対策③段取りよく物事を進めるのが苦手 → ツールを活用して管理、仕事では手間がかかりすぎない方法を相談

お仕事だと、タスクやスケジュールの管理をPCのツールで行うことが多いと思いますが、とりさんはいかがですか?

はい、仕事では会社から指定されたツールを使ってタスクやスケジュールの管理をしています。個人的には、管理のために手間をかけ過ぎないよう、会社側と合理的配慮の調整をすることが大切じゃないかと思っています。

「管理のために手間をかけすぎない」とは、具体的にどういうことでしょう?

管理が複雑すぎると、それだけで脳のエネルギーを無駄に使ってしまうと思うんです。
例えば、誰かから仕事を依頼されたとき、忘れないよう手元にメモしておくだけなら大きな手間ではありません。でも、タスク管理ツールに登録しようとすると
1. タスクのタイトルを決める
2. 担当者を設定する
3. 期限を設定する
4. 依頼内容をメモする
…というように、タスクを登録し終わるまでにいくつものステップが必要です。これでは仕事をする以前に、仕事の管理をするだけで脳のエネルギーをたくさん使ってしまいます。

なるほど。段取りよく物事を進めるのが苦手だからといって、キッチリ管理しようとし過ぎると、それはそれでエネルギーを余分に使っている状態になってしまう、ということですね。

はい。もちろん、ツールはうまく使えば便利ですし、会社ではチームで仕事をしているので、指定されたツールを使う必要もあります。
でも、本当に大切なのは、依頼された仕事を抜け漏れなく行うことのはず。抜け漏れをなくすために、「難しいツールではなく、簡単なツールを使えるようにしてもらう」「タスクやスケジュールの管理そのものを、誰かに助けてもらう」といった合理的配慮を、会社側と相談してもいいんじゃないかと思います。

「管理そのものを、誰かに助けてもらう」というのは、年齢が上がれば上がるほど、ちゃんと会社側と相談しておいた方が良さそうですね。
20代のころは「上司の指示に従って仕事を行う」ことが当たり前ですが、30代になれば自己管理して仕事を進めることが求められますし、世間の一般的なイメージからも「年齢を重ねた大人として、自己管理ができることは当然だ」と見られがちな気がします。

もしかしたら、30代というのは「自分の障害特性」と「社会的に求められる役割」とがかみ合わなくなってくる年代なのかもしれませんね。

たしかに、30代は仕事で責任の範囲が広がるだけでなく、家庭においても結婚や子育てをする人が多い年代です。若いころとは求められる役割が変わっていきますよね。
私も30代のころは、「自分の特性としてはちょっとしんどいけど、家族のために無理してがんばらなきゃいけない」っていうシーンがありました。でも40歳を過ぎると、今度はちょっと楽になったような気もするんです。
例えば、30代で初めて部下ができたときは「頼りになる上司」にならなきゃいけないと思っていて、部下が困っていたら「後はオレに任せとけよ」って仕事を巻き取っていました。自分の仕事の段取りもうまくできないのに、さらに仕事を抱え込むことになって、結果的に体調を崩してしまいました。
でも、年齢とともにいろんな経験を積むうちに「上司のあるべき姿は一つじゃない」って分かったんです。
みんなをグイグイ引っ張っていくタイプの上司もいれば、一見すると大人しくて頼りないけど、まわりをうまく巻き込んで物事を成し遂げていくタイプの上司もいる。そういうことが分かってくると「理想とはちょっと違うけど、自分ができる方法で一生懸命がんばればいいんだ」って思えるようになってきて。
30代から40代へと年を重ねるうちに、自分の中で理想と現実とのすり合わせが少しずつできたんじゃないかと思うんです。

なるほど。「年齢とともに、うまい気の抜き方がつかめてくる」っていうことなのかもしれないですね。
私はまだ20代なんですが、一生懸命「社会になじもう」として「障害への対策を完璧にやらなきゃいけない」ってどこかで思っている気がします。でも、年齢を重ねることで自分に対する理解が進んで、完璧じゃない自分も許容できるようになる、みたいな。
私は「これから30代になったときに、自分のライフプラン(結婚や育児)をどうすればいいんだろう」っていう不安があったんですが、「40代になってちょっと楽になった」っていうお話を聞けて、少し気が楽になりました。

私はとりさんと対談させていただいて、年齢を重ねると良くも悪くも落ち着いてしまい、新しい情報を積極的に取ろうとしていなかったと気が付きました。とりさんから自分の知らない知識や対策方法をお伺いできたのが、とても良かったです。
今回は対談にご協力いただき、ありがとうございました。

終わりに:相談窓口のご紹介

発達障害の当事者同士による対談、いかがでしたか。

今回の2回の対談を通じ、筆者自身も、年齢や環境の変化に応じて障害の知識をアップデートしていかなければならないと感じました。

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執筆者

藤森ユウワ(ライター・編集)

ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。

これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。

子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。

36 歳で ADHD・ASD と診断される。

診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。

誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。

さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。

自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。

記事監修

北川 庄治(デコボコベース株式会社 プログラム開発責任者)

東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。

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