください」と言われたのです。その結果、源泉徴収票を見られることはなかったのでした。 結果的に何もなかったものの、「障害が知られてしまうかもしれない」という不安を抱きつつ仕事をするのは、精神的に結構プレッシャーがかかるものです。無いに越したことはありません。 配慮が受けられない 障害を開示しないので、合理的配慮も受けられないということになります。発達障害のある人が配慮なしに仕事をするのは、相当負荷のかかることです。 厚生労働省が令和2年に発表した|障害者雇用の促進について 関係資料」によると「一般求人障害非開示=一般雇用枠でクローズ就労」で就職した場合の職場定着率は1年で30.8%とかなり低いというのが現状です。一方で「障害者求人」の場合には70.4%と比較的高い定着率となっています。 障害を開示して配慮を受けられる方が、障害を開示せず配慮を受けられない方よりも、圧倒的に定着率が高いのです。 配慮が受けられない環境に耐えきれなかった筆者の事例 筆者は、前述した通り2社目は一般雇用枠でクローズ就労、つまり配慮なしに仕事をする状況でした。結果、1年強で仕事が続けられなくなり休職を余儀なくされました。 締切は守れない、チェックミスを連発する、やるべきことが溜まりすぎてどれから手をつければ良いか分からない。そういったことが日常茶飯事になると、次第に頭が働かなくなってきます。 「頭が働かなくなる」→「仕事上でミスをする、仕事が溜まる」→「より頭が働かなくなる」という悪循環に陥り、「自分は職場にいていいのか」と自己嫌悪にさいなまれるようになっていきました。職場のデスクで昼食を取るのもできなくなり、昼休みになると逃げるように職場近くのレストランやカフェに行くようになりました。 発達障害は外から見て分かる障害ではありません。したがって、より働きやすくなるためには、自分の障害のことを説明して、配慮を求める必要があります。しかし、一般雇用枠でのクローズ就労は、それができません。 そういったこともあり、自己嫌悪がさらに悪化して、「どうせ自分は仕事がちゃんとできない」と思い込むようになってしまい、出社するのが怖くなり、仕事をするどころの精神状態ではなくなって休職をすることになってしまいました。 解雇につながることも また、配慮が受けられない環境は、思った以上に簡単に自分を追い詰めてしまいます。単に「仕事がつらい」だけではなく、解雇されてもしかたがない・解雇理由ありとされるような状況に陥ることもあるのです。 解雇理由は、会社が自由に従業員を解雇できないよう就業規則に定めておかねばならないとされています。厚生労働省が公開している就業規則のひな形では、解雇理由として、次のような事項などが列挙されています。 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき 正当な理由なく無断欠勤が●日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき  正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、 ●回にわたって注意を受けても改めなかったとき 就業規則に明記された解雇理由に該当しなければ、解雇されることはありません。しかし逆にいえば、該当したら解雇される可能性があるという点、注意が必要です。 筆者は解雇された経験はありませんが、そうなってしまう一歩手前までいったと感じています。前述の通り、出社するのが怖くなると、「休みます」の連絡さえ難しくなります。その状態がエスカレートすれば、「無断で長期にわたり欠勤をする」ことにつながりかねませんでした。 「自分に合った働き方」を 以上、障害を開示せず一般雇用枠で働くメリットとデメリットを見てきました。それを踏まえて、「発達障害の診断が出ているが、会社に言わないとどうなる?」と気になっている方々へお伝えしたいことをまとめました。 今、一般雇用枠でクローズ就労をしている方へ 今現在、障害を開示せずクローズ就労をしている方、繰り返しになりますが、「障害を伝えずに働くことは可能」です。障害特性による苦手があったとしても、働くにあたって支障がないのであれば、会社・チームにとって頼りになる存在になっているはずです。自信を持って仕事を続けてください。 もし、仕事をやるにあたって困りごとがあり、しんどさを感じているのであれば、それは自分からの大事なシグナルです。無理せず、仕事の負荷を減らしたり、ちょっとお休みをしたりといったアクションをするのをお勧めします。 そんなとき、「本当なら毎日きちんと仕事ができて当たり前なのに、なんて私はダメなんだ」と思ってしまうかもしれません。その必要はありません。自分に合った「仕事のやり方」「対処法」に工夫の余地があるだけだ、と考えてみてください。 ただ、自己対処を尽くしても、どうしても仕事が続けられないということもあるかもしれません。その場合は、休職するなり退職するなりいったん職場から離れて自分に合った働き方を考え直してみるのも、長い目で見ればありです。 一般雇用枠でクローズ就労したいが迷っている方へ 迷っているということは、障害特性が仕事上に影響が出てしまうことを危惧されているのだと思います。そんな方は、いったん特性に配慮してもらいやすい障害者雇用枠でのオープン就労も選択肢の一つです。もちろん、障害者雇用枠は給料などの条件が低めに設定されていることが多いですが、それを差し引いても、「働きやすい職場」「長く働ける職場」での就労をまずは優先しても良いのではないでしょうか。 筆者は、待遇や条件面を理由に一般雇用枠のクローズ就労を選んだところ、前述したとおり1年ちょっとで就労を継続するのが難しくなってしまいました。そういった経験からも、事情が許す限り、まずは障害者雇用枠のオープン就労の検討から始めるのが現実的だと考えます。 とはいえ、給与の高低は見逃せない問題です。そこで、人によってはオープン就労で「働くこと」自体に慣れてきたらクローズ就労への転職を考えてみるといった計画性を持ってキャリアプランを立てるのもありです。 同じ会社で障害者雇用枠から一般雇用枠へ移行することも 冒頭で簡単に触れさせていただきましたが、「障害を開示しつつ一般雇用枠で働く」という選択肢もあります。 筆者は、同じ会社で「障害を開示して、障害者雇用枠のオープン就労で働き始める」→「一般雇用枠のオープン就労へ移行して継続して働く」という経験をしています。もちろん、スムーズに話は進むとは限りませんが、そんな例もあると知っておいても損はないと思います。 その会社は、障害があったとしても働きぶりが一般雇用の方と同等であれば、差は設けていませんでした。また、その会社で働いているあいだ、役職も付いて手当もつき、昇給もありました。 筆者にとってよかったのは、障害者雇用枠で働き始めた際に申し出た配慮事項が、一般雇用枠へ移行した後でもそのまま継続されたことです。筆者の配慮事項は、強い調子で叱責をされると必要以上に自分を責めてしまい頭の中が真っ白になって仕事にならないことから「怒らないで欲しい。改善すべきところがあれば、冷静に『提案』して欲しい」というものでした。 もちろん、どんな配慮事項も一般雇用枠でも受け入れられるとは言えませんが、「怒らない」というのは実行しやすい配慮であることもあり、職場で受け入れられる「円滑に仕事を進めるために業務上必要なこと」と認められたのだと筆者は推測しています。ちなみに、一般雇用枠であったとしても合理的配慮を依頼することができます。ただし、会社との話し合いのうえで「合理的」だと判断されるかどうかによります。詳しく「合理的配慮」について知りたい方は以下のコラムもあわせてお読みください。 余談になりますが、そもそもなぜ障害者雇用枠から一般雇用枠になったのかご説明をしたいと思います。それは筆者の「忘れっぽい」というADHD特性がいかんなく発揮されてしまい、障害者手帳の更新を忘れてしまったからです。意図せず移行してしまいましたが、それでも就労を継続させてくれた会社には感謝しかありません。 自己理解にもとづいた「配慮事項の明確化」「自己対処」が大切 障害者雇用枠/一般雇用枠、オープン/クローズ就労のどの働き方をするにしても、自分に合った働き方を探す上で、自分の特性をしっかり理解し、必要であれば配慮事項を明確に伝えられ、特性に対して自己対処ができて求められる成果をあげられることは、その選択肢を広げるという意味でプラスになります。 筆者は、仕事が膨大であっても精神的に落ち着いて取り組める「タスク管理」というスキルで自己対処ができ、それでも配慮して欲しい点として「怒らないで(強い調子で叱責しないで)欲しい。改善すべきところがあれば、提案という形でお願いしたい」と明確に打ち出すことができました。 しかし、配慮事項を明確にし、自分なりの自己対処法を身に付け、長期的に継続できる自分なりの働き方を探すのは、自分一人でおこなうには難しく、膨大な手間がかかってしまうでしょう。 そんなときは、自分一人で悩んだり、余計に手間をかけたりしてしまうよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が解説】発達障害者のためのマルチタスク対処法

マルチタスクに苦手意識のあった発達障害当事者が、特性をカバーするために編み出した「タスク管理」テクニックを紹介します。

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  • #合理的配慮
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「仕事が溜まってしまって、どれからやればいいか分からない」「複数の仕事を同時進行するのが難しい」 発達障害、特にASDやADHDのある人は、複数の仕事が目の前にある状態、いわゆる「マルチタスク」に苦手意識を持ちがちではないでしょうか。一方で、現代では、たくさんの仕事を効率よくこなすことが要求されがちです。 発達障害のADHDのある筆者は、自らの特性をカバーする目的で編み出した「タスク管理」をメインに、マルチタスクへの苦手感を大幅に払拭できました。その経験から「発達障害者はいかにマルチタスクに対処すべきか」についてお伝えしたいと思います。この記事が、特性による困りごとのある皆さまにとって「働きやすくなるためのヒント」になることを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 なぜ発達障害者はマルチタスクが苦手なのか まずは、発達障害者、特にASD/ADHDのある人がマルチタスクへ苦手感を持つ理由をご説明したいと思います。 ASDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ASDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の2つの傾向が大きく関わっています。 シングルフォーカス特性一度に注意を向けられる範囲が狭くなる。興味関心の幅が狭くなりがち。シングルレイヤー思考一度に一つの情報しか処理しにくい。複雑な状況の理解が難しく、明記されていないルールを自然と読み取ったり、物事の「裏」を察したり、といったことが苦手になる。優先順位がつけにくくなる。 マルチタスクな職場では、この2つの傾向があるとなかなか難しいです。 ADHDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ADHDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の傾向が大きく関わっています。 ワーキングメモリーの弱み脳の一時的な記憶の置き場であり、作業場でもあるワーキングメモリーの機能低下により、臨機応変な対応が難しくなったり、不注意が起こりやすくなったりする。聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい。複数の作業を同時に進めることが難しい。集中し続けることや、注意し続けることが苦手。複数のことに目を配れない。など。 特に「聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい」「複数の作業を同時に進めることが難しい」「複数のことに目を配れない」といった傾向は、常に複数の仕事を抱える状況だと、困りごとを生みやすくなります。 ※上に挙げた話の詳細は、大人の発達障害とはでご説明しています。ぜひ参考になさってください。 そんなASD/ADHDのある人は、「マルチタスクな職場」にどう対応していけば良いのでしょうか。 マルチタスクへの対処法 そもそも、マルチタスクを避けられればそれに越したことはありません。ASDやADHDの人によくみられがちな「反復作業が得意」「興味のあるものへの高い集中力」といった傾向を生かせる、単純作業のみ求められる仕事に就くことができれば、しっかりと自分のパフォーマンスが発揮できることでしょう。 ただ、仕事が複雑化している現代、マルチタスク対応が必須となる職場は少なくありません。マルチタスクが避けられない場合、どのように対処していくかが必要になります。 対処法の鉄則は、「諦める」「自分ができるような状況に持っていく」の2点です。 「マルチにこなそうとする」のを諦める まず、「パソコンが複数のアプリケーションを同時に処理するように複数の仕事を同時並行でこなす」のは、諦めましょう。目の前に複数のやるべき仕事が並んでいるマルチタスク状態において「マルチにタスクをこなす=同時並行に処理する」ことは原則的に無理なのです。 「自転車を運転しながら、今日の夕飯を考える」「請求書の束に印鑑を押し続けながら、上司と話す」といったことは同時並行でできるじゃないかとお思いかもしれません。それは自転車の運転や請求書への押印のどちらも、「何も考えずにできるようになった行動」だからできるのです。 職場でやる仕事は、ほとんどが「考えることが必要」な仕事ですので、やはりマルチタスクは諦めた方が良い、というのが筆者の考えです。 ところで、まるで一度に3つ4つの仕事を同時にこなしているような印象を受けるような、とんでもなく速いスピードで仕事をこなす人がいます。そういう人は、マルチタスクを可能とする特殊技能の持ち主なのでしょうか。実は違うのです。 ASD/ADHDでも対処可能なシングルタスクへ落とし込む 一度に3つ4つを同時にこなしているようなスピード感で仕事をしている人は、実は小さなシングルタスクへ分解して、そのシングルタスクを完了させてはまた別のシングルタスクへ、という風にタスク管理をして仕事を進めているのです。その結果、他の人からみると「ほぼ同時に複数の仕事タスクを終わらせている」ように見えるのです。 例えば、「カレー」「サラダ」「スープ」の3品の料理を作るとします。もちろん3品同時進行で作ることはできません。カレーの具材を切り、水と共に鍋にいれ煮ます。この時点でサラダ作りもスープ作りも着手していません。その後に初めてサラダ作りに着手し、キャベツを千切りにします。千切りが終わったら、鍋にカレールウを入れます。次に、スープの素をカップにあけます。 このように、3品の作成は同時に進行していないことがお分かりだと思います。最終的には「ほぼ」同時に食卓にカレーとサラダとスープが並びますが、その過程はそれぞれの料理を完成させる細かい手順を1つずつ終わらせていった結果にすぎないのです。 仕事も同じです。仕事タスクがA、B、Cと3つあり、それぞれに3つの手順に分解できるとします。最初にA-1を終わらせ、次にB-1をやり、それが終わったらA-2を完了させ、次にC-1とC-2を一気にやり、B-2を終わらせて、A-3、B-3、C-3と順々に完了させていく。そんな風に「あたかもマルチタスク風に」対処するのです。 複数ある仕事を目の前にすると、つい全部いっぺんに終わらせたくなりがちです。しかし、本当にマルチタスクでもスピーディーにこなせる人は、マルチタスク全部を同時に終わらせるという幻想を捨て、シングルタスクへ分解して1つ1つやるしかないと思えた人です。 前述したASDの傾向の「シングルフォーカス」「シングルレイヤー」は、まさにこの進め方にピッタリだと言えるでしょう。また、ADHDの「複数の作業を同時に進めることが難しい」という傾向も、まさにこの進め方で対処できるものです。 マルチタスクをする上で気を付けること ご説明したマルチタスク対処法をやっていくに際して、以下2点はぜひ気を付けたいところです。 スケジュールを意識する そもそも「時間通りに物事を進める」のは、ASD/ADHD共に苦手です。スケジュールを意識して業務タスクを進めるよう気を付けておくに越したことはありません。マルチタスク環境であればなおさら、それぞれのタスクについてスケジュールを意識しなければなりません。 ASDのある人にとっては、先に挙げた「シングルフォーカス」がネックになりがちです。シングルタスクへ分解した結果、いわゆる「過集中」状態になってしまい、今自分が取り組んでいるタスク以外のことに気がいかなくなり1つのことに時間をかけがちです。そんなときは「これから30分やろう」と決めてタイマーをかけておくなどの対策があります。 また、ADHDの「ワーキングメモリ―の弱み」により、せっかく小分けにしたシングルタスクを実行するのを忘れてしまうことがあります。「いつやるか」をリマインダーを設定して確実にしておくことも大事になってきます。筆者は、ADHD傾向が強いため、将来の予定はリマインダーアプリを活用しています。「忘れない」のではなく、「忘れても支障ない」ようにしておくことが大切です。 適宜休憩を取る 当然ながら、集中してタスクを実行すると疲れます。疲労していると、より特性が強く出る場合があります。そうならないように、タイミングを見ては休憩を取ることもまた大事です。 しかし、自分自身は疲れを認識していなくても、実は心身が疲れていることがあります。筆者も、疲れを感じずにずっとタスクに没頭してしまい、終わって2~3時間後にドーンと大きな疲労感に襲われてしまうことがよくあります。そんなときは、特性がいつもより強く出て自分が使いものにならなくなったり、ひどい時にはタスクを実行するだけの元気がなくなってしまったりします。 特にマルチタスク状態で仕事をこなすような環境では、ただでさえ苦手な状況なうえに、次から次へとやることがあるため、休憩を取ることがおざなりになりがちです。就労は50メートルを全力で走ったら終わりなのではなく、長く続くマラソンのようなものです。継続して安定的に働けるように、体力にまだ余裕があるうちに適宜休憩を取るべき、と自戒を込めて筆者は常に意識しています。 前述したASDの傾向の「シングルフォーカス」「シングルレイヤー」は、まさにこの進め方にピッタリだと言えるでしょう。また、ADHDの「複数の作業を同時に進めることが難しい」という傾向も、まさにこの進め方で対処できるものです。 それでも困難を感じるときは ご紹介した「マルチタスクへの対処法」が難しいときは、合理的配慮を求めることになります。 合理的配慮とは 合理的配慮とは、障害のある人もない人も平等に社会生活を送れるように、障害特性や困りごとに応じておこなわれる対応のことです。 合理的配慮については、合理的配慮とは?基礎知識をまとめました。で詳細にご説明しています。よろしければご覧ください。 合理的配慮を受けるためには、下記①~③の要件が揃っている必要があります。 ① 障害が原因となる困難さ(障壁)であること② 障害者本人が、自己対処(セルフケア)を行おこなっても、対処しきれないものであること③ 企業等の側にとっても、重すぎる負担でなく、提供可能な範囲のものであること 要件それぞれの詳しい解説については、「合理的配慮」申請マニュアル 流れとポイントを紹介にあります。また、合理的配慮の具体的な事例に関しては、発達障害のある方の合理的配慮事例を見ていただきたいと思います。 要件②の「自己対処」が、これまでお伝えした「マルチタスクへの対処法」です。それが難しいときは、要件①と③が揃っていれば「合理的配慮」として企業等の側に対応を求めることが可能になります。 国もマルチタスク対応への配慮を念頭に置いている 合理的配慮として企業側が「マルチタスクへの対処法」をおこなうのであれば、上司がマルチタスクをシングルタスク(手順)へ分かりやすく分解し1つずつ指示出しする、といった形になります。 実は、国もそういった形での合理的配慮を想定しているのです。厚生労働省が公開している「合理的配慮指針」の末尾別表にある合理的配慮事例にこのような内容があります。 「業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと」(厚生労働省|「合理的配慮指針」別表より。太字は筆者による) それほど、マルチタスクへの対処は、取り組むべき課題だと広く認識されているのでしょう。「そのくらい自分でどうにかしなければいけない」と思う必要はありません。 自己対処や合理的配慮申請を専門家に頼ろう これまで、自己対処としての「マルチタスクへの対処法」を中心に、それが難しいときの合理的配慮申請についても書きました。これらのことは、自分一人でおこなうことも可能ですが、自分に合った自己対処の方法を見つけたり適切な合理的配慮の申請は、自分一人でおこなうことはおそらく難しい、あるいは膨大な時間や手間がかかってしまうでしょう。 そんなときは、自分一人で悩んだり、余計に手間をかけてしまうよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。