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ADHDの「集中できない・続かない」〜その原因と対策〜

「仕事や勉強をやろうと思っても、なかなかやる気が起きない…」「集中力が少ししか続かず、気が付いたらいつの間にか別のことをやっていた…」
発達障害、特に注意欠如・多動性障害(ADHD)のある方の中には、このようなお悩みを抱えていらっしゃる方も多いかもしれません。ADHDはその脳の特性から集中をすることに苦手があり、仕事や勉強において困りごとを感じやすくなります。
いったいどうすれば集中力を高めることができるのでしょうか。今回は集中できない・続かないことの原因や場面を解説しながら、ADHD当事者である筆者が実際に試して効果があった「集中力を高めるための方法」をご紹介します。
※この記事は2026年6月29日に更新されました
ADHDのある方が「集中ができない・続かない」理由

対策を立てるために、まずは「なぜ集中ができない・続かないのかという原因」を知っておきましょう。
ADHDは、脳の中で判断や抑制をつかさどる部位の機能が低下することで、行動や思考のブレーキが効きにくくなるという特性があります。このブレーキの効きにくさ=衝動性により、思いついたことをすぐ行動に移してしまったり、他のものに注意が向いてしまうとそちらに意識を持っていかれたりしてしまうことで、集中しづらくなってしまうのです。
またもう一つの脳の特性であるワーキングメモリーの弱みも、集中しづらい原因となります。
「ワーキングメモリー」とは以下の二つの機能を持った脳の仕組みです。
- ① 情報(聞いたことや考えたこと)を一時的にとどめておく、記憶の“置き場”としての機能
- ② 情報を整理して実行に移す“作業場”としての機能
これらの機能に弱みがあるために、作業中に別の情報が入ってくると最初の作業のことを忘れてしまう、複数のことに同時に注意を払えず混乱してしまうといったことが起こり、一つの作業に集中しづらくなってしまうのです。
こんなときに注意!集中力が途切れがちな場面

実際の職場でどんなときに集中力が途切れてしまいがちなのか、知っておくことで「こういう場面では気をつけよう」という心構えができます。今回は二つの事例をご紹介します。
事例1. ふと目に入ったものが気になって、大事な仕事を忘れてしまったAさん
上司から「明日は大事な会議があるので、資料を今日中に準備しておいて欲しい」と頼まれたAさん。資料の準備を進めていたところ、ふと書棚に置いてあるファイルが順番どおりに並んでいないことに気が付いた。
「誰かが使って、ちゃんと元通りにしなかったんだな…困ったもんだ」
そう思ったAさんはファイルの並べ替えを始めた。しかし並べ替えだけのつもりが、ファイルに貼ってあるラベルのはがれや、ファイルの中身まで気になり始めて、いつの間にか「ファイルの整理」に没頭してしまった。
「Aさん、頼んでおいた会議の資料、準備できてる?」
夕方、上司から尋ねられ資料の準備を忘れていたことにようやく気が付いたAさんは、結局夜遅くまで残業して準備するはめになってしまった。
事例2. 簡単な作業のはずが細かなミスだらけになってしまったBさん
「ちょっと面倒な作業で申し訳ないんだけれど、セミナー参加者の一覧をまとめておいてくれないかな?」上司から紙の申込書の束を渡され、Excelを使って一覧表にまとめるよう頼まれたBさん。
「紙に書かれた名前と住所、電話番号をExcelに入力するだけでしょう?簡単かんたん。お、100枚もあるのか!さっさと片付けよう!」
そう思って勢いよく作業を始めたBさんは、100枚もあった書類をあっと言う間に入力し終えて、特に見直しもせずさっそく上司に提出した。
しかし提出したデータを確認した上司は、ちょっと不満そうな顔をしている。
「……Bさん、せっかく作ってくれたんだけど、申込書の枚数と、Excelに入ってるデータの数が合わないよ。ここは名前と住所の行がズレてるし、ダブって入力されてるものもあるね。仕事の速さはいいけれど、ちょっとミスが多すぎるかな」
もう少し丁寧にやればよかった…と後悔しながら、結局BさんはExcelの修正作業に追われるのだった。
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上記はあくまで一例ですが、「いろんなものが目に入りやすい環境」や「単純なことを繰り返す作業をするとき」などは注意が必要だと言えるでしょう。
そもそも現代人の生きる環境が集中を妨げている!?

実は私たちが何気なく過ごしている「普段の環境」が、集中を妨げる原因になっているという指摘もあります。
ハーバード大学の医学博士で、発達障害の専門医でもあるエドワード・M・ハロウェル博士は、著書「ハーバード集中力革命」(2016年、サンマーク出版)のなかで、現代人の生きる環境そのものが集中力の低下を招いていると述べています。
皆さんも手元のスマートフォンから「アプリやメッセージの新着通知がひっきりなしに届いている」ということはないでしょうか。集中するためには脳のエネルギーが必要であり、こうした通知を気にするだけで脳のエネルギーはどんどん使われてしまいます。
スマートフォンをはじめ、テレビや新聞、移動中の車内広告、会社や家のPCなど、私たちは普段の生活のなかで朝から晩までたくさんの情報を受け取り続けています。インターネットがなかった時代であれば使わなくて済んだ脳のエネルギーを、「情報を受け取ること」で消費してしまっているのです。
集中するための脳のエネルギーをいつ・何のために使うのか——一度立ち止まって、普段の生活を見直してみることも必要なのかもしれません。
集中力を高めるための5つの方法

ここからは、ADHDの当事者である筆者が、実際に試してみて、集中力を高めるのに効果があった方法を5つご紹介します。
1. スマートフォンやPCの通知を切る
先ほども述べたとおり、スマートフォンやPCからの通知を気にするだけでも脳のエネルギーは消費されてしまいます。設定を見直し余計な通知が鳴らないようにすることで、ADHDの「衝動性」の特性への対策になります。
以下はASDのある方向けの「SNS依存を防ぐ方法」の記事ですが、このなかで「通知をコントロールする方法」を具体的にご紹介していますので、ご参考ください。
【大人のASD特性対策】コミュニケーションが苦手だとSNS依存になりやすい!?上手く付き合うためのHACK!
私用のスマートフォンと異なり、仕事用のスマートフォンやPCでは「仕事に必要な通知」を受け取る必要がありますので、「集中力を必要とする作業のときだけ、一時的に通知をオフにする」のがオススメです。ただしADHDの特性がある方は「通知を切ったこと」を忘れてしまいがちなので、必要なタイミングでオンに戻すよう気をつけましょう。あらかじめ集中したい作業の時間を決めておき、終わりの時間にアラームをセットしておくと良いでしょう。
2. デスクの上に必要なもの以外は何も置かない
スマートフォンの通知と同様に、ADHDの「衝動性」の特性への対策として、余計なものが目に入らないようにするのが効果的です。そのための方法の一つが、デスクの上に必要なもの以外は何も置かないことです。
アメリカの認知神経科学者であるサハル・ユーセフ博士によれば、スマートフォンの通知が鳴らなくても、スマートフォンが視界の中に置いてあるだけで集中力を奪われてしまうそうです。それだけ人間の脳が「目からの情報」に敏感だと言えるでしょう。
「作業に必要のない資料」や「使っていない文房具」はいったん引き出しにしまい、今やるべき作業に必要なものだけを机の上に出すようにしましょう。
3. 準備運動をする
スウェーデンの小学校でおこなわれた実験*によると、勉強の前にたった4分の運動をするだけで運動後の集中力が向上するとの結果が出ています。(*参考文献:「一流の頭脳」サンマーク出版、2018年)
仕事を始める前や、仕事中に「集中力が落ちてきた」というときには、軽い運動をしてリフレッシュしてみましょう。職場では大きな動きのある運動はしづらいので、デスクで座ったままでもできる以下のような運動がおすすめです。
また階段を上り下りするだけでも効果があります。
4. なんでもメモする習慣を付ける
ADHDの「ワーキングメモリーの弱み」を補うためには、メモ帳を持ち歩いてなんでもメモする習慣を付けるのがおすすめです。
メモせずとも覚えていられそうなことでも、頭のなかで「忘れてはいけない」と気になってしまい、目の前の作業に集中する妨げになってしまうことがあります。忘れてはいけないことをメモに「預ける」ことで、気兼ねなく忘れることができ、今やらなければならないことに集中しやすくなるのです。
メモを活用したADHDの特性対策については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご参照ください。
5. タイマーを使った集中力トレーニング
アメリカの人気ブロガーであるレオ・バボータ氏は、読者数100万人を誇る自身のブログ「zen habits」(禅の習慣)の記事のなかで、「5分のタイマーを設定し、まずはその5分間だけ目の前の作業に集中する」という方法を紹介しています。
「集中して取り組まねば…」と思うと精神的にハードルが高いですが、「5分間だけなら」と考えれば、目の前の作業に集中しやすくなります。
バボータ氏はまた、その5分で作業が手に着かなければ、何もせず自分の衝動と向き合うだけでも良いとも述べています。普段は意識することのない「別のことをしたいという衝動」と向き合うことで、集中力を高めるトレーニングにもなるのです。
なおスマートフォンのタイマーアプリでは、他の通知がなって逆に気が散ってしまう恐れがあるため、以下のような学習用タイマーを使うのがおすすめです。
逆に集中しすぎてしまう!?「過集中」にも注意

発達障害の特性として、目の前の作業に没頭して他のことが目に入らなくなってしまう過集中にも注意が必要です。
過集中の状態になると、「事例1. ふと目に入ったものが気になって、大事な仕事を忘れてしまう」の中でも紹介したように、優先順位の低いことに没頭してしまうことがあります。
また過集中になると「自分の限界を超えて集中しすぎる」ということが起こるため、休憩をとることを忘れて仕事を続け、終わったときに強烈な疲れを感じてしまうケースもあります。
- 「せっかく集中モードに入ったから、途切れさせたくない!」
- 「この仕事をやりきらないと気が済まないから、終わるまでやってから帰ろう!」
このような気持ちから残業を積み重ねて、結果的に体調を崩してしまう方も多くいらっしゃいます。仕事で高い集中力を発揮できることは強みにもなりますが、体調を崩してしまっては元も子もありません。長い職業人生の中では「ちゃんと休むこと」もまた、仕事の一つなのです。
会社であれば、上司や同僚とスケジュールを共有し、声をかけてもらうことで対策ができます。また、先ほどご紹介したようなタイマーを使い、あらかじめ終わりの時間にアラームが鳴るようにすることで、過集中を予防することもできますので、ぜひ活用しましょう。
一人ではうまく対策ができないと悩んだときは
「発達障害の特性」とひと言で言っても、本人のもともとの個性と特性の掛け合わせ、そして今の職場や生活の環境によって、実際に現れる症状や困りごとはさまざまであり、一人ひとりの状況に応じて対策を考えることが大切です。
もし「いろいろ試してみたけれどうまくいかない…」「一人ではなかなか対策が考えられない…」と悩んだときには、支援機関を利用することも一つの手です。ADHDのある方の特性対策を始め、働く上で困りごとを感じている方のサポートをおこなっているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。
就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業。)ディーキャリアでは、体調管理やストレスのコントロール方法、報連相の適切なやり方など、セルフケアについても学ぶことができます。
就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。
「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。
ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。
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また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。
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- 公認心理師
- 臨床心理士
筑波大学研究員、慶應義塾大学研究員を経て現職。専門領域は応用行動分析学。
- 一般社団法人ファボラボ 代表理事
- 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会 評議員
- 公認心理師
- NESTA認定キッズコーディネーショントレーナー
- 発達障害ラーニングサポーター エキスパート
- 中学校教諭 専修免許状(社会科)
- 高等学校教諭 専修免許状(地理歴史科)
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。




