発達障害のある方の合理的配慮事例|職場コミュニケーション編

合理的配慮とは、「障害による困りごとへの配慮を、企業や自治体、教育機関等の事業主(※)に求めることができる」という制度です(※以下、本文では「職場」と表記します)。合理的配慮について職場と調整をすることは、発達障害のある方が安定して長く働いていくために大切なポイントとなります。

では、具体的にどんな内容であれば、職場に合理的配慮を求めることができるでしょうか。

今回は、発達障害の特性がある方が抱えやすい「コミュニケーション」の苦手に対する配慮事例を紹介をします。

相談前に押さえておこう〜合理的配慮の前提となる自己対処〜

「合理的」と付いているのには理由がある。

「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」などの法律では、障害のある方に対し職場は合理的配慮の提供をおこなうことを義務づけています。

ただし、「障害者が求めたことは、どんな内容でも配慮してもらえる」というわけではありません。

法律では、職場が合理的配慮を提供する場合に「負担が重すぎない範囲で」と定められています。職場の側に配慮を求めるだけでなく、障害者の側も「自分でおこなえる対処」を提示して、互いに無理のない範囲をすり合わせることが必要です。

これが、単に「配慮」ではなく「合理的配慮」と書かれている理由です。

「合理的であるかどうか」を判断するポイントは、「障害が原因となる困難さのうち自己対処では対応しきれないことであり、かつ職場側にとっても重い負担がなく提供可能な範囲かどうか」ですので、しっかりと押さえておきましょう。

なお、合理的配慮については以下の記事で詳しく解説しています。実際に職場と合理的配慮の相談をする前に、ぜひご一読ください。

困りごと・原因・自己対処の例・合理的配慮の例

合理的配慮の例を、職場で起こりやすいコミュニケーションの困りごと別に整理しました。実際に提供されている配慮事例とセットで、「原因はなにか」「自己対処として何ができるか」の例もまとめています。
困りごとの原因は一人ひとりの特性によって異なるため、自己対処と合理的配慮の内容は「自分に合ったもの」にする必要があります。また、職場や職務内容によっては、以下の配慮の提供が難しいケースもあります。今回ご紹介するものは、あくまでも参考としてお読みください。

上司へ声掛けをするタイミングが分からず、報連相(報告・連絡・相談)ができない

原因の例

  • シングルレイヤー思考により、文脈や言外の意味理解が難しく、上司に話しかけてよいタイミングや場の空気が読めない

自己対処の例

  • 「毎朝」「毎週月曜日」など頻度を定め、上司にメールで現在の状況を送る
  • 日報を書いて上司に提出する

合理的配慮の例

  • 「毎朝10分」「毎週1時間」など、頻度と時間を定めて、定時報告する時間を上司に予定してもらう
  • 上司の方から定期的に状況を確認してもらう

曖昧な表現(なるべく早く、いい感じに、など)が理解できない

原因の例

  • ハイコントラスト知覚により、抽象的に表現された内容の要点を捉えることが難しく、具体的な数字や判断基準のない表現が受け入れにくくなる。など

自己対処の例

  • あいまいな指示を受けた際、そのまま引き受けてしまわずに「具体的な日時を決めてよいでしょうか?」「もう少し具体的に、どの程度の品質が必要でしょうか?」と確認をおこなう

合理的配慮の例

  • 指示に具体的な期限や判断基準を入れてもらうようお願いする
    • 締切の指示:×「なるべく早く」→ ○「△日の□時までに」
    • 品質の指示:×「いい感じに」→ ○「社内検討用なので手書きのラフでOK」

話を聞きながらメモをとることが苦手

原因の例

  • シングルレイヤー特性により、聞いた内容を処理しながら、同時にメモを取ることが難しくなる。話の内容全体を把握しながら、要点を捉えることが苦手。など

自己対処の例

  • 「ゆっくり話してもらう」「一つメモを取り終わったら、次の話をしてもらう」など、その場で相手にお願いする。
  • 紙にペンでメモするだけでなく、「ボイスレコーダーを使う」などの方法も検討する
  • 話の全部をメモしようとするのではなく、要点だけ(日付、人物、方法など)をキーワードでメモするようにする。電話であれば、電話メモのテンプレートを用意しておく

合理的配慮の例

  • メモが必要な口頭ではなく、なるべくメールやチャット等の文章で指示を出してもらうようにする

説明をするのが苦手

原因の例

  • 衝動性(行動のブレーキの利かなさ)により、話そうとすることを整理する前に思いついたまま話し始めてしまう。頭の中だけで考えを整理することが苦手。など

自己対処の例

  • 説明することをあらかじめ紙などに書き出し、5W1Hで整理してから話す。
  • その場で説明を始めず、少し待ってもらい、状況や考えを整理してから改めて説明する
  • 口頭で説明せず、メールやチャット等、文章で回答する

合理的配慮の例

  • 何か説明を求めるときには、口頭ではなくメールやチャット等で事前に依頼してもらうようにする
  • 会議で説明を求めるときには、事前に通知して、考えを整理し準備する時間をもらうようにする

話を聞き続けるのが苦手

原因の例

  • 衝動性(抑制の効かなさ)により、他のものに注意が向いてしまうと、そちらに意識を持っていかれてしまう。ワーキングメモリーの弱みにより、記憶にとどめておける情報量が少ないので、聞き続けると情報が処理しきれなくなる。など

自己対処の例

  • 睡眠不足などにより集中力そのものが下がっていることがあるので、生活リズムを整える
  • 話を聞くときにはPCの画面を消す・手元の資料を閉じるなど、他のものに注意が行かないよう工夫する

合理的配慮の例

  • 一度に多すぎる情報を与えないよう、小出しにしてもらう。その上で、少し待ってメモや整理する時間をもらう

思ったことをそのまま口に出してしまう

原因の例

  • 衝動性(行動のブレーキの効かなさ)により、思った瞬間には、すでに口に出てしまっている。(「口に出してはいけないな」と判断が終わる前に、すでに行動してしまっている)など

自己対処の例

  • 思わず口に出してしまったことを、無理に取り繕おうとせず謝る。そのうえで、本来言おうとしていたことを言い直すように習慣づけする。

合理的配慮の例

  • 話している際にパニックになっている様子が見受けられたら、「落ち着くための時間を設けてよい(5分休憩など)」旨を伝えてもらう
  • 失言があったときには、その場で注意してもらうようにする(失言を謝る、言い直す習慣づけのため)

合理的配慮の相談をするための3ステップ

ここまでご紹介してきたように、職場と合理的配慮を相談する際には、前提として「自己対処(セルフケア)として何ができるか」を考える必要があり、そのためには「原因は何か」を知っておく必要があります。

つまり、以下の3ステップで考えることが大切です。

  1. ステップ1:自分の特性について知る
  2. ステップ2:自己対処として何ができるかを考える
  3. ステップ3:自分の特性と合った合理的配慮を探す(相談する)

発達障害の特性や、それによる困りごとは人それぞれです。「どのような特性があり、それに対してどのような対策が取れるのか」を知っておくことが、自分に合う対策方法や合理的配慮を見つけることへとつながるのです。

ただ、目の前の仕事や生活で困りごとを抱えている状態で、正しい知識を独学で身に付けることはたいへんです。

「自分の特性にあった自己対処は何をすればいいの?」「どのような形・タイミングで職場と相談すればいいの?」など、悩んでしまうことがあるかも知れません。

そんなときには、自分一人で抱え込まずに、専門家の手を借りることも検討してみましょう。

就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。

就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業)

ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。

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執筆者

藤森ユウワ(ライター・編集)

ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。

これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。

子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。

36 歳で ADHD・ASD と診断される。

診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。

誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。

さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。

自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。

記事監修北川 庄治(デコボコベース株式会社 最高品質責任者)
  • 一般社団法人ファボラボ 代表理事
  • 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会 評議員
  • 公認心理師
  • NESTA認定キッズコーディネーショントレーナー
  • 発達障害ラーニングサポーター エキスパート
  • 中学校教諭 専修免許状(社会科)
  • 高等学校教諭 専修免許状(地理歴史科)
東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。

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