注意欠如・多動症(ADHD)の記事一覧

人の話が理解できない…発達障害の「脳の特性」が原因かも

ADHD/ASD/APDの特性があり「聞こえているのに、内容を理解できない」という悩みを抱える方へ。今すぐできる具体的な対処法を紹介。

記事を読む
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「口頭で指示されたことが、頭に全然入ってこない」「複数のことを一度に言われると、混乱してしまいがち」「話をちゃんと聞いていないと叱られることがある」「何度も同じことを聞いてしまい、嫌な顔をされてしまった」 このような「話を理解すること」への苦手意識やお悩みを抱えていませんか。 「自分は理解力がないのだろうか」「仕事ができないのかもしれない」と、自己嫌悪に陥ってしまう方は少なくありません。しかし、それは努力不足や仕事スキル不足が原因ではなく、発達障害(神経発達症)による脳機能の特性が関係している可能性があります。 この記事では、発達障害のある大人が職場で「人の話が理解できない」と感じる原因と対処法を、筆者の体験も交えてご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 「人の話が理解できない」あるあるチェック まずは、発達障害のある方が職場で経験しやすい「理解困難」の場面をチェックしてみましょう。 特性は一人ひとり異なるため、人によってみられる「苦手」もさまざまですが、よくあるお悩みを10個あげます。 ▼ 職場での「理解困難」チェックリスト 口頭で指示されたことが、頭に入ってこない(聞いているはずなのに残らない) 複数のことを同時に指示されると、混乱して何から手をつければいいかわからなくなる 指示の意図を取り違えてしまい、まったく違う方向で仕事を進めてしまう 「あれ、これ、それ」といった代名詞が何を指しているのかわからなくなる 会議中に話を聞いているつもりなのに、途中から内容についていけなくなる 同僚や上司の言葉の「行間」や「ニュアンス」が読み取れない 何度も同じことを聞き直してしまい、叱られたり呆れられたりする 音は聞こえているのに、言葉として意味が入ってこない感覚がある 電話での会話が特に苦手で、内容を正確に把握できないことが多い 発達障害の特性がある方で、いくつか当てはまった場合には、それが「性格の問題」でも「怠慢」でもなく、脳機能の特性によるものである可能性があります。 「何度言ってもわからないのか」と叱責され、自分を責めてきた方もいるのではないでしょうか。しかし、理解するための「回路」が一般的な人と異なるだけで、あなたに問題があるわけではありません。その特性を正しく理解し、自分に合った方法を取ることが、何よりの解決策になります。 「人の話が理解できない」原因となりやすい発達障害の特性 発達障害には、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、SLD(限局性学習症)などがありますが、同じ診断名であっても、「人の話が理解できない」原因は一人ひとり異なります。 診断名だけに縛られず、「自分はどの特性が原因で理解に困難を抱えているのか」を把握することが、最初の大切な一歩です。ここでは、主な原因となりやすい特性を4つご紹介します。 ① 聴覚情報の処理が苦手 「聴覚情報」とはその名の通り「耳から入る音を通じて得る情報」を指します。 人によって、口頭など耳から入る情報を処理しやすい人もいれば、文字や図などの視覚的な情報のほうが理解しやすい人もいます。発達障害のある方の場合には「聴覚情報の処理」に困難がある方が多いと言われています。 このタイプの方は、耳から入った情報を脳内で処理・記憶する速度が、話のスピードに追いつかないことがあります。口頭で指示されると情報が頭に入らない、会話の内容がすぐ抜けてしまうといった困りごとが起きやすいです。 ② ワーキングメモリの弱さ ワーキングメモリとは、情報を一時的に頭の中に保持しながら処理する能力のことです。いわば「脳内のメモ帳」です。 ADHDのある方でみられることが多い特性の一つで、ワーキングメモリが弱いと、複数の指示を同時に受け取ったときに最初のほうを忘れてしまったり、話を聞きながら理解する処理が追いつかなかったりします。 「3つお願いしたいことがあって…」と言われた途端、3つ目を聞いた頃には1つ目が飛んでしまう、という経験に覚えがある方も多いのではないでしょうか。 聴覚情報の処理の「口頭指示の苦手」とは原因が異なり、「頭に情報が入ってくるが、記憶として留めておくことができない」という状況が起こります。 ③ 曖昧な表現の理解の難しさ ASDのある方に多い特性として、「言葉の字義通りの意味しか受け取れず、文脈やニュアンスが読み取りにくい」というものがあります。 「適当にやっておいて」「いい感じにまとめて」のような曖昧な指示は、どう解釈すればいいのかわからず混乱します。また、「さっきの件」「例のアレ」といった指示語も、何を指しているのかが理解できないことがあります。 「なぜ、こんな当たり前のことが分からないのか」と怒られる経験を繰り返すうちに、自己肯定感が著しく低下してしまうケースも多く見られます。 ④ APD(聴覚情報処理障害)や聞き取り困難の可能性 APDは「音は聞こえている(聴力に問題はない)のに、言葉が理解できない」障害で、発達障害(とくにADHD・ASD)と併存しやすいと言われています。「聞こえにくい・聞き取れない」という症状がみられるため、その結果「人の話が理解できない」と見られてしまうケースがあります。とくに、騒がしい環境、複数人での会話、電話、会議などで困りやすいのが特徴です。 なお、APDと発達障害の関連を示す研究(Riccio CA, Hynd GW, Cohen MJ, Hall J, Molt L. Comorbidity of central auditory processing disorder and attention-deficit hyperactivity disorder. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 1994)はありますが、よく引用される発達障害とAPDの併存率「50%」という数字は、小規模な子ども対象研究に由来するもので、そのまま一般化することはできません。 実際には、注意、ワーキングメモリ、言語理解など、複数の要因が重なって「聞き取りづらさ」として現れることも多く、背景を個別に見極めることが大切です。 こうした特性や困りごとを自分でもうまく説明できないまま、職場で無理を重ねてしまう人は少なくありません。 ただし、「人の話が理解しにくい」という現象は、発達障害だけが原因とは限りません。以下のような要因による「一時的な認知機能の低下」が影響している場合もあります。 過度なストレス・心理的負荷 慢性的な睡眠不足 うつ病や適応障害などのメンタル疾患 疲れが溜まっている時や環境が激変した時などは、誰しも脳の処理能力が落ちるものです。「自分はダメだ」と責める前に、今の生活環境や体調を振り返ってみることも大切です。 発達障害のある大人が陥りがちな「職場での悪循環」 特性による困難を抱えながらも、多くの方が職場でとってしまう行動があります。それが「無理をして特性を隠す」ことです。 「わかりました」と言ってしまう問題 「また聞き返したら怒られる」「仕事ができないと思われたくない」といった不安から、本当は理解できていないまま「わかりました」と言ってしまうことがあります。 指示内容がよく分からないときでも、質問をしたら相手に「そんなことも理解できないのか」と思われそうで、「知ったかぶり」を筆者はよくしていました。 理解できていない状態で業務を進めると、成果物が的外れになり、やり直しが増え、さらに叱責される…という悪循環に入ってしまいます。それは分かっているのですが、どうしても「わかりました」と反射的に言ってしまいがちでした。 「無理に隠す」ことの二次障害リスク 特性を隠すために毎日多大なエネルギーを使い続けると、慢性的な疲労・不眠・抑うつなどの二次障害につながるリスクがあります。 「みんなと同じようにできなければいけない」という思い込みが強い方ほど、SOSを出せずに限界まで頑張ってしまいがちです。しかし、無理に隠し続けることは長期的に見て、自分の健康にとっても、仕事の継続にとっても得策ではありません。 実際、ADHDのある筆者の知人が、クローズ(障害を開示しない)で働き続けた結果、体調を崩して休職をしてしまったことがありました。 大切なのは、自分の特性を正しく理解したうえで、自分に合ったやり方を「仕組み」として取り入れることです。その知人は、復職して自分に合ったタスク管理の「仕組み」を構築することで、継続的に働けるようになりました。 こうした「一時的な不調」の背景には、過剰適応や二次障害といった状態が隠れていることも少なくありません。以下の記事では、その仕組みや注意すべきサインが分かりやすくまとめられていますので、あわせてご覧ください。 無理をして「普通」に見せようと擬態し、エネルギーを使い果たしてしまう「過剰適応」について紹介しています。 職場での「話が理解できない」を防ぐ対処法 ここからは、特性ごとに有効な対処法を具体的にご紹介します。「全部試す必要はない」というのが重要なポイントです。まず自分の困りごとの原因に合いそうなものを1〜2つ試してみるところから始めましょう。 聴覚情報の処理が苦手・ワーキングメモリが弱い方向け メモを「見える化」して会話の記録を残す 聴覚情報が苦手な方にとって、最も基本的かつ効果的な方法は「その場でメモを取ること」です。ただし、話のスピードに手書きが追いつかない場合もあります。 ボイスレコーダー(スマートフォンの録音アプリ含む)を活用し、後で聞き返せる状態にする 上司に了承を得た上で、指示内容をその場でスマートフォンにメモする 手書きメモをその日のうちに、デジタルに打ち込み直す(情報を一元管理することが目的。Google Keep、Notionなどのアプリが便利) ADHDのある筆者の知人の中に、とにかく仕事のメモを書くための手帳を肌身離さず持っている方がいました。 あるとき、「なぜ自分がその習慣を続けているのか」に気づきました。それは、「自分はワーキングメモリが弱い。だから、メモ帳は命綱だと思って肌身離さず持ち歩き、すぐにメモを取れるようにしている」というものでした。それが分かった後、ワーキングメモリが弱いという特徴に負い目を感じなくなったそうです。 「指示確認シート」を自分で作る 筆者がおすすめしているのが、自分専用の「指示確認シート」を作ることです。指示を受けるときに使う、自分なりの「質問テンプレート」を事前に用意しておくのです。 ▼ 指示確認シートの例 この仕事のゴール(完成形)はどんな状態ですか? 期限はいつですか? わからないことが出たとき、誰に聞けばいいですか? このような質問を整理して手元に置いておくことで、「何を確認すればいいか」がわからない状態を防ぐことができます。最初は「こんなことを聞いたら失礼かな」と感じるかもしれませんが、むしろ「確認してから動く人」は周囲から信頼されます。 筆者は「知ったかぶり」をよくしていたと前述しました。その対策としてこの「仕事の完成形」「期限」「誰に聞けば良いか」だけは分かるまで聞くようにしていました。それが曖昧なまま話が終わりそうなとき、つい分かったふりをしそうになります。 そういう場面では、「今ここで確認したほうが、あとで必ずラクになる」と自分に言い聞かせて、勇気を出して確認していました。 どうしても「習慣化」が難しいときは… こうした対策を知っても、「やり方はわかったけれど、それを続けるのが難しいんだよな…」と感じる方も多いかもしれません。実際、特性がある場合、新しい行動を「習慣化」すること自体が非常に高いハードルになります。 そこで、無理なく続けるための「習慣化のコツ」を2つお伝えします。 1. 新しく始めず「今やっていること」に乗せる「メモ帳を取り出して書く」という新しい習慣を作ろうとすると、脳に大きな負担がかかります。そうではなく、今すでに無意識にやっている行動に組み込んでしまいましょう。 例: 毎日必ずLINEを開くなら、自分一人の「マイグループ」を作り、メモ帳代わりにする。 例: PC作業がメインなら、モニターの縁(必ず目がいく場所)に付箋を貼っておく。 「新しいツール」を使いこなそうとせず、今ある環境をそのまま使うのがコツです。 2. メモを取る時間を「堂々と」確保する「メモを取っている間に相手を待たせてしまう」という焦りから、メモを断念してしまうことはありませんか? 実は「待たせてはいけない」というのは思い込みであることが多く、相手はあなたが正確に仕事をしようとする姿を、意外と好意的に待ってくれるものです。 おすすめは、あえて相手の言葉を意図的にゆっくり復唱しながら書くことです。 「(書きながら)……はい、〇〇を......××までに......ですね...」 このように「今、私はメモを取っています」と明示することで、周囲に気兼ねなく時間を確保できます。復唱することで、その場で理解のズレも修正できるため、一石二鳥です。 曖昧な指示の理解が難しい方向け 「具体化」を習慣にする 「適当にやっておいて」という指示を受けたとき、曖昧(抽象度が高く、不明瞭)な表現が苦手というASDの特性がある方は何をどうすればいいのかわからず固まってしまうことがあります。こういう場面では、「具体化する」ことを習慣にしましょう。 「適当にやる」→「○○のフォーマットを使って、△△の項目を埋める、ということで合っていますか?」と言い換えて確認する 「なるべく早く」→「今日中・明日の朝まで、どちらでしょうか?」と具体的な期限に変換する 「いい感じに」→「前回の資料のようなイメージで合っていますか?」と参考例を確認する 曖昧な表現を「具体的な行動」に変換することで、自分が動きやすくなります。この習慣を取り入れると、指示の取り違えを減らしやすくなります。 ここでは「曖昧な表現の理解の難しさ」と書きましたが、筆者はこれを一方的な弱みだとは考えていません。むしろ、曖昧な事柄を見逃さないセンサーとして働くことがあるからです。 「復唱確認」を取り入れる 指示を受けた後に「では、○○をして、△△の状態にする、ということでよいですか?」と自分の言葉で復唱して確認する習慣も非常に効果的です。 この際、「自分の言葉」にすることが大事だと筆者は考えます。ただ相手の一言一句を再現するだけだと、意味内容をしっかり捉えていない可能性があるからです。自分の言葉にするプロセスがあることで、自分の中に内容が入っていくのだと実感しています。 復唱することで、自分の理解に間違いがないか確認できるだけでなく、丁寧に確認してから動こうとしていることも相手に伝わりやすくなります。多少時間を取っても、やり直しが減ることを考えれば、ずっと効率的です。 APD(聴覚情報処理障害)や聞き取り困難の可能性がある方向け 環境を整える・伝達手段を変えてもらう APDや聞き取り困難がある場合は、騒がしい環境で困りごとが強まりやすいとされています。可能であれば、環境自体を変えることが最も効果的です。 個室や静かなスペースで指示を受けることを相談する ノイズキャンセリングイヤホンを使用する(周囲の雑音をシャットアウトする) 口頭だけでなく、メールやチャットでも指示を送ってもらえるよう相談する 電話対応を最小限にし、テキストでのやり取りを主にしてもらう 筆者は、周囲の話し声と、目の前の相手の声が、同じくらいの強さで耳に入ってきてしまう感覚があります。そんなときには、相手の方に視線を合わせ、耳に手を添えて「もうちょっとよく聞かせてくれませんか」というジェスチャーをします。シンプルですが、それだけに汎用性のある工夫として筆者は幾度となく助けられています。 クローズ就労(障害非開示)の方向け 相手に負担をかけずに聞く 「クローズ就労」とは、職場に自身の障害や特性を開示せずに働くスタイルのことを指します。 その対となる「オープン就労(障害を開示して働く)」であれば、企業から「合理的配慮」として業務の進め方の調整を受けやすいですが、クローズ就労ではそうしたサポートを前提にできません。 そのため、 「合理的配慮を依頼できない」(自分一人でなんとかしなければならない) 「特性を隠しているため、不器用な自分を見せられない」(評価への不安や強いプレッシャー) といった精神的なハードルから、聞き方一つでも「仕事ができないと思われないか」「相手の時間を奪ってしまうのではないか」と、つい抱え込んでしまいがちです。 筆者はクローズ就労も経験しています。そこでは、配慮を「お願いする」のではなく「相手の説明する負担をこちらで半分引き受ける」という姿勢を見せることで、スムーズに周囲の協力を得る工夫をしていました。以下の3ステップをセットで実践してみましょう。 ①「悩んでいる」と先に開示するいきなり質問に入るのではなく、「今、ここで行き詰まって(悩んで)おりまして…」と一言添えます。この前提情報があるだけで、相手は「あ、助けが必要な場面なんだな」と話を聞くモードに入りやすくなります。 「〇〇の件で少しご相談なのですが、今、ここの解釈で少し悩んでおりまして…」 ②「不完全でもいいから自分の仮説」をぶつける「分かりません、教えてください」とゼロから聞くのではなく、「私は~~だと理解したのですが、この認識で合っていますでしょうか?」と、自分の解釈を提示します。たとえその解釈が間違っていても構いません。あなたが「理解しようと試みた」という事実が、相手の「どこから説明すればいいか」という負担を大きく減らしてくれます。 「私は『Aという進め方』だと理解したのですが、この認識で合っていますでしょうか?」 ③「選択肢」を用意する可能であれば「これはAでしょうか、それともBでしょうか?」と選べる形で聞くとさらに親切です。相手は「そう、Bの方だよ」と答えるだけで済むため、やり取りのコストが最小限で済みます。 「それか、『Bという進め方』という考え方もあると思うのですが、AとBどちらが良いでしょうか?」 自己対処で賄えない場合は「合理的配慮」を活用しよう 上記の対処法を試しても十分でない場合や、職場の理解を得ることが必要な場合は、「合理的配慮」という制度を活用することを検討しましょう。 合理的配慮とは 合理的配慮とは、障害のある人が働くうえで生じる困りごとに対して、職場が過重な負担にならない範囲で必要な調整や配慮をおこなうことです。2024年4月からは企業での合理的配慮が義務化され、障害のある方がサポートを依頼しやすくなりました。 相談する際は、「何が苦手か」だけでなく、「どんな場面で困るのか」「どうしてもらえると仕事がしやすくなるのか」まで具体的に伝えることが大切です。 「人の話が理解できない」ことへの配慮事例 口頭での指示に加えて、メール・チャット・書面でも内容を共有してもらう 複数の指示は、一つひとつ順番に出してもらう 会議の議事録を必ず作成し、共有してもらう 指示の優先順位を明確に伝えてもらう 録音やメモを取ることを許可してもらう 騒がしい環境での作業を避け、静かな席に配置してもらう 合理的配慮を求めるには、自分の特性を言語化して説明することが必要です。「なぜ困っているのか」「どのような配慮があれば改善するか」を具体的に伝えられるよう、日頃から自己理解を深めておくことが重要です。 「自分の特性の理解」こそ、最大の対処法 ここまでご紹介してきた対処法に共通するのは、「自分の特性を正確に理解することが出発点」だということです。 「なんとなく話を理解するのが苦手」ではなく、「自分はワーキングメモリが弱いから複数の指示が苦手だ」「聴覚処理が苦手で、文字情報のほうが入ってきやすい」というように、自分の困りごとの原因を具体的に把握していると、対策が格段に立てやすくなります。 一方で、「自分の特性を自分だけで正確に分析する」ことは、非常に難しい作業でもあります。長年の経験から思い込みが生まれていることもありますし、客観的な視点を持ちにくいこともあります。 そこで、一人で悩まずに専門家のサポートを活用することをおすすめします。就労移行支援などの専門機関では、自己理解を深めるためのプログラムや、特性に合わせた就労支援を受けることができます。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、あなたが「なぜ人の話が理解しにくいのか」「どんな工夫や環境があれば働きやすくなるのか」という特性の分析を、専門スタッフと一緒におこなっています。 それ以外にも、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害があると「生活リズム」が乱れやすい?5つの原因と整え方

夜更かし・朝寝坊や日中の眠気で仕事に支障が出ている…発達障害がある方が生活リズムを崩しやすい原因・対処法についてADHD当事者が紹介。

記事を読む
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「夜になると目が冴えて、気づけば深夜まで起きてしまう」「朝起きられず、遅刻や欠勤をしてしまう」「日中の眠気が強く、仕事に集中できない」「昼夜逆転生活がやめられない」 このような「生活リズムの乱れ」に悩みを抱える発達障害の方は少なくありません。 生活リズムの乱れは、気合いや根性の問題にされがちです。ですが、発達障害(ADHD・ASD)のある方の場合は、脳の特性・体内時計のズレ・感覚過敏・ストレス反応などが絡み合い、そもそも「整えにくい構造」を抱えていることがあります。 この記事では、発達障害のある方が生活リズムを崩しやすい原因を紐解きながら、今日からできる対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] なぜ発達障害がある人は「生活リズム」が乱れやすいの?5つの原因 まず、発達障害は先天的な脳機能の特性によって「生活の中での困りごと」が生じるということ(能力の優劣ではない)を理解しなければなりません。最近では、発達障害は「神経発達症」と呼ばれることが増えてきており、障害ではなく「脳の特性」ととらえられるようになってきています。具体的な特性について、代表例を紹介します。 ADHD:先延ばし、衝動性、過集中、時間感覚のズレ、切り替えの苦手さ ASD:感覚過敏/鈍麻、こだわり、見通し不安、対人ストレスの蓄積 これらは、睡眠や生活リズムの「整え方」に強く影響します。つまり、同じ「生活リズムが乱れる」という困りごとであったとしても、原因となる特性は人それぞれで、特性に合わせた対策を講じる必要性があるというのが前提です。その上で、発達障害のある人によく見られる「生活リズムの乱れ」の原因を挙げていきます。 1. 脳の働きによる影響 生活リズムが乱れる大きな原因の1つに、脳内にある「モード切替スイッチ」がスムーズに動かないことが挙げられます。2007年のSonuga-Barkeらの研究によると、私たちの脳には大きく分けて2つのモードがあるとされています。  「バリバリ集中モード」→ 仕事や家事、スマホ操作など、外の世界に意識を向けて活動している時の状態です。  「アイドリング内省モード」→ ぼーっとしている時や、自分の内面を見つめている時、リラックスしている時の「脳の休憩」状態であり、寝る前にこのモードになると、睡眠にスムーズに入ることができます。 通常、この2つはシーソーのように、一方がオンの時はもう一方がオフになります。しかし、発達障害の特性がある場合、このシーソーがうまく機能しない(バランスがとれない)ことがあります。 その結果、夜寝ようとしても脳が「バリバリ集中モード」から抜け出せず、強制終了できない状態が続きます。逆に朝は、脳が「アイドリング内省モード」に居座ってしまい、活動モードに切り替えるのに膨大なエネルギーを必要とします。 つまり、本人のやる気とは関係なく、「脳のギアチェンジ」がそもそも難しいことが、夜更かしや朝寝坊といった生活の乱れにつながりやすくなるのです。 筆者は、仕事が夜に入ると、かなりの確率でそのまま仕事を続けてしまう傾向があります。締切が特に指定されていなかったにもかかわらず、「今、これをやりたい!」という衝動が抑えきれなくなり、企業研修の企画書を一晩で一気に書き上げてしまったことがあります。 翌朝、完成したばかりの企画書を企業担当者の方に送ったところ、「えっ、もう出来たんですか!?」「いつ寝てるんですか……?」と、驚きを通り越して若干引かれてしまいました。 このようにスイッチが入って衝動を抑えられない状態は、実は自分自身の心身を無理に削ってエンジンを回している状態でもあります。実際、それから数日は、夜寝ても1時半や2時台などの不規則な時間に目が覚めてしまうことが増え、結果として生活リズムが大きく崩れてしまいました。 ただ、正直に言えば、早く終わって喜ばれると「やってやった」という嬉しさの方が勝ってしまい、生活リズムの乱れに対してあまり危機感を抱けない自分がいます。 しかし、客観的に見れば、これは寝不足や疲労という「しわよせ」を翌日以降に無理やり先送りしているだけです。その「負の貯金」がいずれ生活リズムを破綻させる引き金になることは、忘れてはならないのだと感じています。 2. 体内時計のズレ 発達障害のある方が「朝起きられない」「夜目が冴える」背景には、単なる夜更かしではなく、脳内の「体内時計」そのものが社会のリズムとズレやすいという特性があります。海外の「発達障害と睡眠」にまつわる研究情報を紹介します。 最新の研究(Bijlengaら, 2019)では、ADHDのある人の約75%に体内時計のズレが見られると報告されています。眠気を誘うホルモン「メラトニン」が分泌されるタイミングが、定型発達の人より平均して1.5時間〜2時間ほど後ろにズレています。本人が寝ようとしても、脳がまだ「昼間」だと認識しているため、物理的に眠ることが難しいのです。 自閉スペクトラム症(ASD)の方に関する研究(Gamlielら, 2018)では、メラトニンを体内で作るための遺伝子(ASMT)の働きが弱く、ホルモン量自体が慢性的に不足している可能性が指摘されています。これにより、「自然に眠くなる」という感覚が掴みにくく、眠りが浅くなりやすいという特徴があります。 発達障害のある方は、脳の中の時計が少し後ろにずれているため、脳が「今はまだ昼間だ」と言っているのに、外の世界はもう寝る時間…というギャップに悩まされることが多いのです。 その結果、寝つきの悪さや睡眠不足がどうしても起こりやすくなり、結果として社会のリズムに合わせるために必要な「朝起きること」が人一倍辛くなってしまうのです。さらに「夜寝られないから、朝起きられない」ということに加えて、脳が目覚めて活動するために必要なホルモン(コルチゾールやセロトニン)が適切に分泌されない傾向があるため、「夜も朝も、体内時計が狂ってしまいがち」になるのです。 3. リベンジ夜更かし 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすい理由としてよく言われているのが「リベンジ夜更かし」というものです。 リベンジ夜更かしとは、日中に失敗を積み上げてしまい、夜になって自分の時間が取れるようになると、まるで日中の失敗を取り返すように動画・ゲーム・SNS・趣味に深夜まで没頭してしまうことです。 これは、報酬がすぐ得られる刺激(スマホ等)に引っ張られやすかったり、先延ばしで日中のタスクが夜に残りやすかったり、過集中で切り上げどきが分かりづらくなるといったADHD特性との相性が非常に悪く、生活に支障が出ることも少なくありません。 なお、「リベンジ夜更かし」については、関連コラムでも、発達障害との関係や対策が整理されていますのでご覧ください。 4. 感覚過敏 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすいもう一つの大きな原因が「感覚過敏」です。 これは、周囲の環境からの刺激を人一倍強く受け取ってしまう特性で、寝ようとする時に脳を邪魔する「刺激」が多すぎる状態を指します。 例えば、布団のチクチクした感触やパジャマのタグ、エアコンの動作音や外を通る車の音、わずかなLEDの光や街灯の漏れ、さらには微かな匂いなど、定型発達の人には気にならない程度の些細な刺激が、脳にとっては無視できない不快感として刺さります。 こうした刺激があると、寝ようとしても脳が「安全じゃない」「気になる」を処理し続け、入眠が遅れます。結果として、寝る時間が後ろ倒しになり、生活リズムも崩れがちになってしまいます。 5. 日々のストレス蓄積と自律神経の乱れ 発達障害のある方が生活リズムを乱しやすい5つ目の原因が、日常的な「ストレスの蓄積」です。これは、日々の生活で生じる「小さな負荷」を人一倍受け取りやすく、脳が常に緊張状態に置かれてしまうことを指します。 例えば、マルチタスクや急な予定変更への対応、対人コミュニケーションでの気疲れ、自分のこだわりと現実との摩擦、そして失敗経験の積み重ねなど、避けがたい日常の要素が大きな負担となります。ストレスが慢性化すると自律神経のバランスが崩れ、寝つきの悪さや中途覚醒、早朝覚醒といった睡眠トラブルを招きやすくなります。 こうした負荷があると、寝ようとしても脳が「安全じゃない」「休めない」と警戒し続け、入眠が遅れがちになってしまいます。 なお、日々の生活で溜まったストレスを「どう軽減し、どう付き合っていくか」という実践的な対処法については、こちらのコラムに分かりやすく整理されています。 生活リズムの乱れが仕事や日常に与える悪影響 一度生活のリズムが崩れると、単なる「寝不足」では済まない「負のループ」が始まってしまうことがあります。具体的にどんな悪影響があるのか、整理してみました。 1. 仕事の「信頼」と「質」が削られてしまう 日中の強い眠気は、本人のやる気とは関係なく、判断力を奪います。 集中力が落ちる:普段ならしないような「うっかりミス」が重なり、仕事の質が落ちてしまいます。 信頼の貯金が減る:朝起きられずに遅刻が増えると、職場の信頼関係にもヒビが入りかねません。 「気合でカバー」しようとしても、脳のパフォーマンスが落ちている状態では限界があります。 2. 心の元気がなくなっていく(メンタルへの影響) リズムの乱れは、心を安定させる脳内物質のバランスを崩してしまいます。 頭が働かない:常に頭の中にモヤがかかったような状態(ブレインフォグ)になり、集中できなくなります。 気持ちが沈む:気分の落ち込みを招きやすく、それがさらに「何もしたくない」という悪循環を加速させてしまいます。 イライラしやすくなる:感情のブレーキが利きにくくなり、些細なことで激しい怒りや自己嫌悪に陥ります。その興奮でさらに眠れなくなるという二次被害も招きます。 3. 身体の「土台」が崩れてしまう(健康への影響) 不規則な生活リズムが続くと、自覚のないまま深刻な身体的なダメージを蓄積させます。 自律神経の乱れ:活動と休息のスイッチがうまく切り替わらなくなります。動悸や慢性的な疲労感など、本人のやる気では制御できない「体の不調」を招きます。 生活習慣病リスク:不規則な生活は、高血圧や糖尿病のリスクを押し上げます。ストレスによる過食や運動不足も重なり、将来への「負の貯金」を溜めてしまいがちです。 ここまでの話は、現在お仕事をされている方だけへの話ではありません。今お休みしている方や、新しい仕事を探している方にとっても、生活リズムを保つことは「いつでも戦線復帰できるための準備」として極めて重要です。 リズムを戻すのは大変:いざ復職が決まった際、仕事の感覚を思い出すこと以上に、勤怠時間に合わせた生活リズムに調整することは、膨大なエネルギーが必要です。 最強の保険:仕事がない時期であっても、決まった時間に起きて光を浴びる。この「自分なりの心地よいリズム」を維持しておくことが、スムーズな再スタートを切るための「最強の保険」になります。 筆者も、実家で暮らしていた休職期間中、とにかく「朝起きて夜寝る」ことだけを家族と約束して生活していました。当時は「なんでそんなことを重視するのだろう」と思っていましたが、今考えるとそれこそが近道だったのだと感じています。実際に、リワーク(復職支援)では、休んでいる間も「規則正しい生活を送ること」を目指すサポートをおこなうことが多いです。 【今日からできる】生活リズムを整える具体的な対策 まずはここから!一般的な生活習慣の改善策 リズムを立て直すには、一度にすべてを変えようとしないことが大切です。ここは王道ですが、効果が大きい順(効果の出やすい順)に並べました。 起きる時間を固定する(最優先):土日も含め、まずは「何時に布団から出るか」を一定にします。ここがリズムのすべての起点になります。 朝に光を浴びる(カーテン全開・外に出る):目から光が入ることで、脳のタイマーがリセットされます。カーテンを開ける、あるいはベランダに出るだけでも効果があります。 朝食をとる(少量でも可):バナナ1本やヨーグルトだけでも構いません。食べ物が胃に入ることで、体の中の「第2の時計」が目覚めます。 日中に適度な運動(散歩で十分):昼間に体を動かすことで、夜に「ほどよい疲れ」が溜まり、寝つきを助けます。近所のコンビニまで歩く程度で十分です。 昼寝は短く(15〜20分程度に):もし昼寝をするなら、深い眠りに入る前の20分以内に抑えます。それ以上寝てしまうと、夜の眠気が逃げてしまいます。 生活のリズムを整えるために「早寝早起き」とよく言われます。筆者はその語順を逆にして「早起き早寝」を勧めています。眠くても一度頑張って起き、太陽の光を浴びて活動すれば、夜には自然と眠気がやってきます。この逆転の発想は、無理なく生活リズムを安定させられる有効な方法だと考えています。 発達障害ならではのコツと工夫 発達障害の特性のある人は、一般的な「早寝」の努力がうまくいかない場合もあります。そんなときは、以下の5つの視点を取り入れてみてください。 1. 寝る前の行動をルーティン化する(入眠儀式を作る) 脳が切り替えにくい人ほど、「今寝よう」という意思決定に頼ると負けやすくなります。毎晩同じ順番で行動し、脳に「これが来たら1日終わり」と条件付けをして覚え込ませます。「何度も繰り返し、習慣化させる」ことが、特性への対処をするための重要ポイントです。とくにASD特性の「マイルールへのこだわり」がある方は行動のルーティン化が効果的です。 例:└22:00 お風呂(シャワー)に入る└22:30 ストレッチを3分だけする└22:40 歯を磨く└22:45 ベッドへ行く(スマホは持ち込まない)└21:30 照明を少し落とす コツ:完璧にできなくてOK。「同じ流れ」をなぞること自体に意味があります。 2. スマホをベッドに持ち込まない(物理で勝つ) ADHD特性があると、スマホは「無限に報酬(刺激)が出る装置」になり、自力で止めるのは至難の業です。意志の力で戦わず、物理的な距離で解決します。 ベッドから手が届かない場所にスマホを置く 充電場所を寝室の外(リビングなど)にする アラームはスマホではなく、専用の「目覚まし時計」を使う 夜間は通知を完全に切る(おやすみモードを自動設定する) あるいは、もっと強力な「物理での勝ち方」として、スマホロックボックスを活用する手もあります。時間を設定し、時間が来るまでスマホを閉じ込めて強制的にスマホを使えなくするのです。 3. 過集中対策は「開始」ではなく「終了」を設計する 夜の趣味や作業が止まらない人は、「やらない」と決めるより、「終わる仕組み」を先に置いておくのが現実的です。 〇時になったら自動でWi-Fiが切れるように設定する タイマーが鳴ったら、反射的に立ち上がって歯を磨くルールにする 画面の明るさが自動で落ちる設定にして、視覚的に「終了」を促す 家族や支援者に「〇時になったら声をかけて」と、外部の力を借りる 4. 感覚過敏がある人は「寝具と環境」に優先投資する 眠れない原因が「刺激」なら、我慢したりするのではなく環境を整えることが大きな助けになります。睡眠環境の改善は、努力よりもコストパフォーマンスが高い領域です。 肌触りが気になるなら、タグが当たらない寝間着や、肌触り重視のシーツを選ぶ 光が気になるなら、アイマスクや完全遮光カーテンを使う 音が気になるなら、耳栓やホワイトノイズ(換気扇のような一定の音)を流す 「重み」があると安心するタイプなら、加重ブランケット(ウェイトブランケット)を試す 筆者の場合、寝間着の首元にある小さなタグが肌に触れる感覚で目が冴えてしまうことがありました。今では、タグは根元から切り取るようにしています。 5. 「夜に考えない」仕組み(不安・反省の暴走を止める) 夜は不安が増幅されやすい時間帯です。反省が止まらず脳が仕事を始めてしまうのを防ぎます。 不安はメモに吐き出す:明日の予定や不安は紙に書き、「紙に預けた」として脳から追い出す。 反省は朝に回す:夜の反省は禁止。「続きは明日の朝、明るいところで考える」と決める。 頭がうるさい日は音を流す:無音だと思考が暴走するため、単調な音声(ラジオや朗読など)を小さく流して、脳の注意をそらす。 自力で改善するのが難しいときは無理せず頼ろう 生活リズムは、努力だけではどうにもならないことがあります。特に、長期間の不眠や日中の強い眠気が続く場合、「生活習慣」だけでは片づかない領域に入っていることがあります。 睡眠障害が疑われる場合は医療機関へ 発達障害のある方は、日常の「小さな負荷」を人一倍受け取りやすく、それが慢性化することで「二次障害」としての睡眠障害を抱えやすくなります。 これは、周囲に合わせようとする過度な適応努力(マスキング)や、失敗経験の積み重ねにより、脳が常に「警戒モード(過緊張)」になってしまうことが原因です。この状態では、リラックスを司る副交感神経がうまく働かず、心身が休まらない悪循環に陥ります。 筆者も、前職で休職に至る直前、この過緊張による「早朝覚醒」に苦しみました。「明日は絶対に失敗できない」「誰よりも早く会社に行って準備しなければ」という強烈なプレッシャーから、まだ外も暗い午前3時や4時にパッチリと目が冴えてしまうのです。 一度目が覚めると、頭の中は仕事の不安で埋め尽くされ、二度寝など到底できませんでした。 こうした「早く行かなければ」という焦燥感による早起きは、決して健康的なものではなく、脳が疲弊しきった末に出していた「悲鳴」でした。 このように、心理的な負荷が自律神経を乱し、寝つきの悪さや中途覚醒、そして深刻な早朝覚醒を引き起こすことは、発達障害の特性のある方にとって決して珍しいことではありません。 ここまで紹介したセルフケアや工夫だけでは改善が難しい場合、あるいは以下のような状況に当てはまるなら、早めに心療内科・精神科・睡眠外来などを受診することを検討してください。 眠れない/起きられない状態が数週間以上続く (一時的なものではなく、慢性化している) 日中の眠気で仕事や運転にリスクがある (自身の安全や、他者の安全に関わるレベル) 気分の落ち込みや不安が強くなってきた (睡眠の問題がメンタルに波及し、二次障害が深まっている) いびき・無呼吸が疑われる (物理的な呼吸のトラブルが睡眠の質を下げている可能性がある) 生活を維持するのにしんどさを感じる (食事や入浴などの日常生活の動作に負担を感じる) 「病院は他に打つ手がなくなった時の最後の手段」と考えてしまいがちですが、決してそうではありません。医療機関や専門家は、あなたの生活を壊さないための、心強い「守る手段」の一つです。 自分だけで抱え込まず、プロの力を借りて脳のスイッチをメンテナンスしていくことも、生活リズムを立て直すための非常に現実的な選択肢です。 障害福祉サービスやサポートツールの活用 生活リズムは、自分ひとりの意志で立て直そうとするよりも、外部の「伴走」があるほうが圧倒的に安定しやすくなります。 1. 専門の支援サービス 生活面の土台づくりや就労準備をプロが支えてくれる仕組みがあります。 自立訓練(生活訓練):自立した日常生活や社会生活を営むために必要となるスキル習得のサポートやアドバイスをおこなうサービスです。 就労移行支援:一般就労に向けたスキル向上や就職活動をサポートするサービスです。生活リズムの安定は働くための「基礎体力」として、個別のアドバイスを受けることができます。 2. 日々の習慣を支えるツール 特性による「切り替え」や「忘れ」を補うために、以下のようなツールを「少数に絞って」使うのが効果的です。 生活・睡眠ログ:現状を客観的に把握する(ウェアラブル端末など)。 リマインダー:服薬、入浴、消灯など、ついつい先延ばしにする行動を通知する。 ブロッカーアプリ:夜間のSNSや動画視聴を物理的に制限する。 筆者の経験からも、「便利なツールを増やす」より「これだけは頼れる仕組みを一つ作る」ことの方が重要だと実感しています。 筆者はリマインダーアプリを一つに絞って愛用していますが、これがあるからこそ今の生活と仕事が成り立っています。つい最近も、月初に「経費のレシートまとめ」を無事終えられましたが、これは1か月前の自分がリマインダーをセットしておいてくれたおかげでした。 「未来の自分」に指示を出す仕組みを一つ定着させるだけで、日常生活も仕事もぐっと楽になります。 セルフモニタリングで自分のリズムを知ろう これまで色々と「生活リズムの整えかた」をお伝えしましたが、その大事な第一歩は、「正しい生活をしよう」ではなく、自分の好調・不調のパターンを知る、いわゆる「セルフモニタリング」をおこなうことです。 セルフモニタリングでは、こんな項目を1〜2週間だけ記録します。 寝た時間/起きた時間 寝付くまでの時間 夜更かしした日の「直前の行動」(スマホ、仕事、趣味、反省など) 日中の眠気(強い時間帯) カフェイン、昼寝、運動の有無、その日の満足度(リベンジ夜更かしの指標) その日のストレス(ざっくりでOK) すると、「夜更かしの引き金」や「眠くなる波」が見えてきます。見えれば対策は、気合いではなく設計に変えられます。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、セルフモニタリングの方法や生活リズムを整えるためのプログラムを提供しています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害】転職を繰り返すのはなぜ?原因と長く働くためのコツ

仕事が続かないのは、ADHD/ASDの特性とのミスマッチが背景にあることも。発達障害のある方の短期離職の原因と長期就労を目指すコツを紹介。

記事を読む
  • #合理的配慮
  • #障害者雇用
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「長く働くつもりだったのに、またすぐに辞めてしまった…」「次の職場でも、どうせすぐに辞めてしまう気がする…」 そんな悩みを抱えていませんか。 転職回数が増えてくると、「自分は社会に向いていないのでは」「また短期間で辞めてしまうのでは」と、不安や自己否定の気持ちが強くなることがあります。しかし、転職を繰り返すことは、必ずしも「忍耐や努力が足りない」「性格の問題」というだけではありません。発達障害の特性と、仕事内容や職場環境が噛み合わないことで、働き続けることが難しくなる場合もあります。 特性が「退職理由」の背景にある場合、辞めたくなる気持ちは、「合わない場所から離れる」という一種の防衛反応とも言えます。 この記事では、転職を繰り返しやすい方のパターンと発達障害の特性との関連を整理しながら、ADHDの特性がある筆者の経験も交えつつ、長期就労につながりやすい対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 【チェックリスト】転職を繰り返す人に多い「短期離職」のパターン まずは、発達障害がある方の短期離職の原因を整理してみます。いくつ当てはまるかを確認しながら読み進めてみてください。 あなたの退職理由は? 気持ちが高ぶった勢いで「辞めます」と言ってしまった 仕事が覚えられず、職場にいることがつらくなった ミスが続き、注意されるのが怖かった 頑張っているのに、仕事がうまくこなせなかった 人間関係がうまくいかず、職場での居心地が悪かった 朝起きられず遅刻が増え、会社に行きづらくなった 「普通にできるふり」を続けてしまい、心身が限界になった これらは、発達障害がある方の退職理由の中でもとくに多いものです。当てはまる場合は単なる「努力不足」ではなく、発達障害の特性と職場環境のミスマッチが退職の背景にあった可能性があります。これから、なぜこうしたことが起きやすいのかを、特性との関連で見ていきます。 発達障害の特性と「早期離職」の深い関係 発達障害の特性は人によってさまざまですが、ここでは短期離職と関連しやすい特性のうち代表的なものをいくつか紹介します。診断の有無にかかわらず、「似た傾向があることで働きづらさを感じている」という方にも参考になる部分があると思います。 ADHD|「衝動性」によってその場の感情で動いてしまう 職場で嫌なことがあったとき、気持ちが強く揺れた勢いで、退職を伝えてしまうことがあります。たとえば以下のような状況です。 上司に注意された直後に、反射的に辞意を伝えてしまう 相談する前に「辞めるしかない」と結論を出してしまう その場を離れたい気持ちが強く、選択肢を考える余裕がなくなる 衝動性が強いと、「一度落ち着いて考える」「他の方法を検討する」といった「間」を作りづらくなることがあります。その結果、退職以外の選択肢(業務の調整、配置換え、相談、休職など)を検討する前に、退職に進んでしまうことがあるのです。 筆者は、会社勤めから個人事業主へ働き方を変えましたが、退職を決めた発端はまさに衝動性によるものだったと思います。 自分がやりたい仕事があり、会社では別の仕事をしている 本業として会社の仕事を、副業としてやりたい仕事をしてきたが、一日の大部分の時間を会社の仕事に取られるのが我慢できなくなった 会社の仕事に興味を失い、「辞めるしかない」としか考えられなくなった ADHD|「不注意」によって仕事のミスが生じる 短期離職の理由として多いのが、「仕事が合っていない気がする」という感覚です。この言葉はとても曖昧になりやすいのですが、実際には次のような流れで「合わなさ」が強まっていくケースが見られます。 ミスや抜け漏れ、遅れが増える 指摘される回数が増え、評価が下がったと感じる 自信がなくなり、緊張や不安が強くなる さらにパフォーマンスが落ち、ミスが増える 「自分は向いていない」と思い込み、退職につながる ここで大切なのは、「向いていない=能力がない」と決めつけないことです。合わない仕事や環境では力が出にくくなります。 ADHD特性と相性が悪くなりやすい業務例 単調な作業が長時間続く(集中が切れた時にミスが起きやすい) 精密な確認作業が多い(細かな抜け漏れが問題になりやすい) マルチタスクが前提(切り替えの負担が大きい) 割り込みが多い環境(集中が途切れやすい) 筆者も、管理部門の総務という典型的な事務職の職場で働いていました。そこでは、絶えず発生する社内外の問い合わせにタイミングよく対応しながら、社内の備品を定期的にチェックしたり、権限設定の複雑な入退室のカードを適切に管理したりしなければなりませんでした。当時の筆者にとって、一番相性が悪い仕事のオンパレードでした。 一方で、特性に合う条件がそろうと就業が安定しやすいことがあります。筆者は、人前でプレゼンテーションをしたり文章を書くことに抵抗が無かったので、社内イベントの司会や形式的に整った文書の作成などとは相性が非常に良く、「この仕事は合っている」と感じていました。 面倒なことに、この「相性が悪い仕事」も「相性が良い仕事」も、同じ「総務の職場」でのものでした。今までを振り返ると、素の自分が100%合わない職場は無かったように思いますが、100%合う職場というのも無かったという印象です。 ASD|「コミュニケーションの苦手」によって人間関係がうまくいかない ASDのある方は、言葉の受け取り方や伝え方に「ズレ」が生じやすく、以下のようなケースが積み重なって人間関係のストレスにつながることがあります。 冗談や遠回しな言い方が読み取りづらい 暗黙のルールが分からない 会話のタイミングが合わない また、本人は真面目に対応しているつもりでも「冷たい」「空気が読めない」と受け取られてしまい、注意や指摘が増え、職場に居づらくなるケースがあります。こうした状況が続くと、疲れやすさや自己否定が強まり、結果として退職に至る方も少なくありません。 筆者は診断はADHDですが、こういった傾向を自覚しています。総務として働いていたとき、会社の飲み会の仕切りが非常に苦手でした。周囲に気を配って食べ物やお酒を追加注文しつつ、タイミングよく会話を盛り上げる。気の利いた締めの一言で会を終わらせる。「それも総務の仕事のひとつ」と言われて頑張りましたが、苦痛以外の何物でもありませんでした。 ASDのコミュニケーション特性は、指示の捉え違いによる仕事の失敗、接客や営業職でのお客様とのやりとりがうまくいかない等、業務上の「苦手」につながることもあります。 ASD|「感覚過敏」によって職場環境にストレスを感じる ASDの特性の一つに、音・光・におい・肌ざわりなどの刺激に敏感な「感覚過敏」があります。たとえば、以下のような刺激が強い負担となり、集中が途切れたり疲労が急激に増えたりします。 電話の音や周囲の雑音 蛍光灯の光 香水や柔軟剤のにおい 本人の努力だけでは対処が難しく、「仕事の内容」以前に「環境がつらい」状態になってしまうこともあります。結果として、体調を崩したり、通勤や出社が苦痛になったりして、離職の引き金になることがあります。 筆者は、スーツが苦手です。衣服が体にフィットする感覚は苦痛でしかなく、それを着るだけで思考力が落ちるような気がします。服装自由のIT企業でも、「スーツはサラリーマンの戦闘服だ」と言われてスーツでの勤務を推奨され、比較的大きさに余裕のある服装で出勤すると「あれ?夏休み?」と嫌味を言われたことがあります。 これら以外にも、発達障害の特性によって、以下のような困難が生じ、退職につながるケースがあります。 ADHD:日中の眠気・やる気が起きない ADHD:先延ばしグセや時間見積もりに苦手があり、締め切りに間に合わない ADHD:忘れ物や失くし物などが続き、注意や叱責を受ける ASD:指示が曖昧・抽象的なときに、理解ができなかったり不安になったりする ASD:急な変更やイレギュラー対応が重なると、負荷が一気に高まりやすい ASD:複数の仕事をバランスよくこなすことが難しい ASD:こだわりが強く、業務フローの変更を受け入れられない 上記以外にも、さまざまな「特性による働きづらさ」が生じることがあります。 こうした困難を「自分の努力で何とかしなければ」と抱え込んでしまうと、必要以上に頑張りすぎて心身がすり減ってしまうことがあります。頑張りすぎることで、「過剰適応」「二次障害」といったさらなる悪影響につながることもあります。 人間関係や環境によるストレス(過剰適応・二次障害) もう一つ、短期離職につながりやすい要因として「過剰適応」があります。周囲に合わせるために無理を続け、特性を隠して「普通にできているように見せる」「困難がないように振る舞う」状態、いわゆる「擬態」を長く続けてしまうと、心身の負担が大きくなりやすいです。 相談したいけれど、迷惑をかけたくなくて言えない ミスをしても助けを求められず、抱え込んでしまう 人に合わせ続けて疲弊し、ある日突然動けなくなる このストレスが蓄積すると、うつ状態や適応障害などの二次的な不調、いわゆる「二次障害」につながることもあります。こうしたつらさを少しでも感じたら、無理に一人で抱え込まず、医療機関や支援機関に相談することも大切です。 なお、「擬態」をしていると、このストレスを溜め込んでいてもなお、それを無視して擬態を続けてしまう悪循環に陥りがちな傾向があります。 筆者もこの「擬態」スキルを磨きに磨いてしまった結果、ある時期を境に「普通なら15分程度で終わる仕事が、1時間半経っても終わらない」「会社に向かおうとしても足が動かない」といった状態に陥り、医者から「抑うつ」と診断されて休職を余儀なくされた経験があります。 「過剰適応」「擬態」「二次障害」について思い当たる方は、ぜひ下記の関連コラムをあわせてお読みください。理解が深まり、対策の参考になることでしょう。 転職を繰り返さないためにできること【自己対処と環境選び】 ここからは、「精神論」ではなく、現実的に取り入れやすい対処の方向性を整理していきます。ポイントは、自分にムチ打って頑張り続けるのではなく、続けやすい形に整えることです。 自己理解を深めて「自分に合った働き方」を知る 長く働くためには、「好き・嫌い」だけではなく、特性を踏まえた「向き・不向き」を整理しておくことが役立ちます。たとえば以下のような観点です。 集中しやすい条件は何か(静かな環境、時間制限がある、動きがある等) 特性による苦手が出やすい条件は何か(割り込み、曖昧な指示、同時並行等) どんなときに調子を崩しやすいか(睡眠不足、叱責が続く、相談できない等) どんな工夫があると安定しやすいか(手順書、チェックリスト、メモの許可等) 「自分の取扱説明書(ナビゲーションブック)を作る」ようなイメージで、条件を言語化していくと、仕事選びや職場選びの精度が上がりやすくなります。 以前、筆者はこのようなことを「甘え」だと捉えていました。集中できない環境でも集中する頑張りを見せる、苦手を克服する、調子が悪くても無理矢理根性で乗り切る、工夫よりも執念、そういったことを良しとしていました。 もちろん、頑張ることや諦めないメンタリティなどは大切です。一方で、特性を踏まえて「向き・不向き」を把握し、より自分が力を発揮できるようにする努力も大事なものです。それは決して「甘え」ではありません。発達障害の特性がある方に向いている仕事選びのコツについては、以下の関連コラムもぜひあわせてお読みください。 現在「一般雇用枠」で働いている方の場合は、障害や特性を開示したうえで、必要な配慮を受けながら働ける「障害者雇用枠」を検討するのも一つの方法です。 必ず切り替えるべき、という意味ではありませんが、業務の進め方や職場環境について相談しやすくなり、働きやすさにつながることもあります。ご自身の体調や働き方の希望を踏まえ、支援機関や専門家と一緒に、開示の範囲や選択肢を整理してみると安心です。 自分を守るための「セルフケア」と「相談」 衝動性が強い方の場合、「辞めたい気持ち」を無理に消すより、決断する前に立ち止まる仕組みを作ることが役立ちます。 その場で結論を出さない(時間を置く) 退職を言う前に、必ず相談する相手を決めておく 「辞めます」ではなく「相談したいことがあります」と言い換える 生活リズム(睡眠・食事・服薬管理など)を整える 土台が安定すると、同じストレスでも受け止めやすくなることがあります。「やる気の問題」ではなく、調子の波を小さくする「セルフケア」を行うことが大切です。自分の「感情のコントロール」の仕方を身につける方法(認知行動療法など)を学んでみてもよいかもしれません。 このセルフケアのタイミングですが、筆者は過去を振り返って、「思うより早くすべきだった」と考えています。日常的に繰り返していることに少しでも変化があれば、気に留めておくと良いでしょう。 混雑するターミナル駅での乗り換えを避け、ちょっと回り道をして別の駅で乗り換えをする 時間はかかるが確実に座れる別の路線で帰宅する 電車賃の何倍ものお金をかけて職場から家へタクシーで帰る これらはいずれも筆者の休職直前の変化です。しかし当時は、「ちょっとした通勤の工夫」「頑張っている自分へのご褒美」という感覚でした。今振り返ると、それはセルフケアをすべきサインであったように思います。 職場での「合理的配慮」を検討する 働き続けるためには、本人の工夫だけでなく、「合理的配慮」が助けになることがあります。合理的配慮とは、障害や特性によって生じる困難を軽減するために、職場が可能な範囲で行う調整のことです。 発達障害の特性に対する配慮事例 指示を口頭だけでなく、チャットやメモで残してもらう 優先順位を一緒に整理してもらう チェック工程を仕組みとして組み込む(抜け漏れ防止) 席配置の工夫、騒音や刺激の調整 手順書・テンプレート・チェックリストの活用 「合理的配慮」という字面から、「会社に一方的に配慮してもらうなんて申し訳ない」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。筆者もそう考えたうちの一人でした。約20年前、初めて会社に就職したとき、採用担当者から配慮事項を聞かれて「いえ、ありません。ご迷惑をおかけせず、一生懸命頑張ります」と答えてしまいました。 合理的配慮は、もちろん職場側との調整ではありますが、それをすることによって職場全体にも良い影響を与えることが多いです。指示の言語化、優先順位の共有、働きやすい職場、手順書による業務の平準化など、その恩恵を受けるのは本人にとどまらないこともよくあります。 なお、合理的配慮については、下記の関連コラムでより詳しくご説明しています。よろしければこちらもあわせてお読みください。 【事例紹介】「続かない」を克服し、長期就労を実現したケース ここでは、短期離職を繰り返していた発達障害のある方が、工夫と環境調整によって安定して働けるようになった例をご紹介します(個人が特定されないよう内容は一部調整しています)。 事例:Nさん(20代後半・ASD)「ミスマッチの修正」と「外部サポートの活用」で安定 Before 広告系スタートアップ企業に入社するも、タスクが納期通りに終わらないことや業務のミス、職場でのコミュニケーションの難しさが重なり、自責が強まる。3年目の終わりに適応障害で休職し、療養中にASDの診断を受けた。 Action 平日毎日の記録と週1回の面談で状況を整理できる、発達障害当事者向けの個人コンサルを活用し、負担を減らす工夫を具体化しました。付箋・手帳・Notionなどを試しながら自分に合う形を整えていきました。 After 転職活動と資格勉強、繁忙期が重なる時期でも、個人コンサルで教わった方法でリソースを見積もって調整できるようになり、内定を獲得し、資格試験にも合格。新しい職場で一般雇用枠での就労を継続中。 ポイント 「気合い」ではなく、記録と振り返りの仕組みで立て直したこと 配慮が得にくい環境だったので、外部サポートでカバーする体制を確保したこと 繁忙期に崩れやすい局面で、リソース見積もりと調整ができるようになったこと 事例:筆者「過剰適応をやめ、無理のない働き方」へ Before 職場に合わせようとして無理を重ね、「できているふり」を続けていました。しかしミスなどから業務に支障が出てくるようになり、突然休職。その後退職してクローズド就労(障害を開示しない働き方)で転職するも、まったく同じ理由でまた休職し、「また続かなかった」と自分を責める気持ちが強くなっていました。 Action 自身のミス発生事例と向き合い、「できなくても頑張る」ではなく「できないものはできないと認めた上で自己対処をする」姿勢へ転向。一般には「タスク管理」と呼ばれる方法で自己対処をし始めました。 After 勤怠が安定し、残業もほぼなしで無理なく仕事を回すことができるようになりました。「忘れがち」「先送り癖」「段取り苦手」といった自身の特性を受け入れ共存しながらも、仕事で結果を出せるようになりました。 ポイント 「無理をして頑張り続ける」ではなく、自身の特性を受け入れて無理を減らしたこと 特性をカバーする「やり方」を身に付けたこと 結果的に生活リズムが安定し、より働きやすい環境を作れたこと 一人で悩まず、就労支援のプロを頼ってみませんか? 転職を繰り返してしまうと、「次もダメかもしれない」という不安が大きくなり、相談すること自体が難しくなることがあります。ですが、短期離職の背景には、特性と環境のミスマッチや、過剰適応による疲弊など、整理できる要因があることも少なくありません。 自分だけで抱え込まず、ときには第三者を交えながら「何が起きているのか」「どうすれば続けやすくなるのか」を整理していくことで、少しずつ選択肢が増えていく可能性があります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
職場で発達障害が理解されない原因は?「3つの壁」と対処法

職場で発達障害が理解されないのはなぜ?原因と誤解を減らすための対処法、心が楽になるマインドセットをADHD当事者の経験を交えて紹介します。

記事を読む
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「発達障害の特性について何度説明しても、分かってもらえない」「ちゃんとやっているのに、努力不足・怠けていると思われてしまう」 そんな悩みを抱えていませんか。 職場で「やる気がない」「変わった人」「仕事ができない人」と誤解され、孤独や生きづらさを感じている発達障害のある方は少なくありません。一生懸命に工夫し、努力しているにもかかわらず、その努力が見えず、評価にもつながらない。そんな状況が続けば、「どうせ分かってもらえない」と心を閉ざしてしまうのも無理はありません。 この記事では、発達障害がなぜこれほどまでに理解されにくいのか、その構造的な理由と、職場で誤解を減らすための具体的な対処法を、筆者の経験も交えてご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] なぜこれほどまでに伝わらないのか?理解を阻む「3つの壁」 発達障害のある方が「理解されない」と感じる背景には、個人の説明力や努力の問題ではなく、構造的な「壁」が存在します。ここでは、そういった壁を3つに分けてお伝えします。 3つの壁について紹介する前に、発達障害の特性についておさらいしましょう。 発達障害(ASD・ADHD)とは 発達障害は、生まれつきの脳機能・神経系の特性と周囲の環境とのミスマッチが生じたときに、日常生活・社会生活に困難が生じる「社会性の障害」です。 近年では、「障害」ではなく「特性」≒「症」ととらえることが適切だと考えられており、「神経発達症」という呼び方に変わりつつあります。 ASD(自閉スペクトラム症):対人コミュニケーションやこだわりの強さ、曖昧な指示の理解の難しさなどが特徴とされており、環境によって困りごとが大きく変わります。 ADHD(注意欠如・多動症):不注意(抜け漏れ・忘れやすさ)や多動・衝動性の特性があるとされ、やる気とは関係なくミスが起きやすかったり、段取りが難しかったりするのが特徴です。 発達障害は「見えづらく・分かりづらい障害」と呼ばれています。これが「周囲からの理解」を得ることが難しい原因で、生きづらさや働きづらさを生み出す「壁」となるのです。 1.「見えづらさ」の壁(物理的不可視性) 発達障害は、外見からは分かりません。車椅子や白杖のような、誰の目にも分かる補助具があるわけではないため、そもそも「配慮が必要な障害がある」という認識を持ってもらいにくいという特性があります。 その結果、 困っていること自体に気づいてもらえない どこに困難があるのか想像されにくい 「普通にできているように見える」と判断されやすい といった状況が生まれます。 当事者からすれば、毎日必死にバランスを取りながら働いているのに、周囲からは「問題なくこなしている人」に見えてしまう。このギャップこそが、理解されない苦しさの第一歩です。 筆者も、自分がADHDであることを伝えると、「言われなければ分からなかった」「そう見えない」とほぼ毎回言われます。明らかにオドオドしていたり、いつも物を落としたり、話しぶりが特徴的であったりしていれば「そうかもしれない」と腑に落ちるのかもしれません。 しかし、筆者は普通にしているぶんには、特徴的な仕草などもありません。頭の中では色々なことが錯綜していたりするのですが、それが周囲に分かるようになるには、何か問題が顕在化したときであることが多いのです。 いっそのこと、ウルトラマンのカラータイマーのように「混乱したら光る」といった周囲に分かりやすいサインがあれば、と思うこともよくあります。 2.「分かりづらさ」の壁(ギャップと多様性) 発達障害の特性の大きな特徴のひとつが、できること・できないことの差が極端に大きいことです。 たとえば、 メールやチャットでの文章は論理的で分かりやすいのに、口頭報告になると途端に言葉が詰まる 複雑な資料作成やデータ分析は得意なのに、電話対応や雑談が極端に苦手 集中できる作業では高い成果を出せるのに、単純作業や切り替えが必要な場面でミスが続く このような凹凸のある特性は、「やればできるのに、やっていない」「手を抜いているだけでは?」という誤解を生みやすくします。 さらに、同じ診断名であっても特性は十人十色です。「前にいたADHDの人はこうだった」「ASDならこういうはず」という思い込みがあると、個別の困難が理解されにくくなります。 筆者が以前勤務していた会社では、総務の重要な仕事の一つである「社用車の管理」を任されました。重要な仕事を任せてもらったことはとてもありがたいことでしたが、筆者は運転免許も持っていませんし、車にまったく興味がなかったのです。 発達障害の診断の際、筆者が医師から受けた説明に「興味関心に偏りがある」ということがありました。興味のあることは知識として定着しやすいが、興味がなければ右から左だということでした。そんな筆者が、全国に1,500台ある営業スタッフの車や、800台の現場作業員の車を管理するのは、困難を極めました。ある支店の事務員さんと社用車についての電話をしていたところ、うまく対応できずに「使えない」と言われて電話を切られたことは、今でも忘れられません。 一方で、法律の勉強を年単位でやっていたこともあってか、株主総会関連の業務には難なく取り組むことができました。各部署の部長を集めた株主総会に向けてのキックオフ説明会での司会・進行を行った際、参加していた部長の方々からも認められるほどの大成功を収め、めったに褒めない上司から「でかした!」と言われるほどでした。 このように、できること(株主総会説明会の司会)・できないこと(社用車の管理事務処理)の差がはっきりしすぎて、きっと上司は筆者を理解しかねたことと思います。 3.「程度の違い」の壁(定型発達の『私もそうだよ』問題) 発達障害による困難は、一見すると「誰にでもありそうなこと」に見えます。 忘れ物をする ケアレスミスが多い 音や匂いが苦手 集中が続かない そのため、周囲からはこんな言葉をかけられることがあります。 「私も忘れっぽいよ」「誰だってミスくらいするよ」「そのくらい我慢すればいいんじゃない?」 言っている側に悪気はありません。むしろ「共感しているつもり」「励ましているつもり」なのです。 しかし、当事者にとっての困難は、単なる不快や不便ではなく、生活や仕事が成り立たなくなるレベルの苦痛です。この「質と量の違い」が理解されないことで、「自分の我慢が足りないのかもしれない」と、自分を責めてしまう人も少なくありません。 筆者も、この周囲からの「共感」「励まし」が逆効果になってしまったことがあります。一番効いたのが、同じ部署の先輩に「きみ、最近社内で評判悪いんだけどさ」と言われ、「色々あるのは分かるけど、忘れたりケアレスミスしたりなんか自分だってあるし、そんなの挙げていったらきりがないよ。だから、頑張ろうよ」と話されたときです。 先輩にしては、「自分もよく忘れるしミスもする」「だから気にしないでいこう」と伝えて筆者を励まそうとしてくれていたのだと思います。しかし、そのときの心の動きは、 「社内で評判悪い」 → そうだったのか......やはり自分はちゃんと仕事をすることができないのか 「自分だってミスする」 → いや、自分はそんなレベルじゃない 「だから気にしないで」 → 他の人がミスしたところで自分のミスがなくなるわけじゃないし気になる といった具合で、余計に自分の至らないところを自分でえぐったような気分になってしまいました。 職場での壁を超えるための「伝え方」のコツ ここからは、職場において「理解してもらえない」状況を少しでも改善するための、実践的な伝え方を紹介します。大切なのは、感情を訴えることではなく、業務にどう影響していて、どうすれば改善できるのかを具体化することです。 事例1:「指示待ち・気が利かない」と言われる(ASD傾向) 曖昧な指示や暗黙の了解が多い職場では、ASD傾向のある方は「自分なりに考えたつもりでも、ズレてしまう」ことが起こりやすくなります。 NG例 「曖昧な指示が苦手です」 → これだけだと、「努力不足」「柔軟性がない」と受け取られがちです。 OK例 「認識のズレを防ぐため、期限と優先順位を数値で指示いただけると、ミスなく最速で動けます」 → 「困っている」ではなく、「こうすると成果が出る」と伝えることで、業務改善の提案として受け取ってもらいやすくなります。 ただ、曖昧さを具体化するのを相手にのみしてもらうことになるので、もう一歩「自分なりに具体化して相手に確認する」とできるとさらに良いです。 「了解しました。ということは、明日中までにA4一枚に構成と内容を自分なりに書いたものをたたき台としてお出しする、ということでよろしいでしょうか?」 ここまですると、「曖昧なことが理解しづらい」という傾向は、「指示を明確に理解して確認できる」という強みになります。 相手からすると「明確な指示を伝える」は手間に感じるかもしれませんが、適切な指示を繰り返していくことで、情報が蓄積され、ASDの特性がない人よりもアウトプットの質が高まる傾向があると言われています。 事例2:「ミスが多い・やる気がない」と言われる(ADHD傾向) ADHD傾向のある方は、「気をつける」「頑張る」だけではミスを防ぎきれません。 NG例 「次からもっと注意します」「より精査を徹底します」 → 精神論は、結局同じ指摘が繰り返される原因になります。 OK例 「目視確認だけだと抜け漏れが出やすいため、読み上げソフトを使った確認工程を入れさせていただけないでしょうか」 → 仕組みで解決する姿勢を見せることで、「やる気がない」という誤解を減らすことができます。 さらに、より説得力を持たせるための伝え方として、「自分の憶測や願望などの主観をできるだけ入れない」ことが大事です。自分の主観が入ってしまうと、説得力が弱くなってしまうのです。 「目視確認だけだと抜け漏れが出やすいため」「多分次回は大丈夫だとは思うのですが」 ← 憶測・願望「読み上げソフトを使った確認工程を」「念のため......これならきっとうまくいくんじゃないかと考えているので」 ← 憶測・願望「入れさせていただけないでしょうか」 このようについ主観を入れてしまいがちですが、話も冗長になりがちなので、できるだけ入れずに、シンプルに伝えるとより良いです。 事例3:「感覚過敏」が「わがまま・神経質」とされる 感覚過敏は、「好み」や「性格」の問題と誤解されやすい代表例です。 NG例 「この音が嫌いです」「この匂いが苦手です」 OK例 「聴覚過敏があり、周囲の音に過剰に反応してしまいます。イヤーマフを使用することで集中力を維持でき、業務効率が上がります」 → 機嫌や好みではなく、業務パフォーマンスの話に変換することがポイントです。 筆者も、たとえば企業様へ研修講師として登壇する際、必ず服装について確認を取るようにしています。スーツが体に触れる感覚が苦手なので、あらかじめカジュアルに寄せた服装にさせて欲しいとお願いしています。 その際、ただ「スーツが苦手なので、カジュアルな格好をさせて欲しい」とだけ伝えると、こちらの要望を一方的に伝えるだけになってしまいます。そこで、「スーツが体に触れる感覚が苦手なので、より集中してお話をするために、カジュアルな服装でお伺いしてもよろしいでしょうか?」と業務パフォーマンスの話としてご相談するようにしています。 それでも理解されない時のマインドセット どれだけ工夫して伝えても、すべての人に理解されるとは限りません。そんなときに、自分を守るための考え方も大切です。 業務遂行上のメリット/デメリットで判断してもらう 職場は「共感し合う場」ではなく、「業務を遂行する場」です。友達のような理解を求めなくても、必要な配慮が得られれば十分だと割り切ることも、ひとつの選択です。 心から共感してもらえなくても、「こういうときは、こう対応してもらう」というのは、業務を進めていくために必要なのであれば十分可能です。前述の研修登壇時の服装の相談も、 スーツを着用しなくていい → 違和感なく集中しやすい → 話のクオリティを保てるというメリット スーツを着用する → 感覚過敏で集中しにくい → 話のクオリティに影響が出かねないというデメリット という、あくまでメリット/デメリットという基準で判断をしてもらっています。感覚過敏についてご説明して共感してもらうのも良いのかもしれませんが、かなり言葉を尽くして理解してもらわないといけなくなるので、スピーディーに業務を進めるのは難しくなってしまいます。 「悪気のない人」とは戦わない 「私もそうだよ」「だから、そんなこと気にしないで頑張っていこう」などと言われたとき、否定したくなる気持ちは自然です。しかし、真っ向から受け止めてしまうと疲弊してしまいます。 「そうなんですね」「〇〇さんもなんですか!」と、まずは相手との共感ポイントを作って受容の姿勢を見せつつ、「私は診断を受けてやっと分かったんですが、なかなか気持ちだけではクリアできないところもありまして......」などと、診断の有無といった客観的な境界線を相手との間に引き、淡々と伝えることがおすすめです。 さらに、「相手が分かっていない・自分だけが我慢している」という気持ちにならないように、理解が不十分な相手とのやりとりをするときには「自分から歩み寄れてえらい!社会性があがった!」と自分をほめてあげることも大事です。気持ちがいくぶん楽になるはずです。 まとめ:まず自分から、「見えない困難」を認めてあげよう 周囲に見えなくても、私たちの困難は確かに存在しています。そして、私たちはその困難と毎日向き合いながら生きています。 他人に完全に理解してもらう前に、自分自身が自分の一番の理解者でいること。これが、長く働き続けるための土台になります。 「自分なりの工夫だけでは限界がある」「第三者の専門的なアドバイスを受けながら、自分に合った働き方を見つけたい」という方は、就労移行支援事業所などの障害福祉サービスに相談するのも一つの有効な手段です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【当事者解説】発達障害と診断されたらどうする?やるべきことは?

ADHD当事者の筆者が、診断を受けたあとの行動ステップ、利用できる制度、職場への伝え方、自己理解・特性への工夫までを解説します。

記事を読む
  • #合理的配慮
  • #就労移行支援事業所
  • #障害者雇用
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「発達障害と診断されたけれど、どうすればいいのか分からない」「職場や家族に伝えるべきか、必要な手続きはあるか」 そんな不安を感じていませんか。 診断を受けた直後は、気持ちが揺れやすく、今後のことを考える余裕が持ちにくい時期です。焦らずに少しずつ整理していけば、自分らしく働き、暮らしていくための方法を見つけていくことができます。 この記事では、ADHDの診断を受けた筆者が、「発達障害と診断されたら」というテーマで、診断に至るまでの流れから、診断後にできること、そして周囲との向き合い方までをお伝えします。今の環境をより過ごしやすく整えるためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 診断に至るまでによくあるきっかけ まだ診断を受けていない方・受けるか悩んでいる方も多いかと思います。まず最初に、診断を受けたきっかけについて紹介します。 診断後にやるべきことについて今すぐ知りたい方は、「診断後にできる行動のステップ」からお読みください。 発達障害は、症状が突然あらわれて診断がくだるものではなく、日常生活や仕事の中で感じる「やりづらさ」や「違和感」から、少しずつ気づいていくケースが多いです。 職場でうまくいかない場面が続いたとき 「同じ注意を受けることが多い」「予定の調整が難しい」「会議中に集中が続かない」など、仕事の中で自分でもうまく回せていないと感じることが続く場合があります。 筆者が「自分は発達障害かもしれない」と思ったきっかけがまさにこのパターンでした。 法律事務所の事務員をアルバイトでやっていて、電話の対応がうまくできなかったり、お客様にお渡しする大事なお金を事務所に置いたまま外出してしまったりといった場面が続き、「もう雇い続けられない」と契約を終了することになりました。 続けて不動産仲介の小さな会社でアルバイトを始めるのですが、そこでもファイリングに明らかに時間がかかりすぎてしまったり、お客様を物件に案内できず迷子になってしまったりと、自分でも「何かおかしい」と考えるようになりました。 そこで、「仕事 うまくいかない」「仕事 ケアレスミス」といったワードで検索をかけてみたところ、「発達障害」という言葉を知り、クリニックで診断を受けました。 情報を見て「もしかして自分も」と感じたとき テレビや記事、SNSなどで「大人の発達障害」「ADHD」「ASD」といった言葉を目にし、自分の行動パターンや考え方に似ていると感じて受診する方も少なくありません。 これまで言葉にできなかった「生きづらさ」や「頑張ってもうまくいかない理由」に納得できることで、ほっとしたり、次の一歩を考えやすくなる方も多いようです。 筆者は、診断はADHDだったのですが、発達障害について知るにつれて、ASDの傾向もあるかもしれないと思うようになっていきました。 「抽象的な言葉が理解しづらい」「言葉にならない行間を読むのが苦手」といったASD特性のある方の経験談をSNSやウェブなどでよく見ます。筆者もそれを見て、「そういえば自分もそうだ!」と思い、ASD傾向への対策も取り入れて仕事や生活をするようにしています。 メンタル不調で通院したときに分かることも ストレスや疲れの蓄積で心療内科・精神科を受診した際に、医師から「発達障害の傾向があるかもしれません」と指摘されるケースもあります。 気分や体調の波が大きいと感じている場合、その背景に特性が関係していることもあるため、専門の医療機関で相談してみることが一つの選択肢になります。 診断後にできる行動のステップ 風邪などの病気は、診断があり、薬を処方され、服薬をすれば治っていきます。診断を受けたら、ある程度終わりが見えることが多いです。しかし、発達障害の診断は、診断→自己理解→対策という流れの「始まり」だと考えて良いでしょう。 以下に、診断を受けた後に意識しておくとよい5つのステップを紹介します。 1. 自分を知る時間をつくる 診断を受けたあと、焦って誰かに伝えたり、手続きを急いだりする必要はありません。まずは「どんな場面でうまくいかないのか」「どんな条件なら力を発揮しやすいのか」を整理してみましょう。 得意・不得意の傾向を書き出す 困った場面をメモして、どんな工夫が有効だったかを記録する 特性を理解しているカウンセラーや医師に話してみる このような記録は、後で職場や家族と話すときにも役立ちます。 筆者は、逆にこの時間をつくらなかったため、少々回り道をしてしまいました。診断を受けたあとに、クリニックのソーシャルワーカーの方に就労について相談して障害者雇用の話を聞き、すぐに就職活動を始めたのです。 スピーディーに事が進んだのは良いのかもしれませんが、その反面、自分自身の得意・不得意などもしっかり把握せずに仕事を始めてしまったため、仕事がうまくいかず体調を崩して休職するということを2社連続でしてしまいました。 もし診断を受けた当時の自分に今の自分がアドバイスするなら、「まずは就職を焦らずに、自分のことを知る時間を確保しよう」と言うと思います。 2. 利用できる制度や支援を調べる 発達障害がある方を支える制度は複数あります。それぞれの特徴を知り、必要に応じて利用を検討するのをおすすめします。 医療機関での継続的なフォロー(通院・カウンセリングなど) 発達障害者支援センターでの相談(生活や就労について) 就労移行支援などの障害福祉サービス(働く準備のサポート) 合理的配慮を得るための社内相談 前述のとおり、筆者は診断を受けてすぐに就職活動を始めたのですが、それは制度や支援機関についての知識がなかったというのも一因でした。特に、「就労移行支援事業所」というものの存在を知らず、応募書類の作成なども自力か友人の力を借りてやっていました。 ただ、支援制度や相談窓口の情報を知らなかったことで、結果的に一人で抱え込みすぎていたように思います。どこに相談すればいいか分からないときは、まず信頼できる情報を集めることが大切です。 そこで、頼れる専門の相談窓口を紹介します。 発達障害者支援センター:発達障害がある方やご家族が、生活・就労・福祉制度などの相談をできる地域の支援拠点です。お住まいの市区町村の障害福祉窓口:障害者手帳や福祉サービスの申請・利用方法を案内してもらえる窓口です。 精神保健福祉センター:こころの健康や生活・仕事の悩みを専門職に相談できます。 障害者就業・生活支援センター:働くことと暮らしの両面から支援を受けられる機関です。 ハローワーク:障害者雇用の相談や求人紹介、応募書類の作成サポートなどを受けられます。 地域障害者職業センター:職業評価(自分の職業適性や課題、支援方法を知るためのもの)や就職後の定着支援など、専門スタッフによる助言が得られます。 医療機関:治療や服薬の相談のほか、利用できる支援制度を紹介してもらえる場合もあります。 就労移行支援事業所:就職に向けた訓練や生活リズムの整え方、ビジネスマナーなどを学べる障害福祉サービスです。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、診断を受ける前の方、診断を受けたものの障害福祉サービスの利用をするかどうか決めていない方からのご相談も承っています。お気軽にご相談ください。 お問い合わせフォーム▶ 3. 職場への伝え方を考える 発達障害などの障害があると、障害者雇用のオープン就労で働く場合は、自身の障害を開示して、そんな自分が働きやすい環境を作るための「合理的配慮」について伝えることができます。 ただ、「診断名」だけを伝えるだけでは、周囲の人たちも何をすれば良いか分かりづらいものです。それだけでなく「具体的にどんな支援があると働きやすいか」を整理しておくことがポイントです。 たとえば、以下のように合理的配慮事項を伝えると、周囲の人も対応しやすくなります。 指示は口頭だけでなく、メモやメールでももらえると助かる 優先順位を一緒に確認してもらえると安心できる 集中しやすい静かな場所で作業したい 筆者は、この「合理的配慮」を、「自分の弱みをさらけ出すようで気が引ける」と考えていました。したがって、最初の障害者雇用のオープン就労の際に合理的配慮を聞かれたときに、「いえ、特にありません」と答えてしまいました。 合理的配慮は、あくまで自分と周囲がスムーズに働けるようになるためのものであり、職場の全員のメリットになるものです。変に遠慮すると、かえって職場に迷惑をかけてしまうこともあります。事実、筆者は合理的配慮を満足に伝えずに就労した結果、仕事がうまくいかなくなって休職してしまいました。伝えるべきことは、きちんと伝えることが大事だったなと、心底思ったのを覚えています。 そのためにも、職場のコミュニケーションの取り方や、どこまで伝えるかについては、一人で抱え込まずに相談してみることはとても大切だと考えています。 4. 生活と仕事のバランスを整える 自己理解をして、職場で働くための環境を整えることは、生活の安定性があってこそ十分に発揮されます。 睡眠・食事・休息のリズムを整える スケジュールを見える化し、予定を詰め込みすぎない 定期的に「最近どう感じているか」を振り返る 厚生労働省の就労準備性ピラミッドでは、「働くためのスキル」「社会人としての基本的な習慣」などを支える土台として、まずは「こころとからだの健康」や「日常生活のリズム」が大事なものと位置づけられています。 健康を維持し、日常生活を無理なく続けられる習慣をつくることは、自分らしく働くために最優先事項だと考えたいところです。 診断後の話ではありませんが、筆者が仕事がうまくいかずに休職したときのことです。当時実家に住んでいたのですが、休職の意味をしっかり理解していた親は、「とにかく休むことを優先しよう」と言ってくれました。ただ、1つだけ約束しました。それは、「朝起きて夜寝るというリズムは守ろう」ということでした。 今考えると、この最優先事項だけをしっかり守るという模範的な姿勢だったなと考えています。そのおかげか、しっかり休みつつもスムーズに次の段階へ移行できたという実感がありました。 日常生活のリズムを整えることは、こころとからだのメンタルヘルスを守りながら、無理なく働き続ける土台になります。ぜひ気を付けていただきたい点です。 5. 障害特性への工夫を考える  発達障害がある方の多くは、仕事や生活の中で「忘れやすい」「集中が続かない」「整理が苦手」といった特性を感じることがあります。 こうした特性は、努力や根性で克服するものではなく、自分に合った工夫を取り入れることでうまく付き合っていくことが大切です。 以下は、ADHD当事者である筆者が実際に取り組んでいる工夫で、特性や性格などによって、一人ひとり必要なもの・合う対策が異なりますので、参考としてお読みください。 仕事での工夫の例 タスクを見える化する:付箋やアプリで「やることリスト」を作り把握する。 スケジュール管理を習慣化する:会議や打合せなどの予定はすぐにカレンダーへ入力し、リマインダー機能を活用する。 作業環境を整える:集中しやすい静かな場所を選ぶ、デスク上をシンプルに保つ。 一度に抱えすぎない:同時に複数の作業を進めず、「今はこれだけ」に絞る。 筆者自身も、ADHDの特性である「注意の散りやすさ」を補うために、自分の抱える仕事を書き出して一覧化し、常に「次にやるべきこと」を具体的にして「今日やること」をメモに書き出すようにしていました。やるべきことが明確になることで、落ち着いて仕事を進められるようになりました。 日常生活での工夫の例 家事をルーティン化する:曜日ごとに掃除・洗濯などを決めておくと、迷う時間が減りやすくなります。 金銭管理をシンプルにする:現金での管理は使った履歴を残しづらい(レシートをなくす)ため、できるだけクレジットカードで支払うようにする。 忘れ物対策をする:鍵や財布を置く箱を用意し、出かける前に箱を確認するだけにしておく。 「できたこと」に注目する:完璧を目指すよりも、できたことを記録し、自分を肯定する時間を持つ。 こうした工夫は、特性を無理に変えるのではなく、「自分に合った環境をデザインする」ための方法です。 自分の行動パターンを理解し、小さな工夫を積み重ねることで、仕事も生活も少しずつ安定していきます。 よくあるご質問と考え方 ここでは、診断を受けた後の対処のしかたや、どう行動したら良いかなどについて、よくある疑問についてお答えしていきます。 Q. 会社に伝えたほうがいいですか? A. 伝えるかどうかは、状況や職場環境によって異なります。「配慮があれば働きやすくなる」「理解を得たい」と感じる場合は、信頼できる上司や人事担当者に相談する選択もあります。 一方で、伝えずに働き続けている方もいます。自分が働きやすいと感じる方法を選ぶことが大切です。 Q. 家族や友人に話すべきですか? A. 伝える相手や範囲も自分で決めて構いません。家族や親しい人に理解してもらうことで、生活面の協力を得やすくなることもあります。ただし、相手の理解度や関係性を見ながら、無理のない範囲で話すことをおすすめします。 Q. 障害者手帳は取得した方がいいですか? A. 手帳を取るかどうかは、その方の状況によって異なります。 主なメリット 障害福祉サービスや支援を利用しやすくなる 税制や公共料金の優遇が受けられる場合がある 検討ポイント 手続きに時間や準備が必要 「手帳を持つ」ことに心理的な負担を感じる方もいる 手帳は申請や手続きに時間がかかることもあるので、医師や支援センターなど専門家と一緒に判断していくと安心です。 Q. どんな制度やサービスがありますか A. 代表的な制度としては以下のようなものがあります。 発達障害者支援センター(相談・情報提供) 障害年金(生活・就労に継続的な難しさがある場合) 就労移行支援事業所(働くためのトレーニング・就職活動支援) 発達障害と向き合うために大切なこと 診断を受けることで、「苦手の原因」や「自分の得意なスタイル」が見えてくることがあります。発達障害がある人の中には、集中力・創造力・記憶力などを強みとして発揮できる方も多くいます。 「できないことをなくす」よりも、「できることを増やしていく」意識で取り組むことが、自分らしさを活かす第一歩になります。 こうしたことも含めて、自分の特性を理解しながら、安心して働くための環境づくりは、一人で抱え込まずに進めることが大切です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害の「擬態」─無理せず、自分らしく働くためのヒント

周囲に馴染むために本当の自分を隠そうとする「擬態」についてADHD当事者が解説。無理に特性を隠すことで起こるリスクや対処法について紹介。

記事を読む
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「本当の自分を知られたくない」「仕事ができないと思われるのが怖い」「障害があることが知られたら嫌われるかもしれない」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害のある方のなかには、周囲に特性があることを悟られないように、定型発達者のように振る舞おうとすることがあります。これを「擬態」あるいは「ソーシャルカモフラージュ」と呼びます。 この記事では、ADHDの診断を受けた筆者から、発達障害のある方が無理をして特性を隠すことで生じるリスクと、より無理なく働き続けるための対処法を、経験談を交えてご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場やこれからの就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 擬態(カモフラージュ)とは何か 「擬態」とは、本来の自分の特性を隠し、周囲に適応するために意識的・無意識的に振る舞いを変えることを指します。発達障害の分野では「ソーシャルカモフラージュ」と呼ばれることもあります。 たとえばASD(自閉スペクトラム症)の方は、「空気が読めない」と指摘された経験から、表情や声色のわずかな変化まで必死に観察し続けます。ADHDの方は「忘れ物が多い」と言われないように、過剰なチェックを常に繰り返します。 このように、「障害がある自分を受け入れてもらえないかもしれない」という不安や、「もう失敗したくない」という体験から、当事者は自分を抑圧し、演じるように振る舞うことがあります。 筆者も、擬態せざるを得ない状況に置かれたことがあります。一般雇用でクローズ就労をしたときのことです。クローズ(=障害を開示しない)なので、当然特性があるとは周囲に言えません。しかも、その会社には、年齢が30代中盤だったことから役職を付けて採用してもらいました。 役職付き、つまりチームのリーダーとしての役割を果たす必要がありました。しかも自分のタスクも当然こなさなければなりません。「ADHDで抜け漏れが多い」「先送り癖がある」とは言えない状況でした。 必然的に、「抜け漏れのないプレイングマネージャーであらねばならない」「チームメンバーの手前、先送りなどしてしまっては示しがつかない」と考えるようになり、擬態を余儀なくされました。 擬態は、ある種の生存戦略でもあります。 相手の反応を見て相槌のタイミングを真似(模倣)する。会議の段取りや資料の形式にも合わせる。こうした調整は、脳機能の特性を補うために生まれることがあります。 実際、筆者は発達障害当事者へのインタビューをする機会も多いのですが、「笑顔で合わせ続けた結果、帰宅後にぐったりして動けない」という声が繰り返し語られます。 発達障害のある当事者がこうした擬態を続けると、「自分を押し殺して、無理に社会に馴染もうとする」生き方になりがちです。しかもそれは仕事の場面だけではありません。 例えば、飲み会で本当は早く帰りたいのに「場を壊さないように」と笑顔を続ける。親族や友人との集まりで、不得意な雑談に相槌を合わせ、興味のない話題に同調する。LINEのやり取りひとつでも「変に思われない言葉」を探して何度も書き直す。休日も「充実している人」を演じるために予定を詰め込み、安心しようとする。 こうして職場でもプライベートでも「社会に溶け込むための演技」を続けるうちに、気がつけば心も体もすっかり消耗してしまうのです。 擬態が生まれる背景 発達障害のある方が「擬態」をする理由には、大きく4つの要因が考えられます。 ①過去の失敗体験 業務上のミスや、学生時代の人間関係での失敗体験。こうした経験から「二度と同じ失敗をしたくない」「これ以上笑われたくない」と思い、過剰な努力で特性を隠そうとします。 筆者自身も、中学時代に学級委員を務めていたとき、全員で暗唱するはずの詩を教室に掲示し忘れ、発表直前になって慌てて貼り出し、そのまま強行させてしまったことがありました。 その結果、クラス文集の「傲慢な人」というアンケートで名前が挙がってしまい、強いショックを受けました。本人にとっては単なる抜け漏れでも、周囲には「横柄で独りよがり」と誤解されてしまったのです。 こうした体験は、「自分の特性をそのまま出すと人に迷惑をかけたり嫌われたりする」という思い込みにつながり、社会人になってからも業務での報告書の不備や手続きの抜け漏れといったミスに過敏に反応し、「次こそは絶対に失敗できない」というプレッシャーを強め、さらに擬態を習慣化していきました。筆者も、特性による業務上のミスをして叱責を受けた経験から、「二度と同じ失敗をしてはいけない」と強く思い込み、体調を崩すほどの残業でリカバリーを重ねたことがあります。 特性上、数字の管理や抜け漏れが多い傾向があり、特に総務で社用車の管理を担当していたときはそれが顕著でした。全国の営業車は1500台、技術者用の車は800台、さらに役員車もあり、それらの状況を毎月所定のフォーマットに入力し、分厚い報告書にまとめる必要がありました。 本来なら定時内で終えるべき作業でしたが、ミスなく提出するためには人の3倍の時間をかけてWチェック、トリプルチェックをするしかなく、ときには深夜3時までかかることもありました。こうした過剰な努力は、一見すると「責任感の強さ」に見えるかもしれませんが、実際には「特性ゆえの苦手さを隠し通すための擬態」でもあったのです。 ②社会的圧力 「空気を読むのが当たり前」「仕事は正確でなければならない」などの職場文化が、発達障害の特性を持つ人にとっては強いプレッシャーになります。筆者も、上司からの無言の期待を読み、「強くメンバーを引っ張るリーダー」に擬態しようとしていました。あるとき、チームの目標設定を上司と決めようとしたとき、「頑張れば到達できるレベル」を設定しました。 上司からは「どう頑張っても到達できなさそうなゴールを設定してこそだ」と指導されました。正直、閉口しました。それでも「会社とは成長率を極限まで押し上げる場所だ」と自分に言い聞かせ、チームに目標を共有しました。 加えて、ASD特性のある方のなかには「場の雰囲気を察した発言」が苦手な方も少なくありません。しかし、日本の社会文化では「暗黙の了解」や「協調性」が強く求められるため、周囲から浮いてしまわないように過剰に適応してしまうことがあります。こうした文化的な背景も、発達障害のある人を擬態に追い込みやすい要因のひとつです。 ③自己肯定感の低下 周囲に理解されない体験が続くと、「本来の自分では認められない」という思い込みが強まり、擬態を手放せなくなります。筆者も、職場で「本来の自分では受け入れられない」と思い込むきっかけになった出来事があります。筆者は臨機応変な対応が苦手という特性が強いと感じており、日常的な会話でも「ちょっとここで気の利いた一言を言わなければ」と思えば思うほど、うまくいかないのです。 たとえば、職場の飲み会で、わざと「最後に面白い一言で締めてよ」と振られることがよくがありました。芸人でもない自分に、急に「笑わせて終わらせろ」と当意即妙な対応を求められても、うまくいくはずがありません。どんな言葉を選んでも空気は冷え、結局は滑って、それを笑いのネタにして場を収める。そんな役回りを押しつけられました。その瞬間は場が和んだように見えても、自分にとっては「なんて自分は役に立たない存在なんだろう」という無力感だけが残りました。気づけば「こんな自分でも、なんとかこの人たちとやっていかなければ」と必死に笑顔を作り、無理に同調するようになっていたのです。自己肯定感は下がり続け、それを補うかのように擬態が習慣化していきました。 ④発達障害への偏見や誤解 「発達障害=できない人」「甘えているだけ」といった偏見や誤解も、当事者を擬態に追い込みます。周囲の理解不足から「特性をそのまま見せたら否定されるに違いない」と考え、本来の自分を隠す習慣が強まります。 筆者も一般雇用のクローズ就労で働いていたとき、特例子会社について上司に尋ねた経験があります。そのグループ企業では農園事業を営む特例子会社があり、筆者は「今後、事務仕事など他の分野にも広げる予定はないのですか?」と聞いてみました。すると上司から返ってきたのは、「障害者でそういった高いレベルのことができる人はなかなかいないのだよ」という言葉でした。 その瞬間、「特性を開示したら、自分も『できない人』と見なされてしまうのではないか」という不安が強まり、言葉を失いました。こうした偏見は当事者に深い無力感を与えるだけでなく、「本来の自分を見せるわけにはいかない」と擬態を強化する原因にもなります。 なお、擬態の裏側では、しばしば「過剰適応」というものが起きています。 「迷惑をかけたくない」「普通でいたい」という気持ちから、限界を超えて合わせ続ける。その積み重ねが、自分の感情と身体の声を消していってしまうのです。気づいたときには「無理がデフォルト」になっていました。 こうして「無理が標準」になると、仕事だけでなく私生活でも、生きづらいと感じる世界に閉じ込められていく感覚が強まります。 擬態がもたらすリスク 精神的な消耗 無理を続けることで、心身は限界に近づきます。燃え尽き症候群(バーンアウト)、うつ病、適応障害といった二次障害につながることも少なくありません。 筆者も、職場で無理を重ねた結果、心身が摩耗して抑うつ症状に陥った経験があります。 以前は当たり前のように昼食を買ってデスクで食べられていたのに、ある時期からは昼休みに席に座っていることすら耐えられなくなりました。会社近くのカフェに逃げ込み、音楽を聴きながら時間を潰しました。「このあと仕事が始まってしまう」と、ただそれだけが怖い。嫌な出来事があったわけでもないのに、ふいに涙がこぼれ、止まらないこともありました。 そんな状態では仕事などできるはずがないのに、「行かなければ」という思いに背中を押され、重たい体と心を引きずるように出社を続けていました。 自己肯定感の低下 そもそもこの「擬態」の根っこにあるのは、単なる「苦手」ではありません。注意力や記憶、感情のコントロールなど、脳機能の偏りから生じる「特性由来の困難さ」です。 それは怠けや努力不足ではなく、脳の仕組みによってどうしても現れてしまうものです。しかし、その事実を知らないまま「自分が弱いからだ」と思い込むと、深い自己否定へとつながってしまいます。 だからこそ、見えないところで無理する/頑張りすぎる状態が続き、気づけば常に疲れる・慢性的な疲労・「なんだかしんどい」が日常になります。こうした状態は「生きているのに生きづらい」という感覚を強めていきます。 筆者も、自分を否定し続けた結果、まったく自信が持てなくなった時期がありました。本来なら誰でもできるはずの単純な業務でさえ、「自分には絶対にできない」と思い込んでしまうのです。 例えば社内の備品をパソコン上で発注する場面。ボタンを押すだけの作業なのに、「間違えて大量にコピー用紙を頼んでしまうのではないか」「押した瞬間に自分のミスが露呈して迷惑をかけるのではないか」と強く不安が膨らみました。 それは「かもしれない」ではなく、「きっとやってしまう」という確信めいた恐れでした。その結果、「自分はダメだ」「これはやってはいけない」と思い込み、手が止まります。そのために業務が滞り、周囲から注意され、さらに自分を否定する。そんな悪循環に陥った経験があります。 診断や支援が遅れる 特性を隠し続けると、周囲からは「問題ない人」と見なされ気づかれないまま時間が過ぎ、結果として診断が遅れることがあります。 筆者も、まさにその一人でした。自分を認められないがゆえに、特性をひた隠しにし、「抜け漏れがある」「先送りしてしまう」「段取りが苦手」といった自分の姿を否定し続けていました。 常に背伸びをし、何とか「普通の社会人」として振る舞おうとする毎日は、自己受容という本来のスタート地点に立つことを長く遅らせていたのです。 その結果、自分なりのやり方を模索し、適切に自分を支える仕組みとして「タスク管理」を習得し始めるまでに、ADHDの診断を受けてから実に8年もの時間を要してしまいました。 擬態から解放されるために 擬態を完全にやめることは難しいかもしれません。しかし「無理をし続ける」状態から少しずつ距離を置く工夫は可能です。 自己理解を深める 自分の特性や苦手を知り、「どこまでなら努力できるか」「どこからは支援が必要か」を整理しましょう。 筆者は、残念ながら、当時は就労移行支援事業所などの福祉的な支援の存在をあまり知らず、すべてを自力で解決しようとしてしまいました。そのために非常に長い時間がかかってしまったのですが、振り返ってみると大切だったのは「前向きな諦め」でした。 「諦め」という言葉にはネガティブな響きがあります。ここで言うのは、等身大の自分を知り、苦手を認めるという前向きな諦めです。最初は敗北感が伴います。それでも、その先には大きな解放感と希望が広がっていました。 例えば筆者は「忘れっぽい」特性があります。それを隠そうとすると苦しいだけでしたが、「自分は忘れてしまう」と認めたうえで、「だから大事なことはすべて紙に書いておく」という仕組みを作ることで安心して動けるようになりました。つまり、こうした工夫こそが「支援」であり、自分を守るための大切な対策なのだと実感しています。 周囲に伝える(カミングアウト) 信頼できる上司や同僚に、必要な配慮を伝えることで、無理をせずに働ける環境が整います。 筆者の経験では、一般雇用のクローズ就労ではうまくいきませんでした(あくまで筆者の場合です)。毎日顔を合わせる仲間だからこそ、自分の特性をある程度開示し、素の自分を知ってもらったうえで仕事をしたいという気持ちが強かったのです。 そのため、障害者雇用としてオープン就労で入社した会社では、合理的配慮を無理なく伝えることができました。そして、それをチーム全体で共有してもらうことで、「特別扱いをしてもらう」こと以上に「自分の特性を知ってもらえている」という安心感が生まれました。その安心感は常に抱えていた緊張を和らげ、結果として無理をせず働き続けることにつながりました。 もちろん、人によってはクローズ就労でも、工夫や対策を積み重ねることで「苦手はあるけれど自分なりにやっていけている」という自信を持ち、職場を居場所と感じられる場合もあると思います。 大切なのは、自分にとって「どの程度まで素の自分を出せるか」を見極めることです。いずれにしても、自分を完全に偽ることなく過ごせる環境であれば、無理をせずに長く働き続けることができ、自分本来の力を発揮することができると実感しています。 小さな工夫を取り入れる とはいえ、完全に自分自身をそのまま受け入れてもらうのは難しいものです。 会議中のメモを許可してもらう 締め切りを細分化する 静かな作業環境を確保する など、自分の特性に合わせた工夫を少しずつ実践していくことをお勧めします。 筆者自身も抜け漏れが多い特性がありますが、「抜け漏れをしてしまう自分をそのまま許してほしい」と訴えるわけにはいきません。 大切なのは、まず「抜け漏れをする」という事実を認めること。そのうえで、「抜け漏れを防ぐ方法」「抜け漏れが起きても致命傷にならない仕組み」を考えることでした。 そうした工夫を積み重ねていった結果、今の自分に合ったタスク管理の仕組みを作り上げることができました。 もちろん、人によって工夫の仕方は異なります。ある人にとっては「話し方を工夫する」ことかもしれませんし、「挨拶を丁寧にする」ことや、「人の嫌がる雑務を率先して引き受ける」ことかもしれません。 そうした小さな工夫を積み重ねていくことは、職場に溶け込み、長く働き続けるために決して無駄にはなりません。自分に合ったやり方を見つけることが、無理をしすぎない働き方の第一歩だと実感しています。 無理を続ける前に──支援という選択肢 無理をしすぎず働き続けるには、自分なりの工夫が欠かせません。ただ、筆者はそれをすべて独力でやろうとして、結果的に大きく遠回りしました。 もしあの頃、就労移行支援事業所のような専門的なサポートの場があることを知っていれば、もっと早く自己理解を深め、無理なく働ける方法を身につけられたのではないかと思います。支援を受けることは甘えではなく、自分の可能性を広げるための大切な手段です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
事務が苦手でも働き続けるために。ADHD当事者が辿り着いた対処法

なぜ事務が苦手?どうすれば働きやすくなる?ADHD特性で事務作業が苦手な方に向け、見える化・仕組み化など実践的な仕事術を紹介します。

記事を読む
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「経費精算、いつもギリギリ…先延ばしの自分が嫌になる」「タスクを整理したはずなのに、気づけば頭がパンクしてる」 こんなお悩みを抱えていませんか。ADHDがある方で事務作業への苦手意識がある方は少なくありません。 仕事をするうえで避けて通れないのが「事務仕事」の存在。でも、ADHDのある方にとって、この“地味で当たり前なはずの仕事”が、どうにもこうにも苦手なことがあります。本記事では、筆者の書籍『ADHDの僕が苦手とされる事務にとことん向き合ってみた。』(大和書房)をベースに、ADHDの特性と「事務」とのつきあい方について紹介します。 あなたがこれからの職場で、無理なく、安心して働き続けていくためのヒントになれば幸いです。  執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ADHDが事務作業を苦手とする理由 ADHD(注意欠如・多動症)は、先天的な脳機能や神経伝達の障害で発達障害のひとつです。「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性が日常生活や仕事に影響を及ぼします。 たとえば… 不注意 → ケアレスミス、忘れ物、抜け漏れ 衝動性 → 気づいたら他のことに手を出してしまう 多動性 → 頭の中が常に動いていて、落ち着いて段取りを考えられない これらは、まさに「事務作業」と真っ向からぶつかってしまう特性です。優先順位を立てたり、書類を揃えたり、物事を順序だてて淡々と進めたりする「事務」は、ADHDのある方にとっては「苦手が凝縮されたジャンル」と言っても過言ではありません。 そもそも「事務」ってなんだろう? 「事務」と聞いて、どんな仕事を思い浮かべますか? 多くの方がまず思い浮かべるのは、いわゆる“事務職”の人がやる仕事内容のイメージかもしれません。 たとえば、伝票処理や資料の印刷、会議室の予約、備品の管理。そういった「オフィスの裏方」を支える業務です。一方で、筆者が自身の困りごとに向き合い、再定義した「事務」という言葉は、それを含むもっと広い意味を持っています。 目の前の目的を、確実に達成するための地道なプロセス。派手ではないけれど、現実を一歩ずつ進めていくために欠かせない動き。 たとえば旅行を計画するとき 「フランスでルーブル美術館に行きたい!」という目的があったとします。 それを実現するには、具体的にどんな行動が必要でしょうか? 飛行機やホテルを予約する 休暇の日程を職場に申請する パスポートや荷物の準備をする 滞在中の移動手段を調べる このように、目的を“実現可能な形に落とし込む”プロセスが発生します。 これこそが「事務」です。どんな人のどんな活動にも内包されている「共通の要素」であり、「夢や目的を絵に描いた餅にしないための現実的な行動」――これが「事務的な動き」の本質です。 どんな仕事にも「事務」がある たとえば、営業職であれば、訪問や商談が「本番」かもしれません。 でも、その前には、 スケジュール調整 顧客情報の整理 提案資料の準備 報告書の作成 といった、準備のプロセスが不可欠です。就労の場面では、「業務遂行能力」という言葉がよく使われます。これは単なるスキルや知識のことではなく、仕事を現実的に、安定して続けていけるだけの“足場”があるかどうかとも言い換えられるでしょう。ADHDのある方にとって、「事務」に向き合うとは、まさにその“足場づくり”です。 頭の中の混乱を整理する 一人抱え込まず他人と連携できるようにする 忘れやミスを減らす仕組みを作る これらの行動は、どれも「事務的」な動きでありながら、自分らしく働くための支えになります。「事務」は単なる裏方仕事ではなく、仕事を進める“エンジン”であり、“土台”であり、“保険”でもあるのです。 就労に困り感を抱えている方が安心して働くためには、この「事務」との向き合い方が、とても大きな一歩になるはずです。 仕事が動き始める、「3つのギモン」 ADHDのある方が「仕事をやろうと思っても、なぜか動けない」「気づけば別のことをしていた」という経験を持つことは少なくありません。 その背景には、頭の中で物事が絡まってしまい、何から始めればいいのか見えなくなる。そんな“見えないハードル”があるからです。 筆者も、かつてはその一人でした。 事務作業にどうしても苦手意識が拭えず、仕事が思うように進まない日々。休職を経て復職したあと、ようやくたどり着いたのが、「3つのギモン(問い)」を自分に投げかけるというシンプルな方法でした。 ① どうやる?(=分解) やるべきことを細かい手順に分解する。これが「どうやる?」です。たとえば「レポートを出す」なら、 何を書くかメモする Wordで下書きを書く 添削してPDFに変換する 上司に送る というように、「行動レベル」に落とし込んでいきます。ADHDのある人は、“ざっくりしたまま”だと混乱しやすく、手が止まってしまう傾向があります。 でも、手順として見える形にすると、とたんに「できそうな感じ」が生まれ、動きやすくなるのです。 ② いつやる?(=日付) 手順ひとつひとつに日付を入れていく。これが「いつやる?」です。「構成を考えるのは月曜の午前中、下書きは火曜日の午後」といった具合に、自分なりの予定を置くことで、「今やること」「あとでやること」の整理がつきます。その仕事をどう進めるか「スケジューリング」をする、と言っても良いでしょう。 ここで大切なのは、完璧なスケジュールを作ろうとしないこと。 あくまで「仮置き」でいい。状況に応じて変えても大丈夫です。 予定があるだけで、「動き方」が見えてくる。それが、日付を置くことの効果です。 ③ だれがやる?(=担当) 「この作業は本当に自分がやるのか?」という「だれがやる?」というギモンを立てます。手順ごとに「自分」とか「相手」あるいは「同僚のAさん」「上司のBさん」といった形で、作業の担当者を付け加えていくのです。 全部自分で抱え込んでいませんか? 人に頼めること、分担できることがあるかもしれません。たとえば、 会議の議事録は同僚のAさんに頼む 書類の準備は上司のBさんに確認をとってもらう 役所の手続きは家族に手伝ってもらう といったように、「誰に任せられるか」を考えるだけで、自分の負担は大きく変わります。 そしてそれは、人に頼る練習にもつながっていくのです。 どのように書き出すのか これらの「3つのギモン」をどのように実際に書き出すのかは自由です。ツールも問いませんし、自分が分かれば良いので、決まった型はありません。とはいえ、イメージはつきづらいと思いますので、参考までに筆者の書き方をお伝えします。 「会議資料作成」 └7/24 資料案作成【自分】 └7/25 資料案のチェックを同僚のAさんへ依頼する【自分】 └7/27 Aさんからチェック結果が帰ってくる【相手(Aさん)】 └7/28 資料案へチェック結果を反映させる【自分】  └7/29 完成させた資料を上司のBさんへ提出する【自分】 筆者はこのような形で仕事を書き出しています。ただ、必ずこの形にしなければいけないのではありません。この例は、3つのギモンを全て活用しましたが、一部だけ組み合わせて活用するのも大丈夫です。 「仕組み」で“自分”を支えるという考え方 この「3つのギモン」は、特別な道具やスキルがなくても実践できる、ADHDのある方が“自分らしく働くための足場です。 仕事のことで頭がぐるぐるして動けないとき やらなきゃいけないことが山積みのとき 誰にも頼れず、ひとりで抱え込んでしまいそうなとき そんなときこそ、この3つのギモンを思い出してみてください。 「どうやる?」「いつやる?」「だれがやる?」をひとつずつ書き出すだけで、頭の中が整理されて、仕事が少しずつ動き出す感覚が得られるはずです。 次の節からは、そんな「3つのギモン」をどのように活用していくのかを、困りごとの事例を挙げながら3つお伝えしていきます。 困りごと別、「事務」活用法①モヤッとした仕事、「よくわからない」せいで手が止まる やらなきゃいけないのは分かっている。むしろ、やりたいと思っていても、いざ取りかかろうとすると、手が止まってしまう。そんな経験、ありませんか? あるクライアントさんのお話です。専門分野を活かしてセミナーを開催したいという思いがありました。けれど、なかなか行動に移せません。理由をうかがってみると、 セミナーのイメージが具体的に湧かない どんなふうに集客すればいいのか分からない 当日の流れを考えるだけで、なんだか気が重くなる といった、「漠然とした不安」がいくつも積み重なっていたのです。 曖昧なものには、人は動きづらい これは、発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)の特性がある方によく見られる傾向ですが、「曖昧さ」に対する不安が強く、手をつける前に止まってしまいやすいのです。実は筆者自身もADHDの診断を受けていますが、曖昧なものに対して不安を感じやすいという点では、ASDの特性による傾向にも共感します。(ADHDとASDが併存するケースは多く、診断がいずれかであっても、もう一方の特性が見られる方は少なくありません) 「やらなきゃ」と思う気持ちはあっても、 「何からどうすればいいの?」となると、手が止まり、気持ちが焦るばかりになります。 でも、仕事には“カタチ”を与えられる そんなときに役立つのが、「仕事にカタチを与える」という考え方です。たとえば、「セミナー開催」という目標があるなら、それをそのまま“やること”と考えると、どうすればいいのかが曖昧なままになってしまいます。そこで、「3つのギモン」を活用します。 どうやる?(分解):作業を手順に分ける いつやる?(日付):それぞれの手順に日付を入れる だれがやる?(担当):自分か、誰かに頼むか明確にする たとえば、こんなふうに「セミナー資料を作る」だけでも具体化できます。 4/2 既存の資料に付箋を貼りながら確認する【自分】 4/4 修正する【自分】 4/4 友人Cさんに内容チェックを依頼する【自分】 4/8 友人Cさんからのフィードバックを受け取る【友人】 4/10 修正を反映する【自分】 こうして「カタチ」ができると、 曖昧だった“やりたい仕事”が、見える手順の集合体になります。 これだけで、「これならできるかも」と思えてくるのです。 手が動かないのは、あなたのせいじゃない 行動できないことに対して、「自分の意志が弱いせいだ」と思ってしまう人は少なくありません。でも、実はそうではないのかもしれません。 「カタチが見えないから、不安になる」 「具体的にどうすればいいか分からないから、止まる」 このように、“やる気”ではなく“構造”の問題として捉えることで、 自分を責めずに、新しい一歩を踏み出すことができます。実際に、クライアントさんも、「仕事の見える化」ができたことで一気に前に進み、セミナーを無事開催されました。 困りごと別、「事務」活用法②「重い仕事」ばかり残って、しかも消えない TODOリストは便利です。 やるべきことを並べて、終わったら線を引く—— そうして一つひとつ片づけていくのは達成感がありますよね。でも、こんな経験はないでしょうか? 「今日は仕事をたくさん進めた」と思ったのに、気づくと“重い仕事”だけが手つかずで残っている 軽い仕事ばかり優先して、大事なことにいつまでも手をつけられない リストが減らないどころか、見るだけで気が重くなる こうした悩みには、仕事の“切り方”、つまり「どうやる?(分解)」にヒントがあります。 大きな魚は、食べる前に“さばく”のが当たり前 たとえば、「年度予算の作成」と「お客様へのお礼の電話」という2つの仕事があるとします。後者は電話1本で終わりますが、前者はあまりに大きすぎて、どこから手をつければいいのか分からない。前者を大きなマグロ1匹、後者をタイの刺身1枚とします。結果として、「今日は電話だけ」といった軽い仕事(タイの刺身)ばかりが優先され、重い仕事(マグロ1匹)が後回しになります。このままでは、いつまでたってもマグロ1匹は丸ごと残ったままです。 そこでおすすめなのが、仕事を“同じ大きさの切り身”にそろえるという考え方です。 切り分けて、並べて、同じくらいの大きさに 「年度予算の作成」という大きな仕事を、次のように「どうやる?(分解)」で分けてみます。 前年度の予算実績を収集する 提供依頼メールを送る 担当者にヒアリングする データをまとめる さらに細かくして、「前年度の予算実績データの提供を依頼するメールを送る」とすれば、それは「お礼の電話」と同じくらいの手間で済む“小さな仕事”になります。 お客様に電話をかける 提供依頼のメールを送る どちらも、今すぐ着手できる“等身大の作業”になります。このように「仕事の大きさをそろえる」ことで、達成感はそのままに、重い仕事にも自然と手が伸びるようになるのです。 ADHDの特性が理由でも、やり方次第で変えられる ADHDのある方には、将来の大きな成果よりも「今すぐに得られる達成感」に惹かれる傾向があります。 これは「報酬系の特性」として知られています。だからこそ、「ちょっと頑張ればすぐに終わること」に先に手を出してしまいがちです。 この結果、「重い仕事=やりたくない仕事・やる気が出づらい作業」が後手後手になってしまうといったことは、ADHDあるあるの先延ばしグセの原因の一つと考えられるのではないでしょうか。 しかし、重い仕事を小さく切ってしまえば、どれもが「すぐ終わること」に変わり、後手後手になることを避けやすくなります。 つまり、“自分の特性”に合った仕組みを作っていくことで、自然と行動を変えることができるのです。 目安は“数分〜30分で終わる切り身” 筆者自身も、タスクの「切り身」は1つあたり数分〜30分、長くても1時間以内を目安にしています。これくらいのサイズ感でそろえると、「これは今日できそう」「これもやれそう」と、仕事に向かうハードルが一気に下がります。 TO DOリストが機能しないのは、意志の弱さのせいではなく、 “大きさのバラバラな仕事”が並んでいるからかもしれません。仕事を“さばく”視点で、ぜひ一度見直してみてください。 困りごと別、「事務」活用法③本当は断りたいのに、つい「大丈夫です」と言ってしまう 仕事を頼まれたとき、つい「大丈夫です!やりますよ!」と言ってしまったことはありませんか?でも実際は、その「大丈夫」が全然大丈夫じゃなかった―― そんな苦い経験、誰にでもあるのではないでしょうか。 キャパオーバー寸前なのに、なぜか断れない 筆者がかつて総務部で働いていたとき、先輩から「稟議書の対応、一緒にやってくれない?」と頼まれました。「大変そうだけど…お世話になってるし、なんとかなるだろう」と思って引き受けたものの、実際は稟議対応に追われ、 自分の業務は完全に手が回らない状態に。 しかも、そのとき筆者はすでにほぼ毎日終電帰り。 午前は名刺や備品の発注対応、午後はプロジェクト対応、突発対応も多く、夜にやっと日中に処理しきれなかった仕事に手をつける――そんな日々でした。 ADHD特性「衝動性」と「見積もりの甘さ」 このように「断れなかった」背景には、ADHDの特性である 衝動的にその場で即決してしまう「衝動性」 所要時間の見積もりが苦手な「時間感覚のズレ」 という2つの特徴が大きく影響しています。その場の空気で「やりますよ!」と即断してしまい、 「後で詰む」というパターンにハマってしまうわけです。 “外の視点”を借りる。「事務はなんて言うだろう?」 ではどうすれば、断れるようになるのでしょうか。ポイントは、「引き受けよう!」と考える自分ではなく “もう一人の、事務を行う冷静な自分”の視点を持つことです。筆者はこう考えるようにしました。 「自分は引き受けてもいいと思ってる。でも、“事務”はなんて言うだろう?」 そうつぶやいて、今抱えている仕事をリスト化+「いつやる?(日付)」で可視化してみるのです。 すると、すでにパンパンのスケジュールが目に見えて分かるようになります。その結果… 「やりたい」という気持ちの自分に対して 「それは無理だよ」と“事務”が冷静にツッコミを入れてくれる という構図ができるのです。 「第2の自分(外の視点)」を作り出すことは難しいものですが、「もう一人の私はなんて言う?」という言葉を呪文のように発するだけで、冷静さを取り戻すことができ、客観的な視点を持てるようになれるかもしれません。 「第2の自分」を想像することが難しい場合には、実在している先輩や上司に置き換えてみるのもおすすめです。 判断は“事務”、伝えるのは“自分” もちろん、それでも「断れない」と感じる人も多いでしょう。それでもこの方法には、こんな効能があります。 「断る」という判断を自分がしなくていい → 「事務が言ってるんで」と、“伝えるだけ”でよくなる 自分の気持ちと向き合いすぎず、“状況”に判断を委ねるだけでも、少し断りやすくなるのです。 「断る」は勇気ではなく、“仕組み”で 断れない人にとって、「断る」は根性論ではなく構造の問題です。 自分の気持ちに気づくこと 客観的な判断軸を持つこと それを代弁する方法を持つこと こうした“仕組み”があることで、はじめて「断る」という選択が現実のものになります。 「自分はいいけど、“事務”はなんて言うだろう?」 このひとことを、ぜひ心の中の“口癖”にしてみてください。あなたの中の“冷静な判断者”が、そっと助け舟を出してくれるはずです。 変わらなくていい。ただ、「工夫」する。 「事務が苦手。だから、事務が出来るような自分に変わらないといけない」と思っていませんか? でも、ADHDの特性は“治る”ものではありません。無理に変わるより、「工夫」でカバーする方がずっと現実的です。自分を責める前に、「仕組み」を味方につけてみてください。 今回ご紹介している書籍では、そのためのヒントがたくさんつまっています。よろしければお手に取ってみてください。 仕事がうまくいかないと感じているすべての方へ――特にADHD傾向のある方に向けて、具体的な仕事の工夫や思考法などを紹介した一冊です。 事務の悩みを超えて、「働く」を支える場所へ ここまで、ADHDと事務というテーマで、筆者の著作『ADHDの僕が苦手とされる事務にとことん向き合ってみた。』をベースに、困りごと別の対処法をお伝えしてきました。 こうした困りごとには共通して、「本人が悪いわけではないのに、うまくいかずに自己否定してしまいやすい」という難しさがあります。そして、その苦しさは、一人でなんとかしようとすればするほど深まってしまうこともあります。 実際、私自身もそうした時期を長く過ごしてきました。だからこそ今は、「一人で抱え込まずに、信頼できる支援を受けながら、自分に合った方法を見つけていく」ことも大切だと感じています。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、就労に向けての実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害がある方の話し方の特徴|よくある困りごと&対策

発達障害(ADHD/ASD)がある方の話し方の特徴、特性との関係性について解説 。発達障害当事者の実体験をもとにした対処法を紹介します。

記事を読む
  • #就労移行支援事業所
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「つい話しすぎてしまって、後で一人反省会をする」「不用意な発言をしまって、相手を傷つけた」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害であるADHDやASDがある人は、特性によって独特な話し方をすることがあるとされています。たとえば、話が一方的になったり、冗談が通じなかったり、思いつくままに話してしまったり。こういった話し方は、ときに相手に誤解や不快感を与えてしまうこともあります。 そのため、コミュニケーションにおける失敗経験があり、人と話すことに苦手意識を持っている方は少なくありません。 この記事では、ADHDやASDがある人の話し方の特徴と、そこに隠れている特性、そして発達障害(ADHD強め、ASDも若干あり)の筆者の経験から得た具体的な対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ADHD、ASDの特性 今回の記事では、発達障害の中でもADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)に関する情報をお伝えします。どちらの障害も、その特性によってコミュニケーションのスタイルに独特な傾向をもたらすことがあります。 まずは、それぞれの代表的な特性について簡単に説明していきます。特性は一人ひとり異なるため、参考としてお読みください。 ADHDの特性 会話をする際に影響を大きく与えると考えられるADHDの主な特性は以下の3つです。 衝動性の高さ思いついたことをすぐに口に出したり、行動に移したりしてしまう 注意力の欠如相手の話を聞き続けることが難しかったり、集中が途切れて気がそれたりする 脳内多動(注意の転導)頭の中に次々とアイデアや思考が浮かび、話が飛びやすくなる ASDの特性 会話をする際に影響を大きく与えると考えられるASDの主な特性は以下の4つです。 こだわりの強さ特定のテーマについて非常に深くこだわり、話題が広がりにくくなる 興味の偏り自分の興味のある話題には夢中になるが、興味のない話題には関心を持ちにくい 他者視点の低さ相手の気持ちや考えを想像することが難しく、自分本位な話し方になることがある 想像力の低さ比喩やたとえ話を文字通りに受け取り、ニュアンスや空気感を読み取りにくい これらの特性が、日常の会話の中でどのように表れるのか、発達障害当事者である筆者の実際の体験をもとにした具体例をもとに見ていきましょう。 ADHDの話し方の代表例とその対処法 話しだすと止まらない、マシンガントーク 筆者はクラシック音楽が大好きなのですが、誰でも興味が湧くようなジャンルではありません。そうだと理解しているものの、「それってなんですか?」などと質問されると、つい嬉しくなって「ベートーベンは交響曲を9つ書いていて、1番は......」と、順々に曲目解説を始めてしまったことがあります。相手が時計を気にしていたりしてもお構いなしで、気が付いたら2,30分経っていたこともあります。 対処法 「ベートーベンは交響曲を9曲書いているんだけど、最後の9番がね......」と、伝えたい内容を絞り込み、話しすぎないように気を付けるようにしています。相手から「他の曲は?」と聞かれたら、またもう1曲、という具合に、「聞かれれば答える」ということに気を付けています。 話にまとまりがない、話が噛み合わない、会話が飛びやすい 先週末に観たYouTubeの話をしていたのに、ふとその後に観たテレビ番組のことを思い出し、さらにそのテレビ番組の出演者のやっていたラジオの話を脈絡なく話し出してしまい、「で、何の話だっけ?」と相手に言われてしまったことが筆者にはありました。 対処法 話を始める前に「まず何について話すか」を心の中で整理してから話すように気を付けています。YouTubeの話をしていたら、いったんそれで話し終えて、相手の反応を見ます。相手が別の話題を出して来たらそれに乗っかります。相手が別の話題を出してこなくても、「そういえば、YouTubeの後に観たテレビがまた面白くてさ......」と、橋渡しになる言葉を挟んでから次の話題に行くようにしています。 早口になる 自分が好きなお笑い芸人の話になり、その魅力を分かってもらいたくて熱を込めて話をしていたら、「もっとゆっくり話して」と言われてしまったことがありました。そこで初めて、自分が早口だったことに気づきました。 対処法 伝えたい内容が頭の中に膨大な量思い浮かぶと、それをできるだけ早く伝えたいと思って早口になりやすくなります。そんなときは、「ゆっくり」を5割増しで意識して話してみるようにしています。また、語尾を丁寧に言うことも効果的です。 話に集中できない(聞き続けられない) オンラインミーティングで相手が一生懸命にしゃべっているのに、相手の部屋の壁に貼ってあるポスターが気になって、「あれはもしかしたら自分が好きな画家の絵のレプリカじゃないか。そういえば、その画家の展覧会が近々あったな......」などと余計なことを考えていて気づいたら話が終わっていた、ということがありました。 対処法 覚えておく必要がなくても、キーワードをメモしながら話を聞くと、集中しやすくなります。手を動かして話の内容を書いていると、他に思考が飛びにくくなるのか、比較的相手の話が頭に入りやすくなる印象があります。 早とちりして話の内容を解釈する ある原稿を執筆する仕事について、その仕事を依頼してきた人と電話をしていて、「ということで、明日までには原稿を......」と聞き、「え、明日までには書くのはちょっと難しいんですけど」と即答しました。すると、「いえ、明日までには原稿を仕上げるのは難しいと思うので、締切を1週間延ばそうかと思っていまして......」と話を続けられ、気まずい思いをしました。 対処法 「最後まで聞いてから意見を言う」をできるだけやるようにしています。それでも反射的に口から言葉が出てきてしまうことがありますが、それに気が付いた時点ですぐに止めて、「うん、いや、続けて」と相手の話を聞くようにしています。 思いついたまま話をする 独身の友人から、「今やっているドラマでお勧めはある?」と聞かれ、家事や育児がテーマの人気ドラマの話をしてしまい、「そんなに人気なら私も観てみようかな。それって私も共感できそう?」と言われて、言葉に困ったことがありました。 対処法 まず「今この話題を言うべき?」と心の中でワンクッション置いてから話そうと心がけています。それでも気を抜いたら言ってしまいますが、気を付けるに越したことはありません。 相手の話に割り込む(会話泥棒)、話を被せる 相手が話し始めた瞬間、「それ私も!」と話をかぶせてしまうことがあります。最近出版された話題の本が面白いと相手が話し出したときに、「それね!でも、それって私が表紙を見た感じは、最初は確かにすごいインパクトがあったんだけど、私はあまり面白いと思えなくて......」と、話の主導権を奪って、なおかつ相手の主張の逆方向に話を持っていってしまったことがありました。 対処法 いったん相手が話を一段落させてから、相手との共通点をまずは探して話し出すようにしています。相手と自分の意見が違う場合は、いきなり話し出さずに、いったん「そうだよね」と相手の意見を尊重するクッション言葉を入れてから、「一方で、こんな考えもあるかなと思って......」と、自分の話をするようにしています。 ASDの話し方の代表例とその対処法 一方的に話しを続ける 子供の保育園の謝恩会で、思い出の写真を音楽と共に紹介するムービーを作った際、そのムービーを作ったときにどれだけ大変だったか、写真を出すタイミングと音楽との調整にどれだけ試行錯誤をしたかなどを熱く語りすぎて、気が付いたら相手が反応に困っていたことがありました。 対処法 途中でいったん話を区切って、相手の反応を見るタイミングを作ろうと心がけています。そのため、一気に話を続けるのではなく、まるでYouTubeのチャプター分けのように、「まずは写真を選ぶときに気を付けたことを話そう」「次にどんな音楽を付けようか迷ったときのことを少し話そう」などと、ちょっとずつ分けて考えて話すようにしています。 冗談が通じない 同じく発達障害のある人に、合理的配慮を考えたいと言われたときの話です。「まずは会社にやって欲しいことを10個挙げてみようか」と伝えたら、「まずは、こちらから言わなくても察して欲しい、とか配慮して欲しいかな(笑)」と言われて、「いや、それ言ったら始まらないでしょう」と答えてしまい、「冗談だよ!」と言われたことがありました。 対処法 相手の言葉だけでなく、相手の表情、口調やイントネーションもよく観察して反応するようにしたいと思っています。 相手や場面に応じた話し方や内容の調整ができない プライベートの飲み会で、友人が家庭の愚痴を言ってきたときに、「洗濯が大変?なら、やってもらえるように交渉しようよ」とか「掃除が面倒くさいなら、もしかしたら掃除機を変えたらやりやすくなって、できるようになるかもね」と、求められてもいないアドバイスをしてしまったことがありました。 対処法 ただたんに会話をしたいだけの場なのか、真剣に解決策を求められている場なのかなど、どのようなことが求められている場なのかを自分なりに決めてからその場に臨むようにしています。 興味のない会話に一切入らない 同僚とランチに行ったときに、みんなが昨日のプロ野球の話をしていて、正直興味ないと思って静観していたら、「小鳥遊くん、目が死んでる(笑)」と言われてしまいました。 対処法 興味が無いのはしょうがないので、せめて「話している人に目を合わせて相づちを打つ」ことだけはしようと考えています。 筆者の発達障害の傾向から、ADHD多め、ASD少なめですが、経験にもとづいた「生きた」対策をぜひ参考にしていただければと思います。 なお、上記も含めた、発達障害によくある話し方の特徴について、分かりやすく解説した動画もご紹介します。 ▶ 発達障害の話し方5選(あるある形式でわかりやすく紹介) https://www.tiktok.com/@decobocobase/video/7333158353604037895?is_from_webapp=1&sender_device=pc&web_id=7476382824065697288 ▶ 発達障害の話し方の特徴(よくあるすれ違い事例を解説) https://www.tiktok.com/@decobocobase/video/7407774275383463176?is_from_webapp=1&sender_device=pc&web_id=7476382824065697288 ▶ 発達障害の話し方(具体的な会話例から解説) https://www.tiktok.com/@decobocobase/video/7457141775568833813?is_from_webapp=1&sender_device=pc&web_id=7476382824065697288 ディーキャリアのコミュニケーションプログラム ディーキャリアでは、発達障害の特性に応じたコミュニケーションプログラムを用意しています。代表的なプログラム2つを紹介いたします。 「傾聴スキル」プログラム 相手の話をうなずきながら聞く 共感を示しながら聞く こまめに質問をいれる などのコミュニケーションの技術を身につけることで、相手の話を「しっかり聞いている」という印象を与えることができ、一方的に話すことを防ぐことができるようになります。 「アサーティブコミュニケーション」プログラム 自分の意見を言う際に、攻撃的になったり逆に消極的になりすぎないように適切な主張の仕方を学ぶ訓練です。 自分の意見だけ伝えるだけではなく、相手の意見を聞き、双方を尊重しながらコミュニケーションをとっていきます。 代表例2つをあげましたが、これ以外にも日々の訓練の中で「人前で話すこと・プレゼン」や「意見交換・ディスカッション」、休み時間中の「雑談」などの場でコミュニケーションスキルを高める機会を設けています。 今回ご紹介をした「話し方」に当てはまる方・コミュニケーションに苦手意識のある方は、ぜひ一度ディーキャリアのプログラム体験会にご参加ください。 特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために これまで、ADHDやASDの人がしやすい話し方とその対処法についてお伝えしてきました。その前提となるのは「自己理解」であると筆者は身にしみて感じています。場に合った・相手に合った話し方をしているかを客観的な視点から知る機会が得られると、調整することができるでしょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害×夜型生活 | 「リベンジ夜更かし」の原因と対策

やめたくてもやめられない「リベンジ夜更かし」は、発達障害の特性が関係してる?当事者の経験に基づき、原因と対処法を分かりやすく解説します。

記事を読む
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「翌日も仕事なのに、夜中のゲームがやめられない」「疲れて眠いのに、ただひたすらSNSをスクロールし続けてしまう」「昼間だらだらしたから、まだ寝たくないと考えてしまう」 睡眠よりも「楽しい時間」を優先してしまい、結果的に睡眠不足が続いてしまう…そんな悩みを抱えていませんか。 日中の活動がうまくいかず、漠然と満たされない思いを抱えてしまう。それを埋めるかのように、ゲームや映画などの趣味・娯楽に没頭して気が付いたら朝方になっている。昼間に何もできず、今日という一日を有意義に過ごすために「何かしなければいけない」と思い、夜になっても寝てしまってはいけないと感じる。しかし、その「何か」が出てこず、ひたすらお菓子を食べたり、動画コンテンツやSNSなどを見たりして過ごしてしまう。 このように就寝時間の先延ばしをすることを「リベンジ夜更かし」と言い、発達障害の特性がある人は特になりやすいとされています。 この記事は「リベンジ夜更かし」が常習化していた発達障害当事者が、自身の経験を交えながら、リベンジ夜更かしとは何か・なぜ発達障害のある人が陥りやすいのか、その原因や対策について紹介しています。 夜更かししてしまうのは、意思が弱いからではなく、発達障害の特性が影響しているケースがあります。つい夜更かしをしてしまう理由やその対処法を理解し、自分に合った対策などを見つけることで、現在または将来の職場での就労をスムーズに継続できる一助になればと願っております。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] リベンジ夜更かしとは リベンジ夜更かしとは、「報復性夜更かし」とも言われ、日中に充実感や満足がないため、睡眠を削ってでもなんとかして満足感を得ようとする行為のことをいいます。 筆者は、以前会社員をしているときに、このリベンジ夜更かしを常習していました。残業続きでほぼ毎日終電で帰っており、「帰ってそのまま寝たら、毎日何のために生きているのか分からなくなる!」という感覚がありました。 そのため、自宅最寄り駅の隣にあるコンビニに寄っては、ジャンキーでカロリーの高そうなコンビニ弁当を選んでは帰宅して、弁当を食べつつ特に見たいわけではない深夜のバラエティ番組をボーッと眺め、寝るまでの時間を引き延ばしている自分がいました。そのせいか、体重はうなぎのぼりになってしまいました。 その時の自分は、朝から晩まで仕事に追われ、「充実した余暇」を過ごせず、満たされない思いがありました。その満たされない部分を埋めるために、「カロリーの高いコンビニ弁当」「深夜のバラエティ番組」で夜更かしをしていたと言えます。本当は早く寝たほうがいいと分かっていても、どうしても「自分の時間が欲しい」という気持ちが勝ってしまうのです。 発達障害のある人がリベンジ夜更かししがちな原因 「リベンジ夜更かし」がやめられない原因に発達障害が関係していることがあります。実際に昼夜逆転生活や睡眠不足に悩んでいる発達障害当事者の方は少なくありません。 同じ発達障害でもADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの障害種別、さらに一人ひとり特性が異なるため、原因はそれぞれです。今回は代表的なものを4つ紹介します。 ①ストレスを感じやすい 発達障害のある方は、特性による困難によってストレスを抱えやすかったり、生物学的にストレス耐性が弱かったりすることがあります。詳しくは、以下の参考記事もご覧ください。 さらに、リベンジ夜更かしが癖になっている人は、日中にストレスを受けるなどして「マイナス」なことがあった結果、自分にとって「プラス」になるような体験をしなければと考える傾向にあります。日中に仕事でミスをして「マイナス」、それを埋め合わせるように帰宅してから夜中にゲームや動画視聴をし過ぎてしまう、といったことが典型です。この「マイナス」が大きければ大きいほど、その反動としての「プラス」を大きくしなければなりません。 日中にミスをしたとして、それが「まぁ、しょうがないか」とある程度流せるようであれば、夜中に埋め合わせのゲームや動画は少なくて済みます。しかし、私たち発達障害者は、感情の抑制に課題を抱えていることが多く、「マイナス」をより大きく感じてしまうことがあります。そうなると、より強く大きなリベンジをしないと釣り合いません。感情の抑制がうまくいかずストレスを感じやすい私たちは、リベンジが大きくなってしまいがちなのです。 ②行動の切り替えが苦手 また、発達障害のある人は、行動の切り替えが苦手な傾向もあるとされています。いったん始めたゲームや動画視聴などを止められず、長時間になってしまいがちなのです。筆者もこの傾向にあると実感しています。 筆者の頭の中では何が起こっているのかというと、「せっかく楽しいゲームをしているんだから、ゲームを止めて(ゲームより楽しくはない)他のことをするなんて嫌だ」という気持ちです。切り替えが上手い人は、この「ゲームを止めるのは嫌だ」という感情を抑えて、翌日のために寝るという行動に素早く切り替えることができます。ここでも、感情の抑制が難しいという傾向が関わっています。 また、筆者が特に顕著に感じている、もう一つの傾向があります。それは、「自分の興味のあることには極端に集中してしまう」というものです。興味のある対象にはすぐ動けるのに、興味が薄いものにはやる気がまったく湧きません。ゲームをしている最中はゲームにしか興味がなくなり、「寝なければいけない」と分かりつつも、ゲームから離れられなくなってしまうのです。 ③優先順位が付けられない 知り合いの発達障害のある人の話で、やはり夜中にネットゲームをして睡眠が十分にとれないという悩みがありました。その人が言うには、「一緒にチームを組んでやっている仲間が、どうしても夜中にしか時間が取れない」という理由で、深夜にゲームをせざるを得ないとのことでした。 冷静になって考えれば、「そうではない人とチームを組まないと、いずれ睡眠が不規則になって健康を損なってしまう」ということは分かりそうなものです。しかし、「自分にとって何を優先すべきか」という判断が正しくできない、「あれもやりたい」「これもしたい」となってしまった結果、毎日のように深夜にネットゲームをしてしまっていました。 ④睡眠障害になりやすい 一般に、発達障害のある人は、睡眠と覚醒を調節する中枢神経系の機能不全を抱えていることが多いとされています。具体的には、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が遅れるなど、体内時計が後ろにずれやすいのです。その影響で、夜中に覚醒、つまり目が覚めてしまって睡眠にうまく入れないことが多く、ベッドに入っても寝られずに朝を迎えてしまった、という人も少なからずいます。どうせ寝られないなら、好きなことやって夜更かししてしまおう、と考えるのも無理はないのではないでしょうか。 以上が、発達障害のある人がリベンジ夜更かしをしてしまいがちな理由の代表的なものです。 リベンジ夜更かしの悪影響 リベンジ夜更かしによって引き起こされる悪影響のうち、代表的なものを3つ挙げます。 ①日中の眠気、集中力の欠如 夜更かしをすれば、十分な睡眠が取れなくなったり、生活サイクルが不規則になったりします。その結果、日中に強い眠気を感じて集中するのが難しくなります。日中の活動中に注意力が散漫になると、仕事でミスなどをしがちになります。 発達障害のADHDがある筆者には、不注意傾向がありました。それに加えて夜更かしが常態化してしまい、ただでさえ不注意によるミスなどをしがちな上に、頭がボーッとしてしまっていました。その影響もあってか、仕事の負荷が強まると、それに耐えきれず休職を余儀なくされました。 さらに、筆者は元来の不注意特性から日中の活動に充実感が得られず、リベンジ夜更かしをしてしまいがちな状況でした。そして、夜更かしをした結果、はっきりしない頭で翌日業務をおこない、さらに満足のいかない日中を過ごし、さらにリベンジ夜更かしをしたくなる、という悪循環に陥っていたのです。 ②気分の落ち込みやイライラ リベンジ夜更かしをすると、十分な睡眠が取れず、次第に心身ともに健康を害していきます。「体」だけでなく「心」の方も気分が落ち込んだり、イライラしたりと影響が出るのです。そうなると、取るに足らないことで大きな精神的ダメージを受けてしまうようになります。 寝不足によるいらつきで、ネガティブな心理状況に陥りやすくなるだけでなく、十分に考えずに早まった決断をしてしまうことにもつながりかねません。 筆者は、休職直前のあるとき、株主からの電話を受けていました。株主がなかなか電話を切らせてくれず、長時間の電話対応となったのですが、目の前にいた同僚の社員から「早く電話を切り上げて!」といったジェスチャーをされました。 電話が終わった瞬間、「もっと早く簡単に電話終わらせられないの?他にもやることあるんだから」と言われ、「自分だって好きで電話を長引かせているわけじゃない」といつもより強い憤りを感じました。このことは、「もう、自分は働き続けられないな」と休職を決断する原因の1つになりました。 ③不安障害 不安障害とは、不安や恐怖を過剰に感じて、日常生活に支障をきたす精神疾患のことです。睡眠不足は、ストレスホルモンの分泌を増加させるため、不安障害やうつなどの精神疾患の原因になることがあります。 筆者は、自身の発達障害(ADHD)の影響と、毎日終電帰りでリベンジ夜更かしをしていた影響、それと会社の業績が伸びずにリストラが増え自分の業務負荷が増大したという背景もあり、次第に会社に行くのが怖くなってしまいました。 別に、理由があるわけではなく、なんとなく「自分は必ず仕事で失敗して叱責を受ける」という確信にも似た気持ちで毎日通勤するようになったのです。 少しでも日常業務でイレギュラーな出来事があると、それを筆者は「事件」と大げさに認識して焦ってしまっていました。たとえば、名刺作成業務で、役員から「至急で対応して欲しい」と言われようものなら、それは立派な「事件」だったのです。 「いつもなら翌々日に納品なのに、至急で明日の朝までに渡さなければいけない......これは事件だ!」と、不安や恐怖が頭の中をグルグル回りはじめます。やることは、名刺印刷会社の担当者に納期を早める依頼をかけるだけなのですが、いつもとちょっと違うだけで、もはやそれは不安を引き起こすのに十分な「事件」でした。 発達障害の傾向とこのような悪影響の相乗効果により、筆者は仕事を続けられず休職という選択を取らざるを得ませんでした。 不安障害について詳しく知りたい方は、以下の参考記事もぜひご覧ください。 このような状況に陥れば、誰しも心身に支障が出て当然です。では、どうすればこの状況から抜け出せるのでしょうか。次はその対処法をお伝えします。 リベンジ夜更かしの対処法 ここでは、リベンジ夜更かしへの対処法を3つお伝えしたいと思います。 ①規則正しい生活 当たり前過ぎる話かもしれませんが、毎日規則正しく起きて寝るのを習慣化することが、リベンジ夜更かしの対処法としては最大最強のものと言って良いでしょう。 特に、休職中にリベンジ夜更かしに陥り、社会復帰が難航するケースが少なくありません。 筆者が休職したときはまだ実家に住んでいたのですが、その際の両親の対応に感謝していることがあります。それは、「日中は何をやってもいい、『朝起きて、夜寝る』ことだけは守ろう」と提案してくれたことです。筆者が休職したのは10年程度前のことで、当時は今ほどYouTubeなどの手軽にみられる無料動画コンテンツはありませんでしたが、それでもレンタルビデオやネット上のテキストコンテンツなどはふんだんにありました。 夜更かししようと思えばいくらでもでき、その点では夜更かしする危険性は十分にあったのです。両親はそれを見越していたのかもしれません。規則正しい生活を最優先としてくれたおかげで、昼夜逆転生活や睡眠障害になることなく、復職をすることができました。今振り返ると、両親からの助言には感謝してもしきれません。 ②日中にきちんと疲れる 「規則正しい生活」にも通じますが、夜更かしをしないためには、まずは日中の活動でしっかり「疲れる」ことが大切です。 そのために大事な考え方をご紹介します。生活リズムを整えるためには、「早寝早起き」が大事だとよく言われます。実は順序が逆で、「早起き早寝」なのです。眠かろうが疲労が残っていようが、とにかく起きる。そして、就寝するまでは寝ない。起きている間に十分疲れておけば、リベンジ夜更かしをしたくても、体がそれを許してくれません。半強制的に夜寝ることができるのです。 日中にできるだけ用事を入れ、クタクタに疲れて倒れ込むように寝る。その結果翌日はすっきり起きられる。このサイクルに持ち込むことができればこっちのものです。また、適度に疲労を感じて「ああ、やっと寝られる」と布団に入る時の気持ち良さも味わうこともできます。日中の用事は、「疲れる」ことさえできれば、好きなこと、ストレス解消になることであっても構いません。 ③環境調整 さらに「リベンジ夜更かし」への対処法として有効なのが、環境調整です。たとえば、寝室へスマートフォンを持ち込まない、寝るときは薄暗い照明にする、ゆっくりぬるめのお風呂に浸かる、などです。 もちろん個人差はありますが、自分が寝入りやすい環境を作ることが大事です。筆者の知り合いの発達障害のある人に、寝入る際にアロマを焚いているという人がいました。室内を無音にして座って瞑想をする、という人もいました。 以上、3つほど対処法を挙げました。全部する必要はありません。「やってみようかな」というものから実践していただければと思います。 特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために これまで、リベンジ夜更かしについての話をしてきましたが、その前提となるのは「自己理解」であると筆者は身にしみて感じています。そもそも自己理解がされていないと、自身がリベンジ夜更かしをしやすいことを自覚しづらいものです。むしろ、「ハードな生活をしている自分」に酔っていたりします。自分のおこなっている行動が「リベンジ夜更かし」であることに気が付くことすら難しいかもしれません。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、発達障害のある方が自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングもおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
大人の発達障害×職場のコミュニケーション|対策と練習法

「職場でのコミュニケーション課題」について特性に応じた対策や練習法を紹介。ストレスを軽減し、自信を持って働くためのヒントをお伝えします。

記事を読む
  • #合理的配慮
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「職場での人間関係がうまくいかない…」「話すのが苦手で、うまく意思疎通ができない…」「指示を理解できないことがあり、ミスが多い…」 そんな悩みを抱えていませんか? 職場では、業務スキルだけでなく「コミュニケーションスキル」が求められるものです。しかし、発達障害の特性によって、雑談が苦手だったり、自分の考えを相手に伝えることや相手の意図を読み取るのが難しかったりすることで、仕事に必要なコミュニケーションが円滑にいかないことがあります。 「報告がうまくできない」「会話がかみ合わない」「言いたいことがうまく伝わらない」といった困りごとが続くと、職場での評価に影響が出たり、周囲との関係にストレスを感じたりすることもあるでしょう。その結果、仕事に自信が持てず、強い不安やストレスを感じてしまうことも少なくありません。 本記事では、発達障害のある方が職場で直面しがちなコミュニケーションの課題を整理し、特性に合わせた対策を紹介します。また、コミュニケーションスキルを向上させるための具体的なトレーニング方法や、職場での合理的配慮の活用についても解説していきます。 発達障害の特性を理解し、自分に合った対策やトレーニング方法を見つけることで、職場でのストレスを減らし、自信を持って働けるようになるきっかけになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ビジネスにおけるコミュニケーションスキルの必要性 職場におけるコミュニケーションの役割 どの職場でも多かれ少なかれ、社内外でのコミュニケーションが発生します。特に、報告・連絡・相談という、それぞれ最初の一文字を取って「報連相(ホウレンソウ)」と呼ばれるスキルは、ほとんどの仕事において必要と言えるでしょう。 例えば事務職の場合、いくらExcelで複雑な表を作成できたり、PowerPointですぐに資料を作ることができたとしても、上司や同僚と内容をすり合わせたり、完成後に報告をしなければ、仕事の評価を得ることは難しいでしょう。 どんな仕事であっても、組織の一員として働くためには最低限のコミュニケーションスキルは必要不可欠です。実際、今も昔も、多くの企業の人事担当が採用時に重視するポイントのひとつに「円滑なコミュニケーションがとれること」があげられています。 職場でよくあるコミュニケーションの課題 その一方で、職場でのコミュニケーションの苦手に悩む方は少なくありません。特に、発達障害のある方は以下のような課題を抱えがちではないでしょうか。 指示を正しく理解できず、誤った作業をしてしまう 相談をすることが苦手で、トラブルを抱えこむことがある 意見を伝えたり説明したりするのが苦手 相手の話に集中することができず、聞き洩らしが多い 相手や場面に応じたコミュニケーションが取れない 考えがまとまるまで報告を先送りする こうしたコミュニケーションの問題は、仕事の質に直接影響を与えるだけでなく、職場の人間関係にも悪影響を及ぼします。 コミュニケーションがうまくいかないと起こるリスク コミュニケーションがうまくいかないと、次のようなリスクが発生します。 ミスの発生:指示を正しく理解できなかったり、確認不足が原因で業務ミスが発生しやすくなる。 チームワークの低下:仕事の進め方や認識がずれてしまい、チーム全体の業務が滞る。 信頼関係の損失:必要な報告や相談がなされず、「頼りない」「協力的でない」と思われる可能性がある。 いずれも、どの職場でも必要とされる「チームで仕事をやっていくための土台」が揺らいでしまう原因となります。もしこれらのリスクがあると判断されれば、いくら業務スキルを頑張って磨いたとしても、なかなか評価されにくいというのが現実ではないでしょうか。 発達障害のある方がコミュニケーションが苦手な理由 ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と課題 ASDの特性のある人の中には、「曖昧な表現が理解できない」「相手の気持ちを察することが苦手」「空気を読めない」といった特徴がある人が多く、職場でのコミュニケーションに影響を与えかねません。 筆者はADHDの診断を受けていますが、日々のコミュニケーションを通じて、ASDの傾向もあるのではないかと感じています。そんな筆者が実感するコミュニケーション上の特性としては、以下の3点が挙げられます。 言葉を文字通りに受け取ってしまう 「いい感じに資料をまとめておいて」と言われても、「いい感じって、具体的にどういうこと?」と疑問に思ってしまいます。「いい感じ」という曖昧な言葉を言われても、それが具体的なイメージとして理解できなければ動けないのです。仮に「A4の紙1枚に、要点を3つに絞って箇条書きで書いて欲しい」などと言ってもらえればスムーズに動けます。これは、言葉を文字通りに受け取るという傾向の表れではないかと自分を分析しています。 「いい感じに」や「なるべく早く」など曖昧で抽象的な表現を理解するのが苦手というのはASDあるあるです。 雑談や社交的な会話が苦手 筆者は、野球やサッカーなど自分が興味のない話題になると、とたんに仏頂面になってしまうのだそうです。「だそうです」と伝聞系で書いたのは、自覚していないからです。普通に会話の場に溶け込んでいると思っているのに、「あ、今興味ないでしょ?」と言われて「なんでばれたのだろう」と思うことが多々ありました。これは、雑談や社交的な会話が苦手だと認識していない分、より問題は深いと考えています。 ASD特性のひとつに「興味の幅が狭い(限定されている)」というものがありますが、悪気なくそれが態度に出てしまっているのかもしれません。 相手の表情や空気を読み取るのが難しい 相手が冗談で言ったことを本気だと思い真剣に受け止めてしまう傾向も、筆者にはあります。社交辞令で「今度飲みに行きましょう」と言われたとしても、それを本気に受け取って「じゃあ、いつにします?」とスマホでスケジュールアプリを開いて検討に入ってしまい、「いや、その、まぁまた近いうちに......」とやんわりはぐらかされた経験が多々あります。 「空気が読めない・冗談が通じない」もASD特性の代表的な特徴です。 ADHD(注意欠如・多動症)の特徴と課題 ADHDの特性のある人の中には、「注意の持続が難しい」「衝動的に発言してしまう」といった特徴がある人が多く、これもまた職場でのやりとりに影響を与えます。 筆者はADHDの診断を受けており、以下のようなことがよくあります。 話を最後まで聞かずに反応してしまう 相手の話が終わる前に相手の言いたいことがおよそ予測でき、自分の話をしたい気持ちが抑えられずに、相手の話にかぶせて自分の話を始めてしまう癖が筆者にはあります。よくないことだと分かっているのですが、その場ではうまく制御できないことが多く、あとから反省することしきりです。 ADHD特性の衝動性によって、早合点をしたり、相手の話を遮ってしまったりして失敗をした経験がある方も多いのではないでしょうか。 集中が続かず、指示を聞き逃す 口頭での指示を受けている最中であっても、たとえば周囲の会話に耳が持っていかれてしまうことがよくあります。せっかく上司が説明をしてくれていて、自分でもその説明を理解しようと思っているのに、瞬間的に周囲で話されている会話の方に注意がいってしまうことがよくあります。 「注意力が散漫」はADHDの代表的な特性のひとつです。メモをとっているのに聞き洩らしをしてしまう、とったメモを失くしてしまうというのもあるあるです。 思いついたことをすぐに口に出してしまう 筆者は以前の職場で取引先へ配信する職員インタビューのメルマガを書いていました。そのインタビューをしている際に、「前職では仕事が多くて過労で倒れる寸前にまでなってしまって......」という体験談を話してもらっているときに、「分かる!自分もそういった経験がある!」と共感してしまい、「ええ、自分も同じような体験がありましてね......」と、それから延々と自分語りを始めてしまい、インタビューの流れを止めてしまったことがありました。 つい場面にそぐわない発言をしてしまったり、一方的に話し続けてしまったりした場合でも、ADHD特性によって自分の言動をコントロールできないことがあります。 コミュニケーションのトレーニング方法 コミュニケーションが苦手だと感じる人の中には、そもそも「どのようにしたら円滑なコミュニケーションがとれるのか」が分からない方も多いかもしれません。一方で、コミュニケーションもスキルの一つであり、体系的に学ぶことが可能です。 特に、「何をどう伝えればいいのか分からない」「相手の気持ちを察するのが苦手」「言葉の意図を誤解しやすい」といった悩みを持つ場合、コミュニケーションの基本を知識として学ぶことが有効です。 知識として学ぶ コミュニケーションを学ぶ方法の一つとして、書籍やセミナーを活用することが挙げられます。たとえば、以下のようなジャンルの本を読むことで、基礎を理解しやすくなります。 ビジネスコミュニケーションの本→ 職場での報告・連絡・相談の方法や、上司・同僚との適切な関わり方を学べる。 傾聴スキルの本→ 相手の話を上手に聞く技術を学び、信頼関係を築く力を養える。 会話のロジックを学ぶ本→ 話がまとまらない、伝えたいことが伝わらないといった悩みを解決するヒントが得られる。 大きな書店だと、「ビジネス」「コミュニケーション」といった棚があると思います。お勧めの選び方としては、自分が読みやすそうだと感じる本を選ぶことです。ネットで調べて評判の高い、有名な著者の本を選ぶのも良いですが、まずは自分が取っつきやすいと感じる本から始めるのが良いと思います。 また、書籍だけでなく、コミュニケーションスキルを学べるセミナーも有効です。セミナーでは、講師の解説を直接聞けるだけでなく、ロールプレイやワークショップを通じて実践的に学ぶことができるため、実際の場面に活かしやすくなります。 このような学びを通して、ビジネスマナーや会話の典型的な流れ、よくあるNG行動などを知り、適切な対応を知ることができます。本やセミナーで教わった内容をすべていっぺんにやろうとはせず、できることから1つずつやっていくのが、最短のスキルアップにつながります。 実践的な対策 コミュニケーションスキルを向上させるためには、知識を学ぶだけでなく、実際に練習しながら身につけることも重要です。代表的な対策として、ミラーリング、アクティブリスニングといった手法があります。 ミラーリング ミラーリング(Mirroring)は、相手の言葉や仕草をさりげなく真似ることで、親しみやすさや共感を生む手法です。例えば、 相手:「最近、忙しくて疲れてるんですよね」 自分:「そうなんですね、忙しくて大変なんですね」 このように、相手の言葉を繰り返すだけでも、「話をしっかり聞いてくれている」という安心感を与えることができます。また、相手の姿勢やジェスチャー、話すスピードを自然に合わせることで、無意識に「この人は自分と波長が合う」と感じてもらえる効果もあります。ただし、やりすぎると不自然に感じられるため、さりげなく取り入れるのがポイントです。 アクティブリスニング アクティブリスニング(Active Listening)は、ただ相手の話を聞くだけでなく、適切な相槌や質問を交えて、積極的に会話に関与する方法です。 具体的には、 相手の話を遮らずに最後まで聞く 「それは大変でしたね」「なるほど、面白いですね」といった共感の言葉を入れる 「それって具体的にはどういうことですか?」と質問して話を広げる といった工夫をすることで、相手は「しっかり話を聞いてもらえている」「この人とは話しやすい」と感じるようになります。アクティブリスニングを身につけることで、より円滑なコミュニケーションが可能になり、信頼関係の構築にも役立ちます。 筆者は、特に感情面で共感することが多いので、それを強く打ち出すことが多いです。「それは大変でしたね」という言葉を入れ、「自分も同じような○○ということがあったので、自分なりにですが、分かります」と寄り添う形でコミュニケーションを取ることがよくあります。 特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために ここまでコミュニケーションスキルを上げるための方法などをご紹介しましたが、特に発達障害のある方の場合は、そもそも「特性」としてコミュニケーションが苦手であることが多く、いずれも単に知識を得るだけでは足りず、実際の場面で活かすのが難しいことが多いです。 そこで、実践的な方法が必要となります。代表的なものとしては、SST(Social Skills Training)というトレーニングがあります。適切な言葉の選び方や、表情・態度・ジェスチャーを意識しながら会話の練習を行うことで、社会的スキルを上げ、実際の場面での対応力を高めるものです。 例えば、 上司への報告の仕方 初対面の人とのスムーズな会話の進め方 断るときの伝え方 といったテーマごとに、ロールプレイを通じて練習しながら学ぶことができます。「頭では分かっているけど、実際にやるのは難しい」と感じる人にとって、SSTは実践力を養うのに最適なトレーニングです。 このように実際の職場の状況を想定してロールプレイを行い、その結果のフィードバックを受けながら、練習を重ねることで、自分の特性による「苦手」への理解を深めながら、より実践的に活用できるコミュニケーションスキルを身につけられます。 また、それでも克服が難しい場合は、「合理的配慮」として職場に伝える選択肢もあります。障害者雇用枠ではない一般雇用枠でも、診断がある場合には企業に相談をすることができます。 合理的配慮とは、就職先の企業が、障害による業務上の困難を改善・軽減するために必要なサポートを提供することです。 例えば「具体的な指示が欲しい」「周囲の音が気になるので、耳栓の使用を許可して欲しい」「メモを取る時間を与えて欲しい」といった、業務指示の仕方や職場環境の調整などです。どうすれば仕事が円滑に進められるかを企業側と一緒にすり合わせていく必要があります。 その際には、以下のポイントを説明すると、スムーズに交渉が進みます。 障害の特性や症状 特性による業務上の困難や苦手な業務内容 自分自身で取り組む工夫や対策 企業に依頼をしたい配慮内容 企業に「合理的」だとみなされない場合にはサポートを受けられないケースもあるため、どれだけ困っているか・どうすれば解決できるのかを具体的に説明することはもちろん、自分自身で取り組む対策や配慮を受けることでできるようになることを伝えることも大切です。 詳しくは「発達障害のある方の合理的配慮事例|職場コミュニケーション編」でお伝えしています。 特性によって、一人ひとりに合う対策法は異なります。また、性格や働き方の好みによっても、どのような工夫が効果を発揮するかは変わってきます。そのため、自分自身に合った方法を見つけることが重要です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。