筆者も発達障害の当事者として、精神障害者保健福祉手帳の3級を取得しています。しかし、実際に申請〜取得をしてみて、「もっと、こうしておけば良かった」と感じることがありました。 そんな失敗談や、筆者が感じたことを、しくじり先生形式でご紹介します。
4. 障害者手帳「しくじり先生」〜実際に障害者手帳を取得した当事者の体験談〜
しくじり①:「自分にとって必要なものか」をよく考えず、必要なときに持っていなかった
私は、障害者手帳を取得することに抵抗がありました。
大人になって発達障害のことを知るまで、「生きづらいのは、自分の努力が足りなかったり、生まれ持った性格のせいだ」と思っていました。そのため、障害者手帳を取得することで「あなたは、今日から障害者です」と言われるような、そんな抵抗感を感じたのです。
障害者手帳を申請できるだけの期間はたっていたものの、申請は行わないままでした。しかし、就職先を探していたときに、そのことを後悔するエピソードが起こります。
障害が原因で勤めていた会社を辞め、再就職先を探していた私に、友人が「うちの会社で障害者求人を行っているから、人事へ推薦してもいい」と声をかけてくれたのです。
友人が勤めていた会社は、歴史があり、経営も安定していました。そのような企業の障害者雇用で働くことができれば、「障害への配慮を受けながら、安定して働くことができる」という可能性がありました。
しかし、障害者手帳を持っていなければ、どんなに推薦してもらったとしても、障害者求人に応募することはできません。結局、手帳の取得は間に合わず、友人の厚意を受け取ることは叶いませんでした。
障害者であると同時に一人の社会人でもある以上、生活のために働くことは避けては通れません。障害と付き合いながら働いていくことの選択肢を増やすという意味では、障害者手帳をもっと早くに取得しておけば良かったと感じたエピソードでした。
しくじり②:情報を集めることはしたが、誰かに相談することはせず、一人でずっと悩んでいた
発達障害と診断されたあとも、私は誰にも、自分の将来のことを相談しませんでした。
診断後、図書館やインターネットで色々と調べました。自治体やハローワークの担当窓口にも話を聞きに行きました。
しかし、窓口では手続きの方法を聞いただけで、支援員の方に悩みを話したり、これからどうすれば良いのかアドバイスをお願いすることはしませんでした。
情報を集めることはとても一生懸命やっていたのに、自分がこれからどうすれば良いのか相談することは、誰にもしていなかったのです。
もちろん、通院していたクリニックの先生は話を聞いてくださいます。しかし、お医者様は治療の専門家ではあっても、仕事や生活のこと・将来のことを一緒に考えてくださる専門家ではありません。
受験する学校を選ぶ、就職・転職活動するといったときに、自分の進路や将来に悩んだ経験をお持ちの方も多いと思います。「自分の過去を振り返り、将来のことを考える」ということは、障害の有無にかかわらず難しいことです。
ましてや、思い出したくもない辛い過去を振り返り、さまざまな制度の中から自分に必要な支援を探すことは、自分一人ではどう考えても限界があります。
もしも、もっと早くどこかで相談していたら……しくじり①でご紹介したような「必要なときに手帳を持っていなかった」ということもなかったかも知れません。
しくじり③:更新を忘れて手帳が失効してしまった
うっかり更新の手続きを忘れて手帳が失効してしまい、それまで受けていた支援制度を受けられなくなってしまいました。
「1-4. 取得した精神障害者保健福祉手帳は、更新手続きが必要か?」にてご紹介したとおり、精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新手続きが必要です。
私が住んでいる自治体では、更新手続きの案内などは送られてきません。手帳を取得した際にも「更新の案内は送っていないので、手続きを忘れないように」と注意を受けていました。
しかし、2年という期間は、〆切を覚えているにはあまりに長すぎました。うっかり更新を忘れて手帳が失効してしまい、再発行の手続きを取ることになってしまったのです。
私は現在、個人事業主として働いているため、仕事に関する直接的な影響(障害者雇用等)はありませんでしたが、その年の確定申告で「税金の障害者控除手続き」が行えず、控除を受けることができなくなってしまいました。
もし障害者雇用で働いていて、手帳の更新を忘れてしまったら……勤務先にもいろいろと、手続きの面倒をかけてしまうことになります。
次回の更新を忘れないよう、現在はスマートフォンのリマインダーアプリと、カレンダーアプリに2年後の更新時期を登録して、忘れないように工夫しています。
まとめ:実際に障害者手帳を取得して
最初は、漠然とした不安感から手帳の取得をためらっていましたが、実際に取得してみて、私自身は「良かった」と思いました。
障害者雇用で配慮を受けながら働かせていただいたり(※)、税金の障害者控除などの支援は本当にありがたく、生計を立てるためにとても助かっています。(※現在は障害者雇用ではなく、個人事業主として仕事をしています。)
大人になってから発達障害であることが分かった当事者にとって、障害を受け入れることはとても大変です。仕事はどうするのか、家族はどうなるのか、不安の種は尽きません。一人で抱え込み、押しつぶされそうに感じることもあります。
しかし、困っているときに助けてくれる制度や相談できる窓口は、私たちの身近に意外とたくさんあります。
どう使うかは自分次第ですが、本当に困ったときには誰かを頼ることも必要なのではないかと思います。
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執筆者
藤森ユウワ(ライター・編集)
ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。
これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。
子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。
36 歳で ADHD・ASD と診断される。
診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。
誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。
さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。
自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。