発達障害のある方向け「求人検索のポイント」

それでは、実際に求人を検索する際のポイントを4つご紹介します。

今回は、「実際に求人へ応募する前に、企業ホームページや求人サイトを見て情報を集める段階」を想定しています。

本当は、インターネットなどで情報を集めるだけでなく、面接や実習など「実際に企業の担当者と話せる場面」で聞いてみることも大切ですが、応募する前の段階では、実際に話を聞くことはなかなかできません。

ですが、インターネット上の情報でも、ポイントを押さえればある程度の見通しを立てることは可能です。

特に、“障害者雇用枠”ではなく“一般雇用枠”で働くことを希望する場合には、障害者雇用に関する情報が書かれていない可能性もありますので、いくつかの情報から総合的に考え、自分に合いそうな職場かどうかを判断するとよいでしょう。

1. 障害者雇用の実績がどれだけあるか

まずは直接的に、障害者雇用の実績が公開されていないかを確認しましょう。大企業の場合は、CSRやSDGsの取り組みをPRするために、障害者雇用の実績やどのような取り組みをしているかを公開していることが多いです。

障害者の“採用人数”が多ければ、受け入れ体制が整っていると考えられます。“平均勤続年数”が長ければ、障害のある方にとっても働きやすい環境であると言えるでしょう。

また、従業員に対して“ダイバーシティ教育”を実施していれば、障害に対する周囲からの理解も得やすいだろうと予想できます。

なお、一般雇用枠ではなく障害者雇用枠での採用に応募する場合は、求人に以下の情報が書いてあるかどうかをチェックすると良いでしょう。

  • 障害者雇用の過去の実績(採用人数、定着率、雇用者の障害種別など)
  • 実際に提供している合理的配慮の事例
  • 障害者の支援体制(専門部署や相談窓口の設置状況など)
  • 発達障害(ADHD、ASD、SLD)の採用実績

2. 福利厚生が充実しているか

福利厚生が充実していれば、それだけ企業が社員を大切にしていると考えられます。以下のような制度があるかどうかを確認すると良いでしょう。

  1. 健康保険・厚生年金の加入(特に、有期雇用契約や短時間勤務の場合)
  2. 退職金制度の有無
  3. 健康診断のオプション(人間ドックなど)の実施、カウンセラーの設置
  4. 産休・育児休暇制度
  5. フレックスタイム制度や時短勤務制度の有無
  6. テレワーク・在宅勤務の実施
  7. 各種手当(通勤手当、住宅手当、家族手当など)の有無
  8. 慶弔見舞金制度の有無
  9. 特別休暇制度(生理休暇、リフレッシュ休暇など)の有無
  10. 食事に対する補助(社員食堂、食事手当など)の有無
  11. スポーツクラブや習い事、自主学習への補助(資格取得支援制度など)

3. ハラスメント防止の取り組みがおこなわれているか

ハラスメント防止の取り組みがある企業は、社員が働きやすい環境を整備しているという点で、発達障害のある方にとっても働きやすい職場だろうと予想できます。

ハラスメントを防ぐためには、社員に対して適切な教育や研修を行い、労働環境を整備することが必要です。また、被害者が安心して相談できるよう、相談窓口やホットラインなども設置しなければなりません。

これらの取り組みがある企業なら、実際に働いてから何か困りごとがあった場合にも相談しやすい環境であると言えるでしょう。

なお、法律では、障害者差別解消法や障害者雇用促進法などで、企業が障害のある方に対し「合理的配慮を提供すること」や「障害を理由に、仕事内容や昇格・昇給などの待遇面で不当な扱いをしないこと」を定めています。

ただ、すべての企業が、上記の法律にそった社内制度や相談体制を整備できているわけではなく、追いついていない企業も少なくありません。そういった面からも、「なにか困りごとがあったときに、対応してもらいやすいかどうか」は、チェックしておきたいポイントです。

4. 働き方改革に取り組んでいるか

近年、企業の「働き方改革」は大きな注目を集めています。働き方改革に熱心な企業であれば、従業員の“ワークライフバランス”を重視していると言えますので、発達障害のある方にとっても働きやすい職場である可能性が高いと考えられます。

例えば、“フレックスタイム”や“テレワーク”の制度があれば、時間や場所を柔軟に調整できることで、障害の特性にも対応しやすくなります。

“テレワーク”は、コロナ禍によって実施している会社は増えていますが、以下のような取り組みがあるかを確認することで、その企業が「どれだけ本気でテレワークを推進しているか」を予想することができます。

  • ノートPCやルーターなど、テレワークに必要な備品の貸与がある
  • Google WorkspaceやSlack、Microsoft Teamsなど、場所を問わず業務がスムーズにおこなえるようクラウドサービスを活用している
  • 在宅勤務時に、自宅の電気代やインターネット通信料への補助がある
  • テレワーク時に、カフェやコワーキングスペースなどの利用への補助がある
  • 会社がコワーキングスペースなどをレンタルして、「サテライト・オフィス」を用意している
次ページ:自分に合った職場を選ぶために大切なことは?

おすすめ関連コラム