こんなときに注意!集中力が途切れがちな場面
実際の職場でどんなときに集中力が途切れてしまいがちなのか、知っておくことで「こういう場面では気をつけよう」という心構えができます。今回は二つの事例をご紹介します。
事例1. ふと目に入ったものが気になって、大事な仕事を忘れてしまったAさん
上司から「明日は大事な会議があるので、資料を今日中に準備しておいて欲しい」と頼まれたAさん。資料の準備を進めていたところ、ふと書棚に置いてあるファイルが順番どおりに並んでいないことに気が付いた。
「誰かが使って、ちゃんと元通りにしなかったんだな…困ったもんだ」
そう思ったAさんはファイルの並べ替えを始めた。しかし並べ替えだけのつもりが、ファイルに貼ってあるラベルのはがれや、ファイルの中身まで気になり始めて、いつの間にか「ファイルの整理」に没頭してしまった。
「Aさん、頼んでおいた会議の資料、準備できてる?」
夕方、上司から尋ねられ資料の準備を忘れていたことにようやく気が付いたAさんは、結局夜遅くまで残業して準備するはめになってしまった。
事例2. 簡単な作業のはずが細かなミスだらけになってしまったBさん
「ちょっと面倒な作業で申し訳ないんだけれど、セミナー参加者の一覧をまとめておいてくれないかな?」上司から紙の申込書の束を渡され、Excelを使って一覧表にまとめるよう頼まれたBさん。
「紙に書かれた名前と住所、電話番号をExcelに入力するだけでしょう?簡単かんたん。お、100枚もあるのか!さっさと片付けよう!」
そう思って勢いよく作業を始めたBさんは、100枚もあった書類をあっと言う間に入力し終えて、特に見直しもせずさっそく上司に提出した。
しかし提出したデータを確認した上司は、ちょっと不満そうな顔をしている。
「……Bさん、せっかく作ってくれたんだけど、申込書の枚数と、Excelに入ってるデータの数が合わないよ。ここは名前と住所の行がズレてるし、ダブって入力されてるものもあるね。仕事の速さはいいけれど、ちょっとミスが多すぎるかな」
もう少し丁寧にやればよかった…と後悔しながら、結局BさんはExcelの修正作業に追われるのだった。
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上記はあくまで一例ですが、「いろんなものが目に入りやすい環境」や「単純なことを繰り返す作業をするとき」などは注意が必要だと言えるでしょう。
そもそも現代人の生きる環境が集中を妨げている!?
実は私たちが何気なく過ごしている「普段の環境」が、集中を妨げる原因になっているという指摘もあります。
ハーバード大学の医学博士で、発達障害の専門医でもあるエドワード・M・ハロウェル博士は、著書「ハーバード集中力革命」(2016年、サンマーク出版)のなかで、現代人の生きる環境そのものが集中力の低下を招いていると述べています。
皆さんも手元のスマートフォンから「アプリやメッセージの新着通知がひっきりなしに届いている」ということはないでしょうか。集中するためには脳のエネルギーが必要であり、こうした通知を気にするだけで脳のエネルギーはどんどん使われてしまいます。
スマートフォンをはじめ、テレビや新聞、移動中の車内広告、会社や家のPCなど、私たちは普段の生活のなかで朝から晩までたくさんの情報を受け取り続けています。インターネットがなかった時代であれば使わなくて済んだ脳のエネルギーを、「情報を受け取ること」で消費してしまっているのです。
集中するための脳のエネルギーをいつ・何のために使うのか——一度立ち止まって、普段の生活を見直してみることも必要なのかもしれません。
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