発達障害ある方はストレスを感じやすい?~原因と対策を解説~

「この仕事、ちゃんと締め切りまでに終わらせられるかな…」「あの人ちょっと苦手だけど、仕事ではうまく付き合っていかなきゃ…」「また失敗して、上司から怒られたら嫌だな…」

社会に出ると誰しも何らかのストレスを抱えながら生きているものですが、特に発達障害のある方は、その特性からストレスを感じやすい傾向があると言われています。

健康で長く働いていくためには、ストレスをうまくコントロールすることが欠かせません。今回は発達障害のある方がなぜストレスを感じやすいのか、その原因と対策を解説します。

1. 発達障害のある方がストレスを感じやすい原因

発達障害とは、先天的な脳機能の障害によって生活・仕事の環境や人間関係にミスマッチが起こることで、生きづらさが生じる障害です。

社会人として働き始めると、責任が増え人間関係も広くなるため、例えば以下のような場面で発達障害の特性による困難さがミスマッチを起こしてストレスを感じやすくなります。

  • 人とのコミュニケーションが苦手 → 職場での人間関係づくりがストレスに
  • 忘れものなど不注意によるケアレスミスが多い → 上司から注意される回数が増えてストレスに
  • 感覚過敏によって目や耳からの刺激を苦痛に感じる → 通勤中やオフィスの環境は簡単に変えることができないためストレスに

また発達障害のある方は、脳の中で抑うつや不安に関連する部分に特徴があり、生物学的にストレスへの耐性が弱いという研究結果*もあります。

*参考:就業経験のある発達障害者の 職業上のストレスに関する研究(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター、2018年4月)

発達障害は「社会性の障害」と言われており、周囲の環境によって困難が生じることがあります。発達障害の特性によって周囲とうまくいかず、ネガティブな経験が積み重なり日常的にストレスにさらされることで「二次障害*」を引き起こすこともあるので、注意が必要です。

*参考:【事例紹介】発達障害による「二次障害」とは?原因と対処・予防法は

 

2. 発達障害がある方のためのストレス対策

大人になり社会に出た後は、ストレスを感じやすい場面も多くなります。ストレスをうまくコントロールしながら長く働くためには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。

2-1. 自分の特性を理解する

「発達障害」と一口に言っても、障害の特性や今おかれている環境は人それぞれです。発達障害にはどのような特性があるのか。今の環境の中でどのようなところに困難さがありストレスを感じやすいのか。まずは自分の障害について理解することが、ストレス対策の第一歩です。

自分の障害の特性を理解すれば、おこなうべきセルフケアや、周囲に求めるべき支援の内容も分かりやすくなります。以下のページで発達障害の特性について解説していますのでご参照ください。

また国の運営する各種サイトでも、発達障害の特性理解に役立つ資料が公開されていますので併せてご参照ください。

「一生懸命がんばれば何とかできる」にも要注意

特性に対するセルフケア(自分で自分の面倒を見たりいたわったりして、自己管理すること)ができている方や、発達障害の診断を受けるまでには至っていない「グレーゾーン」の方であっても、ストレスのケアには注意が必要です。なぜなら周りの環境に合わせるために対策したり我慢したりすること自体が、ストレスの原因となっている場合があるからです。

筆者の事例をご紹介しましょう。

筆者はASDの診断を受けており、人とのコミュニケーションが苦手でいわゆる“空気が読めない”タイプです。しかし実際の仕事では「私は空気が読めませんので、みなさんヨロシク!」と宣言するわけにはいきません。空気が読めない分を他の情報で補うよう努めています。

  • 周りの人の表情・声のトーン・ちょっとしたしぐさなどを注意深く観察する
  • コミュニケーションがスムーズになるよう、誰かと話をするときは相手の目を見る、相づちを打つなどを意識する
  • 直接の会話が苦手な分、メールやチャットでのテキスト・コミュニケーションでは気を配る

言ってみれば「空気を読む」というセンサーが働かない分、他のセンサーを代わりに使って何とかやりくりしている、という感じです。

自分の特性を理解し上記のような対策をするようになってから、人とのコミュニケーションで大きなトラブルはなくなりました。しかし人と長時間接すると、とても大きな疲れを感じます。特にミーティングや商談が連続してあった後などは、しばらく放心状態で動けなくなってしまうこともあります。

がんばって対策をしよう・周囲に合わせようとしている方の場合、「苦手や困難さはあるが、一生懸命がんばれば何とかできる」という状態がずっと続くことになります。

このような状態は周りから見ると大きな問題がないように見えても、当の本人は「周囲に合わせるために、実は他の人の何倍もエネルギーを使っている」ことになるため、ストレスをためすぎないよう注意が必要です。

筆者の場合は人と接するときの疲労対策として、「ミーティングの後は休憩時間もあらかじめ予定に入れておく」「社外の人との打ち合わせはより大きなストレスがかかるので、1日2回以上おこなわない」ようにしています。

2-2. 生活習慣を整える

基本的なストレス対策として「適度な運動をする」「三食しっかりとご飯を食べる」「十分な睡眠時間を取る」など、生活習慣を整えることはとても大切です。特に「睡眠」については、若くて健康な人であっても、睡眠不足がたった二日続いただけで体内のホルモン分泌や自律神経機能に大きな影響が出ると言われています*。

* 参考:睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

「生活習慣を整えましょう」という話を見聞きしたことがある方は多いと思いますし、そんなことはよく分かっていると思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし発達障害のある方の場合、生活習慣の乱れが原因で仕事の勤怠が安定せず、結果として仕事が長続きしないというケースもあります。この後にもいくつか対策をご紹介しますが、すべての対策の基礎として、まずは「今の生活習慣が乱れていないか」「生活習慣を整えるためにできることはないか」を考えてみることが大切です。

参考例:睡眠時間を先に確保する

一例として、筆者が実際に生活習慣を整えるためにおこなっている対策をご紹介します。

筆者は1日の予定を立てる際、最初に睡眠時間から予定を確保してスケジュールを組み立てるようにしています。睡眠時間の目標は1日7時間なので、まずは夜23:00〜6:00までを睡眠時間としてGoogleカレンダーに入れ、そこから逆算して他の予定を入れていきます。

  • 【ある日の予定の例】
  • 23:00 就寝
  • 22:30 ベッドに入る
  • 22:00〜21:00 洗濯、明日の準備など
  • 21:00〜20:00 子どもの宿題を見る
  • 20:00〜19:00 夕食、食事の後片付け
  • 19:00〜18:30 子どもを風呂に入れる
  • 18:30〜18:00 仕事の片付け(※リモートワークのため通勤時間はなし)

このように「23:00に寝る」ところから逆算していくと、18:00には仕事を終えなければならないことが分かります。

仕事が忙しかったりプライベートの時間が取れなかったりすると、つい睡眠時間を削ってしまいがちです。しかし寝る時間が短いと翌日の日中に眠くなってしまい、昼間に予定していた作業が遅れる → また睡眠時間を削る…という悪循環になりがちです。

もちろんいつもすべてが予定どおりに進むわけではありません。仕事が忙しく残業しなければならなかったり、突発的なトラブルで予定が狂ったりすることもあります。その場合でも睡眠時間を削るのは最終手段にして、他の部分でできる限り調整するようにしています。

2-3. 特性に対するアプローチをトレーニングする

発達障害の特性に対してアプローチする方法を学ぶことで、ストレスを軽減できる場合があります。

例えばASDのある方は、「シングルレイヤー特性」によってものごとの裏側の想像がしづらく、見たままに受け取ってしまうことがあります。これに対してリフレーミングというアプローチ法では、自分に起きた出来事を別の視点から捉え直すことで、出来事から受ける感じ方が変わり、前向きに考えることができるという効果があります。

別の例としてADHDのある方は、「衝動性(行動のブレーキの利かなさ)の特性」によって何か怒りを感じるような場面に遭遇した際、自分の怒りをそのまま相手にぶつけてしまうことがあります。これに対してアンガーマネジメントというアプローチ法では、「自分は今、怒りを感じている」という状態に気付くことからスタートし、怒りをコントロールしたり、怒りを増幅させるストレスをためこまないようにしたりする方法を学ぶことができます。

特性に対するアプローチ法があることを知っているのといないのとでは、大きな差が生まれます。トレーニングして少しずつ身に付けていくものもありますので、長期的に取り組んでいくことが大切です。

公的な障害福祉サービスである就労移行支援事業所では、特性に対するアプローチ法のトレーニングを受けられるところもありますので、利用を検討してみるのも良いでしょう。就労移行支援事業所について、詳しくは以下の記事もご参照ください。

2-4. 環境を調整する/合理的配慮を求める

発達障害は脳の特性と、生活・仕事の環境や人間関係にミスマッチが起こることで、生きづらさが生じる障害です。そもそもミスマッチの原因となっている環境を調整することも、健康的に長く働いていく上ではとても重要です。

例えば感覚過敏への対策として、席の場所や照明などを変えたりするのも環境の調整だと言えます。

ただこうした調整には周囲の理解が必要な場合も多いので、セルフケアだけでは限界もあります。周りからの支援が必要な場合には、会社に対して合理的配慮の相談をすることも検討しましょう。合理的配慮について、詳しくは以下の記事もご参照ください。

より長期的には、自分の適性にあった仕事環境になるよう、社内での異動や別の会社へ転職することを検討する必要もあるかもしれません。

ただしやみくもに異動や転職すればいいというものではなく「自分にはどのような特性があり、どのような環境であれば生きづらさ・働きづらさが改善されるのか」「どのような目的を持って仕事をし、どんな将来像を描きたいのか」をしっかりと見定めてからおこなう必要があります。

自己分析や業界研究の方法など、就職・転職活動の始め方については以下の記事で解説していますので、併せてご参照ください。

 

3. 一人で解決することが難しいときには

「2-1. 自分の特性を理解する」でもご紹介したように、発達障害の特性による苦手や困りごとは十人十色ですので、まずは自分の障害のことを正しく理解することが重要です。

しかし客観的に自分を見ることは障害の有無にかかわらず難しいものですし、障害に対する深い知識も必要です。自分一人で悩むよりも専門家の手を借りた方が良いでしょう。

そんな方々のサポートをおこなっているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。

就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業)「2-3. 特性に対するアプローチをトレーニングする」で解説したように、特性に対するアプローチ法を学ぶこともできます。

就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。

「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。

ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。

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執筆者

藤森ユウワ(ライター・編集)

ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。

これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。

子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。

36 歳で ADHD・ASD と診断される。

診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。

誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。

さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。

自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。

記事監修北川 庄治(デコボコベース株式会社 最高品質責任者)
  • 一般社団法人ファボラボ 代表理事
  • 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会 評議員
  • 公認心理師
  • NESTA認定キッズコーディネーショントレーナー
  • 発達障害ラーニングサポーター エキスパート
  • 中学校教諭 専修免許状(社会科)
  • 高等学校教諭 専修免許状(地理歴史科)
東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。

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