注意欠如・多動症(ADHD)の記事一覧

働きやすい職場の探し方|発達障害のある方の「求人検索」ポイント

「自分に合った職場を選びたい」発達障害のある方が就職・転職時に求人検索をするときのチェックポイントを、当事者の体験談を交えてご紹介します。

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「転職しようと思っているけど、自分に合った職場をどうやって見つければいいんだろう」 誰にとっても、自分に合った職場を見つけるのは難しいもの。特に発達障害のある方の場合、仕事の経験やスキルだけでなく、自分の障害の特性も考慮して選ばないと、転職先で働きづらさを感じる原因となってしまいます。 実際に、筆者も転職の際に自分とは合わない職場を選んでしまったことで二次障害になり、1年もたたない間に離職することになってしまった経験があります。 そこで今回は、発達障害のある方が就職・転職活動で求人を検索する際に、調べておいた方がいいポイントをご紹介します。皆さんが自分にあった働きやすい職場を見つけるために、この記事がお役に立てれば幸いです。 [toc] 自分に合わない職場を選んでしまうとどうなる? もしも、自分に合わない職場を選んでしまったら、どのような困りごとが起こるのでしょうか。まずは失敗例として、筆者の体験談をご紹介します。 私は、注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)と自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受けています。失敗経験をしたのは、35歳で2度目の転職をしたときでした。 職場の環境が合わなかった 転職前はオフィスが比較的広く、デスクが一人ひとりパーテーションで区切られていました。黙々と作業するタイプの業務をおこなっている企業でしたので、職場は比較的静かで、電話が鳴ることもあまりありませんでした。 しかし、転職後は小さな会社だったので、一つの部屋で10名弱の社員全員が働いており、個人のスペースはほとんどありませんでした。誰かが話していれば耳に入りますし、電話もしょっちゅう鳴っていました。 私はADHDの特性から、周囲の様子がとても気になってしまい、自分の作業にうまく集中することができませんでした。 仕事の進め方が合わなかった 転職前の職場は人数が多く、チームで仕事を進めることが多かったため、困ったときにも相談しやすく、自分からヘルプを出さなくてもサポートを受けやすい環境でした。 しかし、転職後の職場は人数が少なく、個人で仕事を進めることが多かったため、誰かの協力が必要な場合には周囲に対して自分から積極的にコミュニケーションを取り、巻き込んでいく必要がありました。 私はASDの特性から、コミュニケーションを取ることが苦手だったため、周囲を巻き込めずに一人で問題を抱え込んでしまい、うまく仕事を進めることができませんでした。 社内制度(福利厚生)が合わなかった 転職前の職場は社員が50名以上でしたので、産業医を設置する義務があり、いつでも相談できました。また、従業員へ定期的なアンケートをおこなったり相談窓口が置かれたりしており、従業員の健康を管理する制度が整っていました。 しかし、転職後の職場は人数が少なかったため産業医の設置義務がなく、また、設立から数年の若い会社だったため、社内制度(福利厚生)がまだ十分に整備されていませんでした。 一概には言えませんが、一般的には会社規模が大きくなるほど社内制度(福利厚生)は手厚くなると言われています。そのため、小さな会社ではメンタルヘルスケアや障害者雇用に詳しい担当者がいないこともあるのです。 ※もちろん、会社規模が小さくても社内制度(福利厚生)が整っている会社もたくさんあります。 当時の上司は親身に相談に乗ってくれたのですが、特別に専門知識があるわけではありませんでした。私も、当時はまだ自分の障害について理解が浅かったため、合理的配慮の調整がうまくできず、お互いにとって負担だけが大きい状態に陥ってしまいました。結果的に、私は仕事を辞めることになってしまったのです。 自分に合った職場を選ぶ大切さ 就職・転職活動において、自分の持っているスキルや経験に合った職場を見つけることはもちろん大切です。それに加えて、発達障害のある方の場合は「自分の特性に合っているか」という観点がとても重要です。 筆者の場合、転職前も後も営業職で、同じ職種での転職でした。しかし、転職前はどうにか仕事ができていたのに、転職後に困りごとが表面化しました。つまり、同じ職種であったとしても、職場の環境が変わるだけで大きな影響があるのです。 自己分析を行って自分の特性を理解したうえで、どのような職場であれば自分に合うのかを考え、求人を検索することが大切です。 なお、発達障害のある方向けの自己分析や、企業研究については、以下の記事もご参照ください。 就活HACK|発達障害のある方のためのお役立ちコラム 発達障害のある方向け「求人検索のポイント」 それでは、実際に求人を検索する際のポイントを4つご紹介します。 今回は、「実際に求人へ応募する前に、企業ホームページや求人サイトを見て情報を集める段階」を想定しています。 本当は、インターネットなどで情報を集めるだけでなく、面接や実習など「実際に企業の担当者と話せる場面」で聞いてみることも大切ですが、応募する前の段階では、実際に話を聞くことはなかなかできません。 ですが、インターネット上の情報でも、ポイントを押さえればある程度の見通しを立てることは可能です。 特に、“障害者雇用枠”ではなく“一般雇用枠”で働くことを希望する場合には、障害者雇用に関する情報が書かれていない可能性もありますので、いくつかの情報から総合的に考え、自分に合いそうな職場かどうかを判断するとよいでしょう。 1. 障害者雇用の実績がどれだけあるか まずは直接的に、障害者雇用の実績が公開されていないかを確認しましょう。大企業の場合は、CSRやSDGsの取り組みをPRするために、障害者雇用の実績やどのような取り組みをしているかを公開していることが多いです。 障害者の“採用人数”が多ければ、受け入れ体制が整っていると考えられます。“平均勤続年数”が長ければ、障害のある方にとっても働きやすい環境であると言えるでしょう。 また、従業員に対して“ダイバーシティ教育”を実施していれば、障害に対する周囲からの理解も得やすいだろうと予想できます。 なお、一般雇用枠ではなく障害者雇用枠での採用に応募する場合は、求人に以下の情報が書いてあるかどうかをチェックすると良いでしょう。 障害者雇用の過去の実績(採用人数、定着率、雇用者の障害種別など) 実際に提供している合理的配慮の事例 障害者の支援体制(専門部署や相談窓口の設置状況など) 発達障害(ADHD、ASD、SLD)の採用実績 2. 福利厚生が充実しているか 福利厚生が充実していれば、それだけ企業が社員を大切にしていると考えられます。以下のような制度があるかどうかを確認すると良いでしょう。 健康保険・厚生年金の加入(特に、有期雇用契約や短時間勤務の場合) 退職金制度の有無 健康診断のオプション(人間ドックなど)の実施、カウンセラーの設置 産休・育児休暇制度 フレックスタイム制度や時短勤務制度の有無 テレワーク・在宅勤務の実施 各種手当(通勤手当、住宅手当、家族手当など)の有無 慶弔見舞金制度の有無 特別休暇制度(生理休暇、リフレッシュ休暇など)の有無 食事に対する補助(社員食堂、食事手当など)の有無 スポーツクラブや習い事、自主学習への補助(資格取得支援制度など) 3. ハラスメント防止の取り組みがおこなわれているか ハラスメント防止の取り組みがある企業は、社員が働きやすい環境を整備しているという点で、発達障害のある方にとっても働きやすい職場だろうと予想できます。 ハラスメントを防ぐためには、社員に対して適切な教育や研修を行い、労働環境を整備することが必要です。また、被害者が安心して相談できるよう、相談窓口やホットラインなども設置しなければなりません。 これらの取り組みがある企業なら、実際に働いてから何か困りごとがあった場合にも相談しやすい環境であると言えるでしょう。 なお、法律では、障害者差別解消法や障害者雇用促進法などで、企業が障害のある方に対し「合理的配慮を提供すること」や「障害を理由に、仕事内容や昇格・昇給などの待遇面で不当な扱いをしないこと」を定めています。 ただ、すべての企業が、上記の法律にそった社内制度や相談体制を整備できているわけではなく、追いついていない企業も少なくありません。そういった面からも、「なにか困りごとがあったときに、対応してもらいやすいかどうか」は、チェックしておきたいポイントです。 4. 働き方改革に取り組んでいるか 近年、企業の「働き方改革」は大きな注目を集めています。働き方改革に熱心な企業であれば、従業員の“ワークライフバランス”を重視していると言えますので、発達障害のある方にとっても働きやすい職場である可能性が高いと考えられます。 例えば、“フレックスタイム”や“テレワーク”の制度があれば、時間や場所を柔軟に調整できることで、障害の特性にも対応しやすくなります。 “テレワーク”は、コロナ禍によって実施している会社は増えていますが、以下のような取り組みがあるかを確認することで、その企業が「どれだけ本気でテレワークを推進しているか」を予想することができます。 ノートPCやルーターなど、テレワークに必要な備品の貸与がある Google WorkspaceやSlack、Microsoft Teamsなど、場所を問わず業務がスムーズにおこなえるようクラウドサービスを活用している 在宅勤務時に、自宅の電気代やインターネット通信料への補助がある テレワーク時に、カフェやコワーキングスペースなどの利用への補助がある 会社がコワーキングスペースなどをレンタルして、「サテライト・オフィス」を用意している 自己分析を行って、自分に合った職場を選ぶことが大 発達障害のある方にとって働きやすい、自分に合った職場を選ぶためには、まず自分をよく知ることが大切です。 どのような業務が得意/不得意か どのような環境が働きやすい/働きづらいと感じるか 自分で対処(セルフケア)できる/周囲にサポートしてもらいたいことは、どのようなことか これらを理解できていれば、どんな職場を選べばよいかも少しずつ見えてきます。 しかし、障害の有無にかかわらず、客観的に自分を分析するのはとても難しいことです。 「考えれば考えるほど、頭がグルグルしてしまって答えにたどり着けない」 「一人だと途中で投げ出してしまう」 「結局、自分に合う働き方がよく分からない」 ……と悩んでしまう方も、少なくありません。そんな方々のサポートを行っているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「就労移行支援事業所ってどう?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「就労移行支援事業所」をテーマに、実際に通った立場/通わなかった立場から「当事者のリアル」をお伝えします。

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今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 第3回となる今回は、障害のある方が働くための支援をおこなう障害福祉サービス、『就労移行支援事業所』の利用をテーマに対談をおこないました。 対談した2名のうち、1名は事業所を利用し、もう1名は利用せず現在に至ります。なぜ就労移行支援事業所を利用した/利用しなかったのか、実際に利用してみてどうだったのかなど、当事者のリアルな体験談が、何か皆さまのお役に立てれば幸いです。 参考記事 第1回・第2回の対談記事は、以下よりご覧いただけます。 本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 就労移行支援事業所のことをどうやって知ったの? 私は、インターネットや書籍で発達障害についてかなり調べていたつもりだったのですが、『就労移行支援事業所』についてはまったく知らなくて。再就職活動をしていたときに偶然、就労移行支援事業所を運営している会社の求人を見つけて、「こんな障害福祉サービスがあるんだ!」と驚いたんです。とりさんは実際に就労移行支援事業所をご利用されたそうですが、最初に知ったきっかけは何でしたか? 私は診断を受けたあと、障害者手帳を取得したり仕事を休職したりするタイミングで、まず『障害者雇用』について知り、そこから広がって、就労移行支援事業所の情報にもたどりつきました。実は、診断を受ける前から「障害者専用のハローワークみたいな障害福祉サービスがあるらしい」ということを何となく知っていたのですが、自分が診断を受けるまでは、調べてみようとは思わなかったですね。 就労移行支援事業所を利用した/しなかった決め手は? 私が就労移行支援事業所の利用を決めたのは、「発達障害への配慮が受けられる会社へ再就職するために、準備をしたい」と思ったからです。私は、今の会社が3社目なのですが、1社目を退職したときは、退職後に生活リズムがどんどん崩れて、メンタルの調子も悪くなってしまいました。その後、なんとか再就職はしたものの、まだ自分の障害について理解が浅く配慮を受けながら働ける会社を探したわけではなかったので、2社目でも結局、体調を崩して休職することになってしまいました。1社目を退職したときの経験から、今度はちゃんと通院・服薬をし、自分の特性についても勉強していました。そして、「次は障害に対する配慮を受けながら働ける会社に再就職したい。休職期間を、そのための準備期間にしたい」と考えて、就労移行支援事業所を利用しようと思ったのです。 私が就労移行支援事業所を利用しなかったのは、「働きながら利用することはできない」というルールがあったからです。家族を養うためには、収入がない期間を作るわけにはいかなかったんですよね…。「通っている期間の生活費がまかなえないから、就労移行支援事業所を利用したくてもできない」というお悩みを、当事者の方からときどき耳にすることがあります。とりさんは通っている間、生活費をどのように工面されていましたか? 養うべき家族がいるのといないのとでは、状況はガラッと変わりますよね……。私はまだ20代前半で、ありがたいことに家賃は親に出してもらいました。家賃以外の生活費は自分で出していましたが、休職中で“傷病手当金※”を受給していたので、節約してどうにかしのぎました。私は職歴も浅く、ある意味、“失う物は何もない状態”だったと思うんです。だからこそ、「ここで一度立ち止まってもいいから、しっかりと自分に向き合い対策をして、その先のキャリアプランを整えよう」という判断ができたのだと思いますね。 ※補足:就労移行支援事業所を利用中の生活費を工面する方法としては、傷病手当金のほか、「障害者年金を受給する」という方法もあります。障害者年金については、以下の記事もご参照ください。 就労移行支援事業所の選び方は?どのように選んだの? とりさんは、いくつか就労移行支援事業所を比較・検討したうえで実際に通う事業所を決めたとうかがいました。どのように選んだのでしょうか? はい。見学したのは4か所で、選び方のポイントは大まかに以下の3つです。 ポイント1. 希望する職種の就職実績があるか 私は学生のころからイラストやマンガを描くのが趣味だったので、それを生かして、Webデザイナーとして再就職したいと思っていました。1つめの事業所は、就職先の実績が”事務系”や”作業系"だけで、自分が目指したい職種というよりは「障害があってもやれそうな仕事」をおすすめされている印象を受け、私の希望と合いませんでした。 ポイント2. 自分に合った訓練が受けられるか 私はすでに2社で働いた経験がありましたので、「社会人としてのビジネスの基礎的な訓練」よりも、もう少し技術的な訓練を受けたいと考えていました。2つめの事業所は、「働いたことがない/働いた経験が少ない人」を主な対象としていて、基本的なビジネスマナーや事務作業のスキルを身に付けるための訓練が中心ということで、私が受けたい訓練と合いませんでした。 ポイント3. 発達障害の特性への考え方が自分と合っているか 最終的にどちらにしようか迷った事業所が2つあったのですが、最後の決め手になったのは、「発達障害の特性への考え方」でした。3つめの事業所は、訓練で教わる技術のレベルも高く魅力的ではありました。ただ、「発達障害のある方々は、みんな特別な能力を持っているはずだ」という考え方に少し違和感がありました。私は、就労移行支援事業所への期待として、就職のための技術的な訓練だけじゃなくて、メンタルケアやセルフケア(自己対処)の方法も学びたかったんですよね。まずは基礎として自分の心と体、生活リズムを整えた上で、就職するための技術を学びたかったんです。なので、発達障害を“特殊能力”のように扱うよりも、何か、もっと“ありのままの姿”を基準にして、現実的な対策を教えてくれる方がいいなと感じたんです。4つめの事業所では、支援員の方が「障害者だからといって、何か特別な人、のような扱いはしません」とおっしゃっていたのがいいなと思って、『ディーキャリア』という就労移行支援事業所へに通うことを決めました。 とりさんの「選び方の3つのポイント」をお伺いして、自分に合った事業所を選ぶには、自分が就労移行支援事業所に何を求めるのか、最終的にどのような仕事をしたいのかという目的の設定が大切なのかな、と感じました。インターネットを見ていると「就労移行支援事業所に通ってみたけれど意味なかった」という意見を見かけることがあります。通う目的がハッキリせず、自分に合わない事業を選んでしまうと「通っても意味ない」と感じてしまうのかもしれませんね。 私のように「Webデザイナーになりたい」と明確な目的を持てていなくても、「配慮を受けながら障害者雇用で働きたい」とか「生活とメンタルを整えてから就職したい」というように、最初は大まかでもいいので、何かしらの“目的”を持っていた方がいいと思いますね。目的が何もない状態で手当たり次第に事業所を見学したとしても、自分に合う事業所はなかなか見つけられないんじゃないかなという気がします。 就労移行支援事業所に通って良かったこと/悪かったこと 私は、就労移行支援事業所に実際に通ってみて、結論としては「期待以上」だったかなと思っています。 おぉ、「期待どおり」を超えて「期待以上」だったのはどのような部分でしょう? まず1つめは「自分の考えを整理できたこと」ですね。支援員の方が定期的に面談してくれる中で、過去の出来事や自分の考えをいろいろ話すうちに、整理が進んでいった感じです。そして2つめは「セルフケアを学べたこと」です。特に印象的で、今もやっているセルフケアが“日記”です。体調や1日の過ごし方を記録するだけでなく、「頭の中で考えていることを、いったん頭の外に書き出す」というのがすごく良かったんですよ。私はモヤモヤした気持ちを自分の中にため込んでしまう傾向があって、それが原因で家族に当たってしまったり、ストレスを感じたりすることがありました。でも、心の中の見えないモヤモヤを、“言葉”という見える形にして日記に書き出すことで、すごくスッキリしたんです。ずっと頭の中を占領していたモヤモヤから解放されたような。注意欠如・多動性障害(ADHD)のある方は、脳の一時的な記憶の置き場である“ワーキングメモリ”に弱みがあると言われていますよね。モヤモヤを言語化し書き出すことで、このワーキングメモリを解放してラクにしてくれるような、そんな感覚がありますね。 逆に、「期待とちょっと違った」というような点は何かありましたか? 私の希望するWebデザイナーでは、実習を受け入れている企業の数や、障害者雇用の求人数が思ったよりも少なかったことですね。企業側も、クリエイティブ系の職種では“経験・実績あり”の人を求めているので、訓練を積んだだけで未経験で採用されるのはハードルが高いのかもしれません。企業の求める人材と、求職者の希望とのマッチングが難しい職種なのかもしれないですね。最近は「IT・Web系の職種専門の就労移行支援事業所」も増えてきましたが、当時はどちらかと言えばプログラミングの方が中心で、私の希望するWebデザインの実績がある事業所は、まだ少ない印象でしたね。 とりさんは、就労移行支援事業所に1年3か月ほど通っていらっしゃったと聞きました。周りには「先に就職が決まって退所していく方」もいらっしゃったと思いますが、“焦り”は感じませんでしたか? 私は感じなかったですね。学校と違って、入る時期も出る時期もみんなバラバラなので、誰かと競争するような雰囲気ではなかったからだと思います。もし、先に就職される方がいても、「話を聞かせてもらい参考にしよう」と思っていました。支援員の方も、特に就職をせかす感じではなかったので、自分のペースで通うことができたのだと思います。 第三者に助けてもらうことの大切さ 当時を思い返すと、私は就労移行支援事業所に限らず、“福祉”に対してまったく関心がなかった気がします。発達障害の特性や、どう対策するのか、どう働くのかといった情報ばかりを集めていて、「障害福祉サービスを利用する」という観点が抜けていたなと。 私も最初のころは「自分も障害福祉サービスを利用できる」なんて想像もしませんでした。でも、役所で障害者手帳の手続きをしたときに案内の紙をもらって、「自分が利用できる障害福祉サービスが、こんなにいくつもあるんだ」ということを初めて知ったんです。役所の方から「あなたも使っていいんですよ」と言ってくれているのなら、せっかくだからいつか利用してみようかな、と思うようになりましたね。 私は「自分が障害福祉サービスを利用すること」に対して、どこかネガティブな気持ちがあった気がします……。自分が障害の当事者であるということが受け入れられなくて。 たしかに、実際に自分がその立場になってみると、“障害者”という言葉の重さをとても感じますよね……。私も、いまだに悩むことがあります。・「障害福祉サービスを使っていいと言ってくれてるんだから、使わせてもらおう」という気持ち・「もっと苦労している人はたくさんいるから、障害者手帳を返納して、一般雇用枠で働いた方がいいんじゃないか」という気持ちこの2つの間で、気持ちがゆれ動くんです。「使わせてもらおう」という気持ちは、極限まで追い詰められないとなかなか持てないかもしれないですね。「生活するお金がもうない」とか「次の働き口がどうしても見つからない」とか。でも本当は、食うに困って命に関わるような状況に追い込まれる前の、「何とか生活はできているけれど、生きづらさを感じていて毎日が苦しい」という段階で、うまく障害福祉サービスを利用して生活を改善できる方がいいと思うんです。その方が、自分も周囲も楽になるというか。 たしかに、福祉に頼ることへ罪悪感を感じて、「まず身内に頼る」ことをしがちですよね。身内の中だけで悩みを抱え込み、周囲を巻き込んでどんどん苦しい方へ落ちて言ってしまうという……。 そう。なので、困ったときほど、身内を頼るんじゃなく制度とか障害福祉サービスとか、第三者を頼った方が、結果的には本人の自立にもつながるし、周囲の負担も減る。罪悪感を感じる必要なんてないんじゃないかと思います。そう思えるようになるのは、なかなか難しいですけどね。 終わりに:相談窓口のご紹介 筆者は就労移行支援事業所を利用しなかった立場ですが、「発達障害の診断を受け悩んでいたあの頃に、もっとうまく第三者を頼れていたら、何か変わっていたかもしれないな」と思うことがあります。 福祉サービスを利用するかどうかは人それぞれですが、生きづらさ・働きづらさを感じている皆さんが、次のステップへ進むための参考として、本記事がお役に立てれば幸いです。 本メディアは、今回の対談テーマでもあった就労移行支援事業所が運営しております。 「発達障害のある方が支援を受けられる窓口」の一つとして、就労移行支援事業所ディーキャリアをご紹介いたします。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【発達障害当事者が解説】「不安な気持ち」の原因とその対処法

発達障害のある方は「不安な気持ち」が強くなりやすいと言われています。当事者である筆者が実践している「不安への対処法」について紹介します。

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「いやな出来事がずっと頭の中でぐるぐる回って、落ち込んでしまう」「仕事でミスをしていないか心配で夜も眠れない」 発達障害のある方はその特性から、不安な気持ちが強くなりやすいと言われており、このようなお悩みをお持ちの方も多いかもしれません。 何を隠そう、筆者もその一人です。発達障害の当事者として、過去のしくじり体験や仕事上のミスによる不安を抱え、それが原因で自分を追い詰め仕事ができなくなるという経験をしてきました。 そこで今回は、筆者の体験談を交えながら、発達障害のある方に向けて「不安な気持ち」になってしまう原因と対処法をご紹介します。 不安を完全になくすことは難しいですが、原因と対策を知れば、うまく付き合っていくことはできます。皆さんが不安な気持ちとの折り合いをうまく付けられるように、この記事がお役に立てれば幸いです。 [toc] 1. 「不安な気持ち」の原因とは 「大丈夫かなぁ」「うまくいくかなぁ」 このような『不安な気持ち』は、多くの人がごく自然に持っている感情です。人間は何かストレスにさらされたときに不安を感じてその原因を避けようとします。「不安を感じる」ということは、本来は自分の身を守るために必要な機能なのです。 しかし、行き過ぎた不安は、身を守るどころか逆に心身のバランスを崩してしまいます。なぜ、発達障害のある方は行き過ぎた不安を感じやすくなるのでしょうか。原因は大きく分けて3つあります。 原因① 反すう思考(反芻思考) 「反すう思考」とは、嫌な出来事や自分の欠点などを繰り返し考えてしまうことでネガティブな感情がどんどん強まってしまう思考のことです。「頭の中で同じことをぐるぐると考えてしまう」という様子から『ぐるぐる思考』と呼ばれることもあります。 筆者の例をご紹介しましょう。 私は、特に週末になると、よく反すう思考になっていました。本当は仕事のことなど忘れてリフレッシュすればいいのに、ふとしたタイミングで 「あの仕事、もっとこうしておけばよかった」「あのミスが地雷になって、休み明けに爆発するじゃないか」 と仕事のことを考えはじめてしまうのです。いったん考え出すと、友人と遊んでいても、家族と美味しいものを食べていても、何をしていても上の空。夜になりベッドに入っても過去の失敗経験が思い出され、ぐるぐると頭の中を回って寝付けず、睡眠不足のまま月曜の朝を迎えることも多くありました。 発達障害、特に、自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)のある方は、脳の特性から反すう思考に陥りやすいと言われており、それが原因でうつ病や適応障害などの二次障害を起こしてしまう場合もあります。 参考文献:反芻思考に焦点づけた認知行動療法の自閉スペクトラム症への効果とその脳基盤の検討(浜松医科大学)|科学研究費助成事業データベース 原因②ストレスを感じやすい 先ほど「不安な気持ちとは、ストレスを回避し自分の身を守るための機能」であることをご紹介しました。発達障害のある方の場合、脳の特性が原因となってストレスを感じやすく、その回避のために不安な気持ちを感じやすくなる傾向があります。 例えばASDのある方の場合、変化が苦手という特性があるため、「予想外の場面」に遭遇したときに強いストレスを感じやすくなります。また、ADHDのある方の場合、衝動性の特性により「欲しいものが手に入らない・やりたいのにできない」ときに感情が抑えきれず、ストレスとなってしまうことがあります。 原因③ 認知の歪み 認知の歪み(ゆがみ)とは、何かの出来事に遭遇したときに、偏ったとらえ方をしてしまうことです。 筆者の例をご紹介しましょう。 私は仕事で上司や同僚からミスを指摘されると「またやってしまった。自分はなんてダメな人間なんだ…」といつも落ち込んでいました。 落ち着いて考えれば、上司や同僚にミスを責める気持ちはなく、アドバイスのつもりだったのかもしれません。あるいは、「すみません、次回から○○の対策をして気を付けます。ご指摘ありがとうございます」と、もう少し前向きな返事ができたかもしれません。しかし、私の場合は不安な気持ちが自動的に湧き上がってきて、どうしてもネガティブな方向に考えてしまったのです。 このように、ネガティブな方向に偏って出来事をとらえたり、一度のことで「自分はダメな人間だ」と決めつけてしまったりするのが認知の歪みであり、発達障害のある方は脳の特性から認知の歪みが起こりやすいと言われています。 「不安な気持ち」への対処法 では、不安な気持ちにはどのように対処をすればいいのでしょうか。今回は「自分でできる対処」として筆者が実践している方法と、「第三者の力を借りておこなう対処」として認知行動療法の二つをご紹介します。 ①筆者の対処法「書き出して見通しを立てることで、不安な気持ちをやわらげる」 私は不安な気持ちになったときに、書き出して見通しを立てることで対処をおこなっています。特に、仕事において有効な方法ですが、プライベートへの応用も可能です。具体的な手順と、どのような効果があるのかを3つに分けてご紹介します。 効果① 次にやるべき「行動」がハッキリすると不安がやわらぐ まずは、不安なことが頭に浮かんで来たら、それを「やるべきこと」として名前を付けて書き出します。書き出したら、その「やるべきこと」を達成するための「行動」に置き換えます。 例えば仕事で、部長から「会議の資料を準備しておいて」と頼まれたとしましょう。「準備と言われたけど、どうしよう…うまくできるかな」という不安が浮かんで来たら、 会議で使う資料を作成し、部長へ提出する というように「やるべきこと」として書き出します。書き出したら、次はその「やるべきこと」を達成するために必要な行動を、順を追って書き出します。 やるべきことの名前「会議で使う資料を作成し、部長へ提出する」 行動①:資料の下書きを作成する 行動②:先輩に、下書きのチェックをお願いする 行動③:先輩から、チェック結果を受け取る 行動④:チェック結果を下書きに反映させ、資料を仕上げる 行動⑤:部長に、資料を提出する 「会議の準備をしないと…」とだけ考えていても、具体的に何をすれば良いのかが分からず、不安な気持ちがふくらんでしまいます。しかし、上記のように「次に何をする」という行動をハッキリとさせるだけで、不安な気持ちをやわらげることができます。 効果② 書き出しておくと、予想外の事態が起きても対処しやすくなる 私は「予想外の事態」が起こってしまうとパニックになってしまいがちなのですが、あらかじめ「次に何をする」という行動を書き出しておくことで、予想外の事態が起きても対処がしやすくなります。 例えば、先ほど書き出した「行動②」ではチェックを先輩に頼むつもりでしたが、先輩が急に休んでしまって頼めなかったとしましょう。行動をあらかじめ書き出しておけば、先輩の他にチェックを頼めそうな人を探して、 行動②:先輩に下書きのチェックをお願いする ↓ 行動②:課長に下書きのチェックをお願いする …と少し修正するだけで対応が可能なことが分かります。 もし、書き出さずに頭の中だけで考えていたら、「先輩に頼めなくなってしまった!どうしよう、また一から考え直さなければ!」とパニックになっていたでしょう。しかし、書き出しておくことで「変わったのは一部分だけだから、大きな変更じゃないぞ」と分かるので、気持ちを落ち着けて対処がしやすくなるのです。 効果③ 小さな成功体験を積み重ねることができる 私は、発達障害の特性が原因で、過去に失敗した経験が多く、自分にあまり自信が持てませんでした。しかし、書き出して見通しを立てるようになり、少しずつ成功体験を積み重ねることができました。 「次に何をする」という行動を書き出しておけば、それはそのまま、仕事でやるべき手順のチェックリストとして使うことができます。終わった行動から順に消していけば、「ここまで仕事を終わらせることができたぞ」ということが分かります。 とても小さなことですが、私にとっては大きな成功体験だったのです。 過去の失敗体験から、私は「どうせ自分はうまくいかない」「今まで失敗ばかりだったから、きっと今度も失敗する」と、不安な気持ちになることが多くありました。これは先ほどご紹介した「認知の歪み」に近いと言えます。 しかし、「次に何をする」という行動を書き出し、終わったら一つずつ消していくことで、「自分はこれだけの仕事をちゃんと終わらせることができたんだ」と思えるようになりました。自信が足りなくなってきたときには、終わらせた行動の一覧を見返して、自信を取り戻すようにしています。 小さな成功体験を積み重ねることで、私は不安な気持ちにも少しずつ自分で対処ができるようになりました。あくまで筆者個人の体験ではありますが、紙とペンさえあればどなたでもできる方法ですので、ぜひ一度お試しください。 ②認知行動療法による不安な気持ちへの対処 認知行動療法とは 認知行動療法とは、心理療法(精神的な働きかけによる治療法)の一種です。アメリカで開発され、英語名(Cognitive Behavior Therapy)を略して「CBT」とも呼ばれます。 例えば、仲が良い同僚にあいさつをしたのに、返事がなかったとしましょう。これを悪い方に偏ったとらえ方をしてしまうと、 「何で返事をくれなかったのだろう…もしかして嫌われてるのかな」「自分なんて、きっとこの会社では嫌われ者なんだ」「あの人は仲が良いフリをしていただけの、うそつきだったんだ」 …というように、極端で否定的な考えにとらわれてしまい、なんでも自分(あるいは他者)が悪いと考えたり、自分が攻撃されていると思い込んだりすることで、「生きづらさ」を感じてしまうのです。 このような、ものごとの極端なとらえ方を見直すことにより、そこから生まれる“感情”や“行動”に働きかけ、生きづらさやストレスを軽くしていく治療法が認知行動療法です。 先ほど、不安な気持ちの原因としてご紹介した「認知の歪み」に対しても効果があるとされています。 認知行動療法について、より詳しくは以下の記事もご参照ください。 参考:認知行動療法とは|発達障害あるある「認知の歪み」の対策 認知行動療法はどうすれば受けられる? 認知行動療法は、基本的に医師やカウンセラーの指導のもとでおこなわれます。精神科や心療内科で相談してみましょう。すべての病院・クリニックで認知行動療法をおこなっているわけではないので、診察前に問い合わせてみることをおすすめします。 病院だけでなく「就労移行支援事業所」などの福祉施設でも、認知行動療法に基づいた支援プログラムを提供していることがあります。 自分で対処してみてうまくいかないときには、専門家に相談を 不安な気持ちは、私たちにとってとても身近な感情です。そのため不安を感じていても「自分の性格や気分の問題ではないか」と考えてしまいがちです。 しかし、不安な気持ちを抱く背景にはさまざまな原因があり、特に発達障害のある方にとっては、脳の特性によって不安が強まってしまう傾向もありますので、適切にケアをしていきましょう。 今回は対処法として、筆者が実践している方法を一例としてご紹介しましたが、もし「自分で対処してみたが、なかなかうまくいかない」という場合には、一人で抱え込まずに、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【2023年最新】発達障害者が押さえておきたい「法改正」

発達障害当事者が押さえておきたい法改正のポイントを紹介します。今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」について分かりやすく説明します。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
  • #限局性学習症(SLD)
近年、発達障害がある方を支援するための、国の制度が強化されているのをご存じでしょうか。 2023年1月、厚生労働省は「障害者雇用率」の引き上げをおこなう方針を発表しました。また、2024年4月1日から施行される法律(改正 障害者総合支援法)では、「就労選択支援」という制度が新たに盛り込まれる予定です。 これらの制度は、「だまっていても自動的に助けてくれる」というものではありません。障害者の側も「どのような支援を・どうすれば受けられるのか」を知り、自分に必要な支援が受けられるよう、適切な窓口に相談することが必要になってきます。 今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」の2つの制度について、当事者として押さえておきたいポイントを解説します。 [toc] ポイント① 障害者雇用率が引き上げられます 障害者雇用率制度とは? 障害者雇用率制度とは、「障害者が能力を発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指す」ことを目的として、事業主に一定の割合で障害者の雇用を義務づける制度です。障害者雇用促進法という法律で定められています。 企業や公的機関など、すべての事業主は、常時雇用する従業員のうち、一定の割合以上の障害者を雇用することが法律で義務付けられています。この「法律で義務づけられた、障害者を雇用しなければならない割合」のことを法定雇用率と言います。 法定雇用率を満たしていない企業等は、国に納付金を納めなければなりません(満たしている企業には、国から調整金を支給)。厚生労働省の発表[1] によると、2022年12月時点での法定雇用率達成企業の割合は48.3%でした。半数以上の事業主が法律上の義務を達成できず、納付金を支払っているのが現状です。 納付金の支払いだけでなく、実雇用率(実際に雇用されている障害者の割合)が低い企業に対しては指導が行われ、改善が見られない場合には企業名が公表されるという罰則もあります。 制度についてのより詳しい内容は、以下のコラムもご参照ください。 参考:障害者雇用とは?オープン就労を目指す方に向け、基礎情報をまとめました。 実績の数字だけを見ると、日本における障害者雇用の推進はまだ道半ばです。ただ、近年は「CSR(企業の社会的責任)」や「SDGs」の観点から、障害者雇用に力を入れる企業が増えています。毎年9月には「障害者雇用月間」に合わせて民間メディアから「『障害者雇用率が高い会社』ランキング TOP100社」が発行[2] されるなど、社会的な注目度も高まり続けています。 参考 [1] 令和4年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省 [2] 「障害者雇用率が高い会社」ランキングTOP100社 | CSR企業総覧 | 東洋経済オンライン どう変わるの? 法定雇用率は、事業主の区分によって割合が定められています。例えば、民間企業(従業員45.5人以上)の法定雇用率の割合は、2.7%(現在より0.4ポイントアップ)に、以下の2段階で引き上げられることが予定されています。 現在は2.3% → 2024年4月から2.5%に引き上げ(現在より0.2ポイントアップ) → さらに、2026年度中に2.7%に引き上げ(現在より0.4ポイントアップ) これまで、法定雇用率の引き上げが発表された際の上げ幅は0.1または0.2ポイントずつでしたしかし、今回は合計0.4ポイントが引き上げられることが発表されており、国の障害者雇用率に対する姿勢が、より積極的になっている様子がうかがえます。 さらに、今回は法定雇用率の引き上げと合わせて「障害者を積極的に雇用する事業主」への新たな支援も発表されました。支援の概要は以下のとおりです。 ・障害者を雇用するための助成金を設立 ・中小企業などには助成金を上乗せ ・短い労働時間(週10〜20時間)で働く障害者も、法定雇用率の計算に含めて良い 詳しい内容は、厚生労働省が公開している以下の資料で確認できます。 参考:令和5年度からの障害者雇用率の設定等について 発達障害の当事者にどんな影響があるの? 法定雇用率の引き上げにより、事業主には「法定雇用率を満たすために、今よりも多くの障害者を雇用しよう」というモチベーションが生まれます。これにより、発達障害のある方にとっても働く機会が増えることが期待されます。障害者を雇用したい事業主が増えることで競争が生まれ、雇用条件(給与や福利厚生など)がより良くなる可能性もあります。 また、中小企業に対する新たな支援がつくられることで、これまでは大企業中心だった障害者雇用が、今後は中小企業でも広がっていくことが期待できます。 ポイント② 「就労選択支援」の制度が新しく作られます 就労選択支援とは? 就労選択支援とは、障害のある方が就職先や働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して本人の希望・能力・適性などに合った「仕事の選択」を支援する新たな制度のことです。障害者総合支援法という法律に、2024年の4月から新たに盛り込まれる予定です。 補足:就労アセスメントとは? 就労アセスメントとは、働くために必要な能力や適性を客観的に評価し、本人の強みや課題を明らかにして、働くために必要な支援や配慮を整理することです。アセスメント(assessment)は「評価する」という意味です。 就労アセスメントは、これまでも就労系障害福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援B型)の利用を始める際におこなわれていました。障害のある方が本人の希望や仕事の能力、適性に合った仕事をするためにとても大切なものですが、以下のような課題もありました。 ・障害のある方が必ずしも就労系障害福祉サービスを利用するとは限らず、アセスメントを受ける機会がないまま、就職・転職活動をしてしまう ・せっかくアセスメントをおこなったのに、実際の就職・転職活動で十分に活用されず、結局、自分の能力や適性に合った仕事を選べていないケースがある 参考:改訂版・就労移行支援事業所による就労アセスメント実施マニュアル(厚生労働省) 制度ができるとどうなるの? 障害のある方が、「就労系障害福祉サービスの利用」や「ハローワークでの就職・転職活動」をする前に、就労選択支援サービスを利用できるようになります。イメージとしては以下の図のとおりです。 画像引用元:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案の概要(https://www.mhlw.go.jp/content/001000995.pdf)5ページ「2-① 就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等」より このサービスでは、支援者と障害者本人が共同で、以下のような内容を評価・整理します。 どのような職種で働きたいか どのような雇用条件を望むか 仕事に対して、どのような能力・適性があるか 実際に働き始めたあと、どのような合理的配慮*が必要か(*合理的配慮について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください) これらを評価・整理して作成された就労アセスメントは、就労系障害福祉サービスの利用を希望する際に活用され、自治体の審査の参考資料として扱われます。福祉サービスを利用せず就職を目指す場合にも、就労アセスメントの内容がハローワークへ連携され、職業指導などをおこなう際に活用されます。 このように、就労アセスメントを活用することで、障害のある方がより自分の能力・適性に合った仕事を選べる可能性が高まります。 なお、これまでは就労系障害福祉サービスを利用できるのは「現在働くことができていない人」だけでした。この制度の開始に合わせて、現在働いている人が、一時的に就労系障害福祉サービスを利用できるようになります。一時的に利用できるのは、以下のような場合です。 ・働き始めに、最初は短い時間から始め、少しずつ勤務時間を増やしていく場合 ・働いている人が休職し、そこから復職を目指す場合 詳しい内容は、厚生労働省が公開している以下の資料で確認できます。 参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案の概要 発達障害の当事者にどんな影響があるの? 発達障害のある方にとっては、自分の能力・適性だけではなく、障害による特性に合った仕事を選びやすくなることが期待されます。 大人の発達障害がある方の場合、障害による特性が原因で離職・転職されているケースもあるため、以下のように悩んでしまうケースが少なくありません。 ・特性や適性に合う仕事が見つかるか不安 ・自分の強みややりたいことが分からない ・就職先にどんな「合理的配慮」を依頼すべきか分からない 皆さんの中には、学生時代に就職活動で「自己分析」をした方もいらっしゃると思いますが、障害の有無にかかわらず客観的に自分を見つめ直して分析するのは難しいもの。就労選択支援のサービスが利用できれば、支援者の力を借り、一人でやるよりも客観的に自己分析=就労アセスメントをすることができます。 一人で悩まず、専門の機関に相談を この記事の冒頭でも述べたように、今回ご紹介した制度は、「だまっていても自動的に助けてくれる」というものではありません。障害者の側も「どのような支援を・どうすれば受けられるのか」を知っておく必要があります。 しかし、現に今、仕事や生活で生きづらさ・働きづらさを感じている方にとっては、制度を調べるだけでもとても大変なものです。自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
認知行動療法とは|発達障害あるある「認知の歪み」の対策

認知とは「ものごとのとらえ方」です。認知行動療法は、とらえ方を見直していくことで、生きづらさやストレスを軽減させる治療法です。仕組みや効果を分かりやすく解説します。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
認知行動療法とは、心理療法(精神的な働きかけによる治療法)の一種です。アメリカで開発され、英語名(Cognitive Behavior Therapy)を略して「CBT」とも呼ばれます。  “認知”とは、私たちの「ものごとのとらえ方」のこと。とらえ方を見直すことにより、そこから生まれる“感情”や“行動”に働きかけ、生きづらさやストレスを軽くしていく治療法が認知行動療法です。 注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)など「発達障害」の特性に対するアプローチとして、認知行動療法を取り入れることがあります。 また、近年は精神科の治療としてだけでなく、教育やスポーツ、ビジネスでも認知行動療法の考え方が取り入れられているものもあります。 [toc] 認知行動療法の仕組み 認知・感情・行動の関係性 私たちの“行動”は、感情によって左右されます。そして私たちの“感情”は、ものごとのとらえ方、すなわち“認知”によって左右されます。 例えば「Aさんが朝、会社へ行く準備をしている場面」を想像してみましょう。ふと時計を見ると7:00。出発予定の7:30まで残り30分です。 「あと30分しかない!」と思ったAさんは、頭の中に「遅刻してしまうかもしれない」という考えが浮かび、焦って不安な気持ちになりました。不安にあおられるように慌てて準備し出かけたせいで、財布を忘れたまま出かけることになってしまいました。 もしも、Aさんが「まだ30分ある」と思ったとしたらどうだったでしょう。「残り時間が30分」という状況は同じですが、「もう○○しかない」ではなく「まだ○○もある」と考えられる人であれば、落ち着いて出かける準備をすることができるため、財布を忘れずに済んだかもしれません。 このように「出発時間まで残り30分だと気付いた」というできごとに対して「あと30分しかない!」と認知するか「まだ30分もある」と認知するかにより、湧いてくる感情はだいぶかわります。結果として、そのあとの行動も変わってきます。認知・感情・行動は互いに影響を与え合っているのです。 この仕組みに働きかけをおこなって、凝り固まってしまった認知を解きほぐし、そこから受けるストレスを減らして、自由に考え行動できるようにする。それが認知行動療法です。 詳しくは後述しますが、発達障害のある方はその脳の特性から認知の歪みが起こりやすいと言われており、それに対するアプローチとしても認知行動療法が取り入れられる場合もあります。 認知のもととなる「スキーマ」 スキーマとは、「生まれ持った気質(性格)」と「過去の経験」や「記憶の影響」を受けて作り上げられた、個人の考え方のクセのようなものです。 例えば、「電車に乗り遅れると遅刻をする」「鼻が高くて目が青い人は外国人だ」などがあります。 スキーマは日常生活を送るときや、危険や失敗を回避するときに役立つものですが、過度な思い込みをしたり、過去の失敗経験だけに注目してネガティブ思考になったりすることがあります。 不適切なスキーマによって認知が歪む例としては、「電車に乗り遅れると、絶対に遅刻をする。遅刻をすると会社をクビになる」「鼻が高いから、外国の方である。日本語を話せない可能性が高い」などがあります。つまり、情報不足のまま拡大解釈をしてしまうのです。 発達障害の特性による困りごとに有効だと言われている理由 先ほども触れましたが、発達障害のある方はその脳の特性から、ものごとを偏った捉え方をする認知の歪みが起こりやすいと言われています。この原因となっているのが、先ほど紹介をした「スキーマ」です。認知行動療法によって自分の認知の歪みの原因となっている「不適切なスキーマ」に気付き、適切なスキーマを使うことによって、発達障害のある方が抱えやすい「生きづらさ」を軽減する効果が期待できます。 不適切なスキーマの例 認知の歪みの原因となる、不適切なスキーマの主な例を紹介します。 1. 白黒思考(全か無か思考)すべての物事に対して、白か黒か、0か100かで完全に分けて考えようとする 2. 過度な一般化(行き過ぎた一般化、極端な一般化)自分のわずかな経験や出来事を、すべてのこととして結論づけようとする 3. 認知のフィルター(心のフィルター)物事のネガティブな面ばかりを見てしまう  4. マイナス思考(肯定的なものの否認)良いことがあっても、良いと思えないばかりか、悪いことにすりかえてしまう 5. 破局的な解釈根拠がないのに、「最悪な結果」を想定し、ネガティブな結論を出してしまう。下記の2つがある・読唇術思考:周りの人の気持ちを勝手に悪いように決めるつける・先読みの誤り:まだ分かりようがない将来のことを悪いように決めつける  6. 過大解釈と矮小化自分の短所を必要以上に大きく、長所を極端に小さく考える。他人に対しては、逆に良いところが大きく、悪いところが小さく見える 7. 感情の理由づけ(感情的決めつけ)自分の感情を根拠に、ものごとを決めつけてしまう  8. 「~すべき」思考何かをやろうとするときに「〜すべきだ」「〜すべきでない」とかたくなに決めつけて考える。自分に向くと、できなかった場合に罪の意識を感じる。他人に向くと、その通りに動いてくれなかった場合にストレスを感じる 9. レッテル貼り(ラベリング)一度のできごと・一部の性質だけで、自分や他人のイメージを作り上げ、そのイメージを固定化させてしまう。「過度な一般化」が極端に行き過ぎた状態 10. 自己関連付け何かが起こったときに、すべて自分によるものだと思い込む。悪いことが起こった場合は、自分に責任がないのにすべて自分のせいだと考える 認知の歪みの例 認知の歪みには、複数の不適切なスキーマが影響していることがあります。「自分が失敗したとき」「他者が失敗したとき」のそれぞれについて、具体例に沿って説明します。 【例① 自分が失敗したとき】 寝坊をして、いつもの電車に乗り遅れてしまい、1本あとの電車に乗った ▼▼▼ 不適切なスキーマ・白黒思考・認知のフィルター:走って向かえば間に合うかもしれないが、絶対に遅刻すると考える・肯定的なものの否認:過去に1本あとの電車で間に合ったことがあったが、今回は遅刻するに違いないと考える・破局的な解釈:「解雇」という最悪の結果を考える ▼▼▼ 認知の歪み「絶対に遅刻をしてしまう。遅刻したら会社を解雇される」 【例② 他者が失敗したとき】 同僚が誤って自分のデータを消去してしまった ▼▼▼ 不適切なスキーマ ・過度な一般化・レッテル貼り:同僚に悪気がなかったとしても、一度のミスで「悪い人間」だと判断する・破局的な解釈:自分が嫌いだから、悪意を持って故意にやったと思い込む・感情の決めつけ:感情が現実に影響すると信じる ▼▼▼ 認知の歪み「同僚は悪いやつで、わざとやった。落ち込んだから、今日は仕事で失敗するだろう」 このように不適切なスキーマによって、極端で否定的な考えにとらわれてしまい、なんでも自分・他者が悪いと考えたり、自分が攻撃されていると思い込んだりすることで、「生きづらさ」を感じることが少なくありません。 自分の「考え方のクセ」を見つめなおし、適切なスキーマを習得していくのが、認知行動療法なのです。 認知行動療法で用いられる手法 認知行動療法で用いられる主な手法は、以下の5種類です。 1. エクスポージャー法(暴露療法) 不安を感じる状況や刺激から逃げるのではなく、段階的に向き合うことで、少しずつ不安に慣れて克服する方法【例】高所恐怖症がある場合に、ビルの2階→3階…と少しずつ高いところにつれていき、段階的に高いところに慣れさせる 2. リラクゼーション法 心身をリラックスさせて不安を和らげる方法。深呼吸や瞑想などをするなど 3. セルフモニタリング法 ワークシートや手帳等に1週間の自分の行動と感情の記録をつけることで、自分がいつ・どこで・どのようなストレスを感じているのかを明確化し、それに基づいてストレスへの対処法を選択する方法 4. コラム法(カラム法、認知再構成法) ワークシートを用い、自分の感情や行動が発生した流れを明らかにすることで、認知(考え方のクセ)に気づき、適切なスキーマを習得する方法 5. 問題解決法 問題となっている状況に対し、課題を整理し、どのような対処ができるのかを探して、改善するための具体的な計画を立てる方法 認知行動療法の受け方 認知行動療法は医師やカウンセラーのもとで受けることが基本のため、病院・クリニックで相談してみましょう。診療科目は精神科、または心療内科です。 ただし、すべての病院・クリニックで認知行動療法をおこなっているわけではないので、事前に問い合わせたりWebサイトで調べたりしてから、診察を受ける方がよいでしょう。 なお、発達障害の特性に応じたサポートをおこなっている就労移行支援事業所でも、この認知行動療法に基づいたプログラムを提供していることがあります。 参考:発達障害のある方の「働く」をサポート|就労移行支援事業所ディーキャリア 以下は医療機関で認知行動療法を受ける場合の期間・費用の例をご紹介します。 治療にかかる期間は? 相談内容やその人の状況により異なりますが、数か月〜1年程度の期間をかけるのが一般的です。1回30分〜1時間程度の面談を1〜2週間ごとにおこないます。 治療にかかる費用は? 内容により異なりますが、1回あたりの費用は数千円かかります。健康保険が適用されず、全額自己負担となる場合もあるので、事前に病院・クリニックに確認しておいた方がいいでしょう。 自分でやる方法はある? 「かかりつけの病院で認知行動療法をおこなっていない」「費用をなるべく抑えたい」などの理由で、自分で試してみたいという方もいらっしゃるかもしれません。 先ほどご紹介した手法のなかで「セルフモニタリング法」や「コラム法」は、個人でも比較的おこないやすいと言われています。 書籍やWebサイトなどでやり方が紹介されていますので、調べてからおこなうと良いでしょう。Webサイトでは、個人でおこなうときに使えるワークシートを配布しているところもあります。また、最近はスマートフォンのアプリもあります。 参考サイトは以下のとおりです。 厚生労働省|心の健康|認知行動療法 国立研究開発法人 公立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター(CBTセンター) 認知行動療法活用サイト「こころのスキルアップ・トレーニング(ここトレ)」 心をケアするスキルが身につく - デジタル認知行動療法アプリ「Awarefy」 Webサービス・アプリ提供プロジェクト|東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース下山研究室 障害福祉サービスでは認知行動療法を取り入れたプログラムも 障害の有無にかかわらず、自分のことを客観的にとらえることは難しいものです。もし「病院に相談するのは敷居が高い」「自分でやってみたけど、どうも上手くいかない」という場合には、障害福祉サービスに相談するという方法もあります。 就労移行支援事業所・ディーキャリアでは、仕事を続ける上での体調管理やストレスコントロールをおこなうために、認知行動療法の考え方を取り入れたプログラムを提供しています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「特性対策、どうしてる?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「障害特性への対策(自己対処)はどのようなことを行っているか」をテーマに「当事者のリアル」をお伝えします。

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  • #合理的配慮
  • #はたラクHACK
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。著名人が自身の発達障害について告白する記事や動画を見かけることもあります。 そうした情報を見て「自分は発達障害ではないか」あるいは「自分の子どもは発達障害ではないか」と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 人は誰しも「自分がよく知らないものごと」については不安を感じるもの。当事者同士のリアルな事例を知ることで、少しでも不安が和らいだり、誰かに相談するなど「次のステップ」を踏み出したりするためのお力になれれば幸いです。 第2回は「自分の特性にどんな対策をしているのか」をテーマに、対談をおこないました。 参考記事 「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマにした第1回の対談記事は、以下よりご覧いただけます。 本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 対策①片付けができない → 細かな管理は諦めてザックリ整理 私は片付けがとても苦手で、仕事机の上がいつも書類だらけになってしまうんですよね。とりさんはどんな対策をされていますか? 私は「自分の視界から外れると、すぐに存在を忘れてしまう」という傾向があるので、その対策として、自宅ではコルクボードを活用しています。例えば“免許証の更新ハガキ”や“定期健診の案内”のように「期限があり忘れてはいけないもの」は、すぐ目に入るよう広げた状態にしてコルクボードに貼るようにしているんです。ボードは仕事机の前に置いてあるので目に入りやすいですし、次のアクション(例:免許の更新に行くスケジュールを立てる)にもつなげやすいんですよ。 なるほど、片付けるだけでなく「次にどんなアクションをすべきか」ということも大切ですよね。私も忘れちゃいけない用事は、その場ですぐにスマホのリマインダーアプリに入れるようにしています。一方で、書類の管理はあまりうまくできてなくて…書類をスキャナーで読み取りPCで整理してるんですが、「スキャンする」というアクション自体が面倒になってしまって、結局、書類トレーにがさっと全部放り込んでいるだけになりがちですね…。 分かります…私もスキャナを使っていたことがありますが、面倒で心が折れました。だから、アクションが起こしやすいかどうかって重要だと思います。私は細かくキレイに整理するのが苦手なので、ファイルにガムテープを貼り、中に入ってるものを油性ペンで書いて、ザックリ整理してます。アナログだしぜんぜんスマートじゃないんですが、特性への対策だと割り切ってやっていますね。これってある意味、世間一般の「こうあるべき」っていうイメージをどこまで捨てられるか、だと思うんです。例えば、女性の場合だと「かわいく・オシャレに整理整頓するのが当たり前」のようなイメージがありませんか? たしかに。雑誌やCMなんかでも「オシャレに整理整頓しよう」みたいな売り出し方がされてますよね。かわいいファイルや手帳を使って、マスキングテープでデコって…みたいな。 そう。「それが女子のたしなみ」みたいなイメージがある。でも、それって企業側がマーケティングのために作ってるイメージなんですよね。私もキレイに整理されたオシャレな部屋に憧れますけど、たとえザックリだったとしても、自分の特性に合う方法で整理ができている方が大事だなって思うんです。その結果、特性対策優先の部屋になっているので、お客さんが呼びづらいという難点はありますが(笑) なるほど。ちゃんと特性への対策ができて、自分に最適化されていればいいんだって割り切ると、気持ちも楽になりそうですね。 対策②忘れ物・失くし物が多い → 忘れる前提で、デジタルも活用して対策 私はもう「何をしても絶対忘れる」という前提で対策しています。例えば、ハンカチやティッシュ、ペンなどの小物類は「バッグを替えたときに移し替えし忘れる前提で、全部のバッグに同じモノを入れておく」という感じです。 私も、小物類や化粧品は同じような対策をしています。そう言えば、先日スマートウォッチのおかげで、スマホを忘れずに済んだことがありました。スーパーで買い物して、袋詰めしたときにスマホを置き去りにしちゃったんですが、駐車場でスマートウォッチに「スマホと距離が離れています」って通知が来て、気が付くことができました。 最近は便利なツールが増えましたよね。「忘れ物防止タグ」を使えば、財布の置き忘れなんかにも対策ができそうです。財布やスマホのような「一つしかないもの」は、デジタルツールをうまく使って対策すると良さそうですね。そういえば私、財布やスマホを忘れたことがあまりないんです。何でだろうって考えたんですが、「男性ならでは」の理由があるのかもしれません。 というと? 男性の服って、ポケットがいっぱいあるじゃないですか。私はいつも、スマホはズボンの左ポケットに、財布はジャケットの内ポケットに入れるようにしているので、入ってないと逆に違和感があるんですよ。「あれ?いつもと重さが違うぞ」みたいな。 なるほど、「重さで気づける」っていいですね。たしかにそれは、男女の差があるかもしれない。私の父も、いつもズボンのお尻ポケットに財布を入れていたなぁ。女性の服装だと、そういうのはなかなか難しいですからね。“身に付けるもの”って、働く環境によっても取れる対策が変わってきそうですよね。例えば、無くし物をしないように「財布をベルトにチェーンで付ける」「スマホをネックストラップで首から下げる」といった対策は、学生時代ならファッションだと見てもらえますが、社会人になったらマナー上NGな場面もありますし。 スーツを着なきゃいけない職業だったらチェーンをぶら下げるわけにはいきませんし、私用のスマートフォンを首から下げておくのも、職場によってOK・NGが別れそうです。 合理的配慮として、身に付けることを許可してもらえるよう会社に相談する、という方法もなくはないと思いますが、そんなことまで合理的配慮を求めていいのか、とも思いますしね…。いくら「特性への対策だ」と言っても、“社会人としてマナー”や“職場環境”、“周囲の人たちとの関係性”など、いろんな理由でできないこともありそうです。 対策③段取りよく物事を進めるのが苦手 → ツールを活用して管理、仕事では手間がかかりすぎない方法を相談 お仕事だと、タスクやスケジュールの管理をPCのツールで行うことが多いと思いますが、とりさんはいかがですか? はい、仕事では会社から指定されたツールを使ってタスクやスケジュールの管理をしています。個人的には、管理のために手間をかけ過ぎないよう、会社側と合理的配慮の調整をすることが大切じゃないかと思っています。 「管理のために手間をかけすぎない」とは、具体的にどういうことでしょう? 管理が複雑すぎると、それだけで脳のエネルギーを無駄に使ってしまうと思うんです。例えば、誰かから仕事を依頼されたとき、忘れないよう手元にメモしておくだけなら大きな手間ではありません。でも、タスク管理ツールに登録しようとすると1. タスクのタイトルを決める2. 担当者を設定する3. 期限を設定する4. 依頼内容をメモする…というように、タスクを登録し終わるまでにいくつものステップが必要です。これでは仕事をする以前に、仕事の管理をするだけで脳のエネルギーをたくさん使ってしまいます。 なるほど。段取りよく物事を進めるのが苦手だからといって、キッチリ管理しようとし過ぎると、それはそれでエネルギーを余分に使っている状態になってしまう、ということですね。 はい。もちろん、ツールはうまく使えば便利ですし、会社ではチームで仕事をしているので、指定されたツールを使う必要もあります。でも、本当に大切なのは、依頼された仕事を抜け漏れなく行うことのはず。抜け漏れをなくすために、「難しいツールではなく、簡単なツールを使えるようにしてもらう」「タスクやスケジュールの管理そのものを、誰かに助けてもらう」といった合理的配慮を、会社側と相談してもいいんじゃないかと思います。 「管理そのものを、誰かに助けてもらう」というのは、年齢が上がれば上がるほど、ちゃんと会社側と相談しておいた方が良さそうですね。20代のころは「上司の指示に従って仕事を行う」ことが当たり前ですが、30代になれば自己管理して仕事を進めることが求められますし、世間の一般的なイメージからも「年齢を重ねた大人として、自己管理ができることは当然だ」と見られがちな気がします。 もしかしたら、30代というのは「自分の障害特性」と「社会的に求められる役割」とがかみ合わなくなってくる年代なのかもしれませんね。 たしかに、30代は仕事で責任の範囲が広がるだけでなく、家庭においても結婚や子育てをする人が多い年代です。若いころとは求められる役割が変わっていきますよね。私も30代のころは、「自分の特性としてはちょっとしんどいけど、家族のために無理してがんばらなきゃいけない」っていうシーンがありました。でも40歳を過ぎると、今度はちょっと楽になったような気もするんです。例えば、30代で初めて部下ができたときは「頼りになる上司」にならなきゃいけないと思っていて、部下が困っていたら「後はオレに任せとけよ」って仕事を巻き取っていました。自分の仕事の段取りもうまくできないのに、さらに仕事を抱え込むことになって、結果的に体調を崩してしまいました。でも、年齢とともにいろんな経験を積むうちに「上司のあるべき姿は一つじゃない」って分かったんです。みんなをグイグイ引っ張っていくタイプの上司もいれば、一見すると大人しくて頼りないけど、まわりをうまく巻き込んで物事を成し遂げていくタイプの上司もいる。そういうことが分かってくると「理想とはちょっと違うけど、自分ができる方法で一生懸命がんばればいいんだ」って思えるようになってきて。30代から40代へと年を重ねるうちに、自分の中で理想と現実とのすり合わせが少しずつできたんじゃないかと思うんです。 なるほど。「年齢とともに、うまい気の抜き方がつかめてくる」っていうことなのかもしれないですね。私はまだ20代なんですが、一生懸命「社会になじもう」として「障害への対策を完璧にやらなきゃいけない」ってどこかで思っている気がします。でも、年齢を重ねることで自分に対する理解が進んで、完璧じゃない自分も許容できるようになる、みたいな。私は「これから30代になったときに、自分のライフプラン(結婚や育児)をどうすればいいんだろう」っていう不安があったんですが、「40代になってちょっと楽になった」っていうお話を聞けて、少し気が楽になりました。 私はとりさんと対談させていただいて、年齢を重ねると良くも悪くも落ち着いてしまい、新しい情報を積極的に取ろうとしていなかったと気が付きました。とりさんから自分の知らない知識や対策方法をお伺いできたのが、とても良かったです。今回は対談にご協力いただき、ありがとうございました。 終わりに:相談窓口のご紹介 発達障害の当事者同士による対談、いかがでしたか。 今回の2回の対談を通じ、筆者自身も、年齢や環境の変化に応じて障害の知識をアップデートしていかなければならないと感じました。 「ハタらくナビ」は、発達障害のある方の 「はたらく」をもっと「らく」にするをテーマに掲げ、働きづらさを感じている発達障害のある方に向け働くことをもっとラクに、働くことをもっとタノシクするためのちょっとしたコツや、知っておくべき知識を発信しています。 これからも読者の皆さまの「発達障害に関する知識のアップデート」に役立つような情報を発信していけるよう、努めてまいります。本メディアは、就労移行支援事業所ディーキャリアが運営しております。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「発達障害、いつ分かった?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマに「当事者のリアル」をお伝えします。

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  • #はたラクHACK
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。著名人が自身の発達障害について告白する記事や動画を見かけることもあります。 そうした情報を見て「自分は発達障害ではないか」あるいは「自分の子どもは発達障害ではないか」と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 人は誰しも「自分がよく知らないものごと」については不安を感じるもの。当事者同士のリアルな事例を知ることで、理解が深まり、誰かに相談するなど「次のステップ」を踏み出したりするためのお力になれれば幸いです。 第1回は「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマに、対談をおこないました。 なお本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 参考:大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 環境が変わって「どうにかごまかせていた」ことが困難になり気づく とりさんが「もしかして私、発達障害かも…?」と、初めて気がついたのはいつでしたか? 私は大学生のときでした。インターネットで発達障害に関する記事を見かけて、書いてあることが「これはもう、私のことだ」って。でもその時点では「自分の困りごとの原因って、発達障害だったんだ」くらいにしか思ってなかったんです。たしかに困りごとはいろいろありましたが、学生時代は「どうにかごまかせていた」という感じでした。 私も、とりさんと順番は違いますが状況は似ています。36歳で転職して仕事の内容がガラッと変わったことで、転職する前は「どうにかごまかせていた」ことが通用しなくなってしまったんです。上司から何度注意されても改善できないし、中途で即戦力として入ったのに期待に応えられないプレッシャーもあり、心身ともに疲れ果ててしまって。そんなときにふと目にとまったのが、芸能人の方がご自身の発達障害について打ち明けているインターネットの記事でした。読んだ瞬間に「これはもう、私のことだ」と。わらにもすがる思いですぐに病院を受診しました。病院に行けば助かるんじゃないかって思ったんです。 私も「発達障害の診断さえ受ければ、今のこの苦しい状況が改善できるだろう」って、診断=免罪符みたいなものだって思っていましたね。 そう、まさに免罪符。「仕事ができないことは自分が悪いんじゃない、発達障害のせいなんだ」っていう。でも、たとえ障害があり苦手な仕事があったとしても、「じゃあ自分はどんなことなら会社に貢献できるのか」というものを見つけ出さなきゃいけない。給料をもらうためには、その対価として自分が何か価値を提供しなきゃいけないって、よくよく考えれば当然なんですが、当時はそこまで考える余裕がありませんでした。 メンタルが落ちているときに、冷静には考えられないですよね…。しかも会社が、必ずしも発達障害の知識や理解があるとも限らないですし。私は診断を受けたことを会社に相談した後の方が、理解が得られず辛かったです。 今になって思えば「これは発達障害の特性だったんだな」と思うこと 子どものころを振り返ってみて「今になって思えば『これは発達障害の特性だったんだな』」というエピソードはありますか? 本当に必要だったのは「Why」ではなく「Action」のサポート 小学校時代は「次の日の学校の準備」がとても苦手でした。前日の夜に準備することがどうしてもできず、当日の朝になって慌ててやり、母親から注意される…ということを繰り返していました。でも注意されても直せないんですよね。「なんでできないの?」と言われても、とにかくできないんです。 分かります…そして今、親の立場になってみて、自分の子どもに対して「なんでできないの?」という言葉をかけてしまいがちだなと気がつきました。 発達障害の方の脳の特性として、実行機能の障害があると言われていますよね。「なんでできないの?」という理由(Why)を問われても、どうやって実行(Action)したらいいのかが分からない。理由をたずねるだけでなく、もっと具体的に「まずは時間割から確認してみよう。次に教科書とノートを入れて、その次に鉛筆を削って…」という実行のためのアドバイスをしてくれていたら、もう少し上手にできたのかもしれません。 なるほど。私は小学生時代、夏休みの宿題を計画どおりに終えられたことが一度もなくて。それはADHDの「計画を立て、段取りよくものごとを進めることが苦手」という特性だなと思っていたんですが、問題は計画を立てる部分だけでなく、実行する部分にもありそうですね。ただ、親の立場として「本当は実行までサポートしてあげたいけど、なかなかできない」っていう事情もありそうです。例えば平日の朝「この時間の電車に乗らなきゃ大事な会議に間に合わない!」っていうときに、子どもが「学校の準備ができない」って言いだしたら…もし自分がその状況に置かれたら、冷静にサポートするのは難しいなと。 そうですよね。親だって仕事に家事に忙しい。そのなかでどこまで子どもと向き合えるのか、とても難しいと思います。なので「自分の親に、当時こういうサポートをして欲しかった」という思いはありますが、自分が大人になって親の立場から考えると、サポートが十分にできないのも仕方ないことだよなって、理解できます。 自己肯定感を下げないために 〜それは本当に、性格の問題?〜 中学・高校のときは「今日の授業で使うものを用意して持って行く」ことが苦手で、しょっちゅう忘れ物をしていたので、“置き勉”(教科書やノートなどの勉強道具を持ち帰らず、学校に置きっぱなしにすること)が多かったです。 あるあるですね…私もよく教科書や資料集を忘れて、貸してくれる友だちを探すのに苦労していました。「忘れる」と言えば、お弁当や薬の容器のフタを閉め忘れ、カバンの中でぶちまけることがよくありました。香りがキツいものをぶちまけたときは教室中に臭ってしまって…もう最悪で(苦笑) 分かる!それ、やっちゃいますよね。私もここでは言えないような“だらしないエピソード”が他にもありますよ(笑) “だらしないエピソード”を繰り返していると、「いったい自分は何をやってるんだろう、なんでうまくできないんだろう」という考えになって、自己肯定感が下がっちゃいますよね。 そうなんです。私も当時は「自分がだらしない性格だから、こういうことしちゃうんだ」って考えていました。でも今になって思えば、忘れ物などの不注意は、ADHDの特性によって起こっていたんじゃないかと思います。中学・高校生になってくると、少しずつ自分で困りごとへの対策をするようになるんですが、「自分の性格が悪いんだ」と考えたままでは、対策できたとしても自己肯定感は上がらないですからね。もし当時、困りごとの原因が自分の性格ではなく発達障害の特性によるものだと知っていたら、精神的にもう少し楽だったのかもしれません。 「性格や気力の問題」ではなく「能力の問題」 「もしかして私、発達障害かも…?」と気がついたのは大学時代だった、とお話ししましたが、それを強く自覚したエピソードがあって。 おぉ、それはどんなエピソードですか? 藤森: 部活で、卒業する先輩方にお礼状を書くことになって、部員みんなで手分けして書いていたんです。自分の割り当てを書き終わった人から帰っていいことになってたんですが、私は最後まで取り残されてしまったんですよね。お世話になった先輩へ感謝の気持ちを伝えればいいだけなのに、短い文章でいいのに、書くことにどうしても集中できない。ほかの友だちはすぐに書き終わって続々と帰っていくのに、私だけがぜんぜん筆が進まない…。そのときに「もしかして、私はまわりの人たちと何かが根本的に違うんじゃないか」って気がついたんです。 学生生活では、他にも自分とまわりを比べる機会がたくさんあると思いますが、そのエピソードのときは何が違ったんでしょう? それ以前はまわりと比べてできないことがあっても、自分の性格や気力の問題だと考えていました。例えば・忘れ物が多い → 私の性格ががだらしないからだ・テストの成績が悪い → 私の気力が足りず、十分勉強できなかったからだ…という感じで。だから「自分はまわりと何かが違う」とまでは、気づかなかったんです。でも「誰がやっても同じような結果が出せそうな作業なのに、明らかに自分一人だけができない」っていう場面に遭遇して、これは自分の性格や気力の問題じゃなく、そもそも“能力”として自分が持ち合わせていないのではって気づいたんです。 なるほど。例えるなら「自分が野球チームに所属していて、野球が下手なのは自分の性格のせいだ、気力が足りないせいだと思ってきた。でも、野球に必要な能力はそもそも持っておらず、実はサッカーに必要な能力を持っていたんだと、あるとき気づいた」みたいな感じでしょうか? そう。野球チームは野球をやることが当たり前の環境ですから「ボールを蹴ってみる機会」なんてないですよね。だから自分は野球が苦手で、サッカーの方が得意なんだと気づくことができない。でも環境を変えてサッカーチームに行けば、大活躍できる可能性がある。そういうことが実生活でもあるんじゃないかと。 たしかに、私もオフィスに通勤していたときはまわりの話し声が気になり、ぜんぜん集中できなかったんですが、リモートワークするようになったら「あれ、意外と私、環境が変われば集中できるじゃん」って気がつきました。「衝動的にいろいろなことに手を出してしまう」という特性も、会社員のときはまったく評価されませんでしたが、フリーランスとして自分で仕事を創意工夫しなければならない環境では、むしろ役に立っている気がします。 同じ環境の中で、同じことを繰り返していると気づかないですよね。もちろん、何でもかんでもすぐに環境のせいにするのではなく、「まわりに合わせて、苦手なことでもがんばる」ということが必要なときもあります。でもそれだけにとらわれず、環境そのものを変えることで「自分が本当に得意なこと」が見えてくるのかもしれません。 支援につながる方法を知っていることが大切 大学生活がうまくいくかどうかは、就職にも影響する 大学生活での困りごとって、学生生活のみならず、卒業後の仕事にも影響が出てしまうと思うんですよ。 というと? 私はADHDの「計画を立て、段取りよくものごとを進めることが苦手」という特性から、卒業単位を取るのにとても苦労しました。まず「授業の履修登録」が難しい。高校までは学校側がカリキュラムを組んでくれますが、大学に入ると自分ですべての計画を立てなきゃいけません。授業の提出課題や定期テストも管理は自己責任で、赤点を取ったとしても自動で補習や追試がおこなわれるわけでもない。単位を落としたくなければ自分で教授に相談しに行く…なんてことも必要ですよね。しかも一人暮らしする人は、プライベートも自分でやらなきゃいけないことが増えるので、超・マルチタスク状態になってしまう。これも発達障害の特性と相性が悪いのではないかと思います。その結果、4年生になったとき・まわりは、卒業単位に足りるメドが立ち就職活動に打ち込んでいる・ところが自分は、卒業単位を満たすため必死に授業を受け続けている…という状況になって、十分な就職活動ができず、結果、自分にあった仕事や会社をちゃんと選べない、ということがあるんじゃないかと。 たしかに…。私も最初の履修計画がボロボロでしたし、テスト勉強の計画を立てるのも、友だちや教授にヘルプを出すのも苦手だったので、卒業単位を満たすのにとても苦労しました。その結果、就職活動ではまわりの友人が続々と内定をもらう中で「自分だけ取り残された」と感じ、自己肯定感がどんどん下がっていって。4年生の秋頃には自分に合う仕事がなんなのか考える余裕もなくなり、「私のような者を雇ってくれるなら、もうどんな会社でもいい」なんて思っていましたね…。 正しい情報や支援をどこで得られるのかを知っておく 今では発達障害のある学生のサポート窓口を設置している大学も増えていますが、本人が自分の特性に気づいていなければ相談しようと思わないですしね。サポートを受けるためには、自分で自分の特性に気がついていることと、相談できる窓口を知っていることの両方がマッチする必要があるんですよね。 何が正しい情報なのか見分けることも重要ですよね。今はインターネットでさまざまな情報を入手できるので、発達障害のことを見聞きする機会も増えてきました。ブログやYouTubeなどで、当事者の方が情報発信しているのもよく見かけます。でも、その情報が本当に正しいかどうかは分からない。例えば芸能人の方が「私、実は発達障害で、この病院で○○という検査を受けて…」と発信していたとする。そうすると「有名人が通ってるから、きっといい病院なんだな」「○○の検査を受ければ、すぐ発達障害かどうか分かるんだな」って思ってしまうんじゃないかと。 発達障害について学んでいれば「あれ、この情報はちょっとおかしいぞ」ということが分かりますが、知識がないと有名人の発信や、お金をかけた宣伝広告のような“見栄えのいい情報”をうのみにしちゃいますよね。特に発達障害について知ったばかりの頃は、困りごとがピークで、メンタルも落ちた状態であることが多いと思うんです。だから余計に、わらにもすがる思いで“見栄えのいい情報”に飛びついてしまいそうです。 私も「この状態から抜け出したい、助けて欲しい」と切羽詰まっていましたが、必死に情報を探して運よく支援の窓口を見つけることができました。でも運が悪かったら、そこにはたどり着けなかったかもしれません。今、実際に自分が困りごとや生きづらさを抱えていなかったとしても、大学や行政の支援窓口、公的な福祉サービスなど「どこに行けば、正しい情報や支援を得られるのか」を知っておくことが大切だと思います。 終わりに:相談窓口のご紹介 第2回では、当事者2名が日々の生活のなかでおこなっている特性への対策(セルフケアや、合理的配慮についての会社との調整)について対談します。こちらもどうぞご期待ください。 終わりに、対談の中でも登場した「発達障害のある方が支援を受けられる窓口」の一つとして、就労移行支援事業所ディーキャリアをご紹介いたします。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
「がんばれば、何とかできる」に要注意!〜過剰適応とは〜

発達障害の特性対策、がんばり過ぎていませんか?目に見えづらい障害のため、自分も周囲も「無理」に気づかず、ストレスや疲労が溜まり「適応障害」の状態になることがあります。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
あなたの対処法、もしかして、がんばり過ぎていませんか? 発達障害の特性について学び、自分自身で対処をおこなうことは大切です。しかし対処法が適切ではなかったり、無理してがんばり過ぎたりすると“過剰適応”の状態になり、新たなストレスを生んでしまうことがあります。そのまま放っておくと自分でも気づかないうちに疲労が蓄積されて、二次障害を引き起こしてしまうことにもなりかねません。 今回は、過剰適応にならないようにするための注意点についてご紹介します。 なお発達障害のある方のストレス対策については、過去のコラム記事もご参照ください。 参考:発達障害のある方はストレスを感じやすい?~原因と対策を解説~ [toc] 1. 過剰適応とは、周りに合わせようと無理をし過ぎている状態 1-1. 過剰適応とは 「上司からの期待に応えるために、睡眠時間を削って残業した」「友だちの機嫌を損ねないように、無理なお願いをしぶしぶ引き受けた」——皆さんも日常生活の中で、多かれ少なかれ「自分以外を優先した経験」があるのではないでしょうか。 このような「自分よりも周りを優先すること」が、度を超えて行き過ぎてしまった状態が“過剰適応”です。 気を遣って周りに合わせることは大切ですが、自分を押し殺した状態が長く続けば当然ストレスがたまってしまいます。特に、大人になると「職場において、自分より会社や上司の都合を優先する」「家庭において、自分より家族や親戚の都合を優先する」というように、自分の感情を抑えなければならないシーンが増え、過剰適応に陥る可能性も高くなります。 過剰適応で気をつけねばならないポイントは、「本人は無理をしている状態だが、周囲はそれに気づきづらい」ということです。 他人から見ると問題が起こっていないように見えても、その裏では本人が気持ちを抑え込んだり、自分なりに対処したりして「問題が起こらないようにがんばっている結果、問題が起こっていないだけ」なのかもしれません。 そのような「がんばり過ぎの」状態は、言いかえれば「常に無理をしている状態」とも言えます。無理をしている状態が続けば当然、心身の負担になり、体調を崩してしまうことがあるのです。 1-2. 発達障害における過剰適応とは 発達障害のある方の場合、脳の機能に生まれながらの特性があり、その特性によって“苦手なこと”と“得意なこと”の間に大きな差が生じます。特に社会人になると、本来は特性によって苦手なことでも「周りに合わせて行動する」ことが求められるため、過剰適応に陥りやすいという問題があります。 例えば、ADHD(注意欠如・多動性障害)の「じっとしていられない」「落ち着きがない」という特性は、子どものころであれば周りから「それくらい元気な方がいい」と見てもらえることもありますが、社会人になると「公共の場所や職場では、大人なら当然、静かにするべきだ」という見られ方に変わります。 このように、子どものころは大丈夫だったことが、大人になって「社会的にNG」になることは珍しくありません。明確な説明がなく“暗黙の了解”で成り立っているようなこともいくつもあります。本人にとってみれば、「大人になったら、いきなりハシゴを外された」ような感覚であり、急に適応が求められることになるので、どうにかしようと無理してがんばることになってしまうのです。 しかし「無理してがんばって、どうにか対処していること」は、残念ながら周りから見てもよく分かりません。例えて言うなら、「マラソン大会で、一見みんなと同じペースで走っているように見えるが、実は一人だけ手足に見えない重りを付けて走っている」ような状態です。 もともと発達障害は“目に見えづらい障害”と言われており、苦手に対して無理をしていることに周囲が気づきづらく、さらに自分自身も「自分の限界を超えていること」に気づかないことも多いのです。 事例①〜うっかり忘れやケアレスミスが多い、Aさんの場合〜 Aさんは、ADHDの特性により「仕事で指示された内容をうっかり忘れてしまう」「書類を作るときに、細かな部分でケアレスミスが多い」という困りごとがありました。 前職ではそのことでたびたび上司から注意を受け、それがきっかけで転職することになったAさん。新しい転職先の会社では同じミスを繰り返さないようにしようと、以下のような対策をおこなうことにしました。 仕事で指示されたことを忘れないよう、常にペンとメモ帳を持ち歩いて、指示を受けた際には必ずメモを取るようにする タスク管理のアプリを使って、締め切りを忘れないようリマインドする 書類のケアレスミスをなくすため、作った後に時間を置いて二回チェックをする 対策をおこなった結果、うっかり忘れやケアレスミスを減らすことができましたが、もともと細かなことに気を遣うのが苦手なAさんにとっては、とても疲れてしまうやり方でもありました。苦手なことなので余計に時間がかかり、業務が忙しい時期には遅くまで残業することもありました。 ところが転職先の会社の人たちは、かつてのAさんの様子を知りません。今のAさんが問題を起こしていない裏で、どれだけ無理をしてがんばっているかなど、想像も付かなかったのです。 新しい会社にも慣れ、任される仕事が増えるにつれて、Aさんの疲れとストレスもどんどんたまっていき、とうとう限界を越えてしまいました。仕事に行くことができなくなったAさんは“適応障害”と診断され、休職することになってしまいました。 がんばりすぎたことが原因で過剰適応の状態に陥ってしまったために、“適応障害”という二次障害へとつながってしまったのです。 事例②〜空気が読めず、友だちとの人付き合いで苦労した筆者の場合〜 筆者の事例をご紹介しましょう。ASDの特性により、私は子どものころから場の空気が読めず、「友だちとの会話がうまく成り立たない」という困りごとがありました。具体的には、次のようなものです。 友だちから言われた冗談を真に受けて怒ったり、落ち込んだりする 何の話をしているのかが理解できず、「今、なんて言った?」と何度も聞き返す いきなり話を振られると付いていけず、とっさにした返事が、話の流れに合わない 冗談を言うような雰囲気でないときに冗談を言ってしまい、場の雰囲気を凍らせる 当然、私がそんな様子ですから、会話に入れてもらえないことが増え、徐々に仲間はずれにされるようになっていきました。私は何とかこの状況を打開しようと、以下のような対処法を考えました。 「話の流れが分からなくても、とりあえず相づちを打っておこう」 「イヤなことを言われても冗談かもしれないから、愛想笑いをしておこう」 「自分がこうだと思っても間違っている可能性があるから、口には出さないでおこう」 「うっかり失言をしてしまいがちだから、なるべく発言を控えよう」 このような対処のおかげで、会話はどうにか成り立つようになり仲間はずれにされることもなくなりました。しかしいつしか、友だちたちと遊んでいても「楽しい」と思うより、疲れを感じるようになっていきました。 自分でも気がつかないうちに、私は場の空気を読もうとして、相手の表情や言葉の抑揚、身ぶり手ぶりなど、常に細心の注意を払っていました。つまり「場の空気を読む」というセンサーが働かない代わりに、別のセンサーを最大パワーで貼り続けていたので、友だちとの会話に大きな疲れを感じるようになってしまったのです。 2. 過剰適応にならないために注意すべきこと 2-1. ストレスのサインを見逃さない 先ほどご紹介した筆者の事例のように「自分でも気が付かないうちに、がんばり過ぎて過剰適応の状態に陥ってしまう」こともあります。ストレスが爆発してしまう前に気づけるよう、ストレスのサインを見逃さないことが重要です。 例えば、企業におけるストレス・マネジメントでは「従業員を“ケチな飲み屋”に通わせるな」という標語があります。仕事において以下のようなサインが現れている場合、その従業員はストレスがたまっている可能性が高い状態なのです。 け:欠勤 ち:遅刻、早退 な:泣き言を言う の:能率の低下 み:ミス、事故 や:辞めたいと言い出す 出典:ケチな飲み屋サイン|新潟県立中央病院 発達障害のある方の場合、その特性により「自分がどれくらい疲れているか」に気がつけないケースも少なくありません。 ストレスのサインを見つけるために、チェックシートを作るのもおすすめです。例えば睡眠時間や食事の回数、ストレスや体の疲れを感じる度合いなどを毎日数字で記録することで、自分の状態を客観的に見ることができます。 また厚生労働省の運営する以下のWebサイトでは、ストレスや疲労の度合いをセルフチェックできるコンテンツが用意されています。もちろんセルフチェックだけで安易に判断することはできませんが、自分の状態を客観的に知るための参考として活用できます。 参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト なおADHDの方の場合、特性により「日々忘れずに記録をつけること」や「チェックリストに回答すること」自体が苦手な方も少なくありません。そのような場合には、スマートウォッチやスマートフォンの“自動で記録を取ってくれるアプリ”を活用するのもおすすめです。 普段の生活の中で体や心が発するサインを見つけたら、一度立ち止まって、ストレスがたまり過ぎていないか考えてみることが大切です。 2-2. 自分と周りとのバランスを取る 周りに気を遣うことも大切ですが、自分で自分を尊重することもまた、健康に生きるためには欠かせません。 社会の中で生きていく以上、自分の都合ばかりを優先するわけにはいきません。しかしそれは自分だけでなく、周りの人も同じであり、本来はお互い様であるはずです。相手を尊重するのと同じくらい自分のことも尊重して、ときには 誰かに誘われても、自分一人の時間を大切にする 「誰かから頼まれたこと」ではなく「自分がやるべきこと」から先にやる 頼まれても気が進まないことは断る …といったこともできるよう、自分と周りとのバランスが取れるよう、コミュニケーションすることが大切です。 とはいえ、発達障害の特性によって「そもそもコミュニケーションが苦手で、適切な伝え方が分からない」という方もいらっしゃるでしょう。(例えば、気が進まないことを断ろうとして「私はやりません!」と強く言ってしまい、相手から反感を買ってしまう、など。) そのような場合は、まず「コミュニケーションが苦手なこと」を相手に伝えたうえで、自分の伝え方が適切だったかどうかフィードバックをもらえるよう依頼することで、不安が解消できるかもしれません。 3. 自分と周りとのバランスを取り、健康で長く働いていくためには 自分と周り、両者のバランスを取ったコミュニケーション方法は、“アサーション(アサーティブコミュニケーション)”と呼ばれています。アサーションをおこなうためにはいくつかの方法がありますが、その一つが“アイメッセージ”(I messege)です。 アイメッセージとは、会話をするときに「あなた(You)」ではなく「わたし(I)」を主語に言いかえて話す、というものです。 アイメッセージの例:相手の意見に反対である場合 「あなた」が主語:あなたの意見は、間違っています。 「わたし」が主語:わたしの意見は、あなたとは違います。 このように「わたし」=自分を主語にして話すことで、自分の気持ちが明確になったり、相手のせいにしない会話ができたりするようになります。 発達障害の特性による生きづらさへの対策とは、「注意する」「心がける」といった意識の問題だけではありません。意識も大切ですが、具体的な対策によって改善できることも、たくさんあるのです。 ただアサーションのような対策方法は、本を読んだだけ・一度や二度練習しただけで身に付けられるものではなく、何度も反復して練習することが欠かせません。自分一人では習得が難しいものもあるので、専門的な機関でトレーニングを受ける方が良いでしょう。 そのような、発達障害の特性に対する専門的なトレーニングを提供しているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 4. 参考文献 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|厚生労働省 発達障害専門プログラム マニュアルⅡ|平成25年度/26年度 厚生労働省障害者総合福祉推進事業|昭和大学発達障害医療研究所 「発達障害の子どもにみられる不登校」 - 埼玉県 過剰適応とは――アサーションで自他尊重の考え方が大切に | 日本の人事部 健康経営 ケチな飲み屋サイン|新潟県立中央病院 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
男女で差がある?大人の発達障害、性別による違いとは

「発達障害の特性による困りごとが性別で違う?」そんな疑問について解説します。性別による「区別」ではなく「違い」を知ることで、特性理解が深まり対策が立てやすくなります。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
  • #限局性学習症(SLD)
発達障害は男性の方が数が多い——そんな話を聞いたことはありませんか。厚生労働省の情報サイトによると、例えば自閉症スペクトラム障害(ASD)の発生頻度は、男性が女性の約4倍であると言われています。 一方で近年の研究によれば、女性はその社会的な役割や立場が原因で、男性と比べ“発達障害の特性による困難さ”が見えづらいだけであり、困りごとを抱えている人の数は男性と変わらないのではないか、とも言われています。 そこで今回の記事では、発達障害が性別によってどのような差があるのかを解説します。 発達障害に限らず、「性別により分けて考えることは平等ではない」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし生き物としての“つくり”の違いや、生活における役割の違いは、私たちが人間社会で生きていくうえで避けては通れないものです。「区別する」のではなく「違いを知る」ことで、自分や相手の特性が理解できる、対策を立てやすくなる、といったメリットもあります。 この記事が「男性なんだから/女性なんだから、これくらいはガマンしなければ…」と感じている方の、お悩みを解決するヒントとなれれば幸いです。 補足:「大人の発達障害」という呼び方について 発達障害は生まれつきの障害ですので、「大人の発達障害」という名前の障害はありません。 ただ大人は「仕事や家庭などで、社会的な責任を背負わねばならない」「自立して生活しなければならない」などの理由で、子どものころと比べて、困りごとの現れ方や対策方法が大きく異なります。子どもの頃は困りごとを感じていなくても、大人になって働いたり一人で生活するようになったりして初めて困りごとが表面化した、という事例も少なくありません。 このことから、現代では「大人の発達障害」という表現が広く一般的に使われるようになってきましたが、これは「大人になってから発達障害になった」という意味ではありませんのでご注意ください。 [toc] 1. ADHDの男性と女性での違い それでは、まず注意欠如・多動性障害(ADHD)から男性と女性でどのような違いがあるのかを見ていきましょう。 1-1. ADHDの性別による違い:女性は「不注意優勢型」が多く、男性は「多動・衝動優勢型」が多い ADHDは、大きく分けて以下の3つのタイプがあると言われています。 ① 不注意優勢型:忘れ物が多い、締め切りに間に合わない、うっかりミスが多い、など ② 多動・衝動優勢型:じっとしていられない、落ち着かない、待つのが苦手、など ③ 混合型:①と②の両方の症状を持っている このうち女性は①不注意優勢型の人が多い傾向があり、男性は②多動・衝動優勢型の人が多い傾向があると言われています。そのため男性に比べ女性の方が、困りごとが表面化しづらいことが多いのです。 1-2. 女性は事務仕事や家事・育児で困りごとが起こりやすい 男女平等の観点から、性別による職業の差は少しずつなくなってきています。しかし「どの職業でも、男性と女性の割合がまったく同じ」というわけではなく、実際には性別による差があります。厚生労働省の令和2年の調査によると以下のような結果となっており、「女性のおおよそ3人に1人は事務職で働いている」ということになります。 ・女性でもっとも割合が高いのは、事務従事者(総務や経理などのバックオフィス業務や、営業事務、貿易事務など)で、29.1% ・男性でもっとも割合が高いのは、専門的・技術的職業従事者(研究者、医者、農業/工業技術者など)で、17.3% ところが事務職と、女性に多いと言われるADHDの「不注意優勢型」のタイプは、あまり相性がいいとは言えません。 例えば“経理事務”は、会社のお財布を管理する大切な仕事ですので、1円でも金額が間違っていてはならず、取引先への支払いや、納税の期限もしっかり守らねばなりません。ADHDの不注意優勢型の「締め切りに間に合わない」「うっかりミスが多い」といった特性は、マイナスに現れるケースがどうしても多くなってしまいます。 また女性の場合、仕事以外でも困りごとが起こるシーンがあります。それが家事・育児です。 こちらも若い世代を中心に夫婦で平等に分担する意識が高まっていますが、内閣府の令和元年の調査によれば依然として多くの家事・育児で、分担は「妻がやる」「どちらかと言えば妻がやる」方が圧倒的に多くなっています。 画像引用元:I-特-18図 家事・家庭のマネジメントの分担(夫婦回答計) | 内閣府男女共同参画局 このように、現代においても家事・育児を担当する割合は女性の方が多いのですが、これもADHDの不注意優勢型の特性と相性があまりいいとは言えません。 「家事を段取りよくこなせない」「予定を詰め込みすぎてしまう」といった困りごとがあるだけでなく、それが「家庭」という外からは見えづらい環境で起こるため、大人の発達障害であることに気付きにくいという問題もあるのです。 1-3. 男性は職場での人間関係で困りごとが起こりやすい 一方で男性の方が多いと言われるADHDの多動・衝動優勢型のタイプでは、職場における人間関係で困りごとが起こりやすくなります。 例えば自分の担当ではない仕事に衝動的に首を突っ込んだり、遠慮なく自分の意見を押し通そうとしたりすることで周囲とのトラブルが起こりがちです。 このような活動的な特性は“営業職”のように「行動力が必要な職業」ではプラスに働く場合もありますが、一方で細かな点に注意せず勢いでものごとを進めてしまいがちなため、「資料を作るときにいつも印刷部数や製本を間違える」「見積書を作るときに金額を間違える」などのケアレスミスが起こりやすくなります。 ADHDの多動・衝動優勢型の「じっとしていられない」「落ち着かない」といった特性は、子ども時代は「男の子はそれくらい元気な方がいい」と思われて見過ごされてしまうケースがあり、子どもの頃から対策のトレーニングができない、という問題もあります。 2. ASDの男性と女性での違い 次に自閉症スペクトラム障害(ASD)について、男性と女性でどのような違いがあるのかを見ていきましょう。 2-1. ASDの性別による違い:「男性が多い」と言われているが、まだよく分かっていない 先ほどご紹介したとおり、ADHDは「女性は不注意優勢型が多く、男性は多動・衝動優勢型が多い」という傾向があると言われています。一方ASDの場合、性別による差があるのかどうかは、まだよく分かっていません。 例えばこの記事の冒頭でご紹介した厚生労働省の情報サイトによれば「ASDの発生頻度は、男性は女性の約4倍」と解説されていますが、この数字は「(女性の場合は)社会的困難の現れが目立たず、過小評価の可能性もある」と付け加えられています。 またお茶の水女子大学・助教の砂川芽衣氏の研究によれば、女性の脳のつくりや社会生活の中での関係性・役割が、女性のASDを分かりづらくしていると考察されています。 2-2. 女性はASDの困りごとが原因で二次障害になりやすい ASDの女性の場合、困りごとの原因が発達障害であると気付きにくく、過度に自分を責めてしまい二次障害になりやすい、という問題があります。(二次障害については、以下の記事もご参照ください。) 参考記事:【事例紹介】発達障害による「二次障害」とは?原因と対処・予防法は 2-2-1. ASDの脳の特性は事務職との相性が悪いケースも ASDの脳の特性には、以下の3つがあります。 ・シングルフォーカス特性:一度に注意を向けられる範囲が狭くなる。興味関心の幅が狭くなりがち。 ・ハイコントラスト知覚:物事を「白か黒か」「全か無か」など極端な捉え方をしがち。曖昧な捉え方や、さまざまな物事を「微調整」することが難しくなる。 ・シングルレイヤー思考:一度に一つの情報しか処理しにくい。複雑な状況の理解が難しく、明記されていないルールを自然と読み取ったり、物事の「裏」を察したり、といったことが苦手になる。優先順位がつけにくくなる。 先ほどもご紹介しましたが、女性が働くことの多い“事務職”では、ASDの特性がミスマッチを起こしやすくなります。 事務職は「決められた作業を一人で黙々と処理する仕事」と思われがちです。もちろんそうした仕事もないわけではありませんが、実際は「周囲とコミュニケーションを取りながら、臨機応変に対応する仕事」の方が多いのです。 例えば“経理事務”の場合、一人で黙々と処理するのは「会計ソフトへの仕訳の入力作業」くらいで、残りは書類の提出を社内で催促したり、取引先に書類の内容を確認したりといった、コミュニケーションを取りながらおこなう作業がほとんどです。 そのため「臨機応変な対応ができない」「複数の作業を同時に進めるのが苦手」「相手が言ったことの裏が読めずコミュニケーションでトラブルが起こる」といった困りごとが起こってしまうのです。 2-2-2. 女性は社会の中での立場から、原因が発達障害であると気付きにくい しかしこうした困りごとで仕事を辞め、職を転々とすることになっても、女性の場合は「原因が発達障害である」と気付きにくい背景があります。 男性の場合、社会や家庭の中で“働き手”の役割を担っていることが多いため、「在職期間が短かったり転職を繰り返したりしていることは問題がある」と、自分も周りも気付きやすくなります。 ところが女性の場合、出産や育児などのライフイベントで仕事を離れる、夫の仕事の都合で短期退職するといったことが起こりやすいため、男性と比べると「在職期間が短かったり転職を繰り返したりしていても仕方がない」と容認されやすくなります。そのため、自分も周りも問題の原因が発達障害である可能性に気付きづらくなってしまうのです。 結果として、発達障害である可能性に気づけないため「仕事がうまくいかないのは自分の努力が足りないせいだ」という考えに陥りやすく、それが二次障害を引き起こすことにも繋がってしまうのです。 2-3. 男性もASDの困りごとが原因で二次障害になりやすい 先ほども述べたように、ASDは男性と女性で差があるかどうかは、まだよく分かっていません。女性の場合と同じく、男性の場合も仕事で「臨機応変な対応ができない」「複数の作業を同時に進めるのが苦手」「相手が言ったことの裏が読めずコミュニケーションでトラブルが起こる」といった困りごとが起こりやすくなります。 先ほど解説したように「女性の方が、問題の原因が発達障害であることが分かりづらい」とは言うものの、ASDの困りごとは周りから「本人の努力不足や、性格の問題である」と見られてしまうケースは少なくありません。男性も女性と同様に、二次障害に陥らないよう注意が必要です。 3. 自己診断せず、悩んだら専門機関に相談を 発達障害は「見えにくく、分かりにくい障害」と言われており、周りからだけではなく、自分自身でも「苦手」が理解しづらいことがあります。 今回ご紹介したように、性別によっても差があり、また社会的な関係性や役割によっても状況が異なるため、発達障害かそうでないかを判断することは簡単ではありません。 最近は発達障害かどうかを調べる「チェックリスト」のようなものがインターネットで公開されていることがありますが、こういったもので自己診断をせず、悩んだら専門機関に相談することが大切です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、無料の相談窓口を設置しています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
発達障害のカミングアウト、親しい人へする?しない?

発達障害の当事者の皆さんが「カミングアウト」を実際にどうしているのか、そして障害のことを理解してもらうためにどうすれば良いのかについて、当事者の方へのアンケートや、同じく当事者である筆者の体験談を交えてご紹介します。

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「障害のことを、誰に、どこまで伝えるべきだろう」—— 家族や友人、恋人など親しい人たちに自分の障害のことを伝えるかどうかは、とても悩ましい問題です。 病院や専門機関は、第三者なので相談してもいいかなと思えます。職場に伝えることは、合理的配慮や障害者雇用に関わることなので必要だと割り切ることもできます。 しかし親しい人たちに対して伝えるかどうかは、それらとは少し事情が異なります。親しいからこそ「もしも関係が悪くなったり、理解してもらえなかったりしたらどうしよう」と不安になるのではないでしょうか。 最近では、著名人が自分に発達障害があることをカミングアウトする記事や動画などを見かけることも増えてきました。そこで今回は、発達障害の当事者の皆さんが「カミングアウト」を実際にどうしているのか、そして障害のことを理解してもらうためにどうすれば良いのかについて、当事者の方へのアンケートや、同じく当事者である筆者の体験談を交えてご紹介します。発達障害のことを親しい人に伝えるかどうか、悩んでいる方のご参考となれれば幸いです。(※「カミングアウト」とは、公にしていなかったことを開示する=周囲に伝えることです。) なお今回のアンケートによる調査には、11名の当事者の方にご協力をいただきました。この場をお借りして御礼を申し上げます。 [toc] 1. 誰に・どの範囲までカミングアウトする? 1-1. 家族には基本的に伝える 今回アンケート調査をおこなったところ、家族に対しては11名すべてが発達障害のことを開示しているという結果になりました。 家族の場合、病院への通院や支援機関・職場への相談の際に協力してもらったり、家庭での日常生活のなかで配慮が必要だったりしますので、障害を開示することが基本になるのでしょう。「隠し続けるよりも、カミングアウトした方が精神的に楽だから」という理由は、一緒に過ごす時間が長いからこそではないでしょうか。 「家族」に障害を開示した理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・自分の(障害の)ことを理解してもらいたいから ・配慮を求めたいから ・隠し続けるよりも、カミングアウトした方が精神的に楽だから ・自分以外にも、家族内に障害を持った人がいるから ・障害者雇用枠で就職することになり、家族への説明が必要だったから ・子どもの頃に診断を受けたので、そもそも家族が知っているから 筆者の場合、パートナーと、自分の親・兄弟に伝えています。 パートナーと親には、診断前は特に相談せず、診断をきっかけに会社を辞めることになったタイミングで話をしました。兄弟とはすでに別々に暮らしているため、診断から数か月たってから、会話のなかで自然に話した、という形です。 一方で親戚やパートナーの両親には伝えていません。 親戚とはあまり交流がなく、なにか支援をお願いするような関係ではないため、伝える必要がないと判断しました。逆にパートナーの親とは普段から交流がありますが、パートナーが伝えることを特に望まなかったため開示しませんでした。 1-2. 友人・恋人には、関わり方や親しさの度合いによって伝える範囲を決める 一方、友人や恋人に対しては11名中2名は障害を開示していないという結果になりました。また11名中5名は特定の相手にだけしているという回答でした。 必ずしもすべての人に伝えるのではなく、関わり方や親しさの度合いによって障害を開示する/しないを決めている方が多いようです。 「友人や恋人」に障害を開示した理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・自分の(障害の)ことを理解してもらいたいから ・配慮を求めたいから ・隠し続けるよりも、カミングアウトした方が精神的に楽だから ・発達障害は遺伝する可能性があるので、結婚を考えている相手に判断材料として知っておいてもらいたかったから ・以前から相談に乗ってもらっていたので、その流れで自然に診断を受けたことも伝えたから ・当事者のコミュニティで知り合った友人なので、隠す必要がないから ・直接会う友人の場合は、隠す必要がないと思っているから 「友人や恋人」に障害を開示していない理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・開示することに抵抗感があるから ・ネット上では(直接会わない=オフライン上での付き合いのある友人には)開示していない。ネット上でカミングアウトすると「自称しているだけ」のように思われてしまうリスクがあるから 筆者の場合、以前は友人・知人に対して発達障害のことをオープンに伝えており、SNSやブログ記事などでも公表していました。しかしある時期から「必要なとき以外は伝えない」という考えに変わりました。 理由は、自分は気にしなくても伝えた相手はどう感じるか分からないと思ったからです。 以前、発達障害のことをオープンに伝えていたときには「障害があることは別に恥じることではなく、私の一部だ」という思いがあり、伝えた相手からどう思われようと気にも留めていませんでした。 しかしあるとき、発達障害とは別の「自分が詳しく知らない障害」を持った知人から開示を受けた際に、私は悩んでしまったのです。 ・その障害はどれほど苦労があるものなのか、知識がないから分からない。 ・分からないから、今どんな気持ちで開示しているのかが想像できない。 ・なぐさめて欲しいのか、助けて欲しいのか、それともただ話を聞いて欲しいのか。何を望んでいるのかが分からない。 どうリアクションをすれば良いのか、とても悩みながら話を聞いたことを今でも鮮明に覚えています。 そして、ふと気が付いたのです。もしかしたら、私が発達障害であることを伝えた相手も、同じような思いをしていたのではないか、と。下手なことを言って傷つけたらいけないが、打ち明けてくれたことをスルーしてもいけない気がする。相手のことを気づかうからこそ、どう対応すればいいのか悩んでしまう。そんな思いを友人にさせていたのではないかと感じたのです。 それから私は、必要なとき(何か支援を求めたり、仕事で関わったりするようなとき)以外は、友人・知人に対して積極的に開示はしないようにしています。 2. カミングアウトして感じたメリット・デメリット 2-1. 家族とは「距離が近い」からこその難しさも 実際に発達障害のことを開示してみてどうだったのか、感じたメリット・デメリットについてもアンケートで伺いました。 まず家族に対して伝えるメリットとしては、伝える以前よりも安心感が増した、コミュニケーションが改善した、との回答が複数ありました。 発達障害の特性による困りごとは、本人はもちろん、身近に暮らす家族にとっても心配なもの。家族からすれば「何が原因で問題が起きているのかが分からない」よりも、「困りごとや悩みごとの原因は発達障害だ」とハッキリ分かる方が良いのかもしれません。 「家族」に障害を開示して感じたメリット(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・理解を示してくれたことで安心できた ・以前よりも優しく接してくれるようになった ・ケンカすることが減った ・うまくコミュニケーションができなかったときに、「発達障害の特性によるものだ」と知ってもらえたことで、悪意があるわけではないと分かってもらえた 一方でデメリットとしては、発達障害のことを本当に理解をしてもらうまでに時間がかかった、うまく理解が得られなかったという回答も。 発達障害の特性は、障害について詳しくない人からすると「性格の問題」や「努力不足」のように見えてしまうケースもあります。特に大人になってから働きづらさ・生きづらさが表面化した場合、家族からは「子どもの頃は大きな問題がなかったのだから、障害ではないのではないか」というように見えてしまうのかもしれません。 「家族」に障害を開示して感じたデメリット(記事掲載用に回答内容を一部編集しています) ・親が以前よりも過保護になった ・受け入れてもらえるまでに時間がかかった ・一部の家族が受け入れてくれなかった ・家族がときどき、対応に疲れているような態度を取ることがあった 2-2. 友人とは変わらない付き合い、一方で恋人は「将来」に対する不安も 友人・恋人に対して障害を開示することのメリットとしては、自分を包み隠す必要がなくなり、以前よりも自然に付き合えるようになったとの回答がありました。 特徴的だったのは、友人に対して障害を開示したことのデメリットを挙げた人が一人もいなかったことです。友人は家族と比べると一定の距離感があり、また先ほど「1-2. 友人・恋人には、関わり方や親しさの度合いによって伝える範囲を決める」の章でもご紹介したように、そもそも信頼の置ける人にだけ伝えているので、カミングアウトした・しないによらず変わらない関係を保てているのかもしれません。 「友人・恋人」に障害をカミングアウトして感じたメリット(記事掲載用に一部編集しています) ・自然体でいられるようになった ・知ってもらうことで、コミュニケーションがスムーズになった ・信頼のおける友人にだけ話しているので、カミングアウトの前後で特に変わったことはなかった 一方「恋人」については、将来に対する不安をデメリットとして回答した方も。 注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)は遺伝的な要因が複雑に関係している*とも言われています。そのため、パートナーが結婚に対して消極的になってしまうのではないか、との回答がありました。 *参考 ・ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省) ・ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省) 「友人・恋人」に障害を開示して感じたデメリット(記事掲載用に一部編集しています) ・(恋人に対して)「いつか距離を置かれてしまうのではないか」「結婚や子どもを持つことを相手がどう思うか」と不安になることがある 2-3. 結論としてカミングアウトした方がいい?しない方がいい? 筆者の個人的な考えではありますが、ここまでのアンケートの結果と筆者の経験を総合して考えると、誰にも開示せず一人で悩み続けるよりも、適切な範囲で開示をした方が良いのではないかと思います。 筆者の場合、一人きりで情報を集め、病院を受診し、悩みを抱え込んでいたときには、どこか自分でも「私は障害者である」ということを受け止め切れていませんでした。しかしパートナーに障害のことを打ち明けたときに、初めて自分の障害とまっすぐに向き合えた感覚がありました。 「他人に開示する」ということは、「私は障害者である」と認めることになりますし、自分の弱い部分を外にさらけ出すことでもあります。しかしその行為が、自分自身が障害と向き合っていくための、一つの大切なステップであるような気がするのです。 ただアンケートの回答にもあったように、筆者の場合も一部の人はなかなか受け入れてくれませんでしたので、「伝え方をもう少し工夫すべきだったかな」という反省もあります。 開示する相手に少しでも発達障害のことを理解してもらうためには、どのように伝えれば良いのでしょうか。 3. 発達障害を理解してもらうための3つのポイント 先ほど「2. カミングアウトして感じたメリット・デメリット」の章でもご紹介したように、発達障害のことを伝えても、うまく相手に理解してもらえないというケースもあります。 実際に筆者も、親に伝えた当初は言葉や態度の様子から「まさか自分の子どもが障害者であるわけがない」という雰囲気を感じていました。 発達障害のことを他者に理解してもらうためには、いったいどうすれば良いのでしょうか。アンケートの回答と筆者の体験をもとに、ポイントを3つに整理してみました。 ポイント1. 理解してもらうのは時間がかかるので、伝え続ける努力をする 「発達障害」という、相手にとって今まで知らなかった障害について理解してもらうには、一度だけで理解してもらおうとするのではなく、時間をかけて伝え続けることが大切です。 アンケートでも、理解してもらうまで時間をかけて何度もくり返し伝えた、という回答がありました。 最初は「本当に発達障害なの?」という疑いの目を向けられましたが、障害のことを伝え続けることによって次第に理解を得られるようになりました。 「家族」は自分のことを理解してくれる唯一の理解者なので、「自分から心を開く」ことが大切だと思います。 自分でも障害のことを学んできちんと説明できるようにし、理解を得られるまで何度も何度も伝えることで、少しずつ家族も認めてくれるようになると思います。(※記事掲載用に一部編集しています) 先ほど筆者の体験談として『親に伝えた当初は、言葉や態度のはしばしから「まさか自分の子どもが障害者であるわけがない」という雰囲気を感じた』と述べました。しかし発達障害のことを自分でも勉強し、何度も繰り返し伝えることで、今では障害があることを含めて私のことを認めてくれていると感じられるようになりました。 ポイント2. 混乱や衝突は「必ず起こるもの」だと考える 自分にとっても周囲にとっても、発達障害のことを本当に理解するまでには時間が必要であり、その途中では混乱や衝突は「必ず起こるもの」と考えた方が、結果的にうまくいくのかもしれません。 ビジネスでは、チームでなにかプロジェクトをおこなうときの手法として「プロジェクトマネジメント」というものがあります。その中では「チーム」が作られていく段階として ①形成期 ②混乱期 ③統一期 ④機能期 という4つのステップがあるとされています。 注目したいのは②混乱期です。 プロジェクトマネジメントの概念は数十年前にアメリカ国防総省で生まれたと言われており、長年にわたり科学的な研究が行われてきた分野で、現在では日本でも国が定めるJIS規格(JIS Q 21500:2018)として登録されています。そのような分野で、人が集まると混乱や衝突が起こることが前提(当たり前)として考えられているのは、非常に興味深くありませんか。 同じように、発達障害のことを自分と周囲が理解していく際にも、混乱や衝突は「必ず起こるもの」なのではないかと、筆者は思うのです。 あくまで筆者の個人的な体験に基づいていますが、「プロジェクトマネジメントの4ステップ」になぞらえると、障害の理解には6つのステップがあるのではないかと考えています。 1. どん底期 働きづらさ・生きづらさがピークに達し、仕事や生活がうまくいっていない時期。インターネット等で発達障害の情報を見て「もしかしたら自分もそうではないか」と思い、発達障害のことを調べ始める。 2. 発見期 病院を受診したり、支援機関の窓口などに相談し始めたりする時期。発達障害の診断を受けることで「仕事や生活がうまくいかない根本的な原因は、自分の性格や努力不足の問題ではなく、発達障害のせいだったんだ」と分かり、気持ちが少し楽になる。 3. 混乱期 診断を受けて多少気持ちは楽になったが、困っている状態が解決したわけではないので「これからどうすればいいの?」と悩んでいる時期。 病院への通院や、公的な支援を受けるための手続きをおこなうなかで徐々に「自分は障害者なんだ」という実感が湧いてくるが、まだ完全には腹落ちできていない。腹落ちできないので、自分で自分の障害や特性のことを十分には理解できず、周囲にもうまく伝えられない。そのため、カミングアウトしてもなかなか理解してもらえない。 4. 衝突期 就労のための支援を受けたり、転職・再就職の活動を始めたりするが、働きづらさ・生きづらさが一気に改善するわけではないので、焦りを感じる時期。 その焦りやいらだちから「自分は障害があってもがんばっているのに、なぜ助けてくれないのか」という気持ちが生まれて、周囲と衝突を起こす。セルフケアや、合理的配慮の調整がまだうまくできない。理解して欲しいという強い気持ちから、自分の障害についてブログやSNS等で発信したりする。 5. 理解期 病院への通院や、障害者支援制度の利用を続けるうちに、「発達障害で困っている人を支援する制度は確かにあるが、誰かが“おんぶに抱っこ”で助けてくれるわけではなく、最終的には自分ががんばらないと解決しない」ことをうすうす感じ始める時期。 現実の厳しさを知って時折くじけそうになるが、自分の障害や特性についての理解が進み、セルフケアもできてくるので、周囲に対してただ「助けて欲しい」と訴えるだけでなく「ここまではがんばるから、ここからは助けて欲しい」という建設的な相談ができるようになってくる。 6. 安定期 転職や再就職が決まってからしばらく経ち、仕事や生活が安定してくる時期。気持ちに少し余裕が生まれてくる。発達障害を持ちながら生きていくことが、当たり前のものとして少しずつ自分の生活になじんでくる。障害の有無に関係なく自分が活躍できる方法を探し始める。 *** 先ほども申し上げたとおり、上記の6つのステップはあくまで筆者の個人的な体験に基づいており、後から振り返ってみて「このような時期があったな」というものです。 しかし「混乱や衝突は起こっても仕方がないもの」とあらかじめ心構えしておけば、実際にそうなったときにも多少、気持ちに余裕ができるのではないかと思うのです。 ポイント3. まず伝える側=自分の準備を整える 以上のように、発達障害の診断を受けてから現在までを振り返ってみると、発達障害のことを相手に理解してもらうためにもっとも大切なことは、まず伝える側=自分の準備を整えることではないかと思います。 筆者が親にカミングアウトした当時は、障害が原因で仕事を辞め、これからどうすればいいのかと悩んでいた時期でした。仕事も生活もうまくいかず「とにかく今すぐ、誰か助けて欲しい」と強く思っていました。 ところが「助けて欲しい」と思えば思うほど、相手がなかなか理解してくれないことにいらだち、攻撃的な口調になって対立が起こり、余計に相手が理解してくれない…という悪循環に陥っていきました。 しかしそんな悪循環が、再就職が決まったことをきっかけに変わり始めます。 徐々に安定して仕事ができるようになってくると、精神的にも少しずつ余裕が生まれ、次第に「時間がかかってもいいから、理解してもらえるまで根気よく伝え続けよう」と思えるようになっていったのです。 4. 自分の準備を整えるためには 今回はアンケートと筆者の体験談を交えてご紹介しましたが、発達障害によってどのような生きづらさを感じているのか、自分の周囲にどのような人間関係があるのかは人それぞれですので、「こうすれば正解」というものはなかなか見つけづらいかもしれません。 自分の障害や特性を理解することはなかなか難しいもの。自分一人で悩むよりも、専門機関の手を借りた方が良いでしょう。 そんな方々のサポートをおこなっているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。