認知行動療法とは|発達障害あるある「認知の歪み」の対策

発達障害の特性による困りごとに有効だと言われている理由

先ほども触れましたが、発達障害のある方はその脳の特性から、ものごとを偏った捉え方をする認知の歪みが起こりやすいと言われています。この原因となっているのが、先ほど紹介をした「スキーマ」です。
認知行動療法によって自分の認知の歪みの原因となっている「不適切なスキーマ」に気付き、適切なスキーマを使うことによって、発達障害のある方が抱えやすい「生きづらさ」を軽減する効果が期待できます。

不適切なスキーマの例

認知の歪みの原因となる、不適切なスキーマの主な例を紹介します。

1. 白黒思考(全か無か思考)
すべての物事に対して、白か黒か、0か100かで完全に分けて考えようとする

2. 過度な一般化(行き過ぎた一般化、極端な一般化)
自分のわずかな経験や出来事を、すべてのこととして結論づけようとする

3. 認知のフィルター(心のフィルター)
物事のネガティブな面ばかりを見てしまう 

4. マイナス思考(肯定的なものの否認)
良いことがあっても、良いと思えないばかりか、悪いことにすりかえてしまう

5. 破局的な解釈
根拠がないのに、「最悪な結果」を想定し、ネガティブな結論を出してしまう。下記の2つがある
・読唇術思考:周りの人の気持ちを勝手に悪いように決めるつける
・先読みの誤り:まだ分かりようがない将来のことを悪いように決めつける 

6. 過大解釈と矮小化
自分の短所を必要以上に大きく、長所を極端に小さく考える。他人に対しては、逆に良いところが大きく、悪いところが小さく見える

7. 感情の理由づけ(感情的決めつけ)
自分の感情を根拠に、ものごとを決めつけてしまう 

8. 「~すべき」思考
何かをやろうとするときに「〜すべきだ」「〜すべきでない」とかたくなに決めつけて考える。自分に向くと、できなかった場合に罪の意識を感じる。他人に向くと、その通りに動いてくれなかった場合にストレスを感じる

9. レッテル貼り(ラベリング)
一度のできごと・一部の性質だけで、自分や他人のイメージを作り上げ、そのイメージを固定化させてしまう。「過度な一般化」が極端に行き過ぎた状態

10. 自己関連付け
何かが起こったときに、すべて自分によるものだと思い込む。悪いことが起こった場合は、自分に責任がないのにすべて自分のせいだと考える

認知の歪みの例

認知の歪みには、複数の不適切なスキーマが影響していることがあります。「自分が失敗したとき」「他者が失敗したとき」のそれぞれについて、具体例に沿って説明します。


【例① 自分が失敗したとき】

寝坊をして、いつもの電車に乗り遅れてしまい、1本あとの電車に乗った

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不適切なスキーマ
・白黒思考・認知のフィルター:走って向かえば間に合うかもしれないが、絶対に遅刻すると考える
・肯定的なものの否認:過去に1本あとの電車で間に合ったことがあったが、今回は遅刻するに違いないと考える
・破局的な解釈:「解雇」という最悪の結果を考える

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認知の歪み
「絶対に遅刻をしてしまう。遅刻したら会社を解雇される」


【例② 他者が失敗したとき】

同僚が誤って自分のデータを消去してしまった

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不適切なスキーマ

・過度な一般化・レッテル貼り:同僚に悪気がなかったとしても、一度のミスで「悪い人間」だと判断する
・破局的な解釈:自分が嫌いだから、悪意を持って故意にやったと思い込む
・感情の決めつけ:感情が現実に影響すると信じる

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認知の歪み
「同僚は悪いやつで、わざとやった。落ち込んだから、今日は仕事で失敗するだろう」


このように不適切なスキーマによって、極端で否定的な考えにとらわれてしまい、なんでも自分・他者が悪いと考えたり、自分が攻撃されていると思い込んだりすることで、「生きづらさ」を感じることが少なくありません。

自分の「考え方のクセ」を見つめなおし、適切なスキーマを習得していくのが、認知行動療法なのです。

認知行動療法で用いられる手法

認知行動療法で用いられる主な手法は、以下の5種類です。

1. エクスポージャー法(暴露療法)

不安を感じる状況や刺激から逃げるのではなく、段階的に向き合うことで、少しずつ不安に慣れて克服する方法
【例】高所恐怖症がある場合に、ビルの2階→3階…と少しずつ高いところにつれていき、段階的に高いところに慣れさせる

2. リラクゼーション法

心身をリラックスさせて不安を和らげる方法。深呼吸や瞑想などをするなど

3. セルフモニタリング法

ワークシートや手帳等に1週間の自分の行動と感情の記録をつけることで、自分がいつ・どこで・どのようなストレスを感じているのかを明確化し、それに基づいてストレスへの対処法を選択する方法

4. コラム法(カラム法、認知再構成法)

ワークシートを用い、自分の感情や行動が発生した流れを明らかにすることで、認知(考え方のクセ)に気づき、適切なスキーマを習得する方法

5. 問題解決法

問題となっている状況に対し、課題を整理し、どのような対処ができるのかを探して、改善するための具体的な計画を立てる方法

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