どんなサービスなのかを詳しくご説明しております。
発達障害のある方が職場でパニックになる原因と仕事中の対策

「仕事中に急に頭が真っ白になり、何をすればいいか分からなくなる」
「職場でパニック症状が出てしまうことがあり、このまま働き続けられるのか不安」
そんな悩みを抱えていませんか。
発達障害のある方の中には、職場で強いストレスがかかったときに、涙が止まらなくなる、固まって動けなくなる、怒りや不安が抑えられなくなる、呼吸が苦しくなる、頭が真っ白になるといった、いわゆるパニック状態になる方がいます。
この記事では、その原因と対処法をご紹介します。今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。
\ この記事で分かること /
- 発達障害のパニックとは:医学的な「パニック発作」に近い状態や、発達障害の特性・強いストレスによって起こる「メルトダウン」「フリーズ」に近い状態がある。
- パニックの原因:ASDやADHDの特性がある人にとって負荷になりやすい急な変更、感覚刺激、マルチタスク、過去のつらい経験などが関係する。
- 仕事中のパニック対策:安全な場所への移動や、状況を伝える短い定型文の用意などによって、落ち着く時間を確保する。
- パニックの予防策:トリガーの記録、予定・指示・優先順位の見える化、必要な合理的配慮の相談が役立つ。
\ 執筆者紹介/

小鳥遊(たかなし)さん
発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。
発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。
また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。
発達障害のある方が職場で直面しがちな「パニック」とは

日常会話で使われる「パニック」からは、以下のような状態が想像されるのではないでしょうか。
- 急に不安が強くなる
- 呼吸が苦しくなる
- 頭が真っ白になる
- 涙が止まらなくなる
- 怒りや焦りが抑えられなくなる
- 体が固まり言葉が出なくなる
- 指示を聞いても理解できなくなる
本記事では、職場で強い不安や混乱が生じ、普段どおりに考えたり行動したりすることが難しくなる状態を、総称して「パニック」と表現します。
その中には、医学的な意味での「パニック発作」に近い状態もあれば、発達障害の特性や強いストレスによって起こる「メルトダウン」や「フリーズ」に近い状態もあります。
パニック発作
パニック発作とは、突然強い不安や恐怖に襲われ、動悸、息苦しさ、めまい、震えなどの身体症状が表れる状態です。こうしたパニック発作が繰り返され、生活や仕事に支障が出ている場合、パニック障害と診断されることがあります。
メルトダウン
メルトダウンは、強いストレスや感覚刺激に圧倒され、一時的に行動のコントロールが難しくなる状態を説明する言葉として使われます。英国の自閉症支援団体であるNational Autistic Societyも、メルトダウンを「圧倒される状況への強い反応」と説明しています。
職場では、涙が止まらなくなる、怒りが爆発する、大きな声を出してしまう、その場から逃げ出したくなる、周囲の言葉が入ってこなくなる、といった形で表れることがあります。
フリーズ
強いストレスや混乱によって、動けなくなる、話せなくなる、考えられなくなる状態をフリーズといいます。頭が真っ白になる、返事ができない、体が固まる、パソコンの前で止まってしまう、といった形で表れることがあります。
外から見ると、「黙っている」「ぼーっとしている」「やる気がない」と見えるかもしれません。しかし本人の内側では、強い緊張や混乱が起きていることがあります。
パニック発作、メルトダウン、フリーズのいずれも、本人にとっては非常につらい状態です。職場で繰り返し起こると、休職や退職につながることもあります。だからこそ、自分に何が起こっているのかを整理し、対策を考えることが大切です。
発達障害のある方が職場でパニックになりやすい原因

発達障害のある方が職場でパニックになりやすい背景には、本人の性格だけではなく、特性と環境のミスマッチ、体調、業務量、人間関係など、複数の要因が関わっていることがあります。
ASDやADHDの特性がある方にとっては、こうした負荷が積み重なることで、パニックにつながることがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)のある方に見られやすい原因
ASDのある方は、見通しの立たなさ、急な変更、感覚刺激、人間関係のあいまいさなどによって強いストレスを感じることがあります。
CDC(米国疾病予防管理センター)は、ASDの特徴として以下のような反応があるとしています。
- 小さな変化に強く動揺する
- 特定のルーティンを必要とする
- 音・におい・味・見た目・触感などへの通常とは異なる反応
たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。
- 今日やる予定だった仕事が急に変わる
- 予定になかった来客対応を頼まれる
- 作業途中で別の仕事を割り込まれる
- 電話の音や周囲の会話がつらい
- 照明やにおいなどの刺激がつらい
- 「いい感じに」「なるべく早めに」など、あいまいな指示を受ける
周囲から見ると、よくある予定変更や指示に見えるかもしれません。しかし本人にとっては、頭の中で組み立てていた段取りが崩れたり、判断材料が足りないまま作業を求められたりするため、大きな混乱につながることがあります。
また、過去に強く叱責された経験や、職場でつらい思いをした経験がある場合、似た場面でその記憶がよみがえり、強い不安や緊張につながることもあります。いわゆる「フラッシュバック」のように感じられることもあります。
ADHD(注意欠如・多動症)のある方に見られやすい原因
ADHDのある方の場合、以下のような特性によって、仕事中の負荷や混乱が高まりやすくなることがあります。
- 注意の切り替えが難しい
- 優先順位づけが苦手
- 指示を覚えておくことが難しい
- 感情のコントロールが難しい
特に職場で見られがちなこととして、NIMH(米国国立精神衛生研究所)は、以下についての困りごとを挙げています。
- 整理
- 仕事の継続
- 日々のタスクの遂行
- 大きなプロジェクトの完了
- マルチタスク
たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。
- 複数の仕事が同時に発生し、どれから手をつければよいか分からない
- 口頭指示の一部を聞き漏らす
- 席に戻ると、何を頼まれたか分からなくなる
- 注意されたときに強く落ち込む
- 焦りが強くなり、落ち着いて考えられない
筆者にも、「焦り」によって確認が漏れてしまった経験があります。社用車のリースに関する手続きで、急いで書類を送る必要があった際、レターパックに入れて送付したところ、誤って全く関係のない自分のノートを送ってしまったのです。今振り返ると、焦りで頭の中がいっぱいになり、「何を入れたか」を確認する余裕がなくなっていたのだと思います。このように、焦りが強くなると、普段なら当然できる確認作業が抜け落ちてしまうことがあります。
職場でパニックが起こったときの対処法・仕事中の対策

職場でパニックが起こったときに大切なのは、「その場で完璧に立て直そう」としないことです。
パニック状態のときは、普段できる判断や会話が難しくなっています。まずは安全を確保し、刺激を減らし、落ち着くための時間を取りましょう。
いったんその場から物理的に離れる
可能であれば、刺激の多い場所から離れましょう。空いている会議室、休憩室、廊下、トイレ、建物の外、人の少ないスペースなどに移動できるとよいでしょう。このように、混乱が強くなったときに一時的にその場を離れ、落ち着く時間を取る方法は「タイムアウト法」と呼ばれることもあります。
職場で使える言い方としては、次のようなものがあります。
- 「少し席を外します」
- 「体調が悪いので、5分だけ休憩します」
- 「落ち着いてから戻ります」
事前に職場と相談できる場合は、「パニックになりそうなときに一時的に離席してよいか」「どこでクールダウンしてよいか」を決めておくと安心です。
短い定型文を用意しておく
パニック状態になると、言葉を考えること自体が難しくなります。あらかじめ職場で使う定型文を用意しておくと安心です。
- 「少し混乱しているため、5分ほど休憩します」
- 「今すぐ返答が難しいため、落ち着いてから確認します」
- 「指示をメモでいただけると助かります」
- 「優先順位を確認させてください」
筆者は、判断に迷って混乱しそうなとき、使うようにしている言い回しがあります。それは、「迷っているんですが~」「困っているんですけど~」で話し始めるというものです。先に、自分の状況を端的に伝えることで、相手にも「ああ、迷っているんだな」「困っているんだな」と伝わりやすくなります。また、自分自身も「迷っている」「困っている」と口に出すことで、状況を少し客観視しやすくなります。
職場でのパニックは「起こる前」の対策が重要

職場でのパニック対策では、起こったあとの対応も大切ですが、それ以上に重要なのは、パニックが起こりにくい環境を作ることです。そのためには、パニックが起こった場面を以下のように記録し、そのきっかけになる刺激(トリガー)を知ることが大事です。
- いつ起こったか
- 何をしていたか
- 直前に何があったか
- どんな症状が出たか
- 何をしたら少し楽になったか
- 周囲にどう対応してもらえるとよかったか
すべての項目を埋める必要はありません。たとえば、会議中に急に発言を求められて頭が真っ白になった場合は、「会議中」「発言を求められた」「何も言葉が出てこなかった」といった具合です。
その場合、「人前で突然答えること」がトリガーになっている可能性があります。そこから、会議前に議題を共有してもらう、その場で答えられない場合はあとで回答してよいことにする、といった対策を考えられます。
また、こういったときは気持ちが落ち込み、自分を責めてしまいがちです。それを避けるためには、パニックになった事実は認めつつ、「だったら、今後どうすれば良いか」という対策の材料とする視点があると良いです。
「できなかったことを責める」のではなく、「次の対策を作るための記録」として扱いましょう。そう考えることで、「この経験が次に活きる」と前向きにとらえやすくなります。仕事をよりスムーズに進めるうえでも、自分の気持ちを落ち着けるうえでも、とてもおすすめです。
職場でできる予防策

ASDのある方の場合は、特に以下のポイントがパニックの予防につながります。
- 見通しを持てること
- 刺激を減らすこと
- あいまいさを減らすこと
たとえば、次のような工夫があります。
- 前日に翌日の予定を共有してもらう
- 急な変更は早めに知らせてもらう
- 急ぎの依頼は、締切と優先順位をセットで伝えてもらう
- 依頼内容を口頭だけでなく、チャットやメモでも共有してもらう
- 耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使う
- 静かな場所で休憩できるようにする
ADHDのある方の場合は、以下のポイントがパニックの予防につながります。
- 頭の中だけで抱えないこと
- 優先順位を見える化すること
- 指示を記録に残すこと
たとえば、次のような工夫があります。
- やることを一か所に書き出す
- 仕事で使うもの(書類やファイル等)の置き場を決める
- 上司に優先順位を確認する
- 口頭指示をメモやチャットに残す
- 作業手順をチェックリスト化する
- 締切が重なる場合は、どちらを先にするか相談する
とはいえ、「わざわざ書き出すのが面倒」「今すぐやってしまった方が早い」と感じることもあるでしょう。筆者は、最初から完璧に書き出そうとしなくてもよいと考えています。ただ、その後も続く業務であれば、ひと区切りついたあとに、あらためて今やったことを書き出しておくと、次回以降、より安全・確実に進めやすくなります。
職場に相談・依頼できる合理的配慮

発達障害のある方が職場でパニックを防ぐためには、自分だけで対策するのではなく、職場に合理的配慮を相談・依頼することも大切です。
合理的配慮とは、障害のある人が社会の中にあるバリアによって困らないよう、事業者側が負担が重すぎない範囲でおこなう対応のことです。
内閣府は、令和3年の障害者差別解消法改正により、令和6年4月1日から事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたと説明しています。
なお、雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主は過重な負担にならない範囲で障害者に合理的配慮を提供することが義務付けられています。
たとえば、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の合理的配慮事例では、業務の優先順位や目標を明確にする、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する、といった対応が紹介されています。
職場で依頼できる合理的配慮には、次のようなものがあります。
- 口頭だけでなく文字でも指示をもらう
- 締切や優先順位を明確にしてもらう
- 急な変更は早めに知らせてもらう
- 静かな席に変更してもらう
- 耳栓やイヤホンの使用を認めてもらう
- クールダウンできる場所を決めておく
- パニックになりそうなときは離席を認めてもらう
- 復帰後に業務の優先順位を再確認する
合理的配慮を依頼するときは、「配慮してください」だけではなく、具体的に伝えることが大切です。
「急な予定変更があると混乱しやすいため、変更が分かった時点でチャットで知らせていただけると助かります」
「口頭指示だけだと聞き漏れが起こることがあるため、重要な指示はメモやチャットでも共有していただけると、正確に対応しやすくなります」
このように、困りごと、仕事への影響、必要な配慮をセットで伝えると、職場側も対応を検討しやすくなります。
合理的配慮について詳しく知りたい方は以下のコラムもあわせてお読みください。
受診や専門家への相談が必要な場合

職場でのパニックが繰り返し起こる場合や、動悸、息苦しさ、強い恐怖感、外出への不安などがある場合は、医療機関への相談も検討しましょう。
特に、パニックの頻度が増えている、通勤や出社が怖くなっている、職場に行こうとすると体調が悪くなる、発作のような症状が繰り返し起こる、休んでも回復しない、眠れない状態が続いている、といった場合は、早めに相談することをおすすめします。
職場での工夫だけでは十分でないこともあります。主治医、精神科、心療内科、カウンセラー、支援機関などに相談し、自分に合った支援を受けることが大切です。
職場でのパニックは「自分を責める」より「対策を作る」

発達障害のある方が職場でパニックになる背景には、ASDやADHDの特性、職場環境、業務量、人間関係、過去の経験など、さまざまな要因があります。
パニック発作のように、強い不安や身体症状が起こる場合もあります。メルトダウンやフリーズのように、感情や行動のコントロールが難しくなったり、頭が真っ白になって動けなくなったりする場合もあります。
いずれの場合も、「本人の努力不足」と決めつけるのではなく、原因と対策を整理することが大切です。
- パニックが起こったら、いったん安全な場所に移動する
- 落ち着くための定型文を用意しておく
- 自分のトリガーを記録する
- 急な予定変更やあいまいな指示への対策を作る
- 口頭指示を文字に残してもらう
- 優先順位を上司と確認する
- 感覚刺激を減らす
- 必要な合理的配慮を職場に依頼する
- 医療や支援機関にも相談する
パニックは、気合いや根性だけで防ぐものではありません。自分の特性を理解し、自分に合った対処法を持ち、必要に応じて職場に配慮を依頼することで、働きやすさは少しずつ整えていくことができます。
そのためには、自分の特性やトリガーを知る「自己理解」、パニックが起こりそうなときに自分を落ち着ける「自己対処・ストレスコーピング」、そして必要な配慮を職場に伝えることが大切です。
一人で悩まず、サポートを受けるのも選択肢のひとつ

とはいえ、自分一人だけで、自己理解を深めたり、自分に合った対策を見つけたりすることにハードルの高さを感じる方も多いと思います。そんなときに頼れる相談先のひとつに「就労移行支援」があります。
就労移行支援事業所ディーキャリアでは、一人ひとりの特性理解を深め、発達障害による「働きづらさ」との付き合い方を学ぶプログラムを用意しています。
パニックの原因や対策を知るだけでなく、リアルな職場を想定した環境で、パニックの予防策やパニックが起こったときの対処法を実践することができます。
さらに、自分に必要な配慮事項を見つけ、就職先にサポートを依頼するためのフォローもおこないます。
就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業)
就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。
「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。
ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。
お電話(0120-802-146)はこちら▶
お問い合わせフォームはこちら▶
また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。
全国オフィス一覧はこちら▶
就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
- 一般社団法人ファボラボ 代表理事
- 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会 評議員
- 公認心理師
- NESTA認定キッズコーディネーショントレーナー
- 発達障害ラーニングサポーター エキスパート
- 中学校教諭 専修免許状(社会科)
- 高等学校教諭 専修免許状(地理歴史科)
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。



