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当事者が5年間やってみた!〜リモートワークの理想と現実〜

テレワーク、リモートワーク、在宅勤務——呼び方はさまざまですが、働く場所を会社に限定しない柔軟な働き方が、この数年で身近な存在になってきました。(以下、本記事では「リモートワーク」で統一します。)障害者雇用においてもリモートワークが活用される事例が増えています。
- 参考:都市部と地方をつなぐ 障害者テレワーク事例集(厚生労働省)
「対面でのコミュニケーションをせずに済む」「気を散らさずに自分の仕事に集中できる」などのメリットがあることから、発達障害のある方にも向いていると言われることもあるリモートワーク。しかし実際には個々の特性や仕事内容、自宅環境などによって向き・不向きが極端に別れるため、本当に自分に合っているかどうかをしっかりと見極める必要があります。
今回は注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)と自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の両方の診断を受け障害者手帳も取得している筆者が、当事者として実際にリモートワークをしてみた体験レポートをお届けします。
今回のレポートでお伝えするのは、以下の2点です。
- ・5年間の長期に渡ってリモートワークしてきた経験
- ・「出社がメインでたまにリモート」「リモートがメインでたまに出社」「完全(フル)リモート」とさまざまなパターンを試してみた経験
「レポートを作るためにちょっとやってみた」というわけではなく、長期に渡って筆者が試行錯誤した実体験をもとに、リアルなメリット/デメリットをご紹介します。読者の皆さまが「自分にはリモートワークが合っているかどうか」を考える際の参考となれれば幸いです。
リモートワークって意外と難しい
いきなり否定的なことを書いてしまいますが、リモートワークには難しい部分があるということが、さまざまな調査から明らかになってきています。
大手不動産情報メディアが2020年におこなった調査 [*1] によれば、「オン・オフの切り替えがしづらい」「作業に適した設備が自宅に足りない」「集中できる環境の確保が難しい」など、リモートワークを経験した人の多くが何かしらの課題を感じています。
また総務省の2022年度の統計調査 [*2] によれば、以下のように、リモートワークをおこなえているかどうかは地域や業種による差が大きいことが報告されています。
- ・リモートワークを実施している企業の割合は、もっとも高い関東では30%を越えるものの、それ以外の地域では10〜20%程度にとどまってる。
- ・リモートワークを実施している企業の業種は、「情報通信業」がもっとも高く55.7%である一方で、もっとも低い「医療、介護、福祉」では4.3%、次いで低い「宿泊業、飲食サービス業」では11.1%しかない。
コロナ禍の影響もあり、以前と比べるとリモートワークは日本中で大きく広がりました。「リモートワークで働きたい」「リモートワークができない会社は遅れている」といった言葉もよく耳にします。
たしかに筆者も、リモートワークのおかげで助かっていることがたくさんあります。しかしリモートだから何でもかんでもすばらしい!ということではありません。「障害の有無に関係なく難しい面があること」や「住んでいる地域や働いている業界・業種によってできる/できないが大きく異なること」は、前提として押さえておいた方が良いでしょう。
これらを踏まえたうえで、次のページからは筆者が実体験から感じたメリット・デメリットを、以下の3つのパターンでご紹介します。
- パターン1. 出社がメインでたまにリモートワーク
- パターン2. リモートワークがメインでたまに出社
- パターン3. 完全(フル)リモートワーク
パターン1. 出社がメインでたまにリモートワーク

出社することが原則だが、必要な場合(例えば、天候や交通事情により出社が難しい場合や、外出先が遠方で会社に立ち寄っている時間がない場合など)には上司の許可を得てリモートワークをしてもOK、という条件でした。
実際にリモートワークした頻度は「月に数回」程度。上司の許可がいるため、本当に必要なときのみおこなっていました。
1-1. メリット
「リモート」という選択肢があるだけでも楽になる
「必要な場合に許可を得ればリモートワークが可能」というだけでは、一見するとあまり意味がないように感じます。しかし完全なリモートワークでなくても「選択肢がある」というだけで、とても効率的になりました。
例えば「天候の影響で交通機関が大きく乱れている」という場合、出社が前提だとどんなに混雑していても、遠回りをしてでも会社に行かねばならず、それだけで時間も体力も浪費してしまいます。このようなときに「リモートワークしても良い」という選択肢があれば効率的に時間を使えます。
また「体調がすぐれず出社するのはしんどいが、仕事はなんとかできる」という場合にもリモートワークができれば柔軟に対応でき、休んでしまう罪悪感を軽減できます。「休む以外の選択肢が取れる」ということは効率的であるだけでなく、気持ちの面でも、とても楽になりました。
会社の体制にもよりますが、「リモートワークができる」ことは単に仕事の効率性の観点だけではなく、発達障害による「二次障害」などの理由で体調がすぐれないときや、定期的に通院しなければならないときに「柔軟な対応ができる」という観点でも、メリットだと言えるでしょう。
出社することでオン/オフの切り替えがしやすい
後にリモートワークがメインになってから気が付いたのですが、出社する方がメリットになることもありました。
リモートワークの場合、仕事とプライベートのオン/オフを自分で切り替える必要があります。しかし出社をすれば自動的に仕事モードになりますし、「勤務時間内に終わらせなければ」という気持ちも働きます。作業の内容によっては、会社で仕事をした方が集中しやすいものも数多くありました。
1-2. デメリット
出社時/リモート時の「作業の切り分け」が難しい
「たまに」リモートワークを行う場合は、作業の切り分けを事前にしておかないと、結局たいした仕事ができませんでした。
私は会社から支給されたノートPCを持ち運んで作業していましたが、社内からでないとアクセスできないデータや社外に持ち出せない資料などがあり、当然それらが必要な作業はリモートワークでは行えません。
また会社であれば外付けのディスプレイやキーボード、マウスなどが使えましたが、リモートワークではノートPCだけで作業せねばならず、複雑な作業をするには不向きだったので、結局「メールのチェックや簡単な作業しかできない」ということも多々ありました。
どの場所でどんな作業ができるかをあらかじめ想定して切り分けておかないと、せっかくのリモートワークをうまく活用できないと感じました。
事前の仕事の段取りや計画を立てなければならないという点では、ADHDの特性として「見通しを立てるのが苦手(計画を立てるのが苦手)」な方の場合、特に注意が必要です。
パターン2. リモートワークがメインでたまに出社

コロナ禍の影響で、会社が「出社せずとも済む場合には、なるべく出社しないように」という方針を打ち出し、リモートワークをメインとする体制になりました。出社の頻度は週1〜2日で、それ以外は基本的に自宅で作業するようになりました。
2-1. メリット
通勤の負荷が大幅に軽減された
リモートワークのメリットを一番大きく感じたのは、通勤の負荷が軽減されたことです。
私はASDの特性として「感覚過敏」と「人の目を気にしすぎて疲れてしまう」というものがあり、人混みがとても苦手で、会社に辿り着くだけでも大きな疲労感がありました。出社が当たり前だったときには「まぁこんなもんか」と思っていたのですが、リモートワークがメインになったことで体力的にとても楽になり、気付かないうちに通勤が大きな負担になっていたことに気が付きました。
自分の仕事に集中しやすくなった
私はADHDの特性である「気が散りやすい」やASDの特性である「感覚過敏」によって、自分に話しかけられているわけではないのに誰かの話し声に気を取られてしまい、作業に集中できないことがよくありました。自宅であればこうした聴覚的な刺激を少なくできますし、集中したいときだけメールやチャットの通知を切っておくこともできます。入ってくる情報を少なくできることで、目の前の作業に集中しやすくなりました。
またリモートワークではチャットやメールなど「テキスト」でのコミュニケーションがメインになりますので、ADHDの特性として「口頭で指示を受けるのが苦手(耳から入る情報が記憶することが難しい)」という方の場合、仕事がしやすくなるメリットもあるでしょう。
2-2. デメリット
自分で自分をコントロールするのは難しい
「自分の仕事に集中しやすくなった」という一方で、自宅で作業することがメインになったことで「仕事以外にあれこれやりたくなってしまう衝動を抑えなければならない」というマイナス面も浮き彫りになりました。
例えばちょっと休憩しようと部屋に目をやったら、ホコリが気になって掃除を始めてしまったり、天気がいいから布団を干したくなってしまったりというように、自宅にいるせいで「出社していれば気にならなかったことが気になる」ようになったのです。
「衝動性の高さ」や「気が散りやすい」などのADHDの特性がある方は、仕事に集中ができる環境を整えるために、余計なものが視界に入らないよう机や部屋を片付けたりパーテーションを設置したりなどの工夫が必要でしょう。
逆に「仕事をし過ぎてしまう」という点でも苦労しました。会社でしか仕事ができなければプライベートの時間は仕事を忘れられます。しかしリモートワークでは意識的にオフにしないと四六時中仕事のことが気になってしまい、家族との時間をないがしろにしてしまうようなこともありました。
ADHD/ASDの特性である「過集中」によって、休憩や食事を忘れて作業を続けてしまったり仕事のことを考え続けてしまったりすることがあるので、注意が必要です。
パターン3. 完全(フル)リモートワーク
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以前から副業でライターの仕事をしていたのですが、そちらが徐々に拡大していたことから、より柔軟に働けるよう本業も雇用契約から業務委託契約へと切り替えてもらうことになりました。ライターの仕事も本業でおこなっていたWebマーケティングの仕事もリモートワークと相性が良かったことから、フリーランスとなったことをきっかけに、完全(フル)リモートワークに移行しました。
3-1. メリット
自分のやりやすいように仕事環境を作れる
「出社しない」ことが前提になったため本格的に自宅の仕事環境を整えはじめたのですが、自分のやりやすいように環境を作れるというのは、とても大きなメリットでした。
私はASDの「感覚過敏」の特性があったため、目や耳からの刺激をなるべく少なくしたかったのですが、さすがに会社で他の社員がいる中では「自分の席だけ照明を調節」したり「自分だけイヤホンをして雑音を防ぐ」ようなことはできません。
その点、自宅であればどんな調節も自分の思い通りにできます。もちろんお金がかかってしまうこともありますが、お金をかけただけの効果は十分得られたのではないかと思っています。
3-2. デメリット
生活スタイルそのものをアップデートしなければならない
私はASDの特性上、人とコミュニケーションを取ることがあまり得意ではないので、リモートワークで対面のコミュニケーションを少なくできるのは大きなメリットでした。ところが完全リモートワークで仕事をするようになって、今度は家族とのコミュニケーションや距離感の取り方に難しさを感じるようになったのです。
もちろん家で仕事をすることに家族も納得してくれています。それでも人の感情としては「家にいるんだから、これくらいのことはやってよ」と思うのは当然のこと。私自身も、かつてフルタイムで出社して働いたころは、家族に対してまったく同じことを思っていました。
家族との距離感をすり合わせ、自分の中で納得できる形に落とし込むまでには2〜3年かかりました。
仕事の時間や場所が自由になるということは、プライベートの時間の使い方にも当然影響します。つまり、単に「今までより効率的に働ける」というだけではなく、「これまでの生活スタイルそのものが変わる」ということなのです。どのように働いて、どのようにプライベートを過ごすのか——時間のデザインを自分でしなければならないところに、難しさを感じました。
特にADHDの「見通しを立てるのが苦手(計画を立てるのが苦手)」という特性がある場合は、仕事とプライベートの両方の計画を立てなければならない完全リモートワークではより困難さを感じてしまうかもしれません。
リモートワークに欠かせないのは「セルフケア」
今回ご紹介したのはあくまで筆者個人の事例ですので、発達障害の特性や仕事の内容、自宅環境などによって、リモートワークに向いている/向いていないは大きく異なります。
リモートワークの場合、同僚や上司の目が届かないところで仕事をすることになりますので、特に障害者雇用では出社している場合と比べ、どうしても合理的配慮が受けづらくなります。
例えば「過集中によって長時間作業をし続けてしまう」という特性に対して、出社していれば「周りから声をかけてもらう」という合理的配慮が受けられますが、リモートワークでは自分自身で管理しなければなりません。また「計画を立てて進めるのが苦手」という特性に対しても、リモートワークでは周囲からの進捗確認や声がけがしづらくなるので、自分でスケジュールやタスクを管理する必要があります。
このように、自分で自分を管理する「セルフケア」がちゃんとできていることが、リモートワークには欠かせないのです。
もし一人ではセルフケアを身に付けることがたいへんだと感じたら、支援機関を利用することも一つの手です。セルフケアを始め、働く上で困りごとを感じている方のサポートをおこなっているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。
就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業)
就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。
「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。
ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。
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- 一般社団法人ファボラボ 代表理事
- 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会 評議員
- 公認心理師
- NESTA認定キッズコーディネーショントレーナー
- 発達障害ラーニングサポーター エキスパート
- 中学校教諭 専修免許状(社会科)
- 高等学校教諭 専修免許状(地理歴史科)
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。







