「仕事がうまくいかなくて転職したいんだけど、良さそうな仕事が見つからなくて…」
自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受けた方や「自分はASDかもしれない」と感じている方の中には、そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
書籍やインターネットの情報では「ASDのある方に向いている仕事」が紹介されていることがあります。しかし紹介されている仕事がいまいち魅力的に見えなかったり、「本当にできるかどうか心配だ」と感じたりしたことはないでしょうか。
今回は「ASDのある方が、充実した仕事人生を歩むためには、どんな仕事を選べばいいのか」について解説します。これから就職や転職を考えている方の参考としてご覧ください。
なお「ADHDのある方に向いている仕事」の解説は、以下の記事をご参照ください。
ADHDのある方に向いている仕事〜実践的な仕事の選び方〜
ASDの特性とは
向いている仕事を分析するために、まずはASDの特性が、実際の生活にどのように影響するのかを確認しておきましょう。
ASDとは、対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害であり、脳の特性として次の3つがあると言われています。
- ・シングルフォーカス特性 : 一度に注意を向けられる範囲が狭くなる。興味関心の幅が狭くなりがち。
- ・ハイコントラスト知覚 : 物事を「白か黒か」「全か無か」など極端な捉え方をしがち。曖昧な捉え方や、さまざまな物事を「微調整」することが難しくなる。
- ・シングルレイヤー思考 : 一度に一つの情報しか処理しにくい。複雑な状況の理解が難しく、明記されていないルールを自然と読み取ったり、物事の「裏」を察したり、といったことが苦手になる。優先順位がつけにくくなる。
(引用元:自閉症スペクトラム障害(ASD)|大人の発達障害とは)
ASDの特性による苦手
このようなASDの特性により、仕事をする上では以下のような「苦手」が見られることがあります。
- ・場の雰囲気を読むことが苦手
- ・あいまいな表現を理解できない
- ・こだわりが強く、融通がきかない
- ・想定外のことに対処することが苦手
- ・フローやルールが変更されると混乱する
- ・複数の作業を同時並行でおこなうことが難しい
これらの苦手があることから、ASDのある方は「人とのコミュニケーションに困難さを感じる」というケースが多くなります。
私たちの仕事や日常生活において、人とのコミュニケーションをなくすことは現実的にはなかなかできません。「特性による苦手なことが分かっているのに、生活する上で避けて通ることが難しい」というところに、ASDの特性による困難さの特徴が表れています。
ASDの特性による強み
一方で、ASDの脳の特性が仕事における強みとなって発揮されることもあります。
例えばイタリアの芸術家であるレオナルド・ダ・ヴィンチ。一説によると彼もまたASDだったそうですが、特定のものごとに異常に執着したり、没頭したりするような人物だったと言われています。彼が興味を抱き没頭する領域は芸術にとどまらず、医学・建築・天文などさまざまな分野へと向けられました。それが芸術にも生かされ、後世に残るさまざまな作品を生み出すことへとつながりました。
このように、ASDの脳の特性が長所となって、
- ・正しい手順やルールを守ることができる
- ・細かな違いやミスに気づくことができる
- ・興味関心のあることに没頭できる
- ・論理的な思考を持っている
- ・独創性や発想力がある
…といった強みへとつながるケースもあるのです。では、このような強みを活かせる職種とは、いったいどういうものなのでしょうか。
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