【ADHD当事者に聞いてみた】汚部屋になるのはなぜ?家事の苦手と発達障害
発達障害は家事が苦手?
日常生活を送る上で欠かすことのできない「家事」。
みなさんは、家事をおこなうことについてどのように感じますか?
得意な方もいれば、苦手と感じる方もいるかもしれませんね。
では、もし家事が苦手だと感じる理由が発達障害に関連しているとしたらどうでしょうか。
今回の記事では発達障害と家事の関係性に焦点をあて、その理由や支援の方法について考えていきたいと思います。
●記事を書いた人:馬場(生活支援員/社会福祉士)
2024年4月 デコボコベース株式会社入職。
前職では小売業の店舗マネージャーとして、店舗運営や人材育成に従事。
心身のバランスを崩してしまい、職場復帰に困難を抱える方を目の前にし「困っている方の力になりたい」、「ライフワークを見つけるためのサポートをしたい」と考え障害福祉の勉強をはじめる。その後就労移行支援事業所の支援員へ転職を決意。現在はディーキャリア芝浦オフィスの生活支援員として、安定した就労のための生活面でのサポートをおこなっている。
目次
■発達障害とは?
まずは発達障害とは何を指すのかその特徴について簡単にご説明します。
発達障害とは、
自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)などのように脳の発達に課題が生じ、
社会的なコミュニケーション、学習、行動に対して個々に困難を抱えている状態を指します。
具体的には、
- 注意力や集中力の低下
- 計画性の欠如
- 衝動性の高さ
- コミュニケーションや社会生活を送るうえでの困難さ
などが特性として挙げられます。
では、これらの特性が家事を行う上でどのように、影響を及ぼすのでしょうか。
実際のADHD当事者かつ、弊社でピアサポーターとして働くDさんの声を伺ってみました。
■当事者に聞いてみた!一人暮らしのここが大変
1.日常生活を送るうえで、家事に対するお困りごとはありますか?
家事に対する困り感はあります。
特定の家事が苦手というわけではなく、家事全般がうまくできないことが多いです。
子どものころは気が付きませんでしたが、大学生になり一人暮らしを始めてから
今まで家族に頼っていた家事を自分でやらないといけなくなり、生活に対する困り感を抱えるようになりました。
2.具体的にはどのような家事に困っていますか?
「生活に対する困り感」について、Dさんにさらに詳しく聞いてみたところ、
以下の5つのことが浮かび上がってきました。
①公共料金の支払いが滞ること
電気代、水道代、ガス代を期日までに支払うことが難しく滞納をしてしまいました。
「払わなきゃ……払わなきゃ……」と思いつつ、
「明日でいいか」と先延ばしにしてしまうことを繰り返していたそうです。
その間に、そのタスク自体を忘れてしまうことも。
引き落としの支払いに切り替えるまでは、度々支払いをし忘れてしまいました。
②洗濯物の管理ができないこと
干したとしても取り込むことができず、また、干したことすら忘れて、
洗濯物を雨に濡らしてしまったことが多くあったそうです。
洗濯物を干せないことが続くと着る服がなくなり、メンタル不調に陥ることもあります。
取り込むことを忘れるのを防止するため、浴室乾燥機で乾かしていたそうですが、
たたんでしまうことを面倒に思い、ここでも先延ばしをしてしまい、
床に服の山ができてしまったり、浴室に洗濯を干したままお風呂に入ることも多いそうです。
③食材の管理が難しいこと
自炊したものを冷蔵庫に入れたまま忘れてしまい、腐らせてしまうこともあります。
また、食材を使いきれずに残してしまうことも多いです。
年単位で冷凍庫に入れている魚と、新しい魚が混在しているため、
間違えて古い魚を食べてしまったこともあったそうです。
④片付けに集中し続けることが難しい
また、「何かをし続ける」ということが苦手なDさん。
片付けを完遂することが難しく、気づいたら片付けも脱線してしまっています。
そのうちにやる気がなくなってしまい、あきらめてしまうためなかなか部屋が片付かないといいます。
⑤ゴミ処理が困難なこと
抑うつ状態の時には特にやる気が湧かず、ゴミを捨てられなくなります。
毎回、「明日こそはやろう」と先延ばしをしてしまうことを繰り返し、
気づけば1か月経ってしまったことも。
放置するとコバエが大量発生してしまい、部屋に帰ることができなくなることもありました。
インタビュアーのきづき
以上の困りごとを伺い、私が意外だったのは、
特定の家事が苦手!という訳ではなく、家事全般においてそれぞれに困難な課題があるということです。
上記4つの家事の苦手をみていると、先延ばしや注意の転導によって
タスクの完遂が難しくなっていることがわかります。
では、お話いただいた家事に対する難しさ・課題感が、
ADHDの特性と実際にどのように関係しているのかを改めて考えていきたいと思います。
■発達障害の特性と「家事の困難さ」の関係
前述のように、ADHDの方が家事に取り組む際の課題には、
以下のような特性が関係していると考えられます。
ADHDのある方に多くみられる特性
- 注意の散漫:集中力が続かず、作業中に他のことに気が散りやすい傾向があります。
例)洗濯物を干している途中でTVのニュースを見始め、そのまま洗濯物を干していたことを忘れてしまい、また次も自身が注意をひいた行動に向かってしまいます。
そのため、そもそも洗濯物を干していた作業そのものを忘れてしまうことがあります。 - 先延ばしぐせ:長期的な報酬よりも、即時の快感が得られる短期的な報酬を求める傾向があるといわれています。やらなくてはいけないことよりも、目の前にある作業を優先してしまいます。
例)結果としてゴミ出しをすることを先延ばしにしてしまったり、公共料金の支払いを先延ばしにしてしまうことがあります。 - 段取りを立てることの困難さ:時間の見積もりや、作業の計画を立てることが難しく、タスクを適切に配分できないことがあります。
例)片付けをしようと思っても、どこから手を付けていいかわからない。
または、どのくらい時間がかかるか見積もりができず、片付けがとても負担に感じてしまうことがあります。
そのほかにも、発達障害の特性と家事の困難さが関連していると考えられる特性は
以下のような事も考えられます。
- 感覚過敏:特定の感覚に対して敏感であり、掃除機の音や水の触感などが苦手なことがあります。
- こだわりの強さ:一部にこだわりすぎて、一つの家事に集中してしまい多くの時間を費やしてしまいます。結果として、他の家事が疎かになることがあります。
- 空間把握能力の低さ:家事を行う際の作業の流れや、配置について把握しにくいことがあります。
これらの特性は、ADHDだけに限らず、ASDなど他の発達障害にも共通して起こりうる可能性があります。
「家事が苦手だ」と感じる理由や困難な理由が、特性を理解することで明確になってきましたね。
ただし、これらの特性は人によってそれぞれ異なるため
受ける支援や対策方法もご自身にあったものを選ぶことが大切です。
じゃあ、どうしたらいいの?
これまで、発達障害の特性と家事の関係について考察してきました。
とはいっても、
「そもそも自分は何が苦手なのか分からない。」
自身の特性は理解したものの、
「どのような支援を受けられるのかがわからない」
「何かしら対策はしたいが、一歩勇気が湧かない」
という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
もしもそのようなお悩みを抱えている方がいらしたら、ひとりで抱え込んだり悩むことなく、第三者に相談をしたり、社会資源を活用して支援を受けることをオススメします。
では、実際に具体的にどのような支援を受ける事が可能なのか、いくつか選択肢をみていきましょう。
■これでラクになる!身近で受けることができる支援
①家事代行サービス等の民間サービスの利用
家事代行サービスや整理収納アドバイザーなどを利用し、家事作業のサポートを受けることができます。
最近では、ADHDのある方の特性を理解したサポートをしてくれる業者も少しずつですが増えてきています。
片付けのプロの手厚いサポートを受けることにより、精神的な負担も減るかもしれません。
一方で、民間サービスなので自己負担費用が高額になることもあります。
②障害福祉サービスの活用
ホームヘルプ(居宅介護)
精神障害者であれば障害福祉サービスへ申請でき、居宅介護(ホームヘルプ)を利用することができます。
生活に関する料理、洗濯、掃除、買い物などを依頼することができます。また、民間サービスと比較して自己負担額も低いのが特徴です。
障害者手帳の有無や、就労しているかしていないかにかかわらず、障害支援区分の区分1以上を取得していれば利用可能です。
民間の家事代行サービスと違い、「自立のための支援」であるため、
丸投げして「やってもらう」ではなく、あくまでやり方を教えてもらい、自分でできるようになるためのサポートをしてもらうという意味で捉えましょう。
自立生活援助
障害のある人が一人暮らしをしている、または始めるにあたり、定期的な巡回などを通じて助言や支援者との連絡調整をおこない、暮らしの安心・安全を確保するためのサービスです。
「食事、洗濯、掃除などは適切におこなっているか」「公共料金や家賃の払い忘れはないか」などを確認し、
課題があればその解決に向け、方法を一緒に考えてくれます。
これらの障害福祉サービスの利用を検討する場合は、お住いの障害福祉課に問い合わせてみましょう。
または、基幹相談支援センターや発達障害者支援センター等に相談して、活用できる社会資源を教えてもらうのもよいかもしれません。
ひとりで悩まず、ぜひ不安や困りごとを打ち明けてみてください。
■ディーキャリアでの支援のご紹介
私たち就労移行支援事業所ディーキャリアでは、
家事が苦手な利用者さまの「生活面のサポート」をおこなっております。
就労移行支援は、障害のある、一般就労をめざす方が利用できる通所型の就労支援で、通ってくださっている方の通所目的の多くは「就職すること」ですが、
「就労の安定」は、まず「生活の安定」が基盤になければ実現しません。
ご自身の特性によりネックになっているポイントはどこなのかを支援員が一緒に考え、解決方法を探します。
具体的な目標を設定し、日々の通所の際に振り返りの時間を設けることで、
トライ&エラーを繰り返し、あなたにあった対策方法を考えていきます。
ご自身の特性を理解したうえで、対処法を一緒に考えていきましょう。
■ひとりで抱え込まず、まずは相談しよう
今回は、「発達障害」と「一人暮らし、家事の困難」について取り上げ、利用できるサービスについてもご紹介をしてきました。
片付けができないことで悩んでいる方の多くは、「こんなこと、人に打ち明けるのは恥ずかしい」「引かれてしまうかも……」と、だれにも言い出せず抱え込んでしまっています。
打ち明けるのは、勇気がいることです。けれど、勇気をもって一歩踏み出すと、今お悩みのことが少し解決に向かっていくかもしれません。
今回インタビューしたDさんは、そんな一歩を踏み出したうちのひとりです。
次回は、Dさんが実際に自分の住んでいる自治体の障害福祉課に相談し、その後どうなったのかについての体験レポートをお届けします!
ぜひ次回の記事もチェックしてくださいね。
無料相談会・当事者座談会に来てみませんか?
「発達障害があり、生活やお仕事に悩んでいる」「もしかして発達障害かも……」など、
心細さやもやもやを抱えている方もいらっしゃると思います。
そんな方は、ぜひ「発達障害当事者座談会」で思いを打ち明けてみませんか。
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また、ディーキャリア芝浦オフィスにお越しいただき、実際に家事や日常生活に対するお困りごとを
支援員やピアサポーターと個別でお話をすることも可能です。
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一人で悩んでいる方、お困りごとを感じている方は、ぜひお気軽に相談会をご利用ください!
スタッフ一同みなさまのお力になれることを、心まちにしております。
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