【当事者が解説】大人の発達障害の診断は受けるべき?メリットや注意点を紹介

目次

3. 診断を受けたい場合はどうすれば良い?〜病院の選び方や手順、診断までにかかる時間〜

「発達障害の特性による困りごとを解決するために、診断を受けたい」と思った場合、実際にどうすれば良いのかについて解説します。

3-1. どの診療科を受診する?〜大人の発達障害は “精神科” や “心療内科”〜

大人の発達障害に対応している診療科は、“精神科” や “心療内科” です。

ただ、発達障害の専門医は日本ではまだ多くないため、すべての精神科や心療内科が対応しているとは限りません。まずは病院・クリニックのホームページを見て、発達障害に対応しているかどうかを確認しましょう。

3-2. 病院を選ぶ際の 4 つのポイント〜①場所 ②予約方法 ③治療方針 ④支援機関とのつながり

「インターネットで検索したら、“発達障害対応” と書いてある病院の情報がいくつも出てきて、どこを選んだら良いのかよく分からない」という場合は、次のポイントをチェックしましょう。

①通いやすい場所にあるか

病院を初めて受診してから診断を受けるまでには数ヶ月かかります。問診や検査などで何回か通院することになりますし、診断後もかかりつけ医として長くお付き合いすることになりますので、通いやすさは大切なポイントです。

人によっては「発達障害で通院していることを周囲に知られたくない」という方もいらっしゃるかと思います。その場合、自宅から少し離れた駅の病院や、職場への通勤途中にある病院を検討してみると良いでしょう。

②予約が取りやすいか

予約が取りやすいかどうかも大切なポイントです。先ほどご紹介したように、日本ではまだ発達障害の専門医が少ないため、混雑している病院の場合「初診を受けるのに数ヶ月待ち」というケースもあります。

また、長く通院することを考えると “事前予約できない” “予約の変更が柔軟にできない” というような病院では、だんだんと通いづらくなってしまいます。病院のホームページを見て、“予約のしやすさ”  もチェックしておくと良いでしょう。

③治療方針がホームページにしっかり書かれているか

発達障害の治療方針について、ホームページ上にどのような情報を載せているかチェックしましょう。

その先生が発達障害についてどのように考えているか、どれだけ診療の実績があるのか、どういう方針で治療を行っているのかを確認しておくことで、“先生とのミスマッチ” を防ぐことにもつながります。

④地域の支援機関とのつながりがあるか

もし、ご自分で調べてもどこが良いのか分からず悩んでしまうという場合には、先ほどもご紹介した以下の相談窓口に聞いてみる、という方法もあります。

障害者雇用と一般雇用のよくある質問集「Q12. 一般雇用で働いているけど、働きづらさ・生きづらさを感じている。会社には知られないようにどこかに相談したいが、どこか相談先はあるか?」

こうした相談窓口は近隣の病院と連携して支援活動を行っていることが多いため、つながりのある病院を紹介してくれる場合があります。相談窓口とつながっている病院は、それだけ発達障害のある方の支援に積極的だとも言えますので、病院選びのポイントとしてチェックしてみてください。

3-3. 初診から診断までの手順と期間〜診断までには数ヶ月かかる〜

では、実際に初診を申し込んでから診断が出るまでのステップについて、具体的に見ていきましょう。病院によって細かな部分は異なりますので、ここでご紹介するステップは一例としてご参考ください。

ステップ 1. 問診

まずは医師による問診が行われます。皆さんも病院を受診する際に “問診票” を記入したご経験があるかと思いますが、発達障害の場合の問診票は項目がかなり多く「いつ頃からどんな困りごとが出ているのか」「どのような環境で育ってきたか」「勉強や学校生活での様子はどうだったか」など、さまざまな質問に答えます。

また、初診時に簡易的な心理テストを行う場合もあります。

ステップ 2. 観察

発達障害の診断は、医師により現在の状態・成育歴・行動観察・認知や知能等の心理検査の結果などを総合して行われますので「診察を受けたらすぐに診断が確定する」というものではありません。

発達障害であるかどうかを調べるため、何回か診察を行って症状を観察します。また、診断に必要な情報を知るための調査を行う場合もあります。

例えば ADHD の場合、「症状のいくつかが 12 歳までに存在していたかどうか」が診断基準の一つであるため、子どものころの状況をさらに詳しく知るために「学生時代の通知表で先生や親のコメントを確認する」「(可能な場合は)家族に当時の様子を聞いてそのメモを先生に提出する」といった調査を行うこともあります。

ステップ 3. 検査

診断基準の一つとして「WAIS-Ⅳ(ウェイス・フォー)」などの心理検査を実施します。

この検査では、思考力や作業力といった認知能力を測るテストを行い、“脳の発達の偏り” の程度を調べることで、発達障害の特性や傾向を読み取ります。

検査は臨床心理士により行われ、数時間かかります。担当できる臨床心理士の数が限られるため、検査の順番を数週間待たねばならないケースもあります。

ステップ 4. 診断

ここまでの問診・観察・検査を総合して、医師により診断が行われます。初診から診断が出るまでには数ヶ月かかります。

総合的な判断の結果「発達障害ではない」「発達障害の基準は満たさないが、傾向はある」といった診断がくだされる場合もあります。

その場合、発達障害の診断書が必要な公的な福祉サービスを受けることはできませんが、引き続き通院を続けることで、心を落ち着かせるための薬を処方してもらったり、カウンセリングや心理療法による治療を受けたりすることは可能です。

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