【発達障害当事者が解説】「不安な気持ち」の原因とその対処法

「いやな出来事がずっと頭の中でぐるぐる回って、落ち込んでしまう」「仕事でミスをしていないか心配で夜も眠れない」

発達障害のある方はその特性から、不安な気持ちが強くなりやすいと言われており、このようなお悩みをお持ちの方も多いかもしれません。

何を隠そう、筆者もその一人です。発達障害の当事者として、過去のしくじり体験や仕事上のミスによる不安を抱え、それが原因で自分を追い詰め仕事ができなくなるという経験をしてきました。

そこで今回は、筆者の体験談を交えながら、発達障害のある方に向けて「不安な気持ち」になってしまう原因と対処法をご紹介します。

不安を完全になくすことは難しいですが、原因と対策を知れば、うまく付き合っていくことはできます。皆さんが不安な気持ちとの折り合いをうまく付けられるように、この記事がお役に立てれば幸いです。

1. 「不安な気持ち」の原因とは

「大丈夫かなぁ」「うまくいくかなぁ」

このような『不安な気持ち』は、多くの人がごく自然に持っている感情です。人間は何かストレスにさらされたときに不安を感じてその原因を避けようとします。「不安を感じる」ということは、本来は自分の身を守るために必要な機能なのです。

しかし、行き過ぎた不安は、身を守るどころか逆に心身のバランスを崩してしまいます。なぜ、発達障害のある方は行き過ぎた不安を感じやすくなるのでしょうか。原因は大きく分けて3つあります。

原因① 反すう思考(反芻思考)

「反すう思考」とは、嫌な出来事や自分の欠点などを繰り返し考えてしまうことでネガティブな感情がどんどん強まってしまう思考のことです。「頭の中で同じことをぐるぐると考えてしまう」という様子から『ぐるぐる思考』と呼ばれることもあります。

筆者の例をご紹介しましょう。

私は、特に週末になると、よく反すう思考になっていました。本当は仕事のことなど忘れてリフレッシュすればいいのに、ふとしたタイミングで

「あの仕事、もっとこうしておけばよかった」
「あのミスが地雷になって、休み明けに爆発するじゃないか」

と仕事のことを考えはじめてしまうのです。いったん考え出すと、友人と遊んでいても、家族と美味しいものを食べていても、何をしていても上の空。夜になりベッドに入っても過去の失敗経験が思い出され、ぐるぐると頭の中を回って寝付けず、睡眠不足のまま月曜の朝を迎えることも多くありました。

発達障害、特に、自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)のある方は、脳の特性から反すう思考に陥りやすいと言われており、それが原因でうつ病や適応障害などの二次障害を起こしてしまう場合もあります。

原因②ストレスを感じやすい

先ほど「不安な気持ちとは、ストレスを回避し自分の身を守るための機能」であることをご紹介しました。発達障害のある方の場合、脳の特性が原因となってストレスを感じやすく、その回避のために不安な気持ちを感じやすくなる傾向があります。

例えばASDのある方の場合、変化が苦手という特性があるため、「予想外の場面」に遭遇したときに強いストレスを感じやすくなります。また、ADHDのある方の場合、衝動性の特性により「欲しいものが手に入らない・やりたいのにできない」ときに感情が抑えきれず、ストレスとなってしまうことがあります。

原因③ 認知の歪み

認知の歪み(ゆがみ)とは、何かの出来事に遭遇したときに、偏ったとらえ方をしてしまうことです。

筆者の例をご紹介しましょう。

私は仕事で上司や同僚からミスを指摘されると「またやってしまった。自分はなんてダメな人間なんだ…」といつも落ち込んでいました。

落ち着いて考えれば、上司や同僚にミスを責める気持ちはなく、アドバイスのつもりだったのかもしれません。あるいは、「すみません、次回から○○の対策をして気を付けます。ご指摘ありがとうございます」と、もう少し前向きな返事ができたかもしれません。しかし、私の場合は不安な気持ちが自動的に湧き上がってきて、どうしてもネガティブな方向に考えてしまったのです。

このように、ネガティブな方向に偏って出来事をとらえたり、一度のことで「自分はダメな人間だ」と決めつけてしまったりするのが認知の歪みであり、発達障害のある方は脳の特性から認知の歪みが起こりやすいと言われています。

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