ポイント② 「就労選択支援」の制度が新しく作られます
就労選択支援とは?
就労選択支援とは、障害のある方が就職先や働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して本人の希望・能力・適性などに合った「仕事の選択」を支援する新たな制度のことです。障害者総合支援法という法律に、2024年の4月から新たに盛り込まれる予定です。
補足:就労アセスメントとは?
就労アセスメントとは、働くために必要な能力や適性を客観的に評価し、本人の強みや課題を明らかにして、働くために必要な支援や配慮を整理することです。アセスメント(assessment)は「評価する」という意味です。
就労アセスメントは、これまでも就労系障害福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援B型)の利用を始める際におこなわれていました。障害のある方が本人の希望や仕事の能力、適性に合った仕事をするためにとても大切なものですが、以下のような課題もありました。
- ・障害のある方が必ずしも就労系障害福祉サービスを利用するとは限らず、アセスメントを受ける機会がないまま、就職・転職活動をしてしまう
- ・せっかくアセスメントをおこなったのに、実際の就職・転職活動で十分に活用されず、結局、自分の能力や適性に合った仕事を選べていないケースがある
制度ができるとどうなるの?
障害のある方が、「就労系障害福祉サービスの利用」や「ハローワークでの就職・転職活動」をする前に、就労選択支援サービスを利用できるようになります。イメージとしては以下の図のとおりです。
画像引用元:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案の概要(https://www.mhlw.go.jp/content/001000995.pdf)5ページ「2-① 就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等」より
このサービスでは、支援者と障害者本人が共同で、以下のような内容を評価・整理します。
- どのような職種で働きたいか
- どのような雇用条件を望むか
- 仕事に対して、どのような能力・適性があるか
- 実際に働き始めたあと、どのような合理的配慮*が必要か(*合理的配慮について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください)
これらを評価・整理して作成された就労アセスメントは、就労系障害福祉サービスの利用を希望する際に活用され、自治体の審査の参考資料として扱われます。福祉サービスを利用せず就職を目指す場合にも、就労アセスメントの内容がハローワークへ連携され、職業指導などをおこなう際に活用されます。
このように、就労アセスメントを活用することで、障害のある方がより自分の能力・適性に合った仕事を選べる可能性が高まります。
なお、これまでは就労系障害福祉サービスを利用できるのは「現在働くことができていない人」だけでした。この制度の開始に合わせて、現在働いている人が、一時的に就労系障害福祉サービスを利用できるようになります。一時的に利用できるのは、以下のような場合です。
- ・働き始めに、最初は短い時間から始め、少しずつ勤務時間を増やしていく場合
- ・働いている人が休職し、そこから復職を目指す場合
詳しい内容は、厚生労働省が公開している以下の資料で確認できます。
発達障害の当事者にどんな影響があるの?
発達障害のある方にとっては、自分の能力・適性だけではなく、障害による特性に合った仕事を選びやすくなることが期待されます。
大人の発達障害がある方の場合、障害による特性が原因で離職・転職されているケースもあるため、以下のように悩んでしまうケースが少なくありません。
- ・特性や適性に合う仕事が見つかるか不安
- ・自分の強みややりたいことが分からない
- ・就職先にどんな「合理的配慮」を依頼すべきか分からない
皆さんの中には、学生時代に就職活動で「自己分析」をした方もいらっしゃると思いますが、障害の有無にかかわらず客観的に自分を見つめ直して分析するのは難しいもの。就労選択支援のサービスが利用できれば、支援者の力を借り、一人でやるよりも客観的に自己分析=就労アセスメントをすることができます。
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