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仕事が辛い同志におくる、ADHDのための「紙1枚」仕事術

特性による失敗を繰り返し、どんどん自信がなくなっていく。そんな状況から立ち直った仕事のコツを紹介します。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「頑張っているのに仕事がうまくいかない」「みんなはできているのに自分だけできない」 社会人になった途端に、仕事でうまくいっている友人たちとの間に距離を感じてしまう。会社で認められて出世したり、大きな買い物を次々にしていく周囲の人たちがいる一方、自分は些細なことでも失敗をしでかして、どんどん自信がなくなっていく。そういった筆者の体験談をもとに、そんな状況から立ち直っていった仕事のコツを、筆者の執筆した書籍『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』をベースにお伝えします。 皆さまの「生きづらさ・働きづらさ」への対処法のヒントとして、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 大学は出たけれど 就職活動ができなくて資格試験の道へ 大学進学までは周囲と変わらず普通に過ごしていましたが、大学3年生から始まる就職活動で、「なぜ自分は働かなければいけないのだろう」「自分が本当にやりたい仕事って何だろう?」と考え始めてしまい、答えが見つからず就職活動全般に対して興味がなくなってしまいました。 後にADHDと診断される筆者は、「知識の偏り」を医師より指摘されます。興味がないことは徹底して知識が身に付かないということです。そんな筆者なので、「仕事をすること」に興味を持てない当然の結果として、就職活動に身が入らなくなってしまいました。 そんなことから、法律系の難関資格である司法書士を目指すことになるのですが、消去法で選んだこともあり勉強に身が入らず、大学卒業後20代の大半を受験勉強に費やしてしまいました。 勉強しながらアルバイトをしようと考えたものの、慣れないこともあってか仕事がうまくいかず、司法書士事務所と不動産会社でのアルバイトを相次いでクビになり、「これは何かおかしいのではないか」と思って診断を受けました。そこでADHDの診断を受けたのです。 就職しても傾向は変わらず その後、障害者雇用枠で会社に就職し、約4年ほどはなんとか仕事を続けられたものの、会社内の状況の変化なども影響して、仕事のミスが頻発し会社に行けなくなり休職し、そして退職してしまいました。 筆者には、このような特性があります。 私は、発達障害の1つADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けていて、具体的には、「抜け漏れ」「先送り」「過度な自責傾向」「段取りが苦手」「集中しづらさ」という発達障害によくある特性があります。 『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』(SBクリエイティブ) ADHDの特性は、基本的には一生変わりません。筆者は、特に緊張したり焦ると、この特性が出やすく、より強く出てしまいます。会社の経営状況が悪くなり人員も減らされていった結果、仕事の負荷が年々重くなっていきました。それと同期するように、社内の人間関係もギスギスしていきました。そういった環境の変化から特性が強く出るようになり、いくら頑張ってもなかなか仕事がうまくいきませんでした。その結果、休職し退職にいたったことは、前述のとおりです。 そのような展開は、転職した次の会社でも同様でした。会社の経営状況は好調でしたが、クローズ雇用(障害を開示しない一般雇用枠)で入社したのと、年齢を加味してもらって役職付きになったため、前の会社よりも一層業務負荷が重い環境で働くことになりました。その結果、特性が強く出てしまい仕事が思うようにいかず、1年程度でまた休職することになりました。 一方、友人たちは…… 筆者が休職や退職をしている一方、友人たちは着実にキャリアを積み重ねていきました。有名企業に入って順調にステップアップする友人、高い車を買う友人、豪華な結婚式をあげる友人、家業を継いで経営層として結果を出す友人、飲食業で頑張ってお店を持つまでになった友人。周囲の人たちは仕事というフィールドできちんと結果を出して、ライフイベントも次々と迎えていく。それに比べて、自分はなぜできないのだろうと、自己肯定感は下がるばかりでした。  私はずっと「自分の力で稼いで、(自分の考える)人並みの生活をしていきたい」という気持ちを持っていました。大学を卒業するまで、いつかは自分にも「人並み」の生活や幸せが勝手に訪れるものだと信じていたからでしょう。  ところが、学生時代が終わり、社会に出た途端、「人並み」とか「普通」とか、そういう類のものが自分にとってはるか遠くのものになってしまいました。「いわゆる障害者雇用」のあまりにも低い給料に悔し涙が出たのも、有名企業に入った大学の友だちと心のどこかで距離感を覚えてしまったのも、その根底にはいつも、「人並みになれない自分」への驚きと悔しさがあったのだと思います。 『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』(SBクリエイティブ) 「タスク管理」で劇的に変わる 「タスク管理」なんて知らなかった私 自己肯定感が大きく下がり、自信を完全に喪失した私は、「できる」自分を背伸びして追い求めるのを諦めるようになりました。それは、今考えれば結果的に自分を良い方向へと導いてくれたと考えています。「できない」等身大の自分を認めることができるようになったことで、自分の抱える特性「抜け漏れ」「先送り」「過度な自責傾向」「段取りが苦手」「集中しづらさ」に真っ向から向き合い、現実的な対策を講じることができるようになりました。 「現実的な対策」とは、「内勤事務職である自分が、目の前のパソコンで仕事の管理表を作る」ということです。当時は、これが「タスク管理」になるとはつゆ知らず、「仕事ができない自分のためのちょっとした工夫」ぐらいしか考えていませんでした。 ①「抜け漏れ」対策 「言われた仕事は全部書く」ということを徹底してやりました。頭の中にあるから書かなくていい、と書くのが面倒な私は思いがちでしたが、面倒でも書く!と自分に言い聞かせ、目の前のパソコンのExcelに書き出しました。 抜け漏れや忘れは、頭で記憶しようとするから起こります。つまり、頭で記憶せず、外部媒体に記録すれば良いのです。こんな当たり前のことがなぜ今まで思いつかなかったのか不思議でした。 ②「先送り」対策 先送りをしてしまう原因の1つとして、「将来得られる大きな達成感」よりも「今得られる小さな達成感」を優先することが挙げられます。やらなければいけない大きくて手間のかかりそうなプロジェクトに高いハードルを感じて、ちょっとの手間でできそうなデスク回りの掃除をついやってしまうのです。 そうならないように、大きくて手間のかかりそうなプロジェクトはすぐに終わらせることができる細かい作業に分け、取り組むことへの心理的なハードルを下げました。 ③「過度な自責」対策 過度な自責傾向とは、自分が責任を持たなくても良い事柄に関しても、「何か自分がやれたのではないか」と考えてしまい、「うまくいかなかったのは自分のせいだ」と思ってしまうことです。心理学上の言葉では「自己関連付け」と言います。 これに対しては、「自分の責任」「相手(自分以外の他人)の責任」とをタスクごとに見える化して、「相手の責任は相手の責任」と思えるようにしました。 ④「段取りが苦手」対策 決められた締切までにタスクを完了させるための「段取り」。夏休みの宿題をやらずに放置して最終日に慌てて手を付けるも間に合わない、といった話がよくあります。まさに自分がこのタイプで、段取りがうまくない典型例でした。 その対策として、②で分けた細かい作業単位に締切を設定して、マラソンのラップタイムのように「いつまでに、どこまでいけば大丈夫か」が分かるようにしました。 ⑤「集中しづらさ」対策 ①~④で書き出した情報は有用なものですが、ときに大量になり過ぎて、どこに注目すれば良いかが分かりにくく、目移りしてしまいがちでした。目移りすると、それに伴って思考の対象も変わってしまいます。今「経費精算申請書の作成」をしていたのに、新着メールの通知に引っ張られて「人事からのメール閲覧」に変わってしまっていたり、といった経験がある方は少なくないのではないでしょうか。 対策としては、「これだけ見ておけばいいですよ!」という、見るべき情報をできるだけ絞り込ませるような見え方になる工夫をすることです。たとえば、すでに終わった作業に取消線を引いたり、「今やるべき作業」だけを集めてリスト化したり、といったところです。 上記①~⑤を「紙1枚」に集約させたのが下記になります。 『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』(SBクリエイティブ) ※上記画像の「ステータス」は以下のようにご理解ください。 自分:自分がボールを持っている(タスクの進捗の主導権を握っている) 相手:自分以外の他人がボールを持っている 予定:誰もボールを持っておらず、特定の日時に自然と発生する いつか:自分がボールを持っているが、締切がなく「いつかやれればいい」程度である 劇的に変わった仕事生活 このような仕組みをExcelで作った私の仕事生活は、劇的に変わりました。特性はそのままでしょうがないと考え、代わりにこの仕組みに沿って仕事を進めていったところ、それぞれの特性による困りごとが驚くほどなくなっていったのです。 以前は、退社後や休日にも仕事のことが頭から離れず鬱々としていました。それが、このやり方を取り入れてからは、毎日退社後や休日は「定期試験の最終日の解放感」を味わうことができるようになりました。 自分の苦手を徹底的に受け容れ、そんな自分をそのままカバーする仕組みを作っていき、自身の発達障害特性による困りごとをことごとくカバーするExcelが完成しました。このExcelこそ、本書で紹介する「紙1枚」のベースとなるものです。 私の人生はここでようやく底を打ちます。8年間抱えてきた仕事の悩みがウソみたいに解消され、会社での仕事に自信が持てるようになり、会社員として人並みに食べていけるようになりました。特性がなくなったわけではありません。仕事のやり方をほんの少し変えただけ。ただそれだけでよかったのです。 『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』(SBクリエイティブ) 「紙1枚」を活用した仕事上の工夫 この「紙1枚」仕事術を活用すると数々のメリットがあります。その一部をご紹介します。 「面倒くさい」は幸せの青い鳥 「紙1枚」仕事術では、タスクはより細かいサブタスクへ分解して着手しやすくします。しかし、それでも「面倒くさい......」と感じて、自然と手が止まってしまうことがあります。面倒くさいと感じることは、ADHDによく起こりがちな「先送り」を引き起こすことにつながります。 そんなときは、そのサブタスクが、自分が実行可能なレベルまで分解されていないことが多いのです。「面倒くさい」と感じたら、それは「そのサブタスクをもっと分解しよう」の合図です。「面倒くさい」と感じること自体はネガティブなイメージですが、実は先送りに陥りそうな自分を救ってくれる幸せの青い鳥なのです。 「『面倒くさい』というサインが出たぞ! よし、サブタスクを分解しよう」と変換する思考習慣ができたら無敵です。サブタスクをザクザクカットしていくうちに、面倒くさい気持ちはどこかへ飛んでいき、代わりに「面倒くさくない」サブタスクのリストができあがります。 『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』(SBクリエイティブ) 「マルチタスク」という幻想を捨てよう 現代社会では仕事をするうえで、一人でいくつものタスクを同時に実行する「マルチタスク状態が”当たり前”」という「幻想」が一般的に広くあるような気がします。 実は、マルチタスクは、それぞれのタスクをサブタスクへ分解し、そのサブタスクたちを次々に終わらせていくことでしか対処できません。ある取引先へのメールを打ちながら、別の取引の担当者とまったく違う内容の電話をするようなことは不可能なのです。 つまり、「田中商事に送るサービスの見積書を作成する」というタスクと、「Cさんからのお礼メールに返信する」というタスクが2つ同時に存在していて、今は前者のサブタスクの2つ目に着手していますよ、という「紙1枚」では至って普通な仕事のこなし方が、世に言う「マルチタスク」なのです。難しく考えるほどのことではない気がしてきませんか? 「できる人」は、この「シングルタスク」を非常に効率よく無駄なく高速で処理していると言えます。 『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』(SBクリエイティブ) 特性も含めて自分自身 タスク管理は「たまたま」 筆者は、自分の特性をカバーする方法を自分なりに考えていた結果たどりついたのが、たまたまタスク管理でした。もしかしたら、他の方はまた別のやり方にたどりつくかもしれません。 仕事術の本を執筆し、それを広める活動をしている筆者ですが、もっと他のところに目を向けて、それぞれがそれぞれなりの「障害特性への対策」を立てれば良いと考えています。 特性を「なかったこと」にしない ただ、その根っこのところで大事にしたい考え方があります。それは、自分の特性を否定して「なかったこと」にしようとしないというものです。特に、ADHDに限らず、発達障害の特性は、なかったことには基本的にはできません。一生付き合い続けていく必要があります。 したがって、特性も含めて自分自身だと考え、「障害特性込み」で対策を立てるのをお勧めします。また、特性があることによって困ったり悩んだりすることも、「そのようなことがあってもしょうがない」「そういった困りごとがあって当たり前」という考え方ができると、実は特性への対処が進みやすくなるのです。 「どうせ自分なんて」と思っている気持ちや自分の特性をそのまま受け止め、自分の心に刻んでください。「どうせ」と思っている自分も、特性で困ってもがいている自分も、他ならぬ自分なのです。決して否定する必要はありません。 辛さを抱えているからこその生き抜き方があります。「紙1枚」仕事術もその1つです。失うものは何もありません。お金もいりません。 『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』(SBクリエイティブ) そんな風に障害特性を受け容れ、困りごとに対処していった結果生まれた「タスク管理」を、もしご自分で参考になりそうでしたら、ぜひ試してみてください。 その際は、本記事でご紹介した小鳥遊の著書『発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術』がお役に立てると思います。 発達障害の僕らが生き抜くための「紙1枚」仕事術(SBクリエイティブ) なお、就労には、本書でご紹介する「タスク管理」スキルとあわせて、その他のスキルのトレーニングも必要です。独学でそのすべてを習得するのは、膨大な手間と時間がかかります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。就労移行支援事業所ディーキャリアは、利用者様一人ひとりに合う金銭管理方法を見つけるサポートも行なっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
食事でADHD特性対策!「集中力」を高める食べ物は?

ADHDの苦手あるある「集中しづらい・続かない」を「食べ物」で対策。カフェインの摂り過ぎは要注意!おすすめの栄養素を紹介。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「集中力が続かない」「1つのことに専念できず、つい気が散ってしまう」 ADHDの特性がある筆者は、集中しづらさという傾向があります。何か気になることがあると今やっていた作業から集中がそれてしまったり、優先順位が高いやるべきことに専念しなければいけないのに、つい興味のある他のことについて考えて手が止まってしまったり、ADHDの衝動性が行動にあらわれてしまいがちです。そんな傾向への対策として、今回は「食事」という観点からできることをお伝えしていきます。 皆さんの「生きづらさ・働きづらさ」への対処法のヒントとして、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] なぜADHDがあると集中力が続かないのか ADHDの抱える「衝動性の強さ」 ADHDのある方は、判断や抑制を司る脳内の機能が低下し、行動や思考のブレーキが効きにくくなり、すぐに行動に移してしまいがちです。この「衝動性の強さ」が、集中しづらさにつながっています。 ADHDの抱える「ワーキングメモリーの弱み」 また、情報を脳内に一時的に置いておく機能「ワーキングメモリ―」の働きが弱い傾向が、ADHDのある方には顕著です。その傾向から、1つの作業に集中しようにも、作業に必要な情報の整理ができないこともよくあり、これもまた集中しづらさにつながっています。 このように、ADHDのよくある2つの傾向「衝動性の強さ」「ワーキングメモリ―の弱み」が主な原因となり、集中力が続かない、集中しづらいという結果に結びつきがちです。 ADHDのある方が集中できない理由やその対策については、下記の記事に詳しく書いてありますので、興味ある方は参考にしていただければと思います。 集中しづらさを「食事」で対策 集中力不足によくやりがちな対策 そもそも、ADHD特性の有無関係なく、誰にでも「集中しづらい」ときはあるものです。たとえば睡眠不足だったり、過労で頭がしっかり働かなかったりといった経験は誰でもあるでしょう。そんな集中力が途切れたときには、多くの人はエナジードリンクやコーヒーなどで「カフェイン」を摂り、眠気覚ましや脳を覚醒させて、集中力を発揮しようとするものです。 たしかに、カフェインには大脳を興奮させる作用があり、眠気が覚めて気分が高揚したような感覚を得ることができます。ただそれは、いわば「元気の前借り」であって、長期的に安定して集中力を発揮することから逆に遠ざかってしまいます。過剰に摂取すると、脳を中心とした中枢神経系が刺激されることによるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気等の健康被害があるとされ、厚生労働省は注意喚起をしています。 参考:食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~ そこで、長く安定して「集中できる自分」になれるための3つの栄養素や成分、それらを多く含む食べ物をご紹介します。 脳の唯一のエネルギー源「ブドウ糖」 まずは、脳を活性化させて集中力や記憶力を高める、脳の唯一のエネルギー源「ブドウ糖」を摂ることが大事です。ダイエットのために糖質制限をするのはよく聞きますが、あまり過剰にやり過ぎると適切な判断ができなくなったり注意力が低下したりします。適切なタイミングで、しっかりブドウ糖を摂ることは、集中力を高める上でも大切です。 ブドウ糖を多く含む食べ物としては、パンなどの穀類、いも、果物などが挙げられます。特に果物はブドウ糖の含有率が高く、集中力対策には効果的です。また、砂糖などの甘味料も大事な脳のエネルギー源となってくれます。 参考:ブドウ糖を含む食べ物とは?ブドウ糖のおもな働きやおすすめレシピを紹介 筆者も、会社の仕事帰りなどで疲労感がたまっているときに、そうとは知らずブドウ糖を補給していた経験があります。帰宅途中の乗換駅にカフェがあり、そこで冷たくて甘いスムージーがとても欲しくなり、よく立ち寄っては飲んでいました。今考えると、体がブドウ糖を欲していたのでしょう。 ただし、一度に大量のブドウ糖を摂取すると、血糖値が急激に上がることがあります。急激に血糖値が上昇すると、体内でインスリンが過剰に分泌され、体に脂肪を溜め込みやすくなり、肥満のリスクが高くなってしまいます。同時に、眠くなったり、気持ちがイライラする原因ともなります。 そこで、血糖値の急激な情報を抑えてくれる食物繊維を多く含む食べ物を一緒に摂ると良いでしょう。幸いなことに、いもや柑橘系の果物など、ブドウ糖と食物繊維の両方とも多く含む食物もあります。他に、野菜や豆類、きのこや海藻などは、食物繊維を多く含むのでお勧めです。 脳のエネルギー補給を補助する「ビタミンB1」 ブドウ糖を体内に入れただけでは、直接脳の活性化にはつながりません。体内に取り込まれたブドウ糖をエネルギーに変えることが必要になります。ブドウ糖をエネルギーに変える働きやそのための神経を正常に機能させるのが「ビタミンB1」です。 ビタミンB1が不足すると、ブドウ糖の分解がうまく行なわれなくなり、脳へのエネルギーの供給がうまくいかず、集中するどころの話ではなくなってしまいます。ブドウ糖を摂るのと同時に、ぜひビタミンB1も一緒に摂るようにすることを心がけましょう。 ビタミンB1を多く含む食物は、肉類(豚肉、レバー)、魚類(ウナギ、カツオ)、豆類などがあります。穀類にも含まれますが、多く含まれるのは玄米などであり、パンや精白米などはビタミンB1は多くはありません。また、お酒をよく飲む方は、アルコールの分解にビタミンB1が使われてしまうため、せっかく摂取したビタミンB1が無駄に消費されてしまうことに注意が必要です。 やる気や覚醒を司る神経伝達物質を作る「チロシン」 また、「やる気」を起こさせる、持続させるという点では、「チロシン」という成分が有効です。チロシンは、ドーパミンやアドレナリンの原料です。ドーパミンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、やる気の向上や幸福感のアップをもたらしてくれます。アドレナリンは、危機を察知したときなどに分泌されるホルモンであり、集中力を上げて、自分の置かれた状況に対して迅速に決断することを助けてくれます。 チロシンを多く含む食物の代表はタケノコです。他にも、かつお節やアーモンド、ピーナッツ、牛乳や肉類にも豊富に含まれています。チロシンはトリプトファンという物質と一緒に摂取するとより効率的に脳に届けられます。トリプトファンは大豆や牛乳、チーズやヨーグルトなどに多く含まれています。 なお、炭水化物を多く含む食物とチロシンを一緒に摂ると効果が低くなってしまうので、ご注意ください。 食事以外での集中しづらさ対策 今までは、集中力を上げる食事についてお伝えしてきました。私たちの体は、食べたものによってできているといっても過言ではありません。何をどう食べるか気をつけると、きっと効果が現れることでしょう。 そういった食事面での対策をしつつ、さらに効果を上げるための対策を挙げてみます。 定期的な気分転換 無意識的に行なっている方もいるかもしれませんが、あらためて「定期的な気分転換」の重要性をお伝えします。まず、集中しづらさという元来の傾向をある程度受け入れることが、無理なく自然に作業を継続できるよい対策につながります。 そのためにも、一気に長時間作業を続けるのではなく、短時間に区切り、タイミングよく休憩や気分転換を挟むことをお勧めします。 気分転換の事例としては、オフィスで業務を行なっている場合、トイレに行ったり、コーヒーブレイクをしたりすることが挙げられます。筆者は、常にコーヒーの入ったコップをデスクに置き、飲み終わったタイミングでまたコーヒーを入れるため給湯室へ行っていました。オフィスから出られるなら、昼休みなどに軽い運動をしたり、仮眠をとるのも有効です。こうした行動を取って気持ちをリフレッシュさせることで、集中力が高まります。 また、定期的な区切りをつけられるようにするために、業務の作業内容を小分けにするなど仕事を進める上での工夫も重要です。たとえば、「資料を作る」ではなく、「資料の項目を洗い出す」「項目ごとに簡単な内容を書く」「本文を書く」といった具合です。小分けにすることで、席を立つタイミングをより多く作ることができ、ずっと机にかじりつくような状況を避けることができます。 さらに、集中力を高めるには、「集中すべき対象以外に注意をいかせない」工夫も大事です。たとえば、今日やるべきことを付箋に書きだして目の前に貼っておく、机の上の物はできるだけなくす、仕掛かり中の仕事タスクに関係のない書類はシュレッダーするかスキャンしてデータで保存する、スマホの通知やパソコンのメールの通知などは切っておくといったことで注意散漫になることを避け、より集中できる環境を作ることができます。 服薬 集中しづらさにはADHD特有の「衝動性」があることはすでにご説明しました。服薬をすることで、この衝動性を軽減できる場合があります。ストラテラを服用することで衝動性が抑えられているという体験談を過去の記事でご紹介しております。 集中しづらさ対策は人それぞれ 今回の記事では、食事面での対策を中心に、集中力を上げる、集中しづらさという傾向を抑える方法をお伝えしてきました。ただ、そもそもADHDと言ってもその症状や傾向は人によって違います。集中力が続かない原因も人それぞれだと考えるのが適切でしょう。 発達障害の特性がある方は、睡眠障害も併発しやすく、その結果集中しづらさにつながっている場合もあります。「過集中」が原因で疲労が溜まってしまったり、職場への過剰適応のせいで疲れやすくなったり、環境と特性のミスマッチによって集中できなくなることもあります。 そういった困りごとや特性などを総合的に判断し、原因にあわせた対策が必要になります。食事での工夫なども含め、専門的な知見を持った人の協力を得て、働くうえで自分にあった対処法を見つけて実践していくことが大切です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ディーキャリアは、就労へ向けて以下4点においてサービスを提供しています。 「就労準備性」の向上就労するうえで必要な心身の健康管理(生活リズムの安定、通院・服薬等)、ビジネスマナーの習得、コミュニケーションスキル・実務スキルの習得等をおこないます。 自分の障害特性への対処法の習得障害理解を深め、自己対処法の習得、必要な合理的配慮の洗い出しをおこないます。 「自分らしい"働き方"」の探求業界職種はもちろん、一人ひとりに合った「働き方(障害者雇用or一般雇用、給与、職場環境、勤務時間等)」をスタッフに相談しながら決めることができます。 就職サポート応募書類の添削や、面接練習、キャリア相談などを通して、就職に至るまでの「就活」をサポートします。具体的には以下をご参照ください。 具体的には以下をご参照ください。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害や鬱で「就活がうまくいかない」苦手感の克服方法

就活がうまくいかず250社落ちた経験のあるADHD当事者が、失敗から学んだ対策法について紹介します。特性理解がポイントです!

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「就職活動、お見送りの連絡ばかりでちっとも内定がもらえない」 「そもそも、選考に通る履歴書や職務経歴書の書き方のコツが分からない」 ADHDの診断を受けた筆者は、上記のような悩みを抱えて就職活動(就活)をおこない、250社落ちました。その経験から、どんな特性がありどんな困りごとがあったのか、その対策を講じるにはどうしたらいいかをお伝えします。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 特性による就活困りごとエピソード ここでは、筆者にある特性や発達障害の特性がある人ならではの就活における困りごとエピソードをお伝えします。 衝動性 ADHDには衝動性という特性があります。筆者においては、「考えたことを口に出さないと気が済まない、思考がつい口をついて出てしまう」という形で表れました。その特性に関連した就活失敗事例をお伝えします。 ①話しすぎ シンプルに面接で話しすぎていました。筆者は1社目を退職した後、半年ほど就活をしました。その半年間に(障害者雇用と一般雇用の求人合わせて)250社近くお見送りをされ、3社から内定をもらいました。その3社の内定は、「あること」に気をつけた途端に連続して獲得することができました。 その「あること」とは、話しすぎないということです。具体的には、「いったん言い終わったら、『これも言った方がいいかも』という内容を付け足さず、ぐっとこらえて相手の反応を見る」というものです。おそらく、付け足しの言葉はかなりの確率で相手にとって無駄なことだったのでしょう。無駄が削ぎ落され、分かりやすく話せるという好印象を面接官に与えた結果、内定につながったのではないかと考えています。 ②思考がそのまま口に出てしまう 大学生のときの話です。ある金融機関に応募したところ、面接前日に面接官を名乗る人から携帯電話あてに着信がありました。出てみると、翌日の面接に成績証明書を持参して欲しいとのこと。前日にいきなりそんな指示をされて少々面食らった私は、「え!?今日の明日ですか!?いきなり言われても用意できないかもしれませんが、とりあえず頑張ってみます」と答えました。 翌日、成績証明書が手に入り「これでどうだ」とばかり面接に臨みました。すると、面接官の態度がとてもそっけなかったのです。結果はお見送りでした。結果の連絡があってから、「あのとき『はい!明日大学で取ってまいります!」と元気よく返事をしていたら、もしかしたらそっけない態度もされず、選考も先に進めたのではないかと思いました。 意に沿わないことを言われても、笑顔で対応することが求められていたのかもしれません。思考をそのまま口にしてしまう傾向がストレートに出てしまったことで、お見送りという結果につながったのではないかと考えています。 知識の偏り 筆者がADHDの診断を受けたとき、臨床心理士から心理検査の結果に関して「知識の偏りがある」と言われました。知識に偏りがあるということは、興味があることについては積極的に行動し知識と経験を蓄積していくのに対して、興味がないことに関しては行動も消極的になり、経験も積めず知識も蓄えられないということです。 大学生のときの話です。同級生は就活をしてある程度経つと何らかの企業から内定をもらうようになりました。一方、筆者は内定が出ずじまいでした。その違いとして筆者が感じたのは、「説得力のある志望動機が言えるかどうか」でした。 同級生は、仮にA社の事業内容について少ししか興味がないにもかかわらず、その自分の興味とA社の事業内容の重なる部分をクローズアップして、「ということで御社に興味を持ちまして......」と言えていたのです。対して筆者は、自己分析や業界研究をあまり深めていなかったこともあり、基本的に一般企業の事業内容に共感もできず興味も持てず、志望動機が言えなかったのです。 それでも無理矢理ひねり出したのですが、社会の荒波に揉まれ人生経験を積んだ面接官が「これは本気で思っていないな」と見抜くのはたやすかったことでしょう。 能力の凹凸の落差 これは厳密に言うと「発達障害の特性」とは違いますが、ある能力は秀でているのに、別のことについてはびっくりするぐらいできないのは、発達障害のある人によくあることです。 とある有名企業の特例子会社の最終面接で、会社の役員の人たちが数人並んでいる中、そのうちの一人から「君はここにくるべき人ではない」と言われてしまいました。筆者は、「物忘れ」「先送り」「自責傾向」「段取り下手」という、どちらかと言うと事務処理に関する能力に自信がなく、逆に人前で話すようなことは大の得意でした。面接ではその筆者の得意がいかんなく発揮されたのです。 普通の面接であれば、好印象を与えて「では合格!」という方向にいきそうなものです。しかし、おそらく逆に「こんなにちゃんとしているのに、なぜ特例子会社で障害者雇用に応募してくるのだろうか」と面接官の人たちは思ったのでしょう。そして出てきたのが、「君はここにくるべき人ではない」という、やんわりとしたお断りの言葉だったのではないかと筆者は思っています。 特性があることによる自信のなさ これも特性自体の話ではありませんが、仕事に支障が出るような特性があるという後ろめたさ・自信のなさを埋め合わせるように譲歩をしてしまっていました。 ①「合理的配慮いりません」 初めて会社というものに入社して(障害者雇用で)働き始めたときの話です。配慮事項を聞かれたとき、「こんな自分を採用してくれたんだから、余計な迷惑を会社にかけていられない」という気持ちから、「合理的配慮をしていただく必要はありません!足りないところがあれば、自分で頑張ってどうにかします!」といった返答をしてしまいました。 ②休みが求人票と違っても受け入れる 上記とは別の会社で、一般雇用で入社したときの話です。求人票では「土日祝日お休み」と書いてあったのですが、内定をもらってから説明を受けたときには、「休みは月9日のシフト休日」と言われたのです。筆者は休日は就職にあたって重要な事項と考えていたため、とても迷いました。しかし、一般雇用で役職つきであり比較的高めの給与であったこと、何より「これを逃したら、これ以上の条件で就職できないのではないか」という自信のなさから、その条件を受け入れてしまいました。 こういった特性をあらかじめ知った上で就活をしていれば、250社も落ちなかったんじゃないかと筆者は今になって思います。 特性を知る方法 ここでは、特性を知る方法について、筆者の経験談も交えてお伝えします。 就活サポートの事例から 就労移行支援事業所ディーキャリアの就職サポートの事例で、卒業生の方がこのように振り返っています。 発達障害のある方が長く働くためには、自分の特性について知ることがとても大切だと考えています。 自分にどのような特性があるかを知って、どのように具体的に対策をすればよいかを知ることで、働きやすくなると思います。 面接のときにも、自分の障害のこと・特性への自己対処法・企業に求める合理的配慮を自分で説明する必要があり、自己理解の度合いが採用の合否にも影響することもあるそうです。 事業所によって支援実績のある障害種別が違うので、自分の障害にあった事業所で、自己理解とセルフケアを学ぶのがおすすめです。 筆者が特性を知った経緯 筆者が初めて就活をしたのは、今から10数年前、2007年のことです。その頃は就労移行支援というものを筆者は知らず、ひとりで就職活動をしていました。そもそも、障害者の就労を支援するいわゆる就労移行支援という制度は2006年に施行された「障害者自立支援法」に基づいたものなので、知らなくても無理はありません。 ひとりで障害者雇用の求人票を見てはハローワーク経由で連絡し、ひとりで履歴書などの書類を作って提出し、面接を受けるという流れを半年程繰り返して1社目で働き始めます。そのプロセスには、自分の特性を知る機会はほぼありませんでした。 それからどのようにして特性を知ったのかというと、「ただひたすら失敗やしくじりを繰り返して経験し、自分の特性や弱みを身をもって思い知った」というのが筆者が一番しっくりくる言い方です。 この「特性の知り方」は確実です。間違いなく、自分の特性を知ることができます。しかし、時間がかかります。筆者は、2007年に会社での勤務を開始してから、明らかに自分の特性を把握しているなと実感できるようになるまで7年かかりました。また、業務での失敗やそれが重なっての休職や退職という精神的にダメージを受けることを何度も繰り返すことになるので、リスキーでもあります。 早く安全に特性を知る方法 筆者の例よりも早く安全に特性を知る方法があります。それは、第三者からの意見に耳を傾けることです。自分の特性を知ることは、多くの場合自分の弱点や苦手なことを洗い出すことになります。そういった作業は、自分ひとりではなかなかできません。家族や友人など親しい人から聞きだすのもありかもしれません。 もちろん、特性を知る手がかりとして自己分析をおこなうのも大いにありえます。自己分析の方法は、こちらにくわしく説明してありますので、ご参照ください。 ただ、「①特性を知る」ことができたとしても、そのための「②自己対処法の習得や企業に求める合理的配慮などの洗い出し」をして、その上で「③応募書類の作成や面接対策」をすることが必要になってきます。 筆者は、上記で挙げた就活では、①と②はほぼできておらず、③を自治体などが提供する就労サービスを利用しておこなったのみでした。その結果が250社のお見送りだったり、せっかく就職しても辞めることになったりということになりました。もし①から③をワンストップでサポートを受けることができたら......と思わずにはいられません。 「自己対処法や合理的配慮の洗い出し」、それと「就活」について 以上のように、障害当事者として就職するには、「特性を知る」に加えて、「自己対処法や合理的配慮の洗い出し」「就活(応募書類の作成や面接練習など)」という2点も重要だと筆者は考えています。 自己対処法や合理的配慮の洗い出しについて ①自己対処法の洗い出し 仕事をする上で起こる困りごとに対して、自分ができることを考えて洗い出しをおこないます。その多くは、「忘れないように書きとめるメモ帳を常に持っておく」「仕事上の書類が行方不明になったり紛失しないように、スキャンしてデータ保存する」といった小さな工夫であることが多いです。 「なんだ、そんな些細なことか」と思うかもしれません。しかし、筆者の経験上、「そんな些細なこと」だから、習慣化するのが難しく、自己対処のハードルを上げてしまうのです。1つ1つ確実に実行していって、自分なりの対処法を身に付けていく姿勢が大事です。具体的にどのような自己対処法があるかについて、以下の記事も参考にしてください。 筆者のおこなった自己対処法については、以下の記事に詳しく書いてあるので、よろしければご覧ください。 ②合理的配慮の洗い出し 自己対処をするにも限界があります。それでも対処できないのであれば、企業側に配慮してもらうよう理解を求めることになります。それが「合理的配慮」です。合理的配慮の基礎知識は以下の記事にまとめられているのでご紹介します。 また、特性を知るところから、自己対処法の洗い出しを経て、企業へ求める合理的配慮を決めるところまでを分かりやすくまとめた記事もあります。こちらをお読みください。 筆者は、これまでに3社の就労経験があります。1社目と3社目が障害者雇用で、合理的配慮を申請しました。1社目は前述の通り「合理的配慮無しで良いです!」と伝えました。3社目については、特性も理解し、自己対処法も確立していたこともあり、1つに絞ってシンプルに伝えることができました。それは「怒らないでください」というものです。 自責傾向が強く、また度重なる失敗やミスにより自己肯定感が低くなっていた筆者は、とにかく叱責を受けることが何より精神的ダメージを受けるものでした。怒られ終わった後も、自分による自分へのダメ出しが続き、心理的に勝手に自分を追い込んでしまうのです。その結果、仕事が手につかず、また新たなミスを誘発してしまうことも多々ありました。 そういったことにならないよう、「一点だけお願いします。怒らないでください。改善すべき点があれば、冷静に指摘するという形にして欲しいです」と、社長面接で合理的配慮を聞かれた筆者は伝えました。 ただ、「怒らないで欲しい」とは、人によっては受け入れがたい話かもしれません。そこで筆者は、仕事の進め方(タスク管理)を活用して仕事についてはしっかり責任を持ってやるという自己対処法もセットで伝え、「自分でできる限りのことはやります。それでも対処が難しいところだけはお願いします」と伝えるようにしました。 「就活」について 志望企業を選んだり、面接対策や応募書類添削などをおこなう、いわゆる「就活」については、先にご紹介した就労移行支援事業所ディーキャリアの卒業生がこのように振り返っています。 自分の経歴は変えられない中で、どう書類でまとめればよいか・離職期間や転職の回数についてどう説明すればよいかをアドバイスしてもらえたことがよかったです。離職期間が長かったり、転職回数が多い方には、就労移行支援のフォローをもらうことがおすすめです。 障害者雇用枠での就職活動は、自分の障害のことや必要な配慮事項を伝えなければなりません。自分の言葉で説明するのが難しかったので、応募書類の作成や面接練習などのサポートはありがたかったです。 自分に合う求人を一緒に探してくれたり、面接に同席をしてくれたりしたことも心強かったです。 「就活」については、以下のページをお読みいただくと、より具体的にご理解いただけます。 必須とも言える第三者によるサポート 特性を知ることも、自己対処法や合理的配慮の洗い出しも、そして具体的に就活をおこなう際にも、いずれも第三者のサポートは必須ではないかと筆者は考えています。筆者はすべてをほぼ自分のみでやりましたが、せっかく就職してもうまくいかなかったり、そもそも特性の理解ができていなかったり、自己対処法や合理的配慮の洗い出しをするということすら考えが至りませんでした。 さらに、これら3点がすべて揃って就職までこぎつけるのに、数年の時間がかかりました。逆にサポートがあれば、そんなにかからなかっただろうと筆者は考えています。3点をまとめてサポートしてくれる上に、志望する企業へ就職するために必要なスキル習得の訓練もできるのが、就労移行支援事業所です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ディーキャリアは、就労へ向けて以下4点においてサービスを提供しています。 「就労準備性」の向上就労するうえで必要な心身の健康管理(生活リズムの安定、通院・服薬等)、ビジネスマナーの習得、コミュニケーションスキル・実務スキルの習得等をおこないます。 自分の障害特性への対処法の習得障害理解を深め、自己対処法の習得、必要な合理的配慮の洗い出しをおこないます。 「自分らしい"働き方"」の探求業界職種はもちろん、一人ひとりに合った「働き方(障害者雇用or一般雇用、給与、職場環境、勤務時間等)」をスタッフに相談しながら決めることができます。 就職サポート応募書類の添削や、面接練習、キャリア相談などを通して、就職に至るまでの「就活」をサポートします。具体的には以下をご参照ください。 具体的には以下をご参照ください。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
ADHDにいつ気付いた?大人になるまで分からないことも

社会人になってからADHDと診断された筆者が、障害と向き合いながら「生きづらさ」を軽減させたエピソードについて紹介します。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「頑張っているんだけど、なぜか仕事がうまくいかない」「学生時代は気付かなかったけど、社会人になってミスや失敗が目立つようになった」 筆者は発達障害のADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を20代後半に受けました。今になって振り返ると、幼少期や学生時代にも、ADHDの特性が出ていたと思います。しかし、そのときは「発達障害」という言葉自体を知らなかったこともあり、ただ単に「なぜだか分からないが、とにかくうまくいかない」という思いを抱えていました。 その後、発達障害の診断を受け、自分の障害特性を理解し受け入れたことで、具体的な対策を打って「生きづらさ」を軽くしていけたという実感があります。そんな「発達障害の気付き」「障害特性の受け容れ」「特性への対策」について、経験談を交えながらお伝えしていこうと思います。 発達障害による「生きづらさ・働きづらさ」を感じている皆さまに、この記事がお役に立つことを願っています。 発達障害の診断を受けるべきか悩んでいる方は、以下のコラムもあわせてお読みください。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ADHDとは まず、ADHD(注意欠如・多動性障害)について、その脳の特性とその特性による影響について簡単にまとめたものをお伝えします。 脳の特性 判断や抑制をつかさどる脳の部位の機能低下・行動や思考のブレーキが効きにくい。・思いついたことをよく考えず衝動に任せて言ってしまったり行動したりしてしまう。ワーキングメモリーの機能低下・臨機応変な対応が難しい。・不注意が起こりやすい。 特性による困りごとの例 ケアレスミスや忘れ物・無くし物が多い 落ち着きがないと言われることがある 人の話を聞き続けることや同じ資料を読み続けることが苦手 予定や約束を忘れてしまうことがある 遅刻を繰り返してしまうことがある 部屋の片付けや物を探すことが苦手 思ったことをそのまま口に出してしまうことがある 衝動買いや計画性のない行動をしてしまうことがある 仕事中や授業中など大事な場面で寝てしまうことがある 計画通りに物事を進めることや、締切を守ることが苦手である このように、脳の特定の機能が低下することで日常生活や仕事上で多くの困りごとが発生することがあります。もっと詳細を知りたい方は、大人の発達障害とは|注意欠如・多動性障害(ADHD)をご覧ください。 ADHDの気付き 「自分がADHDである」という気付きは、幼少期に親が気付いて診断をしてもらったり、逆に大人になって困りごとに直面してはじめて気付いたりと、人によって千差万別です。それぞれの時期別に、よくある気付きのパターンを、筆者の経験談も交えてご紹介します。 幼少期 まだ成長段階であることが多い幼少期は、「忘れ物が多い」「落ち着きがない」「衝動的に行動する」といったことが、先天的な発達障害の症状によるものなのか、それとも成長の一過程だからなのかが判別つかないことがあります。 そんな中でも、以下のような傾向が見られ、それにより保護者の方などから注意を受けることで、本人や周囲が気が付くことが多いと考えられます。 不注意によるもの・ 話を聞き続けられない・ 遊びや活動に集中できない・ 忘れ物や失くし物が多い多動性によるもの・じっとしていられない・ 落ち着きがなく、絶えず動き回る・ 静かな活動が苦手衝動性によるもの・ 順番を待てない・ 思い付きで行動をする・ お友達に手が出てしまう・ 感情の起伏が激しい 今思い返してみると、ADHDの特性や、さらには同じく発達障害の一類型であるASD(自閉スペクトラム症)の特性が影響していると思われる困りごとがよく発生していました。※ASDの特性について詳しく知りたい方は、大人の発達障害とは|自閉症スペクトラム障害(ASD)をご覧ください。 幼稚園の運動会でリレーでのことです。チームに分かれて1人1周ずつ走っていました。第3コーナーにさしかかる直前に先生から「内側を走って!」と言われ、向きをグイッと変えてコースを外れてゴールへほぼ一直線に向かってしまいました。もちろんルール違反で失格です。先生の言う「内側」は、「コースの中で、他の選手よりもなるべく内側」という意味だったのですが、そういった理解をせず独自の解釈をしてしまったのです。「なんでそうするの!?」と先生に叱られながら、心の中では、内側と言われたから内側を走っただけなのにと不満を抱いたことを覚えています。 後年筆者が受けた診断はADHDですが、発達障害は併存することがよくあります。このリレーでの出来事は、ASDによく見られる「言葉の意図が読めない・文字通りに言葉を受け取る」という特性の影響も少なからずあったのではないかと考えています。 学生時代 学生時代は、幼少期より人格形成がされつつあり社会性も求められるので、本人もその特性に比較的気が付きやすくなります。 そのような状況で、以下のような傾向があり、周囲との差を認識することで、自身のADHD特性に気が付くことがあります。 学習の困難・集中力が持続しない・授業中にぼんやりしている・宿題や課題を忘れることが多い行動管理の困難・計画的に勉強や課題をこなすのが難しい・物忘れや失くし物が多い行動抑制の困難・教室内で落ち着かない、席を立ち歩く・過度に話す・ 質問が終わる前に答えたがる社会性の困難・衝動的な発言や行動が多い・危険な行動をとりやすい・友人関係がうまく築けない・いじめの対象になりやすい 筆者は、学習の困難や行動管理の困難、さらにはその社会的な困難があり、「忘れ物が多い」「宿題を忘れる」「計画的に課題をこなせない」「衝動的な行動」といった多くの困りごとに直面していました。 小学生のとき、市のイベントでキャンプにいったときがありました。そこで知り合った友人たちと、近くにある山に登りました。その山はかなり斜面が急で、山道には道に沿って綱がひいてあり、当然その綱につかまりつつ山道を歩かなければ危険なのですが、ふと「この綱から手を放してみたらどうだろう」と考え、パッと手を放してしまったのです。 それから数歩は余裕で歩けたので、調子に乗ってちょっと「ホラ大丈夫!」と速度を早めたところ、その加速が止まらなくなってしまいました。運悪くつまづいて転び、ゴロゴロ転がっていく形になりました。その先は急カーブで、そのままだと自分で曲がることができず深い谷に投げ出されてしまう状況でした。 幸い、急カーブの手前にある大きな木にぶつかって止まり鎖骨骨折で済みましたが、木がなかったら谷底へ落ちていました。まさに、衝動性による危険な行動と言えます。 ただ、幼少期も学生時代も、「発達障害」や「ADHD」という言葉自体があまり知られていなかったこともあり、そういった困りごとがあったにもかかわらず、自分自身も周囲も、特段対策を打つという考えすら思い浮かびませんでした。 社会人以後 幼少期や学生時代において、自身のADHD特性に気が付かず過ごしてきても、社会人として自立・自律して仕事や日常生活をおこなうようになってはじめて気が付くことがあります。 多くの場合は、仕事をする上での困りごとに直面することで否応なしに自身の特性を自覚せざるを得ないというパターンになります。 職務遂行の困難・プロジェクトの計画が立てられない・ケアレスミスが多い・時間管理が苦手(遅刻や納期遅れが多い)・時間配分がうまくできない・優先順位付けが苦手対人関係の困難・上司や同僚とのコミュニケーションがうまく取れない・衝動的な発言や行動でトラブルが生じる日常生活等における困難・感情の起伏が激しいことが多い・ストレスやフラストレーションを感じやすい・家事の管理や金銭管理が苦手・日常生活のルーチンを維持できない 筆者は、職務遂行の困難や時間管理の問題などにより、仕事がうまくいかないと悩むことが非常に多く、さらに、その影響で周囲との関係性が悪化してなおさら仕事がうまくいかなくなるという悪循環に陥りました。 司法書士の資格試験の勉強をしていた20代後半で就いた、ある不動産屋でのアルバイトの話です。最初は快く迎え入れてくれたものの、送付すべき書類を頻繁に間違ったり、お客様を入居候補物件へ案内するのに事前に地図をチェックせず道に迷って結局満足に案内できなかったりとミスや失敗をしていたので、次第に人間関係が悪化していきました。 あるとき、経理をしている社長夫人から、従業員全員にジュースの差し入れがありました。当然自分ももらえるものと思っていたのですが、私だけスルーされてしまいました。また、その社長夫人へ、とある物件についての報告をしたときに、とにかく「言っていることが分からない」とだけしか言われず、どこをどう直して報告すれば良いかも分からず完全に自信を失い、簡単な仕事すらうまくいかないという状況になってしまいました。 そんなこともあり、「自分がこんなにうまくいかないのは、何か理由があるのかもしれない」と思い、「仕事 できない」「仕事 ケアレスミス」といった検索ワードで調べてみたところ、はじめて発達障害やADHDという言葉を知ったのです。その後、公的機関に相談して診療所を紹介してもらい、ADHDの診断を受けました。 障害に気付いて、どうしたか 筆者は、「自分はADHDである」と気付いてから比較的速やかに診断を受けることができました。しかし、診断を受けたからと言って、特性がなくなるわけではありません。むしろ、自分の障害に気が付き診断を受けたところがスタート地点だったと言っても過言ではありません。 そこで、障害に気が付いたあとに得た心構えとしての「障害とうまく付き合う考え方」、その考え方を生かして「筆者が実際におこなった対策」、その前提としての「特性との向き合い方」をお伝えします。 障害とうまく付き合う考え方「ニーバーの祈り」 障害とうまく付き合う、いわゆる「障害受容」をするために大事な考え方があります。ADHDとは直接関係ありませんが、「ニーバーの祈り」という話がそれを端的に表しているのでご紹介します。 神よ 変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。 変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。 そして、 変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。 学校法人聖学院:ラインホールド・ニーバーの祈りの言葉より ADHDの特性は、基本的には変えられないものです。筆者が仕事をする上で特に感じた、困りごとに直結する特性は、「抜け漏れ・忘れ」「先送り癖がある」「なんでも背負い込みすぎる」「段取りをつけるのが苦手」でした。それを変えようとせず、まずは受け容れることが大事だと考えます。 しかし、締切を破ってもいい職場や、延々と先送っても問題が発生しない会社などありません。自分の特性と向き合い、その対策を練る必要があります。 筆者が実際におこなった対策 障害特性への対策は、「頑張る」「気をつける」といった精神論・根性論で解決できるものではないと考えます。具体的で現実的な、実行できる「やり方」に落とし込んではじめて対策と言えます。筆者の場合は、以下のように考えました。 抜け漏れ・忘れ↓忘れても大丈夫なように、必要なことは書きだそう! 先送り癖がある↓「できる」と思える手順に分解して、手を付けやすくしよう! なんでも背負い込みすぎる↓自分がすべき手順と他人にお願いできる手順とを分けて、自分がすべき作業に注目できるようにしよう! 段取りをつけるのが苦手↓分解した手順それぞれに細かい締切をつけて、「締切を守るためにはいつまでにどの作業を終わらせていれば大丈夫か」が分かるようにしよう! このように書きだすことで、自分の特性をカバーしてくれる表ができあがりました。もちろん、この表を作っただけですべてうまくいくわけではありませんが、少なくとも「締切までに過不足なく仕事を終えられる」ということができるようになりました。この表から生まれたツールは、仕事を遂行しやすくする秘書のような存在として、今も筆者の心強い味方となってくれています。 特性との向き合い方 自分の特性への対策として筆者の経験をお伝えしましたが、そこに至るには長い時間がかかり、そのほとんどを自分の特性と向き合うことに費やしました。 特性と向き合うには、具体的には「失敗事例を洗い出す」「洗い出した失敗事例から自分の特性を知る」という2つのことが必要です。さらに、失敗事例を洗い出すためには、失敗事例を多く経験しなければなりません。 筆者は、会社員として働く中で、多くのミスや失敗を重ねてきました。それが結果的に「失敗事例の洗い出し」につながりました。さらに、そういった仕事がうまくいかない状況から休職に至るという流れを2度続けて経験したこともあり、自然と自分の特性と向き合って把握することができました。 しかし、この形での特性との向き合い方は、あまりお勧めできません。時間もかかりますし、精神的負担も大きいです。筆者は10年近くかかり、2度の休職と抑うつの適応障害を起こしてしまいました。それよりは、障害に理解のある第三者の助けを借りて自分の特性を知る方が、より時間もかからず、精神的な負担も少なくなります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
ADHD当事者が編み出した「片付け苦手」克服法を紹介

片付け・整理整頓が苦手なADHD当事者が、失敗体験から見出したライフハックを紹介。日常生活はもちろん、職場で活かせる特性対処のヒントに!

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「片付けをしようとしても、何から手を付ければいいか分からない」「会社のデスクの上に物が散乱していて、仕事に支障が…」 ADHDの特性のある人にとって、物を片付けて整理整頓するハードルは高いものです。「先延ばし・注意力散漫・やる気になりづらい」といった傾向は、キチンとまめに片付けをするという行動に立ちはだかる大きな壁になります。 筆者も、片付けに対して長年苦手感を抱いていました。特に職場での物の整理整頓は、仕事上のロスタイムやミス・失敗の原因にもなりかねません。そこで、まず日常生活において小さな行動をきっかけにしてなんとか人並み程度にはできるようになりました。さらに、職場では、仕事の整理をすることで結果的に物の整理ができるようになりました。 今回は、そういった日常生活上での片付けの工夫、職場での物の整理への取り組み方をお伝えします。 皆さんの日常生活での困りごとが少しでも「ラク」になるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 筆者の「片付けられない」エピソード まずは、どれだけ筆者が片付けや整理整頓が苦手だったかをお伝えいたします。 幼稚園のお泊り保育 整理整頓への苦手感でまず思い出すのは、幼稚園のお泊り保育でのことです。 親がリュックサックに服や下着、靴下やその他必要な物をビニール袋に小分けして入れてくれたはずなのに、着替えなどのタイミングでかならず「・・・はて?」と困っていたのを覚えています。どの服を着ればいいのか分からない、どれがすでに履いた下着でどれがこれから履くべき下着なのかが分からない、そんな状態でした。 同じ組の友達がチャッチャと着替えて集合場所に向かう中、自分ひとりだけ部屋にポツーンと取り残されて、リュックサックの中のものを出したり入れたりしては、「どれを着るんだろう?」と頭をひねっていました。 机の中から靴下が1足 小学生になっても自分が持っている物の整理ができず、そのせいか頻繁に忘れ物や失くし物をしていました。学校の担任と親との連絡事項を書く連絡帳には、担任からの「また忘れ物をしたようです」、そして親からの「申し訳ございません、よく言って聞かせるようにいたします」のやりとりの連続でした。しかも、連絡帳自体持って帰るのを忘れるという始末でした。 特に夏休みなどの直前は大変で、ロッカーの中や机の中などは、開けてはいけないパンドラの箱でした。ロッカーの中はとにかく大量の物が乱雑に押し込まれプレスされた状態で、取り出すことすら大変でした。また、本来教科書やノートなどしか入っていないはずの机の中ですが、なぜか奥の方から靴下が1足だけでてきたことがありました。 ずさんな来客カードキー管理 時は過ぎ、会社員として働くようになってからのことです。相変わらず整理整頓が下手でした。例えば、会社に来客があった際に必ずお渡しする貸出用のカードキーの管理など。来客があったらカードキーを貸し出し、お客様の用件が済んだら、カードキーの返却を受けて管理用の引き出しに戻し、貸出簿に返却のチェックを入れる。たったそれだけのことです。 それがうまくいかず、どのカードキーを貸し出しているのか、貸出簿と現実とがまったく合わず、行方不明になったカードキーの入室権限を止め、新たな貸出用のカードキーを頻繁に作らねばならず、非常にずさんな管理しかできていませんでした。 日常から始める「物の管理」対策 そんな私ですが、取っ掛かりとして家にある物の片付けから手をつけてみることで、片付けへの苦手感を少しずつ克服することができるようになりました。 まず声を大にして言いたいのは、「捨てることを制する者、片付けを制する」です。「整理整頓(せいり→せいとん)」と言いますが、「整頓整理(せいとん→せいり)」とは言いません。整理は「物を捨てること(不要なものを取り除く)」、整頓は「必要なものをいつでも誰でも取り出せるよう、秩序立てて配置すること」です。まず最初に「整理=捨てること」ありきなのです。 とにかく、捨てる!捨てる!捨てる!片付けの第一歩はそこからです。 とは言うものの、ADHDのある人は捨てることも苦手だったりします。そのための、筆者が実践している小さな工夫を1つだけご紹介します。まずはこれだけやってみてください。 一日一善ならぬ「一日一捨」 ADHD特性のある筆者は、色々な物に目がいってしまい集中できなくなってしまいがちです。また、ゴチャッとうずたかく積まれた物を見てやる気をなくし、すぐに先延ばしをしてしまいます。そんな筆者でも実践できたのが、 一日一捨 です。今日、目の前の1個だけ捨てる。明日もまた、目の前の1個だけ捨てる。ただそれを繰り返していくのみです。色々な物に注意がそれる前に「1個捨てる」という行動は完了します。ものの数秒、長くて十数秒です。 「じゃあ、まとまった時間をとって10個や20個捨てたほうがいいんじゃないか」と思うかもしれません。でも、1個にしておきます。中断させられたような気持ちになり、次の1個をやりたくなります。そのまま自分をじらすことで、翌日に片付けたい気持ちを持ち越すことができるのです。その繰り返しで、先延ばしすることなく、いつの間にか多くの「捨てるべき物」がなくなっているのです。 我慢できなくて一日に2個以上捨てることもあるかもしれません。ただし、原則は「一日一捨」。これだけを考えてやってみると、無理なく自然に物を整理することができます。 片付け苦手は、仕事をスムーズに進められない 片付けが苦手だったとしても、日常生活の範囲で終わるのであれば、自分や近しい人が我慢すれば良いかもしれません。しかし仕事においては、片付けがうまくできないのは、スムーズな業務遂行に影響を与えてしまいます。それは、大別して少なくとも以下の3点になります。 探しものが見つからない 片付けができないと、物がどこにあるか把握できなくなります。例えば、上司から「あの書類を見せて欲しい」などと言われたとき、すぐにスッと出せれば良いのですが、「お待ちください」と言って自分の机の上や引き出しの中などをよく探し回っていました。 探す時間もかかりますし、その間ずっと「もしかしたら見つからないかもしれない」という恐怖と戦うことになります。そのようなことが多発すれば、落ち着いて仕事に取り組むことは難しいです。 かつてヒットした「気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ(リズ・ダベンポート 著)」という本では、平均的なビジネスパーソンは探し物で年間150時間も浪費しているとしています。平均であってもそうなのですから、とりわけ片付けが苦手なタイプは、それ以上のタイムロスをしていることになるでしょう。 余計なものに反応してミスを誘発してしまう 物を片付けておかないと、やりかけの仕事に関する書類などがふと目に入ることがよくあります。そうなると、筆者の経験上、今やっている仕事から外れて、やりかけの仕事の方に手を付けてしまうことが非常に多くなります。 そもそも、ADHDの特性の1つとして、注意力散漫というものがあります。注意がそれないように頑張って集中できれば問題ないのですが、意志の力で集中し続けるのは、特にADHDの特性のある人にとっては至難の業です。 会社員時代の筆者も、名刺の発注対応をしていたにも関わらず、ふと目に入った補充用の社内備品が気になって補充しにおこなってしまい、名刺の記載を満足にチェックする時間がとれず焦って誤植を見逃したりしていました。このように、やりかけの仕事からまた他のやりかけの仕事に次々と興味が移ってしまい、全部中途半端になって締切に遅れたり、遅れそうになって焦ってミスをしてしまったり、そもそも集中力が削がれた状態で作業をしてしまって失敗をしてしまったりするのです。 逆に何も動けなくなる 片付けができないと、多くの物が散乱・山積してしまい、いっぺんにたくさんの物が目に入ってくることになります。すると、「もう無理」「自分では処理できない」と、優先順位をつけて仕事に取り組むことができなくなりがちです。 筆者も、机の上にうず高く積まれた書類のタワーを前に、なすすべもなく時が過ぎていった経験があります。高さにして数十センチにもなったその書類タワーは、それぞれが過去引き受けた仕事に関する書類ばかりです。しかも、おそらく一番下から順番に締切が早いのです。そう考えると、触れるのも怖くなり、結局何も動けなくなるのです。 部署内で「あれどうなった?」と騒ぎが発生して、恐る恐るタワーの下から書類を引っ張り出すと、締切を過ぎた、騒ぎの原因の書類が出てきてしまう。そんな経験を筆者は何度もしてきました。 職場での具体的な対策 片付けが苦手な人でも職場で最低限の整理整頓ができるようになるにはどうしたら良いでしょうか。もちろん、先ほど挙げた「一日一捨」も有効ですが、筆者が経験した劇的な変化についてお伝えしたいと思います。 それは、物の整理と同じくらい、頭の中やパソコン上で管理する「タスクの管理(整理)」がカギを握っています。下記のようにタスクを整理することで、物の整理整頓がしやすくなるのです。 今取り組んでいるタスクに関する物であれば、机上に置いておきます。それに対して、今取り組んでおらず、社内の誰かや取引先の対応待ちをしているタスクであれば、いったん引き出しなどに収納して、すぐに取り出せるようにしておきます。一方、自分が今取り組んでおらず、すでに完了したタスクに関しては、保存しておくべき書類以外は、適宜PDF(データ)化して容赦なくシュレッダーにかけて捨てます。 どのタスクが今生きていて、どのタスクが完了しているかを明確にすることで、自信を持って「捨てる」ことができます。このお陰で、どんどん捨てられるようになり、机上の物はびっくりするくらいきれいになりました。 その結果、次のような良い影響がありました。 探しものが見つけやすくなった 自分が抱えている「物」の総量が単純に少なくなったので、探しものは見つけやすくなりました。 余計なものが目に入らなくなった これも上記と同様で、目に入る「物」が少なくなるので、集中が削がれるようなことが少なくなりました。 どの「物」を手に取っても仕事の進捗に直結して動けるようになった 今取り組んでいるタスクに関する「物」しか視界に入らないので、書類を見てじっと考えて、「はて、これは何をするんだったっけ」などと無駄な時間を過ごすことが非常に少なくなりました。 職場での席替えも怖くない 余談ですが、職場では組織変更などが原因で席替えが発生します。以前、筆者はこの席替えが一苦労でした。かさばっているたくさんの机上の物を捨て、それでもなお残っているよく分からない書類の束などを席替え先の机に持って行くのが大変だったのです。 しかも、そんなときに限って「本当はすでに処理しておくべきだった書類」「返しておかなければいけなかった備品」などが大量に出て、暗たんたる気持ちになったものです。また、そんな状態だったので、席替えの準備と実行には優に一日や二日を要する「大がかりなプロジェクト」になってしまっていました。 それが、職場での物の整理整頓ができるようになってからは、5分とかからず移動できるようになりました。そんな風に「片付け」に対して苦手意識をあまり持たなくなったのも、筆者自身の特性を理解し、受け容れたからだと考えています。 ただ、これはあくまで筆者の例であって、参考にはなっても、厳密にいえば一人ひとり対策は違うものです。それに対処するためには、まずは困りごとからその対策を考えていくことが大事です。自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害と金銭管理】実際に効果があった対策を紹介

金銭管理が苦手な発達障害のある方に向け、ADHD当事者が実際に効果のあった対策を紹介します。特性別の困りごとと支援制度についても解説。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「衝動買いが止められない」「お金がいつの間にか残り少なくなっている」「貯金がどうしてもできない」 発達障害のある方は、金銭管理に関する苦労がついてまわるといっても過言ではありません。筆者も、期限まで払うべきお金を延滞させてしまったり、計画的なお金の使い方ができず月末に翌月分の前借りをしなければならなくなったりと、お金の管理にはだいぶ手を焼いてきました。 今回の記事は、特性別のよくある困りごと、それらに対する対策、さらには相談先や支援制度の紹介をいたします。まずは自分で困りごとを把握して対策を立てることが大事です。しかし、自分だけでどうにかできない可能性もあり、相談先や支援制度も知っておくこともまた大切なこととなります。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、「先天的な脳機能の障害」です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 【特性別】お金の困りごとあるある 本記事では、ASDとADHDにフォーカスして、お金の困りごとを列挙していきます。 ASD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある将来の見通しを立てることへの苦手感計画をもってお金を使うことや、クレジットカードの引き落としなどの管理が難しいこだわりの強さ興味関心があることへの執着から、強い購買意欲を抑えられなくなる他者の気持ちが汲み取りづらい相手の言うことの真偽を見抜くことが苦手で騙されやすく詐欺被害にあうことがある ADHD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある衝動的に行動してしまう「ほしい」という感情や行動の抑制ができず衝動買いしてしまう継続することへの苦手感飽きっぽい・集中力が続かない等の理由で家計簿をつけ続けられない ASDやADHDの特性をお持ちの方は、多かれ少なかれ当てはまるところがあったのではないでしょうか。このような特性由来の「困りごと」を把握することは、対策をとるうえで大事になってきます。まずは、上記の「困りごと」のうち、自分がどれによく当てはまるかを確認してみてください。 実際に効果のあった対策 当てはまる「困りごと」が分かったら、その対策を考えることになります。筆者の経験上、まず失敗するパターンは「意思の力で乗り越えようとする」です。「お金を使うのを我慢する」「頑張って家計簿をつける」といった心がけは立派ですが、うまくいく可能性が高いとは言えません。 筆者は、社会人になってからも親元で生活している期間が長かったこともあり、金銭管理についてもたびたび親から注意を受けていました。その困りごとは、まさに上記で挙げたようなものです。しかし、現在では、フリーランスで生活しているくらい、なんとか破綻なくいけるようになりました。その経験をもとに、実際に効果のあった「お金に関する困りごと」対策を5つほど挙げてみます。 1.金銭管理アプリを使う 筆者は、「毎日の予算」という家計簿アプリを使っています。このアプリを使うようになって、劇的にお金の管理がうまくいくようになりました。 以前は、仮に月3万円の予算があったとして、1,000円使ったら残りは29,000円です。翌日に500円使ったら残りは28,500円です。当たり前の話ですが、ここで大事なのは「把握する残額は、減る一方」になってしまうということです。 それに対してこのアプリは、表示される金額が減らないのです。むしろ、減らないどころか増えていきさえするのです。月3万円であれば、1か月30日だったとして、日割で一日当たりに使える金額を計算して、それを表示してくれます。ある月の1日(ついたち)には、「1,000円」と表示されます。使わなければその1,000円が繰り越され、翌日2日には「2,000円」と表示されます。そこで500円使ったとしたら、残額1,500円が繰り越され、翌日3日の分がプラスされて「2,500円」と表示されます。つまり、「把握する残額は、使わなければ使わないほど増える」のです。 「使わなければ現状維持、使ったらその分だけ残額が減っていく」のではなく、「使わなければ表示される金額が増えていく」という仕組みは非常にうまいと思いました。ただただ減っていく金額のプレッシャーに耐え続けるのではなく、「節約した(使わなかった)」→「表示金額が上がる」という、ある種の精神的な報酬を得られるのです。 特に筆者が診断を受けたADHDは「報酬系が弱い」とされ、何かしらの見返りや満足がないとなかなかその行動を継続できない特性を持ちます。家計簿を継続してつけるモチベーションとして、この仕組みはとても有効だと、身をもって実感しています。 2.絶対使いたい用途を1つだけ決める 「衝動買い」は、ASDでもADHDでも共通する悩みになることが多いと思います。繰り返しになりますが、ただ単に「衝動買いを減らそう!」と心に決めても、なかなかうまくいくとは限りません。そこでお勧めなのが、「これには絶対使いたい」という用途を1つだけ決めて、それにはお金を使うのです。 「それではお金を使う方に振り切ってしまうのではないか」とお思いかもしれませんが、逆に「この用途にこれだけ使いたい」と強く思うことで他の用途に使わないようにもっていくのです。「これ」と決めた1つの用途と、それ以外とで濃淡の差があればあるほど、この対策は効果的です。そういう意味では、特定のことに関心を持ちがちなASDの特性のある方にはうってつけかもしれません。 3.衝動買い用クレジットカードを作る 家で気軽にショッピングができるネット通販は便利ですが、衝動買いをしてしまいがちな人にとっては、諸刃の剣です。とはいえ、「クレジットカードを使わない」「ネットで買い物をしない」と決めたところで、なかなかそれをキープするのは難しいものです。 そこで、「貯めておく用の口座とクレジットカード」と「衝動買い用の口座とクレジットカード」の2つを用意しておくのをお勧めします。そして、「貯めておく用の口座のクレジットカード」は信頼できる人に預け、できれば定期的に「衝動買いしても良い金額」を衝動買い用の口座に入金してもらいます。 預けることができなくても、口座を分けて「衝動買い口座へお金を入金する」という行動が必要になるだけでもある程度お金を使いすぎるハードルを高くすることができます。そうすることで、ネット通販で必要以上にお金を使い込んでしまうといった展開を避けやすくなります。 4.FP(フィナンシャルプランナー)に相談する FPとは、資産状況、収入・支出、家族構成などから将来的な資金計画についてのアドバイスをしてくれる職種です。「収入に応じた月ごとの支出の適切な額」や「今後の将来設計に応じた必要年収」といった計算をしてくれるので、ふわっとした目標や目的レベルではなく、年単位、月単位での身近な金銭管理についてもアドバイスをしてくれます。 FPさんも色々といらっしゃいますが、筆者は「発達障害専門FP」という方に相談しています。ご本人も発達障害当事者ということもあり、上記のような特性を加味して、より適切な資産管理、資産形成、お金との向き合い方を親身になって教えてくれます。 お金に関することを自分だけでどうにかするのも大事ですが、その一方で第三者の、できれば専門的な知識と経験を持つFPさんの意見も取り入れて自分の生活に生かすのも、とても有用です。 5.消費者ホットラインに相談する 実際にお金に関する困りごとが発生したときは、「発達障害情報・支援センター」や「独立行政法人国民生活センター」のホームページを通じて、または直接に、消費者庁の「消費者ホットライン」へ相談することができます。相談は、電話だけでなく、各地域の消費生活センターや消費生活相談窓口で対面で相談することもできます。 代表的な支援制度 最後に、お金に関する発達障害者への支援制度をいくつかご紹介します。これらを知り積極的に使うことで、より快適な生活を送ることが可能になります。 1.自立支援医療制度 所得に応じて、心療内科などの通院費や薬代などの1か月あたりの負担上限額が設定されます。例えば、生活保護受給世帯は負担額が無しになり、年収約290~400万円未満の世帯は1割負担(例外あり)になります。 参考資料:自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み(厚生労働省) 2.医療費の減額 自立支援医療制度の他にも、都道府県ごとに障害者を対象とした医療費についての助成制度があります。 参考資料:重度心身障害者医療費助成制度一覧(一般社団法人日本ALS協会) 3.障害年金 障害によって仕事や生活などが制限されている方は、公的な年金を受給できます。受給できる額は、その障害の程度によります。 障害年金は、「障害基礎年金」「障害厚生年金」に大きく分けられます。障害基礎年金は、障害の状態や納付実績についてクリアしていれば受給できます。さらに、障害に関する初診日が厚生年金保険の被保険者である間であれば、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受給することができます。 参考資料:障害年金(日本年金機構) 4.税金の控除 納税者本人もしくはその家族に障害がある場合、障害者控除を受けることができます。障害者控除は、主に所得税、住民税、相続税などに適用されます。控除される金額は、障害の程度などによります。 参考資料:障害者に関する税制上の特別措置一覧(内閣府) 5.公共サービスの割引 公共交通機関では、一部(都営交通など)で、精神障害者の利用金額割引制度があります。なお、JRの運賃は、現在、身体障害者と知的障害者が障害者割引の対象ですが、2025年4月から精神障害者も一定条件下で対象となります。また、航空についても、大手2社(ANA・JAL)をはじめとする航空各社が、国内線に限り精神障害者への割引を実施しています。 参考資料:精神障害者割引制度の導入について(JRグループ)/国内定期航空において障害者割引運賃を設定している事業者(国土交通省) 自分に合う「金銭管理」方法を! 一言に「発達障害」と言っても、特性や性格によって一人ひとり合う対策法は異なります。「ADHDだからこのサービス」「ASDだからこの助成制度」といった簡単な話ではありません。 まずは困りごとからその対策を考えていくことが大事です。その際、自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。就労移行支援事業所ディーキャリアは、利用者様一人ひとりに合う金銭管理方法を見つけるサポートも行なっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。