注意欠如・多動症(ADHD)の記事一覧

発達障害のある方に「障害者トライアル雇用」はおすすめ?メリット・注意点は

「就職しても続けられるか不安…」そんなADHD・ASDの方へ。障害者トライアル雇用の仕組みやメリット、注意点をADHD当事者が分かりやすく解説。

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「就職したいけど、職場や仕事が自分に合うか不安」「次の職場では長く働きたいけど、続けられるか心配」「障害への配慮をしてもらいたいけど、何をお願いすればいいか分からない」 発達障害の特性による「働きづらさ」があり、就職や転職に関する悩みを抱えている方は少なくありません。 発達障害のある方の場合、求人票や面接だけでは「実際の仕事内容が自分に合っているか」「職場の環境で無理なく働けるか」を判断しにくいことがあります。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの特性による困りごとは人によって異なるため、実際に働いてみなければ必要な工夫や配慮が見えてこないこともあります。 そこで選択肢の一つになるのが、障害者トライアル雇用です。 この記事では、ADHD当事者である筆者が、発達障害のある方に向けて、障害者トライアル雇用の仕組みや対象者、メリット、注意点、利用までの流れをご紹介します。制度を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / 障害者トライアル雇用とは:障害のある方を一定期間試行的に雇用し、本人と企業の相互理解を深めながら長く働くことを目指す制度 発達障害のある方にとってのメリット:実際の仕事や職場環境との相性、得意・不得意、必要な合理的配慮などを働きながら確認できる 利用するときの注意点:トライアル終了後の雇用が保証されている制度ではなく、労働条件も事前に確認する必要がある 利用までの流れ:ハローワークなどへの相談・求職申込みから求人への応募、トライアル雇用、トライアル期間後の雇用の判断へと進む \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害のある方も利用できる「障害者トライアル雇用」とは 障害者トライアル雇用とは、簡単にいうと、企業で一定期間「お試し」で働く制度です。実際に働きながら、本人と企業がお互いに仕事や職場との相性、必要な配慮などを確認し、長期的な就労につなげます。 単なる「職場体験」ではなく、実際に企業で従業員として働きながら、以下の点を確認していきます。 仕事や職場が自分に合っているか 特性による困りごとが起こりにくい働き方や仕事は何か どのような仕事なら力を発揮しやすいか どのような合理的配慮が必要か 障害者トライアル雇用の期間は原則3か月(精神障害の場合は6か月) 厚生労働省の「障害者トライアル雇用事業実施要領」では、トライアル雇用の期間は以下のように定められています。 原則:3か月 制度上の「精神障害者」に該当する人└原則6か月(必要に応じて最長12か月)└本人と企業の合意があれば、3か月以上5か月以内とすることも可能 ※発達障害のある方でも、障害者手帳の有無など制度の条件によっては「精神障害者」に該当しないことがあります。その場合、利用できる期間が異なることがあります。詳しくはハローワークなどで確認してください。 発達障害・精神障害のある方には「障害者短時間トライアル雇用」もある 「いきなり週20時間以上働くのは不安」という方には、障害者短時間トライアル雇用があります。対象は、長く働き続けたいと考えている精神障害者または発達障害者です。 入社後まずは週10時間以上20時間未満の働きやすい時間から始め、体調や職場への適応状況を見ながら、3か月以上12か月以内のトライアル期間中に週20時間以上働けるようになることを目指します。 週20時間以上働くことに不安がある方、まずは短い時間から職場に慣れたい方、離職期間が長い方にとって、選択肢の一つとなるでしょう。 障害者トライアル雇用の対象になる人 障害者トライアル雇用を利用するためには、まず次の2つを満たしている必要があります。 ハローワーク(または民間の職業紹介事業者) に求職の申し込みをしている トライアル雇用期間の後も、その会社で長く働くことを希望している そのうえで、次のいずれかの条件に当てはまる必要があります。 ※下記条件にある「紹介日」とは、ハローワークなどからトライアル雇用の求人を紹介された日のことです。 紹介日時点で、これまで就労経験のない職業への就職を希望している 紹介日前2年以内に、2回以上離職または転職をしている 紹介日前の離職期間が6か月を超えている 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者に該当する 精神障害者については、転職回数などの要件にかかわらず対象になる仕組みがあります。 また、障害者手帳を持っていない場合でも対象となる可能性があります。個別の状況によって異なるため、利用を希望する場合はハローワークなどに相談しましょう。 発達障害のある方にはどのような就職の選択肢がある? 発達障害のある方が就職を考える際には、いくつかの選択肢があります。障害者トライアル雇用の位置づけを理解するために、主な働き方を簡単に整理します。 一般就労 一般就労には、主に次のような働き方があります。 一般雇用枠└障害の有無を問わず一般に募集されている求人に応募して働く└障害があることを勤務先に伝えて働く「オープン就労」と、伝えずに働く「クローズ就労」がある└障害特性に応じた配慮やサポートの内容・体制は、職場によって異なる(申し出がしづらい、十分な配慮を受けられない等のケースもある) 障害者雇用枠└障害のある方を対象とした求人に応募して働く└障害特性や必要な合理的配慮について、企業と相談しながら働ける└障害者雇用を促進するための環境がある「特例子会社」で働く方法もある 障害者トライアル雇用は、これらと並ぶ別の雇用形態ではありません。障害のある方が企業で継続して働くことを目指し、一定期間実際に働きながら、仕事や職場との相性、得意・不得意、必要な合理的配慮などを本人と企業の双方が確認するための制度です。 福祉的就労 福祉的就労には、就労継続支援A型・B型があります。いずれも障害福祉サービスを利用しながら働く方法です。 A型 事業所と雇用契約を結んで働く B型 雇用契約を結ばず、就労や生産活動の機会の提供を受ける このように、発達障害のある方には複数の働き方があります。自分の特性や希望、必要な配慮に合った働き方を選ぶことが大切です。 では、障害者トライアル雇用には、発達障害のある方にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。 発達障害のある方にトライアル雇用がおすすめできる理由 発達障害のある方の場合、仕事内容そのものだけではなく、「どのような職場環境・人間関係か」が働きやすさに大きく関係することがあります。 実際の職場で一定期間働けるトライアル雇用には、求人票や面接だけでは分からないことを確認できるメリットがあります。 1.実際の業務を通して「自分に合う仕事か」を確認できる 同じ「一般事務」でも、電話や来客対応が多い職場、複数の仕事を同時進行する職場、自分で優先順位を判断する職場など、仕事の進め方はさまざまです。 発達障害のある方の中には、仕事の切り替えや優先順位づけ、抽象的な指示への対応などで困難を感じる方もいます。JEEDの「障害者雇用マニュアル 発達障害者と働く」でも、優先順位づけ、指示の理解、質問や説明、感覚面などに関する事例が紹介されています。 トライアル雇用なら、「この職種なら向いているはず」と頭の中だけで考えるのではなく、実際にやってみた結果から自分の適性を考えることができます。漠然とした不安を、具体的な確認事項に変えていくことにもつながります。 筆者は、発達障害のある方に向けて、タスク管理など仕事の進め方を伝える活動をしています。 その中で、働き方に関する相談を受ける機会が多いのですが、仕事の進め方は職場の環境に左右されやすい印象があります。どのようなシステムが使われているか、デスク周辺にどのようなものがあるか、リモートワークと出社勤務の割合はどれくらいかによって、タスク管理の仕組みも変わります。 実際に働いてみると、紙とペンが一番仕事を管理しやすかったり、会社で導入している業務管理システムが自分と相性が良かったりすることがあります。そうした経験を重ねながら、自分に合う仕事の進め方を探していくほうが、うまくいきやすい印象があります。 2.新しい環境に少しずつ慣れることができる 就職や転職では、通勤、生活リズム、人間関係、仕事のルールなど、一度に多くの変化が起こります。新しい環境への適応に大きなエネルギーを使う方の場合、仕事内容以外の変化も負担になることがあります。 特に障害者短時間トライアル雇用では、週10時間以上20時間未満から始め、職場への適応状況や体調を見ながら勤務時間を増やすことができます。「働けるか、働けないか」の二択ではなく、段階的に調整できることが特徴です。 ADHD当事者である筆者も以前働いていたときに、通勤時間の見積もりに苦労した経験があります。自宅から会社まで「約1時間」と見込んでいました。しかし、実際には混雑した電車で40分ほど立ち続ける必要がありました。 そこで始発電車を利用するようにしましたが、座るためには早めに駅へ行く必要があり、結果として通勤には1時間半ほどかかるようになりました。 このように、通勤一つをとっても、実際に続けてみなければ分からない負担があります。 3.必要な合理的配慮を具体的にできる 障害者雇用では「どんな配慮が必要ですか?」と聞かれることがあります。しかし、初めての職場では、自分でも具体的に答えられない場合があります。 実際に働くことで、たとえば「口頭で複数の指示を受けると抜けやすいので、メモでも残してほしい」「優先順位が変わったときは、どれを先にするか確認したい」といった配慮を具体化しやすくなります。 重要なのは、診断名だけから「ASDだからこの配慮」「ADHDだからこの配慮」と決めることではありません。実際にどの場面で困り、どのような工夫があれば仕事がしやすくなるのかを、本人と企業が確認することが大切です。 たとえば「自分は仕事が遅い」と感じても、原因によって必要な対策は変わります。 その作業が苦手⇒可能であれば作業の変更を相談する、作業を分解してマニュアルを作成する 目的意識が持てない(モチベーションが上がらない)⇒仕事のゴール(どんな成果や貢献につながるか)を明確に教える 口頭の指示が頭に残らない⇒メモに書いて渡す、メールやチャットで指示を出す 困りごとの原因を具体的にできれば、必要な配慮もよりきめ細かく検討できます。本人・企業の双方にとって、働きやすい環境づくりにつながります。 もし、「自分にどんな配慮が必要かまだ分からない」「いきなり企業で働くのは不安」と感じた場合は、トライアル雇用を利用する前に、就職に向けた訓練や相談ができる障害福祉サービスである「就労移行支援」を利用し、自分に合う働き方を整理する方法もあります。就労移行支援事業所ディーキャリアでは、「働きづらさ」や「働き方」に関する無料相談会を随時開催しています。お近くのオフィスにお問い合わせください。お問い合わせフォーム▶ 就労移行支援について詳しく知りたい方は以下のコラムをお読みください。就労移行支援とは|リアルに役立つまるわかりガイド 4.本人だけでなく企業側も適性を確認できる トライアル雇用では、企業側も、どの業務なら力を発揮できるか、どのような指示や配慮が適しているかなどを確認します。 これは「会社から評価される期間」であるだけではありません。長く働くためには、本人と企業の双方が「この働き方なら続けられそうだ」と確認することが重要です。 厚生労働省も、障害者トライアル雇用の目的として、求職者と求人者(企業)の相互理解の促進を掲げています。 企業側にとっても、トライアル期間中に仕事との相性や必要な配慮を確認できるため、採用後のミスマッチを減らすことにつながります。また、一定の要件を満たした企業には助成金が支給されるなど、国による支援もあります。 このように企業側にもメリットがあるので、「配慮をお願いすると企業に迷惑をかけるのでは」と心配しすぎず、必要なことを相談していきましょう。 発達障害のある方がトライアル雇用を利用するときの注意点 メリットのある制度ですが、利用すれば必ず希望どおりにその後も働き続けることができるわけではありません。事前に知っておきたい注意点があります。 1.トライアル終了後の雇用が保証されているわけではない トライアル期間が終わったあと、その会社で働き続けるかどうかは、本人と企業の双方で決めます。本人が希望してもそのまま働き続けられない場合もあれば、企業から希望されても、本人が「自分には合わなかった」と判断する場合もあります。 令和6年度の厚生労働省の集計では、発達障害者を含む障害者トライアル雇用の利用者の約8割が、トライアル雇用後に常用雇用へ移行しています。 トライアル期間は、採用されるためだけの期間ではなく、自分に合う仕事や働き方を確かめる期間として活用しましょう。 2.トライアル中の「できなかった」だけで辞退しない 仕事がうまくいかなかったからといって、すぐに「この仕事には向いていない」と決まるわけではありません。指示を書面にする、手順書を作る、優先順位を確認するなど、仕事の進め方を変えることで取り組みやすくなる場合があります。 大切なのは、「なぜ難しかったのか」「何を変えればできるようになるのか」まで確認することです。 筆者に「仕事の進め方」について相談していた発達障害当事者の方も、なかなか締切を守れないという悩みを抱えていました。そこで、最終締切だけでなく中間締切も上司と確認するようにしたところ、締切までに出せるようになりました。 「締切が守れない」ことから「だから自分はダメだ」と考えるだけではなく、「だったら、こうしよう」と仕事の仕組みを変えるきっかけにすることもできます。 3.給与・勤務時間などの労働条件を確認する 障害者トライアル雇用は「職場体験」ではなく、企業と雇用契約を結んで働く制度なので、給与が支払われます。原則として、地域ごとに定められた最低賃金も適用されます。 また、トライアル雇用だからといって、一般の求人より賃金が低くなると決まっているわけではありません。原則として、トライアル期間中の給与や勤務時間などの条件は、その後も同じ会社で働く場合と同じです。 ただし、障害者短時間トライアル雇用では働く時間が短いため、月の収入が少なくなることがあります。 応募する際には、給与、勤務時間、交通費、社会保険のほか、トライアル期間中と、その後も働く場合で条件に違いがあるかを確認しておきましょう。 4.制度を使うこと自体が目的にならないようにする 障害者トライアル雇用は、あくまでもその会社で「働き続けられるかどうか」を見極めるための期間のため、「お試しだけ」をする場ではありません。 また、就職活動をするときの選択肢の一つ、としてとらえるようにしましょう。トライアル雇用を利用できるかだけで求人を選ぶのではなく、仕事内容、通勤、勤務時間、得意・不得意、必要な配慮なども含めて、自分に合う職場かを考えることが大切です。 障害者トライアル雇用を利用する流れ 利用する場合は、基本的に次のように進みます。 1.ハローワークなどに相談・求職申込みをする ハローワークなどで求職申込みをし、障害者トライアル雇用を希望していることを相談します。自分が制度の対象になるか分からない場合も確認しましょう。 厚生労働省によれば、障害者トライアル雇用は、ハローワークまたは制度を取り扱う民間の職業紹介事業者などの紹介によって雇い入れられることが要件となっています。 2.求人を探して応募する 希望する職種、仕事内容、勤務地、勤務時間などをもとに求人を探し、選考を受けます。 面接では、得意なことだけでなく、苦手なこと、仕事で起こりやすい困りごと、自分で取り組んでいる対策、企業にお願いしたい配慮などを整理しておくと、その後のトライアル期間にもつなげやすくなります。 3.雇用契約を結び、トライアル雇用を開始する 採用が決まったら、企業と有期の雇用契約を結び、トライアル雇用が始まります。 期間中は、次のようなことを記録しておくと、自分の働き方を振り返りやすくなります。 やりやすかった仕事・負担が大きかった仕事 ミスが出やすかった場面 理解しやすかった指示の出し方 疲れやすい時間帯 役立った配慮 発達障害当事者の方から「仕事の進め方」に関する相談を受けたときには、毎日次の4点を振り返ることをお勧めしています。 できたこと できなかったこと 意識したいこと 今日の点数(10点満点) トライアル雇用の期間中に続ければ、自分ならではの気付きが得られやすくなります。 4.本人と企業が、その後も働き続けるかを決める トライアル期間が終わると、本人と企業が、その会社で働き続けるかを話し合います。双方が希望し、条件が合えば、そのまま働き続けます。 その会社で働き続けないことになった場合でも、「どんな仕事の進め方が自分にあっているか」「どんな環境が働きやすいのか」「次の職場ではどのような配慮をお願いしたいのか」を整理しておくと、次の就職活動に活かせます。 「次の就職で失敗したくない」と思ったときは、「自分に合う働き方」から考えよう 「働くことに自信がない」「次の就職では長く働きたい」という方にとって、障害者トライアル雇用は、実際の仕事を通して自分と職場の相性を確認できる選択肢です。 一方で、トライアル雇用が唯一の正解ではありません。一般雇用枠、障害者雇用枠、特例子会社など、ほかの選択肢が合う場合もあります。 大切なのは、自分の特性や希望、必要な配慮を理解し、自分に合った働き方を選ぶことです。 就職活動を始める前に、 自分は何が得意なのか どんなときに困りやすいのか どうすれば働きやすくなるのか を整理しておくと、トライアル雇用を利用する場合にも、それ以外の働き方を選ぶ場合にも役立ちます。 一人で整理することが難しい場合は、就労移行支援などの支援機関を利用し、訓練やキャリア相談を通じて自己理解を深める方法もあります。ディーキャリアのリクルートコースなどのプログラムについて、体験会や個別相談会で相談してみるのも一つの方法です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害・精神疾患のセルフケア|マインドフルネスの効果と実践法

ADHD・ASDのセルフケア「マインドフルネス」について、発達障害当事者が解説。本当に効果がある?どう取り組めばいい?そんな疑問にお答えします。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「頭の中がごちゃごちゃして、目の前のことに集中できない」「嫌なことや失敗したことを、何度も繰り返し思い出してしまう」「マインドフルネスを試したけれど、続かなかった・合わないと感じた」 ADHDやASDの特性による困りごと、メンタル不調やストレスへの対処法を探していませんか。 マインドフルネスは、発達障害や精神疾患に伴うストレス、ADHDの注意の散りやすさ、ASDの反すう思考などへの対策として広く活用されているセルフケアの一つです。 一方で、「スピリチュアルなものではないか」「頭を空っぽにできない」「自分の特性・性格には合わない」と感じる方は少なくありません。また、心身の状態によっては、無理に取り組むことで、かえってストレスが強まることや状況が悪化するリスクがあるため、注意が必要です。 この記事では、マインドフルネスの意味や、発達障害・精神疾患のある方に期待される効果、うまくいかないときの対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / マインドフルネスは、今の自分の状態に気づくためのトレーニング 発達障害や精神疾患の困りごとへのセルフケアとして役立つ可能性がある ADHDやASDの特性に合わせて、やり方を変えてよい 強い不安やフラッシュバックが起きた場合は、無理に続けないことが大切 \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害や精神疾患のセルフケアにマインドフルネスは有効? マインドフルネスは、発達障害や精神疾患の症状そのものを治す方法ではありません。医療機関での治療や服薬、環境調整に代わるものでもありません。 一方で、次のような困りごとへの自己対処やセルフケアとして役立つ可能性があります。 頭の中がごちゃごちゃする 嫌な出来事や過去の失敗を繰り返し思い出す 不安や焦りを感じやすく、気持ちを切り替えにくい 感情のコントロールが効かず衝動的に反応する 疲労や緊張に気づかず無理をしてしまう マインドフルネスでは、考えや感情を消そうとするのではなく、 「今、自分は焦っている」「失敗した場面をまた思い出している」「肩に力が入りすぎている」 と、自分の状態に気づくことを大切にします。早めに自分の変化へ気づくことができれば、休憩する、仕事量を減らす、人に相談するなどの対処につなげやすくなります。 マインドフルネスは、簡単にいうと、過去の出来事や未来への不安などにとらわれすぎず、「今この瞬間」に意識を向けることです。 ADHD等の発達障害がある方の場合、仕事を進めるうえでも「あれもやらなければ」「これも忘れてはいけない」と頭の中にたくさんのやることが浮かんでしまい、優先順位やスケジュール管理が苦手という方がいらっしゃいます。そのような苦手がある方のタスク管理のコツとして、「やること」を一覧にして書き出すというものがあります。書き出すことで、余計なことにとらわれすぎず、いま目の前にあることに意識を向けやすくなるからです。 マインドフルネスのやり方について調べてみると、このタスク管理のコツと共通する考え方であると気づきました。「頭に浮かぶ考えにとらわれすぎず、目の前のことに意識を戻す」という点です。 発達障害当事者である筆者も、週に1~2回程度、椅子に座って目を閉じ、3分ほどマインドフルネスを実践しています。仕事を始める前や終えた後に行うと、気持ちを切り替えやすくなる感覚があります。 そもそもマインドフルネスとは? マインドフルネスとは、「今この瞬間」に起きていることへ注意を向け、良い・悪いとすぐに判断せず観察することです。米国心理学会(American Psychological Association:APA)の心理学辞典では、マインドフルネスを、自分の内的な状態と周囲の環境への気づきとして説明しています。 たとえば、仕事でミスをして、「また失敗した。自分は何をやっても駄目だ」という考えが浮かんだとします。マインドフルネスでは、この考えを打ち消すのではなく、「今、自分は『何をやっても駄目だ』と考えている」という自分の状態を客観的に見る、ということをやっていきます。 考えを事実と決めつけず、自分のことを少し離れて観察することで、感情に巻き込まれたまま反応する前に、次の行動を選びやすくします。 マインドフルネスは「無になること」ではない マインドフルネスは、頭を空っぽにしたり、雑念を完全になくしたりする練習ではありません。仕事の予定や過去の失敗が浮かんでも、それ自体は失敗ではありません。まず、「別のことを考えていた」と気づけるようになることが第一歩です。 英国の国民保健サービス(National Health Service:NHS)も、マインドフルネスは思考をなくすことではなく、思考を心の中に生じる出来事として捉える方法だと説明しています。 スピリチュアルなものではないの? 瞑想には、宗教的な伝統を背景にしたものもあります。そのため、マインドフルネスにスピリチュアルな印象を持つ方もいるでしょう。 一方、医療や心理支援では、宗教的な信念を必要としない、マインドフルネスストレス低減法やマインドフルネス認知療法などが活用されています。 米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)によると、マインドフルネスについては、脳の働きや構造との関連も研究されています。研究結果の解釈は難しく、実生活上どのような意味を持つのかはまだ明確ではありませんが、単なる精神論ではなく、脳活動との関係も含めて科学的な研究が進められています。 マインドフルネスはどんな人におすすめ?発達障害の特性別に解説 ADHD:注意の散りやすさや自分の衝動に気づく ADHDのある方は、集中力を継続できず、頭の中に複数の考えが次々と浮かんだり、目の前の作業から注意がそれたりすることがあります。また、行動や感情のコントロールができなくなる(例:やってはいけないことをしたい!欲しいものを買わずにいられない!等の衝動にかられる)こともあります。 マインドフルネスでは、注意がまったくそれない状態を目指すのではなく、 「今、別のことを考えていた」「焦って、すぐに返信しようとしている」「集中が切れてきた」 と気づく練習をします。 マインドフルネスによってADHDの症状が改善されたという報告があります。一方で、標準的な治療に代わるほど十分な根拠が確立しているわけではありません。治療の代わりではなく、困りごとへの対処を補助する方法と考えましょう。 筆者も、目の前の仕事に集中したいのに、「そういえば、これとあれもやらなければ」と別の用事が頭に次々と浮かぶことがあります。そんなとき、「今は考えないようにしよう」と無理に追い出そうとするのではなく、いったんメモやタスクリストに書き出します。書いておけば、忘れないように頭の中で覚えておく必要がなくなるので、安心して目の前の仕事に戻ることができます。 これはADHD特性のある筆者自身が実践しているタスク管理の方法の一つですが、「別のことに意識が向いている自分に気づき、それをいったん脇に置いて、今やっていることへ戻る」という点で、マインドフルネスの観点と通じるところがあるように思います。 ASD:反すう思考と距離を取る ASDのある方は、嫌なことや過去の失敗、人との会話等を何度も思い返す「反すう(反芻)思考」に陥りやすいといわれています。反すう思考は、発達障害のある方が「不安を感じやすい」と言われる原因のひとつで、ネガティブな出来事や感情が頭から離れず、何度も同じことを繰り返し考えてしまう状況を指します。 なお、「不安な気持ちの原因」と「反すう思考」について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 マインドフルネスでは、 「また、あのときの会話を考えている」「今、胸のあたりが苦しい」 と、反すう思考やそれに伴う身体感覚(例:動悸、呼吸の苦しさ)が起きていることに気づきます。 考えを完全に止めるのではなく、考えと少し距離を取ることで、目の前の行動へ戻りやすくなる可能性があります。 ASDのある人を対象とした研究でも、心理的苦痛などに対する肯定的な結果が報告されています。ただし、対象者や実施方法に違いがあり、今後も研究が必要です。 筆者も、不安やネガティブな考えが頭の中を巡る感覚には心当たりがあります。頭の中で「失敗したらどうしよう」「あれもやらなければ」といった考えが巡っていることに気づいたとき、筆者はタスク管理を使って、その考えを具体的な行動へと変換することがあります。 たとえば、タスクを手順に分解して書き出すことで、それらは感情を伴った考えから、無機質な「行動指示」に変わります。すると、「どうしよう」と考え続けるよりも、「まずこれをする」という行動そのものに注目しやすくなり、ネガティブな想像にとらわれにくくなることを実感しています。 これも、頭に浮かぶ考えそのものに巻き込まれるのではなく、そこから少し距離を取って目の前のことへ意識を戻すという意味で、マインドフルネスと似たところがあるのかもしれません。 初心者でも取り組みやすいマインドフルネス マインドフルネスは、静かな場所で長時間をかけなくても実践できます。じっとしていることが苦手な方の場合は、段階的に取り入れていくことがおすすめです。 呼吸を一回だけ観察する 息を吸っている、吐いているという感覚を、一回だけ観察します。呼吸へ注意を向けると息苦しくなる方は、無理に続けず、足の裏や周囲の物へ注意を向けましょう。 足の裏の感覚や目に入る物を観察する 床に触れている足の感覚や、目に入る物の形、色を確認します。 かかとが床に触れている 手元の物の形を見る 目を閉じる必要はありません。 歩行瞑想をする 歩行瞑想とは、足を上げる、前へ運ぶ、地面へ下ろすという動きへ注意を向ける方法です。じっと座ることが苦痛な方は、座る瞑想より取り組みやすい場合があります。 筆者の場合、座って静かにするよりも、シャワーを浴びているときのほうが、今の自分の感覚に意識を向けやすいと感じます。お湯の温度や肌に当たる感覚、シャワーの音などに自然と意識が向き、仕事中のように「あれもやらなければ」「これも忘れてはいけない」と考え続ける状態から、いったん離れやすくなります。 筆者にとっては、シャワーのお湯や音といった感覚に意識を向けることも、「今この瞬間」に戻るきっかけの一つになっています。マインドフルネスも、必ずしも目を閉じて静かに座る方法だけにこだわる必要はありません。 特性によってマインドフルネスが続かないときの対策 じっとしていることが苦痛 座る瞑想にこだわる必要はありません。 歩きながら足の感覚を観察する 立ったまま取り組む ストレッチしながら身体の動きを感じる 30秒だけ取り組む マインドフルネスの目的は、動かないことではなく、現在の体験に気づくことです。 考えが次々に浮かぶ 考えが浮かぶこと自体を、失敗と捉えないようにしましょう。 「別の考えが浮かんだ」と気づけば成功と考える 頭に浮かんでしまったことは一言だけメモする 瞑想に集中するためのガイド音声を使う タイマーで時間を区切る 雑音が気になる ASDなどの感覚過敏がある場合は、環境を調整しましょう。 時計や空調から離れる 耳栓やイヤーマフを使う 音ではなく、目に見える物へ注意を向ける 一定の環境音を流す 無音がよい人もいれば、適度な音があるほうが落ち着く人もいます。 目を閉じると不安になる 目を閉じることは必須ではありません。 視界が閉ざされることで不安を感じる場合は、目を開けたままみましょう。 壁や床の一点を見る 植物や水面の動画を見る 手元の物を観察する 出口が見える位置に座る 静かになると過去の記憶が浮かぶ 静かな状態になることで、過去の記憶やフラッシュバックが起きる場合があります。 その際は、無理に観察を続けず、目を開けて周囲へ注意を戻してください。 部屋にある物を声に出して確認する 足の裏で床を押す 冷たい水で手を洗う 安全な場所へ移動する 強いフラッシュバックがある方は、自己流で続けず、主治医や心理職へ相談しましょう。 筆者は、何かを続けるときに「三日坊主になってはいけない」とはあまり考えないようにしています。三日坊主になっても、しばらくしてまた三日やって、さらに思い出したときにまた三日やる。それを繰り返していけば、長い目で見れば「緩く続けられている」とも考えられるからです。 うまくできなかった日や、しばらく続かなかった期間があっても、「また続かなかった」とクヨクヨ考えるより、「さぁ、また三日坊主をしよう!」くらいに考える。 考えてみれば、これはマインドフルネスそのものにも少し似ています。注意がそれても、気づいたらまた戻せばよい。それと同じように、習慣も途切れたら、気づいたときにまた始めればよいのだと思います。 マインドフルネスが逆効果になるケース マインドフルネスは、すべての人に合うわけではありません。Fariasら(2020)が83件の研究を対象に行ったシステマティックレビューでは、有害事象の割合は約8%と推定され、主なものとして不安や抑うつなどが報告されています。 精神疾患の症状が強いときや、過去のつらい体験を思い出して大きく動揺する場合は、自己流で無理に取り組まず、主治医や心理職などの専門家へ相談しましょう。現在通院中の方も、事前に主治医へ相談すると安心です。 また、実践中や実践後に、強い恐怖や不安、息苦しさや動悸、フラッシュバックなどが起きた場合は、無理に続けず中止してください。マインドフルネスは、つらさを我慢してまで続けるものではありません。 仕事中にマインドフルネスを取り入れる方法 仕事中に長い瞑想をおこなう必要はありません。 メールを送る前に一呼吸置く 作業を始める前に足の裏の感覚に目を向ける 焦りを感じたら、今の状態を言葉にする 休憩中に周囲の物を3つ観察する 頭に浮かんだ用事をメモへ移す 自分の状態に気づいた後、具体的な行動へつなげることが大切です。 イチロー選手がバッターボックスに入るとき、毎回決まったルーティンをおこなっていたことはよく知られています。筆者にも、それに少し似た行動があります。 新しいタスクに取りかかるときや、焦りや不安が強いときには、まず「タスク管理ツールにタスクを書き入れる」ことにしています。いつもと同じ手順を踏むことで、「まずはここから始めればいい」と気持ちを落ち着かせ、目の前の仕事に向き合いやすくなるからです。 タスクを書き出すだけなら、短いものであれば数秒で終わります。不安なときほど、いきなり仕事をうまく進めようとするのではなく、まずいつもの行動に戻る。これも、自分の状態に気づいたあと、目の前の行動へ意識を戻す一つの方法だと考えています。 一人で取り組むことが難しい場合は? 自宅で一人で実践することが難しい場合は、次のような場所で学べることがあります。 医療機関やカウンセリング機関 マインドフルネスや瞑想のスタジオ ヨガスタジオ 寺院などで開かれる瞑想会 就労移行支援事業所 精神疾患やトラウマがある場合は、指導者に十分な知識があるか、途中でつらくなったときに中止できるかを確認しましょう。 発達障害のある方の場合は、マインドフルネスだけでなく、自分の特性や仕事で困りやすい場面を理解し、環境を調整することも重要です。 自分の特性に合わせて無理なく取り組もう マインドフルネスは、考えを完全になくしたり、常に穏やかな状態になったりするための方法ではありません。自分の中で何が起きているかに気づき、次の行動を選びやすくするための練習です。発達障害や精神疾患のある方にとっても、注意の散りやすさ、反すう思考、ストレスなどへ対処する選択肢の一つになり得ます。 ただし、一般的な方法がすべての人に合うわけではありません。自分の特性や体調に合わせて、以下のように方法を変えて構いません。 座ることが難しければ歩く 目を閉じることが難しければ開けておく 長く続かなければ30秒にする つらくなったら中止する また、マインドフルネスだけで仕事上の困りごとのすべてが解決するわけではありません。自分の特性を理解し、仕事の進め方や環境を調整し、必要な配慮を周囲へ相談することも、長く働くための重要な対策です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、自分に合ったセルフケア方法探しサポートしています。その他にも、発達障害のある方の働きづらさ・生きづらさに対するさまざまなプログラムを提供しています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害のある方が職場でパニックになる原因と仕事中の対策

大人のASD・ADHDがあると「パニック」になりやすい?発達障害のある方のパニックの原因、職場での対処法について、ADHD当事者が解説。

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「仕事中に急に頭が真っ白になり、何をすればいいか分からなくなる」「職場でパニック症状が出てしまうことがあり、このまま働き続けられるのか不安」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害のある方の中には、職場で強いストレスがかかったときに、涙が止まらなくなる、固まって動けなくなる、怒りや不安が抑えられなくなる、呼吸が苦しくなる、頭が真っ白になるといった、いわゆるパニック状態になる方がいます。 この記事では、その原因と対処法をご紹介します。今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 \ この記事で分かること / 発達障害のパニックとは:医学的な「パニック発作」に近い状態や、発達障害の特性・強いストレスによって起こる「メルトダウン」「フリーズ」に近い状態がある。 パニックの原因:ASDやADHDの特性がある人にとって負荷になりやすい急な変更、感覚刺激、マルチタスク、過去のつらい経験などが関係する。 仕事中のパニック対策:安全な場所への移動や、状況を伝える短い定型文の用意などによって、落ち着く時間を確保する。 パニックの予防策:トリガーの記録、予定・指示・優先順位の見える化、必要な合理的配慮の相談が役立つ。 \ 執筆者紹介/ 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害のある方が職場で直面しがちな「パニック」とは 日常会話で使われる「パニック」からは、以下のような状態が想像されるのではないでしょうか。 急に不安が強くなる 呼吸が苦しくなる 頭が真っ白になる 涙が止まらなくなる 怒りや焦りが抑えられなくなる 体が固まり言葉が出なくなる 指示を聞いても理解できなくなる 本記事では、職場で強い不安や混乱が生じ、普段どおりに考えたり行動したりすることが難しくなる状態を、総称して「パニック」と表現します。 その中には、医学的な意味での「パニック発作」に近い状態もあれば、発達障害の特性や強いストレスによって起こる「メルトダウン」や「フリーズ」に近い状態もあります。 パニック発作 パニック発作とは、突然強い不安や恐怖に襲われ、動悸、息苦しさ、めまい、震えなどの身体症状が表れる状態です。こうしたパニック発作が繰り返され、生活や仕事に支障が出ている場合、パニック障害と診断されることがあります。 メルトダウン メルトダウンは、強いストレスや感覚刺激に圧倒され、一時的に行動のコントロールが難しくなる状態を説明する言葉として使われます。英国の自閉症支援団体であるNational Autistic Societyも、メルトダウンを「圧倒される状況への強い反応」と説明しています。 職場では、涙が止まらなくなる、怒りが爆発する、大きな声を出してしまう、その場から逃げ出したくなる、周囲の言葉が入ってこなくなる、といった形で表れることがあります。 フリーズ 強いストレスや混乱によって、動けなくなる、話せなくなる、考えられなくなる状態をフリーズといいます。頭が真っ白になる、返事ができない、体が固まる、パソコンの前で止まってしまう、といった形で表れることがあります。 外から見ると、「黙っている」「ぼーっとしている」「やる気がない」と見えるかもしれません。しかし本人の内側では、強い緊張や混乱が起きていることがあります。 パニック発作、メルトダウン、フリーズのいずれも、本人にとっては非常につらい状態です。職場で繰り返し起こると、休職や退職につながることもあります。だからこそ、自分に何が起こっているのかを整理し、対策を考えることが大切です。 発達障害のある方が職場でパニックになりやすい原因 発達障害のある方が職場でパニックになりやすい背景には、本人の性格だけではなく、特性と環境のミスマッチ、体調、業務量、人間関係など、複数の要因が関わっていることがあります。 ASDやADHDの特性がある方にとっては、こうした負荷が積み重なることで、パニックにつながることがあります。 ASD(自閉スペクトラム症)のある方に見られやすい原因 ASDのある方は、見通しの立たなさ、急な変更、感覚刺激、人間関係のあいまいさなどによって強いストレスを感じることがあります。 CDC(米国疾病予防管理センター)は、ASDの特徴として以下のような反応があるとしています。 小さな変化に強く動揺する 特定のルーティンを必要とする 音・におい・味・見た目・触感などへの通常とは異なる反応 たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。 今日やる予定だった仕事が急に変わる 予定になかった来客対応を頼まれる 作業途中で別の仕事を割り込まれる 電話の音や周囲の会話がつらい 照明やにおいなどの刺激がつらい 「いい感じに」「なるべく早めに」など、あいまいな指示を受ける 周囲から見ると、よくある予定変更や指示に見えるかもしれません。しかし本人にとっては、頭の中で組み立てていた段取りが崩れたり、判断材料が足りないまま作業を求められたりするため、大きな混乱につながることがあります。 また、過去に強く叱責された経験や、職場でつらい思いをした経験がある場合、似た場面でその記憶がよみがえり、強い不安や緊張につながることもあります。いわゆる「フラッシュバック」のように感じられることもあります。 ADHD(注意欠如・多動症)のある方に見られやすい原因 ADHDのある方の場合、以下のような特性によって、仕事中の負荷や混乱が高まりやすくなることがあります。 注意の切り替えが難しい 優先順位づけが苦手 指示を覚えておくことが難しい 感情のコントロールが難しい 特に職場で見られがちなこととして、NIMH(米国国立精神衛生研究所)は、以下についての困りごとを挙げています。 整理 仕事の継続 日々のタスクの遂行 大きなプロジェクトの完了 マルチタスク たとえば、次のような場面で負荷が高まりやすくなります。 複数の仕事が同時に発生し、どれから手をつければよいか分からない 口頭指示の一部を聞き漏らす 席に戻ると、何を頼まれたか分からなくなる 注意されたときに強く落ち込む 焦りが強くなり、落ち着いて考えられない 筆者にも、「焦り」によって確認が漏れてしまった経験があります。社用車のリースに関する手続きで、急いで書類を送る必要があった際、レターパックに入れて送付したところ、誤って全く関係のない自分のノートを送ってしまったのです。今振り返ると、焦りで頭の中がいっぱいになり、「何を入れたか」を確認する余裕がなくなっていたのだと思います。このように、焦りが強くなると、普段なら当然できる確認作業が抜け落ちてしまうことがあります。 職場でパニックが起こったときの対処法・仕事中の対策 職場でパニックが起こったときに大切なのは、「その場で完璧に立て直そう」としないことです。 パニック状態のときは、普段できる判断や会話が難しくなっています。まずは安全を確保し、刺激を減らし、落ち着くための時間を取りましょう。 いったんその場から物理的に離れる 可能であれば、刺激の多い場所から離れましょう。空いている会議室、休憩室、廊下、トイレ、建物の外、人の少ないスペースなどに移動できるとよいでしょう。このように、混乱が強くなったときに一時的にその場を離れ、落ち着く時間を取る方法は「タイムアウト法」と呼ばれることもあります。 職場で使える言い方としては、次のようなものがあります。 「少し席を外します」 「体調が悪いので、5分だけ休憩します」 「落ち着いてから戻ります」 事前に職場と相談できる場合は、「パニックになりそうなときに一時的に離席してよいか」「どこでクールダウンしてよいか」を決めておくと安心です。 短い定型文を用意しておく パニック状態になると、言葉を考えること自体が難しくなります。あらかじめ職場で使う定型文を用意しておくと安心です。 「少し混乱しているため、5分ほど休憩します」 「今すぐ返答が難しいため、落ち着いてから確認します」 「指示をメモでいただけると助かります」 「優先順位を確認させてください」 筆者は、判断に迷って混乱しそうなとき、使うようにしている言い回しがあります。それは、「迷っているんですが~」「困っているんですけど~」で話し始めるというものです。先に、自分の状況を端的に伝えることで、相手にも「ああ、迷っているんだな」「困っているんだな」と伝わりやすくなります。また、自分自身も「迷っている」「困っている」と口に出すことで、状況を少し客観視しやすくなります。 職場でのパニックは「起こる前」の対策が重要 職場でのパニック対策では、起こったあとの対応も大切ですが、それ以上に重要なのは、パニックが起こりにくい環境を作ることです。そのためには、パニックが起こった場面を以下のように記録し、そのきっかけになる刺激(トリガー)を知ることが大事です。 いつ起こったか 何をしていたか 直前に何があったか どんな症状が出たか 何をしたら少し楽になったか 周囲にどう対応してもらえるとよかったか すべての項目を埋める必要はありません。たとえば、会議中に急に発言を求められて頭が真っ白になった場合は、「会議中」「発言を求められた」「何も言葉が出てこなかった」といった具合です。 その場合、「人前で突然答えること」がトリガーになっている可能性があります。そこから、会議前に議題を共有してもらう、その場で答えられない場合はあとで回答してよいことにする、といった対策を考えられます。 また、こういったときは気持ちが落ち込み、自分を責めてしまいがちです。それを避けるためには、パニックになった事実は認めつつ、「だったら、今後どうすれば良いか」という対策の材料とする視点があると良いです。 「できなかったことを責める」のではなく、「次の対策を作るための記録」として扱いましょう。そう考えることで、「この経験が次に活きる」と前向きにとらえやすくなります。仕事をよりスムーズに進めるうえでも、自分の気持ちを落ち着けるうえでも、とてもおすすめです。 職場でできる予防策 ASDのある方の場合は、特に以下のポイントがパニックの予防につながります。 見通しを持てること 刺激を減らすこと あいまいさを減らすこと たとえば、次のような工夫があります。 前日に翌日の予定を共有してもらう 急な変更は早めに知らせてもらう 急ぎの依頼は、締切と優先順位をセットで伝えてもらう 依頼内容を口頭だけでなく、チャットやメモでも共有してもらう 耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使う 静かな場所で休憩できるようにする ADHDのある方の場合は、以下のポイントがパニックの予防につながります。 頭の中だけで抱えないこと 優先順位を見える化すること 指示を記録に残すこと たとえば、次のような工夫があります。 やることを一か所に書き出す 仕事で使うもの(書類やファイル等)の置き場を決める 上司に優先順位を確認する 口頭指示をメモやチャットに残す 作業手順をチェックリスト化する 締切が重なる場合は、どちらを先にするか相談する とはいえ、「わざわざ書き出すのが面倒」「今すぐやってしまった方が早い」と感じることもあるでしょう。筆者は、最初から完璧に書き出そうとしなくてもよいと考えています。ただ、その後も続く業務であれば、ひと区切りついたあとに、あらためて今やったことを書き出しておくと、次回以降、より安全・確実に進めやすくなります。 職場に相談・依頼できる合理的配慮 発達障害のある方が職場でパニックを防ぐためには、自分だけで対策するのではなく、職場に合理的配慮を相談・依頼することも大切です。 合理的配慮とは、障害のある人が社会の中にあるバリアによって困らないよう、事業者側が負担が重すぎない範囲でおこなう対応のことです。 内閣府は、令和3年の障害者差別解消法改正により、令和6年4月1日から事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたと説明しています。 なお、雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主は過重な負担にならない範囲で障害者に合理的配慮を提供することが義務付けられています。 たとえば、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の合理的配慮事例では、業務の優先順位や目標を明確にする、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する、といった対応が紹介されています。 職場で依頼できる合理的配慮には、次のようなものがあります。 口頭だけでなく文字でも指示をもらう 締切や優先順位を明確にしてもらう 急な変更は早めに知らせてもらう 静かな席に変更してもらう 耳栓やイヤホンの使用を認めてもらう クールダウンできる場所を決めておく パニックになりそうなときは離席を認めてもらう 復帰後に業務の優先順位を再確認する 合理的配慮を依頼するときは、「配慮してください」だけではなく、具体的に伝えることが大切です。 「急な予定変更があると混乱しやすいため、変更が分かった時点でチャットで知らせていただけると助かります」 「口頭指示だけだと聞き漏れが起こることがあるため、重要な指示はメモやチャットでも共有していただけると、正確に対応しやすくなります」 このように、困りごと、仕事への影響、必要な配慮をセットで伝えると、職場側も対応を検討しやすくなります。 合理的配慮について詳しく知りたい方は以下のコラムもあわせてお読みください。 受診や専門家への相談が必要な場合 職場でのパニックが繰り返し起こる場合や、動悸、息苦しさ、強い恐怖感、外出への不安などがある場合は、医療機関への相談も検討しましょう。 特に、パニックの頻度が増えている、通勤や出社が怖くなっている、職場に行こうとすると体調が悪くなる、発作のような症状が繰り返し起こる、休んでも回復しない、眠れない状態が続いている、といった場合は、早めに相談することをおすすめします。 職場での工夫だけでは十分でないこともあります。主治医、精神科、心療内科、カウンセラー、支援機関などに相談し、自分に合った支援を受けることが大切です。 職場でのパニックは「自分を責める」より「対策を作る」 発達障害のある方が職場でパニックになる背景には、ASDやADHDの特性、職場環境、業務量、人間関係、過去の経験など、さまざまな要因があります。 パニック発作のように、強い不安や身体症状が起こる場合もあります。メルトダウンやフリーズのように、感情や行動のコントロールが難しくなったり、頭が真っ白になって動けなくなったりする場合もあります。 いずれの場合も、「本人の努力不足」と決めつけるのではなく、原因と対策を整理することが大切です。 パニックが起こったら、いったん安全な場所に移動する 落ち着くための定型文を用意しておく 自分のトリガーを記録する 急な予定変更やあいまいな指示への対策を作る 口頭指示を文字に残してもらう 優先順位を上司と確認する 感覚刺激を減らす 必要な合理的配慮を職場に依頼する 医療や支援機関にも相談する パニックは、気合いや根性だけで防ぐものではありません。自分の特性を理解し、自分に合った対処法を持ち、必要に応じて職場に配慮を依頼することで、働きやすさは少しずつ整えていくことができます。 そのためには、自分の特性やトリガーを知る「自己理解」、パニックが起こりそうなときに自分を落ち着ける「自己対処・ストレスコーピング」、そして必要な配慮を職場に伝えることが大切です。 一人で悩まず、サポートを受けるのも選択肢のひとつ とはいえ、自分一人だけで、自己理解を深めたり、自分に合った対策を見つけたりすることにハードルの高さを感じる方も多いと思います。そんなときに頼れる相談先のひとつに「就労移行支援」があります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、一人ひとりの特性理解を深め、発達障害による「働きづらさ」との付き合い方を学ぶプログラムを用意しています。パニックの原因や対策を知るだけでなく、リアルな職場を想定した環境で、パニックの予防策やパニックが起こったときの対処法を実践することができます。さらに、自分に必要な配慮事項を見つけ、就職先にサポートを依頼するためのフォローもおこないます。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
大人の発達障害|燃え尽き症候群(バーンアウト)の原因と対処法

ADHD・ASDがあると「燃え尽き症候群」になりやすい?その原因と、過集中・過剰適応のリスク、そして無理なく働き続けるための対処法を紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
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「特性上苦手な業務を、どうにか気合でやりすごした」「締め切り直前まで仕事が手につかず、前日徹夜をして乗り切った」 周囲に迷惑をかけないように頑張り続けた結果、ある日突然、糸が切れたように動けなくなった…そんな経験はありませんか。 ADHDやASDなどの発達障害がある方の中には、特性による仕事上の困りごとを抱えながらも、周囲に合わせようと無理を重ねたり、締め切り直前に過集中でなんとか乗り切ったりしてきた方が少なくありません。 一見すると、「頑張って乗り切っている」「なんとか仕事ができている」ように見えるかもしれません。しかし、その状態が長く続くと、心身のエネルギーを使い果たし、燃え尽き症候群、いわゆるバーンアウトに近い状態になってしまうことがあります。 この記事では、発達障害のある方が燃え尽き症候群になりやすい原因と、過集中・過剰適応のリスク、そして無理なく働き続けるための対処法をご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 燃え尽き症候群(バーンアウト)とは 「燃え尽き症候群のサイン」チェックリスト 燃え尽き症候群は、ある日突然起こるとは限りません。少しずつ心や体にサインが表れ、気が付いたときには「もう頑張れない」と感じるほど疲れ切っていることもあります。  朝どうしても起き上がれない 休日に一日中寝ていても疲れがとれない 趣味や好きなことに取り組む気力がない いつもなら数分で終わる業務に、何倍も時間がかかるようになった 人付き合いが過剰なまでに億劫に感じる 指摘や注意を受けると、過度に落ち込んでしまう 特性によるミス(ケアレスミス・聞き洩らし)が増えてきた いつもよりも特性が強く出ている(些細なことでパニックになる・感覚過敏が以前よりも辛い等) このようなサインが続いている場合は、無理を重ねすぎていないか、一度立ち止まって確認してみることが大切です。必要に応じて、医療機関や行政機関の窓口、(お勤め中の場合には)産業医などに相談することも検討しましょう。 燃え尽き症候群(バーンアウト)は、単なる疲労ではない 燃え尽き症候群とは、仕事や活動に熱心に取り組み続けた結果、強いストレスや過度な努力によって、心身のエネルギーを使い果たしてしまった状態を指します。 厚生労働省の「こころの耳」では、燃え尽き症候群を「活発に仕事をしていた人が、何らかのきっかけで燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状」と説明しています。またWHOもICD-11において、「うまく管理されなかった慢性的な職場ストレスの結果」とし、エネルギーの枯渇、仕事から心理的に距離を置く感覚、職業上の有効性の低下を特徴として挙げています。 燃え尽き症候群は単なる「疲れ」ではありません。朝起きるのがつらい、以前はできていた仕事に手がつかない、人と関わるのがしんどい、仕事への達成感が持てなくなる。そうした状態が続く場合は注意が必要です。 また、燃え尽き症候群は、「弱い人がなるもの」ではありません。むしろ、責任感が強く、周囲の期待に応えようと無理を重ねてきた人ほど陥りやすい状態でもあります。 筆者も、最初に就職した会社で、燃え尽きに近い状態になり、休職を経験しました。当時は、強い疲れを「頑張っている証拠」だと思い込み、むしろ充実していると感じていました。 しかし次第に、以前なら15分ほどで終わっていた名刺増刷のような定型業務にも、1時間以上かかるようになりました。「なんて自分はダメなんだろう」と自分を責め、それを取り返そうとしてさらに無理を重ねた結果、休職に至りました。 燃え尽きの前兆は、このような日常的な変化に表れることがあります。 発達障害がある方の場合、特性による困りごとを抱えたまま無理を続けることで、心身に大きな負担がかかることがあります。苦手な作業を一人で抱え込む・周囲に合わせようとして過剰に頑張る・ミスを防ごうとして常に緊張している…こうした状態が続くと、燃え尽き症候群だけでなく、うつ病や適応障害などの「二次障害」につながることもあります。 二次障害とは、発達障害の特性そのものではなく、特性による困りごとや強いストレスなどが重なることで、あとから生じる心身の不調を指します。だからこそ、早い段階で困りごとに気づき、必要に応じて相談や支援につながることが大切です。 大人の発達障害(ADHD・ASD)のある方が「燃え尽き症候群」になりやすい理由 ADHDやASDなどの発達障害がある方は、特性による困りごとをカバーしようとして、人一倍頑張ったり、周囲に合わせようとしたりすることがあります。その無理が積み重なると、心身のエネルギーを使い果たし、燃え尽き症候群につながることがあります。 ADHDの場合は、「やらなければいけない」と分かっていても締め切りが近づくまで着手できず、報酬や興味、直前の焦りや緊急性によってようやく集中できることがあります。一方、ASDの場合は、こだわりの強さ、予定変更の苦手さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの負荷などによって、仕事の中で強い疲れを感じることがあります。こうした負荷が長期的に続き、強い消耗状態に陥ることは「自閉的バーンアウト」として研究・議論されています。 つまり、ADHDの場合は「着手の難しさ」や「締め切り直前の過集中」、ASDの場合は「こだわり」「予定変更への負荷」「感覚的な疲れ」などが、燃え尽き症候群につながる要因になることがあるのです。 ここからは、発達障害のある方が仕事の中で無理を重ねやすい代表的な傾向として、「過集中」「過剰適応」「こだわり・完璧主義」「自己関連付け」の4つを見ていきます。 過集中:「エネルギーの前借り」で走り続ける ADHDのある方は、締め切り直前の焦りや緊張感によって、一気に集中できることがあります。その結果、普段はなかなか進まなかった仕事を短時間で仕上げられることもあります。 しかし、毎回この方法に頼ると、心身には大きな負荷がかかります。筆者は、こうした締め切り直前の過集中を「エネルギーの前借り」と考えています。短期的には仕事を終えられても、そのたびに翌日以降の体力や気力を使っていると、いずれ返済できない日が来るからです。 筆者も、この「エネルギーの前借り」を多用していました。会社員時代、毎月はじめに、同じビルに入っているグループ会社各社へ請求書を作成する仕事がありました。前任の先輩社員が、ある程度自動で計算できるExcelを残してくれていたものの、請求総額が確定してから各社分を計算し、請求書を作成して渡すまでの時間は限られていました。 毎月第一営業日の夕方になると、「今日中に出さなければ」と焦りながら、一気に集中して作業を進める。結果的には何とか間に合うのですが、終わったあとはぐったりしていました。当時は「短時間でやりきった」と思っていましたが、今振り返ると、まさに翌日以降の体力や気力を前借りするような働き方だったと思います。 「短期集中型」は、うまくいけば成果につながります。しかし、こうした働き方が続くと、心身ともに摩耗してしまいます。 過剰適応:困っていないように見せ続けてしまう 過剰適応とは、自分の本来の状態や限界を押し殺して、周囲の期待や職場のルールに過度に合わせ続けることです。 たとえば、本当は困っているのに「大丈夫です」と言う、苦手な作業を苦手と言えない、ミスを隠すために人一倍確認する、家に持ち帰って仕事をする、配慮を求めることに罪悪感を持つ、といった状態です。 こうした過剰適応は、ある意味ではサバイバルの方法です。しかし、続けていると自分の疲れや困りごとに気づきにくくなり、ある日突然、糸が切れたように動けなくなることがあります。 筆者もまさにこの典型でした。総務の庶務を担当していた頃、毎日のルーチン業務にも時間がかかるようになり 、先輩社員から「最近、社内の評判がすごく悪いよ。どうしたの?」と言われるようになりました。さらに、業務中の電話対応でうまく切り上げられず、同僚から「早く電話を切って」とジェスチャーされた瞬間、「もう駄目だ」と緊張の糸が切れました。その後、上司に休職の意向を伝えました。 こだわり・完璧主義:終われないことで消耗してしまう ASD特性として、こだわりの強さや予定変更への苦手さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの負荷などがある場合、仕事の中で強く消耗することがあります。 たとえば、完成度にこだわりすぎて終われない、手順を変えられない、曖昧な指示に不安が強くなる、予定変更で大きく消耗する、といった状態です。 完璧に仕上げようとすること自体は悪いことではありません。しかし、すべての仕事に100点を目指していると、時間もエネルギーも足りなくなります。 「100点を目指しているつもりはない」と感じる方もいるかもしれません。完璧主義は、「良いものを作りたい」という思いだけでなく、「悪く思われたくない」「ネガティブな指摘を受けたくない」という不安から生じることもあります。筆者は、とにかく「怒られたくない」「注意されたくない」という一心で、到達することのない「完璧」を目指して毎日終電ギリギリまで職場に残るなど、体力や精神力を消耗してしまった経験があります。 この場合、仕事量を減らすだけでなく、仕事の進め方、指示の受け方、完成度の基準、相談のタイミングを見直すことが大切です。 自己関連付け:「自分がやらなければ」と引き受けすぎてしまう ADHDやASDのある方の中には、周囲の状況や相手の表情を強く受け取り、「自分がやらなければ」と思い込みやすい方もいます。誰かが困っていそうに見えると自分の仕事でなくても引き受ける、少し注意されただけで「自分が全部悪い」と感じる、といった状態です。 気配りや責任感は大切な力です。しかし、引き受け続けると、自分の限界を超えていることに気づきにくくなり、過剰な負荷を背負い続けることがあります。 うつ状態に近づくと、特性による困難が強く出ることもある こうした無理が続き、燃え尽き症候群やうつ状態に近づくと、ADHDやASDの特性による困りごとが、より強く出ることがあります。 たとえば、もともと不注意が出やすい方は、疲労や睡眠不足によってさらにミスが増えることがあります。もともと着手が苦手な方は、気力の低下によってますます仕事に取りかかれなくなることがあります。 このとき、「自分は怠けている」「またダメになった」と責めてしまう方もいるかもしれません。しかし、燃え尽きに近い状態では、脳や体のエネルギーそのものが落ちています。普段できていたことができなくなるのは、気合いが足りないからではありません。 大切なのは、「無理をすれば働ける」ではなく、「無理をしすぎなくても働き続けられる」状態を目指すことです。 そのために次の章では、燃え尽き症候群を防ぐためにできる具体的な対処法を紹介します。 発達障害による燃え尽き症候群を防ぐ!無理なく働くため対処法 ここからは、発達障害のある方が、燃え尽き症候群を防ぐためにできることを紹介します。特性や現れる困りごとは一人ひとり異なるため、自分に合ったものから取り組んでみましょう。 大前提として大切なのは、「もっと頑張る」ではなく、「頑張りすぎなくても回る仕組みを作る」ことです。燃え尽きやすい方の多くは、すでに十分頑張っています。必要なのは、気合いではなく、負荷の調整です。 ① 過集中は「終わり方」を決めておく 過集中は、完全になくそうとしても難しいものです。大切なのは、過集中に入ったときの「終わり方」をあらかじめ決めておくことです。 たとえば、終了時刻を決める、アラームを複数回セットする、作業が終わる条件を決めておく、といった方法があります。特におすすめなのは、終了条件を具体的にすることです。 時間で区切って終わりにすることが苦手な場合には、タスクが完了したときの状態(ゴール)を明確にしておくこともおすすめです。たとえば「資料の確認」では終わりが曖昧ですが、「資料の数字の間違いを修正する」なら、どこまでやれば終わりかが分かります。筆者も、「時間が来たから終わり」と強制終了するより、「ここまでやった」と一段落して終える方が、無理なく切り替えやすいと感じています。 ② タスクを「見えるもの」に変える ADHDのある方にとって、頭の中だけでタスクを管理するのは大きな負荷になります。そこで大切なのが、タスクを書き出すことです。 ただし、おおざっぱに「資料作成」とするのではなく、タスクを細分化し「目的を書き出す」「締め切りの日付を書き添える」「構成案を書く」「最初の項目を書く」「上司に送る」など、小さな行動に分解することがポイントです。 タスクを書き出すことは、これからやらなければいけないことを目の前に置く行為となります。その意味では、抵抗感を覚えるかもしれません。しかし、それは同時にタスクを終わらせる道しるべでもあります。小さな行動まで書き出されたタスクは、自分がつまずかないように助けてくれる心強い同伴者となってくれることでしょう。 ③ 休息も予定に入れる 燃え尽きやすい方は、仕事の予定は入れていても、休む予定を入れていないことがあります。しかし、休息は「余った時間に取るもの」ではなく、働き続けるために必要な予定です。 たとえば、夜21時以降は仕事をしない、外出の翌日は軽めの仕事にする、会議が続く日は作業量を減らす、締め切り翌日は回復日として扱う、といったルールを作ります。 これは甘えではありません。長期的に働くためのメンテナンスです。 ④ 困りごとを言語化する 過剰適応をしていると、自分が何に困っているのか分からなくなることがあります。そのため、まずは困りごとを具体的に書き出してみましょう。 たとえば、指示が口頭だけだと忘れてしまう、締め切りが曖昧だと着手できない、優先順位を自分で決めるのが苦手、急な予定変更があると混乱する、完璧にやろうとして時間がかかりすぎる、などです。 困りごとが言語化できると、指示はチャットやメールでもらう、締め切りを日付で確認する、優先順位を上司に確認する、完成度の基準を事前に確認する、といった対策につなげやすくなります。 ⑤ 完璧主義には「合格ライン」を決める ASD特性や不安の強さがある方は、仕事の完成度にこだわりすぎてしまうことがあります。しかし、すべての仕事において100点満点を目指していると、時間もエネルギーも足りなくなります。 そこで、「この仕事は何点で出せばよいか」を確認しましょう。社内確認用なら70点、まずはたたき台なら60点など、仕事ごとに合格ラインを変えることが大切です。 完璧に仕上げる前に見せることで、手戻りを減らせることもあります。一人で抱え込んで100点を目指すより、途中で確認して方向性を合わせたほうが、結果的に負担は小さくなります。 一人で抱え込まず、無理のない働き方を探す もし、すでに燃え尽きてしまったように感じている場合は、まず回復を優先してください。燃え尽きている状態でさらに自分を追い込むと、回復が遅れてしまうことがあります。睡眠、食事、休息を整え、必要に応じて医療機関や相談窓口につながることが大切です。 回復してきたら、「なぜ燃え尽きたのか」を自分を責めるためではなく、再発を防ぐために振り返ってみましょう。どの時期から無理が始まっていたのか、何を我慢していたのか、どの場面で過集中や過剰適応が起きていたのかを整理することで、自分に合った働き方を考えやすくなります。 とはいえ、一人で特性を整理し、働き方を見直すのは簡単ではありません。だからこそ、支援機関や専門家に相談することも選択肢の一つです。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
人の話が理解できない…発達障害の「脳の特性」が原因かも

ADHD/ASD/APDの特性があり「聞こえているのに、内容を理解できない」という悩みを抱える方へ。今すぐできる具体的な対処法を紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「口頭で指示されたことが、頭に全然入ってこない」「複数のことを一度に言われると、混乱してしまいがち」「話をちゃんと聞いていないと叱られることがある」「何度も同じことを聞いてしまい、嫌な顔をされてしまった」 このような「話を理解すること」への苦手意識やお悩みを抱えていませんか。 「自分は理解力がないのだろうか」「仕事ができないのかもしれない」と、自己嫌悪に陥ってしまう方は少なくありません。しかし、それは努力不足や仕事スキル不足が原因ではなく、発達障害(神経発達症)による脳機能の特性が関係している可能性があります。 この記事では、発達障害のある大人が職場で「人の話が理解できない」と感じる原因と対処法を、筆者の体験も交えてご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 「人の話が理解できない」あるあるチェック まずは、発達障害のある方が職場で経験しやすい「理解困難」の場面をチェックしてみましょう。 特性は一人ひとり異なるため、人によってみられる「苦手」もさまざまですが、よくあるお悩みを10個あげます。 ▼ 職場での「理解困難」チェックリスト 口頭で指示されたことが、頭に入ってこない(聞いているはずなのに残らない) 複数のことを同時に指示されると、混乱して何から手をつければいいかわからなくなる 指示の意図を取り違えてしまい、まったく違う方向で仕事を進めてしまう 「あれ、これ、それ」といった代名詞が何を指しているのかわからなくなる 会議中に話を聞いているつもりなのに、途中から内容についていけなくなる 同僚や上司の言葉の「行間」や「ニュアンス」が読み取れない 何度も同じことを聞き直してしまい、叱られたり呆れられたりする 音は聞こえているのに、言葉として意味が入ってこない感覚がある 電話での会話が特に苦手で、内容を正確に把握できないことが多い 発達障害の特性がある方で、いくつか当てはまった場合には、それが「性格の問題」でも「怠慢」でもなく、脳機能の特性によるものである可能性があります。 「何度言ってもわからないのか」と叱責され、自分を責めてきた方もいるのではないでしょうか。しかし、理解するための「回路」が一般的な人と異なるだけで、あなたに問題があるわけではありません。その特性を正しく理解し、自分に合った方法を取ることが、何よりの解決策になります。 「人の話が理解できない」原因となりやすい発達障害の特性 発達障害には、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、SLD(限局性学習症)などがありますが、同じ診断名であっても、「人の話が理解できない」原因は一人ひとり異なります。 診断名だけに縛られず、「自分はどの特性が原因で理解に困難を抱えているのか」を把握することが、最初の大切な一歩です。ここでは、主な原因となりやすい特性を4つご紹介します。 ① 聴覚情報の処理が苦手 「聴覚情報」とはその名の通り「耳から入る音を通じて得る情報」を指します。 人によって、口頭など耳から入る情報を処理しやすい人もいれば、文字や図などの視覚的な情報のほうが理解しやすい人もいます。発達障害のある方の場合には「聴覚情報の処理」に困難がある方が多いと言われています。 このタイプの方は、耳から入った情報を脳内で処理・記憶する速度が、話のスピードに追いつかないことがあります。口頭で指示されると情報が頭に入らない、会話の内容がすぐ抜けてしまうといった困りごとが起きやすいです。 ② ワーキングメモリの弱さ ワーキングメモリとは、情報を一時的に頭の中に保持しながら処理する能力のことです。いわば「脳内のメモ帳」です。 ADHDのある方でみられることが多い特性の一つで、ワーキングメモリが弱いと、複数の指示を同時に受け取ったときに最初のほうを忘れてしまったり、話を聞きながら理解する処理が追いつかなかったりします。 「3つお願いしたいことがあって…」と言われた途端、3つ目を聞いた頃には1つ目が飛んでしまう、という経験に覚えがある方も多いのではないでしょうか。 聴覚情報の処理の「口頭指示の苦手」とは原因が異なり、「頭に情報が入ってくるが、記憶として留めておくことができない」という状況が起こります。 ③ 曖昧な表現の理解の難しさ ASDのある方に多い特性として、「言葉の字義通りの意味しか受け取れず、文脈やニュアンスが読み取りにくい」というものがあります。 「適当にやっておいて」「いい感じにまとめて」のような曖昧な指示は、どう解釈すればいいのかわからず混乱します。また、「さっきの件」「例のアレ」といった指示語も、何を指しているのかが理解できないことがあります。 「なぜ、こんな当たり前のことが分からないのか」と怒られる経験を繰り返すうちに、自己肯定感が著しく低下してしまうケースも多く見られます。 ④ APD(聴覚情報処理障害)や聞き取り困難の可能性 APDは「音は聞こえている(聴力に問題はない)のに、言葉が理解できない」障害で、発達障害(とくにADHD・ASD)と併存しやすいと言われています。「聞こえにくい・聞き取れない」という症状がみられるため、その結果「人の話が理解できない」と見られてしまうケースがあります。とくに、騒がしい環境、複数人での会話、電話、会議などで困りやすいのが特徴です。 なお、APDと発達障害の関連を示す研究(Riccio CA, Hynd GW, Cohen MJ, Hall J, Molt L. Comorbidity of central auditory processing disorder and attention-deficit hyperactivity disorder. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 1994)はありますが、よく引用される発達障害とAPDの併存率「50%」という数字は、小規模な子ども対象研究に由来するもので、そのまま一般化することはできません。 実際には、注意、ワーキングメモリ、言語理解など、複数の要因が重なって「聞き取りづらさ」として現れることも多く、背景を個別に見極めることが大切です。 こうした特性や困りごとを自分でもうまく説明できないまま、職場で無理を重ねてしまう人は少なくありません。 ただし、「人の話が理解しにくい」という現象は、発達障害だけが原因とは限りません。以下のような要因による「一時的な認知機能の低下」が影響している場合もあります。 過度なストレス・心理的負荷 慢性的な睡眠不足 うつ病や適応障害などのメンタル疾患 疲れが溜まっている時や環境が激変した時などは、誰しも脳の処理能力が落ちるものです。「自分はダメだ」と責める前に、今の生活環境や体調を振り返ってみることも大切です。 発達障害のある大人が陥りがちな「職場での悪循環」 特性による困難を抱えながらも、多くの方が職場でとってしまう行動があります。それが「無理をして特性を隠す」ことです。 「わかりました」と言ってしまう問題 「また聞き返したら怒られる」「仕事ができないと思われたくない」といった不安から、本当は理解できていないまま「わかりました」と言ってしまうことがあります。 指示内容がよく分からないときでも、質問をしたら相手に「そんなことも理解できないのか」と思われそうで、「知ったかぶり」を筆者はよくしていました。 理解できていない状態で業務を進めると、成果物が的外れになり、やり直しが増え、さらに叱責される…という悪循環に入ってしまいます。それは分かっているのですが、どうしても「わかりました」と反射的に言ってしまいがちでした。 「無理に隠す」ことの二次障害リスク 特性を隠すために毎日多大なエネルギーを使い続けると、慢性的な疲労・不眠・抑うつなどの二次障害につながるリスクがあります。 「みんなと同じようにできなければいけない」という思い込みが強い方ほど、SOSを出せずに限界まで頑張ってしまいがちです。しかし、無理に隠し続けることは長期的に見て、自分の健康にとっても、仕事の継続にとっても得策ではありません。 実際、ADHDのある筆者の知人が、クローズ(障害を開示しない)で働き続けた結果、体調を崩して休職をしてしまったことがありました。 大切なのは、自分の特性を正しく理解したうえで、自分に合ったやり方を「仕組み」として取り入れることです。その知人は、復職して自分に合ったタスク管理の「仕組み」を構築することで、継続的に働けるようになりました。 こうした「一時的な不調」の背景には、過剰適応や二次障害といった状態が隠れていることも少なくありません。以下の記事では、その仕組みや注意すべきサインが分かりやすくまとめられていますので、あわせてご覧ください。 無理をして「普通」に見せようと擬態し、エネルギーを使い果たしてしまう「過剰適応」について紹介しています。 職場での「話が理解できない」を防ぐ対処法 ここからは、特性ごとに有効な対処法を具体的にご紹介します。「全部試す必要はない」というのが重要なポイントです。まず自分の困りごとの原因に合いそうなものを1〜2つ試してみるところから始めましょう。 聴覚情報の処理が苦手・ワーキングメモリが弱い方向け メモを「見える化」して会話の記録を残す 聴覚情報が苦手な方にとって、最も基本的かつ効果的な方法は「その場でメモを取ること」です。ただし、話のスピードに手書きが追いつかない場合もあります。 ボイスレコーダー(スマートフォンの録音アプリ含む)を活用し、後で聞き返せる状態にする 上司に了承を得た上で、指示内容をその場でスマートフォンにメモする 手書きメモをその日のうちに、デジタルに打ち込み直す(情報を一元管理することが目的。Google Keep、Notionなどのアプリが便利) ADHDのある筆者の知人の中に、とにかく仕事のメモを書くための手帳を肌身離さず持っている方がいました。 あるとき、「なぜ自分がその習慣を続けているのか」に気づきました。それは、「自分はワーキングメモリが弱い。だから、メモ帳は命綱だと思って肌身離さず持ち歩き、すぐにメモを取れるようにしている」というものでした。それが分かった後、ワーキングメモリが弱いという特徴に負い目を感じなくなったそうです。 「指示確認シート」を自分で作る 筆者がおすすめしているのが、自分専用の「指示確認シート」を作ることです。指示を受けるときに使う、自分なりの「質問テンプレート」を事前に用意しておくのです。 ▼ 指示確認シートの例 この仕事のゴール(完成形)はどんな状態ですか? 期限はいつですか? わからないことが出たとき、誰に聞けばいいですか? このような質問を整理して手元に置いておくことで、「何を確認すればいいか」がわからない状態を防ぐことができます。最初は「こんなことを聞いたら失礼かな」と感じるかもしれませんが、むしろ「確認してから動く人」は周囲から信頼されます。 筆者は「知ったかぶり」をよくしていたと前述しました。その対策としてこの「仕事の完成形」「期限」「誰に聞けば良いか」だけは分かるまで聞くようにしていました。それが曖昧なまま話が終わりそうなとき、つい分かったふりをしそうになります。 そういう場面では、「今ここで確認したほうが、あとで必ずラクになる」と自分に言い聞かせて、勇気を出して確認していました。 どうしても「習慣化」が難しいときは… こうした対策を知っても、「やり方はわかったけれど、それを続けるのが難しいんだよな…」と感じる方も多いかもしれません。実際、特性がある場合、新しい行動を「習慣化」すること自体が非常に高いハードルになります。 そこで、無理なく続けるための「習慣化のコツ」を2つお伝えします。 1. 新しく始めず「今やっていること」に乗せる「メモ帳を取り出して書く」という新しい習慣を作ろうとすると、脳に大きな負担がかかります。そうではなく、今すでに無意識にやっている行動に組み込んでしまいましょう。 例: 毎日必ずLINEを開くなら、自分一人の「マイグループ」を作り、メモ帳代わりにする。 例: PC作業がメインなら、モニターの縁(必ず目がいく場所)に付箋を貼っておく。 「新しいツール」を使いこなそうとせず、今ある環境をそのまま使うのがコツです。 2. メモを取る時間を「堂々と」確保する「メモを取っている間に相手を待たせてしまう」という焦りから、メモを断念してしまうことはありませんか? 実は「待たせてはいけない」というのは思い込みであることが多く、相手はあなたが正確に仕事をしようとする姿を、意外と好意的に待ってくれるものです。 おすすめは、あえて相手の言葉を意図的にゆっくり復唱しながら書くことです。 「(書きながら)……はい、〇〇を......××までに......ですね...」 このように「今、私はメモを取っています」と明示することで、周囲に気兼ねなく時間を確保できます。復唱することで、その場で理解のズレも修正できるため、一石二鳥です。 曖昧な指示の理解が難しい方向け 「具体化」を習慣にする 「適当にやっておいて」という指示を受けたとき、曖昧(抽象度が高く、不明瞭)な表現が苦手というASDの特性がある方は何をどうすればいいのかわからず固まってしまうことがあります。こういう場面では、「具体化する」ことを習慣にしましょう。 「適当にやる」→「○○のフォーマットを使って、△△の項目を埋める、ということで合っていますか?」と言い換えて確認する 「なるべく早く」→「今日中・明日の朝まで、どちらでしょうか?」と具体的な期限に変換する 「いい感じに」→「前回の資料のようなイメージで合っていますか?」と参考例を確認する 曖昧な表現を「具体的な行動」に変換することで、自分が動きやすくなります。この習慣を取り入れると、指示の取り違えを減らしやすくなります。 ここでは「曖昧な表現の理解の難しさ」と書きましたが、筆者はこれを一方的な弱みだとは考えていません。むしろ、曖昧な事柄を見逃さないセンサーとして働くことがあるからです。 「復唱確認」を取り入れる 指示を受けた後に「では、○○をして、△△の状態にする、ということでよいですか?」と自分の言葉で復唱して確認する習慣も非常に効果的です。 この際、「自分の言葉」にすることが大事だと筆者は考えます。ただ相手の一言一句を再現するだけだと、意味内容をしっかり捉えていない可能性があるからです。自分の言葉にするプロセスがあることで、自分の中に内容が入っていくのだと実感しています。 復唱することで、自分の理解に間違いがないか確認できるだけでなく、丁寧に確認してから動こうとしていることも相手に伝わりやすくなります。多少時間を取っても、やり直しが減ることを考えれば、ずっと効率的です。 APD(聴覚情報処理障害)や聞き取り困難の可能性がある方向け 環境を整える・伝達手段を変えてもらう APDや聞き取り困難がある場合は、騒がしい環境で困りごとが強まりやすいとされています。可能であれば、環境自体を変えることが最も効果的です。 個室や静かなスペースで指示を受けることを相談する ノイズキャンセリングイヤホンを使用する(周囲の雑音をシャットアウトする) 口頭だけでなく、メールやチャットでも指示を送ってもらえるよう相談する 電話対応を最小限にし、テキストでのやり取りを主にしてもらう 筆者は、周囲の話し声と、目の前の相手の声が、同じくらいの強さで耳に入ってきてしまう感覚があります。そんなときには、相手の方に視線を合わせ、耳に手を添えて「もうちょっとよく聞かせてくれませんか」というジェスチャーをします。シンプルですが、それだけに汎用性のある工夫として筆者は幾度となく助けられています。 クローズ就労(障害非開示)の方向け 相手に負担をかけずに聞く 「クローズ就労」とは、職場に自身の障害や特性を開示せずに働くスタイルのことを指します。 その対となる「オープン就労(障害を開示して働く)」であれば、企業から「合理的配慮」として業務の進め方の調整を受けやすいですが、クローズ就労ではそうしたサポートを前提にできません。 そのため、 「合理的配慮を依頼できない」(自分一人でなんとかしなければならない) 「特性を隠しているため、不器用な自分を見せられない」(評価への不安や強いプレッシャー) といった精神的なハードルから、聞き方一つでも「仕事ができないと思われないか」「相手の時間を奪ってしまうのではないか」と、つい抱え込んでしまいがちです。 筆者はクローズ就労も経験しています。そこでは、配慮を「お願いする」のではなく「相手の説明する負担をこちらで半分引き受ける」という姿勢を見せることで、スムーズに周囲の協力を得る工夫をしていました。以下の3ステップをセットで実践してみましょう。 ①「悩んでいる」と先に開示するいきなり質問に入るのではなく、「今、ここで行き詰まって(悩んで)おりまして…」と一言添えます。この前提情報があるだけで、相手は「あ、助けが必要な場面なんだな」と話を聞くモードに入りやすくなります。 「〇〇の件で少しご相談なのですが、今、ここの解釈で少し悩んでおりまして…」 ②「不完全でもいいから自分の仮説」をぶつける「分かりません、教えてください」とゼロから聞くのではなく、「私は~~だと理解したのですが、この認識で合っていますでしょうか?」と、自分の解釈を提示します。たとえその解釈が間違っていても構いません。あなたが「理解しようと試みた」という事実が、相手の「どこから説明すればいいか」という負担を大きく減らしてくれます。 「私は『Aという進め方』だと理解したのですが、この認識で合っていますでしょうか?」 ③「選択肢」を用意する可能であれば「これはAでしょうか、それともBでしょうか?」と選べる形で聞くとさらに親切です。相手は「そう、Bの方だよ」と答えるだけで済むため、やり取りのコストが最小限で済みます。 「それか、『Bという進め方』という考え方もあると思うのですが、AとBどちらが良いでしょうか?」 自己対処で賄えない場合は「合理的配慮」を活用しよう 上記の対処法を試しても十分でない場合や、職場の理解を得ることが必要な場合は、「合理的配慮」という制度を活用することを検討しましょう。 合理的配慮とは 合理的配慮とは、障害のある人が働くうえで生じる困りごとに対して、職場が過重な負担にならない範囲で必要な調整や配慮をおこなうことです。2024年4月からは企業での合理的配慮が義務化され、障害のある方がサポートを依頼しやすくなりました。 相談する際は、「何が苦手か」だけでなく、「どんな場面で困るのか」「どうしてもらえると仕事がしやすくなるのか」まで具体的に伝えることが大切です。 「人の話が理解できない」ことへの配慮事例 口頭での指示に加えて、メール・チャット・書面でも内容を共有してもらう 複数の指示は、一つひとつ順番に出してもらう 会議の議事録を必ず作成し、共有してもらう 指示の優先順位を明確に伝えてもらう 録音やメモを取ることを許可してもらう 騒がしい環境での作業を避け、静かな席に配置してもらう 合理的配慮を求めるには、自分の特性を言語化して説明することが必要です。「なぜ困っているのか」「どのような配慮があれば改善するか」を具体的に伝えられるよう、日頃から自己理解を深めておくことが重要です。 「自分の特性の理解」こそ、最大の対処法 ここまでご紹介してきた対処法に共通するのは、「自分の特性を正確に理解することが出発点」だということです。 「なんとなく話を理解するのが苦手」ではなく、「自分はワーキングメモリが弱いから複数の指示が苦手だ」「聴覚処理が苦手で、文字情報のほうが入ってきやすい」というように、自分の困りごとの原因を具体的に把握していると、対策が格段に立てやすくなります。 一方で、「自分の特性を自分だけで正確に分析する」ことは、非常に難しい作業でもあります。長年の経験から思い込みが生まれていることもありますし、客観的な視点を持ちにくいこともあります。 そこで、一人で悩まずに専門家のサポートを活用することをおすすめします。就労移行支援などの専門機関では、自己理解を深めるためのプログラムや、特性に合わせた就労支援を受けることができます。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、あなたが「なぜ人の話が理解しにくいのか」「どんな工夫や環境があれば働きやすくなるのか」という特性の分析を、専門スタッフと一緒におこなっています。 それ以外にも、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害があると「生活リズム」が乱れやすい?5つの原因と整え方

夜更かし・朝寝坊や日中の眠気で仕事に支障が出ている…発達障害がある方が生活リズムを崩しやすい原因・対処法についてADHD当事者が紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「夜になると目が冴えて、気づけば深夜まで起きてしまう」「朝起きられず、遅刻や欠勤をしてしまう」「日中の眠気が強く、仕事に集中できない」「昼夜逆転生活がやめられない」 このような「生活リズムの乱れ」に悩みを抱える発達障害の方は少なくありません。 生活リズムの乱れは、気合いや根性の問題にされがちです。ですが、発達障害(ADHD・ASD)のある方の場合は、脳の特性・体内時計のズレ・感覚過敏・ストレス反応などが絡み合い、そもそも「整えにくい構造」を抱えていることがあります。 この記事では、発達障害のある方が生活リズムを崩しやすい原因を紐解きながら、今日からできる対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] なぜ発達障害がある人は「生活リズム」が乱れやすいの?5つの原因 まず、発達障害は先天的な脳機能の特性によって「生活の中での困りごと」が生じるということ(能力の優劣ではない)を理解しなければなりません。最近では、発達障害は「神経発達症」と呼ばれることが増えてきており、「脳の特性」ととらえられるようになってきています。具体的な特性について、代表例を紹介します。 ADHD:先延ばし、衝動性、過集中、時間感覚のズレ、切り替えの苦手さ ASD:感覚過敏/鈍麻、こだわり、見通し不安、対人ストレスの蓄積 これらは、睡眠や生活リズムの「整え方」に強く影響します。つまり、同じ「生活リズムが乱れる」という困りごとであったとしても、原因となる特性は人それぞれで、特性に合わせた対策を講じる必要性があるというのが前提です。その上で、発達障害のある人によく見られる「生活リズムの乱れ」の原因を挙げていきます。 1. 脳の働きによる影響 生活リズムが乱れる大きな原因の1つに、脳内にある「モード切替スイッチ」がスムーズに動かないことが挙げられます。2007年のSonuga-Barkeらの研究によると、私たちの脳には大きく分けて2つのモードがあるとされています。  「バリバリ集中モード」→ 仕事や家事、スマホ操作など、外の世界に意識を向けて活動している時の状態です。  「アイドリング内省モード」→ ぼーっとしている時や、自分の内面を見つめている時、リラックスしている時の「脳の休憩」状態であり、寝る前にこのモードになると、睡眠にスムーズに入ることができます。 通常、この2つはシーソーのように、一方がオンの時はもう一方がオフになります。しかし、発達障害の特性がある場合、このシーソーがうまく機能しない(バランスがとれない)ことがあります。 その結果、夜寝ようとしても脳が「バリバリ集中モード」から抜け出せず、強制終了できない状態が続きます。逆に朝は、脳が「アイドリング内省モード」に居座ってしまい、活動モードに切り替えるのに膨大なエネルギーを必要とします。 つまり、本人のやる気とは関係なく、「脳のギアチェンジ」がそもそも難しいことが、夜更かしや朝寝坊といった生活の乱れにつながりやすくなるのです。 筆者は、仕事が夜に入ると、かなりの確率でそのまま仕事を続けてしまう傾向があります。締切が特に指定されていなかったにもかかわらず、「今、これをやりたい!」という衝動が抑えきれなくなり、企業研修の企画書を一晩で一気に書き上げてしまったことがあります。 翌朝、完成したばかりの企画書を企業担当者の方に送ったところ、「えっ、もう出来たんですか!?」「いつ寝てるんですか……?」と、驚きを通り越して若干引かれてしまいました。 このようにスイッチが入って衝動を抑えられない状態は、実は自分自身の心身を無理に削ってエンジンを回している状態でもあります。実際、それから数日は、夜寝ても1時半や2時台などの不規則な時間に目が覚めてしまうことが増え、結果として生活リズムが大きく崩れてしまいました。 ただ、正直に言えば、早く終わって喜ばれると「やってやった」という嬉しさの方が勝ってしまい、生活リズムの乱れに対してあまり危機感を抱けない自分がいます。 しかし、客観的に見れば、これは寝不足や疲労という「しわよせ」を翌日以降に無理やり先送りしているだけです。その「負の貯金」がいずれ生活リズムを破綻させる引き金になることは、忘れてはならないのだと感じています。 2. 体内時計のズレ 発達障害のある方が「朝起きられない」「夜目が冴える」背景には、単なる夜更かしではなく、脳内の「体内時計」そのものが社会のリズムとズレやすいという特性があります。海外の「発達障害と睡眠」にまつわる研究情報を紹介します。 最新の研究(Bijlengaら, 2019)では、ADHDのある人の約75%に体内時計のズレが見られると報告されています。眠気を誘うホルモン「メラトニン」が分泌されるタイミングが、定型発達の人より平均して1.5時間〜2時間ほど後ろにズレています。本人が寝ようとしても、脳がまだ「昼間」だと認識しているため、物理的に眠ることが難しいのです。 自閉スペクトラム症(ASD)の方に関する研究(Gamlielら, 2018)では、メラトニンを体内で作るための遺伝子(ASMT)の働きが弱く、ホルモン量自体が慢性的に不足している可能性が指摘されています。これにより、「自然に眠くなる」という感覚が掴みにくく、眠りが浅くなりやすいという特徴があります。 発達障害のある方は、脳の中の時計が少し後ろにずれているため、脳が「今はまだ昼間だ」と言っているのに、外の世界はもう寝る時間…というギャップに悩まされることが多いのです。 その結果、寝つきの悪さや睡眠不足がどうしても起こりやすくなり、結果として社会のリズムに合わせるために必要な「朝起きること」が人一倍辛くなってしまうのです。さらに「夜寝られないから、朝起きられない」ということに加えて、脳が目覚めて活動するために必要なホルモン(コルチゾールやセロトニン)が適切に分泌されない傾向があるため、「夜も朝も、体内時計が狂ってしまいがち」になるのです。 3. リベンジ夜更かし 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすい理由としてよく言われているのが「リベンジ夜更かし」というものです。 リベンジ夜更かしとは、日中に失敗を積み上げてしまい、夜になって自分の時間が取れるようになると、まるで日中の失敗を取り返すように動画・ゲーム・SNS・趣味に深夜まで没頭してしまうことです。 これは、報酬がすぐ得られる刺激(スマホ等)に引っ張られやすかったり、先延ばしで日中のタスクが夜に残りやすかったり、過集中で切り上げどきが分かりづらくなるといったADHD特性との相性が非常に悪く、生活に支障が出ることも少なくありません。 なお、「リベンジ夜更かし」については、関連コラムでも、発達障害との関係や対策が整理されていますのでご覧ください。 4. 感覚過敏 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすいもう一つの大きな原因が「感覚過敏」です。 これは、周囲の環境からの刺激を人一倍強く受け取ってしまう特性で、寝ようとする時に脳を邪魔する「刺激」が多すぎる状態を指します。 例えば、布団のチクチクした感触やパジャマのタグ、エアコンの動作音や外を通る車の音、わずかなLEDの光や街灯の漏れ、さらには微かな匂いなど、定型発達の人には気にならない程度の些細な刺激が、脳にとっては無視できない不快感として刺さります。 こうした刺激があると、寝ようとしても脳が「安全じゃない」「気になる」を処理し続け、入眠が遅れます。結果として、寝る時間が後ろ倒しになり、生活リズムも崩れがちになってしまいます。 5. 日々のストレス蓄積と自律神経の乱れ 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすい5つ目の原因が、日常的な「ストレスの蓄積」です。これは、日々の生活で生じる「小さな負荷」を人一倍受け取りやすく、脳が常に緊張状態に置かれてしまうことを指します。 例えば、マルチタスクや急な予定変更への対応、対人コミュニケーションでの気疲れ、自分のこだわりと現実との摩擦、そして失敗経験の積み重ねなど、避けがたい日常の要素が大きな負担となります。ストレスが慢性化すると自律神経のバランスが崩れ、寝つきの悪さや中途覚醒、早朝覚醒といった睡眠トラブルを招きやすくなります。 こうした負荷があると、寝ようとしても脳が「安全じゃない」「休めない」と警戒し続け、入眠が遅れがちになってしまいます。 なお、日々の生活で溜まったストレスを「どう軽減し、どう付き合っていくか」という実践的な対処法については、こちらのコラムに分かりやすく整理されています。 生活リズムの乱れが仕事や日常に与える悪影響 一度生活のリズムが崩れると、単なる「寝不足」では済まない「負のループ」が始まってしまうことがあります。具体的にどんな悪影響があるのか、整理してみました。 1. 仕事の「信頼」と「質」が削られてしまう 日中の強い眠気は、本人のやる気とは関係なく、判断力を奪います。 集中力が落ちる:普段ならしないような「うっかりミス」が重なり、仕事の質が落ちてしまいます。 信頼の貯金が減る:朝起きられずに遅刻が増えると、職場の信頼関係にもヒビが入りかねません。 「気合でカバー」しようとしても、脳のパフォーマンスが落ちている状態では限界があります。 2. 心の元気がなくなっていく(メンタルへの影響) リズムの乱れは、心を安定させる脳内物質のバランスを崩してしまいます。 頭が働かない:常に頭の中にモヤがかかったような状態(ブレインフォグ)になり、集中できなくなります。 気持ちが沈む:気分の落ち込みを招きやすく、それがさらに「何もしたくない」という悪循環を加速させてしまいます。 イライラしやすくなる:感情のブレーキが利きにくくなり、些細なことで激しい怒りや自己嫌悪に陥ります。その興奮でさらに眠れなくなるという二次被害も招きます。 3. 身体の「土台」が崩れてしまう(健康への影響) 不規則な生活リズムが続くと、自覚のないまま深刻な身体的なダメージを蓄積させます。 自律神経の乱れ:活動と休息のスイッチがうまく切り替わらなくなります。動悸や慢性的な疲労感など、本人のやる気では制御できない「体の不調」を招きます。 生活習慣病リスク:不規則な生活は、高血圧や糖尿病のリスクを押し上げます。ストレスによる過食や運動不足も重なり、将来への「負の貯金」を溜めてしまいがちです。 ここまでの話は、現在お仕事をされている方だけへの話ではありません。今お休みしている方や、新しい仕事を探している方にとっても、生活リズムを保つことは「いつでも戦線復帰できるための準備」として極めて重要です。 リズムを戻すのは大変:いざ復職が決まった際、仕事の感覚を思い出すこと以上に、勤怠時間に合わせた生活リズムに調整することは、膨大なエネルギーが必要です。 最強の保険:仕事がない時期であっても、決まった時間に起きて光を浴びる。この「自分なりの心地よいリズム」を維持しておくことが、スムーズな再スタートを切るための「最強の保険」になります。 筆者も、実家で暮らしていた休職期間中、とにかく「朝起きて夜寝る」ことだけを家族と約束して生活していました。当時は「なんでそんなことを重視するのだろう」と思っていましたが、今考えるとそれこそが近道だったのだと感じています。実際に、リワーク(復職支援)では、休んでいる間も「規則正しい生活を送ること」を目指すサポートをおこなうことが多いです。 【今日からできる】生活リズムを整える具体的な対策 まずはここから!一般的な生活習慣の改善策 リズムを立て直すには、一度にすべてを変えようとしないことが大切です。ここは王道ですが、効果が大きい順(効果の出やすい順)に並べました。 起きる時間を固定する(最優先):土日も含め、まずは「何時に布団から出るか」を一定にします。ここがリズムのすべての起点になります。 朝に光を浴びる(カーテン全開・外に出る):目から光が入ることで、脳のタイマーがリセットされます。カーテンを開ける、あるいはベランダに出るだけでも効果があります。 朝食をとる(少量でも可):バナナ1本やヨーグルトだけでも構いません。食べ物が胃に入ることで、体の中の「第2の時計」が目覚めます。 日中に適度な運動(散歩で十分):昼間に体を動かすことで、夜に「ほどよい疲れ」が溜まり、寝つきを助けます。近所のコンビニまで歩く程度で十分です。 昼寝は短く(15〜20分程度に):もし昼寝をするなら、深い眠りに入る前の20分以内に抑えます。それ以上寝てしまうと、夜の眠気が逃げてしまいます。 生活のリズムを整えるために「早寝早起き」とよく言われます。筆者はその語順を逆にして「早起き早寝」を勧めています。眠くても一度頑張って起き、太陽の光を浴びて活動すれば、夜には自然と眠気がやってきます。この逆転の発想は、無理なく生活リズムを安定させられる有効な方法だと考えています。 発達障害ならではのコツと工夫 発達障害の特性のある人は、一般的な「早寝」の努力がうまくいかない場合もあります。そんなときは、以下の5つの視点を取り入れてみてください。 1. 寝る前の行動をルーティン化する(入眠儀式を作る) 脳が切り替えにくい人ほど、「今寝よう」という意思決定に頼ると負けやすくなります。毎晩同じ順番で行動し、脳に「これが来たら1日終わり」と条件付けをして覚え込ませます。「何度も繰り返し、習慣化させる」ことが、特性への対処をするための重要ポイントです。とくにASD特性の「マイルールへのこだわり」がある方は行動のルーティン化が効果的です。 例:└22:00 お風呂(シャワー)に入る└22:30 ストレッチを3分だけする└22:40 歯を磨く└22:45 ベッドへ行く(スマホは持ち込まない)└21:30 照明を少し落とす コツ:完璧にできなくてOK。「同じ流れ」をなぞること自体に意味があります。 2. スマホをベッドに持ち込まない(物理で勝つ) ADHD特性があると、スマホは「無限に報酬(刺激)が出る装置」になり、自力で止めるのは至難の業です。意志の力で戦わず、物理的な距離で解決します。 ベッドから手が届かない場所にスマホを置く 充電場所を寝室の外(リビングなど)にする アラームはスマホではなく、専用の「目覚まし時計」を使う 夜間は通知を完全に切る(おやすみモードを自動設定する) あるいは、もっと強力な「物理での勝ち方」として、スマホロックボックスを活用する手もあります。時間を設定し、時間が来るまでスマホを閉じ込めて強制的にスマホを使えなくするのです。 3. 過集中対策は「開始」ではなく「終了」を設計する 夜の趣味や作業が止まらない人は、「やらない」と決めるより、「終わる仕組み」を先に置いておくのが現実的です。 〇時になったら自動でWi-Fiが切れるように設定する タイマーが鳴ったら、反射的に立ち上がって歯を磨くルールにする 画面の明るさが自動で落ちる設定にして、視覚的に「終了」を促す 家族や支援者に「〇時になったら声をかけて」と、外部の力を借りる 4. 感覚過敏がある人は「寝具と環境」に優先投資する 眠れない原因が「刺激」なら、我慢したりするのではなく環境を整えることが大きな助けになります。睡眠環境の改善は、努力よりもコストパフォーマンスが高い領域です。 肌触りが気になるなら、タグが当たらない寝間着や、肌触り重視のシーツを選ぶ 光が気になるなら、アイマスクや完全遮光カーテンを使う 音が気になるなら、耳栓やホワイトノイズ(換気扇のような一定の音)を流す 「重み」があると安心するタイプなら、加重ブランケット(ウェイトブランケット)を試す 筆者の場合、寝間着の首元にある小さなタグが肌に触れる感覚で目が冴えてしまうことがありました。今では、タグは根元から切り取るようにしています。 5. 「夜に考えない」仕組み(不安・反省の暴走を止める) 夜は不安が増幅されやすい時間帯です。反省が止まらず脳が仕事を始めてしまうのを防ぎます。 不安はメモに吐き出す:明日の予定や不安は紙に書き、「紙に預けた」として脳から追い出す。 反省は朝に回す:夜の反省は禁止。「続きは明日の朝、明るいところで考える」と決める。 頭がうるさい日は音を流す:無音だと思考が暴走するため、単調な音声(ラジオや朗読など)を小さく流して、脳の注意をそらす。 自力で改善するのが難しいときは無理せず頼ろう 生活リズムは、努力だけではどうにもならないことがあります。特に、長期間の不眠や日中の強い眠気が続く場合、「生活習慣」だけでは片づかない領域に入っていることがあります。 睡眠障害が疑われる場合は医療機関へ 発達障害のある方は、日常の「小さな負荷」を人一倍受け取りやすく、それが慢性化することで「二次障害」としての睡眠障害を抱えやすくなります。 これは、周囲に合わせようとする過度な適応努力(マスキング)や、失敗経験の積み重ねにより、脳が常に「警戒モード(過緊張)」になってしまうことが原因です。この状態では、リラックスを司る副交感神経がうまく働かず、心身が休まらない悪循環に陥ります。 筆者も、前職で休職に至る直前、この過緊張による「早朝覚醒」に苦しみました。「明日は絶対に失敗できない」「誰よりも早く会社に行って準備しなければ」という強烈なプレッシャーから、まだ外も暗い午前3時や4時にパッチリと目が冴えてしまうのです。 一度目が覚めると、頭の中は仕事の不安で埋め尽くされ、二度寝など到底できませんでした。 こうした「早く行かなければ」という焦燥感による早起きは、決して健康的なものではなく、脳が疲弊しきった末に出していた「悲鳴」でした。 このように、心理的な負荷が自律神経を乱し、寝つきの悪さや中途覚醒、そして深刻な早朝覚醒を引き起こすことは、発達障害の特性のある方にとって決して珍しいことではありません。 ここまで紹介したセルフケアや工夫だけでは改善が難しい場合、あるいは以下のような状況に当てはまるなら、早めに心療内科・精神科・睡眠外来などを受診することを検討してください。 眠れない/起きられない状態が数週間以上続く (一時的なものではなく、慢性化している) 日中の眠気で仕事や運転にリスクがある (自身の安全や、他者の安全に関わるレベル) 気分の落ち込みや不安が強くなってきた (睡眠の問題がメンタルに波及し、二次障害が深まっている) いびき・無呼吸が疑われる (物理的な呼吸のトラブルが睡眠の質を下げている可能性がある) 生活を維持するのにしんどさを感じる (食事や入浴などの日常生活の動作に負担を感じる) 「病院は他に打つ手がなくなった時の最後の手段」と考えてしまいがちですが、決してそうではありません。医療機関や専門家は、あなたの生活を壊さないための、心強い「守る手段」の一つです。 自分だけで抱え込まず、プロの力を借りて脳のスイッチをメンテナンスしていくことも、生活リズムを立て直すための非常に現実的な選択肢です。 障害福祉サービスやサポートツールの活用 生活リズムは、自分ひとりの意志で立て直そうとするよりも、外部の「伴走」があるほうが圧倒的に安定しやすくなります。 1. 専門の支援サービス 生活面の土台づくりや就労準備をプロが支えてくれる仕組みがあります。 自立訓練(生活訓練):自立した日常生活や社会生活を営むために必要となるスキル習得のサポートやアドバイスをおこなうサービスです。 就労移行支援:一般就労に向けたスキル向上や就職活動をサポートするサービスです。生活リズムの安定は働くための「基礎体力」として、個別のアドバイスを受けることができます。 2. 日々の習慣を支えるツール 特性による「切り替え」や「忘れ」を補うために、以下のようなツールを「少数に絞って」使うのが効果的です。 生活・睡眠ログ:現状を客観的に把握する(ウェアラブル端末など)。 リマインダー:服薬、入浴、消灯など、ついつい先延ばしにする行動を通知する。 ブロッカーアプリ:夜間のSNSや動画視聴を物理的に制限する。 筆者の経験からも、「便利なツールを増やす」より「これだけは頼れる仕組みを一つ作る」ことの方が重要だと実感しています。 筆者はリマインダーアプリを一つに絞って愛用していますが、これがあるからこそ今の生活と仕事が成り立っています。つい最近も、月初に「経費のレシートまとめ」を無事終えられましたが、これは1か月前の自分がリマインダーをセットしておいてくれたおかげでした。 「未来の自分」に指示を出す仕組みを一つ定着させるだけで、日常生活も仕事もぐっと楽になります。 セルフモニタリングで自分のリズムを知ろう これまで色々と「生活リズムの整えかた」をお伝えしましたが、その大事な第一歩は、「正しい生活をしよう」ではなく、自分の好調・不調のパターンを知る、いわゆる「セルフモニタリング」をおこなうことです。 セルフモニタリングでは、こんな項目を1〜2週間だけ記録します。 寝た時間/起きた時間 寝付くまでの時間 夜更かしした日の「直前の行動」(スマホ、仕事、趣味、反省など) 日中の眠気(強い時間帯) カフェイン、昼寝、運動の有無、その日の満足度(リベンジ夜更かしの指標) その日のストレス(ざっくりでOK) すると、「夜更かしの引き金」や「眠くなる波」が見えてきます。見えれば対策は、気合いではなく設計に変えられます。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、セルフモニタリングの方法や生活リズムを整えるためのプログラムを提供しています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害】転職を繰り返すのはなぜ?原因と長く働くためのコツ

仕事が続かないのは、ADHD/ASDの特性とのミスマッチが背景にあることも。発達障害のある方の短期離職の原因と長期就労を目指すコツを紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「長く働くつもりだったのに、またすぐに辞めてしまった…」「次の職場でも、どうせすぐに辞めてしまう気がする…」 そんな悩みを抱えていませんか。 転職回数が増えてくると、「自分は社会に向いていないのでは」「また短期間で辞めてしまうのでは」と、不安や自己否定の気持ちが強くなることがあります。しかし、転職を繰り返すことは、必ずしも「忍耐や努力が足りない」「性格の問題」というだけではありません。発達障害の特性と、仕事内容や職場環境が噛み合わないことで、働き続けることが難しくなる場合もあります。 特性が「退職理由」の背景にある場合、辞めたくなる気持ちは、「合わない場所から離れる」という一種の防衛反応とも言えます。 この記事では、転職を繰り返しやすい方のパターンと発達障害の特性との関連を整理しながら、ADHDの特性がある筆者の経験も交えつつ、長期就労につながりやすい対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 【チェックリスト】転職を繰り返す人に多い「短期離職」のパターン まずは、発達障害がある方の短期離職の原因を整理してみます。いくつ当てはまるかを確認しながら読み進めてみてください。 あなたの退職理由は? 気持ちが高ぶった勢いで「辞めます」と言ってしまった 仕事が覚えられず、職場にいることがつらくなった ミスが続き、注意されるのが怖かった 頑張っているのに、仕事がうまくこなせなかった 人間関係がうまくいかず、職場での居心地が悪かった 朝起きられず遅刻が増え、会社に行きづらくなった 「普通にできるふり」を続けてしまい、心身が限界になった これらは、発達障害がある方の退職理由の中でもとくに多いものです。当てはまる場合は単なる「努力不足」ではなく、発達障害の特性と職場環境のミスマッチが退職の背景にあった可能性があります。これから、なぜこうしたことが起きやすいのかを、特性との関連で見ていきます。 発達障害の特性と「早期離職」の深い関係 発達障害の特性は人によってさまざまですが、ここでは短期離職と関連しやすい特性のうち代表的なものをいくつか紹介します。診断の有無にかかわらず、「似た傾向があることで働きづらさを感じている」という方にも参考になる部分があると思います。 ADHD|「衝動性」によってその場の感情で動いてしまう 職場で嫌なことがあったとき、気持ちが強く揺れた勢いで、退職を伝えてしまうことがあります。たとえば以下のような状況です。 上司に注意された直後に、反射的に辞意を伝えてしまう 相談する前に「辞めるしかない」と結論を出してしまう その場を離れたい気持ちが強く、選択肢を考える余裕がなくなる 衝動性が強いと、「一度落ち着いて考える」「他の方法を検討する」といった「間」を作りづらくなることがあります。その結果、退職以外の選択肢(業務の調整、配置換え、相談、休職など)を検討する前に、退職に進んでしまうことがあるのです。 筆者は、会社勤めから個人事業主へ働き方を変えましたが、退職を決めた発端はまさに衝動性によるものだったと思います。 自分がやりたい仕事があり、会社では別の仕事をしている 本業として会社の仕事を、副業としてやりたい仕事をしてきたが、一日の大部分の時間を会社の仕事に取られるのが我慢できなくなった 会社の仕事に興味を失い、「辞めるしかない」としか考えられなくなった ADHD|「不注意」によって仕事のミスが生じる 短期離職の理由として多いのが、「仕事が合っていない気がする」という感覚です。この言葉はとても曖昧になりやすいのですが、実際には次のような流れで「合わなさ」が強まっていくケースが見られます。 ミスや抜け漏れ、遅れが増える 指摘される回数が増え、評価が下がったと感じる 自信がなくなり、緊張や不安が強くなる さらにパフォーマンスが落ち、ミスが増える 「自分は向いていない」と思い込み、退職につながる ここで大切なのは、「向いていない=能力がない」と決めつけないことです。合わない仕事や環境では力が出にくくなります。 ADHD特性と相性が悪くなりやすい業務例 単調な作業が長時間続く(集中が切れた時にミスが起きやすい) 精密な確認作業が多い(細かな抜け漏れが問題になりやすい) マルチタスクが前提(切り替えの負担が大きい) 割り込みが多い環境(集中が途切れやすい) 筆者も、管理部門の総務という典型的な事務職の職場で働いていました。そこでは、絶えず発生する社内外の問い合わせにタイミングよく対応しながら、社内の備品を定期的にチェックしたり、権限設定の複雑な入退室のカードを適切に管理したりしなければなりませんでした。当時の筆者にとって、一番相性が悪い仕事のオンパレードでした。 一方で、特性に合う条件がそろうと就業が安定しやすいことがあります。筆者は、人前でプレゼンテーションをしたり文章を書くことに抵抗が無かったので、社内イベントの司会や形式的に整った文書の作成などとは相性が非常に良く、「この仕事は合っている」と感じていました。 面倒なことに、この「相性が悪い仕事」も「相性が良い仕事」も、同じ「総務の職場」でのものでした。今までを振り返ると、素の自分が100%合わない職場は無かったように思いますが、100%合う職場というのも無かったという印象です。 ASD|「コミュニケーションの苦手」によって人間関係がうまくいかない ASDのある方は、言葉の受け取り方や伝え方に「ズレ」が生じやすく、以下のようなケースが積み重なって人間関係のストレスにつながることがあります。 冗談や遠回しな言い方が読み取りづらい 暗黙のルールが分からない 会話のタイミングが合わない また、本人は真面目に対応しているつもりでも「冷たい」「空気が読めない」と受け取られてしまい、注意や指摘が増え、職場に居づらくなるケースがあります。こうした状況が続くと、疲れやすさや自己否定が強まり、結果として退職に至る方も少なくありません。 筆者は診断はADHDですが、こういった傾向を自覚しています。総務として働いていたとき、会社の飲み会の仕切りが非常に苦手でした。周囲に気を配って食べ物やお酒を追加注文しつつ、タイミングよく会話を盛り上げる。気の利いた締めの一言で会を終わらせる。「それも総務の仕事のひとつ」と言われて頑張りましたが、苦痛以外の何物でもありませんでした。 ASDのコミュニケーション特性は、指示の捉え違いによる仕事の失敗、接客や営業職でのお客様とのやりとりがうまくいかない等、業務上の「苦手」につながることもあります。 ASD|「感覚過敏」によって職場環境にストレスを感じる ASDの特性の一つに、音・光・におい・肌ざわりなどの刺激に敏感な「感覚過敏」があります。たとえば、以下のような刺激が強い負担となり、集中が途切れたり疲労が急激に増えたりします。 電話の音や周囲の雑音 蛍光灯の光 香水や柔軟剤のにおい 本人の努力だけでは対処が難しく、「仕事の内容」以前に「環境がつらい」状態になってしまうこともあります。結果として、体調を崩したり、通勤や出社が苦痛になったりして、離職の引き金になることがあります。 筆者は、スーツが苦手です。衣服が体にフィットする感覚は苦痛でしかなく、それを着るだけで思考力が落ちるような気がします。服装自由のIT企業でも、「スーツはサラリーマンの戦闘服だ」と言われてスーツでの勤務を推奨され、比較的大きさに余裕のある服装で出勤すると「あれ?夏休み?」と嫌味を言われたことがあります。 これら以外にも、発達障害の特性によって、以下のような困難が生じ、退職につながるケースがあります。 ADHD:日中の眠気・やる気が起きない ADHD:先延ばしグセや時間見積もりに苦手があり、締め切りに間に合わない ADHD:忘れ物や失くし物などが続き、注意や叱責を受ける ASD:指示が曖昧・抽象的なときに、理解ができなかったり不安になったりする ASD:急な変更やイレギュラー対応が重なると、負荷が一気に高まりやすい ASD:複数の仕事をバランスよくこなすことが難しい ASD:こだわりが強く、業務フローの変更を受け入れられない 上記以外にも、さまざまな「特性による働きづらさ」が生じることがあります。 こうした困難を「自分の努力で何とかしなければ」と抱え込んでしまうと、必要以上に頑張りすぎて心身がすり減ってしまうことがあります。頑張りすぎることで、「過剰適応」「二次障害」といったさらなる悪影響につながることもあります。 人間関係や環境によるストレス(過剰適応・二次障害) もう一つ、短期離職につながりやすい要因として「過剰適応」があります。周囲に合わせるために無理を続け、特性を隠して「普通にできているように見せる」「困難がないように振る舞う」状態、いわゆる「擬態」を長く続けてしまうと、心身の負担が大きくなりやすいです。 相談したいけれど、迷惑をかけたくなくて言えない ミスをしても助けを求められず、抱え込んでしまう 人に合わせ続けて疲弊し、ある日突然動けなくなる このストレスが蓄積すると、うつ状態や適応障害などの二次的な不調、いわゆる「二次障害」につながることもあります。こうしたつらさを少しでも感じたら、無理に一人で抱え込まず、医療機関や支援機関に相談することも大切です。 なお、「擬態」をしていると、このストレスを溜め込んでいてもなお、それを無視して擬態を続けてしまう悪循環に陥りがちな傾向があります。 筆者もこの「擬態」スキルを磨きに磨いてしまった結果、ある時期を境に「普通なら15分程度で終わる仕事が、1時間半経っても終わらない」「会社に向かおうとしても足が動かない」といった状態に陥り、医者から「抑うつ」と診断されて休職を余儀なくされた経験があります。 「過剰適応」「擬態」「二次障害」について思い当たる方は、ぜひ下記の関連コラムをあわせてお読みください。理解が深まり、対策の参考になることでしょう。 転職を繰り返さないためにできること【自己対処と環境選び】 ここからは、「精神論」ではなく、現実的に取り入れやすい対処の方向性を整理していきます。ポイントは、自分にムチ打って頑張り続けるのではなく、続けやすい形に整えることです。 自己理解を深めて「自分に合った働き方」を知る 長く働くためには、「好き・嫌い」だけではなく、特性を踏まえた「向き・不向き」を整理しておくことが役立ちます。たとえば以下のような観点です。 集中しやすい条件は何か(静かな環境、時間制限がある、動きがある等) 特性による苦手が出やすい条件は何か(割り込み、曖昧な指示、同時並行等) どんなときに調子を崩しやすいか(睡眠不足、叱責が続く、相談できない等) どんな工夫があると安定しやすいか(手順書、チェックリスト、メモの許可等) 「自分の取扱説明書(ナビゲーションブック)を作る」ようなイメージで、条件を言語化していくと、仕事選びや職場選びの精度が上がりやすくなります。 以前、筆者はこのようなことを「甘え」だと捉えていました。集中できない環境でも集中する頑張りを見せる、苦手を克服する、調子が悪くても無理矢理根性で乗り切る、工夫よりも執念、そういったことを良しとしていました。 もちろん、頑張ることや諦めないメンタリティなどは大切です。一方で、特性を踏まえて「向き・不向き」を把握し、より自分が力を発揮できるようにする努力も大事なものです。それは決して「甘え」ではありません。発達障害の特性がある方に向いている仕事選びのコツについては、以下の関連コラムもぜひあわせてお読みください。 現在「一般雇用枠」で働いている方の場合は、障害や特性を開示したうえで、必要な配慮を受けながら働ける「障害者雇用枠」を検討するのも一つの方法です。 必ず切り替えるべき、という意味ではありませんが、業務の進め方や職場環境について相談しやすくなり、働きやすさにつながることもあります。ご自身の体調や働き方の希望を踏まえ、支援機関や専門家と一緒に、開示の範囲や選択肢を整理してみると安心です。 自分を守るための「セルフケア」と「相談」 衝動性が強い方の場合、「辞めたい気持ち」を無理に消すより、決断する前に立ち止まる仕組みを作ることが役立ちます。 その場で結論を出さない(時間を置く) 退職を言う前に、必ず相談する相手を決めておく 「辞めます」ではなく「相談したいことがあります」と言い換える 生活リズム(睡眠・食事・服薬管理など)を整える 土台が安定すると、同じストレスでも受け止めやすくなることがあります。「やる気の問題」ではなく、調子の波を小さくする「セルフケア」を行うことが大切です。自分の「感情のコントロール」の仕方を身につける方法(認知行動療法など)を学んでみてもよいかもしれません。 このセルフケアのタイミングですが、筆者は過去を振り返って、「思うより早くすべきだった」と考えています。日常的に繰り返していることに少しでも変化があれば、気に留めておくと良いでしょう。 混雑するターミナル駅での乗り換えを避け、ちょっと回り道をして別の駅で乗り換えをする 時間はかかるが確実に座れる別の路線で帰宅する 電車賃の何倍ものお金をかけて職場から家へタクシーで帰る これらはいずれも筆者の休職直前の変化です。しかし当時は、「ちょっとした通勤の工夫」「頑張っている自分へのご褒美」という感覚でした。今振り返ると、それはセルフケアをすべきサインであったように思います。 職場での「合理的配慮」を検討する 働き続けるためには、本人の工夫だけでなく、「合理的配慮」が助けになることがあります。合理的配慮とは、障害や特性によって生じる困難を軽減するために、職場が可能な範囲で行う調整のことです。 発達障害の特性に対する配慮事例 指示を口頭だけでなく、チャットやメモで残してもらう 優先順位を一緒に整理してもらう チェック工程を仕組みとして組み込む(抜け漏れ防止) 席配置の工夫、騒音や刺激の調整 手順書・テンプレート・チェックリストの活用 「合理的配慮」という字面から、「会社に一方的に配慮してもらうなんて申し訳ない」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。筆者もそう考えたうちの一人でした。約20年前、初めて会社に就職したとき、採用担当者から配慮事項を聞かれて「いえ、ありません。ご迷惑をおかけせず、一生懸命頑張ります」と答えてしまいました。 合理的配慮は、もちろん職場側との調整ではありますが、それをすることによって職場全体にも良い影響を与えることが多いです。指示の言語化、優先順位の共有、働きやすい職場、手順書による業務の平準化など、その恩恵を受けるのは本人にとどまらないこともよくあります。 なお、合理的配慮については、下記の関連コラムでより詳しくご説明しています。よろしければこちらもあわせてお読みください。 【事例紹介】「続かない」を克服し、長期就労を実現したケース ここでは、短期離職を繰り返していた発達障害のある方が、工夫と環境調整によって安定して働けるようになった例をご紹介します(個人が特定されないよう内容は一部調整しています)。 事例:Nさん(20代後半・ASD)「ミスマッチの修正」と「外部サポートの活用」で安定 Before 広告系スタートアップ企業に入社するも、タスクが納期通りに終わらないことや業務のミス、職場でのコミュニケーションの難しさが重なり、自責が強まる。3年目の終わりに適応障害で休職し、療養中にASDの診断を受けた。 Action 平日毎日の記録と週1回の面談で状況を整理できる、発達障害当事者向けの個人コンサルを活用し、負担を減らす工夫を具体化しました。付箋・手帳・Notionなどを試しながら自分に合う形を整えていきました。 After 転職活動と資格勉強、繁忙期が重なる時期でも、個人コンサルで教わった方法でリソースを見積もって調整できるようになり、内定を獲得し、資格試験にも合格。新しい職場で一般雇用枠での就労を継続中。 ポイント 「気合い」ではなく、記録と振り返りの仕組みで立て直したこと 配慮が得にくい環境だったので、外部サポートでカバーする体制を確保したこと 繁忙期に崩れやすい局面で、リソース見積もりと調整ができるようになったこと 事例:筆者「過剰適応をやめ、無理のない働き方」へ Before 職場に合わせようとして無理を重ね、「できているふり」を続けていました。しかしミスなどから業務に支障が出てくるようになり、突然休職。その後退職してクローズド就労(障害を開示しない働き方)で転職するも、まったく同じ理由でまた休職し、「また続かなかった」と自分を責める気持ちが強くなっていました。 Action 自身のミス発生事例と向き合い、「できなくても頑張る」ではなく「できないものはできないと認めた上で自己対処をする」姿勢へ転向。一般には「タスク管理」と呼ばれる方法で自己対処をし始めました。 After 勤怠が安定し、残業もほぼなしで無理なく仕事を回すことができるようになりました。「忘れがち」「先送り癖」「段取り苦手」といった自身の特性を受け入れ共存しながらも、仕事で結果を出せるようになりました。 ポイント 「無理をして頑張り続ける」ではなく、自身の特性を受け入れて無理を減らしたこと 特性をカバーする「やり方」を身に付けたこと 結果的に生活リズムが安定し、より働きやすい環境を作れたこと 一人で悩まず、就労支援のプロを頼ってみませんか? 転職を繰り返してしまうと、「次もダメかもしれない」という不安が大きくなり、相談すること自体が難しくなることがあります。ですが、短期離職の背景には、特性と環境のミスマッチや、過剰適応による疲弊など、整理できる要因があることも少なくありません。 自分だけで抱え込まず、ときには第三者を交えながら「何が起きているのか」「どうすれば続けやすくなるのか」を整理していくことで、少しずつ選択肢が増えていく可能性があります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
職場で発達障害が理解されない原因は?「3つの壁」と対処法

職場で発達障害が理解されないのはなぜ?原因と誤解を減らすための対処法、心が楽になるマインドセットをADHD当事者の経験を交えて紹介します。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
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「発達障害の特性について何度説明しても、分かってもらえない」「ちゃんとやっているのに、努力不足・怠けていると思われてしまう」 そんな悩みを抱えていませんか。 職場で「やる気がない」「変わった人」「仕事ができない人」と誤解され、孤独や生きづらさを感じている発達障害のある方は少なくありません。一生懸命に工夫し、努力しているにもかかわらず、その努力が見えず、評価にもつながらない。そんな状況が続けば、「どうせ分かってもらえない」と心を閉ざしてしまうのも無理はありません。 この記事では、発達障害がなぜこれほどまでに理解されにくいのか、その構造的な理由と、職場で誤解を減らすための具体的な対処法を、筆者の経験も交えてご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] なぜこれほどまでに伝わらないのか?理解を阻む「3つの壁」 発達障害のある方が「理解されない」と感じる背景には、個人の説明力や努力の問題ではなく、構造的な「壁」が存在します。ここでは、そういった壁を3つに分けてお伝えします。 3つの壁について紹介する前に、発達障害の特性についておさらいしましょう。 発達障害(ASD・ADHD)とは 発達障害は、生まれつきの脳機能・神経系の特性と周囲の環境とのミスマッチが生じたときに、日常生活・社会生活に困難が生じる「社会性の障害」です。 近年では、DSM-5やICD-11の改訂にあわせて「神経発達症」という呼び方に変わりつつあります。 ASD(自閉スペクトラム症):対人コミュニケーションやこだわりの強さ、曖昧な指示の理解の難しさなどが特徴とされており、環境によって困りごとが大きく変わります。 ADHD(注意欠如・多動症):不注意(抜け漏れ・忘れやすさ)や多動・衝動性の特性があるとされ、やる気とは関係なくミスが起きやすかったり、段取りが難しかったりするのが特徴です。 発達障害は「見えづらく・分かりづらい障害」と呼ばれています。これが「周囲からの理解」を得ることが難しい原因で、生きづらさや働きづらさを生み出す「壁」となるのです。 1.「見えづらさ」の壁(物理的不可視性) 発達障害は、外見からは分かりません。車椅子や白杖のような、誰の目にも分かる補助具があるわけではないため、そもそも「配慮が必要な障害がある」という認識を持ってもらいにくいという特性があります。 その結果、 困っていること自体に気づいてもらえない どこに困難があるのか想像されにくい 「普通にできているように見える」と判断されやすい といった状況が生まれます。 当事者からすれば、毎日必死にバランスを取りながら働いているのに、周囲からは「問題なくこなしている人」に見えてしまう。このギャップこそが、理解されない苦しさの第一歩です。 筆者も、自分がADHDであることを伝えると、「言われなければ分からなかった」「そう見えない」とほぼ毎回言われます。明らかにオドオドしていたり、いつも物を落としたり、話しぶりが特徴的であったりしていれば「そうかもしれない」と腑に落ちるのかもしれません。 しかし、筆者は普通にしているぶんには、特徴的な仕草などもありません。頭の中では色々なことが錯綜していたりするのですが、それが周囲に分かるようになるには、何か問題が顕在化したときであることが多いのです。 いっそのこと、ウルトラマンのカラータイマーのように「混乱したら光る」といった周囲に分かりやすいサインがあれば、と思うこともよくあります。 2.「分かりづらさ」の壁(ギャップと多様性) 発達障害の特性の大きな特徴のひとつが、できること・できないことの差が極端に大きいことです。 たとえば、 メールやチャットでの文章は論理的で分かりやすいのに、口頭報告になると途端に言葉が詰まる 複雑な資料作成やデータ分析は得意なのに、電話対応や雑談が極端に苦手 集中できる作業では高い成果を出せるのに、単純作業や切り替えが必要な場面でミスが続く このような凹凸のある特性は、「やればできるのに、やっていない」「手を抜いているだけでは?」という誤解を生みやすくします。 さらに、同じ診断名であっても特性は十人十色です。「前にいたADHDの人はこうだった」「ASDならこういうはず」という思い込みがあると、個別の困難が理解されにくくなります。 筆者が以前勤務していた会社では、総務の重要な仕事の一つである「社用車の管理」を任されました。重要な仕事を任せてもらったことはとてもありがたいことでしたが、筆者は運転免許も持っていませんし、車にまったく興味がなかったのです。 発達障害の診断の際、筆者が医師から受けた説明に「興味関心に偏りがある」ということがありました。興味のあることは知識として定着しやすいが、興味がなければ右から左だということでした。そんな筆者が、全国に1,500台ある営業スタッフの車や、800台の現場作業員の車を管理するのは、困難を極めました。ある支店の事務員さんと社用車についての電話をしていたところ、うまく対応できずに「使えない」と言われて電話を切られたことは、今でも忘れられません。 一方で、法律の勉強を年単位でやっていたこともあってか、株主総会関連の業務には難なく取り組むことができました。各部署の部長を集めた株主総会に向けてのキックオフ説明会での司会・進行を行った際、参加していた部長の方々からも認められるほどの大成功を収め、めったに褒めない上司から「でかした!」と言われるほどでした。 このように、できること(株主総会説明会の司会)・できないこと(社用車の管理事務処理)の差がはっきりしすぎて、きっと上司は筆者を理解しかねたことと思います。 3.「程度の違い」の壁(定型発達の『私もそうだよ』問題) 発達障害による困難は、一見すると「誰にでもありそうなこと」に見えます。 忘れ物をする ケアレスミスが多い 音や匂いが苦手 集中が続かない そのため、周囲からはこんな言葉をかけられることがあります。 「私も忘れっぽいよ」「誰だってミスくらいするよ」「そのくらい我慢すればいいんじゃない?」 言っている側に悪気はありません。むしろ「共感しているつもり」「励ましているつもり」なのです。 しかし、当事者にとっての困難は、単なる不快や不便ではなく、生活や仕事が成り立たなくなるレベルの苦痛です。この「質と量の違い」が理解されないことで、「自分の我慢が足りないのかもしれない」と、自分を責めてしまう人も少なくありません。 筆者も、この周囲からの「共感」「励まし」が逆効果になってしまったことがあります。一番効いたのが、同じ部署の先輩に「きみ、最近社内で評判悪いんだけどさ」と言われ、「色々あるのは分かるけど、忘れたりケアレスミスしたりなんか自分だってあるし、そんなの挙げていったらきりがないよ。だから、頑張ろうよ」と話されたときです。 先輩にしては、「自分もよく忘れるしミスもする」「だから気にしないでいこう」と伝えて筆者を励まそうとしてくれていたのだと思います。しかし、そのときの心の動きは、 「社内で評判悪い」 → そうだったのか......やはり自分はちゃんと仕事をすることができないのか 「自分だってミスする」 → いや、自分はそんなレベルじゃない 「だから気にしないで」 → 他の人がミスしたところで自分のミスがなくなるわけじゃないし気になる といった具合で、余計に自分の至らないところを自分でえぐったような気分になってしまいました。 職場での壁を超えるための「伝え方」のコツ ここからは、職場において「理解してもらえない」状況を少しでも改善するための、実践的な伝え方を紹介します。大切なのは、感情を訴えることではなく、業務にどう影響していて、どうすれば改善できるのかを具体化することです。 事例1:「指示待ち・気が利かない」と言われる(ASD傾向) 曖昧な指示や暗黙の了解が多い職場では、ASD傾向のある方は「自分なりに考えたつもりでも、ズレてしまう」ことが起こりやすくなります。 NG例 「曖昧な指示が苦手です」 → これだけだと、「努力不足」「柔軟性がない」と受け取られがちです。 OK例 「認識のズレを防ぐため、期限と優先順位を数値で指示いただけると、ミスなく最速で動けます」 → 「困っている」ではなく、「こうすると成果が出る」と伝えることで、業務改善の提案として受け取ってもらいやすくなります。 ただ、曖昧さを具体化するのを相手にのみしてもらうことになるので、もう一歩「自分なりに具体化して相手に確認する」とできるとさらに良いです。 「了解しました。ということは、明日中までにA4一枚に構成と内容を自分なりに書いたものをたたき台としてお出しする、ということでよろしいでしょうか?」 ここまですると、「曖昧なことが理解しづらい」という傾向は、「指示を明確に理解して確認できる」という強みになります。 相手からすると「明確な指示を伝える」は手間に感じるかもしれませんが、適切な指示を繰り返していくことで、情報が蓄積され、ASDの特性がない人よりもアウトプットの質が高まる傾向があると言われています。 事例2:「ミスが多い・やる気がない」と言われる(ADHD傾向) ADHD傾向のある方は、「気をつける」「頑張る」だけではミスを防ぎきれません。 NG例 「次からもっと注意します」「より精査を徹底します」 → 精神論は、結局同じ指摘が繰り返される原因になります。 OK例 「目視確認だけだと抜け漏れが出やすいため、読み上げソフトを使った確認工程を入れさせていただけないでしょうか」 → 仕組みで解決する姿勢を見せることで、「やる気がない」という誤解を減らすことができます。 さらに、より説得力を持たせるための伝え方として、「自分の憶測や願望などの主観をできるだけ入れない」ことが大事です。自分の主観が入ってしまうと、説得力が弱くなってしまうのです。 「目視確認だけだと抜け漏れが出やすいため」「多分次回は大丈夫だとは思うのですが」 ← 憶測・願望「読み上げソフトを使った確認工程を」「念のため......これならきっとうまくいくんじゃないかと考えているので」 ← 憶測・願望「入れさせていただけないでしょうか」 このようについ主観を入れてしまいがちですが、話も冗長になりがちなので、できるだけ入れずに、シンプルに伝えるとより良いです。 事例3:「感覚過敏」が「わがまま・神経質」とされる 感覚過敏は、「好み」や「性格」の問題と誤解されやすい代表例です。 NG例 「この音が嫌いです」「この匂いが苦手です」 OK例 「聴覚過敏があり、周囲の音に過剰に反応してしまいます。イヤーマフを使用することで集中力を維持でき、業務効率が上がります」 → 機嫌や好みではなく、業務パフォーマンスの話に変換することがポイントです。 筆者も、たとえば企業様へ研修講師として登壇する際、必ず服装について確認を取るようにしています。スーツが体に触れる感覚が苦手なので、あらかじめカジュアルに寄せた服装にさせて欲しいとお願いしています。 その際、ただ「スーツが苦手なので、カジュアルな格好をさせて欲しい」とだけ伝えると、こちらの要望を一方的に伝えるだけになってしまいます。そこで、「スーツが体に触れる感覚が苦手なので、より集中してお話をするために、カジュアルな服装でお伺いしてもよろしいでしょうか?」と業務パフォーマンスの話としてご相談するようにしています。 それでも理解されない時のマインドセット どれだけ工夫して伝えても、すべての人に理解されるとは限りません。そんなときに、自分を守るための考え方も大切です。 業務遂行上のメリット/デメリットで判断してもらう 職場は「共感し合う場」ではなく、「業務を遂行する場」です。友達のような理解を求めなくても、必要な配慮が得られれば十分だと割り切ることも、ひとつの選択です。 心から共感してもらえなくても、「こういうときは、こう対応してもらう」というのは、業務を進めていくために必要なのであれば十分可能です。前述の研修登壇時の服装の相談も、 スーツを着用しなくていい → 違和感なく集中しやすい → 話のクオリティを保てるというメリット スーツを着用する → 感覚過敏で集中しにくい → 話のクオリティに影響が出かねないというデメリット という、あくまでメリット/デメリットという基準で判断をしてもらっています。感覚過敏についてご説明して共感してもらうのも良いのかもしれませんが、かなり言葉を尽くして理解してもらわないといけなくなるので、スピーディーに業務を進めるのは難しくなってしまいます。 「悪気のない人」とは戦わない 「私もそうだよ」「だから、そんなこと気にしないで頑張っていこう」などと言われたとき、否定したくなる気持ちは自然です。しかし、真っ向から受け止めてしまうと疲弊してしまいます。 「そうなんですね」「〇〇さんもなんですか!」と、まずは相手との共感ポイントを作って受容の姿勢を見せつつ、「私は診断を受けてやっと分かったんですが、なかなか気持ちだけではクリアできないところもありまして......」などと、診断の有無といった客観的な境界線を相手との間に引き、淡々と伝えることがおすすめです。 さらに、「相手が分かっていない・自分だけが我慢している」という気持ちにならないように、理解が不十分な相手とのやりとりをするときには「自分から歩み寄れてえらい!社会性があがった!」と自分をほめてあげることも大事です。気持ちがいくぶん楽になるはずです。 まとめ:まず自分から、「見えない困難」を認めてあげよう 周囲に見えなくても、私たちの困難は確かに存在しています。そして、私たちはその困難と毎日向き合いながら生きています。 他人に完全に理解してもらう前に、自分自身が自分の一番の理解者でいること。これが、長く働き続けるための土台になります。 「自分なりの工夫だけでは限界がある」「第三者の専門的なアドバイスを受けながら、自分に合った働き方を見つけたい」という方は、就労移行支援事業所などの障害福祉サービスに相談するのも一つの有効な手段です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【当事者解説】発達障害と診断されたらどうする?やるべきことは?

ADHD当事者の筆者が、診断を受けたあとの行動ステップ、利用できる制度、職場への伝え方、自己理解・特性への工夫までを解説します。

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  • #合理的配慮
  • #就労移行支援事業所
  • #障害者雇用
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「発達障害と診断されたけれど、どうすればいいのか分からない」「職場や家族に伝えるべきか、必要な手続きはあるか」 そんな不安を感じていませんか。 診断を受けた直後は、気持ちが揺れやすく、今後のことを考える余裕が持ちにくい時期です。焦らずに少しずつ整理していけば、自分らしく働き、暮らしていくための方法を見つけていくことができます。 この記事では、ADHDの診断を受けた筆者が、「発達障害と診断されたら」というテーマで、診断に至るまでの流れから、診断後にできること、そして周囲との向き合い方までをお伝えします。今の環境をより過ごしやすく整えるためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 診断に至るまでによくあるきっかけ まだ診断を受けていない方・受けるか悩んでいる方も多いかと思います。まず最初に、診断を受けたきっかけについて紹介します。 診断後にやるべきことについて今すぐ知りたい方は、「診断後にできる行動のステップ」からお読みください。 発達障害は、症状が突然あらわれて診断がくだるものではなく、日常生活や仕事の中で感じる「やりづらさ」や「違和感」から、少しずつ気づいていくケースが多いです。 職場でうまくいかない場面が続いたとき 「同じ注意を受けることが多い」「予定の調整が難しい」「会議中に集中が続かない」など、仕事の中で自分でもうまく回せていないと感じることが続く場合があります。 筆者が「自分は発達障害かもしれない」と思ったきっかけがまさにこのパターンでした。 法律事務所の事務員をアルバイトでやっていて、電話の対応がうまくできなかったり、お客様にお渡しする大事なお金を事務所に置いたまま外出してしまったりといった場面が続き、「もう雇い続けられない」と契約を終了することになりました。 続けて不動産仲介の小さな会社でアルバイトを始めるのですが、そこでもファイリングに明らかに時間がかかりすぎてしまったり、お客様を物件に案内できず迷子になってしまったりと、自分でも「何かおかしい」と考えるようになりました。 そこで、「仕事 うまくいかない」「仕事 ケアレスミス」といったワードで検索をかけてみたところ、「発達障害」という言葉を知り、クリニックで診断を受けました。 情報を見て「もしかして自分も」と感じたとき テレビや記事、SNSなどで「大人の発達障害」「ADHD」「ASD」といった言葉を目にし、自分の行動パターンや考え方に似ていると感じて受診する方も少なくありません。 これまで言葉にできなかった「生きづらさ」や「頑張ってもうまくいかない理由」に納得できることで、ほっとしたり、次の一歩を考えやすくなる方も多いようです。 筆者は、診断はADHDだったのですが、発達障害について知るにつれて、ASDの傾向もあるかもしれないと思うようになっていきました。 「抽象的な言葉が理解しづらい」「言葉にならない行間を読むのが苦手」といったASD特性のある方の経験談をSNSやウェブなどでよく見ます。筆者もそれを見て、「そういえば自分もそうだ!」と思い、ASD傾向への対策も取り入れて仕事や生活をするようにしています。 メンタル不調で通院したときに分かることも ストレスや疲れの蓄積で心療内科・精神科を受診した際に、医師から「発達障害の傾向があるかもしれません」と指摘されるケースもあります。 気分や体調の波が大きいと感じている場合、その背景に特性が関係していることもあるため、専門の医療機関で相談してみることが一つの選択肢になります。 診断後にできる行動のステップ 風邪などの病気は、診断があり、薬を処方され、服薬をすれば治っていきます。診断を受けたら、ある程度終わりが見えることが多いです。しかし、発達障害の診断は、診断→自己理解→対策という流れの「始まり」だと考えて良いでしょう。 以下に、診断を受けた後に意識しておくとよい5つのステップを紹介します。 1. 自分を知る時間をつくる 診断を受けたあと、焦って誰かに伝えたり、手続きを急いだりする必要はありません。まずは「どんな場面でうまくいかないのか」「どんな条件なら力を発揮しやすいのか」を整理してみましょう。 得意・不得意の傾向を書き出す 困った場面をメモして、どんな工夫が有効だったかを記録する 特性を理解しているカウンセラーや医師に話してみる このような記録は、後で職場や家族と話すときにも役立ちます。 筆者は、逆にこの時間をつくらなかったため、少々回り道をしてしまいました。診断を受けたあとに、クリニックのソーシャルワーカーの方に就労について相談して障害者雇用の話を聞き、すぐに就職活動を始めたのです。 スピーディーに事が進んだのは良いのかもしれませんが、その反面、自分自身の得意・不得意などもしっかり把握せずに仕事を始めてしまったため、仕事がうまくいかず体調を崩して休職するということを2社連続でしてしまいました。 もし診断を受けた当時の自分に今の自分がアドバイスするなら、「まずは就職を焦らずに、自分のことを知る時間を確保しよう」と言うと思います。 2. 利用できる制度や支援を調べる 発達障害がある方を支える制度は複数あります。それぞれの特徴を知り、必要に応じて利用を検討するのをおすすめします。 医療機関での継続的なフォロー(通院・カウンセリングなど) 発達障害者支援センターでの相談(生活や就労について) 就労移行支援などの障害福祉サービス(働く準備のサポート) 合理的配慮を得るための社内相談 前述のとおり、筆者は診断を受けてすぐに就職活動を始めたのですが、それは制度や支援機関についての知識がなかったというのも一因でした。特に、「就労移行支援事業所」というものの存在を知らず、応募書類の作成なども自力か友人の力を借りてやっていました。 ただ、支援制度や相談窓口の情報を知らなかったことで、結果的に一人で抱え込みすぎていたように思います。どこに相談すればいいか分からないときは、まず信頼できる情報を集めることが大切です。 そこで、頼れる専門の相談窓口を紹介します。 発達障害者支援センター:発達障害がある方やご家族が、生活・就労・福祉制度などの相談をできる地域の支援拠点です。お住まいの市区町村の障害福祉窓口:障害者手帳や福祉サービスの申請・利用方法を案内してもらえる窓口です。 精神保健福祉センター:こころの健康や生活・仕事の悩みを専門職に相談できます。 障害者就業・生活支援センター:働くことと暮らしの両面から支援を受けられる機関です。 ハローワーク:障害者雇用の相談や求人紹介、応募書類の作成サポートなどを受けられます。 地域障害者職業センター:職業評価(自分の職業適性や課題、支援方法を知るためのもの)や就職後の定着支援など、専門スタッフによる助言が得られます。 医療機関:治療や服薬の相談のほか、利用できる支援制度を紹介してもらえる場合もあります。 就労移行支援事業所:就職に向けた訓練や生活リズムの整え方、ビジネスマナーなどを学べる障害福祉サービスです。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、診断を受ける前の方、診断を受けたものの障害福祉サービスの利用をするかどうか決めていない方からのご相談も承っています。お気軽にご相談ください。 お問い合わせフォーム▶ 3. 職場への伝え方を考える 発達障害などの障害があると、障害者雇用のオープン就労で働く場合は、自身の障害を開示して、そんな自分が働きやすい環境を作るための「合理的配慮」について伝えることができます。 ただ、「診断名」だけを伝えるだけでは、周囲の人たちも何をすれば良いか分かりづらいものです。それだけでなく「具体的にどんな支援があると働きやすいか」を整理しておくことがポイントです。 たとえば、以下のように合理的配慮事項を伝えると、周囲の人も対応しやすくなります。 指示は口頭だけでなく、メモやメールでももらえると助かる 優先順位を一緒に確認してもらえると安心できる 集中しやすい静かな場所で作業したい 筆者は、この「合理的配慮」を、「自分の弱みをさらけ出すようで気が引ける」と考えていました。したがって、最初の障害者雇用のオープン就労の際に合理的配慮を聞かれたときに、「いえ、特にありません」と答えてしまいました。 合理的配慮は、あくまで自分と周囲がスムーズに働けるようになるためのものであり、職場の全員のメリットになるものです。変に遠慮すると、かえって職場に迷惑をかけてしまうこともあります。事実、筆者は合理的配慮を満足に伝えずに就労した結果、仕事がうまくいかなくなって休職してしまいました。伝えるべきことは、きちんと伝えることが大事だったなと、心底思ったのを覚えています。 そのためにも、職場のコミュニケーションの取り方や、どこまで伝えるかについては、一人で抱え込まずに相談してみることはとても大切だと考えています。 4. 生活と仕事のバランスを整える 自己理解をして、職場で働くための環境を整えることは、生活の安定性があってこそ十分に発揮されます。 睡眠・食事・休息のリズムを整える スケジュールを見える化し、予定を詰め込みすぎない 定期的に「最近どう感じているか」を振り返る 厚生労働省の就労準備性ピラミッドでは、「働くためのスキル」「社会人としての基本的な習慣」などを支える土台として、まずは「こころとからだの健康」や「日常生活のリズム」が大事なものと位置づけられています。 健康を維持し、日常生活を無理なく続けられる習慣をつくることは、自分らしく働くために最優先事項だと考えたいところです。 診断後の話ではありませんが、筆者が仕事がうまくいかずに休職したときのことです。当時実家に住んでいたのですが、休職の意味をしっかり理解していた親は、「とにかく休むことを優先しよう」と言ってくれました。ただ、1つだけ約束しました。それは、「朝起きて夜寝るというリズムは守ろう」ということでした。 今考えると、この最優先事項だけをしっかり守るという模範的な姿勢だったなと考えています。そのおかげか、しっかり休みつつもスムーズに次の段階へ移行できたという実感がありました。 日常生活のリズムを整えることは、こころとからだのメンタルヘルスを守りながら、無理なく働き続ける土台になります。ぜひ気を付けていただきたい点です。 5. 障害特性への工夫を考える  発達障害がある方の多くは、仕事や生活の中で「忘れやすい」「集中が続かない」「整理が苦手」といった特性を感じることがあります。 こうした特性は、努力や根性で克服するものではなく、自分に合った工夫を取り入れることでうまく付き合っていくことが大切です。 以下は、ADHD当事者である筆者が実際に取り組んでいる工夫で、特性や性格などによって、一人ひとり必要なもの・合う対策が異なりますので、参考としてお読みください。 仕事での工夫の例 タスクを見える化する:付箋やアプリで「やることリスト」を作り把握する。 スケジュール管理を習慣化する:会議や打合せなどの予定はすぐにカレンダーへ入力し、リマインダー機能を活用する。 作業環境を整える:集中しやすい静かな場所を選ぶ、デスク上をシンプルに保つ。 一度に抱えすぎない:同時に複数の作業を進めず、「今はこれだけ」に絞る。 筆者自身も、ADHDの特性である「注意の散りやすさ」を補うために、自分の抱える仕事を書き出して一覧化し、常に「次にやるべきこと」を具体的にして「今日やること」をメモに書き出すようにしていました。やるべきことが明確になることで、落ち着いて仕事を進められるようになりました。 日常生活での工夫の例 家事をルーティン化する:曜日ごとに掃除・洗濯などを決めておくと、迷う時間が減りやすくなります。 金銭管理をシンプルにする:現金での管理は使った履歴を残しづらい(レシートをなくす)ため、できるだけクレジットカードで支払うようにする。 忘れ物対策をする:鍵や財布を置く箱を用意し、出かける前に箱を確認するだけにしておく。 「できたこと」に注目する:完璧を目指すよりも、できたことを記録し、自分を肯定する時間を持つ。 こうした工夫は、特性を無理に変えるのではなく、「自分に合った環境をデザインする」ための方法です。 自分の行動パターンを理解し、小さな工夫を積み重ねることで、仕事も生活も少しずつ安定していきます。 よくあるご質問と考え方 ここでは、診断を受けた後の対処のしかたや、どう行動したら良いかなどについて、よくある疑問についてお答えしていきます。 Q. 会社に伝えたほうがいいですか? A. 伝えるかどうかは、状況や職場環境によって異なります。「配慮があれば働きやすくなる」「理解を得たい」と感じる場合は、信頼できる上司や人事担当者に相談する選択もあります。 一方で、伝えずに働き続けている方もいます。自分が働きやすいと感じる方法を選ぶことが大切です。 Q. 家族や友人に話すべきですか? A. 伝える相手や範囲も自分で決めて構いません。家族や親しい人に理解してもらうことで、生活面の協力を得やすくなることもあります。ただし、相手の理解度や関係性を見ながら、無理のない範囲で話すことをおすすめします。 Q. 障害者手帳は取得した方がいいですか? A. 手帳を取るかどうかは、その方の状況によって異なります。 主なメリット 障害福祉サービスや支援を利用しやすくなる 税制や公共料金の優遇が受けられる場合がある 検討ポイント 手続きに時間や準備が必要 「手帳を持つ」ことに心理的な負担を感じる方もいる 手帳は申請や手続きに時間がかかることもあるので、医師や支援センターなど専門家と一緒に判断していくと安心です。 Q. どんな制度やサービスがありますか A. 代表的な制度としては以下のようなものがあります。 発達障害者支援センター(相談・情報提供) 障害年金(生活・就労に継続的な難しさがある場合) 就労移行支援事業所(働くためのトレーニング・就職活動支援) 発達障害と向き合うために大切なこと 診断を受けることで、「苦手の原因」や「自分の得意なスタイル」が見えてくることがあります。発達障害がある人の中には、集中力・創造力・記憶力などを強みとして発揮できる方も多くいます。 「できないことをなくす」よりも、「できることを増やしていく」意識で取り組むことが、自分らしさを活かす第一歩になります。 こうしたことも含めて、自分の特性を理解しながら、安心して働くための環境づくりは、一人で抱え込まずに進めることが大切です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害の「擬態」─無理せず、自分らしく働くためのヒント

周囲に馴染むために本当の自分を隠そうとする「擬態」についてADHD当事者が解説。無理に特性を隠すことで起こるリスクや対処法について紹介。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「本当の自分を知られたくない」「仕事ができないと思われるのが怖い」「障害があることが知られたら嫌われるかもしれない」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害のある方のなかには、周囲に特性があることを悟られないように、定型発達者のように振る舞おうとすることがあります。これを「擬態」あるいは「ソーシャルカモフラージュ」と呼びます。 この記事では、ADHDの診断を受けた筆者から、発達障害のある方が無理をして特性を隠すことで生じるリスクと、より無理なく働き続けるための対処法を、経験談を交えてご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場やこれからの就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 擬態(カモフラージュ)とは何か 「擬態」とは、本来の自分の特性を隠し、周囲に適応するために意識的・無意識的に振る舞いを変えることを指します。発達障害の分野では「ソーシャルカモフラージュ」と呼ばれることもあります。 たとえばASD(自閉スペクトラム症)の方は、「空気が読めない」と指摘された経験から、表情や声色のわずかな変化まで必死に観察し続けます。ADHDの方は「忘れ物が多い」と言われないように、過剰なチェックを常に繰り返します。 このように、「障害がある自分を受け入れてもらえないかもしれない」という不安や、「もう失敗したくない」という体験から、当事者は自分を抑圧し、演じるように振る舞うことがあります。 筆者も、擬態せざるを得ない状況に置かれたことがあります。一般雇用でクローズ就労をしたときのことです。クローズ(=障害を開示しない)なので、当然特性があるとは周囲に言えません。しかも、その会社には、年齢が30代中盤だったことから役職を付けて採用してもらいました。 役職付き、つまりチームのリーダーとしての役割を果たす必要がありました。しかも自分のタスクも当然こなさなければなりません。「ADHDで抜け漏れが多い」「先送り癖がある」とは言えない状況でした。 必然的に、「抜け漏れのないプレイングマネージャーであらねばならない」「チームメンバーの手前、先送りなどしてしまっては示しがつかない」と考えるようになり、擬態を余儀なくされました。 擬態は、ある種の生存戦略でもあります。 相手の反応を見て相槌のタイミングを真似(模倣)する。会議の段取りや資料の形式にも合わせる。こうした調整は、脳機能の特性を補うために生まれることがあります。 実際、筆者は発達障害当事者へのインタビューをする機会も多いのですが、「笑顔で合わせ続けた結果、帰宅後にぐったりして動けない」という声が繰り返し語られます。 発達障害のある当事者がこうした擬態を続けると、「自分を押し殺して、無理に社会に馴染もうとする」生き方になりがちです。しかもそれは仕事の場面だけではありません。 例えば、飲み会で本当は早く帰りたいのに「場を壊さないように」と笑顔を続ける。親族や友人との集まりで、不得意な雑談に相槌を合わせ、興味のない話題に同調する。LINEのやり取りひとつでも「変に思われない言葉」を探して何度も書き直す。休日も「充実している人」を演じるために予定を詰め込み、安心しようとする。 こうして職場でもプライベートでも「社会に溶け込むための演技」を続けるうちに、気がつけば心も体もすっかり消耗してしまうのです。 擬態が生まれる背景 発達障害のある方が「擬態」をする理由には、大きく4つの要因が考えられます。 ①過去の失敗体験 業務上のミスや、学生時代の人間関係での失敗体験。こうした経験から「二度と同じ失敗をしたくない」「これ以上笑われたくない」と思い、過剰な努力で特性を隠そうとします。 筆者自身も、中学時代に学級委員を務めていたとき、全員で暗唱するはずの詩を教室に掲示し忘れ、発表直前になって慌てて貼り出し、そのまま強行させてしまったことがありました。 その結果、クラス文集の「傲慢な人」というアンケートで名前が挙がってしまい、強いショックを受けました。本人にとっては単なる抜け漏れでも、周囲には「横柄で独りよがり」と誤解されてしまったのです。 こうした体験は、「自分の特性をそのまま出すと人に迷惑をかけたり嫌われたりする」という思い込みにつながり、社会人になってからも業務での報告書の不備や手続きの抜け漏れといったミスに過敏に反応し、「次こそは絶対に失敗できない」というプレッシャーを強め、さらに擬態を習慣化していきました。筆者も、特性による業務上のミスをして叱責を受けた経験から、「二度と同じ失敗をしてはいけない」と強く思い込み、体調を崩すほどの残業でリカバリーを重ねたことがあります。 特性上、数字の管理や抜け漏れが多い傾向があり、特に総務で社用車の管理を担当していたときはそれが顕著でした。全国の営業車は1500台、技術者用の車は800台、さらに役員車もあり、それらの状況を毎月所定のフォーマットに入力し、分厚い報告書にまとめる必要がありました。 本来なら定時内で終えるべき作業でしたが、ミスなく提出するためには人の3倍の時間をかけてWチェック、トリプルチェックをするしかなく、ときには深夜3時までかかることもありました。こうした過剰な努力は、一見すると「責任感の強さ」に見えるかもしれませんが、実際には「特性ゆえの苦手さを隠し通すための擬態」でもあったのです。 ②社会的圧力 「空気を読むのが当たり前」「仕事は正確でなければならない」などの職場文化が、発達障害の特性を持つ人にとっては強いプレッシャーになります。筆者も、上司からの無言の期待を読み、「強くメンバーを引っ張るリーダー」に擬態しようとしていました。あるとき、チームの目標設定を上司と決めようとしたとき、「頑張れば到達できるレベル」を設定しました。 上司からは「どう頑張っても到達できなさそうなゴールを設定してこそだ」と指導されました。正直、閉口しました。それでも「会社とは成長率を極限まで押し上げる場所だ」と自分に言い聞かせ、チームに目標を共有しました。 加えて、ASD特性のある方のなかには「場の雰囲気を察した発言」が苦手な方も少なくありません。しかし、日本の社会文化では「暗黙の了解」や「協調性」が強く求められるため、周囲から浮いてしまわないように過剰に適応してしまうことがあります。こうした文化的な背景も、発達障害のある人を擬態に追い込みやすい要因のひとつです。 ③自己肯定感の低下 周囲に理解されない体験が続くと、「本来の自分では認められない」という思い込みが強まり、擬態を手放せなくなります。筆者も、職場で「本来の自分では受け入れられない」と思い込むきっかけになった出来事があります。筆者は臨機応変な対応が苦手という特性が強いと感じており、日常的な会話でも「ちょっとここで気の利いた一言を言わなければ」と思えば思うほど、うまくいかないのです。 たとえば、職場の飲み会で、わざと「最後に面白い一言で締めてよ」と振られることがよくがありました。芸人でもない自分に、急に「笑わせて終わらせろ」と当意即妙な対応を求められても、うまくいくはずがありません。どんな言葉を選んでも空気は冷え、結局は滑って、それを笑いのネタにして場を収める。そんな役回りを押しつけられました。その瞬間は場が和んだように見えても、自分にとっては「なんて自分は役に立たない存在なんだろう」という無力感だけが残りました。気づけば「こんな自分でも、なんとかこの人たちとやっていかなければ」と必死に笑顔を作り、無理に同調するようになっていたのです。自己肯定感は下がり続け、それを補うかのように擬態が習慣化していきました。 ④発達障害への偏見や誤解 「発達障害=できない人」「甘えているだけ」といった偏見や誤解も、当事者を擬態に追い込みます。周囲の理解不足から「特性をそのまま見せたら否定されるに違いない」と考え、本来の自分を隠す習慣が強まります。 筆者も一般雇用のクローズ就労で働いていたとき、特例子会社について上司に尋ねた経験があります。そのグループ企業では農園事業を営む特例子会社があり、筆者は「今後、事務仕事など他の分野にも広げる予定はないのですか?」と聞いてみました。すると上司から返ってきたのは、「障害者でそういった高いレベルのことができる人はなかなかいないのだよ」という言葉でした。 その瞬間、「特性を開示したら、自分も『できない人』と見なされてしまうのではないか」という不安が強まり、言葉を失いました。こうした偏見は当事者に深い無力感を与えるだけでなく、「本来の自分を見せるわけにはいかない」と擬態を強化する原因にもなります。 なお、擬態の裏側では、しばしば「過剰適応」というものが起きています。 「迷惑をかけたくない」「普通でいたい」という気持ちから、限界を超えて合わせ続ける。その積み重ねが、自分の感情と身体の声を消していってしまうのです。気づいたときには「無理がデフォルト」になっていました。 こうして「無理が標準」になると、仕事だけでなく私生活でも、生きづらいと感じる世界に閉じ込められていく感覚が強まります。 擬態がもたらすリスク 精神的な消耗 無理を続けることで、心身は限界に近づきます。燃え尽き症候群(バーンアウト)、うつ病、適応障害といった二次障害につながることも少なくありません。 筆者も、職場で無理を重ねた結果、心身が摩耗して抑うつ症状に陥った経験があります。 以前は当たり前のように昼食を買ってデスクで食べられていたのに、ある時期からは昼休みに席に座っていることすら耐えられなくなりました。会社近くのカフェに逃げ込み、音楽を聴きながら時間を潰しました。「このあと仕事が始まってしまう」と、ただそれだけが怖い。嫌な出来事があったわけでもないのに、ふいに涙がこぼれ、止まらないこともありました。 そんな状態では仕事などできるはずがないのに、「行かなければ」という思いに背中を押され、重たい体と心を引きずるように出社を続けていました。 自己肯定感の低下 そもそもこの「擬態」の根っこにあるのは、単なる「苦手」ではありません。注意力や記憶、感情のコントロールなど、脳機能の偏りから生じる「特性由来の困難さ」です。 それは怠けや努力不足ではなく、脳の仕組みによってどうしても現れてしまうものです。しかし、その事実を知らないまま「自分が弱いからだ」と思い込むと、深い自己否定へとつながってしまいます。 だからこそ、見えないところで無理する/頑張りすぎる状態が続き、気づけば常に疲れる・慢性的な疲労・「なんだかしんどい」が日常になります。こうした状態は「生きているのに生きづらい」という感覚を強めていきます。 筆者も、自分を否定し続けた結果、まったく自信が持てなくなった時期がありました。本来なら誰でもできるはずの単純な業務でさえ、「自分には絶対にできない」と思い込んでしまうのです。 例えば社内の備品をパソコン上で発注する場面。ボタンを押すだけの作業なのに、「間違えて大量にコピー用紙を頼んでしまうのではないか」「押した瞬間に自分のミスが露呈して迷惑をかけるのではないか」と強く不安が膨らみました。 それは「かもしれない」ではなく、「きっとやってしまう」という確信めいた恐れでした。その結果、「自分はダメだ」「これはやってはいけない」と思い込み、手が止まります。そのために業務が滞り、周囲から注意され、さらに自分を否定する。そんな悪循環に陥った経験があります。 診断や支援が遅れる 特性を隠し続けると、周囲からは「問題ない人」と見なされ気づかれないまま時間が過ぎ、結果として診断が遅れることがあります。 筆者も、まさにその一人でした。自分を認められないがゆえに、特性をひた隠しにし、「抜け漏れがある」「先送りしてしまう」「段取りが苦手」といった自分の姿を否定し続けていました。 常に背伸びをし、何とか「普通の社会人」として振る舞おうとする毎日は、自己受容という本来のスタート地点に立つことを長く遅らせていたのです。 その結果、自分なりのやり方を模索し、適切に自分を支える仕組みとして「タスク管理」を習得し始めるまでに、ADHDの診断を受けてから実に8年もの時間を要してしまいました。 擬態から解放されるために 擬態を完全にやめることは難しいかもしれません。しかし「無理をし続ける」状態から少しずつ距離を置く工夫は可能です。 自己理解を深める 自分の特性や苦手を知り、「どこまでなら努力できるか」「どこからは支援が必要か」を整理しましょう。 筆者は、残念ながら、当時は就労移行支援事業所などの福祉的な支援の存在をあまり知らず、すべてを自力で解決しようとしてしまいました。そのために非常に長い時間がかかってしまったのですが、振り返ってみると大切だったのは「前向きな諦め」でした。 「諦め」という言葉にはネガティブな響きがあります。ここで言うのは、等身大の自分を知り、苦手を認めるという前向きな諦めです。最初は敗北感が伴います。それでも、その先には大きな解放感と希望が広がっていました。 例えば筆者は「忘れっぽい」特性があります。それを隠そうとすると苦しいだけでしたが、「自分は忘れてしまう」と認めたうえで、「だから大事なことはすべて紙に書いておく」という仕組みを作ることで安心して動けるようになりました。つまり、こうした工夫こそが「支援」であり、自分を守るための大切な対策なのだと実感しています。 周囲に伝える(カミングアウト) 信頼できる上司や同僚に、必要な配慮を伝えることで、無理をせずに働ける環境が整います。 筆者の経験では、一般雇用のクローズ就労ではうまくいきませんでした(あくまで筆者の場合です)。毎日顔を合わせる仲間だからこそ、自分の特性をある程度開示し、素の自分を知ってもらったうえで仕事をしたいという気持ちが強かったのです。 そのため、障害者雇用としてオープン就労で入社した会社では、合理的配慮を無理なく伝えることができました。そして、それをチーム全体で共有してもらうことで、「特別扱いをしてもらう」こと以上に「自分の特性を知ってもらえている」という安心感が生まれました。その安心感は常に抱えていた緊張を和らげ、結果として無理をせず働き続けることにつながりました。 もちろん、人によってはクローズ就労でも、工夫や対策を積み重ねることで「苦手はあるけれど自分なりにやっていけている」という自信を持ち、職場を居場所と感じられる場合もあると思います。 大切なのは、自分にとって「どの程度まで素の自分を出せるか」を見極めることです。いずれにしても、自分を完全に偽ることなく過ごせる環境であれば、無理をせずに長く働き続けることができ、自分本来の力を発揮することができると実感しています。 小さな工夫を取り入れる とはいえ、完全に自分自身をそのまま受け入れてもらうのは難しいものです。 会議中のメモを許可してもらう 締め切りを細分化する 静かな作業環境を確保する など、自分の特性に合わせた工夫を少しずつ実践していくことをお勧めします。 筆者自身も抜け漏れが多い特性がありますが、「抜け漏れをしてしまう自分をそのまま許してほしい」と訴えるわけにはいきません。 大切なのは、まず「抜け漏れをする」という事実を認めること。そのうえで、「抜け漏れを防ぐ方法」「抜け漏れが起きても致命傷にならない仕組み」を考えることでした。 そうした工夫を積み重ねていった結果、今の自分に合ったタスク管理の仕組みを作り上げることができました。 もちろん、人によって工夫の仕方は異なります。ある人にとっては「話し方を工夫する」ことかもしれませんし、「挨拶を丁寧にする」ことや、「人の嫌がる雑務を率先して引き受ける」ことかもしれません。 そうした小さな工夫を積み重ねていくことは、職場に溶け込み、長く働き続けるために決して無駄にはなりません。自分に合ったやり方を見つけることが、無理をしすぎない働き方の第一歩だと実感しています。 無理を続ける前に──支援という選択肢 無理をしすぎず働き続けるには、自分なりの工夫が欠かせません。ただ、筆者はそれをすべて独力でやろうとして、結果的に大きく遠回りしました。 もしあの頃、就労移行支援事業所のような専門的なサポートの場があることを知っていれば、もっと早く自己理解を深め、無理なく働ける方法を身につけられたのではないかと思います。支援を受けることは甘えではなく、自分の可能性を広げるための大切な手段です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。