発達障害当事者がオープン就労/クローズ就労の両方で働いてみて分かったこと

2. オープン就労(一般雇用枠)で働いてみた

私が発達障害を疑って病院を受診し、診断を受けたのは、転職して 4 か月目のことでした。転職前の会社はマニュアルが整備されており、スケジュールや手順がキッチリと決まっている仕事が多かったため、苦手を感じつつもどうにか仕事になっていました。

ところが転職後の会社では、段取りをすべて自分で考えて仕事を進めなければならず、仕事がまったく回らなくなってしまったのです。仕事の優先順位やスケジュール、タスクの管理ができていないと上司からたびたび注意され、私は深く落ち込んでいました。

そんなとき、たまたまインターネットで見かけた記事に、発達障害のことが書かれていました。特性による困りごとが自分の状況にピタリと重なり、「もしかしたら……」と思って病院を受診したのです。

2-1. 良かった点

①会社が相談に乗ってくれて、仕事を続けることができた

仕事で成果が出せていなかったこともあり、診断を受けたことを会社に伝え、そのまま退職するしかないと思っていました。しかし社長や当時の上司が親身に相談に乗ってくださり、「とりあえず働き続けながら、仕事内容を調整してみよう」ということになりました。

私は家族を養う立場でしたので、これは本当に幸運でした。もしそのまま退職していたら、きっと転職もままならず、家族の生活がどうなっていたか分かりません。

②同じ会社のなかで新しい職種にチャレンジできた

もし転職によって職種を変えようとしたら、30 代半ばという年齢的にも、未経験では到底再就職はできなかったでしょう。同じ会社で働き続けながら新しい職種にチャレンジできたのは、とてもありがたいことでした。

2-2. 反省点

①職種を変えただけでは、うまくいくとは限らない

営業から Web 担当に職種を変えてもらったものの、未経験だったこともあり失敗続きで、なかなか成果を出すことができませんでした。

「こんなに配慮を受けているのに、それを裏切るようなことをしている」という後ろめたさがつのり、徐々に上司にも相談しづらくなって、結局 4 か月後に自分から退職を願い出ることになってしまいました。

「発達障害者は IT や Web 系の仕事が向いている」という話を見聞きしていたため、職種さえ変えれば何とかなるだろうと、私は心のどこかで淡い期待を抱いていました。

しかしどんな仕事でも、未経験であれば最初からうまく行くはずはありません。後から考えれば「そこで焦らずに会社ともじっくり相談して、長期的に取り組むべきだった」と思いました。

②すべての会社が障害のある方のサポートに慣れているとは限らない

よほどの大企業でもない限り、社内に障害者雇用の担当者や専門部署のある企業はほとんどありません。

今にして思えば、専門の部署や担当者がいない会社で配慮が受けられただけでもとても幸運だったのですが、当時の私はそれを理解できていませんでしたし、会社や上司と根気よくすり合わせを行うだけの知識も気力もありませんでした。

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