発達障害・精神疾患のセルフケア|マインドフルネスの効果と実践法

「頭の中がごちゃごちゃして、目の前のことに集中できない」
「嫌なことや失敗したことを、何度も繰り返し思い出してしまう」
「マインドフルネスを試したけれど、続かなかった・合わないと感じた」

ADHDやASDの特性による困りごと、メンタル不調やストレスへの対処法を探していませんか。

マインドフルネスは、発達障害や精神疾患に伴うストレス、ADHDの注意の散りやすさ、ASDの反すう思考などへの対策として広く活用されているセルフケアの一つです。

一方で、「スピリチュアルなものではないか」「頭を空っぽにできない」「自分の特性・性格には合わない」と感じる方は少なくありません。また、心身の状態によっては、無理に取り組むことで、かえってストレスが強まることや状況が悪化するリスクがあるため、注意が必要です。

この記事では、マインドフルネスの意味や、発達障害・精神疾患のある方に期待される効果、うまくいかないときの対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。

\ この記事で分かること /

  • マインドフルネスは、今の自分の状態に気づくためのトレーニング
  • 発達障害や精神疾患の困りごとへのセルフケアとして役立つ可能性がある
  • ADHDやASDの特性に合わせて、やり方を変えてよい
  • 強い不安やフラッシュバックが起きた場合は、無理に続けないことが大切

\ 執筆者紹介/

小鳥遊(たかなし)さん

発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。

発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。

また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。

発達障害や精神疾患のセルフケアにマインドフルネスは有効?

マインドフルネスは、発達障害や精神疾患の症状そのものを治す方法ではありません。医療機関での治療や服薬、環境調整に代わるものでもありません。

一方で、次のような困りごとへの自己対処やセルフケアとして役立つ可能性があります。

  • 頭の中がごちゃごちゃする
  • 嫌な出来事や過去の失敗を繰り返し思い出す
  • 不安や焦りを感じやすく、気持ちを切り替えにくい
  • 感情のコントロールが効かず衝動的に反応する
  • 疲労や緊張に気づかず無理をしてしまう

マインドフルネスでは、考えや感情を消そうとするのではなく、

「今、自分は焦っている」
「失敗した場面をまた思い出している」
「肩に力が入りすぎている」

と、自分の状態に気づくことを大切にします。早めに自分の変化へ気づくことができれば、休憩する、仕事量を減らす、人に相談するなどの対処につなげやすくなります。

マインドフルネスは、簡単にいうと、過去の出来事や未来への不安などにとらわれすぎず、「今この瞬間」に意識を向けることです。

ADHD等の発達障害がある方の場合、仕事を進めるうえでも「あれもやらなければ」「これも忘れてはいけない」と頭の中にたくさんのやることが浮かんでしまい、優先順位やスケジュール管理が苦手という方がいらっしゃいます。
そのような苦手がある方のタスク管理のコツとして、「やること」を一覧にして書き出すというものがあります。書き出すことで、余計なことにとらわれすぎず、いま目の前にあることに意識を向けやすくなるからです。

マインドフルネスのやり方について調べてみると、このタスク管理のコツと共通する考え方であると気づきました。「頭に浮かぶ考えにとらわれすぎず、目の前のことに意識を戻す」という点です。

発達障害当事者である筆者も、週に1~2回程度、椅子に座って目を閉じ、3分ほどマインドフルネスを実践しています。仕事を始める前や終えた後に行うと、気持ちを切り替えやすくなる感覚があります。

そもそもマインドフルネスとは?

マインドフルネスとは、「今この瞬間」に起きていることへ注意を向け、良い・悪いとすぐに判断せず観察することです。米国心理学会(American Psychological Association:APA)の心理学辞典では、マインドフルネスを、自分の内的な状態と周囲の環境への気づきとして説明しています。

たとえば、仕事でミスをして、「また失敗した。自分は何をやっても駄目だ」という考えが浮かんだとします。マインドフルネスでは、この考えを打ち消すのではなく、「今、自分は『何をやっても駄目だ』と考えている」という自分の状態を客観的に見る、ということをやっていきます。

考えを事実と決めつけず、自分のことを少し離れて観察することで、感情に巻き込まれたまま反応する前に、次の行動を選びやすくします。

マインドフルネスは「無になること」ではない

マインドフルネスは、頭を空っぽにしたり、雑念を完全になくしたりする練習ではありません。仕事の予定や過去の失敗が浮かんでも、それ自体は失敗ではありません。まず、「別のことを考えていた」と気づけるようになることが第一歩です。

英国の国民保健サービス(National Health Service:NHS)も、マインドフルネスは思考をなくすことではなく、思考を心の中に生じる出来事として捉える方法だと説明しています。

スピリチュアルなものではないの?

瞑想には、宗教的な伝統を背景にしたものもあります。そのため、マインドフルネスにスピリチュアルな印象を持つ方もいるでしょう。

一方、医療や心理支援では、宗教的な信念を必要としない、マインドフルネスストレス低減法やマインドフルネス認知療法などが活用されています。

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)によると、マインドフルネスについては、脳の働きや構造との関連も研究されています。研究結果の解釈は難しく、実生活上どのような意味を持つのかはまだ明確ではありませんが、単なる精神論ではなく、脳活動との関係も含めて科学的な研究が進められています。

マインドフルネスはどんな人におすすめ?発達障害の特性別に解説

ADHD:注意の散りやすさや自分の衝動に気づく

ADHDのある方は、集中力を継続できず、頭の中に複数の考えが次々と浮かんだり、目の前の作業から注意がそれたりすることがあります。また、行動や感情のコントロールができなくなる(例:やってはいけないことをしたい!欲しいものを買わずにいられない!等の衝動にかられる)こともあります。

マインドフルネスでは、注意がまったくそれない状態を目指すのではなく、

「今、別のことを考えていた」
「焦って、すぐに返信しようとしている」
「集中が切れてきた」

と気づく練習をします。

マインドフルネスによってADHDの症状が改善されたという報告があります。一方で、標準的な治療に代わるほど十分な根拠が確立しているわけではありません。治療の代わりではなく、困りごとへの対処を補助する方法と考えましょう。

筆者も、目の前の仕事に集中したいのに、「そういえば、これとあれもやらなければ」と別の用事が頭に次々と浮かぶことがあります。そんなとき、「今は考えないようにしよう」と無理に追い出そうとするのではなく、いったんメモやタスクリストに書き出します。書いておけば、忘れないように頭の中で覚えておく必要がなくなるので、安心して目の前の仕事に戻ることができます。

これはADHD特性のある筆者自身が実践しているタスク管理の方法の一つですが、「別のことに意識が向いている自分に気づき、それをいったん脇に置いて、今やっていることへ戻る」という点で、マインドフルネスの観点と通じるところがあるように思います。

ASD:反すう思考と距離を取る

ASDのある方は、嫌なことや過去の失敗、人との会話等を何度も思い返す「反すう(反芻)思考」に陥りやすいといわれています。
反すう思考は、発達障害のある方が「不安を感じやすい」と言われる原因のひとつで、ネガティブな出来事や感情が頭から離れず、何度も同じことを繰り返し考えてしまう状況を指します。

なお、「不安な気持ちの原因」と「反すう思考」について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

マインドフルネスでは、

「また、あのときの会話を考えている」
「今、胸のあたりが苦しい」

と、反すう思考やそれに伴う身体感覚(例:動悸、呼吸の苦しさ)が起きていることに気づきます。

考えを完全に止めるのではなく、考えと少し距離を取ることで、目の前の行動へ戻りやすくなる可能性があります。

ASDのある人を対象とした研究でも、心理的苦痛などに対する肯定的な結果が報告されています。ただし、対象者や実施方法に違いがあり、今後も研究が必要です。

筆者も、不安やネガティブな考えが頭の中を巡る感覚には心当たりがあります。頭の中で「失敗したらどうしよう」「あれもやらなければ」といった考えが巡っていることに気づいたとき、筆者はタスク管理を使って、その考えを具体的な行動へと変換することがあります。

たとえば、タスクを手順に分解して書き出すことで、それらは感情を伴った考えから、無機質な「行動指示」に変わります。すると、「どうしよう」と考え続けるよりも、「まずこれをする」という行動そのものに注目しやすくなり、ネガティブな想像にとらわれにくくなることを実感しています。

これも、頭に浮かぶ考えそのものに巻き込まれるのではなく、そこから少し距離を取って目の前のことへ意識を戻すという意味で、マインドフルネスと似たところがあるのかもしれません。

初心者でも取り組みやすいマインドフルネス

マインドフルネスは、静かな場所で長時間をかけなくても実践できます。
じっとしていることが苦手な方の場合は、段階的に取り入れていくことがおすすめです。

呼吸を一回だけ観察する

息を吸っている、吐いているという感覚を、一回だけ観察します。呼吸へ注意を向けると息苦しくなる方は、無理に続けず、足の裏や周囲の物へ注意を向けましょう。

足の裏の感覚や目に入る物を観察する

床に触れている足の感覚や、目に入る物の形、色を確認します。

  • かかとが床に触れている
  • 手元の物の形を見る

目を閉じる必要はありません。

歩行瞑想をする

歩行瞑想とは、足を上げる、前へ運ぶ、地面へ下ろすという動きへ注意を向ける方法です。じっと座ることが苦痛な方は、座る瞑想より取り組みやすい場合があります。

筆者の場合、座って静かにするよりも、シャワーを浴びているときのほうが、今の自分の感覚に意識を向けやすいと感じます。お湯の温度や肌に当たる感覚、シャワーの音などに自然と意識が向き、仕事中のように「あれもやらなければ」「これも忘れてはいけない」と考え続ける状態から、いったん離れやすくなります。

筆者にとっては、シャワーのお湯や音といった感覚に意識を向けることも、「今この瞬間」に戻るきっかけの一つになっています。マインドフルネスも、必ずしも目を閉じて静かに座る方法だけにこだわる必要はありません。

特性によってマインドフルネスが続かないときの対策

じっとしていることが苦痛

座る瞑想にこだわる必要はありません。

  • 歩きながら足の感覚を観察する
  • 立ったまま取り組む
  • ストレッチしながら身体の動きを感じる
  • 30秒だけ取り組む

マインドフルネスの目的は、動かないことではなく、現在の体験に気づくことです。

考えが次々に浮かぶ

考えが浮かぶこと自体を、失敗と捉えないようにしましょう。

  • 「別の考えが浮かんだ」と気づけば成功と考える
  • 頭に浮かんでしまったことは一言だけメモする
  • 瞑想に集中するためのガイド音声を使う
  • タイマーで時間を区切る

雑音が気になる

ASDなどの感覚過敏がある場合は、環境を調整しましょう。

  • 時計や空調から離れる
  • 耳栓やイヤーマフを使う
  • 音ではなく、目に見える物へ注意を向ける
  • 一定の環境音を流す

無音がよい人もいれば、適度な音があるほうが落ち着く人もいます。

目を閉じると不安になる

目を閉じることは必須ではありません。

視界が閉ざされることで不安を感じる場合は、目を開けたままみましょう。

  • 壁や床の一点を見る
  • 植物や水面の動画を見る
  • 手元の物を観察する
  • 出口が見える位置に座る

静かになると過去の記憶が浮かぶ

静かな状態になることで、過去の記憶やフラッシュバックが起きる場合があります。

その際は、無理に観察を続けず、目を開けて周囲へ注意を戻してください。

  • 部屋にある物を声に出して確認する
  • 足の裏で床を押す
  • 冷たい水で手を洗う
  • 安全な場所へ移動する

強いフラッシュバックがある方は、自己流で続けず、主治医や心理職へ相談しましょう。

筆者は、何かを続けるときに「三日坊主になってはいけない」とはあまり考えないようにしています。三日坊主になっても、しばらくしてまた三日やって、さらに思い出したときにまた三日やる。それを繰り返していけば、長い目で見れば「緩く続けられている」とも考えられるからです。

うまくできなかった日や、しばらく続かなかった期間があっても、「また続かなかった」とクヨクヨ考えるより、「さぁ、また三日坊主をしよう!」くらいに考える。

考えてみれば、これはマインドフルネスそのものにも少し似ています。注意がそれても、気づいたらまた戻せばよい。それと同じように、習慣も途切れたら、気づいたときにまた始めればよいのだと思います。

マインドフルネスが逆効果になるケース

マインドフルネスは、すべての人に合うわけではありません。Fariasら(2020)が83件の研究を対象に行ったシステマティックレビューでは、有害事象の割合は約8%と推定され、主なものとして不安や抑うつなどが報告されています。

精神疾患の症状が強いときや、過去のつらい体験を思い出して大きく動揺する場合は、自己流で無理に取り組まず、主治医や心理職などの専門家へ相談しましょう。現在通院中の方も、事前に主治医へ相談すると安心です。

また、実践中や実践後に、強い恐怖や不安、息苦しさや動悸、フラッシュバックなどが起きた場合は、無理に続けず中止してください。マインドフルネスは、つらさを我慢してまで続けるものではありません。

仕事中にマインドフルネスを取り入れる方法

仕事中に長い瞑想をおこなう必要はありません。

  • メールを送る前に一呼吸置く
  • 作業を始める前に足の裏の感覚に目を向ける
  • 焦りを感じたら、今の状態を言葉にする
  • 休憩中に周囲の物を3つ観察する
  • 頭に浮かんだ用事をメモへ移す

自分の状態に気づいた後、具体的な行動へつなげることが大切です。

イチロー選手がバッターボックスに入るとき、毎回決まったルーティンをおこなっていたことはよく知られています。筆者にも、それに少し似た行動があります。

新しいタスクに取りかかるときや、焦りや不安が強いときには、まず「タスク管理ツールにタスクを書き入れる」ことにしています。いつもと同じ手順を踏むことで、「まずはここから始めればいい」と気持ちを落ち着かせ、目の前の仕事に向き合いやすくなるからです。

タスクを書き出すだけなら、短いものであれば数秒で終わります。不安なときほど、いきなり仕事をうまく進めようとするのではなく、まずいつもの行動に戻る。これも、自分の状態に気づいたあと、目の前の行動へ意識を戻す一つの方法だと考えています。

一人で取り組むことが難しい場合は?

自宅で一人で実践することが難しい場合は、次のような場所で学べることがあります。

  • 医療機関やカウンセリング機関
  • マインドフルネスや瞑想のスタジオ
  • ヨガスタジオ
  • 寺院などで開かれる瞑想会
  • 就労移行支援事業所

精神疾患やトラウマがある場合は、指導者に十分な知識があるか、途中でつらくなったときに中止できるかを確認しましょう。

発達障害のある方の場合は、マインドフルネスだけでなく、自分の特性や仕事で困りやすい場面を理解し、環境を調整することも重要です。

自分の特性に合わせて無理なく取り組もう

マインドフルネスは、考えを完全になくしたり、常に穏やかな状態になったりするための方法ではありません。自分の中で何が起きているかに気づき、次の行動を選びやすくするための練習です。発達障害や精神疾患のある方にとっても、注意の散りやすさ、反すう思考、ストレスなどへ対処する選択肢の一つになり得ます。

ただし、一般的な方法がすべての人に合うわけではありません。自分の特性や体調に合わせて、以下のように方法を変えて構いません。

  • 座ることが難しければ歩く
  • 目を閉じることが難しければ開けておく
  • 長く続かなければ30秒にする
  • つらくなったら中止する

また、マインドフルネスだけで仕事上の困りごとのすべてが解決するわけではありません。自分の特性を理解し、仕事の進め方や環境を調整し、必要な配慮を周囲へ相談することも、長く働くための重要な対策です。

就労移行支援事業所ディーキャリアでは、自分に合ったセルフケア方法探しサポートしています。その他にも、発達障害のある方の働きづらさ・生きづらさに対するさまざまなプログラムを提供しています。

発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。

就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業)

就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。

「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。

ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。

お電話(0120-802-146)はこちら▶

お問い合わせフォームはこちら▶

また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。

全国オフィス一覧はこちら▶

就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

記事監修北川 庄治(デコボコベース株式会社 最高品質責任者)
  • 一般社団法人ファボラボ 代表理事
  • 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会 評議員
  • 公認心理師
  • NESTA認定キッズコーディネーショントレーナー
  • 発達障害ラーニングサポーター エキスパート
  • 中学校教諭 専修免許状(社会科)
  • 高等学校教諭 専修免許状(地理歴史科)
東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。

おすすめ関連コラム