目次
2. カミングアウトして感じたメリット・デメリット
2-1. 家族とは「距離が近い」からこその難しさも
実際に発達障害のことを開示してみてどうだったのか、感じたメリット・デメリットについてもアンケートで伺いました。
まず家族に対して伝えるメリットとしては、伝える以前よりも安心感が増した、コミュニケーションが改善した、との回答が複数ありました。
発達障害の特性による困りごとは、本人はもちろん、身近に暮らす家族にとっても心配なもの。家族からすれば「何が原因で問題が起きているのかが分からない」よりも、「困りごとや悩みごとの原因は発達障害だ」とハッキリ分かる方が良いのかもしれません。
「家族」に障害を開示して感じたメリット(記事掲載用に回答内容を一部編集しています)
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一方でデメリットとしては、発達障害のことを本当に理解をしてもらうまでに時間がかかった、うまく理解が得られなかったという回答も。
発達障害の特性は、障害について詳しくない人からすると「性格の問題」や「努力不足」のように見えてしまうケースもあります。特に大人になってから働きづらさ・生きづらさが表面化した場合、家族からは「子どもの頃は大きな問題がなかったのだから、障害ではないのではないか」というように見えてしまうのかもしれません。
「家族」に障害を開示して感じたデメリット(記事掲載用に回答内容を一部編集しています)
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2-2. 友人とは変わらない付き合い、一方で恋人は「将来」に対する不安も
友人・恋人に対して障害を開示することのメリットとしては、自分を包み隠す必要がなくなり、以前よりも自然に付き合えるようになったとの回答がありました。
特徴的だったのは、友人に対して障害を開示したことのデメリットを挙げた人が一人もいなかったことです。友人は家族と比べると一定の距離感があり、また先ほど「1-2. 友人・恋人には、関わり方や親しさの度合いによって伝える範囲を決める」の章でもご紹介したように、そもそも信頼の置ける人にだけ伝えているので、カミングアウトした・しないによらず変わらない関係を保てているのかもしれません。
「友人・恋人」に障害をカミングアウトして感じたメリット(記事掲載用に一部編集しています)
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一方「恋人」については、将来に対する不安をデメリットとして回答した方も。
注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)は遺伝的な要因が複雑に関係している*とも言われています。そのため、パートナーが結婚に対して消極的になってしまうのではないか、との回答がありました。
「友人・恋人」に障害を開示して感じたデメリット(記事掲載用に一部編集しています)
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2-3. 結論としてカミングアウトした方がいい?しない方がいい?
筆者の個人的な考えではありますが、ここまでのアンケートの結果と筆者の経験を総合して考えると、誰にも開示せず一人で悩み続けるよりも、適切な範囲で開示をした方が良いのではないかと思います。
筆者の場合、一人きりで情報を集め、病院を受診し、悩みを抱え込んでいたときには、どこか自分でも「私は障害者である」ということを受け止め切れていませんでした。しかしパートナーに障害のことを打ち明けたときに、初めて自分の障害とまっすぐに向き合えた感覚がありました。
「他人に開示する」ということは、「私は障害者である」と認めることになりますし、自分の弱い部分を外にさらけ出すことでもあります。しかしその行為が、自分自身が障害と向き合っていくための、一つの大切なステップであるような気がするのです。
ただアンケートの回答にもあったように、筆者の場合も一部の人はなかなか受け入れてくれませんでしたので、「伝え方をもう少し工夫すべきだったかな」という反省もあります。
開示する相手に少しでも発達障害のことを理解してもらうためには、どのように伝えれば良いのでしょうか。
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