発達障害のある方が障害年金を受け取るための条件や申請方法

 3. 障害年金をもらうための条件

次に、障害年金を実際に受給するための条件について見ていきましょう。発達障害のある方が注意すべきポイントは、後ほど解説いたします。

(1)障害等級の条件

障害等級が1級・2級・3級のいずれかに該当することが基本条件です。障害等級が1級・2級の場合は、それぞれの等級に応じた障害基礎年金と障害厚生年金が支給されます。3級の場合は、障害厚生年金のみが支給されます。

(2)初診日の条件

障害の原因となった病気やけがの初診日について、一定の条件を満たしていることが必要です。例えば、障害基礎年金の場合は、次の条件のどちらかを満たしている必要があります。

1.国民年金に加入している間、または60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で日本国内に住んでいる間に、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)がある病気やけががもとで一定以上の障害が残り、障害の年金を受けられる保険料の納付要件を満たしているとき。

2.20歳前(年金制度に加入していない期間)に初診日がある病気やけががもとで一定以上の障害が残ったとき。(2.に該当する方は、保険料の納付要件はありません。)

出典:日本年金機構:障害基礎年金はどのようなときに受けられますか。

(3)保険料の納付の条件

国民年金の保険料を一定期間以上、ちゃんと納付していることも条件となります。初診日の前日までに、次の条件のどちらかを満たしている必要があります。

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

出典:日本年金機構:障害年金

(4)成人する前に障害が認められている場合の条件

成人する前に障害があることを認められた場合は、保険料の納付の条件は対象外となります。成人する前までの年数は、国民年金制度の加入対象ではないためです。

1.症状が出現し、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日が、20歳前(年金制度に加入していない期間)にある場合。

※出生直後に、あるいは乳幼児期の健康診断(6ヶ月~3歳時健診)、または養護学校、更生相談所等の各種検査のいずれかにおいて、医師または歯科医師の診断により、20歳までに障害が確認されている場合や、療育手帳等が交付されている場合を含みます。

症状が出現し、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日が、国民年金に加入している間または60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で日本国内に住んでいる間にあり、かつ保険料の納付要件を満たしている場合。

出典:日本年金機構:先天性の病気などにより20歳前から障害がありますが、障害基礎年金を受けることができますか。

4. 発達障害のある方が障害年金を受給するためのポイント

 

発達障害のある方が障害年金を受給しようとする場合に、気を付けるべきポイントを2つ紹介します。

ポイント1:発達障害のある方の場合の、障害等級の判定基準

障害の程度と等級を規定する「障害認定基準・認定要領」では、『発達障害とは、自閉症スペクトラム障害(ASD)、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害(限局性学習障害/SLD)、注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動性障害/ADHD)、その他これに類する脳機能の障害であり、その症状が通常低年齢において発現するもの』とされています。

障害の特性によって社会生活やコミュニケーションに困難さが生じており、日常生活や仕事をする中で制限が出ている場合に、その度合いによって障害等級が判定されます。

精神疾患が併存している場合には、発達障害と精神疾患の総合的な判断によって認定されます。

等級の判断は医師による「診断書」に基づいておこなわれます。そのため、担当医の方に、障害特性による生きづらさや働きづらさについて適切に伝える必要があります。日常生活や働く中での困難さについて、具体的な場面やその状況を説明できるようにしておきましょう。

詳しくは前項「発達障害の障害年金の等級」をご確認ください。

ポイント2:初診日の定義

発達障害のある方で、知的障害を伴う方や、精神疾患での通院歴がある方の場合には注意が必要です。大人の発達障害がある方の場合、メンタルクリニックなどでうつ病など精神疾患で通院をした際に、発達障害の可能性が指摘され、検査を受ける方が少なくありません。「初診日」とひと言で言っても、様々な種類があるので注意しましょう。

①知的障害を伴わない発達障害の場合

初診日は「発達障害を診断された初めての日」です。

②知的障害を伴う発達障害の場合

知的障害の診断がある方は、初診日が「生まれた日」です。

③精神疾患での診断が発達障害の診断の前に出ている場合

精神疾患の初診日が、発達障害の診断前であった場合、「精神疾患の診断がされた初めての日」が初診日となることがあります。発達障害の診断が出た医療機関と初めて精神疾患を受診した医療機関が異なる場合には、初めて精神疾患を受診した医療機関に問い合わせをする必要があります。

 5. 障害年金でもらえる金額

障害年金制度で受け取れる金額について、障害基礎年金・障害厚生年金・障害手当金のそれぞれを解説します。

(1)障害基礎年金で受け取れる金額

障害基礎年金で受け取れる金額は、障害等級が1級の場合は年間976,125円、2級の場合は年間780,900円です。

出典:NPO法人障害年金支援ネットワーク:令和3年度(2021年度)の障害年金の金額

※支給額は毎年改定されますので、上記の金額は令和3年時点の金額となります。

さらに、障害者の方に「高校を卒業する以前の子どもがいる」という場合は、1~2人目の子供なら1人につき年額224,700円が、3人目以降の子供なら1人につき年額74,900円が加算されます。

出典:NPO法人障害年金支援ネットワーク:令和3年度(2021年度)の障害年金の金額

(2)障害厚生年金で受け取れる金額

障害厚生年金で受け取れる金額は、平均標準報酬額や、厚生年金に加入していた期間の長さにより変わります。収入(給与や賞与)が多く、厚生年金に入っていた期間が長い人ほど受け取れる金額も多くなることになるため、収入が低い、または、厚生年金の加入期間が短い方の場合、障害の状態に対して受け取れる金額が少なくなってしまう恐れもあります。

この問題を防ぐため、収入や加入期間に関係なく一定の金額を受け取れるよう、最低保証金額が設けられています。

※3 障害厚生年金3級の最低保障額は586,300円

出典:日本年金機構:(PDF)障害年金ガイド

また、障害厚生年金では、障害等級が1級または2級で65歳未満の配偶者がいる場合は、年額224,700円の配偶者加給年金が加算されます。

出典:NPO法人障害年金支援ネットワーク:令和3年度(2021年度)の障害年金の金額

(3)障害手当金として受け取れる金額

障害手当金は厚生年金による補助金のため、障害厚生年金と同じく、平均標準報酬額や厚生年金に加入していた期間の長さにより、金額が変わります。

ただし、障害厚生年金と同じく最低保証額が設けられているので、発達障害のある方にとって心強い支援となるはずです。

※4 (報酬比例額の年金額×2)を一時金として支給します。最低保証額は1,172,600円。

出典:日本年金機構:(PDF)障害年金ガイド

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