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「がんばれば、何とかできる」に要注意!〜過剰適応とは〜

発達障害の特性対策、がんばり過ぎていませんか?目に見えづらい障害のため、自分も周囲も「無理」に気づかず、ストレスや疲労が溜まり「適応障害」の状態になることがあります。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
あなたの対処法、もしかして、がんばり過ぎていませんか? 発達障害の特性について学び、自分自身で対処をおこなうことは大切です。しかし対処法が適切ではなかったり、無理してがんばり過ぎたりすると“過剰適応”の状態になり、新たなストレスを生んでしまうことがあります。そのまま放っておくと自分でも気づかないうちに疲労が蓄積されて、二次障害を引き起こしてしまうことにもなりかねません。 今回は、過剰適応にならないようにするための注意点についてご紹介します。 なお発達障害のある方のストレス対策については、過去のコラム記事もご参照ください。 参考:発達障害のある方はストレスを感じやすい?~原因と対策を解説~ [toc] 1. 過剰適応とは、周りに合わせようと無理をし過ぎている状態 1-1. 過剰適応とは 「上司からの期待に応えるために、睡眠時間を削って残業した」「友だちの機嫌を損ねないように、無理なお願いをしぶしぶ引き受けた」——皆さんも日常生活の中で、多かれ少なかれ「自分以外を優先した経験」があるのではないでしょうか。 このような「自分よりも周りを優先すること」が、度を超えて行き過ぎてしまった状態が“過剰適応”です。 気を遣って周りに合わせることは大切ですが、自分を押し殺した状態が長く続けば当然ストレスがたまってしまいます。特に、大人になると「職場において、自分より会社や上司の都合を優先する」「家庭において、自分より家族や親戚の都合を優先する」というように、自分の感情を抑えなければならないシーンが増え、過剰適応に陥る可能性も高くなります。 過剰適応で気をつけねばならないポイントは、「本人は無理をしている状態だが、周囲はそれに気づきづらい」ということです。 他人から見ると問題が起こっていないように見えても、その裏では本人が気持ちを抑え込んだり、自分なりに対処したりして「問題が起こらないようにがんばっている結果、問題が起こっていないだけ」なのかもしれません。 そのような「がんばり過ぎの」状態は、言いかえれば「常に無理をしている状態」とも言えます。無理をしている状態が続けば当然、心身の負担になり、体調を崩してしまうことがあるのです。 1-2. 発達障害における過剰適応とは 発達障害のある方の場合、脳の機能に生まれながらの特性があり、その特性によって“苦手なこと”と“得意なこと”の間に大きな差が生じます。特に社会人になると、本来は特性によって苦手なことでも「周りに合わせて行動する」ことが求められるため、過剰適応に陥りやすいという問題があります。 例えば、ADHD(注意欠如・多動性障害)の「じっとしていられない」「落ち着きがない」という特性は、子どものころであれば周りから「それくらい元気な方がいい」と見てもらえることもありますが、社会人になると「公共の場所や職場では、大人なら当然、静かにするべきだ」という見られ方に変わります。 このように、子どものころは大丈夫だったことが、大人になって「社会的にNG」になることは珍しくありません。明確な説明がなく“暗黙の了解”で成り立っているようなこともいくつもあります。本人にとってみれば、「大人になったら、いきなりハシゴを外された」ような感覚であり、急に適応が求められることになるので、どうにかしようと無理してがんばることになってしまうのです。 しかし「無理してがんばって、どうにか対処していること」は、残念ながら周りから見てもよく分かりません。例えて言うなら、「マラソン大会で、一見みんなと同じペースで走っているように見えるが、実は一人だけ手足に見えない重りを付けて走っている」ような状態です。 もともと発達障害は“目に見えづらい障害”と言われており、苦手に対して無理をしていることに周囲が気づきづらく、さらに自分自身も「自分の限界を超えていること」に気づかないことも多いのです。 事例①〜うっかり忘れやケアレスミスが多い、Aさんの場合〜 Aさんは、ADHDの特性により「仕事で指示された内容をうっかり忘れてしまう」「書類を作るときに、細かな部分でケアレスミスが多い」という困りごとがありました。 前職ではそのことでたびたび上司から注意を受け、それがきっかけで転職することになったAさん。新しい転職先の会社では同じミスを繰り返さないようにしようと、以下のような対策をおこなうことにしました。 仕事で指示されたことを忘れないよう、常にペンとメモ帳を持ち歩いて、指示を受けた際には必ずメモを取るようにする タスク管理のアプリを使って、締め切りを忘れないようリマインドする 書類のケアレスミスをなくすため、作った後に時間を置いて二回チェックをする 対策をおこなった結果、うっかり忘れやケアレスミスを減らすことができましたが、もともと細かなことに気を遣うのが苦手なAさんにとっては、とても疲れてしまうやり方でもありました。苦手なことなので余計に時間がかかり、業務が忙しい時期には遅くまで残業することもありました。 ところが転職先の会社の人たちは、かつてのAさんの様子を知りません。今のAさんが問題を起こしていない裏で、どれだけ無理をしてがんばっているかなど、想像も付かなかったのです。 新しい会社にも慣れ、任される仕事が増えるにつれて、Aさんの疲れとストレスもどんどんたまっていき、とうとう限界を越えてしまいました。仕事に行くことができなくなったAさんは“適応障害”と診断され、休職することになってしまいました。 がんばりすぎたことが原因で過剰適応の状態に陥ってしまったために、“適応障害”という二次障害へとつながってしまったのです。 事例②〜空気が読めず、友だちとの人付き合いで苦労した筆者の場合〜 筆者の事例をご紹介しましょう。ASDの特性により、私は子どものころから場の空気が読めず、「友だちとの会話がうまく成り立たない」という困りごとがありました。具体的には、次のようなものです。 友だちから言われた冗談を真に受けて怒ったり、落ち込んだりする 何の話をしているのかが理解できず、「今、なんて言った?」と何度も聞き返す いきなり話を振られると付いていけず、とっさにした返事が、話の流れに合わない 冗談を言うような雰囲気でないときに冗談を言ってしまい、場の雰囲気を凍らせる 当然、私がそんな様子ですから、会話に入れてもらえないことが増え、徐々に仲間はずれにされるようになっていきました。私は何とかこの状況を打開しようと、以下のような対処法を考えました。 「話の流れが分からなくても、とりあえず相づちを打っておこう」 「イヤなことを言われても冗談かもしれないから、愛想笑いをしておこう」 「自分がこうだと思っても間違っている可能性があるから、口には出さないでおこう」 「うっかり失言をしてしまいがちだから、なるべく発言を控えよう」 このような対処のおかげで、会話はどうにか成り立つようになり仲間はずれにされることもなくなりました。しかしいつしか、友だちたちと遊んでいても「楽しい」と思うより、疲れを感じるようになっていきました。 自分でも気がつかないうちに、私は場の空気を読もうとして、相手の表情や言葉の抑揚、身ぶり手ぶりなど、常に細心の注意を払っていました。つまり「場の空気を読む」というセンサーが働かない代わりに、別のセンサーを最大パワーで貼り続けていたので、友だちとの会話に大きな疲れを感じるようになってしまったのです。 2. 過剰適応にならないために注意すべきこと 2-1. ストレスのサインを見逃さない 先ほどご紹介した筆者の事例のように「自分でも気が付かないうちに、がんばり過ぎて過剰適応の状態に陥ってしまう」こともあります。ストレスが爆発してしまう前に気づけるよう、ストレスのサインを見逃さないことが重要です。 例えば、企業におけるストレス・マネジメントでは「従業員を“ケチな飲み屋”に通わせるな」という標語があります。仕事において以下のようなサインが現れている場合、その従業員はストレスがたまっている可能性が高い状態なのです。 け:欠勤 ち:遅刻、早退 な:泣き言を言う の:能率の低下 み:ミス、事故 や:辞めたいと言い出す 出典:ケチな飲み屋サイン|新潟県立中央病院 発達障害のある方の場合、その特性により「自分がどれくらい疲れているか」に気がつけないケースも少なくありません。 ストレスのサインを見つけるために、チェックシートを作るのもおすすめです。例えば睡眠時間や食事の回数、ストレスや体の疲れを感じる度合いなどを毎日数字で記録することで、自分の状態を客観的に見ることができます。 また厚生労働省の運営する以下のWebサイトでは、ストレスや疲労の度合いをセルフチェックできるコンテンツが用意されています。もちろんセルフチェックだけで安易に判断することはできませんが、自分の状態を客観的に知るための参考として活用できます。 参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト なおADHDの方の場合、特性により「日々忘れずに記録をつけること」や「チェックリストに回答すること」自体が苦手な方も少なくありません。そのような場合には、スマートウォッチやスマートフォンの“自動で記録を取ってくれるアプリ”を活用するのもおすすめです。 普段の生活の中で体や心が発するサインを見つけたら、一度立ち止まって、ストレスがたまり過ぎていないか考えてみることが大切です。 2-2. 自分と周りとのバランスを取る 周りに気を遣うことも大切ですが、自分で自分を尊重することもまた、健康に生きるためには欠かせません。 社会の中で生きていく以上、自分の都合ばかりを優先するわけにはいきません。しかしそれは自分だけでなく、周りの人も同じであり、本来はお互い様であるはずです。相手を尊重するのと同じくらい自分のことも尊重して、ときには 誰かに誘われても、自分一人の時間を大切にする 「誰かから頼まれたこと」ではなく「自分がやるべきこと」から先にやる 頼まれても気が進まないことは断る …といったこともできるよう、自分と周りとのバランスが取れるよう、コミュニケーションすることが大切です。 とはいえ、発達障害の特性によって「そもそもコミュニケーションが苦手で、適切な伝え方が分からない」という方もいらっしゃるでしょう。(例えば、気が進まないことを断ろうとして「私はやりません!」と強く言ってしまい、相手から反感を買ってしまう、など。) そのような場合は、まず「コミュニケーションが苦手なこと」を相手に伝えたうえで、自分の伝え方が適切だったかどうかフィードバックをもらえるよう依頼することで、不安が解消できるかもしれません。 3. 自分と周りとのバランスを取り、健康で長く働いていくためには 自分と周り、両者のバランスを取ったコミュニケーション方法は、“アサーション(アサーティブコミュニケーション)”と呼ばれています。アサーションをおこなうためにはいくつかの方法がありますが、その一つが“アイメッセージ”(I messege)です。 アイメッセージとは、会話をするときに「あなた(You)」ではなく「わたし(I)」を主語に言いかえて話す、というものです。 アイメッセージの例:相手の意見に反対である場合 「あなた」が主語:あなたの意見は、間違っています。 「わたし」が主語:わたしの意見は、あなたとは違います。 このように「わたし」=自分を主語にして話すことで、自分の気持ちが明確になったり、相手のせいにしない会話ができたりするようになります。 発達障害の特性による生きづらさへの対策とは、「注意する」「心がける」といった意識の問題だけではありません。意識も大切ですが、具体的な対策によって改善できることも、たくさんあるのです。 ただアサーションのような対策方法は、本を読んだだけ・一度や二度練習しただけで身に付けられるものではなく、何度も反復して練習することが欠かせません。自分一人では習得が難しいものもあるので、専門的な機関でトレーニングを受ける方が良いでしょう。 そのような、発達障害の特性に対する専門的なトレーニングを提供しているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 4. 参考文献 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|厚生労働省 発達障害専門プログラム マニュアルⅡ|平成25年度/26年度 厚生労働省障害者総合福祉推進事業|昭和大学発達障害医療研究所 「発達障害の子どもにみられる不登校」 - 埼玉県 過剰適応とは――アサーションで自他尊重の考え方が大切に | 日本の人事部 健康経営 ケチな飲み屋サイン|新潟県立中央病院 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
男女で差がある?大人の発達障害、性別による違いとは

「発達障害の特性による困りごとが性別で違う?」そんな疑問について解説します。性別による「区別」ではなく「違い」を知ることで、特性理解が深まり対策が立てやすくなります。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
  • #限局性学習症(SLD)
発達障害は男性の方が数が多い——そんな話を聞いたことはありませんか。厚生労働省の情報サイトによると、例えば自閉症スペクトラム障害(ASD)の発生頻度は、男性が女性の約4倍であると言われています。 一方で近年の研究によれば、女性はその社会的な役割や立場が原因で、男性と比べ“発達障害の特性による困難さ”が見えづらいだけであり、困りごとを抱えている人の数は男性と変わらないのではないか、とも言われています。 そこで今回の記事では、発達障害が性別によってどのような差があるのかを解説します。 発達障害に限らず、「性別により分けて考えることは平等ではない」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし生き物としての“つくり”の違いや、生活における役割の違いは、私たちが人間社会で生きていくうえで避けては通れないものです。「区別する」のではなく「違いを知る」ことで、自分や相手の特性が理解できる、対策を立てやすくなる、といったメリットもあります。 この記事が「男性なんだから/女性なんだから、これくらいはガマンしなければ…」と感じている方の、お悩みを解決するヒントとなれれば幸いです。 補足:「大人の発達障害」という呼び方について 発達障害は生まれつきの障害ですので、「大人の発達障害」という名前の障害はありません。 ただ大人は「仕事や家庭などで、社会的な責任を背負わねばならない」「自立して生活しなければならない」などの理由で、子どものころと比べて、困りごとの現れ方や対策方法が大きく異なります。子どもの頃は困りごとを感じていなくても、大人になって働いたり一人で生活するようになったりして初めて困りごとが表面化した、という事例も少なくありません。 このことから、現代では「大人の発達障害」という表現が広く一般的に使われるようになってきましたが、これは「大人になってから発達障害になった」という意味ではありませんのでご注意ください。 [toc] 1. ADHDの男性と女性での違い それでは、まず注意欠如・多動性障害(ADHD)から男性と女性でどのような違いがあるのかを見ていきましょう。 1-1. ADHDの性別による違い:女性は「不注意優勢型」が多く、男性は「多動・衝動優勢型」が多い ADHDは、大きく分けて以下の3つのタイプがあると言われています。 ① 不注意優勢型:忘れ物が多い、締め切りに間に合わない、うっかりミスが多い、など ② 多動・衝動優勢型:じっとしていられない、落ち着かない、待つのが苦手、など ③ 混合型:①と②の両方の症状を持っている このうち女性は①不注意優勢型の人が多い傾向があり、男性は②多動・衝動優勢型の人が多い傾向があると言われています。そのため男性に比べ女性の方が、困りごとが表面化しづらいことが多いのです。 1-2. 女性は事務仕事や家事・育児で困りごとが起こりやすい 男女平等の観点から、性別による職業の差は少しずつなくなってきています。しかし「どの職業でも、男性と女性の割合がまったく同じ」というわけではなく、実際には性別による差があります。厚生労働省の令和2年の調査によると以下のような結果となっており、「女性のおおよそ3人に1人は事務職で働いている」ということになります。 ・女性でもっとも割合が高いのは、事務従事者(総務や経理などのバックオフィス業務や、営業事務、貿易事務など)で、29.1% ・男性でもっとも割合が高いのは、専門的・技術的職業従事者(研究者、医者、農業/工業技術者など)で、17.3% ところが事務職と、女性に多いと言われるADHDの「不注意優勢型」のタイプは、あまり相性がいいとは言えません。 例えば“経理事務”は、会社のお財布を管理する大切な仕事ですので、1円でも金額が間違っていてはならず、取引先への支払いや、納税の期限もしっかり守らねばなりません。ADHDの不注意優勢型の「締め切りに間に合わない」「うっかりミスが多い」といった特性は、マイナスに現れるケースがどうしても多くなってしまいます。 また女性の場合、仕事以外でも困りごとが起こるシーンがあります。それが家事・育児です。 こちらも若い世代を中心に夫婦で平等に分担する意識が高まっていますが、内閣府の令和元年の調査によれば依然として多くの家事・育児で、分担は「妻がやる」「どちらかと言えば妻がやる」方が圧倒的に多くなっています。 画像引用元:I-特-18図 家事・家庭のマネジメントの分担(夫婦回答計) | 内閣府男女共同参画局 このように、現代においても家事・育児を担当する割合は女性の方が多いのですが、これもADHDの不注意優勢型の特性と相性があまりいいとは言えません。 「家事を段取りよくこなせない」「予定を詰め込みすぎてしまう」といった困りごとがあるだけでなく、それが「家庭」という外からは見えづらい環境で起こるため、大人の発達障害であることに気付きにくいという問題もあるのです。 1-3. 男性は職場での人間関係で困りごとが起こりやすい 一方で男性の方が多いと言われるADHDの多動・衝動優勢型のタイプでは、職場における人間関係で困りごとが起こりやすくなります。 例えば自分の担当ではない仕事に衝動的に首を突っ込んだり、遠慮なく自分の意見を押し通そうとしたりすることで周囲とのトラブルが起こりがちです。 このような活動的な特性は“営業職”のように「行動力が必要な職業」ではプラスに働く場合もありますが、一方で細かな点に注意せず勢いでものごとを進めてしまいがちなため、「資料を作るときにいつも印刷部数や製本を間違える」「見積書を作るときに金額を間違える」などのケアレスミスが起こりやすくなります。 ADHDの多動・衝動優勢型の「じっとしていられない」「落ち着かない」といった特性は、子ども時代は「男の子はそれくらい元気な方がいい」と思われて見過ごされてしまうケースがあり、子どもの頃から対策のトレーニングができない、という問題もあります。 2. ASDの男性と女性での違い 次に自閉症スペクトラム障害(ASD)について、男性と女性でどのような違いがあるのかを見ていきましょう。 2-1. ASDの性別による違い:「男性が多い」と言われているが、まだよく分かっていない 先ほどご紹介したとおり、ADHDは「女性は不注意優勢型が多く、男性は多動・衝動優勢型が多い」という傾向があると言われています。一方ASDの場合、性別による差があるのかどうかは、まだよく分かっていません。 例えばこの記事の冒頭でご紹介した厚生労働省の情報サイトによれば「ASDの発生頻度は、男性は女性の約4倍」と解説されていますが、この数字は「(女性の場合は)社会的困難の現れが目立たず、過小評価の可能性もある」と付け加えられています。 またお茶の水女子大学・助教の砂川芽衣氏の研究によれば、女性の脳のつくりや社会生活の中での関係性・役割が、女性のASDを分かりづらくしていると考察されています。 2-2. 女性はASDの困りごとが原因で二次障害になりやすい ASDの女性の場合、困りごとの原因が発達障害であると気付きにくく、過度に自分を責めてしまい二次障害になりやすい、という問題があります。(二次障害については、以下の記事もご参照ください。) 参考記事:【事例紹介】発達障害による「二次障害」とは?原因と対処・予防法は 2-2-1. ASDの脳の特性は事務職との相性が悪いケースも ASDの脳の特性には、以下の3つがあります。 ・シングルフォーカス特性:一度に注意を向けられる範囲が狭くなる。興味関心の幅が狭くなりがち。 ・ハイコントラスト知覚:物事を「白か黒か」「全か無か」など極端な捉え方をしがち。曖昧な捉え方や、さまざまな物事を「微調整」することが難しくなる。 ・シングルレイヤー思考:一度に一つの情報しか処理しにくい。複雑な状況の理解が難しく、明記されていないルールを自然と読み取ったり、物事の「裏」を察したり、といったことが苦手になる。優先順位がつけにくくなる。 先ほどもご紹介しましたが、女性が働くことの多い“事務職”では、ASDの特性がミスマッチを起こしやすくなります。 事務職は「決められた作業を一人で黙々と処理する仕事」と思われがちです。もちろんそうした仕事もないわけではありませんが、実際は「周囲とコミュニケーションを取りながら、臨機応変に対応する仕事」の方が多いのです。 例えば“経理事務”の場合、一人で黙々と処理するのは「会計ソフトへの仕訳の入力作業」くらいで、残りは書類の提出を社内で催促したり、取引先に書類の内容を確認したりといった、コミュニケーションを取りながらおこなう作業がほとんどです。 そのため「臨機応変な対応ができない」「複数の作業を同時に進めるのが苦手」「相手が言ったことの裏が読めずコミュニケーションでトラブルが起こる」といった困りごとが起こってしまうのです。 2-2-2. 女性は社会の中での立場から、原因が発達障害であると気付きにくい しかしこうした困りごとで仕事を辞め、職を転々とすることになっても、女性の場合は「原因が発達障害である」と気付きにくい背景があります。 男性の場合、社会や家庭の中で“働き手”の役割を担っていることが多いため、「在職期間が短かったり転職を繰り返したりしていることは問題がある」と、自分も周りも気付きやすくなります。 ところが女性の場合、出産や育児などのライフイベントで仕事を離れる、夫の仕事の都合で短期退職するといったことが起こりやすいため、男性と比べると「在職期間が短かったり転職を繰り返したりしていても仕方がない」と容認されやすくなります。そのため、自分も周りも問題の原因が発達障害である可能性に気付きづらくなってしまうのです。 結果として、発達障害である可能性に気づけないため「仕事がうまくいかないのは自分の努力が足りないせいだ」という考えに陥りやすく、それが二次障害を引き起こすことにも繋がってしまうのです。 2-3. 男性もASDの困りごとが原因で二次障害になりやすい 先ほども述べたように、ASDは男性と女性で差があるかどうかは、まだよく分かっていません。女性の場合と同じく、男性の場合も仕事で「臨機応変な対応ができない」「複数の作業を同時に進めるのが苦手」「相手が言ったことの裏が読めずコミュニケーションでトラブルが起こる」といった困りごとが起こりやすくなります。 先ほど解説したように「女性の方が、問題の原因が発達障害であることが分かりづらい」とは言うものの、ASDの困りごとは周りから「本人の努力不足や、性格の問題である」と見られてしまうケースは少なくありません。男性も女性と同様に、二次障害に陥らないよう注意が必要です。 3. 自己診断せず、悩んだら専門機関に相談を 発達障害は「見えにくく、分かりにくい障害」と言われており、周りからだけではなく、自分自身でも「苦手」が理解しづらいことがあります。 今回ご紹介したように、性別によっても差があり、また社会的な関係性や役割によっても状況が異なるため、発達障害かそうでないかを判断することは簡単ではありません。 最近は発達障害かどうかを調べる「チェックリスト」のようなものがインターネットで公開されていることがありますが、こういったもので自己診断をせず、悩んだら専門機関に相談することが大切です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、無料の相談窓口を設置しています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
発達障害のカミングアウト、親しい人へする?しない?

発達障害の当事者の皆さんが「カミングアウト」を実際にどうしているのか、そして障害のことを理解してもらうためにどうすれば良いのかについて、当事者の方へのアンケートや、同じく当事者である筆者の体験談を交えてご紹介します。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
  • #限局性学習症(SLD)
「障害のことを、誰に、どこまで伝えるべきだろう」—— 家族や友人、恋人など親しい人たちに自分の障害のことを伝えるかどうかは、とても悩ましい問題です。 病院や専門機関は、第三者なので相談してもいいかなと思えます。職場に伝えることは、合理的配慮や障害者雇用に関わることなので必要だと割り切ることもできます。 しかし親しい人たちに対して伝えるかどうかは、それらとは少し事情が異なります。親しいからこそ「もしも関係が悪くなったり、理解してもらえなかったりしたらどうしよう」と不安になるのではないでしょうか。 最近では、著名人が自分に発達障害があることをカミングアウトする記事や動画などを見かけることも増えてきました。そこで今回は、発達障害の当事者の皆さんが「カミングアウト」を実際にどうしているのか、そして障害のことを理解してもらうためにどうすれば良いのかについて、当事者の方へのアンケートや、同じく当事者である筆者の体験談を交えてご紹介します。発達障害のことを親しい人に伝えるかどうか、悩んでいる方のご参考となれれば幸いです。(※「カミングアウト」とは、公にしていなかったことを開示する=周囲に伝えることです。) なお今回のアンケートによる調査には、11名の当事者の方にご協力をいただきました。この場をお借りして御礼を申し上げます。 [toc] 1. 誰に・どの範囲までカミングアウトする? 1-1. 家族には基本的に伝える 今回アンケート調査をおこなったところ、家族に対しては11名すべてが発達障害のことを開示しているという結果になりました。 家族の場合、病院への通院や支援機関・職場への相談の際に協力してもらったり、家庭での日常生活のなかで配慮が必要だったりしますので、障害を開示することが基本になるのでしょう。「隠し続けるよりも、カミングアウトした方が精神的に楽だから」という理由は、一緒に過ごす時間が長いからこそではないでしょうか。 「家族」に障害を開示した理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・自分の(障害の)ことを理解してもらいたいから ・配慮を求めたいから ・隠し続けるよりも、カミングアウトした方が精神的に楽だから ・自分以外にも、家族内に障害を持った人がいるから ・障害者雇用枠で就職することになり、家族への説明が必要だったから ・子どもの頃に診断を受けたので、そもそも家族が知っているから 筆者の場合、パートナーと、自分の親・兄弟に伝えています。 パートナーと親には、診断前は特に相談せず、診断をきっかけに会社を辞めることになったタイミングで話をしました。兄弟とはすでに別々に暮らしているため、診断から数か月たってから、会話のなかで自然に話した、という形です。 一方で親戚やパートナーの両親には伝えていません。 親戚とはあまり交流がなく、なにか支援をお願いするような関係ではないため、伝える必要がないと判断しました。逆にパートナーの親とは普段から交流がありますが、パートナーが伝えることを特に望まなかったため開示しませんでした。 1-2. 友人・恋人には、関わり方や親しさの度合いによって伝える範囲を決める 一方、友人や恋人に対しては11名中2名は障害を開示していないという結果になりました。また11名中5名は特定の相手にだけしているという回答でした。 必ずしもすべての人に伝えるのではなく、関わり方や親しさの度合いによって障害を開示する/しないを決めている方が多いようです。 「友人や恋人」に障害を開示した理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・自分の(障害の)ことを理解してもらいたいから ・配慮を求めたいから ・隠し続けるよりも、カミングアウトした方が精神的に楽だから ・発達障害は遺伝する可能性があるので、結婚を考えている相手に判断材料として知っておいてもらいたかったから ・以前から相談に乗ってもらっていたので、その流れで自然に診断を受けたことも伝えたから ・当事者のコミュニティで知り合った友人なので、隠す必要がないから ・直接会う友人の場合は、隠す必要がないと思っているから 「友人や恋人」に障害を開示していない理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・開示することに抵抗感があるから ・ネット上では(直接会わない=オフライン上での付き合いのある友人には)開示していない。ネット上でカミングアウトすると「自称しているだけ」のように思われてしまうリスクがあるから 筆者の場合、以前は友人・知人に対して発達障害のことをオープンに伝えており、SNSやブログ記事などでも公表していました。しかしある時期から「必要なとき以外は伝えない」という考えに変わりました。 理由は、自分は気にしなくても伝えた相手はどう感じるか分からないと思ったからです。 以前、発達障害のことをオープンに伝えていたときには「障害があることは別に恥じることではなく、私の一部だ」という思いがあり、伝えた相手からどう思われようと気にも留めていませんでした。 しかしあるとき、発達障害とは別の「自分が詳しく知らない障害」を持った知人から開示を受けた際に、私は悩んでしまったのです。 ・その障害はどれほど苦労があるものなのか、知識がないから分からない。 ・分からないから、今どんな気持ちで開示しているのかが想像できない。 ・なぐさめて欲しいのか、助けて欲しいのか、それともただ話を聞いて欲しいのか。何を望んでいるのかが分からない。 どうリアクションをすれば良いのか、とても悩みながら話を聞いたことを今でも鮮明に覚えています。 そして、ふと気が付いたのです。もしかしたら、私が発達障害であることを伝えた相手も、同じような思いをしていたのではないか、と。下手なことを言って傷つけたらいけないが、打ち明けてくれたことをスルーしてもいけない気がする。相手のことを気づかうからこそ、どう対応すればいいのか悩んでしまう。そんな思いを友人にさせていたのではないかと感じたのです。 それから私は、必要なとき(何か支援を求めたり、仕事で関わったりするようなとき)以外は、友人・知人に対して積極的に開示はしないようにしています。 2. カミングアウトして感じたメリット・デメリット 2-1. 家族とは「距離が近い」からこその難しさも 実際に発達障害のことを開示してみてどうだったのか、感じたメリット・デメリットについてもアンケートで伺いました。 まず家族に対して伝えるメリットとしては、伝える以前よりも安心感が増した、コミュニケーションが改善した、との回答が複数ありました。 発達障害の特性による困りごとは、本人はもちろん、身近に暮らす家族にとっても心配なもの。家族からすれば「何が原因で問題が起きているのかが分からない」よりも、「困りごとや悩みごとの原因は発達障害だ」とハッキリ分かる方が良いのかもしれません。 「家族」に障害を開示して感じたメリット(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・理解を示してくれたことで安心できた ・以前よりも優しく接してくれるようになった ・ケンカすることが減った ・うまくコミュニケーションができなかったときに、「発達障害の特性によるものだ」と知ってもらえたことで、悪意があるわけではないと分かってもらえた 一方でデメリットとしては、発達障害のことを本当に理解をしてもらうまでに時間がかかった、うまく理解が得られなかったという回答も。 発達障害の特性は、障害について詳しくない人からすると「性格の問題」や「努力不足」のように見えてしまうケースもあります。特に大人になってから働きづらさ・生きづらさが表面化した場合、家族からは「子どもの頃は大きな問題がなかったのだから、障害ではないのではないか」というように見えてしまうのかもしれません。 「家族」に障害を開示して感じたデメリット(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・親が以前よりも過保護になった ・受け入れてもらえるまでに時間がかかった ・一部の家族が受け入れてくれなかった ・家族がときどき、対応に疲れているような態度を取ることがあった 2-2. 友人とは変わらない付き合い、一方で恋人は「将来」に対する不安も 友人・恋人に対して障害を開示することのメリットとしては、自分を包み隠す必要がなくなり、以前よりも自然に付き合えるようになったとの回答がありました。 特徴的だったのは、友人に対して障害を開示したことのデメリットを挙げた人が一人もいなかったことです。友人は家族と比べると一定の距離感があり、また先ほど「1-2. 友人・恋人には、関わり方や親しさの度合いによって伝える範囲を決める」の章でもご紹介したように、そもそも信頼の置ける人にだけ伝えているので、カミングアウトした・しないによらず変わらない関係を保てているのかもしれません。 「友人・恋人」に障害をカミングアウトして感じたメリット(記事掲載用に一部編集しています) ・自然体でいられるようになった ・知ってもらうことで、コミュニケーションがスムーズになった ・信頼のおける友人にだけ話しているので、カミングアウトの前後で特に変わったことはなかった 一方「恋人」については、将来に対する不安をデメリットとして回答した方も。 注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)は遺伝的な要因が複雑に関係している*とも言われています。そのため、パートナーが結婚に対して消極的になってしまうのではないか、との回答がありました。 *参考 ・ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省) ・ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省) 「友人・恋人」に障害を開示して感じたデメリット(記事掲載用に一部編集しています) ・(恋人に対して)「いつか距離を置かれてしまうのではないか」「結婚や子どもを持つことを相手がどう思うか」と不安になることがある 2-3. 結論としてカミングアウトした方がいい?しない方がいい? 筆者の個人的な考えではありますが、ここまでのアンケートの結果と筆者の経験を総合して考えると、誰にも開示せず一人で悩み続けるよりも、適切な範囲で開示をした方が良いのではないかと思います。 筆者の場合、一人きりで情報を集め、病院を受診し、悩みを抱え込んでいたときには、どこか自分でも「私は障害者である」ということを受け止め切れていませんでした。しかしパートナーに障害のことを打ち明けたときに、初めて自分の障害とまっすぐに向き合えた感覚がありました。 「他人に開示する」ということは、「私は障害者である」と認めることになりますし、自分の弱い部分を外にさらけ出すことでもあります。しかしその行為が、自分自身が障害と向き合っていくための、一つの大切なステップであるような気がするのです。 ただアンケートの回答にもあったように、筆者の場合も一部の人はなかなか受け入れてくれませんでしたので、「伝え方をもう少し工夫すべきだったかな」という反省もあります。 開示する相手に少しでも発達障害のことを理解してもらうためには、どのように伝えれば良いのでしょうか。 3. 発達障害を理解してもらうための3つのポイント 先ほど「2. カミングアウトして感じたメリット・デメリット」の章でもご紹介したように、発達障害のことを伝えても、うまく相手に理解してもらえないというケースもあります。 実際に筆者も、親に伝えた当初は言葉や態度の様子から「まさか自分の子どもが障害者であるわけがない」という雰囲気を感じていました。 発達障害のことを他者に理解してもらうためには、いったいどうすれば良いのでしょうか。アンケートの回答と筆者の体験をもとに、ポイントを3つに整理してみました。 ポイント1. 理解してもらうのは時間がかかるので、伝え続ける努力をする 「発達障害」という、相手にとって今まで知らなかった障害について理解してもらうには、一度だけで理解してもらおうとするのではなく、時間をかけて伝え続けることが大切です。 アンケートでも、理解してもらうまで時間をかけて何度もくり返し伝えた、という回答がありました。 最初は「本当に発達障害なの?」という疑いの目を向けられましたが、障害のことを伝え続けることによって次第に理解を得られるようになりました。 「家族」は自分のことを理解してくれる唯一の理解者なので、「自分から心を開く」ことが大切だと思います。 自分でも障害のことを学んできちんと説明できるようにし、理解を得られるまで何度も何度も伝えることで、少しずつ家族も認めてくれるようになると思います。(※記事掲載用に一部編集しています) 先ほど筆者の体験談として『親に伝えた当初は、言葉や態度のはしばしから「まさか自分の子どもが障害者であるわけがない」という雰囲気を感じた』と述べました。しかし発達障害のことを自分でも勉強し、何度も繰り返し伝えることで、今では障害があることを含めて私のことを認めてくれていると感じられるようになりました。 ポイント2. 混乱や衝突は「必ず起こるもの」だと考える 自分にとっても周囲にとっても、発達障害のことを本当に理解するまでには時間が必要であり、その途中では混乱や衝突は「必ず起こるもの」と考えた方が、結果的にうまくいくのかもしれません。 ビジネスでは、チームでなにかプロジェクトをおこなうときの手法として「プロジェクトマネジメント」というものがあります。その中では「チーム」が作られていく段階として ①形成期 ②混乱期 ③統一期 ④機能期 という4つのステップがあるとされています。 注目したいのは②混乱期です。 プロジェクトマネジメントの概念は数十年前にアメリカ国防総省で生まれたと言われており、長年にわたり科学的な研究が行われてきた分野で、現在では日本でも国が定めるJIS規格(JIS Q 21500:2018)として登録されています。そのような分野で、人が集まると混乱や衝突が起こることが前提(当たり前)として考えられているのは、非常に興味深くありませんか。 同じように、発達障害のことを自分と周囲が理解していく際にも、混乱や衝突は「必ず起こるもの」なのではないかと、筆者は思うのです。 あくまで筆者の個人的な体験に基づいていますが、「プロジェクトマネジメントの4ステップ」になぞらえると、障害の理解には6つのステップがあるのではないかと考えています。 1. どん底期 働きづらさ・生きづらさがピークに達し、仕事や生活がうまくいっていない時期。インターネット等で発達障害の情報を見て「もしかしたら自分もそうではないか」と思い、発達障害のことを調べ始める。 2. 発見期 病院を受診したり、支援機関の窓口などに相談し始めたりする時期。発達障害の診断を受けることで「仕事や生活がうまくいかない根本的な原因は、自分の性格や努力不足の問題ではなく、発達障害のせいだったんだ」と分かり、気持ちが少し楽になる。 3. 混乱期 診断を受けて多少気持ちは楽になったが、困っている状態が解決したわけではないので「これからどうすればいいの?」と悩んでいる時期。 病院への通院や、公的な支援を受けるための手続きをおこなうなかで徐々に「自分は障害者なんだ」という実感が湧いてくるが、まだ完全には腹落ちできていない。腹落ちできないので、自分で自分の障害や特性のことを十分には理解できず、周囲にもうまく伝えられない。そのため、カミングアウトしてもなかなか理解してもらえない。 4. 衝突期 就労のための支援を受けたり、転職・再就職の活動を始めたりするが、働きづらさ・生きづらさが一気に改善するわけではないので、焦りを感じる時期。 その焦りやいらだちから「自分は障害があってもがんばっているのに、なぜ助けてくれないのか」という気持ちが生まれて、周囲と衝突を起こす。セルフケアや、合理的配慮の調整がまだうまくできない。理解して欲しいという強い気持ちから、自分の障害についてブログやSNS等で発信したりする。 5. 理解期 病院への通院や、障害者支援制度の利用を続けるうちに、「発達障害で困っている人を支援する制度は確かにあるが、誰かが“おんぶに抱っこ”で助けてくれるわけではなく、最終的には自分ががんばらないと解決しない」ことをうすうす感じ始める時期。 現実の厳しさを知って時折くじけそうになるが、自分の障害や特性についての理解が進み、セルフケアもできてくるので、周囲に対してただ「助けて欲しい」と訴えるだけでなく「ここまではがんばるから、ここからは助けて欲しい」という建設的な相談ができるようになってくる。 6. 安定期 転職や再就職が決まってからしばらく経ち、仕事や生活が安定してくる時期。気持ちに少し余裕が生まれてくる。発達障害を持ちながら生きていくことが、当たり前のものとして少しずつ自分の生活になじんでくる。障害の有無に関係なく自分が活躍できる方法を探し始める。 *** 先ほども申し上げたとおり、上記の6つのステップはあくまで筆者の個人的な体験に基づいており、後から振り返ってみて「このような時期があったな」というものです。 しかし「混乱や衝突は起こっても仕方がないもの」とあらかじめ心構えしておけば、実際にそうなったときにも多少、気持ちに余裕ができるのではないかと思うのです。 ポイント3. まず伝える側=自分の準備を整える 以上のように、発達障害の診断を受けてから現在までを振り返ってみると、発達障害のことを相手に理解してもらうためにもっとも大切なことは、まず伝える側=自分の準備を整えることではないかと思います。 筆者が親にカミングアウトした当時は、障害が原因で仕事を辞め、これからどうすればいいのかと悩んでいた時期でした。仕事も生活もうまくいかず「とにかく今すぐ、誰か助けて欲しい」と強く思っていました。 ところが「助けて欲しい」と思えば思うほど、相手がなかなか理解してくれないことにいらだち、攻撃的な口調になって対立が起こり、余計に相手が理解してくれない…という悪循環に陥っていきました。 しかしそんな悪循環が、再就職が決まったことをきっかけに変わり始めます。 徐々に安定して仕事ができるようになってくると、精神的にも少しずつ余裕が生まれ、次第に「時間がかかってもいいから、理解してもらえるまで根気よく伝え続けよう」と思えるようになっていったのです。 4. 自分の準備を整えるためには 今回はアンケートと筆者の体験談を交えてご紹介しましたが、発達障害によってどのような生きづらさを感じているのか、自分の周囲にどのような人間関係があるのかは人それぞれですので、「こうすれば正解」というものはなかなか見つけづらいかもしれません。 自分の障害や特性を理解することはなかなか難しいもの。自分一人で悩むよりも、専門機関の手を借りた方が良いでしょう。 そんな方々のサポートをおこなっているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
大人の発達障害が増えてるって本当?〜発達障害を正しく理解しよう〜

「大人の発達障害が増加しているって本当なの?」最近話題になっている疑問について解説します。適切なサポートを受けるためには、障害に対する適切な理解が大切です。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
大人の発達障害の人が増えている——そんな話を聞いたことはありませんか? 最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。著名人が自身の発達障害について告白する記事や動画を見かけることもあります。そうした情報を見て「もしかしたら、自分も発達障害かも…」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。 しかし「発達障害」という名前が知られるようになった一方で、具体的にどのような障害であるのか、どのようなサポートをすべきなのかという部分は、世間一般の理解がまだ追いついていないという側面があります。 今回の記事では、果たして本当に大人の発達障害は増えているのか、そしてなぜ発達障害を正しく理解することが必要なのかについて解説します。 なお大人の発達障害についての基礎知識は、以下のページにまとめていますのでご参照ください。 大人の発達障害とは [toc] なぜ発達障害の診断を受ける人が増えているのか? 診断数の公的な統計はまだない 実は発達障害の診断数について、国や地方自治体などの公的な機関がおこなっている統計は今のところありません。 日本の法律では「障害」を ①身体障害 ②知的障害 ③精神障害 の三つに分類していますが、発達障害は現在 ③精神障害 に含まれており単体での分類がありません。そのため発達障害単体での申請数や登録数は正確な数字が管理されていないのです。 また日本では2004年「発達障害者支援法」が制定されるまで、発達障害について法律上の明確な定義がありませんでした。他の障害と比べ発達障害の研究や支援の歴史は浅く、また発達障害を正確に診断できる医師も限られているため、診断数の統計が出しづらいのです。 実際の診断数は増えているのではないかと推測されている しかし2013年にアメリカ精神医学会の定める診断基準(DSM)が改訂され発達障害の診断がしやすくなったことや、インターネットなどを通じて発達障害そのものの認知度が高まってきたことから「これまで発達障害だと気付かなかった人/知らなかった人が病院を受診するようになったので、診断を受ける人も増えているのではないか」と推測されています。 実際、内閣府の発行する「障害者白書」によれば、発達障害を含む精神障害者の数は年々増加しています。 画像引用元:内閣府|令和4年版 障害者白書 全文|参考資料|218ページ また文部科学省が国公私立の小・中・高等学校と教育委員会に行った「特別支援教育に関する調査」によれば、支援を受けている発達障害の児童・生徒の数は右肩上がりで増え続けています。発達障害(注意欠陥・多動性障害・自閉症スペクトラム障害・限局性学習障害)が通級指導の対象となった2006年(H18)と比べると、当時は約7,000人だったものが2020年(R2)は約97,000人になっており、14年の間に10倍以上に増えていることが分かります。 画像引用元:文部科学省|令和2~3年度 特別支援教育に関する調査の結果について|3ページ このような数値から、大人の発達障害の診断数についても年々増えていることが推測されているのです。 なお一説には、私たちの生きる現代の生活環境は変化が激しく、高度で複雑な社会になってしまったことで「昔よりも生きづらさを感じる人たちが増え、結果として発達障害を疑い受診する人も増えているのではないか」とも言われています。 発達障害のある方への支援は広がってきている 近年は発達障害のある方を支援する体制の整備も進んでいます。2016年には支援の一層の充実を図るため、発達障害者支援法が改正されました。この改正では当事者本人への支援だけでなく、当事者を支える家族への支援や、自治体と企業・医療機関が連携して地域全体で支援をおこなう体制が強化されました。 画像引用元:厚生労働省|平成28年|社会保障審議会障害者部会(第80回)|参考資料5 発達障害者支援法の改正について また働きたいと思う障害者の方への支援も強化されており、「精神障害者雇用の義務化」なども追い風となって発達障害のある方の障害者雇用も進んできています。 障害者雇用については、以下の過去記事もご参照ください。 障害者雇用とは?オープン就労を目指す方に向け、基礎情報をまとめました。 障害者雇用と一般雇用とは?基本情報をまとめました。 【企業人事に聞いた】変わりつつある「障害者雇用」への考え方 障害者雇用と一般雇用のよくある質問集 発達障害の「正しい理解」については、まだこれから 正しく理解している人はまだまだ少ない 発達障害という言葉は知っていても、その中身について正しく理解している人はまだまだ少ないのが現状です。 この記事の冒頭でも述べたように、最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。しかし日本公衆衛生学会がおこなった調査* によれば、「”発達障害”を聞いたことがある人」の割合は 91.5% なのに対し「どのような対応や支援をおこなえば良いか」を具体的に知っている割合は 26.5% だったという結果が報告されています。 * 出典:「発達障害に対する成人の認知および情報源に関する現状」日本公衆衛生雑誌/66 巻 (2019) 8 号 特にインターネットの場合、国や支援機関、病院や製薬会社、当事者個人やメディアなど、さまざまな団体や人が情報を発信しているため、その中から正しい情報を見つけ出すのは簡単ではありません。 自己診断で決めつけないように注意! インターネット上には発達障害の傾向があるかどうかを自分でチェックできるシートが公開されていることがあります。例えば「忘れ物が多い」「落ち着きがないと言われる」などの質問項目がいくつか用意されていて、自分が当てはまるものにチェックを付け、その数で発達障害の傾向の有無が分かる、というようなものです。 病院や製薬会社が公開しているチェックシートは、受診する際に自分の情報を医師に伝えるための「事前準備」として役立つ場合もあります。しかしこれらはあくまで簡易的なものであり、それだけで発達障害かどうかを診断することはできないので注意が必要です。 発達障害の診断は、医師により現在の状態・成育歴・行動観察・認知や知能等の心理検査の結果などを総合しておこなわれます。「なにかの機械で検査すれば、すぐに発達障害かどうか分かる」「病院を受診したら、すぐに診断がおりる」というものではありません。 かつては発達障害の情報そのものが少なく、原因も分からずに悩んでいた方々が多くいらっしゃったことを考えると、社会に広く情報が知れ渡るのはすばらしいことです。しかし簡単に手に入る情報を見て自分で決めつけず、病院や公的な支援機関に相談することが大切です。 なお「発達障害の診断」については、以下の過去記事もご参照ください。 【当事者が解説】大人の発達障害の診断は受けるべき?メリットや注意点を紹介 適切なサポートを受けるためには、適切な障害の理解が必要 「サポートを受けたい」という意思表示をすることが大切 2006年に国連で採択された「障害者権利条約」は、“Nothing about us without us”(私たち抜きに私たちのことを決めるな)を合い言葉に、その策定が進められました。 かつて、障害者は「一般社会から保護される無力な存在」とされ、自分の人生を自分で選択し、決めることが許されなかった時代がありました。国連で条約が採択された背景には、障害者はこのような「保護的支配」を受けるものではなく、普通の市民としての権利を持つ人間であることを強く訴えるメッセージがあったのです。 このような背景から、障害者がなにかのサポートを受けたい場合には、障害者の側から「サポートを受けたいという意思表示をすること」が大切だと考えられています。自分自身の障害について理解を深め、どのような困りごとがありどのようなサポートを受けたいのかを、自分で周囲に説明できることが大切です。 悩んでしまったら、一人で抱え込まず専門機関に相談を 「障害について理解する」ということは、自分が苦手なことや、過去の失敗についても向き合わねばならないということです。日々の生活や仕事で発達障害による困りごとを抱えている中で、自分のネガティブな部分を見つめ直すことは簡単ではありません。一人で抱え込まず、専門の支援窓口に相談することが大切です。 そんな方々のサポートをおこなっているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業)「2-3. 特性に対するアプローチをトレーニングする」で解説したように、特性に対するアプローチ法を学ぶこともできます。 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
発達障害ある方はストレスを感じやすい?~原因と対策を解説~

健康で長く働いていくためには、ストレスをうまくコントロールすることが欠かせません。今回は発達障害のある方がなぜストレスを感じやすいのか、その原因と対策を解説します。

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  • #限局性学習症(SLD)
「この仕事、ちゃんと締め切りまでに終わらせられるかな…」「あの人ちょっと苦手だけど、仕事ではうまく付き合っていかなきゃ…」「また失敗して、上司から怒られたら嫌だな…」 社会に出ると誰しも何らかのストレスを抱えながら生きているものですが、特に発達障害のある方は、その特性からストレスを感じやすい傾向があると言われています。 健康で長く働いていくためには、ストレスをうまくコントロールすることが欠かせません。今回は発達障害のある方がなぜストレスを感じやすいのか、その原因と対策を解説します。 [toc] 1. 発達障害のある方がストレスを感じやすい原因 発達障害とは、先天的な脳機能の障害によって生活・仕事の環境や人間関係にミスマッチが起こることで、生きづらさが生じる障害です。 社会人として働き始めると、責任が増え人間関係も広くなるため、例えば以下のような場面で発達障害の特性による困難さがミスマッチを起こしてストレスを感じやすくなります。 人とのコミュニケーションが苦手 → 職場での人間関係づくりがストレスに 忘れものなど不注意によるケアレスミスが多い → 上司から注意される回数が増えてストレスに 感覚過敏によって目や耳からの刺激を苦痛に感じる → 通勤中やオフィスの環境は簡単に変えることができないためストレスに また発達障害のある方は、脳の中で抑うつや不安に関連する部分に特徴があり、生物学的にストレスへの耐性が弱いという研究結果*もあります。 *参考:就業経験のある発達障害者の 職業上のストレスに関する研究(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター、2018年4月) 発達障害は「社会性の障害」と言われており、周囲の環境によって困難が生じることがあります。発達障害の特性によって周囲とうまくいかず、ネガティブな経験が積み重なり日常的にストレスにさらされることで「二次障害*」を引き起こすこともあるので、注意が必要です。 *参考:【事例紹介】発達障害による「二次障害」とは?原因と対処・予防法は   2. 発達障害がある方のためのストレス対策 大人になり社会に出た後は、ストレスを感じやすい場面も多くなります。ストレスをうまくコントロールしながら長く働くためには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。 2-1. 自分の特性を理解する 「発達障害」と一口に言っても、障害の特性や今おかれている環境は人それぞれです。発達障害にはどのような特性があるのか。今の環境の中でどのようなところに困難さがありストレスを感じやすいのか。まずは自分の障害について理解することが、ストレス対策の第一歩です。 自分の障害の特性を理解すれば、おこなうべきセルフケアや、周囲に求めるべき支援の内容も分かりやすくなります。以下のページで発達障害の特性について解説していますのでご参照ください。 大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア また国の運営する各種サイトでも、発達障害の特性理解に役立つ資料が公開されていますので併せてご参照ください。 発達障害の特性(代表例)|厚生労働省 発達障害って、なんだろう? | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン 特性の理解 - 発達障害情報のポータルサイト 「一生懸命がんばれば何とかできる」にも要注意 特性に対するセルフケア(自分で自分の面倒を見たりいたわったりして、自己管理すること)ができている方や、発達障害の診断を受けるまでには至っていない「グレーゾーン」の方であっても、ストレスのケアには注意が必要です。なぜなら周りの環境に合わせるために対策したり我慢したりすること自体が、ストレスの原因となっている場合があるからです。 筆者の事例をご紹介しましょう。 筆者はASDの診断を受けており、人とのコミュニケーションが苦手でいわゆる“空気が読めない”タイプです。しかし実際の仕事では「私は空気が読めませんので、みなさんヨロシク!」と宣言するわけにはいきません。空気が読めない分を他の情報で補うよう努めています。 周りの人の表情・声のトーン・ちょっとしたしぐさなどを注意深く観察する コミュニケーションがスムーズになるよう、誰かと話をするときは相手の目を見る、相づちを打つなどを意識する 直接の会話が苦手な分、メールやチャットでのテキスト・コミュニケーションでは気を配る 言ってみれば「空気を読む」というセンサーが働かない分、他のセンサーを代わりに使って何とかやりくりしている、という感じです。 自分の特性を理解し上記のような対策をするようになってから、人とのコミュニケーションで大きなトラブルはなくなりました。しかし人と長時間接すると、とても大きな疲れを感じます。特にミーティングや商談が連続してあった後などは、しばらく放心状態で動けなくなってしまうこともあります。 がんばって対策をしよう・周囲に合わせようとしている方の場合、「苦手や困難さはあるが、一生懸命がんばれば何とかできる」という状態がずっと続くことになります。 このような状態は周りから見ると大きな問題がないように見えても、当の本人は「周囲に合わせるために、実は他の人の何倍もエネルギーを使っている」ことになるため、ストレスをためすぎないよう注意が必要です。 筆者の場合は人と接するときの疲労対策として、「ミーティングの後は休憩時間もあらかじめ予定に入れておく」「社外の人との打ち合わせはより大きなストレスがかかるので、1日2回以上おこなわない」ようにしています。 2-2. 生活習慣を整える 基本的なストレス対策として「適度な運動をする」「三食しっかりとご飯を食べる」「十分な睡眠時間を取る」など、生活習慣を整えることはとても大切です。特に「睡眠」については、若くて健康な人であっても、睡眠不足がたった二日続いただけで体内のホルモン分泌や自律神経機能に大きな影響が出ると言われています*。 * 参考:睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省) 「生活習慣を整えましょう」という話を見聞きしたことがある方は多いと思いますし、そんなことはよく分かっていると思われる方もいらっしゃるでしょう。 しかし発達障害のある方の場合、生活習慣の乱れが原因で仕事の勤怠が安定せず、結果として仕事が長続きしないというケースもあります。この後にもいくつか対策をご紹介しますが、すべての対策の基礎として、まずは「今の生活習慣が乱れていないか」「生活習慣を整えるためにできることはないか」を考えてみることが大切です。 参考例:睡眠時間を先に確保する 一例として、筆者が実際に生活習慣を整えるためにおこなっている対策をご紹介します。 筆者は1日の予定を立てる際、最初に睡眠時間から予定を確保してスケジュールを組み立てるようにしています。睡眠時間の目標は1日7時間なので、まずは夜23:00〜6:00までを睡眠時間としてGoogleカレンダーに入れ、そこから逆算して他の予定を入れていきます。 【ある日の予定の例】 23:00 就寝 22:30 ベッドに入る 22:00〜21:00 洗濯、明日の準備など 21:00〜20:00 子どもの宿題を見る 20:00〜19:00 夕食、食事の後片付け 19:00〜18:30 子どもを風呂に入れる 18:30〜18:00 仕事の片付け(※リモートワークのため通勤時間はなし) このように「23:00に寝る」ところから逆算していくと、18:00には仕事を終えなければならないことが分かります。 仕事が忙しかったりプライベートの時間が取れなかったりすると、つい睡眠時間を削ってしまいがちです。しかし寝る時間が短いと翌日の日中に眠くなってしまい、昼間に予定していた作業が遅れる → また睡眠時間を削る…という悪循環になりがちです。 もちろんいつもすべてが予定どおりに進むわけではありません。仕事が忙しく残業しなければならなかったり、突発的なトラブルで予定が狂ったりすることもあります。その場合でも睡眠時間を削るのは最終手段にして、他の部分でできる限り調整するようにしています。 2-3. 特性に対するアプローチをトレーニングする 発達障害の特性に対してアプローチする方法を学ぶことで、ストレスを軽減できる場合があります。 例えばASDのある方は、「シングルレイヤー特性」によってものごとの裏側の想像がしづらく、見たままに受け取ってしまうことがあります。これに対してリフレーミングというアプローチ法では、自分に起きた出来事を別の視点から捉え直すことで、出来事から受ける感じ方が変わり、前向きに考えることができるという効果があります。 別の例としてADHDのある方は、「衝動性(行動のブレーキの利かなさ)の特性」によって何か怒りを感じるような場面に遭遇した際、自分の怒りをそのまま相手にぶつけてしまうことがあります。これに対してアンガーマネジメントというアプローチ法では、「自分は今、怒りを感じている」という状態に気付くことからスタートし、怒りをコントロールしたり、怒りを増幅させるストレスをためこまないようにしたりする方法を学ぶことができます。 特性に対するアプローチ法があることを知っているのといないのとでは、大きな差が生まれます。トレーニングして少しずつ身に付けていくものもありますので、長期的に取り組んでいくことが大切です。 公的な障害福祉サービスである就労移行支援事業所では、特性に対するアプローチ法のトレーニングを受けられるところもありますので、利用を検討してみるのも良いでしょう。就労移行支援事業所について、詳しくは以下の記事もご参照ください。 就労移行支援事業所とは?対象者・料金・サービス内容をまとめました。 就労移行支援事業所のよくある質問集 2-4. 環境を調整する/合理的配慮を求める 発達障害は脳の特性と、生活・仕事の環境や人間関係にミスマッチが起こることで、生きづらさが生じる障害です。そもそもミスマッチの原因となっている環境を調整することも、健康的に長く働いていく上ではとても重要です。 例えば感覚過敏への対策として、席の場所や照明などを変えたりするのも環境の調整だと言えます。 ただこうした調整には周囲の理解が必要な場合も多いので、セルフケアだけでは限界もあります。周りからの支援が必要な場合には、会社に対して合理的配慮の相談をすることも検討しましょう。合理的配慮について、詳しくは以下の記事もご参照ください。 合理的配慮とは?基礎知識をまとめました。 発達障害のある方の「合理的配慮」事例集 「合理的配慮」申請マニュアル 流れとポイントを紹介 合理的配慮のよくある質問集 より長期的には、自分の適性にあった仕事環境になるよう、社内での異動や別の会社へ転職することを検討する必要もあるかもしれません。 ただしやみくもに異動や転職すればいいというものではなく「自分にはどのような特性があり、どのような環境であれば生きづらさ・働きづらさが改善されるのか」「どのような目的を持って仕事をし、どんな将来像を描きたいのか」をしっかりと見定めてからおこなう必要があります。 自己分析や業界研究の方法など、就職・転職活動の始め方については以下の記事で解説していますので、併せてご参照ください。 大人の発達障害がある方の就職活動は「ウォーミングアップ」で成否が決まる! 【大人の発達障害の就活HACK】志望企業の探し方 〜①基本編〜 【大人の発達障害の就活HACK】志望企業の探し方 〜②障害者雇用編〜   3. 一人で解決することが難しいときには 「2-1. 自分の特性を理解する」でもご紹介したように、発達障害の特性による苦手や困りごとは十人十色ですので、まずは自分の障害のことを正しく理解することが重要です。 しかし客観的に自分を見ることは障害の有無にかかわらず難しいものですし、障害に対する深い知識も必要です。自分一人で悩むよりも専門家の手を借りた方が良いでしょう。 そんな方々のサポートをおこなっているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業)「2-3. 特性に対するアプローチをトレーニングする」で解説したように、特性に対するアプローチ法を学ぶこともできます。 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
ADHDの「集中できない・続かない」〜その原因と対策〜

ADHDの特性の代表例「集中できない・続かない」の原因や場面を解説しながら、ADHD当事者である筆者が実際に試して効果があった「集中力を高めるための方法」をご紹介します。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「仕事や勉強をやろうと思っても、なかなかやる気が起きない…」「集中力が少ししか続かず、気が付いたらいつの間にか別のことをやっていた…」 発達障害、特に注意欠如・多動性障害(ADHD)のある方の中には、このようなお悩みを抱えていらっしゃる方も多いかもしれません。ADHDはその脳の特性から集中をすることに苦手があり、仕事や勉強において困りごとを感じやすくなります。 いったいどうすれば集中力を高めることができるのでしょうか。今回は集中できない・続かないことの原因や場面を解説しながら、ADHD当事者である筆者が実際に試して効果があった「集中力を高めるための方法」をご紹介します。 [toc] ADHDのある方が「集中ができない・続かない」理由 対策を立てるために、まずは「なぜ集中ができない・続かないのかという原因」を知っておきましょう。 ADHDは、脳の中で判断や抑制をつかさどる部位の機能が低下することで、行動や思考のブレーキが効きにくくなるという特性があります。このブレーキの効きにくさ=衝動性により、思いついたことをすぐ行動に移してしまったり、他のものに注意が向いてしまうとそちらに意識を持っていかれたりしてしまうことで、集中しづらくなってしまうのです。 またもう一つの脳の特性であるワーキングメモリーの弱みも、集中しづらい原因となります。 「ワーキングメモリー」とは以下の二つの機能を持った脳の仕組みです。 ① 情報(聞いたことや考えたこと)を一時的にとどめておく、記憶の“置き場”としての機能 ② 情報を整理して実行に移す“作業場”としての機能 これらの機能に弱みがあるために、作業中に別の情報が入ってくると最初の作業のことを忘れてしまう、複数のことに同時に注意を払えず混乱してしまうといったことが起こり、一つの作業に集中しづらくなってしまうのです。 次ページ:そもそも私たちの「現代の生活環境」に問題がある?