障害者雇用の記事一覧

発達障害のある方に「障害者トライアル雇用」はおすすめ?メリット・注意点は

「就職しても続けられるか不安…」そんなADHD・ASDの方へ。障害者トライアル雇用の仕組みやメリット、注意点をADHD当事者が分かりやすく解説。

記事を読む
  • #障害者雇用
  • #オープン就労
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「就職したいけど、職場や仕事が自分に合うか不安」「次の職場では長く働きたいけど、続けられるか心配」「障害への配慮をしてもらいたいけど、何をお願いすればいいか分からない」 発達障害の特性による「働きづらさ」があり、就職や転職に関する悩みを抱えている方は少なくありません。 発達障害のある方の場合、求人票や面接だけでは「実際の仕事内容が自分に合っているか」「職場の環境で無理なく働けるか」を判断しにくいことがあります。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの特性による困りごとは人によって異なるため、実際に働いてみなければ必要な工夫や配慮が見えてこないこともあります。 そこで選択肢の一つになるのが、障害者トライアル雇用です。 この記事では、ADHD当事者である筆者が、発達障害のある方に向けて、障害者トライアル雇用の仕組みや対象者、メリット、注意点、利用までの流れをご紹介します。制度を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / 障害者トライアル雇用とは:障害のある方を一定期間試行的に雇用し、本人と企業の相互理解を深めながら長く働くことを目指す制度 発達障害のある方にとってのメリット:実際の仕事や職場環境との相性、得意・不得意、必要な合理的配慮などを働きながら確認できる 利用するときの注意点:トライアル終了後の雇用が保証されている制度ではなく、労働条件も事前に確認する必要がある 利用までの流れ:ハローワークなどへの相談・求職申込みから求人への応募、トライアル雇用、トライアル期間後の雇用の判断へと進む \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害のある方も利用できる「障害者トライアル雇用」とは 障害者トライアル雇用とは、簡単にいうと、企業で一定期間「お試し」で働く制度です。実際に働きながら、本人と企業がお互いに仕事や職場との相性、必要な配慮などを確認し、長期的な就労につなげます。 単なる「職場体験」ではなく、実際に企業で従業員として働きながら、以下の点を確認していきます。 仕事や職場が自分に合っているか 特性による困りごとが起こりにくい働き方や仕事は何か どのような仕事なら力を発揮しやすいか どのような合理的配慮が必要か 障害者トライアル雇用の期間は原則3か月(精神障害の場合は6か月) 厚生労働省の「障害者トライアル雇用事業実施要領」では、トライアル雇用の期間は以下のように定められています。 原則:3か月 制度上の「精神障害者」に該当する人└原則6か月(必要に応じて最長12か月)└本人と企業の合意があれば、3か月以上5か月以内とすることも可能 ※発達障害のある方でも、障害者手帳の有無など制度の条件によっては「精神障害者」に該当しないことがあります。その場合、利用できる期間が異なることがあります。詳しくはハローワークなどで確認してください。 発達障害・精神障害のある方には「障害者短時間トライアル雇用」もある 「いきなり週20時間以上働くのは不安」という方には、障害者短時間トライアル雇用があります。対象は、長く働き続けたいと考えている精神障害者または発達障害者です。 入社後まずは週10時間以上20時間未満の働きやすい時間から始め、体調や職場への適応状況を見ながら、3か月以上12か月以内のトライアル期間中に週20時間以上働けるようになることを目指します。 週20時間以上働くことに不安がある方、まずは短い時間から職場に慣れたい方、離職期間が長い方にとって、選択肢の一つとなるでしょう。 障害者トライアル雇用の対象になる人 障害者トライアル雇用を利用するためには、まず次の2つを満たしている必要があります。 ハローワーク(または民間の職業紹介事業者) に求職の申し込みをしている トライアル雇用期間の後も、その会社で長く働くことを希望している そのうえで、次のいずれかの条件に当てはまる必要があります。 ※下記条件にある「紹介日」とは、ハローワークなどからトライアル雇用の求人を紹介された日のことです。 紹介日時点で、これまで就労経験のない職業への就職を希望している 紹介日前2年以内に、2回以上離職または転職をしている 紹介日前の離職期間が6か月を超えている 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者に該当する 精神障害者については、転職回数などの要件にかかわらず対象になる仕組みがあります。 また、障害者手帳を持っていない場合でも対象となる可能性があります。個別の状況によって異なるため、利用を希望する場合はハローワークなどに相談しましょう。 発達障害のある方にはどのような就職の選択肢がある? 発達障害のある方が就職を考える際には、いくつかの選択肢があります。障害者トライアル雇用の位置づけを理解するために、主な働き方を簡単に整理します。 一般就労 一般就労には、主に次のような働き方があります。 一般雇用枠└障害の有無を問わず一般に募集されている求人に応募して働く└障害があることを勤務先に伝えて働く「オープン就労」と、伝えずに働く「クローズ就労」がある└障害特性に応じた配慮やサポートの内容・体制は、職場によって異なる(申し出がしづらい、十分な配慮を受けられない等のケースもある) 障害者雇用枠└障害のある方を対象とした求人に応募して働く└障害特性や必要な合理的配慮について、企業と相談しながら働ける└障害者雇用を促進するための環境がある「特例子会社」で働く方法もある 障害者トライアル雇用は、これらと並ぶ別の雇用形態ではありません。障害のある方が企業で継続して働くことを目指し、一定期間実際に働きながら、仕事や職場との相性、得意・不得意、必要な合理的配慮などを本人と企業の双方が確認するための制度です。 福祉的就労 福祉的就労には、就労継続支援A型・B型があります。いずれも障害福祉サービスを利用しながら働く方法です。 A型 事業所と雇用契約を結んで働く B型 雇用契約を結ばず、就労や生産活動の機会の提供を受ける このように、発達障害のある方には複数の働き方があります。自分の特性や希望、必要な配慮に合った働き方を選ぶことが大切です。 では、障害者トライアル雇用には、発達障害のある方にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。 発達障害のある方にトライアル雇用がおすすめできる理由 発達障害のある方の場合、仕事内容そのものだけではなく、「どのような職場環境・人間関係か」が働きやすさに大きく関係することがあります。 実際の職場で一定期間働けるトライアル雇用には、求人票や面接だけでは分からないことを確認できるメリットがあります。 1.実際の業務を通して「自分に合う仕事か」を確認できる 同じ「一般事務」でも、電話や来客対応が多い職場、複数の仕事を同時進行する職場、自分で優先順位を判断する職場など、仕事の進め方はさまざまです。 発達障害のある方の中には、仕事の切り替えや優先順位づけ、抽象的な指示への対応などで困難を感じる方もいます。JEEDの「障害者雇用マニュアル 発達障害者と働く」でも、優先順位づけ、指示の理解、質問や説明、感覚面などに関する事例が紹介されています。 トライアル雇用なら、「この職種なら向いているはず」と頭の中だけで考えるのではなく、実際にやってみた結果から自分の適性を考えることができます。漠然とした不安を、具体的な確認事項に変えていくことにもつながります。 筆者は、発達障害のある方に向けて、タスク管理など仕事の進め方を伝える活動をしています。 その中で、働き方に関する相談を受ける機会が多いのですが、仕事の進め方は職場の環境に左右されやすい印象があります。どのようなシステムが使われているか、デスク周辺にどのようなものがあるか、リモートワークと出社勤務の割合はどれくらいかによって、タスク管理の仕組みも変わります。 実際に働いてみると、紙とペンが一番仕事を管理しやすかったり、会社で導入している業務管理システムが自分と相性が良かったりすることがあります。そうした経験を重ねながら、自分に合う仕事の進め方を探していくほうが、うまくいきやすい印象があります。 2.新しい環境に少しずつ慣れることができる 就職や転職では、通勤、生活リズム、人間関係、仕事のルールなど、一度に多くの変化が起こります。新しい環境への適応に大きなエネルギーを使う方の場合、仕事内容以外の変化も負担になることがあります。 特に障害者短時間トライアル雇用では、週10時間以上20時間未満から始め、職場への適応状況や体調を見ながら勤務時間を増やすことができます。「働けるか、働けないか」の二択ではなく、段階的に調整できることが特徴です。 ADHD当事者である筆者も以前働いていたときに、通勤時間の見積もりに苦労した経験があります。自宅から会社まで「約1時間」と見込んでいました。しかし、実際には混雑した電車で40分ほど立ち続ける必要がありました。 そこで始発電車を利用するようにしましたが、座るためには早めに駅へ行く必要があり、結果として通勤には1時間半ほどかかるようになりました。 このように、通勤一つをとっても、実際に続けてみなければ分からない負担があります。 3.必要な合理的配慮を具体的にできる 障害者雇用では「どんな配慮が必要ですか?」と聞かれることがあります。しかし、初めての職場では、自分でも具体的に答えられない場合があります。 実際に働くことで、たとえば「口頭で複数の指示を受けると抜けやすいので、メモでも残してほしい」「優先順位が変わったときは、どれを先にするか確認したい」といった配慮を具体化しやすくなります。 重要なのは、診断名だけから「ASDだからこの配慮」「ADHDだからこの配慮」と決めることではありません。実際にどの場面で困り、どのような工夫があれば仕事がしやすくなるのかを、本人と企業が確認することが大切です。 たとえば「自分は仕事が遅い」と感じても、原因によって必要な対策は変わります。 その作業が苦手⇒可能であれば作業の変更を相談する、作業を分解してマニュアルを作成する 目的意識が持てない(モチベーションが上がらない)⇒仕事のゴール(どんな成果や貢献につながるか)を明確に教える 口頭の指示が頭に残らない⇒メモに書いて渡す、メールやチャットで指示を出す 困りごとの原因を具体的にできれば、必要な配慮もよりきめ細かく検討できます。本人・企業の双方にとって、働きやすい環境づくりにつながります。 もし、「自分にどんな配慮が必要かまだ分からない」「いきなり企業で働くのは不安」と感じた場合は、トライアル雇用を利用する前に、就職に向けた訓練や相談ができる障害福祉サービスである「就労移行支援」を利用し、自分に合う働き方を整理する方法もあります。就労移行支援事業所ディーキャリアでは、「働きづらさ」や「働き方」に関する無料相談会を随時開催しています。お近くのオフィスにお問い合わせください。お問い合わせフォーム▶ 就労移行支援について詳しく知りたい方は以下のコラムをお読みください。就労移行支援とは|リアルに役立つまるわかりガイド 4.本人だけでなく企業側も適性を確認できる トライアル雇用では、企業側も、どの業務なら力を発揮できるか、どのような指示や配慮が適しているかなどを確認します。 これは「会社から評価される期間」であるだけではありません。長く働くためには、本人と企業の双方が「この働き方なら続けられそうだ」と確認することが重要です。 厚生労働省も、障害者トライアル雇用の目的として、求職者と求人者(企業)の相互理解の促進を掲げています。 企業側にとっても、トライアル期間中に仕事との相性や必要な配慮を確認できるため、採用後のミスマッチを減らすことにつながります。また、一定の要件を満たした企業には助成金が支給されるなど、国による支援もあります。 このように企業側にもメリットがあるので、「配慮をお願いすると企業に迷惑をかけるのでは」と心配しすぎず、必要なことを相談していきましょう。 発達障害のある方がトライアル雇用を利用するときの注意点 メリットのある制度ですが、利用すれば必ず希望どおりにその後も働き続けることができるわけではありません。事前に知っておきたい注意点があります。 1.トライアル終了後の雇用が保証されているわけではない トライアル期間が終わったあと、その会社で働き続けるかどうかは、本人と企業の双方で決めます。本人が希望してもそのまま働き続けられない場合もあれば、企業から希望されても、本人が「自分には合わなかった」と判断する場合もあります。 令和6年度の厚生労働省の集計では、発達障害者を含む障害者トライアル雇用の利用者の約8割が、トライアル雇用後に常用雇用へ移行しています。 トライアル期間は、採用されるためだけの期間ではなく、自分に合う仕事や働き方を確かめる期間として活用しましょう。 2.トライアル中の「できなかった」だけで辞退しない 仕事がうまくいかなかったからといって、すぐに「この仕事には向いていない」と決まるわけではありません。指示を書面にする、手順書を作る、優先順位を確認するなど、仕事の進め方を変えることで取り組みやすくなる場合があります。 大切なのは、「なぜ難しかったのか」「何を変えればできるようになるのか」まで確認することです。 筆者に「仕事の進め方」について相談していた発達障害当事者の方も、なかなか締切を守れないという悩みを抱えていました。そこで、最終締切だけでなく中間締切も上司と確認するようにしたところ、締切までに出せるようになりました。 「締切が守れない」ことから「だから自分はダメだ」と考えるだけではなく、「だったら、こうしよう」と仕事の仕組みを変えるきっかけにすることもできます。 3.給与・勤務時間などの労働条件を確認する 障害者トライアル雇用は「職場体験」ではなく、企業と雇用契約を結んで働く制度なので、給与が支払われます。原則として、地域ごとに定められた最低賃金も適用されます。 また、トライアル雇用だからといって、一般の求人より賃金が低くなると決まっているわけではありません。原則として、トライアル期間中の給与や勤務時間などの条件は、その後も同じ会社で働く場合と同じです。 ただし、障害者短時間トライアル雇用では働く時間が短いため、月の収入が少なくなることがあります。 応募する際には、給与、勤務時間、交通費、社会保険のほか、トライアル期間中と、その後も働く場合で条件に違いがあるかを確認しておきましょう。 4.制度を使うこと自体が目的にならないようにする 障害者トライアル雇用は、あくまでもその会社で「働き続けられるかどうか」を見極めるための期間のため、「お試しだけ」をする場ではありません。 また、就職活動をするときの選択肢の一つ、としてとらえるようにしましょう。トライアル雇用を利用できるかだけで求人を選ぶのではなく、仕事内容、通勤、勤務時間、得意・不得意、必要な配慮なども含めて、自分に合う職場かを考えることが大切です。 障害者トライアル雇用を利用する流れ 利用する場合は、基本的に次のように進みます。 1.ハローワークなどに相談・求職申込みをする ハローワークなどで求職申込みをし、障害者トライアル雇用を希望していることを相談します。自分が制度の対象になるか分からない場合も確認しましょう。 厚生労働省によれば、障害者トライアル雇用は、ハローワークまたは制度を取り扱う民間の職業紹介事業者などの紹介によって雇い入れられることが要件となっています。 2.求人を探して応募する 希望する職種、仕事内容、勤務地、勤務時間などをもとに求人を探し、選考を受けます。 面接では、得意なことだけでなく、苦手なこと、仕事で起こりやすい困りごと、自分で取り組んでいる対策、企業にお願いしたい配慮などを整理しておくと、その後のトライアル期間にもつなげやすくなります。 3.雇用契約を結び、トライアル雇用を開始する 採用が決まったら、企業と有期の雇用契約を結び、トライアル雇用が始まります。 期間中は、次のようなことを記録しておくと、自分の働き方を振り返りやすくなります。 やりやすかった仕事・負担が大きかった仕事 ミスが出やすかった場面 理解しやすかった指示の出し方 疲れやすい時間帯 役立った配慮 発達障害当事者の方から「仕事の進め方」に関する相談を受けたときには、毎日次の4点を振り返ることをお勧めしています。 できたこと できなかったこと 意識したいこと 今日の点数(10点満点) トライアル雇用の期間中に続ければ、自分ならではの気付きが得られやすくなります。 4.本人と企業が、その後も働き続けるかを決める トライアル期間が終わると、本人と企業が、その会社で働き続けるかを話し合います。双方が希望し、条件が合えば、そのまま働き続けます。 その会社で働き続けないことになった場合でも、「どんな仕事の進め方が自分にあっているか」「どんな環境が働きやすいのか」「次の職場ではどのような配慮をお願いしたいのか」を整理しておくと、次の就職活動に活かせます。 「次の就職で失敗したくない」と思ったときは、「自分に合う働き方」から考えよう 「働くことに自信がない」「次の就職では長く働きたい」という方にとって、障害者トライアル雇用は、実際の仕事を通して自分と職場の相性を確認できる選択肢です。 一方で、トライアル雇用が唯一の正解ではありません。一般雇用枠、障害者雇用枠、特例子会社など、ほかの選択肢が合う場合もあります。 大切なのは、自分の特性や希望、必要な配慮を理解し、自分に合った働き方を選ぶことです。 就職活動を始める前に、 自分は何が得意なのか どんなときに困りやすいのか どうすれば働きやすくなるのか を整理しておくと、トライアル雇用を利用する場合にも、それ以外の働き方を選ぶ場合にも役立ちます。 一人で整理することが難しい場合は、就労移行支援などの支援機関を利用し、訓練やキャリア相談を通じて自己理解を深める方法もあります。ディーキャリアのリクルートコースなどのプログラムについて、体験会や個別相談会で相談してみるのも一つの方法です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害のある方が職場でパニックになる原因と仕事中の対策

大人のASD・ADHDがあると「パニック」になりやすい?発達障害のある方のパニックの原因、職場での対処法について、ADHD当事者が解説。

記事を読む
  • #合理的配慮
  • #障害者雇用
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「仕事中に急に頭が真っ白になり、何をすればいいか分からなくなる」「職場でパニック症状が出てしまうことがあり、このまま働き続けられるのか不安」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害のある方の中には、職場で強いストレスがかかったときに、涙が止まらなくなる、固まって動けなくなる、怒りや不安が抑えられなくなる、呼吸が苦しくなる、頭が真っ白になるといった、いわゆるパニック状態になる方がいます。 この記事では、その原因と対処法をご紹介します。今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / 発達障害のパニックとは:医学的な「パニック発作」に近い状態や、発達障害の特性・強いストレスによって起こる「メルトダウン」「フリーズ」に近い状態がある。 パニックの原因:ASDやADHDの特性がある人にとって負荷になりやすい急な変更、感覚刺激、マルチタスク、過去のつらい経験などが関係する。 仕事中のパニック対策:安全な場所への移動や、状況を伝える短い定型文の用意などによって、落ち着く時間を確保する。 パニックの予防策:トリガーの記録、予定・指示・優先順位の見える化、必要な合理的配慮の相談が役立つ。 \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害のある方が職場で直面しがちな「パニック」とは 日常会話で使われる「パニック」からは、以下のような状態が想像されるのではないでしょうか。 急に不安が強くなる 呼吸が苦しくなる 頭が真っ白になる 涙が止まらなくなる 怒りや焦りが抑えられなくなる 体が固まり言葉が出なくなる 指示を聞いても理解できなくなる 本記事では、職場で強い不安や混乱が生じ、普段どおりに考えたり行動したりすることが難しくなる状態を、総称して「パニック」と表現します。 その中には、医学的な意味での「パニック発作」に近い状態もあれば、発達障害の特性や強いストレスによって起こる「メルトダウン」や「フリーズ」に近い状態もあります。 パニック発作 パニック発作とは、突然強い不安や恐怖に襲われ、動悸、息苦しさ、めまい、震えなどの身体症状が表れる状態です。こうしたパニック発作が繰り返され、生活や仕事に支障が出ている場合、パニック障害と診断されることがあります。 メルトダウン メルトダウンは、強いストレスや感覚刺激に圧倒され、一時的に行動のコントロールが難しくなる状態を説明する言葉として使われます。英国の自閉症支援団体であるNational Autistic Societyも、メルトダウンを「圧倒される状況への強い反応」と説明しています。 職場では、涙が止まらなくなる、怒りが爆発する、大きな声を出してしまう、その場から逃げ出したくなる、周囲の言葉が入ってこなくなる、といった形で表れることがあります。 フリーズ 強いストレスや混乱によって、動けなくなる、話せなくなる、考えられなくなる状態をフリーズといいます。頭が真っ白になる、返事ができない、体が固まる、パソコンの前で止まってしまう、といった形で表れることがあります。 外から見ると、「黙っている」「ぼーっとしている」「やる気がない」と見えるかもしれません。しかし本人の内側では、強い緊張や混乱が起きていることがあります。 パニック発作、メルトダウン、フリーズのいずれも、本人にとっては非常につらい状態です。職場で繰り返し起こると、休職や退職につながることもあります。だからこそ、自分に何が起こっているのかを整理し、対策を考えることが大切です。 発達障害のある方が職場でパニックになりやすい原因 発達障害のある方が職場でパニックになりやすい背景には、本人の性格だけではなく、特性と環境のミスマッチ、体調、業務量、人間関係など、複数の要因が関わっていることがあります。 ASDやADHDの特性がある方にとっては、こうした負荷が積み重なることで、パニックにつながることがあります。 ASD(自閉スペクトラム症)のある方に見られやすい原因 ASDのある方は、見通しの立たなさ、急な変更、感覚刺激、人間関係のあいまいさなどによって強いストレスを感じることがあります。 CDC(米国疾病予防管理センター)は、ASDの特徴として以下のような反応があるとしています。 小さな変化に強く動揺する 特定のルーティンを必要とする 音・におい・味・見た目・触感などへの通常とは異なる反応 たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。 今日やる予定だった仕事が急に変わる 予定になかった来客対応を頼まれる 作業途中で別の仕事を割り込まれる 電話の音や周囲の会話がつらい 照明やにおいなどの刺激がつらい 「いい感じに」「なるべく早めに」など、あいまいな指示を受ける 周囲から見ると、よくある予定変更や指示に見えるかもしれません。しかし本人にとっては、頭の中で組み立てていた段取りが崩れたり、判断材料が足りないまま作業を求められたりするため、大きな混乱につながることがあります。 また、過去に強く叱責された経験や、職場でつらい思いをした経験がある場合、似た場面でその記憶がよみがえり、強い不安や緊張につながることもあります。いわゆる「フラッシュバック」のように感じられることもあります。 ADHD(注意欠如・多動症)のある方に見られやすい原因 ADHDのある方の場合、以下のような特性によって、仕事中の負荷や混乱が高まりやすくなることがあります。 注意の切り替えが難しい 優先順位づけが苦手 指示を覚えておくことが難しい 感情のコントロールが難しい 特に職場で見られがちなこととして、NIMH(米国国立精神衛生研究所)は、以下についての困りごとを挙げています。 整理 仕事の継続 日々のタスクの遂行 大きなプロジェクトの完了 マルチタスク たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。 複数の仕事が同時に発生し、どれから手をつければよいか分からない 口頭指示の一部を聞き漏らす 席に戻ると、何を頼まれたか分からなくなる 注意されたときに強く落ち込む 焦りが強くなり、落ち着いて考えられない 筆者にも、「焦り」によって確認が漏れてしまった経験があります。社用車のリースに関する手続きで、急いで書類を送る必要があった際、レターパックに入れて送付したところ、誤って全く関係のない自分のノートを送ってしまったのです。今振り返ると、焦りで頭の中がいっぱいになり、「何を入れたか」を確認する余裕がなくなっていたのだと思います。このように、焦りが強くなると、普段なら当然できる確認作業が抜け落ちてしまうことがあります。 職場でパニックが起こったときの対処法・仕事中の対策 職場でパニックが起こったときに大切なのは、「その場で完璧に立て直そう」としないことです。 パニック状態のときは、普段できる判断や会話が難しくなっています。まずは安全を確保し、刺激を減らし、落ち着くための時間を取りましょう。 いったんその場から物理的に離れる 可能であれば、刺激の多い場所から離れましょう。空いている会議室、休憩室、廊下、トイレ、建物の外、人の少ないスペースなどに移動できるとよいでしょう。このように、混乱が強くなったときに一時的にその場を離れ、落ち着く時間を取る方法は「タイムアウト法」と呼ばれることもあります。 職場で使える言い方としては、次のようなものがあります。 「少し席を外します」 「体調が悪いので、5分だけ休憩します」 「落ち着いてから戻ります」 事前に職場と相談できる場合は、「パニックになりそうなときに一時的に離席してよいか」「どこでクールダウンしてよいか」を決めておくと安心です。 短い定型文を用意しておく パニック状態になると、言葉を考えること自体が難しくなります。あらかじめ職場で使う定型文を用意しておくと安心です。 「少し混乱しているため、5分ほど休憩します」 「今すぐ返答が難しいため、落ち着いてから確認します」 「指示をメモでいただけると助かります」 「優先順位を確認させてください」 筆者は、判断に迷って混乱しそうなとき、使うようにしている言い回しがあります。それは、「迷っているんですが~」「困っているんですけど~」で話し始めるというものです。先に、自分の状況を端的に伝えることで、相手にも「ああ、迷っているんだな」「困っているんだな」と伝わりやすくなります。また、自分自身も「迷っている」「困っている」と口に出すことで、状況を少し客観視しやすくなります。 職場でのパニックは「起こる前」の対策が重要 職場でのパニック対策では、起こったあとの対応も大切ですが、それ以上に重要なのは、パニックが起こりにくい環境を作ることです。そのためには、パニックが起こった場面を以下のように記録し、そのきっかけになる刺激(トリガー)を知ることが大事です。 いつ起こったか 何をしていたか 直前に何があったか どんな症状が出たか 何をしたら少し楽になったか 周囲にどう対応してもらえるとよかったか すべての項目を埋める必要はありません。たとえば、会議中に急に発言を求められて頭が真っ白になった場合は、「会議中」「発言を求められた」「何も言葉が出てこなかった」といった具合です。 その場合、「人前で突然答えること」がトリガーになっている可能性があります。そこから、会議前に議題を共有してもらう、その場で答えられない場合はあとで回答してよいことにする、といった対策を考えられます。 また、こういったときは気持ちが落ち込み、自分を責めてしまいがちです。それを避けるためには、パニックになった事実は認めつつ、「だったら、今後どうすれば良いか」という対策の材料とする視点があると良いです。 「できなかったことを責める」のではなく、「次の対策を作るための記録」として扱いましょう。そう考えることで、「この経験が次に活きる」と前向きにとらえやすくなります。仕事をよりスムーズに進めるうえでも、自分の気持ちを落ち着けるうえでも、とてもおすすめです。 職場でできる予防策 ASDのある方の場合は、特に以下のポイントがパニックの予防につながります。 見通しを持てること 刺激を減らすこと あいまいさを減らすこと たとえば、次のような工夫があります。 前日に翌日の予定を共有してもらう 急な変更は早めに知らせてもらう 急ぎの依頼は、締切と優先順位をセットで伝えてもらう 依頼内容を口頭だけでなく、チャットやメモでも共有してもらう 耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使う 静かな場所で休憩できるようにする ADHDのある方の場合は、以下のポイントがパニックの予防につながります。 頭の中だけで抱えないこと 優先順位を見える化すること 指示を記録に残すこと たとえば、次のような工夫があります。 やることを一か所に書き出す 仕事で使うもの(書類やファイル等)の置き場を決める 上司に優先順位を確認する 口頭指示をメモやチャットに残す 作業手順をチェックリスト化する 締切が重なる場合は、どちらを先にするか相談する とはいえ、「わざわざ書き出すのが面倒」「今すぐやってしまった方が早い」と感じることもあるでしょう。筆者は、最初から完璧に書き出そうとしなくてもよいと考えています。ただ、その後も続く業務であれば、ひと区切りついたあとに、あらためて今やったことを書き出しておくと、次回以降、より安全・確実に進めやすくなります。 職場に相談・依頼できる合理的配慮 発達障害のある方が職場でパニックを防ぐためには、自分だけで対策するのではなく、職場に合理的配慮を相談・依頼することも大切です。 合理的配慮とは、障害のある人が社会の中にあるバリアによって困らないよう、事業者側が負担が重すぎない範囲でおこなう対応のことです。 内閣府は、令和3年の障害者差別解消法改正により、令和6年4月1日から事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたと説明しています。 なお、雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主は過重な負担にならない範囲で障害者に合理的配慮を提供することが義務付けられています。 たとえば、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の合理的配慮事例では、業務の優先順位や目標を明確にする、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する、といった対応が紹介されています。 職場で依頼できる合理的配慮には、次のようなものがあります。 口頭だけでなく文字でも指示をもらう 締切や優先順位を明確にしてもらう 急な変更は早めに知らせてもらう 静かな席に変更してもらう 耳栓やイヤホンの使用を認めてもらう クールダウンできる場所を決めておく パニックになりそうなときは離席を認めてもらう 復帰後に業務の優先順位を再確認する 合理的配慮を依頼するときは、「配慮してください」だけではなく、具体的に伝えることが大切です。 「急な予定変更があると混乱しやすいため、変更が分かった時点でチャットで知らせていただけると助かります」 「口頭指示だけだと聞き漏れが起こることがあるため、重要な指示はメモやチャットでも共有していただけると、正確に対応しやすくなります」 このように、困りごと、仕事への影響、必要な配慮をセットで伝えると、職場側も対応を検討しやすくなります。 合理的配慮について詳しく知りたい方は以下のコラムもあわせてお読みください。 受診や専門家への相談が必要な場合 職場でのパニックが繰り返し起こる場合や、動悸、息苦しさ、強い恐怖感、外出への不安などがある場合は、医療機関への相談も検討しましょう。 特に、パニックの頻度が増えている、通勤や出社が怖くなっている、職場に行こうとすると体調が悪くなる、発作のような症状が繰り返し起こる、休んでも回復しない、眠れない状態が続いている、といった場合は、早めに相談することをおすすめします。 職場での工夫だけでは十分でないこともあります。主治医、精神科、心療内科、カウンセラー、支援機関などに相談し、自分に合った支援を受けることが大切です。 職場でのパニックは「自分を責める」より「対策を作る」 発達障害のある方が職場でパニックになる背景には、ASDやADHDの特性、職場環境、業務量、人間関係、過去の経験など、さまざまな要因があります。 パニック発作のように、強い不安や身体症状が起こる場合もあります。メルトダウンやフリーズのように、感情や行動のコントロールが難しくなったり、頭が真っ白になって動けなくなったりする場合もあります。 いずれの場合も、「本人の努力不足」と決めつけるのではなく、原因と対策を整理することが大切です。 パニックが起こったら、いったん安全な場所に移動する 落ち着くための定型文を用意しておく 自分のトリガーを記録する 急な予定変更やあいまいな指示への対策を作る 口頭指示を文字に残してもらう 優先順位を上司と確認する 感覚刺激を減らす 必要な合理的配慮を職場に依頼する 医療や支援機関にも相談する パニックは、気合いや根性だけで防ぐものではありません。自分の特性を理解し、自分に合った対処法を持ち、必要に応じて職場に配慮を依頼することで、働きやすさは少しずつ整えていくことができます。 そのためには、自分の特性やトリガーを知る「自己理解」、パニックが起こりそうなときに自分を落ち着ける「自己対処・ストレスコーピング」、そして必要な配慮を職場に伝えることが大切です。 一人で悩まず、サポートを受けるのも選択肢のひとつ とはいえ、自分一人だけで、自己理解を深めたり、自分に合った対策を見つけたりすることにハードルの高さを感じる方も多いと思います。そんなときに頼れる相談先のひとつに「就労移行支援」があります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、一人ひとりの特性理解を深め、発達障害による「働きづらさ」との付き合い方を学ぶプログラムを用意しています。パニックの原因や対策を知るだけでなく、リアルな職場を想定した環境で、パニックの予防策やパニックが起こったときの対処法を実践することができます。さらに、自分に必要な配慮事項を見つけ、就職先にサポートを依頼するためのフォローもおこないます。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が語る】オープン就労とクローズ就労の後悔しない選び方

就活先や勤め先に「障害を開示するか」悩む方に向け、オープン・クローズの両方で働いた経験のある発達障害当事者が「働き方探し」のコツを紹介。

記事を読む
  • #就活HACK
  • #障害者雇用
  • #クローズ就労
  • #オープン就労
「発達障害があることを、会社に伝えた方がいいのだろうか」「障害について会社に開示するオープン就労と、開示しないクローズ就労、どっちがいいのだろうか 」 そんな悩みを抱えていませんか。 オープン就労とクローズ就労のどちらを選ぶべきかについて、全員に共通する正解はありません。大切なのは、自分の特性や困りごと、働く環境を整理しながら、「自分らしく働き続けるためには、今の自分にどちらの働き方が合っているのか」を考えることです。 発達障害の診断を受けたあと、就職活動や転職活動、あるいは今の職場で働き続けることを考えたときに、多くの方が悩むのが「障害を開示するかどうか」という問題です。 障害があることを会社に伝えれば、必要な配慮を相談しやすくなるかもしれません。一方で、「理解してもらえなかったらどうしよう」「採用で不利になるのではないか」「職場で特別扱いされるのではないか」と不安になる方もいるでしょう。 反対に、障害を伝えずに働けば、求人や職種の選択肢は広がるかもしれません。しかし、困りごとを一人で抱え込み、体調を崩したり、仕事が続かなくなったりするリスクもあります。 この記事では、オープン就労とクローズ就労の違い、それぞれのメリット・デメリット、当事者の体験談、そして「後悔しない」「自分らしく働くため」の選び方をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 【発達障害のある方向け】オープン就労とクローズ就労、どちらがいい? 結論から言うと、オープン就労とクローズ就労のどちらがよいかは、人によって異なります。まずは、それぞれの特徴を簡単に整理しておきましょう。 オープン就労└メリット:障害特性による困りごとや、必要な配慮を会社に相談しやすい└デメリット:障害者雇用枠の場合、求人や職種の選択肢が限られることがある└向いている人:仕事上の困りごとがあり、職場に配慮を相談しながら働きたい人 クローズ就労└メリット:一般雇用枠で応募できるため、求人や職種の選択肢が広がりやすい└デメリット:障害特性に基づく配慮を受けにくく、困りごとを一人で抱え込みやすい└向いている人:自分なりの対処法があり、仕事内容や職場環境との相性がよい人 ただし、これはあくまで大まかな目安です。オープン就労とクローズ就労の違いや、それぞれのメリット・デメリット、後悔しない選び方については、このあと詳しく解説します。 オープン就労とクローズ就労の違いとは? オープン就労とは、発達障害や精神障害など、障害があることを会社に伝えたうえで働くことです。一方、クローズ就労とは、障害があることを会社に伝えずに働くことです。 ただし、「オープン就労=障害者雇用枠」「クローズ就労=一般雇用枠」と単純に分けられるわけではありません。 「オープン就労=障害者雇用」「クローズ就労=一般雇用」と考えてしまいがちですが、実際には以下の3つのパターンがあります。 障害者雇用枠で働く(オープン就労) 一般雇用枠で障害を非開示にして働く(クローズ就労) 一般雇用枠で障害を開示して働く(オープン就労) このように、オープン就労とクローズ就労は、「障害者雇用枠か一般雇用枠か」だけで決まるものではありません。 1つ目は、障害者雇用枠で働くオープン就労です。障害者雇用枠で応募するためには、基本的に障害者手帳が必要です。応募時点で障害があることを会社に伝えるため、入社前後に必要な配慮を相談しやすいという特徴があります。 2つ目は、一般雇用枠で障害を開示して働くオープン就労です。たとえば、一般雇用枠で働いていた方が、在職中に発達障害の診断を受け、その後も一般雇用枠のまま会社に配慮を相談しながら働くケースがあります。 3つ目は、一般雇用枠で障害を伝えずに働くクローズ就労です。障害特性による困りごとをセルフケアでカバーできている場合や、仕事内容と特性の相性がよい場合には、クローズ就労で安定して働いている方もいます。 筆者も、この3つの働き方を経験しています。筆者がはじめて就職したのは30歳のときで、300名程度のIT企業に障害者雇用枠で入社しました。 入社時には「配慮事項はありますか?」と確認してもらったのですが、当時の筆者は「配慮してもらうなんて申し訳ない」と感じてしまい、「大丈夫です」と答えてしまいました。 今振り返ると、オープン就労であっても、自分に必要な配慮を自分で理解し、言葉にして伝えなければ、支援にはつながりにくいのだと感じます。 その後、2社目では一般雇用のクローズ就労を経験し、3社目では障害者雇用で入社しましたが、筆者のADHD特性と自認している「忘れっぽさ」からか、障害者手帳の更新を失念してしまい、意図せず一般雇用のオープン就労となってしまいました。 合理的配慮とオープン就労の関係 オープン就労を考えるうえで重要なのが、合理的配慮です。 合理的配慮とは、障害のある方が社会生活や職業生活を送るうえで生じるバリアについて、本人から申し出があった場合に、事業者や事業主が過度な負担にならない範囲で必要な調整を行うことです。 雇用分野では、障害者雇用促進法により、事業主には障害者への合理的配慮の提供が義務付けられています。また、その対象は障害者手帳を持っている方に限定されず、発達障害を含む精神障害などにより、長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける方も対象になり得ます。 さらに、障害者差別解消法の改正により、2024年4月1日からは、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。 そのため、障害者雇用枠だけでなく、一般雇用枠で働いている場合でも、医師の診断書などをもとに、仕事上の困りごとや必要な配慮を会社に相談できるケースがあります。 ただし、合理的配慮は「希望すれば何でも受け入れてもらえる」というものではありません。本人の困りごと、業務内容、会社側の負担、職場全体への影響などを踏まえて、本人と会社が話し合いながら調整していくものです。 【発達障害】 オープン就労のメリット オープン就労の大きなメリットは、仕事上の困りごとを会社に相談しやすくなることです。 発達障害のある方の場合、働く場面で以下のような困りごとが起こることがあります。 口頭だけで指示を受けると、内容を忘れてしまう 複数の仕事を同時に頼まれると、何から手をつければよいか分からなくなる 急な予定変更があると、気持ちや段取りの切り替えが難しい 雑音や人の話し声が多い環境では、集中しにくい 曖昧な指示を、自分で判断して進めることが苦手 オープン就労では、こうした困りごとに対して、たとえば以下のような配慮を相談しやすくなります。 指示は口頭だけでなく、チャットやメールなど文章でも残してもらう 複数の依頼がある場合は、優先順位を確認する時間を設けてもらう 予定変更がある場合は、できるだけ早めに共有してもらう 集中しやすい席や作業場所について相談する 定期的に進捗確認や相談の時間を設けてもらう また、障害を隠し続ける心理的な負担が軽くなるというのも大きなメリットです。クローズ就労では、困っていても「自分で何とかしなければ」と抱え込みがちです。しかし、オープン就労では、少なくとも会社の一部には障害特性を伝えたうえで働くことになります。その安心感が、仕事を続けるうえで大きな支えになる場合があります。 さらに、就労移行支援事業所、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、医療機関などの支援機関と連携しやすくなる点もメリットです。職場で困りごとが起きたとき、本人だけで会社に説明するのが難しい場合でも、支援者と一緒に状況を整理できることがあります。 【発達障害】オープン就労のデメリット 一方で、オープン就労にも注意点があります。 まず、障害者雇用枠で働く場合、一般雇用枠と比べて求人や職種の選択肢が限られることがあります。地域や時期、本人の経験、希望条件によっては、希望に合う求人がなかなか見つからないこともあるでしょう。 また、障害を伝えれば必ず理解されるわけではありません。会社によって、障害者雇用や発達障害への理解、支援体制には差があります。人事担当者は理解していても、現場の上司や同僚がどのように関わればよいか分からないこともあります。 さらに、オープン就労では「配慮してもらっているのに成果を出せない」という苦しさが生まれることもあります。こちらの記事では、このような体験が紹介されています。 私が発達障害を疑って病院を受診し、診断を受けたのは、転職して4か月目のことでした。 転職前の会社はマニュアルが整備されており、スケジュールや手順がキッチリと決まっている仕事が多かったため、苦手を感じつつもどうにか仕事になっていました。 ところが転職後の会社では、段取りをすべて自分で考えて仕事を進めなければならず、仕事がまったく回らなくなってしまったのです。 筆者が経験したオープン就労のデメリットとしては、「会社の規模によっては、開示されている範囲が明確にならないことがある」ということがありました。 筆者の職種は総務であり、会社のほぼ全員とのやり取りが発生します。全社に共有される新入社員の情報は、せいぜい所属部署と名前程度のもので、筆者が発達障害であることを知っていた社員は、自部署とその関係する社員数名程度でした。そうなると、自分としては障害を開示して働いているつもりでも 、相手はそれを知らない、つまり配慮を受けることが難しい状況でした。 もちろん、適正なフローで全社員に共有される会社もあるとは思いますが、オープン就労で働いているからと言って、どの職場でも合理的配慮が得られるとは限らない、ということを実感しました。 オープン就労は、魔法の解決策ではありません。大切なのは、会社に配慮を求めることと同時に、自分自身も特性への対策を学び、働き方を調整していくことです。 【発達障害】クローズ就労のメリット クローズ就労は、一般雇用枠の求人に応募できることから、以下のようなメリットがあります。 経験やスキルを活かせる仕事を選びやすい 給与やキャリアアップの選択肢が広がりやすい 仕事内容と特性の相性がよければ、力を発揮しやすい 自分なりの対処法があれば、安定して働きやすい また、クローズ就労では、障害の有無ではなく、仕事の成果で評価されやすいという面もあります。 職業柄、仕事の成果は「記事」という成果物で測られることになります。お客様にご満足いただける記事を書けていれば、書いているのが障害者かどうかはまったく関係がありません。 人よりも人付き合いが苦手だったり忘れ物が多かったりしても、それで成果に悪影響がなければ問題にならないのです。 筆者も、一般雇用枠のクローズ就労で入社した会社で、細かな事務処理には苦手さを感じていました。一方で、大勢の前で話すことや、内容を整理して伝えることには比較的強みがありました。 自部署20名規模のコンプライアンス研修を任されたことをきっかけに、その後、本社の部長クラス向けの説明会のファシリテーターや、全国の店長・支店長クラスが集まる研修会の講師を務める機会もいただけました。 この経験から、クローズ就労であっても、自分の苦手が出にくく、強みが活きる業務に出会えれば、評価につながる場合があると感じています。 【発達障害】クローズ就労のデメリット 一方で、クローズ就労では、障害特性に基づく配慮を受けにくいという大きなデメリットがあります。 会社に障害を伝えていない以上、職場は本人の困りごとを障害特性として理解することが難しくなります。そのため、口頭指示だけでは忘れやすい、曖昧な依頼が苦手、急な変更に弱い、感覚過敏があるといった困りごとがあっても、単に「注意不足」「理解力が低い」「協調性がない」などと言われることがあります。 また、困りごとを一人で抱え込みやすい点にも注意が必要です。「配慮を受けられないのだから、自分で何とかしなければ」と考え続けると、ミスが増えても相談できない、体調が悪くなっても言い出せない、仕事が回らなくなっても助けを求められない、という状態になりかねません。 クローズ就労を選んだからといって、「誰にも相談しない」と抱え込まないことが大切です。会社にはクローズ(伝えない)だったとしても、医師、カウンセラー、支援機関、家族など、職場の外に相談先を持っておくことは大事です。 オープン就労とクローズ就労の選び方 オープン就労とクローズ就労のどちらを選べばよいのか。結論から言えば、万人に共通する正解はありません。 大切なのは、「後悔しない」「自分らしく働くための」判断基準を持つことです。 まず考えたいのは、仕事上の困りごとが自己対処で対応できる範囲かどうかです。メモを取る、チェックリストを使う、カレンダーで予定を管理する、上司に優先順位を確認するなど、自分の工夫である程度対応できている場合は、クローズ就労を選択しても働ける可能性があります。 一方で、どれだけ工夫してもミスが続く、体調を崩す、職場との関係が悪化する、仕事が続かないといった状態であれば、オープン就労を検討した方がよいかもしれません。 配慮がなければ働き続けることが難しいかどうかも重要です。勤務時間の調整、業務量の調整、指示の出し方の変更、感覚過敏への対応、定期面談などがなければ働き続けることが難しい場合、障害を開示して相談する必要性は高くなります。 また、障害を隠すことによるストレスが大きいかどうかも判断材料になります。「本当は困っているのに言えない」「できない理由を説明できない」「いつかばれるのではないかと不安」という状態が続くと、仕事そのもの以上に精神的な負担が大きくなることがあります。 筆者は、就労後ではなく、入社直前にばれるのではないかと不安を覚えたときがありました。最終面接、面接官は役員と部長でした。ひととおりの質疑応答を問題なくクリアしていき、雰囲気も良く進みました。締めくくりに、笑顔で部長がこう切り出しました。 「それでは最後に、心身ともに健康ですか?」 通常なら、なんのひっかかりもなく「はい」と答えて面接は終わりです。念のための確認でしかない、いわばおまけのような質問です。しかし、「はたして自分は心が健康なのか?」と一瞬ひるんでしまいました。「いいえ......実は私ADHDという特性がありまして」と伝えるべきなのではないかと、ものすごい速さで頭の中を思考が駆け巡りました。 その間、おそらく実際には1秒にも満たなかったと思います。まるでスローモーションのように感じられたその時間の後、一呼吸おいて「...はい」と答えて、若干のうしろめたさを抱えながら入社したことを今でも覚えています。 そして、オープンかクローズかを考える前に、「そもそもその仕事が自分に合っているか」を確認することも大切です。どれだけ配慮があっても、仕事内容そのものが特性と大きく合っていなければ、働き続けることは難しくなります。反対に、クローズ就労であっても、自分の強みが活かせる仕事であれば、安定して働けることもあります。 筆者自身も、前述したとおり、細かな事務処理は苦手な一方、人前で話す業務では評価された経験があります。だからこそ、オープンかクローズかだけでなく、「自分の強みが活きる仕事かどうか」を考えることも大切です。 就職に悩んだときの相談先 オープン就労かクローズ就労かで悩んだときは、一人で判断しないことが大切です。相談先には、いくつかの選択肢があります。 ハローワークには、障害のある方のための専門窓口があります。障害者求人の紹介だけでなく、就職活動の相談や職場定着に関する支援を受けられる場合があります。また、精神・発達障害者雇用サポーターが配置されているハローワークでは、精神障害や発達障害のある方に対して、障害特性を踏まえた専門的な就職支援を行っています。 障害者就業・生活支援センター、いわゆる「なかぽつ」では、就業面と生活面の両方から相談できます。仕事の悩みだけでなく、生活リズム、体調管理、職場との関係など、働き続けるために必要な生活面の相談もできます。 障害者専門の就職エージェントを利用する方法もあります。求人紹介だけでなく、履歴書や職務経歴書の作成、面接対策、配慮事項の整理などをサポートしてもらえる場合があります。 そして、就労移行支援事業所も重要な相談先の一つです。就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指すために、就労に必要な知識や能力を身につける訓練、就職活動、職場定着などを支援する障害福祉サービスです。 就労移行支援事業所では、自己理解、職業訓練、生活リズムの安定、応募書類の作成、面接練習、職場実習、就職後の定着支援など、就職に向けた幅広いサポートを受けられます。 オープン就労にするか、クローズ就労にするかを考えるうえでも、自分の特性や必要な配慮を整理する場として活用できます。 大切なのは「どちらが正しいか」ではなく「自分らしく働き続けられるか」 オープン就労とクローズ就労には、それぞれメリットとデメリットがあります。 オープン就労は、必要な配慮を相談しやすく、支援機関とも連携しやすい働き方です。一方で、求人や職種が限られることや、障害を伝えれば必ず理解されるわけではないという難しさもあります。 クローズ就労は、求人やキャリアの選択肢が広がりやすく、成果で評価されやすい働き方です。一方で、必要な配慮を受けにくく、困りごとを一人で抱え込みやすいというリスクがあります。 どちらが正解ということではありません。 大切なのは、自分の特性を理解し、困りごとの程度を把握し、必要な支援や配慮を整理したうえで、「自分らしく働き続けるためには、今どの選択が現実的なのか」を考えることです。 発達障害のある方にとって、就職や転職は、単に仕事を見つけるだけのものではありません。自分の特性を知り、自分に合う環境を探し、働き続けるための工夫を身につけていくプロセスでもあります。 一人で悩み続ける必要はありません。迷ったときは、支援機関に相談しながら、自分に合った働き方を一緒に考えていきましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害】転職を繰り返すのはなぜ?原因と長く働くためのコツ

仕事が続かないのは、ADHD/ASDの特性とのミスマッチが背景にあることも。発達障害のある方の短期離職の原因と長期就労を目指すコツを紹介。

記事を読む
  • #合理的配慮
  • #障害者雇用
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「長く働くつもりだったのに、またすぐに辞めてしまった…」「次の職場でも、どうせすぐに辞めてしまう気がする…」 そんな悩みを抱えていませんか。 転職回数が増えてくると、「自分は社会に向いていないのでは」「また短期間で辞めてしまうのでは」と、不安や自己否定の気持ちが強くなることがあります。しかし、転職を繰り返すことは、必ずしも「忍耐や努力が足りない」「性格の問題」というだけではありません。発達障害の特性と、仕事内容や職場環境が噛み合わないことで、働き続けることが難しくなる場合もあります。 特性が「退職理由」の背景にある場合、辞めたくなる気持ちは、「合わない場所から離れる」という一種の防衛反応とも言えます。 この記事では、転職を繰り返しやすい方のパターンと発達障害の特性との関連を整理しながら、ADHDの特性がある筆者の経験も交えつつ、長期就労につながりやすい対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 【チェックリスト】転職を繰り返す人に多い「短期離職」のパターン まずは、発達障害がある方の短期離職の原因を整理してみます。いくつ当てはまるかを確認しながら読み進めてみてください。 あなたの退職理由は? 気持ちが高ぶった勢いで「辞めます」と言ってしまった 仕事が覚えられず、職場にいることがつらくなった ミスが続き、注意されるのが怖かった 頑張っているのに、仕事がうまくこなせなかった 人間関係がうまくいかず、職場での居心地が悪かった 朝起きられず遅刻が増え、会社に行きづらくなった 「普通にできるふり」を続けてしまい、心身が限界になった これらは、発達障害がある方の退職理由の中でもとくに多いものです。当てはまる場合は単なる「努力不足」ではなく、発達障害の特性と職場環境のミスマッチが退職の背景にあった可能性があります。これから、なぜこうしたことが起きやすいのかを、特性との関連で見ていきます。 発達障害の特性と「早期離職」の深い関係 発達障害の特性は人によってさまざまですが、ここでは短期離職と関連しやすい特性のうち代表的なものをいくつか紹介します。診断の有無にかかわらず、「似た傾向があることで働きづらさを感じている」という方にも参考になる部分があると思います。 ADHD|「衝動性」によってその場の感情で動いてしまう 職場で嫌なことがあったとき、気持ちが強く揺れた勢いで、退職を伝えてしまうことがあります。たとえば以下のような状況です。 上司に注意された直後に、反射的に辞意を伝えてしまう 相談する前に「辞めるしかない」と結論を出してしまう その場を離れたい気持ちが強く、選択肢を考える余裕がなくなる 衝動性が強いと、「一度落ち着いて考える」「他の方法を検討する」といった「間」を作りづらくなることがあります。その結果、退職以外の選択肢(業務の調整、配置換え、相談、休職など)を検討する前に、退職に進んでしまうことがあるのです。 筆者は、会社勤めから個人事業主へ働き方を変えましたが、退職を決めた発端はまさに衝動性によるものだったと思います。 自分がやりたい仕事があり、会社では別の仕事をしている 本業として会社の仕事を、副業としてやりたい仕事をしてきたが、一日の大部分の時間を会社の仕事に取られるのが我慢できなくなった 会社の仕事に興味を失い、「辞めるしかない」としか考えられなくなった ADHD|「不注意」によって仕事のミスが生じる 短期離職の理由として多いのが、「仕事が合っていない気がする」という感覚です。この言葉はとても曖昧になりやすいのですが、実際には次のような流れで「合わなさ」が強まっていくケースが見られます。 ミスや抜け漏れ、遅れが増える 指摘される回数が増え、評価が下がったと感じる 自信がなくなり、緊張や不安が強くなる さらにパフォーマンスが落ち、ミスが増える 「自分は向いていない」と思い込み、退職につながる ここで大切なのは、「向いていない=能力がない」と決めつけないことです。合わない仕事や環境では力が出にくくなります。 ADHD特性と相性が悪くなりやすい業務例 単調な作業が長時間続く(集中が切れた時にミスが起きやすい) 精密な確認作業が多い(細かな抜け漏れが問題になりやすい) マルチタスクが前提(切り替えの負担が大きい) 割り込みが多い環境(集中が途切れやすい) 筆者も、管理部門の総務という典型的な事務職の職場で働いていました。そこでは、絶えず発生する社内外の問い合わせにタイミングよく対応しながら、社内の備品を定期的にチェックしたり、権限設定の複雑な入退室のカードを適切に管理したりしなければなりませんでした。当時の筆者にとって、一番相性が悪い仕事のオンパレードでした。 一方で、特性に合う条件がそろうと就業が安定しやすいことがあります。筆者は、人前でプレゼンテーションをしたり文章を書くことに抵抗が無かったので、社内イベントの司会や形式的に整った文書の作成などとは相性が非常に良く、「この仕事は合っている」と感じていました。 面倒なことに、この「相性が悪い仕事」も「相性が良い仕事」も、同じ「総務の職場」でのものでした。今までを振り返ると、素の自分が100%合わない職場は無かったように思いますが、100%合う職場というのも無かったという印象です。 ASD|「コミュニケーションの苦手」によって人間関係がうまくいかない ASDのある方は、言葉の受け取り方や伝え方に「ズレ」が生じやすく、以下のようなケースが積み重なって人間関係のストレスにつながることがあります。 冗談や遠回しな言い方が読み取りづらい 暗黙のルールが分からない 会話のタイミングが合わない また、本人は真面目に対応しているつもりでも「冷たい」「空気が読めない」と受け取られてしまい、注意や指摘が増え、職場に居づらくなるケースがあります。こうした状況が続くと、疲れやすさや自己否定が強まり、結果として退職に至る方も少なくありません。 筆者は診断はADHDですが、こういった傾向を自覚しています。総務として働いていたとき、会社の飲み会の仕切りが非常に苦手でした。周囲に気を配って食べ物やお酒を追加注文しつつ、タイミングよく会話を盛り上げる。気の利いた締めの一言で会を終わらせる。「それも総務の仕事のひとつ」と言われて頑張りましたが、苦痛以外の何物でもありませんでした。 ASDのコミュニケーション特性は、指示の捉え違いによる仕事の失敗、接客や営業職でのお客様とのやりとりがうまくいかない等、業務上の「苦手」につながることもあります。 ASD|「感覚過敏」によって職場環境にストレスを感じる ASDの特性の一つに、音・光・におい・肌ざわりなどの刺激に敏感な「感覚過敏」があります。たとえば、以下のような刺激が強い負担となり、集中が途切れたり疲労が急激に増えたりします。 電話の音や周囲の雑音 蛍光灯の光 香水や柔軟剤のにおい 本人の努力だけでは対処が難しく、「仕事の内容」以前に「環境がつらい」状態になってしまうこともあります。結果として、体調を崩したり、通勤や出社が苦痛になったりして、離職の引き金になることがあります。 筆者は、スーツが苦手です。衣服が体にフィットする感覚は苦痛でしかなく、それを着るだけで思考力が落ちるような気がします。服装自由のIT企業でも、「スーツはサラリーマンの戦闘服だ」と言われてスーツでの勤務を推奨され、比較的大きさに余裕のある服装で出勤すると「あれ?夏休み?」と嫌味を言われたことがあります。 これら以外にも、発達障害の特性によって、以下のような困難が生じ、退職につながるケースがあります。 ADHD:日中の眠気・やる気が起きない ADHD:先延ばしグセや時間見積もりに苦手があり、締め切りに間に合わない ADHD:忘れ物や失くし物などが続き、注意や叱責を受ける ASD:指示が曖昧・抽象的なときに、理解ができなかったり不安になったりする ASD:急な変更やイレギュラー対応が重なると、負荷が一気に高まりやすい ASD:複数の仕事をバランスよくこなすことが難しい ASD:こだわりが強く、業務フローの変更を受け入れられない 上記以外にも、さまざまな「特性による働きづらさ」が生じることがあります。 こうした困難を「自分の努力で何とかしなければ」と抱え込んでしまうと、必要以上に頑張りすぎて心身がすり減ってしまうことがあります。頑張りすぎることで、「過剰適応」「二次障害」といったさらなる悪影響につながることもあります。 人間関係や環境によるストレス(過剰適応・二次障害) もう一つ、短期離職につながりやすい要因として「過剰適応」があります。周囲に合わせるために無理を続け、特性を隠して「普通にできているように見せる」「困難がないように振る舞う」状態、いわゆる「擬態」を長く続けてしまうと、心身の負担が大きくなりやすいです。 相談したいけれど、迷惑をかけたくなくて言えない ミスをしても助けを求められず、抱え込んでしまう 人に合わせ続けて疲弊し、ある日突然動けなくなる このストレスが蓄積すると、うつ状態や適応障害などの二次的な不調、いわゆる「二次障害」につながることもあります。こうしたつらさを少しでも感じたら、無理に一人で抱え込まず、医療機関や支援機関に相談することも大切です。 なお、「擬態」をしていると、このストレスを溜め込んでいてもなお、それを無視して擬態を続けてしまう悪循環に陥りがちな傾向があります。 筆者もこの「擬態」スキルを磨きに磨いてしまった結果、ある時期を境に「普通なら15分程度で終わる仕事が、1時間半経っても終わらない」「会社に向かおうとしても足が動かない」といった状態に陥り、医者から「抑うつ」と診断されて休職を余儀なくされた経験があります。 「過剰適応」「擬態」「二次障害」について思い当たる方は、ぜひ下記の関連コラムをあわせてお読みください。理解が深まり、対策の参考になることでしょう。 転職を繰り返さないためにできること【自己対処と環境選び】 ここからは、「精神論」ではなく、現実的に取り入れやすい対処の方向性を整理していきます。ポイントは、自分にムチ打って頑張り続けるのではなく、続けやすい形に整えることです。 自己理解を深めて「自分に合った働き方」を知る 長く働くためには、「好き・嫌い」だけではなく、特性を踏まえた「向き・不向き」を整理しておくことが役立ちます。たとえば以下のような観点です。 集中しやすい条件は何か(静かな環境、時間制限がある、動きがある等) 特性による苦手が出やすい条件は何か(割り込み、曖昧な指示、同時並行等) どんなときに調子を崩しやすいか(睡眠不足、叱責が続く、相談できない等) どんな工夫があると安定しやすいか(手順書、チェックリスト、メモの許可等) 「自分の取扱説明書(ナビゲーションブック)を作る」ようなイメージで、条件を言語化していくと、仕事選びや職場選びの精度が上がりやすくなります。 以前、筆者はこのようなことを「甘え」だと捉えていました。集中できない環境でも集中する頑張りを見せる、苦手を克服する、調子が悪くても無理矢理根性で乗り切る、工夫よりも執念、そういったことを良しとしていました。 もちろん、頑張ることや諦めないメンタリティなどは大切です。一方で、特性を踏まえて「向き・不向き」を把握し、より自分が力を発揮できるようにする努力も大事なものです。それは決して「甘え」ではありません。発達障害の特性がある方に向いている仕事選びのコツについては、以下の関連コラムもぜひあわせてお読みください。 現在「一般雇用枠」で働いている方の場合は、障害や特性を開示したうえで、必要な配慮を受けながら働ける「障害者雇用枠」を検討するのも一つの方法です。 必ず切り替えるべき、という意味ではありませんが、業務の進め方や職場環境について相談しやすくなり、働きやすさにつながることもあります。ご自身の体調や働き方の希望を踏まえ、支援機関や専門家と一緒に、開示の範囲や選択肢を整理してみると安心です。 自分を守るための「セルフケア」と「相談」 衝動性が強い方の場合、「辞めたい気持ち」を無理に消すより、決断する前に立ち止まる仕組みを作ることが役立ちます。 その場で結論を出さない(時間を置く) 退職を言う前に、必ず相談する相手を決めておく 「辞めます」ではなく「相談したいことがあります」と言い換える 生活リズム(睡眠・食事・服薬管理など)を整える 土台が安定すると、同じストレスでも受け止めやすくなることがあります。「やる気の問題」ではなく、調子の波を小さくする「セルフケア」を行うことが大切です。自分の「感情のコントロール」の仕方を身につける方法(認知行動療法など)を学んでみてもよいかもしれません。 このセルフケアのタイミングですが、筆者は過去を振り返って、「思うより早くすべきだった」と考えています。日常的に繰り返していることに少しでも変化があれば、気に留めておくと良いでしょう。 混雑するターミナル駅での乗り換えを避け、ちょっと回り道をして別の駅で乗り換えをする 時間はかかるが確実に座れる別の路線で帰宅する 電車賃の何倍ものお金をかけて職場から家へタクシーで帰る これらはいずれも筆者の休職直前の変化です。しかし当時は、「ちょっとした通勤の工夫」「頑張っている自分へのご褒美」という感覚でした。今振り返ると、それはセルフケアをすべきサインであったように思います。 職場での「合理的配慮」を検討する 働き続けるためには、本人の工夫だけでなく、「合理的配慮」が助けになることがあります。合理的配慮とは、障害や特性によって生じる困難を軽減するために、職場が可能な範囲で行う調整のことです。 発達障害の特性に対する配慮事例 指示を口頭だけでなく、チャットやメモで残してもらう 優先順位を一緒に整理してもらう チェック工程を仕組みとして組み込む(抜け漏れ防止) 席配置の工夫、騒音や刺激の調整 手順書・テンプレート・チェックリストの活用 「合理的配慮」という字面から、「会社に一方的に配慮してもらうなんて申し訳ない」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。筆者もそう考えたうちの一人でした。約20年前、初めて会社に就職したとき、採用担当者から配慮事項を聞かれて「いえ、ありません。ご迷惑をおかけせず、一生懸命頑張ります」と答えてしまいました。 合理的配慮は、もちろん職場側との調整ではありますが、それをすることによって職場全体にも良い影響を与えることが多いです。指示の言語化、優先順位の共有、働きやすい職場、手順書による業務の平準化など、その恩恵を受けるのは本人にとどまらないこともよくあります。 なお、合理的配慮については、下記の関連コラムでより詳しくご説明しています。よろしければこちらもあわせてお読みください。 【事例紹介】「続かない」を克服し、長期就労を実現したケース ここでは、短期離職を繰り返していた発達障害のある方が、工夫と環境調整によって安定して働けるようになった例をご紹介します(個人が特定されないよう内容は一部調整しています)。 事例:Nさん(20代後半・ASD)「ミスマッチの修正」と「外部サポートの活用」で安定 Before 広告系スタートアップ企業に入社するも、タスクが納期通りに終わらないことや業務のミス、職場でのコミュニケーションの難しさが重なり、自責が強まる。3年目の終わりに適応障害で休職し、療養中にASDの診断を受けた。 Action 平日毎日の記録と週1回の面談で状況を整理できる、発達障害当事者向けの個人コンサルを活用し、負担を減らす工夫を具体化しました。付箋・手帳・Notionなどを試しながら自分に合う形を整えていきました。 After 転職活動と資格勉強、繁忙期が重なる時期でも、個人コンサルで教わった方法でリソースを見積もって調整できるようになり、内定を獲得し、資格試験にも合格。新しい職場で一般雇用枠での就労を継続中。 ポイント 「気合い」ではなく、記録と振り返りの仕組みで立て直したこと 配慮が得にくい環境だったので、外部サポートでカバーする体制を確保したこと 繁忙期に崩れやすい局面で、リソース見積もりと調整ができるようになったこと 事例:筆者「過剰適応をやめ、無理のない働き方」へ Before 職場に合わせようとして無理を重ね、「できているふり」を続けていました。しかしミスなどから業務に支障が出てくるようになり、突然休職。その後退職してクローズド就労(障害を開示しない働き方)で転職するも、まったく同じ理由でまた休職し、「また続かなかった」と自分を責める気持ちが強くなっていました。 Action 自身のミス発生事例と向き合い、「できなくても頑張る」ではなく「できないものはできないと認めた上で自己対処をする」姿勢へ転向。一般には「タスク管理」と呼ばれる方法で自己対処をし始めました。 After 勤怠が安定し、残業もほぼなしで無理なく仕事を回すことができるようになりました。「忘れがち」「先送り癖」「段取り苦手」といった自身の特性を受け入れ共存しながらも、仕事で結果を出せるようになりました。 ポイント 「無理をして頑張り続ける」ではなく、自身の特性を受け入れて無理を減らしたこと 特性をカバーする「やり方」を身に付けたこと 結果的に生活リズムが安定し、より働きやすい環境を作れたこと 一人で悩まず、就労支援のプロを頼ってみませんか? 転職を繰り返してしまうと、「次もダメかもしれない」という不安が大きくなり、相談すること自体が難しくなることがあります。ですが、短期離職の背景には、特性と環境のミスマッチや、過剰適応による疲弊など、整理できる要因があることも少なくありません。 自分だけで抱え込まず、ときには第三者を交えながら「何が起きているのか」「どうすれば続けやすくなるのか」を整理していくことで、少しずつ選択肢が増えていく可能性があります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【当事者解説】発達障害と診断されたらどうする?やるべきことは?

ADHD当事者の筆者が、診断を受けたあとの行動ステップ、利用できる制度、職場への伝え方、自己理解・特性への工夫までを解説します。

記事を読む
  • #合理的配慮
  • #就労移行支援事業所
  • #障害者雇用
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「発達障害と診断されたけれど、どうすればいいのか分からない」「職場や家族に伝えるべきか、必要な手続きはあるか」 そんな不安を感じていませんか。 診断を受けた直後は、気持ちが揺れやすく、今後のことを考える余裕が持ちにくい時期です。焦らずに少しずつ整理していけば、自分らしく働き、暮らしていくための方法を見つけていくことができます。 この記事では、ADHDの診断を受けた筆者が、「発達障害と診断されたら」というテーマで、診断に至るまでの流れから、診断後にできること、そして周囲との向き合い方までをお伝えします。今の環境をより過ごしやすく整えるためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 診断に至るまでによくあるきっかけ まだ診断を受けていない方・受けるか悩んでいる方も多いかと思います。まず最初に、診断を受けたきっかけについて紹介します。 診断後にやるべきことについて今すぐ知りたい方は、「診断後にできる行動のステップ」からお読みください。 発達障害は、症状が突然あらわれて診断がくだるものではなく、日常生活や仕事の中で感じる「やりづらさ」や「違和感」から、少しずつ気づいていくケースが多いです。 職場でうまくいかない場面が続いたとき 「同じ注意を受けることが多い」「予定の調整が難しい」「会議中に集中が続かない」など、仕事の中で自分でもうまく回せていないと感じることが続く場合があります。 筆者が「自分は発達障害かもしれない」と思ったきっかけがまさにこのパターンでした。 法律事務所の事務員をアルバイトでやっていて、電話の対応がうまくできなかったり、お客様にお渡しする大事なお金を事務所に置いたまま外出してしまったりといった場面が続き、「もう雇い続けられない」と契約を終了することになりました。 続けて不動産仲介の小さな会社でアルバイトを始めるのですが、そこでもファイリングに明らかに時間がかかりすぎてしまったり、お客様を物件に案内できず迷子になってしまったりと、自分でも「何かおかしい」と考えるようになりました。 そこで、「仕事 うまくいかない」「仕事 ケアレスミス」といったワードで検索をかけてみたところ、「発達障害」という言葉を知り、クリニックで診断を受けました。 情報を見て「もしかして自分も」と感じたとき テレビや記事、SNSなどで「大人の発達障害」「ADHD」「ASD」といった言葉を目にし、自分の行動パターンや考え方に似ていると感じて受診する方も少なくありません。 これまで言葉にできなかった「生きづらさ」や「頑張ってもうまくいかない理由」に納得できることで、ほっとしたり、次の一歩を考えやすくなる方も多いようです。 筆者は、診断はADHDだったのですが、発達障害について知るにつれて、ASDの傾向もあるかもしれないと思うようになっていきました。 「抽象的な言葉が理解しづらい」「言葉にならない行間を読むのが苦手」といったASD特性のある方の経験談をSNSやウェブなどでよく見ます。筆者もそれを見て、「そういえば自分もそうだ!」と思い、ASD傾向への対策も取り入れて仕事や生活をするようにしています。 メンタル不調で通院したときに分かることも ストレスや疲れの蓄積で心療内科・精神科を受診した際に、医師から「発達障害の傾向があるかもしれません」と指摘されるケースもあります。 気分や体調の波が大きいと感じている場合、その背景に特性が関係していることもあるため、専門の医療機関で相談してみることが一つの選択肢になります。 診断後にできる行動のステップ 風邪などの病気は、診断があり、薬を処方され、服薬をすれば治っていきます。診断を受けたら、ある程度終わりが見えることが多いです。しかし、発達障害の診断は、診断→自己理解→対策という流れの「始まり」だと考えて良いでしょう。 以下に、診断を受けた後に意識しておくとよい5つのステップを紹介します。 1. 自分を知る時間をつくる 診断を受けたあと、焦って誰かに伝えたり、手続きを急いだりする必要はありません。まずは「どんな場面でうまくいかないのか」「どんな条件なら力を発揮しやすいのか」を整理してみましょう。 得意・不得意の傾向を書き出す 困った場面をメモして、どんな工夫が有効だったかを記録する 特性を理解しているカウンセラーや医師に話してみる このような記録は、後で職場や家族と話すときにも役立ちます。 筆者は、逆にこの時間をつくらなかったため、少々回り道をしてしまいました。診断を受けたあとに、クリニックのソーシャルワーカーの方に就労について相談して障害者雇用の話を聞き、すぐに就職活動を始めたのです。 スピーディーに事が進んだのは良いのかもしれませんが、その反面、自分自身の得意・不得意などもしっかり把握せずに仕事を始めてしまったため、仕事がうまくいかず体調を崩して休職するということを2社連続でしてしまいました。 もし診断を受けた当時の自分に今の自分がアドバイスするなら、「まずは就職を焦らずに、自分のことを知る時間を確保しよう」と言うと思います。 2. 利用できる制度や支援を調べる 発達障害がある方を支える制度は複数あります。それぞれの特徴を知り、必要に応じて利用を検討するのをおすすめします。 医療機関での継続的なフォロー(通院・カウンセリングなど) 発達障害者支援センターでの相談(生活や就労について) 就労移行支援などの障害福祉サービス(働く準備のサポート) 合理的配慮を得るための社内相談 前述のとおり、筆者は診断を受けてすぐに就職活動を始めたのですが、それは制度や支援機関についての知識がなかったというのも一因でした。特に、「就労移行支援事業所」というものの存在を知らず、応募書類の作成なども自力か友人の力を借りてやっていました。 ただ、支援制度や相談窓口の情報を知らなかったことで、結果的に一人で抱え込みすぎていたように思います。どこに相談すればいいか分からないときは、まず信頼できる情報を集めることが大切です。 そこで、頼れる専門の相談窓口を紹介します。 発達障害者支援センター:発達障害がある方やご家族が、生活・就労・福祉制度などの相談をできる地域の支援拠点です。お住まいの市区町村の障害福祉窓口:障害者手帳や福祉サービスの申請・利用方法を案内してもらえる窓口です。 精神保健福祉センター:こころの健康や生活・仕事の悩みを専門職に相談できます。 障害者就業・生活支援センター:働くことと暮らしの両面から支援を受けられる機関です。 ハローワーク:障害者雇用の相談や求人紹介、応募書類の作成サポートなどを受けられます。 地域障害者職業センター:職業評価(自分の職業適性や課題、支援方法を知るためのもの)や就職後の定着支援など、専門スタッフによる助言が得られます。 医療機関:治療や服薬の相談のほか、利用できる支援制度を紹介してもらえる場合もあります。 就労移行支援事業所:就職に向けた訓練や生活リズムの整え方、ビジネスマナーなどを学べる障害福祉サービスです。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、診断を受ける前の方、診断を受けたものの障害福祉サービスの利用をするかどうか決めていない方からのご相談も承っています。お気軽にご相談ください。 お問い合わせフォーム▶ 3. 職場への伝え方を考える 発達障害などの障害があると、障害者雇用のオープン就労で働く場合は、自身の障害を開示して、そんな自分が働きやすい環境を作るための「合理的配慮」について伝えることができます。 ただ、「診断名」だけを伝えるだけでは、周囲の人たちも何をすれば良いか分かりづらいものです。それだけでなく「具体的にどんな支援があると働きやすいか」を整理しておくことがポイントです。 たとえば、以下のように合理的配慮事項を伝えると、周囲の人も対応しやすくなります。 指示は口頭だけでなく、メモやメールでももらえると助かる 優先順位を一緒に確認してもらえると安心できる 集中しやすい静かな場所で作業したい 筆者は、この「合理的配慮」を、「自分の弱みをさらけ出すようで気が引ける」と考えていました。したがって、最初の障害者雇用のオープン就労の際に合理的配慮を聞かれたときに、「いえ、特にありません」と答えてしまいました。 合理的配慮は、あくまで自分と周囲がスムーズに働けるようになるためのものであり、職場の全員のメリットになるものです。変に遠慮すると、かえって職場に迷惑をかけてしまうこともあります。事実、筆者は合理的配慮を満足に伝えずに就労した結果、仕事がうまくいかなくなって休職してしまいました。伝えるべきことは、きちんと伝えることが大事だったなと、心底思ったのを覚えています。 そのためにも、職場のコミュニケーションの取り方や、どこまで伝えるかについては、一人で抱え込まずに相談してみることはとても大切だと考えています。 4. 生活と仕事のバランスを整える 自己理解をして、職場で働くための環境を整えることは、生活の安定性があってこそ十分に発揮されます。 睡眠・食事・休息のリズムを整える スケジュールを見える化し、予定を詰め込みすぎない 定期的に「最近どう感じているか」を振り返る 厚生労働省の就労準備性ピラミッドでは、「働くためのスキル」「社会人としての基本的な習慣」などを支える土台として、まずは「こころとからだの健康」や「日常生活のリズム」が大事なものと位置づけられています。 健康を維持し、日常生活を無理なく続けられる習慣をつくることは、自分らしく働くために最優先事項だと考えたいところです。 診断後の話ではありませんが、筆者が仕事がうまくいかずに休職したときのことです。当時実家に住んでいたのですが、休職の意味をしっかり理解していた親は、「とにかく休むことを優先しよう」と言ってくれました。ただ、1つだけ約束しました。それは、「朝起きて夜寝るというリズムは守ろう」ということでした。 今考えると、この最優先事項だけをしっかり守るという模範的な姿勢だったなと考えています。そのおかげか、しっかり休みつつもスムーズに次の段階へ移行できたという実感がありました。 日常生活のリズムを整えることは、こころとからだのメンタルヘルスを守りながら、無理なく働き続ける土台になります。ぜひ気を付けていただきたい点です。 5. 障害特性への工夫を考える  発達障害がある方の多くは、仕事や生活の中で「忘れやすい」「集中が続かない」「整理が苦手」といった特性を感じることがあります。 こうした特性は、努力や根性で克服するものではなく、自分に合った工夫を取り入れることでうまく付き合っていくことが大切です。 以下は、ADHD当事者である筆者が実際に取り組んでいる工夫で、特性や性格などによって、一人ひとり必要なもの・合う対策が異なりますので、参考としてお読みください。 仕事での工夫の例 タスクを見える化する:付箋やアプリで「やることリスト」を作り把握する。 スケジュール管理を習慣化する:会議や打合せなどの予定はすぐにカレンダーへ入力し、リマインダー機能を活用する。 作業環境を整える:集中しやすい静かな場所を選ぶ、デスク上をシンプルに保つ。 一度に抱えすぎない:同時に複数の作業を進めず、「今はこれだけ」に絞る。 筆者自身も、ADHDの特性である「注意の散りやすさ」を補うために、自分の抱える仕事を書き出して一覧化し、常に「次にやるべきこと」を具体的にして「今日やること」をメモに書き出すようにしていました。やるべきことが明確になることで、落ち着いて仕事を進められるようになりました。 日常生活での工夫の例 家事をルーティン化する:曜日ごとに掃除・洗濯などを決めておくと、迷う時間が減りやすくなります。 金銭管理をシンプルにする:現金での管理は使った履歴を残しづらい(レシートをなくす)ため、できるだけクレジットカードで支払うようにする。 忘れ物対策をする:鍵や財布を置く箱を用意し、出かける前に箱を確認するだけにしておく。 「できたこと」に注目する:完璧を目指すよりも、できたことを記録し、自分を肯定する時間を持つ。 こうした工夫は、特性を無理に変えるのではなく、「自分に合った環境をデザインする」ための方法です。 自分の行動パターンを理解し、小さな工夫を積み重ねることで、仕事も生活も少しずつ安定していきます。 よくあるご質問と考え方 ここでは、診断を受けた後の対処のしかたや、どう行動したら良いかなどについて、よくある疑問についてお答えしていきます。 Q. 会社に伝えたほうがいいですか? A. 伝えるかどうかは、状況や職場環境によって異なります。「配慮があれば働きやすくなる」「理解を得たい」と感じる場合は、信頼できる上司や人事担当者に相談する選択もあります。 一方で、伝えずに働き続けている方もいます。自分が働きやすいと感じる方法を選ぶことが大切です。 Q. 家族や友人に話すべきですか? A. 伝える相手や範囲も自分で決めて構いません。家族や親しい人に理解してもらうことで、生活面の協力を得やすくなることもあります。ただし、相手の理解度や関係性を見ながら、無理のない範囲で話すことをおすすめします。 Q. 障害者手帳は取得した方がいいですか? A. 手帳を取るかどうかは、その方の状況によって異なります。 主なメリット 障害福祉サービスや支援を利用しやすくなる 税制や公共料金の優遇が受けられる場合がある 検討ポイント 手続きに時間や準備が必要 「手帳を持つ」ことに心理的な負担を感じる方もいる 手帳は申請や手続きに時間がかかることもあるので、医師や支援センターなど専門家と一緒に判断していくと安心です。 Q. どんな制度やサービスがありますか A. 代表的な制度としては以下のようなものがあります。 発達障害者支援センター(相談・情報提供) 障害年金(生活・就労に継続的な難しさがある場合) 就労移行支援事業所(働くためのトレーニング・就職活動支援) 発達障害と向き合うために大切なこと 診断を受けることで、「苦手の原因」や「自分の得意なスタイル」が見えてくることがあります。発達障害がある人の中には、集中力・創造力・記憶力などを強みとして発揮できる方も多くいます。 「できないことをなくす」よりも、「できることを増やしていく」意識で取り組むことが、自分らしさを活かす第一歩になります。 こうしたことも含めて、自分の特性を理解しながら、安心して働くための環境づくりは、一人で抱え込まずに進めることが大切です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
障害者雇用と一般雇用どちらがいい?|2025年版|リアルな情報を発信

障害者雇用と一般雇用、どちらを選ぶべき?メリット・デメリットを徹底解説。筆者の実体験も交え、あなたに合った働き方を見つけるヒントをお届け。

記事を読む
  • #障害者雇用
  • #クローズ就労
  • #オープン就労
「障害者雇用って、配慮があるのはありがたいけど、給与面やキャリア的にはどうなんだろう…」「一般雇用で働いてるけど、実はしんどい。でも今さら障害をオープンにするのも怖いし…」 そんな悩みを抱えていませんか。 働き方には正解があるわけではなく、それぞれにメリットとデメリットがあります。大切なのは、「自分に合った働き方とは何か」を、自分自身で少しずつ見つけていくこと。 この記事では、障害者雇用と一般雇用、両方の求人枠で働いた経験のある筆者が、それぞれの違いやよくある質問を整理しながら、働く上での選択肢を広げるための視点をお届けします。あなたがこれからの職場で、無理なく、安心して働き続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 障害者雇用と一般雇用とは? 就職活動を始めるうえで、まず知っておきたいのが「障害者雇用」と「一般雇用」の違いです。ここでは、「オープン・クローズ」という考え方や、それぞれの雇用形態の特徴について解説します。 オープン就労とクローズ就労の違い 障害者雇用と一般雇用の違いを知るうえで、最初に押さえておきたいのが「オープン就労」と「クローズ就労」という考え方です。 オープン就労とは、障害があることを就職先に開示して働くこと。 クローズ就労とは、障害があることを就職先に伝えずに働くこと。 ※それぞれ「就労」をつけずに「オープン・クローズ」と呼ばれることも多いです。以降は「オープン・クローズ」と表記します。 「オープン=障害者雇用(障害者求人枠)」と思われがちですが、実際には一般求人枠であっても障害を開示して働くこともオープンに含まれます。つまり、オープンかクローズかは「雇用の枠」ではなく「開示の有無」によって区別されます。 筆者は、3社経験していますが、1社目は「オープンで障害者雇用」、2社目は「クローズで一般雇用」、3社目は「オープンで障害者雇用」から「オープンで一般雇用」に切り替わりました。 障害者雇用(障害者求人枠)とは? 日本では、障害のある人が働く機会を確保するために、企業に対して一定の割合で障害者を雇用する義務(法定雇用率)が定められています。2025年現在の民間企業の法定雇用率は2.5%、2026年7月には2.7%に引き上げ予定となっています。また、法定雇用率が適用される会社や法人の対象も拡大傾向にあり、2025年現在は従業員数40人以上、2026年7月からは37.5人以上となる予定です。 このルールに基づいて設けられているのが、障害者求人枠です。 障害者雇用で働くには、障害者手帳の取得が必須です。発達障害などで医師の診断があっても、手帳がなければこの枠に応募することはできないということです。 障害者雇用は、障害の特性や必要な配慮を事前に伝えたうえで働くことが前提となっており、職場から配慮を得られやすいのが大きな特徴です。 たとえば、勤務時間や業務内容の調整、通院配慮、職場内でのコミュニケーション支援など、状況に応じた「合理的配慮」を受けやすくなります。 一方で、障害やその特性によって業務内容や働き方に制限がある場合には、給与水準や昇進スピードが限定的になるケースもあります。また、業務内容が単純作業に偏るケースがあり、キャリアアップよりも「安定」や「安心」を重視する働き方が中心となる傾向もあります。 ただし最近では、障害の有無ではなくスキルと成果でフラットに評価される環境も広がっています。 筆者がはじめて就職した会社は、まさに「フラット」なIT企業でした。当時、障害者求人枠での求人票の中で、比較的給料が高く、面接でも「仕事を頑張れば役職だったり給料も高くなっていきますか?」と質問して「そうですよ」と答えてもらったことを覚えています。 さらに、障害者雇用ならではの働き方として、特有の仕組みが用意されていることもあります。 たとえば「特例子会社制度」は、障害のある方が安心して働けるよう、配慮された環境を備えた子会社を企業が設立し、その子会社での雇用を親会社の雇用率に算入できる仕組みです。障害特性への理解がある職場づくりが進んでいるケースも多く、はじめての就労先として選ばれることもあります。 また、「トライアル雇用制度」は、働くことに不安がある方に向けた“お試し雇用”の制度で、一定期間(通常3か月)働いてみたうえで、双方が合意すれば本採用に進む仕組みです。障害者専用の制度もあり、無理のない形で職場に慣れていけるステップとして活用されています。 一般雇用(一般求人枠)とは? 一般雇用とは、障害の有無にかかわらず、誰でも応募できる求人枠のことです。障害者手帳の有無は問われませんし、障害の開示も必須ではありません。 開示するかどうかは、本人の判断に委ねられています。ただし、開示しない(クローズ)場合は、そもそも障害があることを企業に伝えていないため、障害による困りごとがあったとしても配慮を求めることができません。 開示をする(オープン)場合は、障害の診断があり障害による業務への支障がみとめられたときに、必要な配慮を申し出ることができます。ただし、「合理的」であることが前提であるため、就業先にとって過重な負担と判断された場合は配慮を受けられないこともあります。 また、一般雇用では、他の社員と同様の成果や働き方を求められることが多くなります。 そのため、特性への自己理解や対処法を身につけていて、配慮がなくても働ける環境や仕事を選べる人には向いているといえます。 筆者は2社目で一般雇用・クローズで働きました。係長級の役職も付けていただいて入社し、それなりの水準の給料でした。そういったメリットがある反面、「その分しっかり働かないといけない」と考えて、自分にプレッシャーをかけてしまい、長くは続きませんでした。 障害者雇用・一般雇用のメリットとデメリット 「障害者雇用と一般雇用、どちらがいいのか?」と考えるとき、単純に比較できるものではありません。ここでは、自分に合った働き方を見極める手がかりとして、それぞれのメリット・デメリットを整理してみます。 この記事では、一般的に言われているそれぞれの雇用枠での働き方に沿って情報をお伝えします。実際には、企業によって募集要項や人事制度、受けられる配慮の程度はさまざまですので、参考としてお読みください。 障害者雇用で働くメリット・デメリット 障害者雇用のメリット ▷ 応募・選考のしやすさ 未経験OKの求人が多く、スキルや職歴が問われにくい傾向がある 競争倍率が比較的低めで、就職のハードルが下がる場合がある 書類選考や面接に加えて「職場実習」を設ける企業も多く、事前に職場との相性を確かめられる ▷ 障害への配慮を受けやすい 合理的配慮(業務調整、通院配慮、コミュニケーション支援など)を求めやすい 勤務時間や業務内容を、特性に応じて柔軟に調整してもらえる 周囲が障害を理解してくれている安心感がある ▷ 心身の安定につながりやすい 「障害を隠さなければいけない」という不安がない 体調の波や特性について、職場に相談できる環境がある ▷ 職場定着支援が受けられる 就労移行支援や定着支援事業を通じて、職場との間にサポーターが入ることができる 支援機関との面談は企業に知られずにおこなえるケースも多い(精神的安全の確保) 筆者は、障害者雇用で働き始めましたが、そのときは新卒の年齢から数年近く経っており、同年代の友人はすでにスキルや経験を積んで社会で活躍していました。そんな友人に引け目を感じていた筆者にとって、スキルや職歴が問われにくい障害者雇用は、「心機一転でスタートできる」という意味合いからも、スムーズに社会に出られた実感がありました。 また、最初に入った会社では、一緒に働いていた先輩社員が、事前に「精神障害のある人と働くためには」といった本を読んでくれていて、合理的配慮としてだけではなく、筆者個人の性格や得手不得手をよく観察して受け入れてくれて、とても働きやすい環境を作ってくれました。 障害者雇用で働くデメリット ▷ 求人の幅が狭い 一般雇用に比べ、選べる業種・職種に偏りがあることが多い。 実際の求人では、6割以上が事務職、2割が軽作業(ディーキャリア調べ)となっており、専門性のある職が少ない ▷ 待遇やキャリアパスに制限がある場合も 初期雇用が契約社員やパートスタートになることが多く、給与水準も低め 昇進やジョブローテーションなどの機会が少なく、「成長機会」を得にくい職場もある 一部企業では「障害者雇用枠と一般枠で評価制度が分かれている」ケースもある 筆者自身は、障害者雇用で入社した会社で、待遇やキャリアに関する大きな不満を感じたことはありませんでした。しかし、就職活動中に参加した合同面接会では、参加している企業の求人票を見る限り、「スキルを磨いて専門性を高めていくのは難しそうだ」という印象を強く受けました。 たとえば、事務職の求人に対しても「成長やキャリアアップの道筋が見えにくい」と感じることが多く、自分が目指していた働き方とはギャップがありました。そのとき、「障害者になった途端、自分のやりたい仕事への道が閉ざされてしまうのか」と、強い不安と悲しさを感じたのをよく覚えています。 一般雇用で働くメリット・デメリット 一般雇用のメリット ▷ 幅広い求人の中から選べる 求人数が多く、業界・職種・地域等の採用条件の選択肢が豊富 スキルや実務経験がある場合、より専門的な仕事に就けるチャンスが広がる ▷ キャリアアップの道が開ける 障害者雇用よりも、昇格・昇給・異動・新規プロジェクトへの参加など、キャリアパスの選択肢が多い 裁量のある仕事や責任あるポジションを任されやすく、やりがいを感じやすい オープンであれクローズであれ、会社の許す限り「やりたい」といったことをやれる自由は、非常に魅力的でした。こうした自由度の高い環境のなかで、筆者は3社目の途中から副業を開始しました。 発達障害のある方々に、自分が発達障害傾向をカバーして働けるようになったことを講演会や執筆活動を通してお伝えするという副業がわずかながら収益化できたことで、その収益を会社が受け取ることと引き換えに、会社の業務の一環として行うことを提案し、毎週金曜日会社外で働くことができるようになりました。それが現在筆者がフリーランスとして働いている活動の礎になりました。 一般雇用のデメリット ▷ 応募・選考の難易度が高い 実習のない企業が多く、実際に働いてみないと相性が分かりづらい スキルや職歴、適応力などが厳しく見られる場合がある ▷ 障害への配慮が得られにくい クローズの場合、合理的配慮を求めることが難しい オープンの場合も、企業側の理解や制度が整っていないと、通院・服薬・特性への配慮をしてもらえないことも 定着支援など障害福祉サービスからの支援が受けられず、トラブルが起きた際も基本は「自己解決」 ▷ 精神的な不安・疲労感が蓄積しやすい 「いつか障害がバレるのでは?」という不安を抱えながら働くことになる 長時間労働や急な残業が発生しやすく、生活リズムが崩れることも 一般雇用では、良い意味でも悪い意味でも障害者雇用より自由です。筆者自身、一般雇用で働いた際には、苦手な作業への対応に苦慮した経験があります。筆者のADHDの不注意傾向のせいか、仕事を自分一人でミスなくこなすことが非常に難しかったです。 クローズで働いていると、そういったことを苦手だというのは当然ながら理解されづらいですし、自分から言うことも難しいです。そのため、苦手なことも自分だけで克服しようと頑張りすぎて、深夜や早朝まで残業したり、それでもうっかりミスなどがあって注意を受けたりすることで、不安や疲労が蓄積したのは実際あったなと感じています。 このように、障害者雇用にも、一般雇用にも、それぞれにメリットとデメリットがあります。 大事なのは、「どちらが自分に合っているか」を、働きやすさ・安心感・将来像の観点から冷静に見極めることです。 最近では、障害の有無にかかわらず、スキルや成果で評価する企業も増えています。「障害者雇用=安定」「一般雇用=挑戦」といった枠にとらわれず、自分にとって何を大切にしたいのかという視点で選ぶことが、納得のいく働き方につながります。 筆者自身も、発達障害の特性である「興味の偏り」が強く、関心の持てない仕事にはどうしても集中できませんでした。興味のある分野である程度の収益が見込めるようになったことをきっかけに、「このままでは会社に迷惑をかけてしまう」と判断して退職。現在はフリーランスとして働いています。結果として、自分が何を大切にしたいかという軸で選んだ道だったと感じています。
自己理解が必須!?障害者雇用の面接がうまくいくノウハウ

転職活動で合計250社から「お見送り」…ADHD当事者である筆者の経験をもとに、障害者雇用枠求人ならではの「面接対策」をご紹介!

記事を読む
  • #障害者雇用
  • #オープン就労
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「就職活動に苦手意識がある」「面接でうまく話せない」「就活の進捗管理が難しい」「障害のことをどう伝えればいいか分からない」 ADHD当事者である筆者は、転職活動をしたとき、書類審査のみの会社も含めて合計250社、面接だけでも30社からお見送りをされました。最終的には、転職活動を始めてから約半年後に、ほぼ同時に3社から内定をいただき終了したのですが、どの方にお話しても、選考に通過しなかった数は驚かれます。 そんな筆者だからこそ分かったことや経験談、その他障害者雇用枠求人ならではの面接対策についてお伝えしていきます。 皆さんが自分らしいキャリアに向けた一歩を進むためのヒントになるよう、特に現在就職活動をしている方々が納得のいく就職ができるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 障害者雇用枠ならではの選考内容 一般雇用枠にはない障害者雇用枠ならではの選考内容として、代表的なものに「障害に関する資料の提出(面接にはその説明)」と「企業実習」があります。※「企業実習」はすべての企業で実施されているわけではありませんが、選考フローのひとつとして取り組む企業が増えてきています 自分の特性を理解してもらうための資料「障害について(ナビゲーションブック)」 通常、求人に応募しようとする会社へ提出する書類は、「履歴書」と「職務経歴書」の2つのみです。しかし、筆者は、障害を開示せずに働くクローズ就労だけでなく、障害を開示して働くオープン就労でも応募をしていたため、さらにもう1つの書類として、障害内容や障害に対してどのように配慮して欲しいかなどを書いた「障害について」という資料(=ナビゲーションブック※)をオープン就労用に用意していました。 ※「ナビゲーションブック」とは、障害のある方が就職活動をするときや職場定着を目指すときに活用できるツールで、①自身の障害のこと(障害の特徴=特性や症状)②仕事をするうえで困難なこと③職場に求める合理的配慮をまとめたものです。オープン就労の中でも、一般雇用枠の場合には提出は任意であることがほとんどですが、障害者雇用枠の場合には応募書類のひとつとして提出を求められることが多いです。 雇用主とのマッチングを見極める期間としての「職場体験実習・企業実習」 筆者が定期的に講師としてプログラムをおこなっている就労移行支援事業所のある東京都では、東京しごと財団が「職場体験実習」を実施しています。また、近年では多くの企業が選考時に同様の「企業実習(インターン)」を取り入れています。 企業等で働いた経験がない(少ない)、自分の適性が分からないなど、企業等で働くことに不安がある場合に、いきなり「就職」ではなく、仕事を「体験」できます。この職場体験実習により、企業等の現場を知ることができ、また、実習中の体験を通じて、自分の新たな課題を発見することもできます。 東京しごと財団HP「職場体験実習」 通常の就職活動は、書類選考と2,3回の面接のみで採用するのがほとんどです。しかし、それだと企業側と応募者がマッチするかどうか分かりません。特に、障害者雇用枠においては、職場環境とマッチする/しないの差が大きく、さらにマッチしなかったときの影響も大きくなりがちです。 そこで、あらかじめ実習期間を設けることで、企業側だけでなく、応募者である障害者からも、職場環境との相性などをじっくり判断する機会を設けています。 発達障害のある方が就職活動で苦手とすること ここでは発達障害のある方が就職活動をおこなう上で、苦手とすることを解説していきます。なお、あわせてこちらもお読みいただくと、より面接への対策をおこなうことができます。 面接でうまく話せない 話しすぎる まずは、特に多動性の特徴のある方に顕著ですが、面接で話しすぎてしまうというのがあります。ADHDである筆者も、その多動性からか、今考えればかなり話しすぎていたように思います。なお、そういった点も含めて面接での話し方で気をつけるべき点を後述の「面接中の対策」でご紹介します。 少なくとも「話しすぎない」ということを念頭においた途端、今まで面接でどこにも通らなかったのが、3社から立て続けに内定をいただけたという経験が、筆者にはあります。「過ぎたるは猶及ばざるが如し(やり過ぎることは、やり足りないことと同じように良くない)」という言葉がありますが、まさにその通りです。足りなければ面接官から聞いてきます。 質問と答えが噛み合わない さらにもう1つ、面接でうまく話せないということについて筆者がよく感じていたのが、「質問と答えが噛み合わない」ということでした。これもADHDの多動性がおそらく関係しているのだと考えているのですが、話し初めと話し終わりでテーマが変わってしまうことが多かったのです。 これは、話し初めはAという話題だったのに、話しているうちにどんどん話がそれていき、いつのまにか別の話題になってしまい、最終的にはBというテーマになってしまった、といったことです。もしかしたら、ADHDのある方は、日常会話でもこのようなことが身に覚えがあるかもしれません。 ASDで他者視点の欠如がある場合は、相手の質問の意図を読み取ることができず、的外れな回答をしてしまうケースがあります。 進捗管理が難しい ADHD/ASD共通の苦手なこととして「マルチタスク」があります。まさに、就職活動は同時並行のマルチタスク処理が要求されます。1社ずつ応募していけばマルチタスクにはなりませんが、そうなると時間が非常にかかってしまい、現実的ではありません。 筆者は、進捗管理をこのようなExcelの表にまとめていました。 ※右端の「障害」欄の「有」は、障害を開示する「オープン就労」の求人であることを示しています。 この進捗管理表を更新すること自体が楽しくなってきて、それが250社落ちても就職活動を続けられる原動力になったと言っても過言ではありません。 就職活動のマナーが分からない あまり胸張って言えるようなことではありませんが、筆者は暗黙のルール=ビジネスマナーを認識するのが非常に苦手です。特に服装には無頓着で、靴が汚れている、袖のボタンが1つ取れかかっている、ネクタイの色がふさわしくない、髪の毛がまとまっていない、などの身だしなみについて、完全に対策できたことはないに等しいです。 こういったことは、まさか面接をする相手企業に問い合わせることもできず、せめてマナー本などを見るくらいしか手立てがありませんでした。 面接の具体的な対策 面接における具体的な対策として、「事前準備」と「面接中の対策」をご紹介します。 事前準備 よく聞かれる質問に、まずは回答を文章であらかじめ書いておくと良いです。よく聞かれる質問の例は後述します。一度書いてまとめておくと、頭に入りやすくなります。 書き方としては、PREP法を用いると良いでしょう。PREP法とは、以下の順番で話をしていく手法です。 P=Point 「結論」 R=Reason 「理由」 E=Example 「事例」 P=Point 「結論を繰り返す」 たとえば、面接で「当社を志望した理由を教えてください」という質問に対しては、このようになります。 結論:御社のチャレンジし続ける企業風土です。 理由:というのも、私もまたチャレンジの連続をしてきたからです。 事例:私は去年はTOEIC、今年は簿記に挑戦しており、来年は宅建を受けてみようと思っています。 結論:ということで、御社のチャレンジし続ける企業風土に惹かれています。 面接中の対策 まずは結論から 事前準備のところでも書きましたが、面接中の口頭でのやり取りでも、PREP法を意識して話すと、混乱せずに伝えることができます。特に、発達障害の特性のある方は、話があちらこちらに飛びがちです。話をしている間に、自分でも何について話しているか分からなくなってしまうのです。それを防ぐためにも、PREP法は有効です。 一文でいったん区切る 思考があちらこちらに飛びがちだと、経験上一文を言い切ることが難しくなります。「~~だと思います」「~~です」と言い切ろうとしても、それに続くトピックが思い浮かび、言いたくなるのです。そこで、続けざまに話し出してしまいます。結果、「話が長く、要点がはっきりしない」という悪印象を与えてしまうことが、筆者にはよくありました。 語尾を伸ばさない 思考を続けながら話すと、それに引っ張られて語尾が伸びることが筆者にはよくありました(今もあります)。上記の「一文でいったん区切る」とあわせて活用すると、抑制の効いた、理解しやすい印象を相手に持ってもらうことができます。 分からなければ「~~ということでしょうか?」と聞く 面接中、面接官の言うことが分からなかったとき、筆者は「分かっていないことを悟られてはいけない」と考え、分かったふりをしてその後懸命に文脈から内容を類推する、ということをしていました。これは本当に意味がありません。分からなければ、正直に伝えるのをおすすめします。「分かりません」ではなく、「~~ということでしょうか?」と自分からの理解も精一杯していることが伝わるような言い方をするとなお良しです。 いずれにしても、「立て板に水のごとく(よどみなく、すらすらと話す様子)」うまく話そうと思わないことが、結果的に良い伝え方、伝わり方になることが多いです。 面接でよく聞かれること 面接では、履歴書の内容、職務経歴書の内容、志望動機などの他に、障害者雇用枠特有の「頻出質問」があります。その中からいくつかピックアップしてみます。 1. 自身の障害について 自身の障害のことについては、ほぼ自己紹介のようなものなので、ひととおり説明できるようにしておくと良いと思います。筆者の場合、面接ではありませんが、イベントなどで登壇したときの自己紹介をする際には、以下のように「診断名」「具体的な傾向(障害特性による困難や苦手なことなど)」をセットにしてお伝えするようにしています。 「私は、10数年前にADHDの診断を受けました」 「具体的には、主なものとして、抜け漏れ、先送り、過度の自責傾向、段取り苦手といった傾向があります」 2. 障害対策として取り組んでいること さらに、職場で本人が自ら働けるような自助努力をしているかは、面接官としても聞きたいところです。そこで、障害対策として取り組んでいることも、要点を押さえて伝えられるようにしておくと良いです。どのような要点の押さえ方をすれば良いかというと、上記の「自身の障害について」で挙げた「具体的な傾向」に対応する形で伝えれば良いです。筆者であれば、以下のようにお伝えしています。 「私は、タスク管理ツールに書き出すことで抜け漏れを防いでいます」 「また、仕事を細かい作業に分けることで、先送りや段取りが苦手なところをカバーしています」 「さらに、タスクのボールを自分が持っているかどうかを可視化して、自責傾向を抑えています」 3. 必要な合理的配慮について 自身の障害を説明し、できる限り対策を講じていることを伝えると、必要な配慮がグッと相手に入りやすくなります。同時に、「ここまで自分は頑張っているのだから、自分の希望をストレートに伝えても大丈夫」という余裕が出てきやすくなります。必要な配慮を依頼するときには、「特性による行動面の特徴」「具体的な配慮事項」をセットでお伝えしていました。筆者の実例は、このようなものでした。 「過度な自責傾向があるため、強い口調で指摘をされると、思考が止まってしまい業務が手につかないことがあります。」 「何か注意すべき点があるときには感情的に叱責するのではなく、冷静に対話していただけるとありがたいです。」 そのほかの合理的配慮の依頼例としては、以下のようなものがあります。 抜け漏れについては「重要な書類は、Wチェックをしていただきたい」 先送り、段取りが苦手については「週1回業務確認のミーティングを実施していただきたい」 上記3点は、どの企業の面接を受けるとしても、障害者雇用枠での選考であれば必要になります。ご自分なりの想定回答をご用意いただけると良いかと思います。そして、その大前提として、「自己理解」が必要となります。 自分にはどんな障害があり、具体的にどのような傾向でどのような困りごとが発生しているか それに対してどう対策しているか それでも対応し切れなくて配慮して欲しいことは何か これらの項目にスムーズに答えられるように自己理解をしておくと、面接に通る確率が上がることでしょう。 面接や就職活動の対策は、しかるべき人に頼ろう これまで、面接対策として、よくありがちな困りごとや苦手なこと等を中心にお伝えしてきました。筆者は、就労移行支援事業所等の存在を知らなかったため、自己理解から具体的な対策をするまでに年単位の時間がかかってしまい、それでも十分な対策ができたとは言えない状態でした。 面接のみならず、就職活動では、個々人の困りごとや特性などを総合的に判断し、原因にあわせた対策が必要になります。面接での細かな工夫なども含め、専門的な知見を持った人の協力を得て、自分にあった対処法を見つけて実践していくことが大切です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。就労移行支援事業所ディーキャリアは、利用者様一人ひとりに合う金銭管理方法を見つけるサポートも行なっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が解説】職場に発達障害を隠すとどうなる?

障害者雇用と一般雇用の両方で就労経験がある筆者が、自身の体験談を交えながら、障害開示をするメリットとデメリットをお伝えします。

記事を読む
  • #合理的配慮
  • #障害者雇用
  • #クローズ就労
  • #オープン就労
「発達障害を隠して働いているが、問題ないのか」「診断がある場合は、障害者雇用枠で働かないといけないのか」「発達障害があることが、会社にバレてしまうことはあるのか」 発達障害があることを職場に言わずに働いている(以下表②)場合、「自分の障害のことが知られてしまうのではないか」「知られたら辞めさせられるのではないか」という不安がつきまとうのではないでしょうか。 <発達障害のある人の働き方> No雇用枠障害のオープン/クローズ①障害者雇用枠オープン(障害を開示)②一般雇用枠クローズ(障害を非開示)③一般雇用枠オープン(障害を開示) 発達障害のある人の働き方に関する基礎情報と体験談は以下のコラムでもお伝えしています。あわせてお読みください。 発達障害の1つであるADHDの特性のある筆者は、上記①②③いずれも経験があり、一般雇用枠でのクローズ就労のときは、自分の障害がバレてしまうのではないかと考えてヒヤッとしたことがあります。そんな経験談も交えながら、「発達障害の診断が出ているが、会社に言わないとどうなる?」と気になっている方々へ、一般雇用枠でのクローズ就労のメリットとデメリット・発達障害当事者としての働き方についての考えをお伝えします。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 障害を伝えずに働くことは可能です! まず第一にお伝えしたいのは、「障害を伝えずに働くことは可能」だということです。障害があったら、それを必ず伝えなければいけないと考える必要はありません。また、こちらから言わなければ、原則的に会社は知ることはありません。 また、仮に自分の障害が会社に知られたとしても、「障害がある」という理由だけで解雇する権利は会社にはありません。障害者雇用促進法第35条では、障害者であることを理由に不当な差別的取り扱いをしてはならないと定められています。 障害者雇用促進法 第35条事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。 したがって、まずは「障害が知られても不当な扱いは受けないと制度的に保障されている」と安心していただければと思います。 障害を開示せず一般雇用枠で働くメリット そもそも、なぜ「一般雇用枠で」「障害を開示しない」クローズ就労で働くという選択肢があるのか考えてみたいと思います。 なお、冒頭でご案内したとおり、一般雇用枠でオープン就労をするという選択肢もあります。ただし、多くの場合は「一般雇用枠でクローズ就労」か「障害者雇用枠でオープン就労」のどちらかを選ぶことになるため、今回はこの2つを対比させながら考えていきたいと思います。 給料が高い 障害者雇用枠で障害を開示して働くオープン就労に比べて、一般雇用枠で障害を開示せず働くクローズ就労の方が、給料が高い傾向があります。 オープン/クローズの就労タイプ別に特徴などを図にまとめてみました。会社によって雇用条件や業務内容はさまざまですが、一般的にこのような傾向があると理解して良いと思います。 就労タイプ特徴筆者の経験事例給料障害者雇用枠オープン就労障害特性への配慮の面から、比較的負荷の低い業務が中心書類のPDF化郵便物の集配など低め一般雇用枠クローズ就労負荷が高く責任が重い業務も担う全国の社用車の配置案株主総会準備など高め キャリアパスが豊富 また、一般雇用枠のクローズ就労は、負荷の低い業務から負荷の高い業務まで幅広くこなすのが想定されるため、「将来どんな仕事をしたいか」について、より多くの選択肢があることが多いです。 それに対して、負荷の低い業務のみを担当することが多い障害者雇用枠のオープン就労では、より負荷の高い業務を行なうポジションにステップアップすることは難しいのではないでしょうか。 より多くの業務をこなせるようになるのは、将来的に自分の価値を高めることにつながります。その点で、一般雇用枠のクローズ就労にはメリットがあると考えられます。 このように、一般雇用枠でクローズ就労をするメリットとして、「給料が比較的高いこと」「キャリアパスが豊富であること」があると言えそうです。 障害者雇用枠では高い給与や豊富なキャリアパスは不可能? なお、近年では、これまでの実務スキルや知識を活かし、一般雇用枠と同様の業務を担当し同等の給与をもらえる障害者枠求人も増えてきました。また、スキルや知識がなくても、積極的に多くの仕事をしたいと伝えれば色々やらせてもらえる職場も、まれにですがあります。 筆者も、1社目の会社で、障害者雇用枠で採用されたものの、当初求人票に書かれていた業務以外の仕事を多くするようになった経験があります。しかし、その結果「あの人は普通に仕事を振っても大丈夫」と思われて、どんどん仕事が増えていつしかコントロールが効かなくなってしまい、負荷に耐えきれず筆者は休職することになってしまいました。 障害者雇用枠で働きながらも、一般雇用枠と同様の業務を担当し同等の給与をもらえるようになるためには、体調管理や業務量の管理、きちんと障害特性への配慮が受けられるような環境でいられるかなどについて相当気を付けなければならず、まだまだ課題があると言えます。 障害を開示せず一般雇用枠で働くデメリット それでは、障害を開示しないクローズ就労で働くデメリットについて考えてみたいと思います。 障害が知られないか不安になる 障害があることを言わずに働いていると、常に「知られてしまうのではないか」と不安に駆られながら働くことになります。このプレッシャーは無視できません。「こちらから言わなければ、会社側は障害の事実を知ることはない」と前述しましたが、意図せず知られてしまう例外があります。3つほど具体的な事例を挙げてみます。 障害者控除の申請会社で毎年配られる年末調整の書類に障害者控除記入欄がある。会社の労務などの担当者がチェックするので、その際に知られる場合がある。障害年金・傷病手当金の申請障害年金が支給されているときに、重ねて傷病手当金の申請をする場合、障害年金の受給の事実を記載する必要がある。傷病手当金は会社を通して申請するので、その際に知られてしまうことがある。健康診断問診で精神科で処方された薬を服用していると回答した場合、それが会社側に伝わることがあります。その薬がどんな病状のときに処方されるかを調べられたら、それによって障害が知られる可能性がある。 障害がバレるかもしれなかった筆者の事例 障害があることが知られる場面は他にもあります。1社目に障害者雇用枠でオープン就労をし、2社目に一般雇用枠でクローズ就労に転職をした筆者がヒヤッとした事例をご紹介します。 1社目の休職中、給与が出ない代わりに傷病手当金の支給を受けていた筆者は、休職してそのまま退職となったため、1社目の最後の数か月は「給与ゼロ」でした。そのため、1社目の源泉徴収票の年収や所得の欄には、ありえないくらい低い額が記載されていました。 2社目の年末調整には1社目の源泉徴収票を提出しなければいけないことが分かり、筆者は気が気ではありませんでした。源泉徴収票を確認され、「どうして年収がこんなに低いのですか?」と訊かれたら、障害があること、その影響から仕事がうまくいかなくなって休職したことを話さないといけないと考えたからです。 2社目の入社面接の最後に「心身ともに健康ですか?」と面接官に質問されたときのことが思い出されました。その際、「発達障害が影響して二次障害を起こして休職したのだけど、それは健康と言えるのだろうか?」と一瞬疑問がよぎったものの、ここで言いよどんでしまうと入社に支障が出るのではないかと思い、「はい」とだけ返答しました。 面接で「心身ともに健康」と伝えておきながら、実はその数か月前まで休職していましただなんて言えない。そう思うと、隠していたことがバレてしまってとがめられるのではないかと内心不安でいっぱいでした。 しかし、話さずに済みました。2社目の入社が12月半ばだったので、すでに社内の年末調整の手続きは終わっており、「年末調整の手続きはもう終わってしまったので、自分で確定申告をしてください」と言われたのです。その結果、源泉徴収票を見られることはなかったのでした。 結果的に何もなかったものの、「障害が知られてしまうかもしれない」という不安を抱きつつ仕事をするのは、精神的に結構プレッシャーがかかるものです。無いに越したことはありません。 配慮が受けられない 障害を開示しないので、合理的配慮も受けられないということになります。発達障害のある人が配慮なしに仕事をするのは、相当負荷のかかることです。 厚生労働省が令和2年に発表した|障害者雇用の促進について 関係資料」によると「一般求人障害非開示=一般雇用枠でクローズ就労」で就職した場合の職場定着率は1年で30.8%とかなり低いというのが現状です。一方で「障害者求人」の場合には70.4%と比較的高い定着率となっています。 障害を開示して配慮を受けられる方が、障害を開示せず配慮を受けられない方よりも、圧倒的に定着率が高いのです。 配慮が受けられない環境に耐えきれなかった筆者の事例 筆者は、前述した通り2社目は一般雇用枠でクローズ就労、つまり配慮なしに仕事をする状況でした。結果、1年強で仕事が続けられなくなり休職を余儀なくされました。 締切は守れない、チェックミスを連発する、やるべきことが溜まりすぎてどれから手をつければ良いか分からない。そういったことが日常茶飯事になると、次第に頭が働かなくなってきます。 「頭が働かなくなる」→「仕事上でミスをする、仕事が溜まる」→「より頭が働かなくなる」という悪循環に陥り、「自分は職場にいていいのか」と自己嫌悪にさいなまれるようになっていきました。職場のデスクで昼食を取るのもできなくなり、昼休みになると逃げるように職場近くのレストランやカフェに行くようになりました。 発達障害は外から見て分かる障害ではありません。したがって、より働きやすくなるためには、自分の障害のことを説明して、配慮を求める必要があります。しかし、一般雇用枠でのクローズ就労は、それができません。 そういったこともあり、自己嫌悪がさらに悪化して、「どうせ自分は仕事がちゃんとできない」と思い込むようになってしまい、出社するのが怖くなり、仕事をするどころの精神状態ではなくなって休職をすることになってしまいました。 解雇につながることも また、配慮が受けられない環境は、思った以上に簡単に自分を追い詰めてしまいます。単に「仕事がつらい」だけではなく、解雇されてもしかたがない・解雇理由ありとされるような状況に陥ることもあるのです。 解雇理由は、会社が自由に従業員を解雇できないよう就業規則に定めておかねばならないとされています。厚生労働省が公開している就業規則のひな形では、解雇理由として、次のような事項などが列挙されています。 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき 正当な理由なく無断欠勤が●日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき  正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、 ●回にわたって注意を受けても改めなかったとき 就業規則に明記された解雇理由に該当しなければ、解雇されることはありません。しかし逆にいえば、該当したら解雇される可能性があるという点、注意が必要です。 筆者は解雇された経験はありませんが、そうなってしまう一歩手前までいったと感じています。前述の通り、出社するのが怖くなると、「休みます」の連絡さえ難しくなります。その状態がエスカレートすれば、「無断で長期にわたり欠勤をする」ことにつながりかねませんでした。 「自分に合った働き方」を 以上、障害を開示せず一般雇用枠で働くメリットとデメリットを見てきました。それを踏まえて、「発達障害の診断が出ているが、会社に言わないとどうなる?」と気になっている方々へお伝えしたいことをまとめました。 今、一般雇用枠でクローズ就労をしている方へ 今現在、障害を開示せずクローズ就労をしている方、繰り返しになりますが、「障害を伝えずに働くことは可能」です。障害特性による苦手があったとしても、働くにあたって支障がないのであれば、会社・チームにとって頼りになる存在になっているはずです。自信を持って仕事を続けてください。 もし、仕事をやるにあたって困りごとがあり、しんどさを感じているのであれば、それは自分からの大事なシグナルです。無理せず、仕事の負荷を減らしたり、ちょっとお休みをしたりといったアクションをするのをお勧めします。 そんなとき、「本当なら毎日きちんと仕事ができて当たり前なのに、なんて私はダメなんだ」と思ってしまうかもしれません。その必要はありません。自分に合った「仕事のやり方」「対処法」に工夫の余地があるだけだ、と考えてみてください。 ただ、自己対処を尽くしても、どうしても仕事が続けられないということもあるかもしれません。その場合は、休職するなり退職するなりいったん職場から離れて自分に合った働き方を考え直してみるのも、長い目で見ればありです。 一般雇用枠でクローズ就労したいが迷っている方へ 迷っているということは、障害特性が仕事上に影響が出てしまうことを危惧されているのだと思います。そんな方は、いったん特性に配慮してもらいやすい障害者雇用枠でのオープン就労も選択肢の一つです。もちろん、障害者雇用枠は給料などの条件が低めに設定されていることが多いですが、それを差し引いても、「働きやすい職場」「長く働ける職場」での就労をまずは優先しても良いのではないでしょうか。 筆者は、待遇や条件面を理由に一般雇用枠のクローズ就労を選んだところ、前述したとおり1年ちょっとで就労を継続するのが難しくなってしまいました。そういった経験からも、事情が許す限り、まずは障害者雇用枠のオープン就労の検討から始めるのが現実的だと考えます。 とはいえ、給与の高低は見逃せない問題です。そこで、人によってはオープン就労で「働くこと」自体に慣れてきたらクローズ就労への転職を考えてみるといった計画性を持ってキャリアプランを立てるのもありです。 同じ会社で障害者雇用枠から一般雇用枠へ移行することも 冒頭で簡単に触れさせていただきましたが、「障害を開示しつつ一般雇用枠で働く」という選択肢もあります。 筆者は、同じ会社で「障害を開示して、障害者雇用枠のオープン就労で働き始める」→「一般雇用枠のオープン就労へ移行して継続して働く」という経験をしています。もちろん、スムーズに話は進むとは限りませんが、そんな例もあると知っておいても損はないと思います。 その会社は、障害があったとしても働きぶりが一般雇用の方と同等であれば、差は設けていませんでした。また、その会社で働いているあいだ、役職も付いて手当もつき、昇給もありました。 筆者にとってよかったのは、障害者雇用枠で働き始めた際に申し出た配慮事項が、一般雇用枠へ移行した後でもそのまま継続されたことです。筆者の配慮事項は、強い調子で叱責をされると必要以上に自分を責めてしまい頭の中が真っ白になって仕事にならないことから「怒らないで欲しい。改善すべきところがあれば、冷静に『提案』して欲しい」というものでした。 もちろん、どんな配慮事項も一般雇用枠でも受け入れられるとは言えませんが、「怒らない」というのは実行しやすい配慮であることもあり、職場で受け入れられる「円滑に仕事を進めるために業務上必要なこと」と認められたのだと筆者は推測しています。ちなみに、一般雇用枠であったとしても合理的配慮を依頼することができます。ただし、会社との話し合いのうえで「合理的」だと判断されるかどうかによります。詳しく「合理的配慮」について知りたい方は以下のコラムもあわせてお読みください。 余談になりますが、そもそもなぜ障害者雇用枠から一般雇用枠になったのかご説明をしたいと思います。それは筆者の「忘れっぽい」というADHD特性がいかんなく発揮されてしまい、障害者手帳の更新を忘れてしまったからです。意図せず移行してしまいましたが、それでも就労を継続させてくれた会社には感謝しかありません。 自己理解にもとづいた「配慮事項の明確化」「自己対処」が大切 障害者雇用枠/一般雇用枠、オープン/クローズ就労のどの働き方をするにしても、自分に合った働き方を探す上で、自分の特性をしっかり理解し、必要であれば配慮事項を明確に伝えられ、特性に対して自己対処ができて求められる成果をあげられることは、その選択肢を広げるという意味でプラスになります。 筆者は、仕事が膨大であっても精神的に落ち着いて取り組める「タスク管理」というスキルで自己対処ができ、それでも配慮して欲しい点として「怒らないで(強い調子で叱責しないで)欲しい。改善すべきところがあれば、提案という形でお願いしたい」と明確に打ち出すことができました。 しかし、配慮事項を明確にし、自分なりの自己対処法を身に付け、長期的に継続できる自分なりの働き方を探すのは、自分一人でおこなうには難しく、膨大な手間がかかってしまうでしょう。 そんなときは、自分一人で悩んだり、余計に手間をかけたりしてしまうよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が解説】「仕事がうまくいかない」対策と継続のコツ

「仕事がうまくいかない…」を乗り越えるための対策を筆者の実体験をまじえご紹介。対策を立てた後に『継続』するためのコツもお伝えします。

記事を読む
  • #合理的配慮
  • #障害者雇用
  • #クローズ就労
  • #オープン就労
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「仕事がうまくいかない」「同じようなミスを繰り返してしまう」 発達障害の特性がある方にとって、「仕事がうまくいくかどうか」はかなり大きなテーマでしょう。注意欠如・多動性障害(ADHD)の当事者である筆者も、過去に仕事でミスや失敗をして落ち込み、不安感にさいなまれる経験をしてきました。 平成29年に発表された厚生労働省の発表によると、精神障害者の障害者雇用の離職理由について「仕事内容があわない」「作業、能率面で適応できなかった」という項目が上位にきています。また、日本国内の企業の99.7%を占める中小企業のうち、障害者雇用の定着の理由として「作業を遂行する能力」を挙げる企業が一番多いという調査結果も出ています。 参考文献:障害者雇用の現状等|厚生労働省 発達障害特性への対策は世にたくさん発信されています。一方で、発達障害のある方の離職率が劇的に低くなったという話は聞きません。つまり、対策を知ったとしても、それを実際の自分の業務に生かすことが難しいのではないでしょうか。 今回の記事では、発達障害のある方によくある失敗とその対策、そして、対策を継続し習慣化していった筆者の体験談をお伝えします。皆さんが少しでも職場で長く違和感なく働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害当事者によくある失敗 発達障害の特性があると、以下のような失敗をしがちです。それぞれについて、原因と対策を挙げてみます。今回ご紹介をする【原因】は、あくまでも一例です。特性は一人ひとり異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。 ① ケアレスミスが多い 【原因】 一般に、「記憶の抜け漏れ・忘れ」はケアレスミスにつながりやすいと考えられます。発達障害の特性の有無と、「ワーキングメモリ」と呼ばれる作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力の間には関連性があることが指摘されています。 参考文献:「ワーキングメモリと実行機能の発達」|発達心理学研究 2019,第30巻,第4号,173-175 【対策】 ワーキングメモリの働きを自分でコントロールすることはなかなかできません。頭の中だけで覚えておこうとするのではなく、紙のノートやPCのメモ帳に書き出して保存することが、簡単ながら一番効果的な対策です。電話を受けたらメモをする、口頭で指示を受けたらToDoリストに書き出すなど、確実に残る記録としていつでも参照できるようにしておくことが大切です。 ② 納期を守れない 【原因】 発達障害の特性の1つとして、不安が強く心配性であるため、失敗・挫折への恐怖が強いという傾向があり、仕事(やるべきこと)の先延ばしをして納期を破ってしまいがちだとされています。 参考文献:ひきこもり支援者読本 第2章「ひきこもりと発達障害」|内閣府 【対策】 「できないかもしれない」と思ってしまう仕事は「失敗せずやれる」と思えるような細かい作業手順に分解することでその不安や恐怖を取り除きます。すると、とりあえず手を付けることができるようになります。その結果、先延ばしを避けて納期通りにやるべきことを終わらせることができます。 ③ 優先順位を間違える 【原因】 やるべきことが複数あり、そのどれから着手するかを決める、いわゆる「優先順位づけ」についてもまた、発達障害当事者は困難を抱えがちです。それは、目の前の作業に没頭するあまり、全体と部分の把握を適切に切り替えることが難しかったり、先々の展開を想像することが苦手だったりすることが原因といっても良いでしょう。 参考文献:注意欠陥/多動性障害児を対象とした課題解決場面におけるメタ認知を促すための支援方法に関する事例的研究|上越教育大学大学院 【対策】 「手を付けなければいけない順番」の指標として締切を意識します。締切を意識することで、早く終わらせなければいけないのはどれかが分かり、正しく優先順位づけをすることができます。 このように、それぞれ原因を知り対策を講じることで、よくある失敗を事前に避け、仕事の質を上げることができます。しかし、対策を講じたは良いが続かなかった、飽きて途中で辞めてしまったといった経験がある方も多いのではないでしょうか。 そこで、筆者の「挫折してしまった(継続できなかった)経験」と「うまく継続できた経験」を対比して、対策を習慣化するコツをお伝えします。 うまくいかなかった「ToDoリスト」 筆者は「タスク管理ツール」を使うことで仕事のクオリティーを上げて長く安定して働き続ける力をつけました。しかし、最初からうまくいったわけではありません。 はじめての会社で先輩や上司から言われたのが「ToDoリストを作りなさい」というものでした。それまで「自分のやるべきことを書いて管理する」ということを一切してこなかった筆者は、ただ「作りなさい」と言われ、見よう見まねでやらなきゃいけないと思うことをノートに列挙して仕事をするようになりました。 増殖し続けるリスト ToDoリストに自分の仕事を書き出すだけでうまくいく......わけではありませんでした。むしろ書き出せば書き出すほど仕事の悩みは大きくなりました。「書いても消えない」のです。 例えば、ある日に10個の仕事を書き出したとします。そのうち7個くらいこなしたとして、残りの3個の仕事は翌日のページに繰り越されます。翌日新しい仕事がまた10個発生したら、合計13個の仕事がリストに並びます。そんな調子で数日経過すると、書き出す気がなえるほど膨大な数の仕事を毎日リストに書くことになってしまいます。 なにから手を付ければ良いかが分からない また、ToDoリストに書き出した仕事の数々を眺めて、「あれ?これ何から手を付ければいいんだろう?」と手が止まることも頻繁に起こりました。ある仕事について手が止まると、別の仕事に目がいきます。ところが、別の仕事も同じく手が止まる。また別の仕事に目が向く。またどう着手すれば良いかが分からない。その繰り返しで、結局リスト上の仕事を減らすことが難しくなってしまい、リスト上の仕事が増えることに拍車をかけてしまいました。 優先順位が分からない さらに、目の前におびただしい数の仕事があるとどうしても目移りしてしまい、「あれもやらなければ」「これもやらなければ」と混乱してしまいました。その結果、本当なら最優先で取り組むべき仕事を後回しにしてしまったり、逆にすぐにやらなくてもいい仕事をなぜかすぐにやらないといけないと思い込んでしまったりと、優先順位をきちんとつけることができていませんでした。 ToDoリストによる管理が崩壊 そうしたことが重なり、ToDoリストを更新することが面倒くさくなって、仕事の基本である「自分がやるべきことを客観的に把握する」のをやめてしまいました。 なお、当時の筆者は上記のように細かく分析できていたわけではなく、「なぜか仕事がうまくいかない」という大雑把な認識しかありませんでした。したがって、「ToDoリストを使いやすくするように改善していこう」という考えが微塵もなく、ToDoリストを更新する作業が「仕事を邪魔する面倒くさいこと」としてしか認識できなかったのです。 こうして、筆者の「仕事をうまくこなす」ための作戦は完全に挫折して終わりました。 うまくいった「特性対策ツール」 ただやるべきことを列挙しただけのToDoリストだけでは仕事がうまく管理できなかった私に足りなかったもの。それは「ToDoリストを自分用に変えていこう」という考えでした。 ここに、対策を講じた後にやるべきことのヒントがあると筆者は考えています。それは、「実践」「検証」「改善」を繰り返すことです。以前のToDoリストでの失敗を糧にこの3つを繰り返すことで、ただのToDoリストを「自分ならではの特性対策ツール」へ変えることができ、仕事がうまく回るようになりました。 ①まずはToDoリストにやるべきことを書き出す 実は、ToDoリストを使うことには失敗だけでなく、良い部分もありました。それは、「書いたことは忘れない」という安心感です。むしろ、「書いたから安心して忘れることができる」と言っても良いかもしれません。やるべきことをToDoリストに書き出すことにより、少なくとも「覚えたはずなのに忘れる」「抜け漏れが発生する」といったことによるケアレスミスは減らすことができました。 しかし、以前にToDoリストを使ったときは、「書き出すだけ」で終わっていたのです。そのため「議事録の作成」や「企画の立案」といったざっくりした内容の項目が並ぶToDoリストを眺めては、「議事録を作るためには、何からとりかかればいいのだろうか」「どのような手順を踏めば企画書を作成できるのだろうか」と考えてしまい、いつまでたっても着手できずにいました。 ②仕事の手順を付け加える そこで、書き出したToDoリストに「より具体的で分かりやすい作業手順」を付け加えるようにしてみました。例えば「議事録の作成」の場合、まずは「議事録のフォーマットを先輩から手に入れる」ことが必要ですので、これが最初の作業手順となります。これをToDoリストに書き足しておけば、「まず最初に何をすれば良いか」が分かるので、作業に着手しやすくなります。 これにより、手が付けられず無駄に時間が過ぎていくことを予防でき、結果的に先延ばしを回避することができて納期を守りやすくなりました。ただ、いくら「着手しやすい手順」が目の前に並んでいても、「では、どの作業から着手しよう」というところで迷いが生じます。つまり「優先順位の問題」を考えなければならないのです。 ③自分が進めている仕事かどうかを付け加える 優先順位の問題の対策としてまず考えられるのは、「優先順位をつける対象の数を減らす」ことです。誰かが進めているのを待っているだけの仕事は、自分がすぐに手を付けられないので、そもそも「着手すべき仕事」の優先度を判断する対象から外すことができます。 さらに、「自分が進めている仕事」と、「誰かが進めていて自分はそれが終わるのを待っているだけの仕事」を区別できるように、ToDoリストに「自分」「相手」などと付け加えました。その結果、優先順位をつける対象を絞り込むことができ、どの作業から手を付けたらいいのかが分かりやすくなりました。 ただし、優先順位をつける対象をある程度絞り込めたとしても、最終的にはその中から「今、自分が進めるべき仕事」をどれか1つ選ばなければなりません。その選択基準がなければ、結局、優先順位がつけられていないのと同じことになってしまいます。 ④手順の締切を付け加える そこで、「今、自分が進めるべき仕事」を1つ選びやすくするために、その手順の締切を付け加えました。締切の日付があれば、「これは早めにやっておいた方が良さそうだ」「これは締切が随分あとだから、まだ寝かせていても大丈夫」ということが分かるので、「今、自分が進めるべき仕事」を選びやすくなります。 このようにして、「ケアレスミス」「納期を守れない」「優先順位がつけられない・間違える」という困りごとへの対策を、自分のものにすることができました。また、実践→検証→改善というサイクルを繰り返すことによる「手間暇かけた感」が、この特性対策ツールへの愛着を湧かせ、この仕事の管理方法を継続させる土台となりました。 対策を継続させるための仕組み ここまででも十分に仕事で活用できる管理ツールにはなったのですが、さらに継続させるための仕組みとして、「適切に自分に報酬を与える」ようにしました。 国立精神・神経医療研究センターの研究によると、ADHDのある方には「後で手に入る高額の報酬よりも、すぐに手に入る少額の報酬を選ぶ傾向がある」と言われています。 参考文献:報酬はヒトの行動抑制機能を高めるか?神経心理学的アプローチによる報酬効果の検討と展望|日本生理人類学会誌 Vol.27,  No.2  2022, 5 38 - 45 ここでいう「報酬」とは、仕事が進んだり、完了できたりすることによる「満足感」と考えていただければと思います。ADHDである筆者も例に漏れず、大きなプロジェクトを終わらせたときの満足感のような「後で手に入る高額の報酬」までは待てません。そこで、「すぐに手に入る少額の報酬」を自分で設定するようにしたのです。 完了数の表示 今までご説明した「特性対策ツール」を、私はExcelで作っています。そのExcel上で、「完了した仕事の数」を表示させるようにしました。ロールプレイングゲームでは、経験値が一定数たまるとレベルが上がります。現実の世界では数字がたまっても何も変わらないのですが、Excel上の数値が上がるだけでも「やった!」と満足感を覚えます。仕事を1つ1つ終わらせるごとに「仕事の経験値をためる」という感覚を自分に起こさせるようにしたのです。 毎日の仕事の発生数/完了数の表示 Excel上でその日発生した仕事の数と、完了させた仕事の数とを比較できるようにしました。例えば、ある日仕事が5つ発生して、4つ完了させていたとします。その時点で「1負け」です。そこで、なんとかすぐに完了できる仕事がないか探します。運よくすぐに終わる仕事が見つかると「引き分け」になります。さらにもう1つ仕事が完了できたら「1勝ち」となります。 「発生数/完了数の勝ち負け」の仕組みは最初はお遊び程度だったのですが、これもロールプレイングゲームのような満足感を味わうことができ、仕事を進めるよい燃料になりました。 仕事が画面から消える これはもう筆者の個人的な趣味のような領域になってしまうのですが、完了させた仕事は記録には残るものの、Excelの画面上では見えなくするようにしました。Excelの「フィルタ機能」を使うとことで、完了させたToDoがスッと消える(正確には、画面から見えなくなる)のです。 この瞬間がたまらなく好きになり、この消える際の「スッ」というExcel上の動きを見るだけで一種の快感のようなものを覚えるようになりました。 まずは自己理解から 以上、筆者の失敗事例とうまくいった事例から、「実践」→「検証」→「改善」というサイクルを回すことでより自分に合ったやり方を見つけることで継続できることをお伝えしました。 ただ、筆者とまったく同じことをしましょうと言うつもりはまったくありません。この事例からお伝えしたいことは、「実践・検証・改善を繰り返すことでより習慣化しやすくなる」「改善には、自己理解が助けになる」ということです。 特に、自己理解を深めておくことが大事だと筆者は考えています。抜け漏れしやすかったり、先延ばしぐせがあったり、優先順位がつけにくかったりする特性を認識していないと、そもそも対策を立てること自体ができないからです。 自己の障害特性を理解し、仮説レベルでもいいので対策を立てて実践し、その結果を検証し、自分の特性に照らして「特性のある自分でも対応できそうな」改善策を付け加え、それを実践して......という繰り返しをすることが、発達障害の特性を持つ私たちがより生きやすくなる道だと筆者は考えます。 ただ、正直なことをお話すると、何から何まで自分でやろうとするのは、とても時間と手間がかかります。筆者自身も特性を把握するまでには数年の時間がかかりました。今、この記事をお読みの方は「そこまで時間と手間をかけていられない」とお考えだと思います。 そんなときには、自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 編集担当 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
卒業生インタビュー「就労移行支援を利用して良かったことは?」

ディーキャリア卒業生に「実際に就労移行支援を利用してみて良かったこと」をうかがいました。今の社会人生活に役立っていることなど、リアルな体験談をお伝えします。

記事を読む
  • #就労移行支援事業所
  • #障害者雇用
  • #オープン就労
ディーキャリアの卒業生の方に、「就労移行支援(ディーキャリア)を利用して良かったこと・メリット」についてインタビューをおこないました。 今回インタビューに応じてくださったNさんは、4年前にディーキャリアをご卒業、現在は障害者雇用枠で事務のお仕事をされています。そんなNさんに、ディーキャリアで学んだこと・身につけたことで、実際に社会人生活で役立っているものがあるかについて聞いてみました。 インタビューの前半では、就労移行支援を利用したきっかけについてお伺いしました。 【こんなお悩み・疑問のある方にオススメ】□ 就職を目指しているものの、うまくいかない□ 発達障害の特性があり、働くことに自信がない□ 就労移行支援(ディーキャリア)で身につくスキルを知りたい□ 就労移行支援(ディーキャリア)で解決できる悩みを知りたい 就労移行支援に興味はあるものの、利用すべきか悩んでいる方に、お役立ていただける情報満載です。 ぜひ、最後までお読みください。 参考記事本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 [toc] インタビューにこたえてくれた方Nさん ■所属オフィス:ディーキャリア柏オフィス(卒業)■在籍期間:2018年6月~2019年10月■診断名:ASD(自閉症スペクトラム障害)■障害による特徴(特性):・耳から入る情報の処理が苦手 (口頭での指示などが聞き取れない、聞き洩らしがある等)・複数の指示を同時にされると混乱してしまうことがある・過集中(過剰に集中しすぎる)がある・感覚過敏があり、周りの音が気になって集中できないことがある・約束や納期を忘れてしまうことがある■現在のお仕事:障害者雇用枠で人材派遣会社での事務職として勤務。現在は求人情報のデータ入力、Wチェックを担当。 Q.就労移行支援事業所をどのように知りましたか? 精神障害の診療で通っていたクリニックの先生に「就労移行支援」を勧められたのがきっかけです。就職について相談したかったことと、自分の障害特性への理解を深めたいと考えたことから、利用を検討しはじめました。 Q.次の就職に向けて、検討していたサービスはありましたか? 就労移行支援事業所以外は、とくににありませんでした。就労移行支援事業所は、ディーキャリアを含めて2~3か所、見学や体験に行きました。 Q. 就労移行支援事業所の利用を決めた理由について教えてください。 ■就職に関する相談ができる まず、就職についての相談をしたかったことが理由です。前職はクローズ就労(障害を開示しない勤務形態)だったのですが、次は障害者雇用枠にするのか、どんな仕事が向いているのか・向いていないのかについて相談したいと考えていました。「障害者雇用」に興味はあったものの、当時は不安のほうが大きかったので、実態などを聞いてみたかったですね。 ■障害特性の理解を深められる 自分の障害特性の理解を深めたいと考えていたことも大きな理由です。前職の仕事で失敗をした経験があったので、次の仕事では同じ過ちをしないように対策をしたいと考えていました。 Q.前職での困りごとを詳しく教えてください。 前職はシステムエンジニアの仕事をしていました。口頭での指示が苦手で、聞き洩らしをしまったり、同時にいくつもの指示がくると混乱してしまって、ミスをしてしまったりすることがありました。例えば、指示をされた仕事が10個あるとしたら、8個は覚えていられるのですが、2つ抜けてしまうという…。業務の抜け漏れによる失敗を何度も繰り返してしまって、3年ほどで退職しました。お客様先での常駐勤務であったことから、相談できる相手がいなかったことも退職理由です。 Q.ディーキャリアの利用を決めた理由について教えてください。 ディーキャリアのプログラムは、3つのステップになっていて、段階的に学んでいけるのですが、それが自分に合っていると思いました。見学にいったときのスタッフや利用者の方の様子も決め手のひとつです。相談や質問がしやすい雰囲気で、安心することができました。 Q.実際に「就労移行支援」や「ディーキャリア」を利用して良かったこと(メリット)について教えてください。 ■障害特性への理解を深めることができた 自分の障害特性の理解を深めることができたことです。診断がでたときにクリニックでも説明を受けていたので、自分の特性は「なんとなく」は理解していたのですが、自分の仕事上のミスがどの特性によって起こっているかは分かっていませんでした。実際にどの特性が仕事に影響しているかを明確にすることができました。 ■自分と同じ悩みのある人と交流ができた 自分と同じ障害のある利用者の方と一緒にプログラムに参加できたのも、良い経験でした。ライフスキルコースでは、座学形式で他の利用者の方とプログラムを受け、チームに分かれて共有をする機会があるのですが、他の方の意見を聞くことができたことが良かったです。例えば「ストレスコーピング」といってストレスの解消方法を学ぶプログラムでは、自分もやってみたいと思える対策を知ることができました。 ■就職活動のサポートを受けることができた 障害者雇用枠での就職活動をサポートしてもらえたことも、ありがたかったです。履歴書や職務経歴書だけではなく、ナビゲーションブックという自分の障害を説明する資料の添削をしてくれました。面接の練習もよかったです。自分の障害についてうまく伝えることに自信がなかったので、助かりました。ディーキャリアの利用前は、障害者雇用枠と一般雇用枠どちらで働くか悩んでいたのですが、スタッフの方と話し合ったり、いろんな会社の説明会に参加したりしたうえで、障害者雇用枠で就職することに決めました。障害への配慮や相談しやすい環境を重視したかったからです。気軽にいろんなことを相談できたので、とても助かりました。 ■通所へのモチベーションを保つことができた 毎週土曜日のイベントも気に入っていました。平日は真面目な雰囲気でプログラムを受けるのですが、土曜日はヨガやカードゲームなどのイベントに参加することができます。他の利用者の方と交流ができて、リフレッシュすることができたので、来週も頑張ろうとモチベーションを保つことができました。 Q.ディーキャリアで学んだことで、今の社会人生活で役立っていることについて教えてください。 ■障害特性による困りごとへの対処法 自分の障害特性への理解を深めて、どのようにすれば苦手なことに対処できるかを学んだのですが、今の仕事でも役立っています。 【現在の勤め先での合理的配慮と自己対処】 ・耳から入る情報の処理が苦手 ⇒業務指示や説明は「書面(チャットやメール等)」でおこなってもらう ・複数の指示を同時にされると混乱してしまうことがある ⇒タスクを一つずつ説明してもらう、メモを取る時間をもらう ・過集中(過剰に集中しすぎる)がある ⇒スマホアプリを活用し、適宜休憩をとるためにアラームを設定している ・約束や納期を忘れてしまうことがある ⇒カレンダーのアプリを活用し、アラームが鳴るように設定している このような対策をすることによって、以前感じていた働きづらさや、前職と同じようなミスが起こりづらくなりました。 ■コミュニケーションスキル ディーキャリアを利用する前は、コミュニケーションに苦手意識はなかったのですが、利用をする中で課題に気づいて、対策を学ぶことができました。例えば、「人の話を遮って話し始めてしまう」という癖があることです。相手の立場になって、会話をする方法を学びました。以前から仕事の話などはできたものの、自分から話題を振ることが少なかったのですが、日々の訓練の中でコミュニケーションを通じて、雑談がしやすくなりました。 Q.就労移行支援事業所を利用するか迷っている当事者の方に、何かアドバイスがあればお願いいたします。 発達障害のある方は、自分の特性について知ることがとても大切だと考えています。自分にどのような特性があるかを知って、どのように具体的に対策をすればよいかを知ることで、働きやすくなると思います。働くことに不安がある方は、まずは相談してみるのがおすすめです。 Q.最後に、ディーキャリアの利用満足度を10点評価してください。その理由も教えてください。 10点です。プログラムがとてもためになりました。例えば、「リフレーミング」というプログラムでは、自分自身のとらえ方を変えるだけで気分が楽になることを学びました。自分らしく就職が目指せたことも、高評価の理由です。無理して就職をするのではなく、体調を優先しつつ、自分のペースで進めることができました。障害者雇用枠での就職を決めることができたのも、ディーキャリアで、自分に合っている働き方を知れたことが理由です。 担当スタッフよりコメント 就労移行支援事業所ディーキャリアに通うメリットは、「仕事スキル」だけでなく、「社会スキル」を身につけられることだと考えています。働くうえでは、もちろん実務に必要な技術や知識も必要ですが、社会生活の中では、人との関わり方やストレスケアを身につけることも非常に重要です。 今回のNさんのインタビューでもあったように、発達障害の特性によって「働きづらさ」を感じている方は、特性の理解を深めることも必要です。 ディーキャリアでは、3つのコースを用意しており、それぞれ、①自分の発達障害の特性を知り、②自分の特性に応じた対策を実践・検証し、③自分に合った就職先を探す、ことを目的にしています。 特性による「働きづらさ」を感じている方、「働くこと」に自信がない方は、お気軽にご相談ください! ディーキャリア柏オフィス オフィス詳細▶問い合わせフォーム▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアについて 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスのひとつです。(厚生労働省の許認可事業)ディーキャリアでは、発達障害の特性による働きづらさをフォローするプログラムと自分の価値観や適職を見極めるカリキュラムで、「やりがいを感じられる仕事探し」×「あなたらしい働き方探し」を目指す支援を提供しています。 全国のディーキャリアで、無料相談・体験会を随時開催しています。障害特性による「生きづらさ」「働きづらさ」を感じている方は、お気軽にご相談ください。 お近くのディーキャリアを探したい方は こちら▶ディーキャリアを詳しく知りたい方は こちら▶ ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 全国共通お問い合わせフリーダイヤル(0120-802-146)はこちら▶お問い合わせフォームはこちら▶