Q2. 発達障害は治るもの?どんな治療法があるの?
発達障害は脳や神経系の障害であるため、先天的な脳機能の特性など、障害そのものを治療することは現在の医学では困難です。
ただし、発達障害の特性に対してアプローチする治療方法として ①薬物療法 と ②心理社会的なサポート の二つがあります。これらの治療により、発達障害による生きづらさや困難さを軽減することができます。
Q3. 「薬物療法」とはなに?
注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)には、多動性・衝動性・不注意といった中核症状(障害の基本的な症状)への効果が認められている薬があります。自閉症スペクトラム障害(ASD)や限局性学習障害(SLD)の中核症状への治療薬は現在のところはまだありません
ADHD の薬物療法で使われる薬は、どれも医師の診断のもと処方されますので、自分で薬の種類を選んだり薬局等で一般購入することはできません。また特別な登録を受けた医師・薬剤師でないと処方できない薬もあります。(一部の薬は、過去に不正使用事件があったことを受け、医師・薬剤師に加え、患者も登録を受けないと処方が受けられないものもあります。)
薬物療法は症状を根本から治すものではなく、一時的にやわらげるものであり、心理社会的なサポート(Q4. で解説)と併用していく必要があります。
なお「障害の特性による困難さ」によるストレスを和らげるために、心を落ち着けるための薬や、睡眠を補助するための薬などが処方される場合もあります。
Q4. 「心理社会的なサポート」とはなに?
「心理社会的なサポート」とは、気持ちなどの精神面や生活・仕事などの環境に関するサポートのことです。
Q3. で解説したとおり、発達障害そのものを治療することは困難です。そのため、自分の気持ちを楽にする・行動をコントロールするための方法を学んだり、困難さを軽減するために環境を調整したりすることが必要不可欠です。
まずは自分の障害について知る
発達障害は「見えにくく、分かりにくい障害」と言われており、同じ診断名がついていたとしても、その特性は一人ひとり異なります。そのため「自分の障害特性」を理解しないと、
- ・特性による苦手への対策ができず同じ失敗を繰り返してしまう
- ・職場で上司や同僚に理解をしてもらうことができず適切な配慮を受けることができない
…ということになってしまいます。まずは自分で自分の障害について知ることが第一歩です。
障害特性へのセルフケアを習得する
周囲に適切なサポートを求めるのと併せて、自分自身でセルフケアすることも大切です。例えば、「対人関係がうまくいかない」という場合はコミュニケーションの方法を学ぶ、「生活リズムが乱れがちで体調が安定しない」という場合は体調管理の方法を学ぶといったように、セルフケアの方法を習得することで特性による困難さを軽減することに繋がります。
またセルフケアを習得することは、次に解説する合理的配慮を受けるためにも必要です。
周囲から合理的配慮をもらって環境を調整する
合理的配慮とは障害によっておきる困難さを取り除いたり、周りの環境を整える支援などの提供を企業等の側に求めるものです。障害のあるなしに関わらず誰もが平等に生きることができる社会を実現するために、「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」などの法律で「合理的配慮」を提供することが定められています。
「障害者が企業に対して配慮を求めることができる」とは言っても、どのような要求でも通るわけではありません。名前に「合理的」と付いているように、提供する側にとっても負担が重すぎない範囲の配慮である必要があります。
合理的配慮がどの程度まで提供されるのかは、話し合いによって決められます。障害者の側もセルフケアをしたうえで、それでも対応しきれないことであり、かつ、企業等の側にとっても重い負担がなく提供可能なものかどうかが、合理的配慮の範囲を決めるポイントになります。
過去のコラム記事では、自分の障害を受容することやセルフケア、合理的配慮について解説や事例を紹介していますので、併せてご参照ください。
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