ADHD当事者が編み出した「片付け苦手」克服法を紹介

片付け苦手は、仕事をスムーズに進められない

片付けが苦手だったとしても、日常生活の範囲で終わるのであれば、自分や近しい人が我慢すれば良いかもしれません。しかし仕事においては、片付けがうまくできないのは、スムーズな業務遂行に影響を与えてしまいます。それは、大別して少なくとも以下の3点になります。

探しものが見つからない

片付けができないと、物がどこにあるか把握できなくなります。例えば、上司から「あの書類を見せて欲しい」などと言われたとき、すぐにスッと出せれば良いのですが、「お待ちください」と言って自分の机の上や引き出しの中などをよく探し回っていました。

探す時間もかかりますし、その間ずっと「もしかしたら見つからないかもしれない」という恐怖と戦うことになります。そのようなことが多発すれば、落ち着いて仕事に取り組むことは難しいです。

かつてヒットした「気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ(リズ・ダベンポート 著)」という本では、平均的なビジネスパーソンは探し物で年間150時間も浪費しているとしています。平均であってもそうなのですから、とりわけ片付けが苦手なタイプは、それ以上のタイムロスをしていることになるでしょう。

余計なものに反応してミスを誘発してしまう

物を片付けておかないと、やりかけの仕事に関する書類などがふと目に入ることがよくあります。そうなると、筆者の経験上、今やっている仕事から外れて、やりかけの仕事の方に手を付けてしまうことが非常に多くなります。

そもそも、ADHDの特性の1つとして、注意力散漫というものがあります。注意がそれないように頑張って集中できれば問題ないのですが、意志の力で集中し続けるのは、特にADHDの特性のある人にとっては至難の業です。

会社員時代の筆者も、名刺の発注対応をしていたにも関わらず、ふと目に入った補充用の社内備品が気になって補充しにおこなってしまい、名刺の記載を満足にチェックする時間がとれず焦って誤植を見逃したりしていました。このように、やりかけの仕事からまた他のやりかけの仕事に次々と興味が移ってしまい、全部中途半端になって締切に遅れたり、遅れそうになって焦ってミスをしてしまったり、そもそも集中力が削がれた状態で作業をしてしまって失敗をしてしまったりするのです。

逆に何も動けなくなる

片付けができないと、多くの物が散乱・山積してしまい、いっぺんにたくさんの物が目に入ってくることになります。すると、「もう無理」「自分では処理できない」と、優先順位をつけて仕事に取り組むことができなくなりがちです。

筆者も、机の上にうず高く積まれた書類のタワーを前に、なすすべもなく時が過ぎていった経験があります。高さにして数十センチにもなったその書類タワーは、それぞれが過去引き受けた仕事に関する書類ばかりです。しかも、おそらく一番下から順番に締切が早いのです。そう考えると、触れるのも怖くなり、結局何も動けなくなるのです。

部署内で「あれどうなった?」と騒ぎが発生して、恐る恐るタワーの下から書類を引っ張り出すと、締切を過ぎた、騒ぎの原因の書類が出てきてしまう。そんな経験を筆者は何度もしてきました。

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