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発達障害や鬱で「就活がうまくいかない」苦手感の克服方法

就活がうまくいかず250社落ちた経験のあるADHD当事者が、失敗から学んだ対策法について紹介します。特性理解がポイントです!

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「就職活動、お見送りの連絡ばかりでちっとも内定がもらえない」 「そもそも、選考に通る履歴書や職務経歴書の書き方のコツが分からない」 ADHDの診断を受けた筆者は、上記のような悩みを抱えて就職活動(就活)をおこない、250社落ちました。その経験から、どんな特性がありどんな困りごとがあったのか、その対策を講じるにはどうしたらいいかをお伝えします。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 特性による就活困りごとエピソード ここでは、筆者にある特性や発達障害の特性がある人ならではの就活における困りごとエピソードをお伝えします。 衝動性 ADHDには衝動性という特性があります。筆者においては、「考えたことを口に出さないと気が済まない、思考がつい口をついて出てしまう」という形で表れました。その特性に関連した就活失敗事例をお伝えします。 ①話しすぎ シンプルに面接で話しすぎていました。筆者は1社目を退職した後、半年ほど就活をしました。その半年間に(障害者雇用と一般雇用の求人合わせて)250社近くお見送りをされ、3社から内定をもらいました。その3社の内定は、「あること」に気をつけた途端に連続して獲得することができました。 その「あること」とは、話しすぎないということです。具体的には、「いったん言い終わったら、『これも言った方がいいかも』という内容を付け足さず、ぐっとこらえて相手の反応を見る」というものです。おそらく、付け足しの言葉はかなりの確率で相手にとって無駄なことだったのでしょう。無駄が削ぎ落され、分かりやすく話せるという好印象を面接官に与えた結果、内定につながったのではないかと考えています。 ②思考がそのまま口に出てしまう 大学生のときの話です。ある金融機関に応募したところ、面接前日に面接官を名乗る人から携帯電話あてに着信がありました。出てみると、翌日の面接に成績証明書を持参して欲しいとのこと。前日にいきなりそんな指示をされて少々面食らった私は、「え!?今日の明日ですか!?いきなり言われても用意できないかもしれませんが、とりあえず頑張ってみます」と答えました。 翌日、成績証明書が手に入り「これでどうだ」とばかり面接に臨みました。すると、面接官の態度がとてもそっけなかったのです。結果はお見送りでした。結果の連絡があってから、「あのとき『はい!明日大学で取ってまいります!」と元気よく返事をしていたら、もしかしたらそっけない態度もされず、選考も先に進めたのではないかと思いました。 意に沿わないことを言われても、笑顔で対応することが求められていたのかもしれません。思考をそのまま口にしてしまう傾向がストレートに出てしまったことで、お見送りという結果につながったのではないかと考えています。 知識の偏り 筆者がADHDの診断を受けたとき、臨床心理士から心理検査の結果に関して「知識の偏りがある」と言われました。知識に偏りがあるということは、興味があることについては積極的に行動し知識と経験を蓄積していくのに対して、興味がないことに関しては行動も消極的になり、経験も積めず知識も蓄えられないということです。 大学生のときの話です。同級生は就活をしてある程度経つと何らかの企業から内定をもらうようになりました。一方、筆者は内定が出ずじまいでした。その違いとして筆者が感じたのは、「説得力のある志望動機が言えるかどうか」でした。 同級生は、仮にA社の事業内容について少ししか興味がないにもかかわらず、その自分の興味とA社の事業内容の重なる部分をクローズアップして、「ということで御社に興味を持ちまして......」と言えていたのです。対して筆者は、自己分析や業界研究をあまり深めていなかったこともあり、基本的に一般企業の事業内容に共感もできず興味も持てず、志望動機が言えなかったのです。 それでも無理矢理ひねり出したのですが、社会の荒波に揉まれ人生経験を積んだ面接官が「これは本気で思っていないな」と見抜くのはたやすかったことでしょう。 能力の凹凸の落差 これは厳密に言うと「発達障害の特性」とは違いますが、ある能力は秀でているのに、別のことについてはびっくりするぐらいできないのは、発達障害のある人によくあることです。 とある有名企業の特例子会社の最終面接で、会社の役員の人たちが数人並んでいる中、そのうちの一人から「君はここにくるべき人ではない」と言われてしまいました。筆者は、「物忘れ」「先送り」「自責傾向」「段取り下手」という、どちらかと言うと事務処理に関する能力に自信がなく、逆に人前で話すようなことは大の得意でした。面接ではその筆者の得意がいかんなく発揮されたのです。 普通の面接であれば、好印象を与えて「では合格!」という方向にいきそうなものです。しかし、おそらく逆に「こんなにちゃんとしているのに、なぜ特例子会社で障害者雇用に応募してくるのだろうか」と面接官の人たちは思ったのでしょう。そして出てきたのが、「君はここにくるべき人ではない」という、やんわりとしたお断りの言葉だったのではないかと筆者は思っています。 特性があることによる自信のなさ これも特性自体の話ではありませんが、仕事に支障が出るような特性があるという後ろめたさ・自信のなさを埋め合わせるように譲歩をしてしまっていました。 ①「合理的配慮いりません」 初めて会社というものに入社して(障害者雇用で)働き始めたときの話です。配慮事項を聞かれたとき、「こんな自分を採用してくれたんだから、余計な迷惑を会社にかけていられない」という気持ちから、「合理的配慮をしていただく必要はありません!足りないところがあれば、自分で頑張ってどうにかします!」といった返答をしてしまいました。 ②休みが求人票と違っても受け入れる 上記とは別の会社で、一般雇用で入社したときの話です。求人票では「土日祝日お休み」と書いてあったのですが、内定をもらってから説明を受けたときには、「休みは月9日のシフト休日」と言われたのです。筆者は休日は就職にあたって重要な事項と考えていたため、とても迷いました。しかし、一般雇用で役職つきであり比較的高めの給与であったこと、何より「これを逃したら、これ以上の条件で就職できないのではないか」という自信のなさから、その条件を受け入れてしまいました。 こういった特性をあらかじめ知った上で就活をしていれば、250社も落ちなかったんじゃないかと筆者は今になって思います。 特性を知る方法 ここでは、特性を知る方法について、筆者の経験談も交えてお伝えします。 就活サポートの事例から 就労移行支援事業所ディーキャリアの就職サポートの事例で、卒業生の方がこのように振り返っています。 発達障害のある方が長く働くためには、自分の特性について知ることがとても大切だと考えています。 自分にどのような特性があるかを知って、どのように具体的に対策をすればよいかを知ることで、働きやすくなると思います。 面接のときにも、自分の障害のこと・特性への自己対処法・企業に求める合理的配慮を自分で説明する必要があり、自己理解の度合いが採用の合否にも影響することもあるそうです。 事業所によって支援実績のある障害種別が違うので、自分の障害にあった事業所で、自己理解とセルフケアを学ぶのがおすすめです。 筆者が特性を知った経緯 筆者が初めて就活をしたのは、今から10数年前、2007年のことです。その頃は就労移行支援というものを筆者は知らず、ひとりで就職活動をしていました。そもそも、障害者の就労を支援するいわゆる就労移行支援という制度は2006年に施行された「障害者自立支援法」に基づいたものなので、知らなくても無理はありません。 ひとりで障害者雇用の求人票を見てはハローワーク経由で連絡し、ひとりで履歴書などの書類を作って提出し、面接を受けるという流れを半年程繰り返して1社目で働き始めます。そのプロセスには、自分の特性を知る機会はほぼありませんでした。 それからどのようにして特性を知ったのかというと、「ただひたすら失敗やしくじりを繰り返して経験し、自分の特性や弱みを身をもって思い知った」というのが筆者が一番しっくりくる言い方です。 この「特性の知り方」は確実です。間違いなく、自分の特性を知ることができます。しかし、時間がかかります。筆者は、2007年に会社での勤務を開始してから、明らかに自分の特性を把握しているなと実感できるようになるまで7年かかりました。また、業務での失敗やそれが重なっての休職や退職という精神的にダメージを受けることを何度も繰り返すことになるので、リスキーでもあります。 早く安全に特性を知る方法 筆者の例よりも早く安全に特性を知る方法があります。それは、第三者からの意見に耳を傾けることです。自分の特性を知ることは、多くの場合自分の弱点や苦手なことを洗い出すことになります。そういった作業は、自分ひとりではなかなかできません。家族や友人など親しい人から聞きだすのもありかもしれません。 もちろん、特性を知る手がかりとして自己分析をおこなうのも大いにありえます。自己分析の方法は、こちらにくわしく説明してありますので、ご参照ください。 ただ、「①特性を知る」ことができたとしても、そのための「②自己対処法の習得や企業に求める合理的配慮などの洗い出し」をして、その上で「③応募書類の作成や面接対策」をすることが必要になってきます。 筆者は、上記で挙げた就活では、①と②はほぼできておらず、③を自治体などが提供する就労サービスを利用しておこなったのみでした。その結果が250社のお見送りだったり、せっかく就職しても辞めることになったりということになりました。もし①から③をワンストップでサポートを受けることができたら......と思わずにはいられません。 「自己対処法や合理的配慮の洗い出し」、それと「就活」について 以上のように、障害当事者として就職するには、「特性を知る」に加えて、「自己対処法や合理的配慮の洗い出し」「就活(応募書類の作成や面接練習など)」という2点も重要だと筆者は考えています。 自己対処法や合理的配慮の洗い出しについて ①自己対処法の洗い出し 仕事をする上で起こる困りごとに対して、自分ができることを考えて洗い出しをおこないます。その多くは、「忘れないように書きとめるメモ帳を常に持っておく」「仕事上の書類が行方不明になったり紛失しないように、スキャンしてデータ保存する」といった小さな工夫であることが多いです。 「なんだ、そんな些細なことか」と思うかもしれません。しかし、筆者の経験上、「そんな些細なこと」だから、習慣化するのが難しく、自己対処のハードルを上げてしまうのです。1つ1つ確実に実行していって、自分なりの対処法を身に付けていく姿勢が大事です。具体的にどのような自己対処法があるかについて、以下の記事も参考にしてください。 筆者のおこなった自己対処法については、以下の記事に詳しく書いてあるので、よろしければご覧ください。 ②合理的配慮の洗い出し 自己対処をするにも限界があります。それでも対処できないのであれば、企業側に配慮してもらうよう理解を求めることになります。それが「合理的配慮」です。合理的配慮の基礎知識は以下の記事にまとめられているのでご紹介します。 また、特性を知るところから、自己対処法の洗い出しを経て、企業へ求める合理的配慮を決めるところまでを分かりやすくまとめた記事もあります。こちらをお読みください。 筆者は、これまでに3社の就労経験があります。1社目と3社目が障害者雇用で、合理的配慮を申請しました。1社目は前述の通り「合理的配慮無しで良いです!」と伝えました。3社目については、特性も理解し、自己対処法も確立していたこともあり、1つに絞ってシンプルに伝えることができました。それは「怒らないでください」というものです。 自責傾向が強く、また度重なる失敗やミスにより自己肯定感が低くなっていた筆者は、とにかく叱責を受けることが何より精神的ダメージを受けるものでした。怒られ終わった後も、自分による自分へのダメ出しが続き、心理的に勝手に自分を追い込んでしまうのです。その結果、仕事が手につかず、また新たなミスを誘発してしまうことも多々ありました。 そういったことにならないよう、「一点だけお願いします。怒らないでください。改善すべき点があれば、冷静に指摘するという形にして欲しいです」と、社長面接で合理的配慮を聞かれた筆者は伝えました。 ただ、「怒らないで欲しい」とは、人によっては受け入れがたい話かもしれません。そこで筆者は、仕事の進め方(タスク管理)を活用して仕事についてはしっかり責任を持ってやるという自己対処法もセットで伝え、「自分でできる限りのことはやります。それでも対処が難しいところだけはお願いします」と伝えるようにしました。 「就活」について 志望企業を選んだり、面接対策や応募書類添削などをおこなう、いわゆる「就活」については、先にご紹介した就労移行支援事業所ディーキャリアの卒業生がこのように振り返っています。 自分の経歴は変えられない中で、どう書類でまとめればよいか・離職期間や転職の回数についてどう説明すればよいかをアドバイスしてもらえたことがよかったです。離職期間が長かったり、転職回数が多い方には、就労移行支援のフォローをもらうことがおすすめです。 障害者雇用枠での就職活動は、自分の障害のことや必要な配慮事項を伝えなければなりません。自分の言葉で説明するのが難しかったので、応募書類の作成や面接練習などのサポートはありがたかったです。 自分に合う求人を一緒に探してくれたり、面接に同席をしてくれたりしたことも心強かったです。 「就活」については、以下のページをお読みいただくと、より具体的にご理解いただけます。 必須とも言える第三者によるサポート 特性を知ることも、自己対処法や合理的配慮の洗い出しも、そして具体的に就活をおこなう際にも、いずれも第三者のサポートは必須ではないかと筆者は考えています。筆者はすべてをほぼ自分のみでやりましたが、せっかく就職してもうまくいかなかったり、そもそも特性の理解ができていなかったり、自己対処法や合理的配慮の洗い出しをするということすら考えが至りませんでした。 さらに、これら3点がすべて揃って就職までこぎつけるのに、数年の時間がかかりました。逆にサポートがあれば、そんなにかからなかっただろうと筆者は考えています。3点をまとめてサポートしてくれる上に、志望する企業へ就職するために必要なスキル習得の訓練もできるのが、就労移行支援事業所です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ディーキャリアは、就労へ向けて以下4点においてサービスを提供しています。 「就労準備性」の向上就労するうえで必要な心身の健康管理(生活リズムの安定、通院・服薬等)、ビジネスマナーの習得、コミュニケーションスキル・実務スキルの習得等をおこないます。 自分の障害特性への対処法の習得障害理解を深め、自己対処法の習得、必要な合理的配慮の洗い出しをおこないます。 「自分らしい"働き方"」の探求業界職種はもちろん、一人ひとりに合った「働き方(障害者雇用or一般雇用、給与、職場環境、勤務時間等)」をスタッフに相談しながら決めることができます。 就職サポート応募書類の添削や、面接練習、キャリア相談などを通して、就職に至るまでの「就活」をサポートします。具体的には以下をご参照ください。 具体的には以下をご参照ください。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 記事監修:北川 庄治(デコボコベース株式会社 プログラム開発責任者) 東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。
ADHDにいつ気付いた?大人になるまで分からないことも

社会人になってからADHDと診断された筆者が、障害と向き合いながら「生きづらさ」を軽減させたエピソードについて紹介します。

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  • #注意欠如・多動性障害(ADHD)
「頑張っているんだけど、なぜか仕事がうまくいかない」「学生時代は気付かなかったけど、社会人になってミスや失敗が目立つようになった」 筆者は発達障害のADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を20代後半に受けました。今になって振り返ると、幼少期や学生時代にも、ADHDの特性が出ていたと思います。しかし、そのときは「発達障害」という言葉自体を知らなかったこともあり、ただ単に「なぜだか分からないが、とにかくうまくいかない」という思いを抱えていました。 その後、発達障害の診断を受け、自分の障害特性を理解し受け入れたことで、具体的な対策を打って「生きづらさ」を軽くしていけたという実感があります。そんな「発達障害の気付き」「障害特性の受け容れ」「特性への対策」について、経験談を交えながらお伝えしていこうと思います。 発達障害による「生きづらさ・働きづらさ」を感じている皆さまに、この記事がお役に立つことを願っています。 発達障害の診断を受けるべきか悩んでいる方は、以下のコラムもあわせてお読みください。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ADHDとは まず、ADHD(注意欠如・多動性障害)について、その脳の特性とその特性による影響について簡単にまとめたものをお伝えします。 脳の特性 判断や抑制をつかさどる脳の部位の機能低下・行動や思考のブレーキが効きにくい。・思いついたことをよく考えず衝動に任せて言ってしまったり行動したりしてしまう。ワーキングメモリーの機能低下・臨機応変な対応が難しい。・不注意が起こりやすい。 特性による困りごとの例 ケアレスミスや忘れ物・無くし物が多い 落ち着きがないと言われることがある 人の話を聞き続けることや同じ資料を読み続けることが苦手 予定や約束を忘れてしまうことがある 遅刻を繰り返してしまうことがある 部屋の片付けや物を探すことが苦手 思ったことをそのまま口に出してしまうことがある 衝動買いや計画性のない行動をしてしまうことがある 仕事中や授業中など大事な場面で寝てしまうことがある 計画通りに物事を進めることや、締切を守ることが苦手である このように、脳の特定の機能が低下することで日常生活や仕事上で多くの困りごとが発生することがあります。もっと詳細を知りたい方は、大人の発達障害とは|注意欠如・多動性障害(ADHD)をご覧ください。 ADHDの気付き 「自分がADHDである」という気付きは、幼少期に親が気付いて診断をしてもらったり、逆に大人になって困りごとに直面してはじめて気付いたりと、人によって千差万別です。それぞれの時期別に、よくある気付きのパターンを、筆者の経験談も交えてご紹介します。 幼少期 まだ成長段階であることが多い幼少期は、「忘れ物が多い」「落ち着きがない」「衝動的に行動する」といったことが、先天的な発達障害の症状によるものなのか、それとも成長の一過程だからなのかが判別つかないことがあります。 そんな中でも、以下のような傾向が見られ、それにより保護者の方などから注意を受けることで、本人や周囲が気が付くことが多いと考えられます。 不注意によるもの・ 話を聞き続けられない・ 遊びや活動に集中できない・ 忘れ物や失くし物が多い多動性によるもの・じっとしていられない・ 落ち着きがなく、絶えず動き回る・ 静かな活動が苦手衝動性によるもの・ 順番を待てない・ 思い付きで行動をする・ お友達に手が出てしまう・ 感情の起伏が激しい 今思い返してみると、ADHDの特性や、さらには同じく発達障害の一類型であるASD(自閉スペクトラム症)の特性が影響していると思われる困りごとがよく発生していました。※ASDの特性について詳しく知りたい方は、大人の発達障害とは|自閉症スペクトラム障害(ASD)をご覧ください。 幼稚園の運動会でリレーでのことです。チームに分かれて1人1周ずつ走っていました。第3コーナーにさしかかる直前に先生から「内側を走って!」と言われ、向きをグイッと変えてコースを外れてゴールへほぼ一直線に向かってしまいました。もちろんルール違反で失格です。先生の言う「内側」は、「コースの中で、他の選手よりもなるべく内側」という意味だったのですが、そういった理解をせず独自の解釈をしてしまったのです。「なんでそうするの!?」と先生に叱られながら、心の中では、内側と言われたから内側を走っただけなのにと不満を抱いたことを覚えています。 後年筆者が受けた診断はADHDですが、発達障害は併存することがよくあります。このリレーでの出来事は、ASDによく見られる「言葉の意図が読めない・文字通りに言葉を受け取る」という特性の影響も少なからずあったのではないかと考えています。 学生時代 学生時代は、幼少期より人格形成がされつつあり社会性も求められるので、本人もその特性に比較的気が付きやすくなります。 そのような状況で、以下のような傾向があり、周囲との差を認識することで、自身のADHD特性に気が付くことがあります。 学習の困難・集中力が持続しない・授業中にぼんやりしている・宿題や課題を忘れることが多い行動管理の困難・計画的に勉強や課題をこなすのが難しい・物忘れや失くし物が多い行動抑制の困難・教室内で落ち着かない、席を立ち歩く・過度に話す・ 質問が終わる前に答えたがる社会性の困難・衝動的な発言や行動が多い・危険な行動をとりやすい・友人関係がうまく築けない・いじめの対象になりやすい 筆者は、学習の困難や行動管理の困難、さらにはその社会的な困難があり、「忘れ物が多い」「宿題を忘れる」「計画的に課題をこなせない」「衝動的な行動」といった多くの困りごとに直面していました。 小学生のとき、市のイベントでキャンプにいったときがありました。そこで知り合った友人たちと、近くにある山に登りました。その山はかなり斜面が急で、山道には道に沿って綱がひいてあり、当然その綱につかまりつつ山道を歩かなければ危険なのですが、ふと「この綱から手を放してみたらどうだろう」と考え、パッと手を放してしまったのです。 それから数歩は余裕で歩けたので、調子に乗ってちょっと「ホラ大丈夫!」と速度を早めたところ、その加速が止まらなくなってしまいました。運悪くつまづいて転び、ゴロゴロ転がっていく形になりました。その先は急カーブで、そのままだと自分で曲がることができず深い谷に投げ出されてしまう状況でした。 幸い、急カーブの手前にある大きな木にぶつかって止まり鎖骨骨折で済みましたが、木がなかったら谷底へ落ちていました。まさに、衝動性による危険な行動と言えます。 ただ、幼少期も学生時代も、「発達障害」や「ADHD」という言葉自体があまり知られていなかったこともあり、そういった困りごとがあったにもかかわらず、自分自身も周囲も、特段対策を打つという考えすら思い浮かびませんでした。 社会人以後 幼少期や学生時代において、自身のADHD特性に気が付かず過ごしてきても、社会人として自立・自律して仕事や日常生活をおこなうようになってはじめて気が付くことがあります。 多くの場合は、仕事をする上での困りごとに直面することで否応なしに自身の特性を自覚せざるを得ないというパターンになります。 職務遂行の困難・プロジェクトの計画が立てられない・ケアレスミスが多い・時間管理が苦手(遅刻や納期遅れが多い)・時間配分がうまくできない・優先順位付けが苦手対人関係の困難・上司や同僚とのコミュニケーションがうまく取れない・衝動的な発言や行動でトラブルが生じる日常生活等における困難・感情の起伏が激しいことが多い・ストレスやフラストレーションを感じやすい・家事の管理や金銭管理が苦手・日常生活のルーチンを維持できない 筆者は、職務遂行の困難や時間管理の問題などにより、仕事がうまくいかないと悩むことが非常に多く、さらに、その影響で周囲との関係性が悪化してなおさら仕事がうまくいかなくなるという悪循環に陥りました。 司法書士の資格試験の勉強をしていた20代後半で就いた、ある不動産屋でのアルバイトの話です。最初は快く迎え入れてくれたものの、送付すべき書類を頻繁に間違ったり、お客様を入居候補物件へ案内するのに事前に地図をチェックせず道に迷って結局満足に案内できなかったりとミスや失敗をしていたので、次第に人間関係が悪化していきました。 あるとき、経理をしている社長夫人から、従業員全員にジュースの差し入れがありました。当然自分ももらえるものと思っていたのですが、私だけスルーされてしまいました。また、その社長夫人へ、とある物件についての報告をしたときに、とにかく「言っていることが分からない」とだけしか言われず、どこをどう直して報告すれば良いかも分からず完全に自信を失い、簡単な仕事すらうまくいかないという状況になってしまいました。 そんなこともあり、「自分がこんなにうまくいかないのは、何か理由があるのかもしれない」と思い、「仕事 できない」「仕事 ケアレスミス」といった検索ワードで調べてみたところ、はじめて発達障害やADHDという言葉を知ったのです。その後、公的機関に相談して診療所を紹介してもらい、ADHDの診断を受けました。
ADHD当事者が編み出した「片付け苦手」克服法を紹介

片付け・整理整頓が苦手なADHD当事者が、失敗体験から見出したライフハックを紹介。日常生活はもちろん、職場で活かせる特性対処のヒントに!

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  • #注意欠如・多動性障害(ADHD)
「片付けをしようとしても、何から手を付ければいいか分からない」「会社のデスクの上に物が散乱していて、仕事に支障が…」 ADHDの特性のある人にとって、物を片付けて整理整頓するハードルは高いものです。「先延ばし・注意力散漫・やる気になりづらい」といった傾向は、キチンとまめに片付けをするという行動に立ちはだかる大きな壁になります。 筆者も、片付けに対して長年苦手感を抱いていました。特に職場での物の整理整頓は、仕事上のロスタイムやミス・失敗の原因にもなりかねません。そこで、まず日常生活において小さな行動をきっかけにしてなんとか人並み程度にはできるようになりました。さらに、職場では、仕事の整理をすることで結果的に物の整理ができるようになりました。 今回は、そういった日常生活上での片付けの工夫、職場での物の整理への取り組み方をお伝えします。 皆さんの日常生活での困りごとが少しでも「ラク」になるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 筆者の「片付けられない」エピソード まずは、どれだけ筆者が片付けや整理整頓が苦手だったかをお伝えいたします。 幼稚園のお泊り保育 整理整頓への苦手感でまず思い出すのは、幼稚園のお泊り保育でのことです。 親がリュックサックに服や下着、靴下やその他必要な物をビニール袋に小分けして入れてくれたはずなのに、着替えなどのタイミングでかならず「・・・はて?」と困っていたのを覚えています。どの服を着ればいいのか分からない、どれがすでに履いた下着でどれがこれから履くべき下着なのかが分からない、そんな状態でした。 同じ組の友達がチャッチャと着替えて集合場所に向かう中、自分ひとりだけ部屋にポツーンと取り残されて、リュックサックの中のものを出したり入れたりしては、「どれを着るんだろう?」と頭をひねっていました。 机の中から靴下が1足 小学生になっても自分が持っている物の整理ができず、そのせいか頻繁に忘れ物や失くし物をしていました。学校の担任と親との連絡事項を書く連絡帳には、担任からの「また忘れ物をしたようです」、そして親からの「申し訳ございません、よく言って聞かせるようにいたします」のやりとりの連続でした。しかも、連絡帳自体持って帰るのを忘れるという始末でした。 特に夏休みなどの直前は大変で、ロッカーの中や机の中などは、開けてはいけないパンドラの箱でした。ロッカーの中はとにかく大量の物が乱雑に押し込まれプレスされた状態で、取り出すことすら大変でした。また、本来教科書やノートなどしか入っていないはずの机の中ですが、なぜか奥の方から靴下が1足だけでてきたことがありました。 ずさんな来客カードキー管理 時は過ぎ、会社員として働くようになってからのことです。相変わらず整理整頓が下手でした。例えば、会社に来客があった際に必ずお渡しする貸出用のカードキーの管理など。来客があったらカードキーを貸し出し、お客様の用件が済んだら、カードキーの返却を受けて管理用の引き出しに戻し、貸出簿に返却のチェックを入れる。たったそれだけのことです。 それがうまくいかず、どのカードキーを貸し出しているのか、貸出簿と現実とがまったく合わず、行方不明になったカードキーの入室権限を止め、新たな貸出用のカードキーを頻繁に作らねばならず、非常にずさんな管理しかできていませんでした。 日常から始める「物の管理」対策 そんな私ですが、取っ掛かりとして家にある物の片付けから手をつけてみることで、片付けへの苦手感を少しずつ克服することができるようになりました。 まず声を大にして言いたいのは、「捨てることを制する者、片付けを制する」です。「整理整頓(せいり→せいとん)」と言いますが、「整頓整理(せいとん→せいり)」とは言いません。整理は「物を捨てること(不要なものを取り除く)」、整頓は「必要なものをいつでも誰でも取り出せるよう、秩序立てて配置すること」です。まず最初に「整理=捨てること」ありきなのです。 とにかく、捨てる!捨てる!捨てる!片付けの第一歩はそこからです。 とは言うものの、ADHDのある人は捨てることも苦手だったりします。そのための、筆者が実践している小さな工夫を1つだけご紹介します。まずはこれだけやってみてください。 一日一善ならぬ「一日一捨」 ADHD特性のある筆者は、色々な物に目がいってしまい集中できなくなってしまいがちです。また、ゴチャッとうずたかく積まれた物を見てやる気をなくし、すぐに先延ばしをしてしまいます。そんな筆者でも実践できたのが、 一日一捨 です。今日、目の前の1個だけ捨てる。明日もまた、目の前の1個だけ捨てる。ただそれを繰り返していくのみです。色々な物に注意がそれる前に「1個捨てる」という行動は完了します。ものの数秒、長くて十数秒です。 「じゃあ、まとまった時間をとって10個や20個捨てたほうがいいんじゃないか」と思うかもしれません。でも、1個にしておきます。中断させられたような気持ちになり、次の1個をやりたくなります。そのまま自分をじらすことで、翌日に片付けたい気持ちを持ち越すことができるのです。その繰り返しで、先延ばしすることなく、いつの間にか多くの「捨てるべき物」がなくなっているのです。 我慢できなくて一日に2個以上捨てることもあるかもしれません。ただし、原則は「一日一捨」。これだけを考えてやってみると、無理なく自然に物を整理することができます。
【発達障害と金銭管理】実際に効果があった対策を紹介

金銭管理が苦手な発達障害のある方に向け、ADHD当事者が実際に効果のあった対策を紹介します。特性別の困りごとと支援制度についても解説。

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  • #自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • #注意欠如・多動性障害(ADHD)
「衝動買いが止められない」「お金がいつの間にか残り少なくなっている」「貯金がどうしてもできない」 発達障害のある方は、金銭管理に関する苦労がついてまわるといっても過言ではありません。筆者も、期限まで払うべきお金を延滞させてしまったり、計画的なお金の使い方ができず月末に翌月分の前借りをしなければならなくなったりと、お金の管理にはだいぶ手を焼いてきました。 今回の記事は、特性別のよくある困りごと、それらに対する対策、さらには相談先や支援制度の紹介をいたします。まずは自分で困りごとを把握して対策を立てることが大事です。しかし、自分だけでどうにかできない可能性もあり、相談先や支援制度も知っておくこともまた大切なこととなります。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、「先天的な脳機能の障害」です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 【特性別】お金の困りごとあるある 本記事では、ASDとADHDにフォーカスして、お金の困りごとを列挙していきます。 ASD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある将来の見通しを立てることへの苦手感計画をもってお金を使うことや、クレジットカードの引き落としなどの管理が難しいこだわりの強さ興味関心があることへの執着から、強い購買意欲を抑えられなくなる他者の気持ちが汲み取りづらい相手の言うことの真偽を見抜くことが苦手で騙されやすく詐欺被害にあうことがある ADHD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある衝動的に行動してしまう「ほしい」という感情や行動の抑制ができず衝動買いしてしまう継続することへの苦手感飽きっぽい・集中力が続かない等の理由で家計簿をつけ続けられない ASDやADHDの特性をお持ちの方は、多かれ少なかれ当てはまるところがあったのではないでしょうか。このような特性由来の「困りごと」を把握することは、対策をとるうえで大事になってきます。まずは、上記の「困りごと」のうち、自分がどれによく当てはまるかを確認してみてください。
【発達障害の治療と薬】実際に服薬してみてどうだった?

発達障害の治療法には服薬と心理療法があります。服薬の体験談と効果についてインタビューしました。薬に頼らず自己対処をすることも大切です。

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  • #自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • #注意欠如・多動性障害(ADHD)
  • #限局性学習障害(SLD)
「発達障害の特性を治療でどうにかしたい」 「服薬をすることでもっとスムーズに毎日を送りたい」 発達障害と診断を受けた場合、服薬や心理療法を勧められることがあると思います。そこで、発達障害の治療法にはどんなものがあるのか、そして治療薬はどのようなものがあり、どんな効果があるのかをお伝えします。特に治療薬については、体験談を織り交ぜながらご説明していきたいと思います。 皆さんが少しでも過ごしやすい社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、先天的な脳機能の障害です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 発達障害の治療について 一般に、医師から病気であると診断された場合、治療を受けたり薬を処方されたりします。発達障害も同じです。成育歴や日々の行動の聞き取りや、考え方や知能等の心理検査の結果をもとに診断され、治療を受けます。発達障害の治療には、大きく分けて「心理社会的治療」と「薬物療法」の2つがあります。 心理社会的治療 心理社会的治療は、「発達障害は先天的なものであり、障害そのものを『治癒』することは困難である」という見地に立ちます。そのため、本人が自らの特性と向き合い、社会に適応していくためのスキルを身に付けることが目的となります。 心理社会的治療の代表格といえば「認知行動療法」です。自身の「認知(ものごとのとらえ方)」を観察することで、そこから生まれる「感情」「行動」を変化させて生きづらさやストレスを軽くしていく治療法です。 認知行動療法については、下記記事を合わせてお読みください。 その他にも報告・連絡・相談のロールプレイなどをする「ソーシャルスキルトレーニング」、特性による困りごとが発生している状況において、そもそも本人の周囲を調整して困りごとが発生しないようにする「環境調整」というものが挙げられます。 薬物療法 心理社会的治療に対して、直接身体に作用する薬物を用いて困りごとに対処していくのが「薬物療法」です。ただし、現在はADHDの治療薬はあるものの、ASDやSLDへの治療薬はありません。また、症状を根治するものではなく、一時的に症状を抑えるものとなります。 とはいえ、服用した経験のある人からは、「頭の中がスッキリ静まり返ってびっくりした」「集中力が劇的に上がった」といった感想があがることがあり、一定の効果が得られるところは見逃せません。ADHDの治療薬として承認を受けている薬は以下の4つです。 名称内容コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩徐放錠)・即効性あり・約12時間程度で効果が消失・ADHDの子どもの7割に効果・2013年に18歳以上の成人投与承認ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)・効果が現れるまで約8週間ほど・1日2回服用で24時間効果が継続・2012年に18歳以上の成人投与承認インチュニブ(グアンファシン塩酸塩徐放性製剤)・2017年3月に承認・特に多動性・衝動性について新たな治療の選択肢となることが期待されるビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル塩酸)・2019年3月に「小児期におけるADHD」の適応において承認・ADHDの診断治療に精通した医師に限り、薬物依存にも対応できる医療機関薬局においてのみ取り扱い可・他のADHD治療薬が効果不十分のときのみに使用 なお、ASDやSLDの特性を持つ人に対しては何も薬物療法をおこなわないかというとそうではありません。例えば二次障害として不安や不眠などの症状が出ている場合には精神安定剤などの治療薬を用いたりしています。 二次障害については、下記記事を合わせてお読みください。
【発達障害当事者が解説】職場に発達障害を隠すとどうなる?

障害者雇用と一般雇用の両方で就労経験がある筆者が、自身の体験談を交えながら、障害開示をするメリットとデメリットをお伝えします。

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  • #合理的配慮
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「発達障害を隠して働いているが、問題ないのか」「診断がある場合は、障害者雇用枠で働かないといけないのか」「発達障害があることが、会社にバレてしまうことはあるのか」 発達障害があることを職場に言わずに働いている(以下表②)場合、「自分の障害のことが知られてしまうのではないか」「知られたら辞めさせられるのではないか」という不安がつきまとうのではないでしょうか。 <発達障害のある人の働き方> No雇用枠障害のオープン/クローズ①障害者雇用枠オープン(障害を開示)②一般雇用枠クローズ(障害を非開示)③一般雇用枠オープン(障害を開示) 発達障害のある人の働き方に関する基礎情報と体験談は以下のコラムでもお伝えしています。あわせてお読みください。 発達障害の1つであるADHDの特性のある筆者は、上記①②③いずれも経験があり、一般雇用枠でのクローズ就労のときは、自分の障害がバレてしまうのではないかと考えてヒヤッとしたことがあります。そんな経験談も交えながら、「発達障害の診断が出ているが、会社に言わないとどうなる?」と気になっている方々へ、一般雇用枠でのクローズ就労のメリットとデメリット・発達障害当事者としての働き方についての考えをお伝えします。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 障害を伝えずに働くことは可能です! まず第一にお伝えしたいのは、「障害を伝えずに働くことは可能」だということです。障害があったら、それを必ず伝えなければいけないと考える必要はありません。また、こちらから言わなければ、原則的に会社は知ることはありません。 また、仮に自分の障害が会社に知られたとしても、「障害がある」という理由だけで解雇する権利は会社にはありません。障害者雇用促進法第35条では、障害者であることを理由に不当な差別的取り扱いをしてはならないと定められています。 障害者雇用促進法 第35条事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。 したがって、まずは「障害が知られても不当な扱いは受けないと制度的に保障されている」と安心していただければと思います。 障害を開示せず一般雇用枠で働くメリット そもそも、なぜ「一般雇用枠で」「障害を開示しない」クローズ就労で働くという選択肢があるのか考えてみたいと思います。 なお、冒頭でご案内したとおり、一般雇用枠でオープン就労をするという選択肢もあります。ただし、多くの場合は「一般雇用枠でクローズ就労」か「障害者雇用枠でオープン就労」のどちらかを選ぶことになるため、今回はこの2つを対比させながら考えていきたいと思います。 給料が高い 障害者雇用枠で障害を開示して働くオープン就労に比べて、一般雇用枠で障害を開示せず働くクローズ就労の方が、給料が高い傾向があります。 オープン/クローズの就労タイプ別に特徴などを図にまとめてみました。会社によって雇用条件や業務内容はさまざまですが、一般的にこのような傾向があると理解して良いと思います。 就労タイプ特徴筆者の経験事例給料障害者雇用枠オープン就労障害特性への配慮の面から、比較的負荷の低い業務が中心書類のPDF化郵便物の集配など低め一般雇用枠クローズ就労負荷が高く責任が重い業務も担う全国の社用車の配置案株主総会準備など高め キャリアパスが豊富 また、一般雇用枠のクローズ就労は、負荷の低い業務から負荷の高い業務まで幅広くこなすのが想定されるため、「将来どんな仕事をしたいか」について、より多くの選択肢があることが多いです。 それに対して、負荷の低い業務のみを担当することが多い障害者雇用枠のオープン就労では、より負荷の高い業務を行なうポジションにステップアップすることは難しいのではないでしょうか。 より多くの業務をこなせるようになるのは、将来的に自分の価値を高めることにつながります。その点で、一般雇用枠のクローズ就労にはメリットがあると考えられます。 このように、一般雇用枠でクローズ就労をするメリットとして、「給料が比較的高いこと」「キャリアパスが豊富であること」があると言えそうです。 障害者雇用枠では高い給与や豊富なキャリアパスは不可能? なお、近年では、これまでの実務スキルや知識を活かし、一般雇用枠と同様の業務を担当し同等の給与をもらえる障害者枠求人も増えてきました。また、スキルや知識がなくても、積極的に多くの仕事をしたいと伝えれば色々やらせてもらえる職場も、まれにですがあります。 筆者も、1社目の会社で、障害者雇用枠で採用されたものの、当初求人票に書かれていた業務以外の仕事を多くするようになった経験があります。しかし、その結果「あの人は普通に仕事を振っても大丈夫」と思われて、どんどん仕事が増えていつしかコントロールが効かなくなってしまい、負荷に耐えきれず筆者は休職することになってしまいました。 障害者雇用枠で働きながらも、一般雇用枠と同様の業務を担当し同等の給与をもらえるようになるためには、体調管理や業務量の管理、きちんと障害特性への配慮が受けられるような環境でいられるかなどについて相当気を付けなければならず、まだまだ課題があると言えます。