大人の発達障害|燃え尽き症候群(バーンアウト)の原因と対処法

「特性上苦手な業務を、どうにか気合でやりすごした」
「締め切り直前まで仕事が手につかず、前日徹夜をして乗り切った」

周囲に迷惑をかけないように頑張り続けた結果、ある日突然、糸が切れたように動けなくなった…そんな経験はありませんか。

ADHDやASDなどの発達障害がある方の中には、特性による仕事上の困りごとを抱えながらも、周囲に合わせようと無理を重ねたり、締め切り直前に過集中でなんとか乗り切ったりしてきた方が少なくありません。

一見すると、「頑張って乗り切っている」「なんとか仕事ができている」ように見えるかもしれません。しかし、その状態が長く続くと、心身のエネルギーを使い果たし、燃え尽き症候群、いわゆるバーンアウトに近い状態になってしまうことがあります。

この記事では、発達障害のある方が燃え尽き症候群になりやすい原因と、過集中・過剰適応のリスク、そして無理なく働き続けるための対処法をご紹介します。

対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。

執筆者紹介

小鳥遊(たかなし)さん

発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。

発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。

また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。

燃え尽き症候群(バーンアウト)とは

「燃え尽き症候群のサイン」チェックリスト

燃え尽き症候群は、ある日突然起こるとは限りません。少しずつ心や体にサインが表れ、気が付いたときには「もう頑張れない」と感じるほど疲れ切っていることもあります。 

  • 朝どうしても起き上がれない
  • 休日に一日中寝ていても疲れがとれない
  • 趣味や好きなことに取り組む気力がない
  • いつもなら数分で終わる業務に、何倍も時間がかかるようになった
  • 人付き合いが過剰なまでに億劫に感じる
  • 指摘や注意を受けると、過度に落ち込んでしまう
  • 特性によるミス(ケアレスミス・聞き洩らし)が増えてきた
  • いつもよりも特性が強く出ている(些細なことでパニックになる・感覚過敏が以前よりも辛い等)

このようなサインが続いている場合は、無理を重ねすぎていないか、一度立ち止まって確認してみることが大切です。必要に応じて、医療機関や行政機関の窓口、(お勤め中の場合には)産業医などに相談することも検討しましょう。

燃え尽き症候群(バーンアウト)は、単なる疲労ではない

燃え尽き症候群とは、仕事や活動に熱心に取り組み続けた結果、強いストレスや過度な努力によって、心身のエネルギーを使い果たしてしまった状態を指します。

厚生労働省の「こころの耳」では、燃え尽き症候群を「活発に仕事をしていた人が、何らかのきっかけで燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状」と説明しています。またWHOもICD-11において、「うまく管理されなかった慢性的な職場ストレスの結果」とし、エネルギーの枯渇、仕事から心理的に距離を置く感覚、職業上の有効性の低下を特徴として挙げています。

燃え尽き症候群は単なる「疲れ」ではありません。朝起きるのがつらい、以前はできていた仕事に手がつかない、人と関わるのがしんどい、仕事への達成感が持てなくなる。そうした状態が続く場合は注意が必要です。

また、燃え尽き症候群は、「弱い人がなるもの」ではありません。むしろ、責任感が強く、周囲の期待に応えようと無理を重ねてきた人ほど陥りやすい状態でもあります。

筆者も、最初に就職した会社で、燃え尽きに近い状態になり、休職を経験しました。当時は、強い疲れを「頑張っている証拠」だと思い込み、むしろ充実していると感じていました。

しかし次第に、以前なら15分ほどで終わっていた名刺増刷のような定型業務にも、1時間以上かかるようになりました。「なんて自分はダメなんだろう」と自分を責め、それを取り返そうとしてさらに無理を重ねた結果、休職に至りました。

燃え尽きの前兆は、このような日常的な変化に表れることがあります。

発達障害がある方の場合、特性による困りごとを抱えたまま無理を続けることで、心身に大きな負担がかかることがあります。苦手な作業を一人で抱え込む・周囲に合わせようとして過剰に頑張る・ミスを防ごうとして常に緊張している…こうした状態が続くと、燃え尽き症候群だけでなく、うつ病や適応障害などの「二次障害」につながることもあります。

二次障害とは、発達障害の特性そのものではなく、特性による困りごとや強いストレスなどが重なることで、あとから生じる心身の不調を指します。だからこそ、早い段階で困りごとに気づき、必要に応じて相談や支援につながることが大切です。

大人の発達障害(ADHD・ASD)のある方が「燃え尽き症候群」になりやすい理由

ADHDやASDなどの発達障害がある方は、特性による困りごとをカバーしようとして、人一倍頑張ったり、周囲に合わせようとしたりすることがあります。その無理が積み重なると、心身のエネルギーを使い果たし、燃え尽き症候群につながることがあります。

ADHDの場合は、「やらなければいけない」と分かっていても締め切りが近づくまで着手できず、報酬や興味、直前の焦りや緊急性によってようやく集中できることがあります。一方、ASDの場合は、こだわりの強さ、予定変更の苦手さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの負荷などによって、仕事の中で強い疲れを感じることがあります。こうした負荷が長期的に続き、強い消耗状態に陥ることは「自閉的バーンアウト」として研究・議論されています。

つまり、ADHDの場合は「着手の難しさ」や「締め切り直前の過集中」、ASDの場合は「こだわり」「予定変更への負荷」「感覚的な疲れ」などが、燃え尽き症候群につながる要因になることがあるのです。

ここからは、発達障害のある方が仕事の中で無理を重ねやすい代表的な傾向として、「過集中」「過剰適応」「こだわり・完璧主義」「自己関連付け」の4つを見ていきます。

過集中:「エネルギーの前借り」で走り続ける

ADHDのある方は、締め切り直前の焦りや緊張感によって、一気に集中できることがあります。その結果、普段はなかなか進まなかった仕事を短時間で仕上げられることもあります。

しかし、毎回この方法に頼ると、心身には大きな負荷がかかります。筆者は、こうした締め切り直前の過集中を「エネルギーの前借り」と考えています。短期的には仕事を終えられても、そのたびに翌日以降の体力や気力を使っていると、いずれ返済できない日が来るからです。

筆者も、この「エネルギーの前借り」を多用していました。会社員時代、毎月はじめに、同じビルに入っているグループ会社各社へ請求書を作成する仕事がありました。前任の先輩社員が、ある程度自動で計算できるExcelを残してくれていたものの、請求総額が確定してから各社分を計算し、請求書を作成して渡すまでの時間は限られていました。

毎月第一営業日の夕方になると、「今日中に出さなければ」と焦りながら、一気に集中して作業を進める。結果的には何とか間に合うのですが、終わったあとはぐったりしていました。当時は「短時間でやりきった」と思っていましたが、今振り返ると、まさに翌日以降の体力や気力を前借りするような働き方だったと思います。

「短期集中型」は、うまくいけば成果につながります。しかし、こうした働き方が続くと、心身ともに摩耗してしまいます。

過剰適応:困っていないように見せ続けてしまう

過剰適応とは、自分の本来の状態や限界を押し殺して、周囲の期待や職場のルールに過度に合わせ続けることです。

たとえば、本当は困っているのに「大丈夫です」と言う、苦手な作業を苦手と言えない、ミスを隠すために人一倍確認する、家に持ち帰って仕事をする、配慮を求めることに罪悪感を持つ、といった状態です。

こうした過剰適応は、ある意味ではサバイバルの方法です。しかし、続けていると自分の疲れや困りごとに気づきにくくなり、ある日突然、糸が切れたように動けなくなることがあります。

筆者もまさにこの典型でした。総務の庶務を担当していた頃、毎日のルーチン業務にも時間がかかるようになり 、先輩社員から「最近、社内の評判がすごく悪いよ。どうしたの?」と言われるようになりました。さらに、業務中の電話対応でうまく切り上げられず、同僚から「早く電話を切って」とジェスチャーされた瞬間、「もう駄目だ」と緊張の糸が切れました。その後、上司に休職の意向を伝えました。

こだわり・完璧主義:終われないことで消耗してしまう

ASD特性として、こだわりの強さや予定変更への苦手さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの負荷などがある場合、仕事の中で強く消耗することがあります。

たとえば、完成度にこだわりすぎて終われない、手順を変えられない、曖昧な指示に不安が強くなる、予定変更で大きく消耗する、といった状態です。

完璧に仕上げようとすること自体は悪いことではありません。しかし、すべての仕事に100点を目指していると、時間もエネルギーも足りなくなります。

「100点を目指しているつもりはない」と感じる方もいるかもしれません。完璧主義は、「良いものを作りたい」という思いだけでなく、「悪く思われたくない」「ネガティブな指摘を受けたくない」という不安から生じることもあります。筆者は、とにかく「怒られたくない」「注意されたくない」という一心で、到達することのない「完璧」を目指して毎日終電ギリギリまで職場に残るなど、体力や精神力を消耗してしまった経験があります。

この場合、仕事量を減らすだけでなく、仕事の進め方、指示の受け方、完成度の基準、相談のタイミングを見直すことが大切です。

自己関連付け:「自分がやらなければ」と引き受けすぎてしまう

ADHDやASDのある方の中には、周囲の状況や相手の表情を強く受け取り、「自分がやらなければ」と思い込みやすい方もいます。誰かが困っていそうに見えると自分の仕事でなくても引き受ける、少し注意されただけで「自分が全部悪い」と感じる、といった状態です。

気配りや責任感は大切な力です。しかし、引き受け続けると、自分の限界を超えていることに気づきにくくなり、過剰な負荷を背負い続けることがあります。

うつ状態に近づくと、特性による困難が強く出ることもある

こうした無理が続き、燃え尽き症候群やうつ状態に近づくと、ADHDやASDの特性による困りごとが、より強く出ることがあります。

たとえば、もともと不注意が出やすい方は、疲労や睡眠不足によってさらにミスが増えることがあります。もともと着手が苦手な方は、気力の低下によってますます仕事に取りかかれなくなることがあります。

このとき、「自分は怠けている」「またダメになった」と責めてしまう方もいるかもしれません。しかし、燃え尽きに近い状態では、脳や体のエネルギーそのものが落ちています。普段できていたことができなくなるのは、気合いが足りないからではありません。

大切なのは、「無理をすれば働ける」ではなく、「無理をしすぎなくても働き続けられる」状態を目指すことです。

そのために次の章では、燃え尽き症候群を防ぐためにできる具体的な対処法を紹介します。

発達障害による燃え尽き症候群を防ぐ!無理なく働くため対処法

ここからは、発達障害のある方が、燃え尽き症候群を防ぐためにできることを紹介します。
特性や現れる困りごとは一人ひとり異なるため、自分に合ったものから取り組んでみましょう。

大前提として大切なのは、「もっと頑張る」ではなく、「頑張りすぎなくても回る仕組みを作る」ことです。燃え尽きやすい方の多くは、すでに十分頑張っています。必要なのは、気合いではなく、負荷の調整です。

① 過集中は「終わり方」を決めておく

過集中は、完全になくそうとしても難しいものです。大切なのは、過集中に入ったときの「終わり方」をあらかじめ決めておくことです。

たとえば、終了時刻を決める、アラームを複数回セットする、作業が終わる条件を決めておく、といった方法があります。特におすすめなのは、終了条件を具体的にすることです。

時間で区切って終わりにすることが苦手な場合には、タスクが完了したときの状態(ゴール)を明確にしておくこともおすすめです。たとえば「資料の確認」では終わりが曖昧ですが、「資料の数字の間違いを修正する」なら、どこまでやれば終わりかが分かります。筆者も、「時間が来たから終わり」と強制終了するより、「ここまでやった」と一段落して終える方が、無理なく切り替えやすいと感じています。

② タスクを「見えるもの」に変える

ADHDのある方にとって、頭の中だけでタスクを管理するのは大きな負荷になります。そこで大切なのが、タスクを書き出すことです。

ただし、おおざっぱに「資料作成」とするのではなく、タスクを細分化し「目的を書き出す」「締め切りの日付を書き添える」「構成案を書く」「最初の項目を書く」「上司に送る」など、小さな行動に分解することがポイントです。

タスクを書き出すことは、これからやらなければいけないことを目の前に置く行為となります。その意味では、抵抗感を覚えるかもしれません。しかし、それは同時にタスクを終わらせる道しるべでもあります。小さな行動まで書き出されたタスクは、自分がつまずかないように助けてくれる心強い同伴者となってくれることでしょう。

③ 休息も予定に入れる

燃え尽きやすい方は、仕事の予定は入れていても、休む予定を入れていないことがあります。しかし、休息は「余った時間に取るもの」ではなく、働き続けるために必要な予定です。

たとえば、夜21時以降は仕事をしない、外出の翌日は軽めの仕事にする、会議が続く日は作業量を減らす、締め切り翌日は回復日として扱う、といったルールを作ります。

これは甘えではありません。長期的に働くためのメンテナンスです。

④ 困りごとを言語化する

過剰適応をしていると、自分が何に困っているのか分からなくなることがあります。そのため、まずは困りごとを具体的に書き出してみましょう。

たとえば、指示が口頭だけだと忘れてしまう、締め切りが曖昧だと着手できない、優先順位を自分で決めるのが苦手、急な予定変更があると混乱する、完璧にやろうとして時間がかかりすぎる、などです。

困りごとが言語化できると、指示はチャットやメールでもらう、締め切りを日付で確認する、優先順位を上司に確認する、完成度の基準を事前に確認する、といった対策につなげやすくなります。

⑤ 完璧主義には「合格ライン」を決める

ASD特性や不安の強さがある方は、仕事の完成度にこだわりすぎてしまうことがあります。しかし、すべての仕事において100点満点を目指していると、時間もエネルギーも足りなくなります。

そこで、「この仕事は何点で出せばよいか」を確認しましょう。社内確認用なら70点、まずはたたき台なら60点など、仕事ごとに合格ラインを変えることが大切です。

完璧に仕上げる前に見せることで、手戻りを減らせることもあります。一人で抱え込んで100点を目指すより、途中で確認して方向性を合わせたほうが、結果的に負担は小さくなります。

一人で抱え込まず、無理のない働き方を探す

もし、すでに燃え尽きてしまったように感じている場合は、まず回復を優先してください。燃え尽きている状態でさらに自分を追い込むと、回復が遅れてしまうことがあります。睡眠、食事、休息を整え、必要に応じて医療機関や相談窓口につながることが大切です。

回復してきたら、「なぜ燃え尽きたのか」を自分を責めるためではなく、再発を防ぐために振り返ってみましょう。どの時期から無理が始まっていたのか、何を我慢していたのか、どの場面で過集中や過剰適応が起きていたのかを整理することで、自分に合った働き方を考えやすくなります。

とはいえ、一人で特性を整理し、働き方を見直すのは簡単ではありません。だからこそ、支援機関や専門家に相談することも選択肢の一つです。

就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。

発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。

就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業)

就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。

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記事監修北川 庄治(デコボコベース株式会社 最高品質責任者)
  • 一般社団法人ファボラボ 代表理事
  • 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会 評議員
  • 公認心理師
  • NESTA認定キッズコーディネーショントレーナー
  • 発達障害ラーニングサポーター エキスパート
  • 中学校教諭 専修免許状(社会科)
  • 高等学校教諭 専修免許状(地理歴史科)
東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。

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