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発達障害のある方の合理的配慮事例|職場コミュニケーション編

発達障害の特性により「職場でのコミュニケーションが苦手」という方に向け、実際に提供されている合理的配慮事項と自己対処法をセットで紹介します。

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合理的配慮とは、「障害による困りごとへの配慮を、企業や自治体、教育機関等の事業主(※)に求めることができる」という制度です(※以下、本文では「職場」と表記します)。合理的配慮について職場と調整をすることは、発達障害のある方が安定して長く働いていくために大切なポイントとなります。 では、具体的にどんな内容であれば、職場に合理的配慮を求めることができるでしょうか。 今回は、発達障害の特性がある方が抱えやすい「コミュニケーション」の苦手に対する配慮事例を紹介をします。 [toc] 相談前に押さえておこう〜合理的配慮の前提となる自己対処〜 「合理的」と付いているのには理由がある。 「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」などの法律では、障害のある方に対し職場は合理的配慮の提供をおこなうことを義務づけています。 ただし、「障害者が求めたことは、どんな内容でも配慮してもらえる」というわけではありません。 法律では、職場が合理的配慮を提供する場合に「負担が重すぎない範囲で」と定められています。職場の側に配慮を求めるだけでなく、障害者の側も「自分でおこなえる対処」を提示して、互いに無理のない範囲をすり合わせることが必要です。 これが、単に「配慮」ではなく「合理的配慮」と書かれている理由です。 「合理的であるかどうか」を判断するポイントは、「障害が原因となる困難さのうち自己対処では対応しきれないことであり、かつ職場側にとっても重い負担がなく提供可能な範囲かどうか」ですので、しっかりと押さえておきましょう。 なお、合理的配慮については以下の記事で詳しく解説しています。実際に職場と合理的配慮の相談をする前に、ぜひご一読ください。 参考 合理的配慮とは?基礎知識をまとめました。 「合理的配慮」申請マニュアル 流れとポイントを紹介 合理的配慮のよくある質問集 困りごと・原因・自己対処の例・合理的配慮の例 合理的配慮の例を、職場で起こりやすいコミュニケーションの困りごと別に整理しました。実際に提供されている配慮事例とセットで、「原因はなにか」「自己対処として何ができるか」の例もまとめています。困りごとの原因は一人ひとりの特性によって異なるため、自己対処と合理的配慮の内容は「自分に合ったもの」にする必要があります。また、職場や職務内容によっては、以下の配慮の提供が難しいケースもあります。今回ご紹介するものは、あくまでも参考としてお読みください。 上司へ声掛けをするタイミングが分からず、報連相(報告・連絡・相談)ができない 原因の例 シングルレイヤー思考により、文脈や言外の意味理解が難しく、上司に話しかけてよいタイミングや場の空気が読めない 自己対処の例 「毎朝」「毎週月曜日」など頻度を定め、上司にメールで現在の状況を送る 日報を書いて上司に提出する 合理的配慮の例 「毎朝10分」「毎週1時間」など、頻度と時間を定めて、定時報告する時間を上司に予定してもらう 上司の方から定期的に状況を確認してもらう 曖昧な表現(なるべく早く、いい感じに、など)が理解できない 原因の例 ハイコントラスト知覚により、抽象的に表現された内容の要点を捉えることが難しく、具体的な数字や判断基準のない表現が受け入れにくくなる。など 自己対処の例 あいまいな指示を受けた際、そのまま引き受けてしまわずに「具体的な日時を決めてよいでしょうか?」「もう少し具体的に、どの程度の品質が必要でしょうか?」と確認をおこなう 合理的配慮の例 指示に具体的な期限や判断基準を入れてもらうようお願いする 締切の指示:×「なるべく早く」→ ○「△日の□時までに」 品質の指示:×「いい感じに」→ ○「社内検討用なので手書きのラフでOK」 話を聞きながらメモをとることが苦手 原因の例 シングルレイヤー特性により、聞いた内容を処理しながら、同時にメモを取ることが難しくなる。話の内容全体を把握しながら、要点を捉えることが苦手。など 自己対処の例 「ゆっくり話してもらう」「一つメモを取り終わったら、次の話をしてもらう」など、その場で相手にお願いする。 紙にペンでメモするだけでなく、「ボイスレコーダーを使う」などの方法も検討する 話の全部をメモしようとするのではなく、要点だけ(日付、人物、方法など)をキーワードでメモするようにする。電話であれば、電話メモのテンプレートを用意しておく 合理的配慮の例 メモが必要な口頭ではなく、なるべくメールやチャット等の文章で指示を出してもらうようにする 説明をするのが苦手 原因の例 衝動性(行動のブレーキの利かなさ)により、話そうとすることを整理する前に思いついたまま話し始めてしまう。頭の中だけで考えを整理することが苦手。など 自己対処の例 説明することをあらかじめ紙などに書き出し、5W1Hで整理してから話す。 その場で説明を始めず、少し待ってもらい、状況や考えを整理してから改めて説明する 口頭で説明せず、メールやチャット等、文章で回答する 合理的配慮の例 何か説明を求めるときには、口頭ではなくメールやチャット等で事前に依頼してもらうようにする 会議で説明を求めるときには、事前に通知して、考えを整理し準備する時間をもらうようにする 話を聞き続けるのが苦手 原因の例 衝動性(抑制の効かなさ)により、他のものに注意が向いてしまうと、そちらに意識を持っていかれてしまう。ワーキングメモリーの弱みにより、記憶にとどめておける情報量が少ないので、聞き続けると情報が処理しきれなくなる。など 自己対処の例 睡眠不足などにより集中力そのものが下がっていることがあるので、生活リズムを整える 話を聞くときにはPCの画面を消す・手元の資料を閉じるなど、他のものに注意が行かないよう工夫する 合理的配慮の例 一度に多すぎる情報を与えないよう、小出しにしてもらう。その上で、少し待ってメモや整理する時間をもらう 思ったことをそのまま口に出してしまう 原因の例 衝動性(行動のブレーキの効かなさ)により、思った瞬間には、すでに口に出てしまっている。(「口に出してはいけないな」と判断が終わる前に、すでに行動してしまっている)など 自己対処の例 思わず口に出してしまったことを、無理に取り繕おうとせず謝る。そのうえで、本来言おうとしていたことを言い直すように習慣づけする。 合理的配慮の例 話している際にパニックになっている様子が見受けられたら、「落ち着くための時間を設けてよい(5分休憩など)」旨を伝えてもらう 失言があったときには、その場で注意してもらうようにする(失言を謝る、言い直す習慣づけのため) 合理的配慮の相談をするための3ステップ ここまでご紹介してきたように、職場と合理的配慮を相談する際には、前提として「自己対処(セルフケア)として何ができるか」を考える必要があり、そのためには「原因は何か」を知っておく必要があります。 つまり、以下の3ステップで考えることが大切です。 ステップ1:自分の特性について知る ステップ2:自己対処として何ができるかを考える ステップ3:自分の特性と合った合理的配慮を探す(相談する) 発達障害の特性や、それによる困りごとは人それぞれです。「どのような特性があり、それに対してどのような対策が取れるのか」を知っておくことが、自分に合う対策方法や合理的配慮を見つけることへとつながるのです。 ただ、目の前の仕事や生活で困りごとを抱えている状態で、正しい知識を独学で身に付けることはたいへんです。 「自分の特性にあった自己対処は何をすればいいの?」「どのような形・タイミングで職場と相談すればいいの?」など、悩んでしまうことがあるかも知れません。 そんなときには、自分一人で抱え込まずに、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【2023年最新】発達障害者が押さえておきたい「法改正」

発達障害当事者が押さえておきたい法改正のポイントを紹介します。今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」について分かりやすく説明します。

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近年、発達障害がある方を支援するための、国の制度が強化されているのをご存じでしょうか。 2023年1月、厚生労働省は「障害者雇用率」の引き上げをおこなう方針を発表しました。また、2024年4月1日から施行される法律(改正 障害者総合支援法)では、「就労選択支援」という制度が新たに盛り込まれる予定です。 これらの制度は、「だまっていても自動的に助けてくれる」というものではありません。障害者の側も「どのような支援を・どうすれば受けられるのか」を知り、自分に必要な支援が受けられるよう、適切な窓口に相談することが必要になってきます。 今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」の2つの制度について、当事者として押さえておきたいポイントを解説します。 [toc] ポイント① 障害者雇用率が引き上げられます 障害者雇用率制度とは? 障害者雇用率制度とは、「障害者が能力を発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指す」ことを目的として、事業主に一定の割合で障害者の雇用を義務づける制度です。障害者雇用促進法という法律で定められています。 企業や公的機関など、すべての事業主は、常時雇用する従業員のうち、一定の割合以上の障害者を雇用することが法律で義務付けられています。この「法律で義務づけられた、障害者を雇用しなければならない割合」のことを法定雇用率と言います。 法定雇用率を満たしていない企業等は、国に納付金を納めなければなりません(満たしている企業には、国から調整金を支給)。厚生労働省の発表[1] によると、2022年12月時点での法定雇用率達成企業の割合は48.3%でした。半数以上の事業主が法律上の義務を達成できず、納付金を支払っているのが現状です。 納付金の支払いだけでなく、実雇用率(実際に雇用されている障害者の割合)が低い企業に対しては指導が行われ、改善が見られない場合には企業名が公表されるという罰則もあります。 制度についてのより詳しい内容は、以下のコラムもご参照ください。 参考:障害者雇用とは?オープン就労を目指す方に向け、基礎情報をまとめました。 実績の数字だけを見ると、日本における障害者雇用の推進はまだ道半ばです。ただ、近年は「CSR(企業の社会的責任)」や「SDGs」の観点から、障害者雇用に力を入れる企業が増えています。毎年9月には「障害者雇用月間」に合わせて民間メディアから「『障害者雇用率が高い会社』ランキング TOP100社」が発行[2] されるなど、社会的な注目度も高まり続けています。 参考 [1] 令和4年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省 [2] 「障害者雇用率が高い会社」ランキングTOP100社 | CSR企業総覧 | 東洋経済オンライン どう変わるの? 法定雇用率は、事業主の区分によって割合が定められています。例えば、民間企業(従業員45.5人以上)の法定雇用率の割合は、2.7%(現在より0.4ポイントアップ)に、以下の2段階で引き上げられることが予定されています。 現在は2.3% → 2024年4月から2.5%に引き上げ(現在より0.2ポイントアップ) → さらに、2026年度中に2.7%に引き上げ(現在より0.4ポイントアップ) これまで、法定雇用率の引き上げが発表された際の上げ幅は0.1または0.2ポイントずつでしたしかし、今回は合計0.4ポイントが引き上げられることが発表されており、国の障害者雇用率に対する姿勢が、より積極的になっている様子がうかがえます。 さらに、今回は法定雇用率の引き上げと合わせて「障害者を積極的に雇用する事業主」への新たな支援も発表されました。支援の概要は以下のとおりです。 ・障害者を雇用するための助成金を設立 ・中小企業などには助成金を上乗せ ・短い労働時間(週10〜20時間)で働く障害者も、法定雇用率の計算に含めて良い 詳しい内容は、厚生労働省が公開している以下の資料で確認できます。 参考:令和5年度からの障害者雇用率の設定等について 発達障害の当事者にどんな影響があるの? 法定雇用率の引き上げにより、事業主には「法定雇用率を満たすために、今よりも多くの障害者を雇用しよう」というモチベーションが生まれます。これにより、発達障害のある方にとっても働く機会が増えることが期待されます。障害者を雇用したい事業主が増えることで競争が生まれ、雇用条件(給与や福利厚生など)がより良くなる可能性もあります。 また、中小企業に対する新たな支援がつくられることで、これまでは大企業中心だった障害者雇用が、今後は中小企業でも広がっていくことが期待できます。 ポイント② 「就労選択支援」の制度が新しく作られます 就労選択支援とは? 就労選択支援とは、障害のある方が就職先や働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して本人の希望・能力・適性などに合った「仕事の選択」を支援する新たな制度のことです。障害者総合支援法という法律に、2024年の4月から新たに盛り込まれる予定です。 補足:就労アセスメントとは? 就労アセスメントとは、働くために必要な能力や適性を客観的に評価し、本人の強みや課題を明らかにして、働くために必要な支援や配慮を整理することです。アセスメント(assessment)は「評価する」という意味です。 就労アセスメントは、これまでも就労系障害福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援B型)の利用を始める際におこなわれていました。障害のある方が本人の希望や仕事の能力、適性に合った仕事をするためにとても大切なものですが、以下のような課題もありました。 ・障害のある方が必ずしも就労系障害福祉サービスを利用するとは限らず、アセスメントを受ける機会がないまま、就職・転職活動をしてしまう ・せっかくアセスメントをおこなったのに、実際の就職・転職活動で十分に活用されず、結局、自分の能力や適性に合った仕事を選べていないケースがある 参考:改訂版・就労移行支援事業所による就労アセスメント実施マニュアル(厚生労働省) 制度ができるとどうなるの? 障害のある方が、「就労系障害福祉サービスの利用」や「ハローワークでの就職・転職活動」をする前に、就労選択支援サービスを利用できるようになります。イメージとしては以下の図のとおりです。 画像引用元:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案の概要(https://www.mhlw.go.jp/content/001000995.pdf)5ページ「2-① 就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等」より このサービスでは、支援者と障害者本人が共同で、以下のような内容を評価・整理します。 どのような職種で働きたいか どのような雇用条件を望むか 仕事に対して、どのような能力・適性があるか 実際に働き始めたあと、どのような合理的配慮*が必要か(*合理的配慮について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください) これらを評価・整理して作成された就労アセスメントは、就労系障害福祉サービスの利用を希望する際に活用され、自治体の審査の参考資料として扱われます。福祉サービスを利用せず就職を目指す場合にも、就労アセスメントの内容がハローワークへ連携され、職業指導などをおこなう際に活用されます。 このように、就労アセスメントを活用することで、障害のある方がより自分の能力・適性に合った仕事を選べる可能性が高まります。 なお、これまでは就労系障害福祉サービスを利用できるのは「現在働くことができていない人」だけでした。この制度の開始に合わせて、現在働いている人が、一時的に就労系障害福祉サービスを利用できるようになります。一時的に利用できるのは、以下のような場合です。 ・働き始めに、最初は短い時間から始め、少しずつ勤務時間を増やしていく場合 ・働いている人が休職し、そこから復職を目指す場合 詳しい内容は、厚生労働省が公開している以下の資料で確認できます。 参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案の概要 発達障害の当事者にどんな影響があるの? 発達障害のある方にとっては、自分の能力・適性だけではなく、障害による特性に合った仕事を選びやすくなることが期待されます。 大人の発達障害がある方の場合、障害による特性が原因で離職・転職されているケースもあるため、以下のように悩んでしまうケースが少なくありません。 ・特性や適性に合う仕事が見つかるか不安 ・自分の強みややりたいことが分からない ・就職先にどんな「合理的配慮」を依頼すべきか分からない 皆さんの中には、学生時代に就職活動で「自己分析」をした方もいらっしゃると思いますが、障害の有無にかかわらず客観的に自分を見つめ直して分析するのは難しいもの。就労選択支援のサービスが利用できれば、支援者の力を借り、一人でやるよりも客観的に自己分析=就労アセスメントをすることができます。 一人で悩まず、専門の機関に相談を この記事の冒頭でも述べたように、今回ご紹介した制度は、「だまっていても自動的に助けてくれる」というものではありません。障害者の側も「どのような支援を・どうすれば受けられるのか」を知っておく必要があります。 しかし、現に今、仕事や生活で生きづらさ・働きづらさを感じている方にとっては、制度を調べるだけでもとても大変なものです。自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
認知行動療法とは|発達障害あるある「認知の歪み」の対策

認知とは「ものごとのとらえ方」です。認知行動療法は、とらえ方を見直していくことで、生きづらさやストレスを軽減させる治療法です。仕組みや効果を分かりやすく解説します。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
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認知行動療法とは、心理療法(精神的な働きかけによる治療法)の一種です。アメリカで開発され、英語名(Cognitive Behavior Therapy)を略して「CBT」とも呼ばれます。  “認知”とは、私たちの「ものごとのとらえ方」のこと。とらえ方を見直すことにより、そこから生まれる“感情”や“行動”に働きかけ、生きづらさやストレスを軽くしていく治療法が認知行動療法です。 注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)など「発達障害」の特性に対するアプローチとして、認知行動療法を取り入れることがあります。 また、近年は精神科の治療としてだけでなく、教育やスポーツ、ビジネスでも認知行動療法の考え方が取り入れられているものもあります。 [toc] 認知行動療法の仕組み 認知・感情・行動の関係性 私たちの“行動”は、感情によって左右されます。そして私たちの“感情”は、ものごとのとらえ方、すなわち“認知”によって左右されます。 例えば「Aさんが朝、会社へ行く準備をしている場面」を想像してみましょう。ふと時計を見ると7:00。出発予定の7:30まで残り30分です。 「あと30分しかない!」と思ったAさんは、頭の中に「遅刻してしまうかもしれない」という考えが浮かび、焦って不安な気持ちになりました。不安にあおられるように慌てて準備し出かけたせいで、財布を忘れたまま出かけることになってしまいました。 もしも、Aさんが「まだ30分ある」と思ったとしたらどうだったでしょう。「残り時間が30分」という状況は同じですが、「もう○○しかない」ではなく「まだ○○もある」と考えられる人であれば、落ち着いて出かける準備をすることができるため、財布を忘れずに済んだかもしれません。 このように「出発時間まで残り30分だと気付いた」というできごとに対して「あと30分しかない!」と認知するか「まだ30分もある」と認知するかにより、湧いてくる感情はだいぶかわります。結果として、そのあとの行動も変わってきます。認知・感情・行動は互いに影響を与え合っているのです。 この仕組みに働きかけをおこなって、凝り固まってしまった認知を解きほぐし、そこから受けるストレスを減らして、自由に考え行動できるようにする。それが認知行動療法です。 詳しくは後述しますが、発達障害のある方はその脳の特性から認知の歪みが起こりやすいと言われており、それに対するアプローチとしても認知行動療法が取り入れられる場合もあります。 認知のもととなる「スキーマ」 スキーマとは、「生まれ持った気質(性格)」と「過去の経験」や「記憶の影響」を受けて作り上げられた、個人の考え方のクセのようなものです。 例えば、「電車に乗り遅れると遅刻をする」「鼻が高くて目が青い人は外国人だ」などがあります。 スキーマは日常生活を送るときや、危険や失敗を回避するときに役立つものですが、過度な思い込みをしたり、過去の失敗経験だけに注目してネガティブ思考になったりすることがあります。 不適切なスキーマによって認知が歪む例としては、「電車に乗り遅れると、絶対に遅刻をする。遅刻をすると会社をクビになる」「鼻が高いから、外国の方である。日本語を話せない可能性が高い」などがあります。つまり、情報不足のまま拡大解釈をしてしまうのです。 発達障害の特性による困りごとに有効だと言われている理由 先ほども触れましたが、発達障害のある方はその脳の特性から、ものごとを偏った捉え方をする認知の歪みが起こりやすいと言われています。この原因となっているのが、先ほど紹介をした「スキーマ」です。認知行動療法によって自分の認知の歪みの原因となっている「不適切なスキーマ」に気付き、適切なスキーマを使うことによって、発達障害のある方が抱えやすい「生きづらさ」を軽減する効果が期待できます。 不適切なスキーマの例 認知の歪みの原因となる、不適切なスキーマの主な例を紹介します。 1. 白黒思考(全か無か思考)すべての物事に対して、白か黒か、0か100かで完全に分けて考えようとする 2. 過度な一般化(行き過ぎた一般化、極端な一般化)自分のわずかな経験や出来事を、すべてのこととして結論づけようとする 3. 認知のフィルター(心のフィルター)物事のネガティブな面ばかりを見てしまう  4. マイナス思考(肯定的なものの否認)良いことがあっても、良いと思えないばかりか、悪いことにすりかえてしまう 5. 破局的な解釈根拠がないのに、「最悪な結果」を想定し、ネガティブな結論を出してしまう。下記の2つがある・読唇術思考:周りの人の気持ちを勝手に悪いように決めるつける・先読みの誤り:まだ分かりようがない将来のことを悪いように決めつける  6. 過大解釈と矮小化自分の短所を必要以上に大きく、長所を極端に小さく考える。他人に対しては、逆に良いところが大きく、悪いところが小さく見える 7. 感情の理由づけ(感情的決めつけ)自分の感情を根拠に、ものごとを決めつけてしまう  8. 「~すべき」思考何かをやろうとするときに「〜すべきだ」「〜すべきでない」とかたくなに決めつけて考える。自分に向くと、できなかった場合に罪の意識を感じる。他人に向くと、その通りに動いてくれなかった場合にストレスを感じる 9. レッテル貼り(ラベリング)一度のできごと・一部の性質だけで、自分や他人のイメージを作り上げ、そのイメージを固定化させてしまう。「過度な一般化」が極端に行き過ぎた状態 10. 自己関連付け何かが起こったときに、すべて自分によるものだと思い込む。悪いことが起こった場合は、自分に責任がないのにすべて自分のせいだと考える 認知の歪みの例 認知の歪みには、複数の不適切なスキーマが影響していることがあります。「自分が失敗したとき」「他者が失敗したとき」のそれぞれについて、具体例に沿って説明します。 【例① 自分が失敗したとき】 寝坊をして、いつもの電車に乗り遅れてしまい、1本あとの電車に乗った ▼▼▼ 不適切なスキーマ・白黒思考・認知のフィルター:走って向かえば間に合うかもしれないが、絶対に遅刻すると考える・肯定的なものの否認:過去に1本あとの電車で間に合ったことがあったが、今回は遅刻するに違いないと考える・破局的な解釈:「解雇」という最悪の結果を考える ▼▼▼ 認知の歪み「絶対に遅刻をしてしまう。遅刻したら会社を解雇される」 【例② 他者が失敗したとき】 同僚が誤って自分のデータを消去してしまった ▼▼▼ 不適切なスキーマ ・過度な一般化・レッテル貼り:同僚に悪気がなかったとしても、一度のミスで「悪い人間」だと判断する・破局的な解釈:自分が嫌いだから、悪意を持って故意にやったと思い込む・感情の決めつけ:感情が現実に影響すると信じる ▼▼▼ 認知の歪み「同僚は悪いやつで、わざとやった。落ち込んだから、今日は仕事で失敗するだろう」 このように不適切なスキーマによって、極端で否定的な考えにとらわれてしまい、なんでも自分・他者が悪いと考えたり、自分が攻撃されていると思い込んだりすることで、「生きづらさ」を感じることが少なくありません。 自分の「考え方のクセ」を見つめなおし、適切なスキーマを習得していくのが、認知行動療法なのです。 認知行動療法で用いられる手法 認知行動療法で用いられる主な手法は、以下の5種類です。 1. エクスポージャー法(暴露療法) 不安を感じる状況や刺激から逃げるのではなく、段階的に向き合うことで、少しずつ不安に慣れて克服する方法【例】高所恐怖症がある場合に、ビルの2階→3階…と少しずつ高いところにつれていき、段階的に高いところに慣れさせる 2. リラクゼーション法 心身をリラックスさせて不安を和らげる方法。深呼吸や瞑想などをするなど 3. セルフモニタリング法 ワークシートや手帳等に1週間の自分の行動と感情の記録をつけることで、自分がいつ・どこで・どのようなストレスを感じているのかを明確化し、それに基づいてストレスへの対処法を選択する方法 4. コラム法(カラム法、認知再構成法) ワークシートを用い、自分の感情や行動が発生した流れを明らかにすることで、認知(考え方のクセ)に気づき、適切なスキーマを習得する方法 5. 問題解決法 問題となっている状況に対し、課題を整理し、どのような対処ができるのかを探して、改善するための具体的な計画を立てる方法 認知行動療法の受け方 認知行動療法は医師やカウンセラーのもとで受けることが基本のため、病院・クリニックで相談してみましょう。診療科目は精神科、または心療内科です。 ただし、すべての病院・クリニックで認知行動療法をおこなっているわけではないので、事前に問い合わせたりWebサイトで調べたりしてから、診察を受ける方がよいでしょう。 なお、発達障害の特性に応じたサポートをおこなっている就労移行支援事業所でも、この認知行動療法に基づいたプログラムを提供していることがあります。 参考:発達障害のある方の「働く」をサポート|就労移行支援事業所ディーキャリア 以下は医療機関で認知行動療法を受ける場合の期間・費用の例をご紹介します。 治療にかかる期間は? 相談内容やその人の状況により異なりますが、数か月〜1年程度の期間をかけるのが一般的です。1回30分〜1時間程度の面談を1〜2週間ごとにおこないます。 治療にかかる費用は? 内容により異なりますが、1回あたりの費用は数千円かかります。健康保険が適用されず、全額自己負担となる場合もあるので、事前に病院・クリニックに確認しておいた方がいいでしょう。 自分でやる方法はある? 「かかりつけの病院で認知行動療法をおこなっていない」「費用をなるべく抑えたい」などの理由で、自分で試してみたいという方もいらっしゃるかもしれません。 先ほどご紹介した手法のなかで「セルフモニタリング法」や「コラム法」は、個人でも比較的おこないやすいと言われています。 書籍やWebサイトなどでやり方が紹介されていますので、調べてからおこなうと良いでしょう。Webサイトでは、個人でおこなうときに使えるワークシートを配布しているところもあります。また、最近はスマートフォンのアプリもあります。 参考サイトは以下のとおりです。 厚生労働省|心の健康|認知行動療法 国立研究開発法人 公立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター(CBTセンター) 認知行動療法活用サイト「こころのスキルアップ・トレーニング(ここトレ)」 心をケアするスキルが身につく - デジタル認知行動療法アプリ「Awarefy」 Webサービス・アプリ提供プロジェクト|東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース下山研究室 障害福祉サービスでは認知行動療法を取り入れたプログラムも 障害の有無にかかわらず、自分のことを客観的にとらえることは難しいものです。もし「病院に相談するのは敷居が高い」「自分でやってみたけど、どうも上手くいかない」という場合には、障害福祉サービスに相談するという方法もあります。 就労移行支援事業所・ディーキャリアでは、仕事を続ける上での体調管理やストレスコントロールをおこなうために、認知行動療法の考え方を取り入れたプログラムを提供しています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「特性対策、どうしてる?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「障害特性への対策(自己対処)はどのようなことを行っているか」をテーマに「当事者のリアル」をお伝えします。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。著名人が自身の発達障害について告白する記事や動画を見かけることもあります。 そうした情報を見て「自分は発達障害ではないか」あるいは「自分の子どもは発達障害ではないか」と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 人は誰しも「自分がよく知らないものごと」については不安を感じるもの。当事者同士のリアルな事例を知ることで、少しでも不安が和らいだり、誰かに相談するなど「次のステップ」を踏み出したりするためのお力になれれば幸いです。 第2回は「自分の特性にどんな対策をしているのか」をテーマに、対談をおこないました。 参考記事 「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマにした第1回の対談記事は、以下よりご覧いただけます。 本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 対策①片付けができない → 細かな管理は諦めてザックリ整理 私は片付けがとても苦手で、仕事机の上がいつも書類だらけになってしまうんですよね。とりさんはどんな対策をされていますか? 私は「自分の視界から外れると、すぐに存在を忘れてしまう」という傾向があるので、その対策として、自宅ではコルクボードを活用しています。例えば“免許証の更新ハガキ”や“定期健診の案内”のように「期限があり忘れてはいけないもの」は、すぐ目に入るよう広げた状態にしてコルクボードに貼るようにしているんです。ボードは仕事机の前に置いてあるので目に入りやすいですし、次のアクション(例:免許の更新に行くスケジュールを立てる)にもつなげやすいんですよ。 なるほど、片付けるだけでなく「次にどんなアクションをすべきか」ということも大切ですよね。私も忘れちゃいけない用事は、その場ですぐにスマホのリマインダーアプリに入れるようにしています。一方で、書類の管理はあまりうまくできてなくて…書類をスキャナーで読み取りPCで整理してるんですが、「スキャンする」というアクション自体が面倒になってしまって、結局、書類トレーにがさっと全部放り込んでいるだけになりがちですね…。 分かります…私もスキャナを使っていたことがありますが、面倒で心が折れました。だから、アクションが起こしやすいかどうかって重要だと思います。私は細かくキレイに整理するのが苦手なので、ファイルにガムテープを貼り、中に入ってるものを油性ペンで書いて、ザックリ整理してます。アナログだしぜんぜんスマートじゃないんですが、特性への対策だと割り切ってやっていますね。これってある意味、世間一般の「こうあるべき」っていうイメージをどこまで捨てられるか、だと思うんです。例えば、女性の場合だと「かわいく・オシャレに整理整頓するのが当たり前」のようなイメージがありませんか? たしかに。雑誌やCMなんかでも「オシャレに整理整頓しよう」みたいな売り出し方がされてますよね。かわいいファイルや手帳を使って、マスキングテープでデコって…みたいな。 そう。「それが女子のたしなみ」みたいなイメージがある。でも、それって企業側がマーケティングのために作ってるイメージなんですよね。私もキレイに整理されたオシャレな部屋に憧れますけど、たとえザックリだったとしても、自分の特性に合う方法で整理ができている方が大事だなって思うんです。その結果、特性対策優先の部屋になっているので、お客さんが呼びづらいという難点はありますが(笑) なるほど。ちゃんと特性への対策ができて、自分に最適化されていればいいんだって割り切ると、気持ちも楽になりそうですね。 対策②忘れ物・失くし物が多い → 忘れる前提で、デジタルも活用して対策 私はもう「何をしても絶対忘れる」という前提で対策しています。例えば、ハンカチやティッシュ、ペンなどの小物類は「バッグを替えたときに移し替えし忘れる前提で、全部のバッグに同じモノを入れておく」という感じです。 私も、小物類や化粧品は同じような対策をしています。そう言えば、先日スマートウォッチのおかげで、スマホを忘れずに済んだことがありました。スーパーで買い物して、袋詰めしたときにスマホを置き去りにしちゃったんですが、駐車場でスマートウォッチに「スマホと距離が離れています」って通知が来て、気が付くことができました。 最近は便利なツールが増えましたよね。「忘れ物防止タグ」を使えば、財布の置き忘れなんかにも対策ができそうです。財布やスマホのような「一つしかないもの」は、デジタルツールをうまく使って対策すると良さそうですね。そういえば私、財布やスマホを忘れたことがあまりないんです。何でだろうって考えたんですが、「男性ならでは」の理由があるのかもしれません。 というと? 男性の服って、ポケットがいっぱいあるじゃないですか。私はいつも、スマホはズボンの左ポケットに、財布はジャケットの内ポケットに入れるようにしているので、入ってないと逆に違和感があるんですよ。「あれ?いつもと重さが違うぞ」みたいな。 なるほど、「重さで気づける」っていいですね。たしかにそれは、男女の差があるかもしれない。私の父も、いつもズボンのお尻ポケットに財布を入れていたなぁ。女性の服装だと、そういうのはなかなか難しいですからね。“身に付けるもの”って、働く環境によっても取れる対策が変わってきそうですよね。例えば、無くし物をしないように「財布をベルトにチェーンで付ける」「スマホをネックストラップで首から下げる」といった対策は、学生時代ならファッションだと見てもらえますが、社会人になったらマナー上NGな場面もありますし。 スーツを着なきゃいけない職業だったらチェーンをぶら下げるわけにはいきませんし、私用のスマートフォンを首から下げておくのも、職場によってOK・NGが別れそうです。 合理的配慮として、身に付けることを許可してもらえるよう会社に相談する、という方法もなくはないと思いますが、そんなことまで合理的配慮を求めていいのか、とも思いますしね…。いくら「特性への対策だ」と言っても、“社会人としてマナー”や“職場環境”、“周囲の人たちとの関係性”など、いろんな理由でできないこともありそうです。 対策③段取りよく物事を進めるのが苦手 → ツールを活用して管理、仕事では手間がかかりすぎない方法を相談 お仕事だと、タスクやスケジュールの管理をPCのツールで行うことが多いと思いますが、とりさんはいかがですか? はい、仕事では会社から指定されたツールを使ってタスクやスケジュールの管理をしています。個人的には、管理のために手間をかけ過ぎないよう、会社側と合理的配慮の調整をすることが大切じゃないかと思っています。 「管理のために手間をかけすぎない」とは、具体的にどういうことでしょう? 管理が複雑すぎると、それだけで脳のエネルギーを無駄に使ってしまうと思うんです。例えば、誰かから仕事を依頼されたとき、忘れないよう手元にメモしておくだけなら大きな手間ではありません。でも、タスク管理ツールに登録しようとすると1. タスクのタイトルを決める2. 担当者を設定する3. 期限を設定する4. 依頼内容をメモする…というように、タスクを登録し終わるまでにいくつものステップが必要です。これでは仕事をする以前に、仕事の管理をするだけで脳のエネルギーをたくさん使ってしまいます。 なるほど。段取りよく物事を進めるのが苦手だからといって、キッチリ管理しようとし過ぎると、それはそれでエネルギーを余分に使っている状態になってしまう、ということですね。 はい。もちろん、ツールはうまく使えば便利ですし、会社ではチームで仕事をしているので、指定されたツールを使う必要もあります。でも、本当に大切なのは、依頼された仕事を抜け漏れなく行うことのはず。抜け漏れをなくすために、「難しいツールではなく、簡単なツールを使えるようにしてもらう」「タスクやスケジュールの管理そのものを、誰かに助けてもらう」といった合理的配慮を、会社側と相談してもいいんじゃないかと思います。 「管理そのものを、誰かに助けてもらう」というのは、年齢が上がれば上がるほど、ちゃんと会社側と相談しておいた方が良さそうですね。20代のころは「上司の指示に従って仕事を行う」ことが当たり前ですが、30代になれば自己管理して仕事を進めることが求められますし、世間の一般的なイメージからも「年齢を重ねた大人として、自己管理ができることは当然だ」と見られがちな気がします。 もしかしたら、30代というのは「自分の障害特性」と「社会的に求められる役割」とがかみ合わなくなってくる年代なのかもしれませんね。 たしかに、30代は仕事で責任の範囲が広がるだけでなく、家庭においても結婚や子育てをする人が多い年代です。若いころとは求められる役割が変わっていきますよね。私も30代のころは、「自分の特性としてはちょっとしんどいけど、家族のために無理してがんばらなきゃいけない」っていうシーンがありました。でも40歳を過ぎると、今度はちょっと楽になったような気もするんです。例えば、30代で初めて部下ができたときは「頼りになる上司」にならなきゃいけないと思っていて、部下が困っていたら「後はオレに任せとけよ」って仕事を巻き取っていました。自分の仕事の段取りもうまくできないのに、さらに仕事を抱え込むことになって、結果的に体調を崩してしまいました。でも、年齢とともにいろんな経験を積むうちに「上司のあるべき姿は一つじゃない」って分かったんです。みんなをグイグイ引っ張っていくタイプの上司もいれば、一見すると大人しくて頼りないけど、まわりをうまく巻き込んで物事を成し遂げていくタイプの上司もいる。そういうことが分かってくると「理想とはちょっと違うけど、自分ができる方法で一生懸命がんばればいいんだ」って思えるようになってきて。30代から40代へと年を重ねるうちに、自分の中で理想と現実とのすり合わせが少しずつできたんじゃないかと思うんです。 なるほど。「年齢とともに、うまい気の抜き方がつかめてくる」っていうことなのかもしれないですね。私はまだ20代なんですが、一生懸命「社会になじもう」として「障害への対策を完璧にやらなきゃいけない」ってどこかで思っている気がします。でも、年齢を重ねることで自分に対する理解が進んで、完璧じゃない自分も許容できるようになる、みたいな。私は「これから30代になったときに、自分のライフプラン(結婚や育児)をどうすればいいんだろう」っていう不安があったんですが、「40代になってちょっと楽になった」っていうお話を聞けて、少し気が楽になりました。 私はとりさんと対談させていただいて、年齢を重ねると良くも悪くも落ち着いてしまい、新しい情報を積極的に取ろうとしていなかったと気が付きました。とりさんから自分の知らない知識や対策方法をお伺いできたのが、とても良かったです。今回は対談にご協力いただき、ありがとうございました。 終わりに:相談窓口のご紹介 発達障害の当事者同士による対談、いかがでしたか。 今回の2回の対談を通じ、筆者自身も、年齢や環境の変化に応じて障害の知識をアップデートしていかなければならないと感じました。 「ハタらくナビ」は、発達障害のある方の 「はたらく」をもっと「らく」にするをテーマに掲げ、働きづらさを感じている発達障害のある方に向け働くことをもっとラクに、働くことをもっとタノシクするためのちょっとしたコツや、知っておくべき知識を発信しています。 これからも読者の皆さまの「発達障害に関する知識のアップデート」に役立つような情報を発信していけるよう、努めてまいります。本メディアは、就労移行支援事業所ディーキャリアが運営しております。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「発達障害、いつ分かった?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマに「当事者のリアル」をお伝えします。

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  • #はたラクHACK
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。著名人が自身の発達障害について告白する記事や動画を見かけることもあります。 そうした情報を見て「自分は発達障害ではないか」あるいは「自分の子どもは発達障害ではないか」と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 人は誰しも「自分がよく知らないものごと」については不安を感じるもの。当事者同士のリアルな事例を知ることで、理解が深まり、誰かに相談するなど「次のステップ」を踏み出したりするためのお力になれれば幸いです。 第1回は「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマに、対談をおこないました。 なお本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 参考:大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 環境が変わって「どうにかごまかせていた」ことが困難になり気づく とりさんが「もしかして私、発達障害かも…?」と、初めて気がついたのはいつでしたか? 私は大学生のときでした。インターネットで発達障害に関する記事を見かけて、書いてあることが「これはもう、私のことだ」って。でもその時点では「自分の困りごとの原因って、発達障害だったんだ」くらいにしか思ってなかったんです。たしかに困りごとはいろいろありましたが、学生時代は「どうにかごまかせていた」という感じでした。 私も、とりさんと順番は違いますが状況は似ています。36歳で転職して仕事の内容がガラッと変わったことで、転職する前は「どうにかごまかせていた」ことが通用しなくなってしまったんです。上司から何度注意されても改善できないし、中途で即戦力として入ったのに期待に応えられないプレッシャーもあり、心身ともに疲れ果ててしまって。そんなときにふと目にとまったのが、芸能人の方がご自身の発達障害について打ち明けているインターネットの記事でした。読んだ瞬間に「これはもう、私のことだ」と。わらにもすがる思いですぐに病院を受診しました。病院に行けば助かるんじゃないかって思ったんです。 私も「発達障害の診断さえ受ければ、今のこの苦しい状況が改善できるだろう」って、診断=免罪符みたいなものだって思っていましたね。 そう、まさに免罪符。「仕事ができないことは自分が悪いんじゃない、発達障害のせいなんだ」っていう。でも、たとえ障害があり苦手な仕事があったとしても、「じゃあ自分はどんなことなら会社に貢献できるのか」というものを見つけ出さなきゃいけない。給料をもらうためには、その対価として自分が何か価値を提供しなきゃいけないって、よくよく考えれば当然なんですが、当時はそこまで考える余裕がありませんでした。 メンタルが落ちているときに、冷静には考えられないですよね…。しかも会社が、必ずしも発達障害の知識や理解があるとも限らないですし。私は診断を受けたことを会社に相談した後の方が、理解が得られず辛かったです。 今になって思えば「これは発達障害の特性だったんだな」と思うこと 子どものころを振り返ってみて「今になって思えば『これは発達障害の特性だったんだな』」というエピソードはありますか? 本当に必要だったのは「Why」ではなく「Action」のサポート 小学校時代は「次の日の学校の準備」がとても苦手でした。前日の夜に準備することがどうしてもできず、当日の朝になって慌ててやり、母親から注意される…ということを繰り返していました。でも注意されても直せないんですよね。「なんでできないの?」と言われても、とにかくできないんです。 分かります…そして今、親の立場になってみて、自分の子どもに対して「なんでできないの?」という言葉をかけてしまいがちだなと気がつきました。 発達障害の方の脳の特性として、実行機能の障害があると言われていますよね。「なんでできないの?」という理由(Why)を問われても、どうやって実行(Action)したらいいのかが分からない。理由をたずねるだけでなく、もっと具体的に「まずは時間割から確認してみよう。次に教科書とノートを入れて、その次に鉛筆を削って…」という実行のためのアドバイスをしてくれていたら、もう少し上手にできたのかもしれません。 なるほど。私は小学生時代、夏休みの宿題を計画どおりに終えられたことが一度もなくて。それはADHDの「計画を立て、段取りよくものごとを進めることが苦手」という特性だなと思っていたんですが、問題は計画を立てる部分だけでなく、実行する部分にもありそうですね。ただ、親の立場として「本当は実行までサポートしてあげたいけど、なかなかできない」っていう事情もありそうです。例えば平日の朝「この時間の電車に乗らなきゃ大事な会議に間に合わない!」っていうときに、子どもが「学校の準備ができない」って言いだしたら…もし自分がその状況に置かれたら、冷静にサポートするのは難しいなと。 そうですよね。親だって仕事に家事に忙しい。そのなかでどこまで子どもと向き合えるのか、とても難しいと思います。なので「自分の親に、当時こういうサポートをして欲しかった」という思いはありますが、自分が大人になって親の立場から考えると、サポートが十分にできないのも仕方ないことだよなって、理解できます。 自己肯定感を下げないために 〜それは本当に、性格の問題?〜 中学・高校のときは「今日の授業で使うものを用意して持って行く」ことが苦手で、しょっちゅう忘れ物をしていたので、“置き勉”(教科書やノートなどの勉強道具を持ち帰らず、学校に置きっぱなしにすること)が多かったです。 あるあるですね…私もよく教科書や資料集を忘れて、貸してくれる友だちを探すのに苦労していました。「忘れる」と言えば、お弁当や薬の容器のフタを閉め忘れ、カバンの中でぶちまけることがよくありました。香りがキツいものをぶちまけたときは教室中に臭ってしまって…もう最悪で(苦笑) 分かる!それ、やっちゃいますよね。私もここでは言えないような“だらしないエピソード”が他にもありますよ(笑) “だらしないエピソード”を繰り返していると、「いったい自分は何をやってるんだろう、なんでうまくできないんだろう」という考えになって、自己肯定感が下がっちゃいますよね。 そうなんです。私も当時は「自分がだらしない性格だから、こういうことしちゃうんだ」って考えていました。でも今になって思えば、忘れ物などの不注意は、ADHDの特性によって起こっていたんじゃないかと思います。中学・高校生になってくると、少しずつ自分で困りごとへの対策をするようになるんですが、「自分の性格が悪いんだ」と考えたままでは、対策できたとしても自己肯定感は上がらないですからね。もし当時、困りごとの原因が自分の性格ではなく発達障害の特性によるものだと知っていたら、精神的にもう少し楽だったのかもしれません。 「性格や気力の問題」ではなく「能力の問題」 「もしかして私、発達障害かも…?」と気がついたのは大学時代だった、とお話ししましたが、それを強く自覚したエピソードがあって。 おぉ、それはどんなエピソードですか? 藤森: 部活で、卒業する先輩方にお礼状を書くことになって、部員みんなで手分けして書いていたんです。自分の割り当てを書き終わった人から帰っていいことになってたんですが、私は最後まで取り残されてしまったんですよね。お世話になった先輩へ感謝の気持ちを伝えればいいだけなのに、短い文章でいいのに、書くことにどうしても集中できない。ほかの友だちはすぐに書き終わって続々と帰っていくのに、私だけがぜんぜん筆が進まない…。そのときに「もしかして、私はまわりの人たちと何かが根本的に違うんじゃないか」って気がついたんです。 学生生活では、他にも自分とまわりを比べる機会がたくさんあると思いますが、そのエピソードのときは何が違ったんでしょう? それ以前はまわりと比べてできないことがあっても、自分の性格や気力の問題だと考えていました。例えば・忘れ物が多い → 私の性格ががだらしないからだ・テストの成績が悪い → 私の気力が足りず、十分勉強できなかったからだ…という感じで。だから「自分はまわりと何かが違う」とまでは、気づかなかったんです。でも「誰がやっても同じような結果が出せそうな作業なのに、明らかに自分一人だけができない」っていう場面に遭遇して、これは自分の性格や気力の問題じゃなく、そもそも“能力”として自分が持ち合わせていないのではって気づいたんです。 なるほど。例えるなら「自分が野球チームに所属していて、野球が下手なのは自分の性格のせいだ、気力が足りないせいだと思ってきた。でも、野球に必要な能力はそもそも持っておらず、実はサッカーに必要な能力を持っていたんだと、あるとき気づいた」みたいな感じでしょうか? そう。野球チームは野球をやることが当たり前の環境ですから「ボールを蹴ってみる機会」なんてないですよね。だから自分は野球が苦手で、サッカーの方が得意なんだと気づくことができない。でも環境を変えてサッカーチームに行けば、大活躍できる可能性がある。そういうことが実生活でもあるんじゃないかと。 たしかに、私もオフィスに通勤していたときはまわりの話し声が気になり、ぜんぜん集中できなかったんですが、リモートワークするようになったら「あれ、意外と私、環境が変われば集中できるじゃん」って気がつきました。「衝動的にいろいろなことに手を出してしまう」という特性も、会社員のときはまったく評価されませんでしたが、フリーランスとして自分で仕事を創意工夫しなければならない環境では、むしろ役に立っている気がします。 同じ環境の中で、同じことを繰り返していると気づかないですよね。もちろん、何でもかんでもすぐに環境のせいにするのではなく、「まわりに合わせて、苦手なことでもがんばる」ということが必要なときもあります。でもそれだけにとらわれず、環境そのものを変えることで「自分が本当に得意なこと」が見えてくるのかもしれません。 支援につながる方法を知っていることが大切 大学生活がうまくいくかどうかは、就職にも影響する 大学生活での困りごとって、学生生活のみならず、卒業後の仕事にも影響が出てしまうと思うんですよ。 というと? 私はADHDの「計画を立て、段取りよくものごとを進めることが苦手」という特性から、卒業単位を取るのにとても苦労しました。まず「授業の履修登録」が難しい。高校までは学校側がカリキュラムを組んでくれますが、大学に入ると自分ですべての計画を立てなきゃいけません。授業の提出課題や定期テストも管理は自己責任で、赤点を取ったとしても自動で補習や追試がおこなわれるわけでもない。単位を落としたくなければ自分で教授に相談しに行く…なんてことも必要ですよね。しかも一人暮らしする人は、プライベートも自分でやらなきゃいけないことが増えるので、超・マルチタスク状態になってしまう。これも発達障害の特性と相性が悪いのではないかと思います。その結果、4年生になったとき・まわりは、卒業単位に足りるメドが立ち就職活動に打ち込んでいる・ところが自分は、卒業単位を満たすため必死に授業を受け続けている…という状況になって、十分な就職活動ができず、結果、自分にあった仕事や会社をちゃんと選べない、ということがあるんじゃないかと。 たしかに…。私も最初の履修計画がボロボロでしたし、テスト勉強の計画を立てるのも、友だちや教授にヘルプを出すのも苦手だったので、卒業単位を満たすのにとても苦労しました。その結果、就職活動ではまわりの友人が続々と内定をもらう中で「自分だけ取り残された」と感じ、自己肯定感がどんどん下がっていって。4年生の秋頃には自分に合う仕事がなんなのか考える余裕もなくなり、「私のような者を雇ってくれるなら、もうどんな会社でもいい」なんて思っていましたね…。 正しい情報や支援をどこで得られるのかを知っておく 今では発達障害のある学生のサポート窓口を設置している大学も増えていますが、本人が自分の特性に気づいていなければ相談しようと思わないですしね。サポートを受けるためには、自分で自分の特性に気がついていることと、相談できる窓口を知っていることの両方がマッチする必要があるんですよね。 何が正しい情報なのか見分けることも重要ですよね。今はインターネットでさまざまな情報を入手できるので、発達障害のことを見聞きする機会も増えてきました。ブログやYouTubeなどで、当事者の方が情報発信しているのもよく見かけます。でも、その情報が本当に正しいかどうかは分からない。例えば芸能人の方が「私、実は発達障害で、この病院で○○という検査を受けて…」と発信していたとする。そうすると「有名人が通ってるから、きっといい病院なんだな」「○○の検査を受ければ、すぐ発達障害かどうか分かるんだな」って思ってしまうんじゃないかと。 発達障害について学んでいれば「あれ、この情報はちょっとおかしいぞ」ということが分かりますが、知識がないと有名人の発信や、お金をかけた宣伝広告のような“見栄えのいい情報”をうのみにしちゃいますよね。特に発達障害について知ったばかりの頃は、困りごとがピークで、メンタルも落ちた状態であることが多いと思うんです。だから余計に、わらにもすがる思いで“見栄えのいい情報”に飛びついてしまいそうです。 私も「この状態から抜け出したい、助けて欲しい」と切羽詰まっていましたが、必死に情報を探して運よく支援の窓口を見つけることができました。でも運が悪かったら、そこにはたどり着けなかったかもしれません。今、実際に自分が困りごとや生きづらさを抱えていなかったとしても、大学や行政の支援窓口、公的な福祉サービスなど「どこに行けば、正しい情報や支援を得られるのか」を知っておくことが大切だと思います。 終わりに:相談窓口のご紹介 第2回では、当事者2名が日々の生活のなかでおこなっている特性への対策(セルフケアや、合理的配慮についての会社との調整)について対談します。こちらもどうぞご期待ください。 終わりに、対談の中でも登場した「発達障害のある方が支援を受けられる窓口」の一つとして、就労移行支援事業所ディーキャリアをご紹介いたします。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
「がんばれば、何とかできる」に要注意!〜過剰適応とは〜

発達障害の特性対策、がんばり過ぎていませんか?目に見えづらい障害のため、自分も周囲も「無理」に気づかず、ストレスや疲労が溜まり「適応障害」の状態になることがあります。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
あなたの対処法、もしかして、がんばり過ぎていませんか? 発達障害の特性について学び、自分自身で対処をおこなうことは大切です。しかし対処法が適切ではなかったり、無理してがんばり過ぎたりすると“過剰適応”の状態になり、新たなストレスを生んでしまうことがあります。そのまま放っておくと自分でも気づかないうちに疲労が蓄積されて、二次障害を引き起こしてしまうことにもなりかねません。 今回は、過剰適応にならないようにするための注意点についてご紹介します。 なお発達障害のある方のストレス対策については、過去のコラム記事もご参照ください。 参考:発達障害のある方はストレスを感じやすい?~原因と対策を解説~ [toc] 1. 過剰適応とは、周りに合わせようと無理をし過ぎている状態 1-1. 過剰適応とは 「上司からの期待に応えるために、睡眠時間を削って残業した」「友だちの機嫌を損ねないように、無理なお願いをしぶしぶ引き受けた」——皆さんも日常生活の中で、多かれ少なかれ「自分以外を優先した経験」があるのではないでしょうか。 このような「自分よりも周りを優先すること」が、度を超えて行き過ぎてしまった状態が“過剰適応”です。 気を遣って周りに合わせることは大切ですが、自分を押し殺した状態が長く続けば当然ストレスがたまってしまいます。特に、大人になると「職場において、自分より会社や上司の都合を優先する」「家庭において、自分より家族や親戚の都合を優先する」というように、自分の感情を抑えなければならないシーンが増え、過剰適応に陥る可能性も高くなります。 過剰適応で気をつけねばならないポイントは、「本人は無理をしている状態だが、周囲はそれに気づきづらい」ということです。 他人から見ると問題が起こっていないように見えても、その裏では本人が気持ちを抑え込んだり、自分なりに対処したりして「問題が起こらないようにがんばっている結果、問題が起こっていないだけ」なのかもしれません。 そのような「がんばり過ぎの」状態は、言いかえれば「常に無理をしている状態」とも言えます。無理をしている状態が続けば当然、心身の負担になり、体調を崩してしまうことがあるのです。 1-2. 発達障害における過剰適応とは 発達障害のある方の場合、脳の機能に生まれながらの特性があり、その特性によって“苦手なこと”と“得意なこと”の間に大きな差が生じます。特に社会人になると、本来は特性によって苦手なことでも「周りに合わせて行動する」ことが求められるため、過剰適応に陥りやすいという問題があります。 例えば、ADHD(注意欠如・多動性障害)の「じっとしていられない」「落ち着きがない」という特性は、子どものころであれば周りから「それくらい元気な方がいい」と見てもらえることもありますが、社会人になると「公共の場所や職場では、大人なら当然、静かにするべきだ」という見られ方に変わります。 このように、子どものころは大丈夫だったことが、大人になって「社会的にNG」になることは珍しくありません。明確な説明がなく“暗黙の了解”で成り立っているようなこともいくつもあります。本人にとってみれば、「大人になったら、いきなりハシゴを外された」ような感覚であり、急に適応が求められることになるので、どうにかしようと無理してがんばることになってしまうのです。 しかし「無理してがんばって、どうにか対処していること」は、残念ながら周りから見てもよく分かりません。例えて言うなら、「マラソン大会で、一見みんなと同じペースで走っているように見えるが、実は一人だけ手足に見えない重りを付けて走っている」ような状態です。 もともと発達障害は“目に見えづらい障害”と言われており、苦手に対して無理をしていることに周囲が気づきづらく、さらに自分自身も「自分の限界を超えていること」に気づかないことも多いのです。 事例①〜うっかり忘れやケアレスミスが多い、Aさんの場合〜 Aさんは、ADHDの特性により「仕事で指示された内容をうっかり忘れてしまう」「書類を作るときに、細かな部分でケアレスミスが多い」という困りごとがありました。 前職ではそのことでたびたび上司から注意を受け、それがきっかけで転職することになったAさん。新しい転職先の会社では同じミスを繰り返さないようにしようと、以下のような対策をおこなうことにしました。 仕事で指示されたことを忘れないよう、常にペンとメモ帳を持ち歩いて、指示を受けた際には必ずメモを取るようにする タスク管理のアプリを使って、締め切りを忘れないようリマインドする 書類のケアレスミスをなくすため、作った後に時間を置いて二回チェックをする 対策をおこなった結果、うっかり忘れやケアレスミスを減らすことができましたが、もともと細かなことに気を遣うのが苦手なAさんにとっては、とても疲れてしまうやり方でもありました。苦手なことなので余計に時間がかかり、業務が忙しい時期には遅くまで残業することもありました。 ところが転職先の会社の人たちは、かつてのAさんの様子を知りません。今のAさんが問題を起こしていない裏で、どれだけ無理をしてがんばっているかなど、想像も付かなかったのです。 新しい会社にも慣れ、任される仕事が増えるにつれて、Aさんの疲れとストレスもどんどんたまっていき、とうとう限界を越えてしまいました。仕事に行くことができなくなったAさんは“適応障害”と診断され、休職することになってしまいました。 がんばりすぎたことが原因で過剰適応の状態に陥ってしまったために、“適応障害”という二次障害へとつながってしまったのです。 事例②〜空気が読めず、友だちとの人付き合いで苦労した筆者の場合〜 筆者の事例をご紹介しましょう。ASDの特性により、私は子どものころから場の空気が読めず、「友だちとの会話がうまく成り立たない」という困りごとがありました。具体的には、次のようなものです。 友だちから言われた冗談を真に受けて怒ったり、落ち込んだりする 何の話をしているのかが理解できず、「今、なんて言った?」と何度も聞き返す いきなり話を振られると付いていけず、とっさにした返事が、話の流れに合わない 冗談を言うような雰囲気でないときに冗談を言ってしまい、場の雰囲気を凍らせる 当然、私がそんな様子ですから、会話に入れてもらえないことが増え、徐々に仲間はずれにされるようになっていきました。私は何とかこの状況を打開しようと、以下のような対処法を考えました。 「話の流れが分からなくても、とりあえず相づちを打っておこう」 「イヤなことを言われても冗談かもしれないから、愛想笑いをしておこう」 「自分がこうだと思っても間違っている可能性があるから、口には出さないでおこう」 「うっかり失言をしてしまいがちだから、なるべく発言を控えよう」 このような対処のおかげで、会話はどうにか成り立つようになり仲間はずれにされることもなくなりました。しかしいつしか、友だちたちと遊んでいても「楽しい」と思うより、疲れを感じるようになっていきました。 自分でも気がつかないうちに、私は場の空気を読もうとして、相手の表情や言葉の抑揚、身ぶり手ぶりなど、常に細心の注意を払っていました。つまり「場の空気を読む」というセンサーが働かない代わりに、別のセンサーを最大パワーで貼り続けていたので、友だちとの会話に大きな疲れを感じるようになってしまったのです。 2. 過剰適応にならないために注意すべきこと 2-1. ストレスのサインを見逃さない 先ほどご紹介した筆者の事例のように「自分でも気が付かないうちに、がんばり過ぎて過剰適応の状態に陥ってしまう」こともあります。ストレスが爆発してしまう前に気づけるよう、ストレスのサインを見逃さないことが重要です。 例えば、企業におけるストレス・マネジメントでは「従業員を“ケチな飲み屋”に通わせるな」という標語があります。仕事において以下のようなサインが現れている場合、その従業員はストレスがたまっている可能性が高い状態なのです。 け:欠勤 ち:遅刻、早退 な:泣き言を言う の:能率の低下 み:ミス、事故 や:辞めたいと言い出す 出典:ケチな飲み屋サイン|新潟県立中央病院 発達障害のある方の場合、その特性により「自分がどれくらい疲れているか」に気がつけないケースも少なくありません。 ストレスのサインを見つけるために、チェックシートを作るのもおすすめです。例えば睡眠時間や食事の回数、ストレスや体の疲れを感じる度合いなどを毎日数字で記録することで、自分の状態を客観的に見ることができます。 また厚生労働省の運営する以下のWebサイトでは、ストレスや疲労の度合いをセルフチェックできるコンテンツが用意されています。もちろんセルフチェックだけで安易に判断することはできませんが、自分の状態を客観的に知るための参考として活用できます。 参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト なおADHDの方の場合、特性により「日々忘れずに記録をつけること」や「チェックリストに回答すること」自体が苦手な方も少なくありません。そのような場合には、スマートウォッチやスマートフォンの“自動で記録を取ってくれるアプリ”を活用するのもおすすめです。 普段の生活の中で体や心が発するサインを見つけたら、一度立ち止まって、ストレスがたまり過ぎていないか考えてみることが大切です。 2-2. 自分と周りとのバランスを取る 周りに気を遣うことも大切ですが、自分で自分を尊重することもまた、健康に生きるためには欠かせません。 社会の中で生きていく以上、自分の都合ばかりを優先するわけにはいきません。しかしそれは自分だけでなく、周りの人も同じであり、本来はお互い様であるはずです。相手を尊重するのと同じくらい自分のことも尊重して、ときには 誰かに誘われても、自分一人の時間を大切にする 「誰かから頼まれたこと」ではなく「自分がやるべきこと」から先にやる 頼まれても気が進まないことは断る …といったこともできるよう、自分と周りとのバランスが取れるよう、コミュニケーションすることが大切です。 とはいえ、発達障害の特性によって「そもそもコミュニケーションが苦手で、適切な伝え方が分からない」という方もいらっしゃるでしょう。(例えば、気が進まないことを断ろうとして「私はやりません!」と強く言ってしまい、相手から反感を買ってしまう、など。) そのような場合は、まず「コミュニケーションが苦手なこと」を相手に伝えたうえで、自分の伝え方が適切だったかどうかフィードバックをもらえるよう依頼することで、不安が解消できるかもしれません。 3. 自分と周りとのバランスを取り、健康で長く働いていくためには 自分と周り、両者のバランスを取ったコミュニケーション方法は、“アサーション(アサーティブコミュニケーション)”と呼ばれています。アサーションをおこなうためにはいくつかの方法がありますが、その一つが“アイメッセージ”(I messege)です。 アイメッセージとは、会話をするときに「あなた(You)」ではなく「わたし(I)」を主語に言いかえて話す、というものです。 アイメッセージの例:相手の意見に反対である場合 「あなた」が主語:あなたの意見は、間違っています。 「わたし」が主語:わたしの意見は、あなたとは違います。 このように「わたし」=自分を主語にして話すことで、自分の気持ちが明確になったり、相手のせいにしない会話ができたりするようになります。 発達障害の特性による生きづらさへの対策とは、「注意する」「心がける」といった意識の問題だけではありません。意識も大切ですが、具体的な対策によって改善できることも、たくさんあるのです。 ただアサーションのような対策方法は、本を読んだだけ・一度や二度練習しただけで身に付けられるものではなく、何度も反復して練習することが欠かせません。自分一人では習得が難しいものもあるので、専門的な機関でトレーニングを受ける方が良いでしょう。 そのような、発達障害の特性に対する専門的なトレーニングを提供しているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 4. 参考文献 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|厚生労働省 発達障害専門プログラム マニュアルⅡ|平成25年度/26年度 厚生労働省障害者総合福祉推進事業|昭和大学発達障害医療研究所 「発達障害の子どもにみられる不登校」 - 埼玉県 過剰適応とは――アサーションで自他尊重の考え方が大切に | 日本の人事部 健康経営 ケチな飲み屋サイン|新潟県立中央病院 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。