【大人の発達障害(ADHD)の特性対策】朝の準備をテンプレ化!ワーキングメモリーの弱み&衝動性対策で遅刻を防止

ADHD にとって「朝の時間」は苦労の連続

前回の はたらくHACK では、大人の発達障害、特に ADHD(注意欠如・多動性障害)の 2 つの特性(①ワーキングメモリーの弱さ、②衝動性)が、「遅刻」の原因となっているケースが多いことをご紹介しました。

ただでさえ慌ただしい朝の時間帯、やらねばならない準備がいろいろある中で、特にたいへんなのが「着ていく洋服選び」です。

イギリスの大手小売事業者の調査(英語記事)によれば、洋服選びには平均で毎朝 17 分の時間がかかっているそうです。記事をお読みの皆さんのなかにも

「会社に着ていく洋服選びに時間がかかって、出発時間に遅れてしまった」
「ワイシャツにアイロンが掛かっていない、ネクタイが見つからない……と朝に慌ててしまった」

というご経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、毎日着ていく洋服を「テンプレート化」して、朝の準備をスムーズに行うための HACK をご紹介します。

ポイント①:テンプレート化することで衝動性をカバー

「テンプレート」とは、一般的には文書の「ひな形」のことを意味します。Word や Excel などでテンプレートをもとに文書を作る、メールで挨拶文や署名をテンプレートに登録している、という方も多いのではないでしょうか。

「あらかじめ用意された定型的な文書」があることで、一から自分で考える必要がなくなり、効率的に文書を作成することができます。

これと同じように、着ていく洋服もあらかじめテンプレートを作っておくことで、毎朝一から洋服を選ぶ必要がなくなり、準備を効率よく進めることができます。

今回は「スーツで仕事に行く」ケースを例に見てみましょう。スーツに着替えようとする場合、以下の6つのアイテムの組み合わせを考える必要があります。

  1. ① ジャケット
  2. ② パンツ
  3. ③ シャツ
  4. ④ 小物(ネクタイ、ベルトなど)
  5. ⑤ 靴下
  6. ⑥ 靴( 革靴やパンプス)

①ジャケットと②パンツはセットアップになっていることもありますが、③シャツや④小物は何種類か持っていて「その日の気分で組み合わせている」ことが多いのではないでしょうか。

スーツに着替える、とひと言にすると単純なように聞こえますが、実はこれだけのアイテムの「組み合わせ」を考えなければなりません。さらに「昨日着ていた服とかぶっていないか」「洗濯やアイロンがけはできているか」などの状況も加味したうえで「今日身に付けるべきもの」を決める必要があります。

ADHDにとって朝の準備は大変です

そこで、これら 6 つのアイテムの組み合わせをあらかじめ「テンプレート」として月曜〜金曜まで 5 日分作っておき、朝は何も考えずに「今日の曜日のテンプレートを選ぶだけ」にします。

まず、見た目にもっとも印象の強い①ジャケットと②パンツ、そして⑥靴は、2 セット用意します。2 セットを1 日ずつ交互に着回すことで「毎日同じ服を着ている」感がなくなり、スーツの生地や靴の革も傷みにくくなります。

そして、③シャツ ④小物 ⑤靴下は平日 5 日分、つまり 5 セット用意します。上着が 2 種類でも ③シャツと ④小物が変わるだけで見た目の印象はまったく変わりますので、「ちゃんと身だしなみに気をつかっている」という感じを演出することができます。

仕事着をテンプレート化して朝の準備をスムーズに

ここでのポイントは、お金をケチらず、③シャツ ④小物 ⑤靴下 は必ず平日 5 日分を用意するということです。

よくある失敗は「シャツを 5 枚も買うのはもったいないから、2〜3 枚を洗濯しながら着回す」というものです。着回ししようとした場合、毎日洗濯やアイロンがけを行わねばならず、もし忘れてしまった場合は組み合わせが変わってしまいます。

平日はなかなか忙しいですし、体調によっては「今日はちょっと家事をやる気力や体力がない……」という日もあります。洗濯やアイロンがけは休日にまとめて行うようにし、平日は余計な気力・体力を使わないようにすることがポイントです。

「この曜日は、このテンプレートを着ていく」と決めておくことで、クローゼットを開いたときにアレやコレやと衝動的に考えてしまうことがなくなり、スムーズに着替えを行うことができます。

ポイント②:事前準備 10 割で、朝に余計な集中力を使わない

忙しい朝に備えるためには、事前準備が何よりも大切です。

先ほど「シャツ・小物・靴下を平日 5 日分用意する」という話の部分でもご紹介したように、準備は休日にまとめて行うようにします。

シャツが 5 枚あれば、洗濯・アイロンがけするのは休日にまとめて済ませておくことができます。一気に済ませておく方が効率が良いですし、何より忙しい平日の時間を節約することができます。

曜日ごとのテンプレートを決めたら、すべてセットでハンガーにかけておくと、朝すぐに取り出せて便利です。

事前準備を工夫すれば忙しい朝も慌てずに済みます

そして、アイテム選びをちょっと工夫することで、さらに洋服選びを効率化することができます。

例えば、シャツは「形態安定」や「ノーアイロン」と書かれた商品を買うようにすれば、そもそもアイロンがけをしなくても済みます。

奇抜な色や柄モノを買ってしまうと、テンプレートを考えるときに難しくなります。シャツは無地の白や薄い色・柄モノ、ジャケットも無地の黒・濃紺・グレーなどベーシックなアイテムを選んでおくと、組み合わせがしやすく便利です。

スーツを着る方の場合、アイテムを何パターンも持つのは金銭的に……というお悩みがある方もいらっしゃるかと思います。お手頃なスーツやシャツ、ビジネス向け服飾小物を取り扱う「ツープライススーツ店」はご存じでしょうか?こちらであれば、ベーシックなアイテムを比較的リーズナブルに揃えることができます。

ツープライススーツ店を活用する手もあります

ツープライススーツ店では「シャツ ● 枚セットで ▲▲ 円」というようにセット販売をしていることが多く、平日 5 日分のセットをお得に揃えることができます。

最近では新しい生活様式の普及によりスーツを着る機会が減っていますが、こうしたお店は「ビジネスカジュアル」の商品も揃っており、スーツほど堅苦し過ぎず、私服ほどカジュアル過ぎない、バランスの取れた仕事着を選ぶことができます。

洋服選びは楽しいものですが、仕事に着ていく服はセンスや個性よりも「清潔感」が何よりも大事です。スーツ店の Web サイトやカタログに載っているコーディネートはベーシックな組み合わせが多いので、参考にすると失敗が少なくなります。

まとめ:集中力を無駄に使わないことが大切

アップルコンピュータ(現:アップル)の創業者で、Mac や iPhone を世に送り出したことでも有名なスティーブ・ジョブズ。彼もまた、発達障害であったと言われていますが、ジョブズは仕事に全神経を集中するために、同じ洋服(黒のタートルネックとデニムパンツ)を何着も持っていて、洋服選びに余分な集中力を使わないようにしていたそうです。

洋服に限らず、「何かを選ぶ・決める」ということは、それだけ集中力を消費することだとも言えるでしょう。

体力と同じように、私たちの集中力(気力)もまた有限です。皆さんが本当にやるべきことに集中力を使えるように、テンプレート化の HACK をぜひお試しください。

ディーキャリアは、大人の発達障害がある方の「はたらく」をサポートします

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就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。

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執筆者

藤森ユウワ(ライター・編集)

ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。

これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。

子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。

36 歳で ADHD・ASD と診断される。

診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。

誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。

さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。

自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。

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