自閉スペクトラム症(ASD)の記事一覧

発達障害の「擬態」─無理せず、自分らしく働くためのヒント

周囲に馴染むために本当の自分を隠そうとする「擬態」についてADHD当事者が解説。無理に特性を隠すことで起こるリスクや対処法について紹介。

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「本当の自分を知られたくない」「仕事ができないと思われるのが怖い」「障害があることが知られたら嫌われるかもしれない」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害のある方のなかには、周囲に特性があることを悟られないように、定型発達者のように振る舞おうとすることがあります。これを「擬態」あるいは「ソーシャルカモフラージュ」と呼びます。 この記事では、ADHDの診断を受けた筆者から、発達障害のある方が無理をして特性を隠すことで生じるリスクと、より無理なく働き続けるための対処法を、経験談を交えてご紹介します。 対処法を知ることで、今の職場やこれからの就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 擬態(カモフラージュ)とは何か 「擬態」とは、本来の自分の特性を隠し、周囲に適応するために意識的・無意識的に振る舞いを変えることを指します。発達障害の分野では「ソーシャルカモフラージュ」と呼ばれることもあります。 たとえばASD(自閉スペクトラム症)の方は、「空気が読めない」と指摘された経験から、表情や声色のわずかな変化まで必死に観察し続けます。ADHDの方は「忘れ物が多い」と言われないように、過剰なチェックを常に繰り返します。 このように、「障害がある自分を受け入れてもらえないかもしれない」という不安や、「もう失敗したくない」という体験から、当事者は自分を抑圧し、演じるように振る舞うことがあります。 筆者も、擬態せざるを得ない状況に置かれたことがあります。一般雇用でクローズ就労をしたときのことです。クローズ(=障害を開示しない)なので、当然特性があるとは周囲に言えません。しかも、その会社には、年齢が30代中盤だったことから役職を付けて採用してもらいました。 役職付き、つまりチームのリーダーとしての役割を果たす必要がありました。しかも自分のタスクも当然こなさなければなりません。「ADHDで抜け漏れが多い」「先送り癖がある」とは言えない状況でした。 必然的に、「抜け漏れのないプレイングマネージャーであらねばならない」「チームメンバーの手前、先送りなどしてしまっては示しがつかない」と考えるようになり、擬態を余儀なくされました。 擬態は、ある種の生存戦略でもあります。 相手の反応を見て相槌のタイミングを真似(模倣)する。会議の段取りや資料の形式にも合わせる。こうした調整は、脳機能の特性を補うために生まれることがあります。 実際、筆者は発達障害当事者へのインタビューをする機会も多いのですが、「笑顔で合わせ続けた結果、帰宅後にぐったりして動けない」という声が繰り返し語られます。 発達障害のある当事者がこうした擬態を続けると、「自分を押し殺して、無理に社会に馴染もうとする」生き方になりがちです。しかもそれは仕事の場面だけではありません。 例えば、飲み会で本当は早く帰りたいのに「場を壊さないように」と笑顔を続ける。親族や友人との集まりで、不得意な雑談に相槌を合わせ、興味のない話題に同調する。LINEのやり取りひとつでも「変に思われない言葉」を探して何度も書き直す。休日も「充実している人」を演じるために予定を詰め込み、安心しようとする。 こうして職場でもプライベートでも「社会に溶け込むための演技」を続けるうちに、気がつけば心も体もすっかり消耗してしまうのです。 擬態が生まれる背景 発達障害のある方が「擬態」をする理由には、大きく4つの要因が考えられます。 ①過去の失敗体験 業務上のミスや、学生時代の人間関係での失敗体験。こうした経験から「二度と同じ失敗をしたくない」「これ以上笑われたくない」と思い、過剰な努力で特性を隠そうとします。 筆者自身も、中学時代に学級委員を務めていたとき、全員で暗唱するはずの詩を教室に掲示し忘れ、発表直前になって慌てて貼り出し、そのまま強行させてしまったことがありました。 その結果、クラス文集の「傲慢な人」というアンケートで名前が挙がってしまい、強いショックを受けました。本人にとっては単なる抜け漏れでも、周囲には「横柄で独りよがり」と誤解されてしまったのです。 こうした体験は、「自分の特性をそのまま出すと人に迷惑をかけたり嫌われたりする」という思い込みにつながり、社会人になってからも業務での報告書の不備や手続きの抜け漏れといったミスに過敏に反応し、「次こそは絶対に失敗できない」というプレッシャーを強め、さらに擬態を習慣化していきました。筆者も、特性による業務上のミスをして叱責を受けた経験から、「二度と同じ失敗をしてはいけない」と強く思い込み、体調を崩すほどの残業でリカバリーを重ねたことがあります。 特性上、数字の管理や抜け漏れが多い傾向があり、特に総務で社用車の管理を担当していたときはそれが顕著でした。全国の営業車は1500台、技術者用の車は800台、さらに役員車もあり、それらの状況を毎月所定のフォーマットに入力し、分厚い報告書にまとめる必要がありました。 本来なら定時内で終えるべき作業でしたが、ミスなく提出するためには人の3倍の時間をかけてWチェック、トリプルチェックをするしかなく、ときには深夜3時までかかることもありました。こうした過剰な努力は、一見すると「責任感の強さ」に見えるかもしれませんが、実際には「特性ゆえの苦手さを隠し通すための擬態」でもあったのです。 ②社会的圧力 「空気を読むのが当たり前」「仕事は正確でなければならない」などの職場文化が、発達障害の特性を持つ人にとっては強いプレッシャーになります。筆者も、上司からの無言の期待を読み、「強くメンバーを引っ張るリーダー」に擬態しようとしていました。あるとき、チームの目標設定を上司と決めようとしたとき、「頑張れば到達できるレベル」を設定しました。 上司からは「どう頑張っても到達できなさそうなゴールを設定してこそだ」と指導されました。正直、閉口しました。それでも「会社とは成長率を極限まで押し上げる場所だ」と自分に言い聞かせ、チームに目標を共有しました。 加えて、ASD特性のある方のなかには「場の雰囲気を察した発言」が苦手な方も少なくありません。しかし、日本の社会文化では「暗黙の了解」や「協調性」が強く求められるため、周囲から浮いてしまわないように過剰に適応してしまうことがあります。こうした文化的な背景も、発達障害のある人を擬態に追い込みやすい要因のひとつです。 ③自己肯定感の低下 周囲に理解されない体験が続くと、「本来の自分では認められない」という思い込みが強まり、擬態を手放せなくなります。筆者も、職場で「本来の自分では受け入れられない」と思い込むきっかけになった出来事があります。筆者は臨機応変な対応が苦手という特性が強いと感じており、日常的な会話でも「ちょっとここで気の利いた一言を言わなければ」と思えば思うほど、うまくいかないのです。 たとえば、職場の飲み会で、わざと「最後に面白い一言で締めてよ」と振られることがよくがありました。芸人でもない自分に、急に「笑わせて終わらせろ」と当意即妙な対応を求められても、うまくいくはずがありません。どんな言葉を選んでも空気は冷え、結局は滑って、それを笑いのネタにして場を収める。そんな役回りを押しつけられました。その瞬間は場が和んだように見えても、自分にとっては「なんて自分は役に立たない存在なんだろう」という無力感だけが残りました。気づけば「こんな自分でも、なんとかこの人たちとやっていかなければ」と必死に笑顔を作り、無理に同調するようになっていたのです。自己肯定感は下がり続け、それを補うかのように擬態が習慣化していきました。 ④発達障害への偏見や誤解 「発達障害=できない人」「甘えているだけ」といった偏見や誤解も、当事者を擬態に追い込みます。周囲の理解不足から「特性をそのまま見せたら否定されるに違いない」と考え、本来の自分を隠す習慣が強まります。 筆者も一般雇用のクローズ就労で働いていたとき、特例子会社について上司に尋ねた経験があります。そのグループ企業では農園事業を営む特例子会社があり、筆者は「今後、事務仕事など他の分野にも広げる予定はないのですか?」と聞いてみました。すると上司から返ってきたのは、「障害者でそういった高いレベルのことができる人はなかなかいないのだよ」という言葉でした。 その瞬間、「特性を開示したら、自分も『できない人』と見なされてしまうのではないか」という不安が強まり、言葉を失いました。こうした偏見は当事者に深い無力感を与えるだけでなく、「本来の自分を見せるわけにはいかない」と擬態を強化する原因にもなります。 なお、擬態の裏側では、しばしば「過剰適応」というものが起きています。 「迷惑をかけたくない」「普通でいたい」という気持ちから、限界を超えて合わせ続ける。その積み重ねが、自分の感情と身体の声を消していってしまうのです。気づいたときには「無理がデフォルト」になっていました。 こうして「無理が標準」になると、仕事だけでなく私生活でも、生きづらいと感じる世界に閉じ込められていく感覚が強まります。 擬態がもたらすリスク 精神的な消耗 無理を続けることで、心身は限界に近づきます。燃え尽き症候群(バーンアウト)、うつ病、適応障害といった二次障害につながることも少なくありません。 筆者も、職場で無理を重ねた結果、心身が摩耗して抑うつ症状に陥った経験があります。 以前は当たり前のように昼食を買ってデスクで食べられていたのに、ある時期からは昼休みに席に座っていることすら耐えられなくなりました。会社近くのカフェに逃げ込み、音楽を聴きながら時間を潰しました。「このあと仕事が始まってしまう」と、ただそれだけが怖い。嫌な出来事があったわけでもないのに、ふいに涙がこぼれ、止まらないこともありました。 そんな状態では仕事などできるはずがないのに、「行かなければ」という思いに背中を押され、重たい体と心を引きずるように出社を続けていました。 自己肯定感の低下 そもそもこの「擬態」の根っこにあるのは、単なる「苦手」ではありません。注意力や記憶、感情のコントロールなど、脳機能の偏りから生じる「特性由来の困難さ」です。 それは怠けや努力不足ではなく、脳の仕組みによってどうしても現れてしまうものです。しかし、その事実を知らないまま「自分が弱いからだ」と思い込むと、深い自己否定へとつながってしまいます。 だからこそ、見えないところで無理する/頑張りすぎる状態が続き、気づけば常に疲れる・慢性的な疲労・「なんだかしんどい」が日常になります。こうした状態は「生きているのに生きづらい」という感覚を強めていきます。 筆者も、自分を否定し続けた結果、まったく自信が持てなくなった時期がありました。本来なら誰でもできるはずの単純な業務でさえ、「自分には絶対にできない」と思い込んでしまうのです。 例えば社内の備品をパソコン上で発注する場面。ボタンを押すだけの作業なのに、「間違えて大量にコピー用紙を頼んでしまうのではないか」「押した瞬間に自分のミスが露呈して迷惑をかけるのではないか」と強く不安が膨らみました。 それは「かもしれない」ではなく、「きっとやってしまう」という確信めいた恐れでした。その結果、「自分はダメだ」「これはやってはいけない」と思い込み、手が止まります。そのために業務が滞り、周囲から注意され、さらに自分を否定する。そんな悪循環に陥った経験があります。 診断や支援が遅れる 特性を隠し続けると、周囲からは「問題ない人」と見なされ気づかれないまま時間が過ぎ、結果として診断が遅れることがあります。 筆者も、まさにその一人でした。自分を認められないがゆえに、特性をひた隠しにし、「抜け漏れがある」「先送りしてしまう」「段取りが苦手」といった自分の姿を否定し続けていました。 常に背伸びをし、何とか「普通の社会人」として振る舞おうとする毎日は、自己受容という本来のスタート地点に立つことを長く遅らせていたのです。 その結果、自分なりのやり方を模索し、適切に自分を支える仕組みとして「タスク管理」を習得し始めるまでに、ADHDの診断を受けてから実に8年もの時間を要してしまいました。 擬態から解放されるために 擬態を完全にやめることは難しいかもしれません。しかし「無理をし続ける」状態から少しずつ距離を置く工夫は可能です。 自己理解を深める 自分の特性や苦手を知り、「どこまでなら努力できるか」「どこからは支援が必要か」を整理しましょう。 筆者は、残念ながら、当時は就労移行支援事業所などの福祉的な支援の存在をあまり知らず、すべてを自力で解決しようとしてしまいました。そのために非常に長い時間がかかってしまったのですが、振り返ってみると大切だったのは「前向きな諦め」でした。 「諦め」という言葉にはネガティブな響きがあります。ここで言うのは、等身大の自分を知り、苦手を認めるという前向きな諦めです。最初は敗北感が伴います。それでも、その先には大きな解放感と希望が広がっていました。 例えば筆者は「忘れっぽい」特性があります。それを隠そうとすると苦しいだけでしたが、「自分は忘れてしまう」と認めたうえで、「だから大事なことはすべて紙に書いておく」という仕組みを作ることで安心して動けるようになりました。つまり、こうした工夫こそが「支援」であり、自分を守るための大切な対策なのだと実感しています。 周囲に伝える(カミングアウト) 信頼できる上司や同僚に、必要な配慮を伝えることで、無理をせずに働ける環境が整います。 筆者の経験では、一般雇用のクローズ就労ではうまくいきませんでした(あくまで筆者の場合です)。毎日顔を合わせる仲間だからこそ、自分の特性をある程度開示し、素の自分を知ってもらったうえで仕事をしたいという気持ちが強かったのです。 そのため、障害者雇用としてオープン就労で入社した会社では、合理的配慮を無理なく伝えることができました。そして、それをチーム全体で共有してもらうことで、「特別扱いをしてもらう」こと以上に「自分の特性を知ってもらえている」という安心感が生まれました。その安心感は常に抱えていた緊張を和らげ、結果として無理をせず働き続けることにつながりました。 もちろん、人によってはクローズ就労でも、工夫や対策を積み重ねることで「苦手はあるけれど自分なりにやっていけている」という自信を持ち、職場を居場所と感じられる場合もあると思います。 大切なのは、自分にとって「どの程度まで素の自分を出せるか」を見極めることです。いずれにしても、自分を完全に偽ることなく過ごせる環境であれば、無理をせずに長く働き続けることができ、自分本来の力を発揮することができると実感しています。 小さな工夫を取り入れる とはいえ、完全に自分自身をそのまま受け入れてもらうのは難しいものです。 会議中のメモを許可してもらう 締め切りを細分化する 静かな作業環境を確保する など、自分の特性に合わせた工夫を少しずつ実践していくことをお勧めします。 筆者自身も抜け漏れが多い特性がありますが、「抜け漏れをしてしまう自分をそのまま許してほしい」と訴えるわけにはいきません。 大切なのは、まず「抜け漏れをする」という事実を認めること。そのうえで、「抜け漏れを防ぐ方法」「抜け漏れが起きても致命傷にならない仕組み」を考えることでした。 そうした工夫を積み重ねていった結果、今の自分に合ったタスク管理の仕組みを作り上げることができました。 もちろん、人によって工夫の仕方は異なります。ある人にとっては「話し方を工夫する」ことかもしれませんし、「挨拶を丁寧にする」ことや、「人の嫌がる雑務を率先して引き受ける」ことかもしれません。 そうした小さな工夫を積み重ねていくことは、職場に溶け込み、長く働き続けるために決して無駄にはなりません。自分に合ったやり方を見つけることが、無理をしすぎない働き方の第一歩だと実感しています。 無理を続ける前に──支援という選択肢 無理をしすぎず働き続けるには、自分なりの工夫が欠かせません。ただ、筆者はそれをすべて独力でやろうとして、結果的に大きく遠回りしました。 もしあの頃、就労移行支援事業所のような専門的なサポートの場があることを知っていれば、もっと早く自己理解を深め、無理なく働ける方法を身につけられたのではないかと思います。支援を受けることは甘えではなく、自分の可能性を広げるための大切な手段です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングを行なっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害がある方の話し方の特徴|よくある困りごと&対策

発達障害(ADHD/ASD)がある方の話し方の特徴、特性との関係性について解説 。発達障害当事者の実体験をもとにした対処法を紹介します。

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「つい話しすぎてしまって、後で一人反省会をする」「不用意な発言をしまって、相手を傷つけた」 そんな悩みを抱えていませんか。 発達障害であるADHDやASDがある人は、特性によって独特な話し方をすることがあるとされています。たとえば、話が一方的になったり、冗談が通じなかったり、思いつくままに話してしまったり。こういった話し方は、ときに相手に誤解や不快感を与えてしまうこともあります。 そのため、コミュニケーションにおける失敗経験があり、人と話すことに苦手意識を持っている方は少なくありません。 この記事では、ADHDやASDがある人の話し方の特徴と、そこに隠れている特性、そして発達障害(ADHD強め、ASDも若干あり)の筆者の経験から得た具体的な対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ADHD、ASDの特性 今回の記事では、発達障害の中でもADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)に関する情報をお伝えします。どちらの障害も、その特性によってコミュニケーションのスタイルに独特な傾向をもたらすことがあります。 まずは、それぞれの代表的な特性について簡単に説明していきます。特性は一人ひとり異なるため、参考としてお読みください。 ADHDの特性 会話をする際に影響を大きく与えると考えられるADHDの主な特性は以下の3つです。 衝動性の高さ思いついたことをすぐに口に出したり、行動に移したりしてしまう 注意力の欠如相手の話を聞き続けることが難しかったり、集中が途切れて気がそれたりする 脳内多動(注意の転導)頭の中に次々とアイデアや思考が浮かび、話が飛びやすくなる ASDの特性 会話をする際に影響を大きく与えると考えられるASDの主な特性は以下の4つです。 こだわりの強さ特定のテーマについて非常に深くこだわり、話題が広がりにくくなる 興味の偏り自分の興味のある話題には夢中になるが、興味のない話題には関心を持ちにくい 他者視点の低さ相手の気持ちや考えを想像することが難しく、自分本位な話し方になることがある 想像力の低さ比喩やたとえ話を文字通りに受け取り、ニュアンスや空気感を読み取りにくい これらの特性が、日常の会話の中でどのように表れるのか、発達障害当事者である筆者の実際の体験をもとにした具体例をもとに見ていきましょう。 ADHDの話し方の代表例とその対処法 話しだすと止まらない、マシンガントーク 筆者はクラシック音楽が大好きなのですが、誰でも興味が湧くようなジャンルではありません。そうだと理解しているものの、「それってなんですか?」などと質問されると、つい嬉しくなって「ベートーベンは交響曲を9つ書いていて、1番は......」と、順々に曲目解説を始めてしまったことがあります。相手が時計を気にしていたりしてもお構いなしで、気が付いたら2,30分経っていたこともあります。 対処法 「ベートーベンは交響曲を9曲書いているんだけど、最後の9番がね......」と、伝えたい内容を絞り込み、話しすぎないように気を付けるようにしています。相手から「他の曲は?」と聞かれたら、またもう1曲、という具合に、「聞かれれば答える」ということに気を付けています。 話にまとまりがない、話が噛み合わない、会話が飛びやすい 先週末に観たYouTubeの話をしていたのに、ふとその後に観たテレビ番組のことを思い出し、さらにそのテレビ番組の出演者のやっていたラジオの話を脈絡なく話し出してしまい、「で、何の話だっけ?」と相手に言われてしまったことが筆者にはありました。 対処法 話を始める前に「まず何について話すか」を心の中で整理してから話すように気を付けています。YouTubeの話をしていたら、いったんそれで話し終えて、相手の反応を見ます。相手が別の話題を出して来たらそれに乗っかります。相手が別の話題を出してこなくても、「そういえば、YouTubeの後に観たテレビがまた面白くてさ......」と、橋渡しになる言葉を挟んでから次の話題に行くようにしています。 早口になる 自分が好きなお笑い芸人の話になり、その魅力を分かってもらいたくて熱を込めて話をしていたら、「もっとゆっくり話して」と言われてしまったことがありました。そこで初めて、自分が早口だったことに気づきました。 対処法 伝えたい内容が頭の中に膨大な量思い浮かぶと、それをできるだけ早く伝えたいと思って早口になりやすくなります。そんなときは、「ゆっくり」を5割増しで意識して話してみるようにしています。また、語尾を丁寧に言うことも効果的です。 話に集中できない(聞き続けられない) オンラインミーティングで相手が一生懸命にしゃべっているのに、相手の部屋の壁に貼ってあるポスターが気になって、「あれはもしかしたら自分が好きな画家の絵のレプリカじゃないか。そういえば、その画家の展覧会が近々あったな......」などと余計なことを考えていて気づいたら話が終わっていた、ということがありました。 対処法 覚えておく必要がなくても、キーワードをメモしながら話を聞くと、集中しやすくなります。手を動かして話の内容を書いていると、他に思考が飛びにくくなるのか、比較的相手の話が頭に入りやすくなる印象があります。 早とちりして話の内容を解釈する ある原稿を執筆する仕事について、その仕事を依頼してきた人と電話をしていて、「ということで、明日までには原稿を......」と聞き、「え、明日までには書くのはちょっと難しいんですけど」と即答しました。すると、「いえ、明日までには原稿を仕上げるのは難しいと思うので、締切を1週間延ばそうかと思っていまして......」と話を続けられ、気まずい思いをしました。 対処法 「最後まで聞いてから意見を言う」をできるだけやるようにしています。それでも反射的に口から言葉が出てきてしまうことがありますが、それに気が付いた時点ですぐに止めて、「うん、いや、続けて」と相手の話を聞くようにしています。 思いついたまま話をする 独身の友人から、「今やっているドラマでお勧めはある?」と聞かれ、家事や育児がテーマの人気ドラマの話をしてしまい、「そんなに人気なら私も観てみようかな。それって私も共感できそう?」と言われて、言葉に困ったことがありました。 対処法 まず「今この話題を言うべき?」と心の中でワンクッション置いてから話そうと心がけています。それでも気を抜いたら言ってしまいますが、気を付けるに越したことはありません。 相手の話に割り込む(会話泥棒)、話を被せる 相手が話し始めた瞬間、「それ私も!」と話をかぶせてしまうことがあります。最近出版された話題の本が面白いと相手が話し出したときに、「それね!でも、それって私が表紙を見た感じは、最初は確かにすごいインパクトがあったんだけど、私はあまり面白いと思えなくて......」と、話の主導権を奪って、なおかつ相手の主張の逆方向に話を持っていってしまったことがありました。 対処法 いったん相手が話を一段落させてから、相手との共通点をまずは探して話し出すようにしています。相手と自分の意見が違う場合は、いきなり話し出さずに、いったん「そうだよね」と相手の意見を尊重するクッション言葉を入れてから、「一方で、こんな考えもあるかなと思って......」と、自分の話をするようにしています。 ASDの話し方の代表例とその対処法 一方的に話しを続ける 子供の保育園の謝恩会で、思い出の写真を音楽と共に紹介するムービーを作った際、そのムービーを作ったときにどれだけ大変だったか、写真を出すタイミングと音楽との調整にどれだけ試行錯誤をしたかなどを熱く語りすぎて、気が付いたら相手が反応に困っていたことがありました。 対処法 途中でいったん話を区切って、相手の反応を見るタイミングを作ろうと心がけています。そのため、一気に話を続けるのではなく、まるでYouTubeのチャプター分けのように、「まずは写真を選ぶときに気を付けたことを話そう」「次にどんな音楽を付けようか迷ったときのことを少し話そう」などと、ちょっとずつ分けて考えて話すようにしています。 冗談が通じない 同じく発達障害のある人に、合理的配慮を考えたいと言われたときの話です。「まずは会社にやって欲しいことを10個挙げてみようか」と伝えたら、「まずは、こちらから言わなくても察して欲しい、とか配慮して欲しいかな(笑)」と言われて、「いや、それ言ったら始まらないでしょう」と答えてしまい、「冗談だよ!」と言われたことがありました。 対処法 相手の言葉だけでなく、相手の表情、口調やイントネーションもよく観察して反応するようにしたいと思っています。 相手や場面に応じた話し方や内容の調整ができない プライベートの飲み会で、友人が家庭の愚痴を言ってきたときに、「洗濯が大変?なら、やってもらえるように交渉しようよ」とか「掃除が面倒くさいなら、もしかしたら掃除機を変えたらやりやすくなって、できるようになるかもね」と、求められてもいないアドバイスをしてしまったことがありました。 対処法 ただたんに会話をしたいだけの場なのか、真剣に解決策を求められている場なのかなど、どのようなことが求められている場なのかを自分なりに決めてからその場に臨むようにしています。 興味のない会話に一切入らない 同僚とランチに行ったときに、みんなが昨日のプロ野球の話をしていて、正直興味ないと思って静観していたら、「小鳥遊くん、目が死んでる(笑)」と言われてしまいました。 対処法 興味が無いのはしょうがないので、せめて「話している人に目を合わせて相づちを打つ」ことだけはしようと考えています。 筆者の発達障害の傾向から、ADHD多め、ASD少なめですが、経験にもとづいた「生きた」対策をぜひ参考にしていただければと思います。 なお、上記も含めた、発達障害によくある話し方の特徴について、分かりやすく解説した動画もご紹介します。 ▶ 発達障害の話し方5選(あるある形式でわかりやすく紹介) https://www.tiktok.com/@decobocobase/video/7333158353604037895?is_from_webapp=1&sender_device=pc&web_id=7476382824065697288 ▶ 発達障害の話し方の特徴(よくあるすれ違い事例を解説) https://www.tiktok.com/@decobocobase/video/7407774275383463176?is_from_webapp=1&sender_device=pc&web_id=7476382824065697288 ▶ 発達障害の話し方(具体的な会話例から解説) https://www.tiktok.com/@decobocobase/video/7457141775568833813?is_from_webapp=1&sender_device=pc&web_id=7476382824065697288 ディーキャリアのコミュニケーションプログラム ディーキャリアでは、発達障害の特性に応じたコミュニケーションプログラムを用意しています。代表的なプログラム2つを紹介いたします。 「傾聴スキル」プログラム 相手の話をうなずきながら聞く 共感を示しながら聞く こまめに質問をいれる などのコミュニケーションの技術を身につけることで、相手の話を「しっかり聞いている」という印象を与えることができ、一方的に話すことを防ぐことができるようになります。 「アサーティブコミュニケーション」プログラム 自分の意見を言う際に、攻撃的になったり逆に消極的になりすぎないように適切な主張の仕方を学ぶ訓練です。 自分の意見だけ伝えるだけではなく、相手の意見を聞き、双方を尊重しながらコミュニケーションをとっていきます。 代表例2つをあげましたが、これ以外にも日々の訓練の中で「人前で話すこと・プレゼン」や「意見交換・ディスカッション」、休み時間中の「雑談」などの場でコミュニケーションスキルを高める機会を設けています。 今回ご紹介をした「話し方」に当てはまる方・コミュニケーションに苦手意識のある方は、ぜひ一度ディーキャリアのプログラム体験会にご参加ください。 特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために これまで、ADHDやASDの人がしやすい話し方とその対処法についてお伝えしてきました。その前提となるのは「自己理解」であると筆者は身にしみて感じています。場に合った・相手に合った話し方をしているかを客観的な視点から知る機会が得られると、調整することができるでしょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
発達障害×夜型生活 | 「リベンジ夜更かし」の原因と対策

やめたくてもやめられない「リベンジ夜更かし」は、発達障害の特性が関係してる?当事者の経験に基づき、原因と対処法を分かりやすく解説します。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「翌日も仕事なのに、夜中のゲームがやめられない」「疲れて眠いのに、ただひたすらSNSをスクロールし続けてしまう」「昼間だらだらしたから、まだ寝たくないと考えてしまう」 睡眠よりも「楽しい時間」を優先してしまい、結果的に睡眠不足が続いてしまう…そんな悩みを抱えていませんか。 日中の活動がうまくいかず、漠然と満たされない思いを抱えてしまう。それを埋めるかのように、ゲームや映画などの趣味・娯楽に没頭して気が付いたら朝方になっている。昼間に何もできず、今日という一日を有意義に過ごすために「何かしなければいけない」と思い、夜になっても寝てしまってはいけないと感じる。しかし、その「何か」が出てこず、ひたすらお菓子を食べたり、動画コンテンツやSNSなどを見たりして過ごしてしまう。 このように就寝時間の先延ばしをすることを「リベンジ夜更かし」と言い、発達障害の特性がある人は特になりやすいとされています。 この記事は「リベンジ夜更かし」が常習化していた発達障害当事者が、自身の経験を交えながら、リベンジ夜更かしとは何か・なぜ発達障害のある人が陥りやすいのか、その原因や対策について紹介しています。 夜更かししてしまうのは、意思が弱いからではなく、発達障害の特性が影響しているケースがあります。つい夜更かしをしてしまう理由やその対処法を理解し、自分に合った対策などを見つけることで、現在または将来の職場での就労をスムーズに継続できる一助になればと願っております。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ※この記事は2026年6月29日に更新されました リベンジ夜更かしとは リベンジ夜更かしとは、「報復性夜更かし」とも言われ、日中に充実感や満足がないため、睡眠を削ってでもなんとかして満足感を得ようとする行為のことをいいます。 筆者は、以前会社員をしているときに、このリベンジ夜更かしを常習していました。残業続きでほぼ毎日終電で帰っており、「帰ってそのまま寝たら、毎日何のために生きているのか分からなくなる!」という感覚がありました。 そのため、自宅最寄り駅の隣にあるコンビニに寄っては、ジャンキーでカロリーの高そうなコンビニ弁当を選んでは帰宅して、弁当を食べつつ特に見たいわけではない深夜のバラエティ番組をボーッと眺め、寝るまでの時間を引き延ばしている自分がいました。そのせいか、体重はうなぎのぼりになってしまいました。 その時の自分は、朝から晩まで仕事に追われ、「充実した余暇」を過ごせず、満たされない思いがありました。その満たされない部分を埋めるために、「カロリーの高いコンビニ弁当」「深夜のバラエティ番組」で夜更かしをしていたと言えます。本当は早く寝たほうがいいと分かっていても、どうしても「自分の時間が欲しい」という気持ちが勝ってしまうのです。 発達障害のある人がリベンジ夜更かししがちな原因 「リベンジ夜更かし」がやめられない原因に発達障害が関係していることがあります。実際に昼夜逆転生活や睡眠不足に悩んでいる発達障害当事者の方は少なくありません。 同じ発達障害でもADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの障害種別、さらに一人ひとり特性が異なるため、原因はそれぞれです。今回は代表的なものを4つ紹介します。 ①ストレスを感じやすい 発達障害のある方は、特性による困難によってストレスを抱えやすかったり、生物学的にストレス耐性が弱かったりすることがあります。詳しくは、以下の参考記事もご覧ください。 さらに、リベンジ夜更かしが癖になっている人は、日中にストレスを受けるなどして「マイナス」なことがあった結果、自分にとって「プラス」になるような体験をしなければと考える傾向にあります。日中に仕事でミスをして「マイナス」、それを埋め合わせるように帰宅してから夜中にゲームや動画視聴をし過ぎてしまう、といったことが典型です。この「マイナス」が大きければ大きいほど、その反動としての「プラス」を大きくしなければなりません。 日中にミスをしたとして、それが「まぁ、しょうがないか」とある程度流せるようであれば、夜中に埋め合わせのゲームや動画は少なくて済みます。しかし、私たち発達障害者は、感情の抑制に課題を抱えていることが多く、「マイナス」をより大きく感じてしまうことがあります。そうなると、より強く大きなリベンジをしないと釣り合いません。感情の抑制がうまくいかずストレスを感じやすい私たちは、リベンジが大きくなってしまいがちなのです。 ②行動の切り替えが苦手 また、発達障害のある人は、行動の切り替えが苦手な傾向もあるとされています。いったん始めたゲームや動画視聴などを止められず、長時間になってしまいがちなのです。筆者もこの傾向にあると実感しています。 筆者の頭の中では何が起こっているのかというと、「せっかく楽しいゲームをしているんだから、ゲームを止めて(ゲームより楽しくはない)他のことをするなんて嫌だ」という気持ちです。切り替えが上手い人は、この「ゲームを止めるのは嫌だ」という感情を抑えて、翌日のために寝るという行動に素早く切り替えることができます。ここでも、感情の抑制が難しいという傾向が関わっています。 また、筆者が特に顕著に感じている、もう一つの傾向があります。それは、「自分の興味のあることには極端に集中してしまう」というものです。興味のある対象にはすぐ動けるのに、興味が薄いものにはやる気がまったく湧きません。ゲームをしている最中はゲームにしか興味がなくなり、「寝なければいけない」と分かりつつも、ゲームから離れられなくなってしまうのです。 ③優先順位が付けられない 知り合いの発達障害のある人の話で、やはり夜中にネットゲームをして睡眠が十分にとれないという悩みがありました。その人が言うには、「一緒にチームを組んでやっている仲間が、どうしても夜中にしか時間が取れない」という理由で、深夜にゲームをせざるを得ないとのことでした。 冷静になって考えれば、「そうではない人とチームを組まないと、いずれ睡眠が不規則になって健康を損なってしまう」ということは分かりそうなものです。しかし、「自分にとって何を優先すべきか」という判断が正しくできない、「あれもやりたい」「これもしたい」となってしまった結果、毎日のように深夜にネットゲームをしてしまっていました。 ④睡眠障害になりやすい 一般に、発達障害のある人は、睡眠と覚醒を調節する中枢神経系の機能不全を抱えていることが多いとされています。具体的には、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が遅れるなど、体内時計が後ろにずれやすいのです。その影響で、夜中に覚醒、つまり目が覚めてしまって睡眠にうまく入れないことが多く、ベッドに入っても寝られずに朝を迎えてしまった、という人も少なからずいます。どうせ寝られないなら、好きなことやって夜更かししてしまおう、と考えるのも無理はないのではないでしょうか。 以上が、発達障害のある人がリベンジ夜更かしをしてしまいがちな理由の代表的なものです。 リベンジ夜更かしの悪影響 リベンジ夜更かしによって引き起こされる悪影響のうち、代表的なものを3つ挙げます。 ①日中の眠気、集中力の欠如 夜更かしをすれば、十分な睡眠が取れなくなったり、生活サイクルが不規則になったりします。その結果、日中に強い眠気を感じて集中するのが難しくなります。日中の活動中に注意力が散漫になると、仕事でミスなどをしがちになります。 発達障害のADHDがある筆者には、不注意傾向がありました。それに加えて夜更かしが常態化してしまい、ただでさえ不注意によるミスなどをしがちな上に、頭がボーッとしてしまっていました。その影響もあってか、仕事の負荷が強まると、それに耐えきれず休職を余儀なくされました。 さらに、筆者は元来の不注意特性から日中の活動に充実感が得られず、リベンジ夜更かしをしてしまいがちな状況でした。そして、夜更かしをした結果、はっきりしない頭で翌日業務をおこない、さらに満足のいかない日中を過ごし、さらにリベンジ夜更かしをしたくなる、という悪循環に陥っていたのです。 ②気分の落ち込みやイライラ リベンジ夜更かしをすると、十分な睡眠が取れず、次第に心身ともに健康を害していきます。「体」だけでなく「心」の方も気分が落ち込んだり、イライラしたりと影響が出るのです。そうなると、取るに足らないことで大きな精神的ダメージを受けてしまうようになります。 寝不足によるいらつきで、ネガティブな心理状況に陥りやすくなるだけでなく、十分に考えずに早まった決断をしてしまうことにもつながりかねません。 筆者は、休職直前のあるとき、株主からの電話を受けていました。株主がなかなか電話を切らせてくれず、長時間の電話対応となったのですが、目の前にいた同僚の社員から「早く電話を切り上げて!」といったジェスチャーをされました。 電話が終わった瞬間、「もっと早く簡単に電話終わらせられないの?他にもやることあるんだから」と言われ、「自分だって好きで電話を長引かせているわけじゃない」といつもより強い憤りを感じました。このことは、「もう、自分は働き続けられないな」と休職を決断する原因の1つになりました。 ③不安障害 不安障害とは、不安や恐怖を過剰に感じて、日常生活に支障をきたす精神疾患のことです。睡眠不足は、ストレスホルモンの分泌を増加させるため、不安障害やうつなどの精神疾患の原因になることがあります。 筆者は、自身の発達障害(ADHD)の影響と、毎日終電帰りでリベンジ夜更かしをしていた影響、それと会社の業績が伸びずにリストラが増え自分の業務負荷が増大したという背景もあり、次第に会社に行くのが怖くなってしまいました。 別に、理由があるわけではなく、なんとなく「自分は必ず仕事で失敗して叱責を受ける」という確信にも似た気持ちで毎日通勤するようになったのです。 少しでも日常業務でイレギュラーな出来事があると、それを筆者は「事件」と大げさに認識して焦ってしまっていました。たとえば、名刺作成業務で、役員から「至急で対応して欲しい」と言われようものなら、それは立派な「事件」だったのです。 「いつもなら翌々日に納品なのに、至急で明日の朝までに渡さなければいけない......これは事件だ!」と、不安や恐怖が頭の中をグルグル回りはじめます。やることは、名刺印刷会社の担当者に納期を早める依頼をかけるだけなのですが、いつもとちょっと違うだけで、もはやそれは不安を引き起こすのに十分な「事件」でした。 発達障害の傾向とこのような悪影響の相乗効果により、筆者は仕事を続けられず休職という選択を取らざるを得ませんでした。 不安障害について詳しく知りたい方は、以下の参考記事もぜひご覧ください。 このような状況に陥れば、誰しも心身に支障が出て当然です。では、どうすればこの状況から抜け出せるのでしょうか。次はその対処法をお伝えします。 リベンジ夜更かしの対処法 ここでは、リベンジ夜更かしへの対処法を3つお伝えしたいと思います。 ①規則正しい生活 当たり前過ぎる話かもしれませんが、毎日規則正しく起きて寝るのを習慣化することが、リベンジ夜更かしの対処法としては最大最強のものと言って良いでしょう。 特に、休職中にリベンジ夜更かしに陥り、社会復帰が難航するケースが少なくありません。 筆者が休職したときはまだ実家に住んでいたのですが、その際の両親の対応に感謝していることがあります。それは、「日中は何をやってもいい、『朝起きて、夜寝る』ことだけは守ろう」と提案してくれたことです。筆者が休職したのは10年程度前のことで、当時は今ほどYouTubeなどの手軽にみられる無料動画コンテンツはありませんでしたが、それでもレンタルビデオやネット上のテキストコンテンツなどはふんだんにありました。 夜更かししようと思えばいくらでもでき、その点では夜更かしする危険性は十分にあったのです。両親はそれを見越していたのかもしれません。規則正しい生活を最優先としてくれたおかげで、昼夜逆転生活や睡眠障害になることなく、復職をすることができました。今振り返ると、両親からの助言には感謝してもしきれません。 ②日中にきちんと疲れる 「規則正しい生活」にも通じますが、夜更かしをしないためには、まずは日中の活動でしっかり「疲れる」ことが大切です。 そのために大事な考え方をご紹介します。生活リズムを整えるためには、「早寝早起き」が大事だとよく言われます。実は順序が逆で、「早起き早寝」なのです。眠かろうが疲労が残っていようが、とにかく起きる。そして、就寝するまでは寝ない。起きている間に十分疲れておけば、リベンジ夜更かしをしたくても、体がそれを許してくれません。半強制的に夜寝ることができるのです。 日中にできるだけ用事を入れ、クタクタに疲れて倒れ込むように寝る。その結果翌日はすっきり起きられる。このサイクルに持ち込むことができればこっちのものです。また、適度に疲労を感じて「ああ、やっと寝られる」と布団に入る時の気持ち良さも味わうこともできます。日中の用事は、「疲れる」ことさえできれば、好きなこと、ストレス解消になることであっても構いません。 ③環境調整 さらに「リベンジ夜更かし」への対処法として有効なのが、環境調整です。たとえば、寝室へスマートフォンを持ち込まない、寝るときは薄暗い照明にする、ゆっくりぬるめのお風呂に浸かる、などです。 もちろん個人差はありますが、自分が寝入りやすい環境を作ることが大事です。筆者の知り合いの発達障害のある人に、寝入る際にアロマを焚いているという人がいました。室内を無音にして座って瞑想をする、という人もいました。 以上、3つほど対処法を挙げました。全部する必要はありません。「やってみようかな」というものから実践していただければと思います。 特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために これまで、リベンジ夜更かしについての話をしてきましたが、その前提となるのは「自己理解」であると筆者は身にしみて感じています。そもそも自己理解がされていないと、自身がリベンジ夜更かしをしやすいことを自覚しづらいものです。むしろ、「ハードな生活をしている自分」に酔っていたりします。自分のおこなっている行動が「リベンジ夜更かし」であることに気が付くことすら難しいかもしれません。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、発達障害のある方が自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングもおこなっています。 発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
大人の発達障害×職場のコミュニケーション|対策と練習法

「職場でのコミュニケーション課題」について特性に応じた対策や練習法を紹介。ストレスを軽減し、自信を持って働くためのヒントをお伝えします。

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  • #合理的配慮
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「職場での人間関係がうまくいかない…」「話すのが苦手で、うまく意思疎通ができない…」「指示を理解できないことがあり、ミスが多い…」 そんな悩みを抱えていませんか? 職場では、業務スキルだけでなく「コミュニケーションスキル」が求められるものです。しかし、発達障害の特性によって、雑談が苦手だったり、自分の考えを相手に伝えることや相手の意図を読み取るのが難しかったりすることで、仕事に必要なコミュニケーションが円滑にいかないことがあります。 「報告がうまくできない」「会話がかみ合わない」「言いたいことがうまく伝わらない」といった困りごとが続くと、職場での評価に影響が出たり、周囲との関係にストレスを感じたりすることもあるでしょう。その結果、仕事に自信が持てず、強い不安やストレスを感じてしまうことも少なくありません。 本記事では、発達障害のある方が職場で直面しがちなコミュニケーションの課題を整理し、特性に合わせた対策を紹介します。また、コミュニケーションスキルを向上させるための具体的なトレーニング方法や、職場での合理的配慮の活用についても解説していきます。 発達障害の特性を理解し、自分に合った対策やトレーニング方法を見つけることで、職場でのストレスを減らし、自信を持って働けるようになるきっかけになれば幸いです。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ビジネスにおけるコミュニケーションスキルの必要性 職場におけるコミュニケーションの役割 どの職場でも多かれ少なかれ、社内外でのコミュニケーションが発生します。特に、報告・連絡・相談という、それぞれ最初の一文字を取って「報連相(ホウレンソウ)」と呼ばれるスキルは、ほとんどの仕事において必要と言えるでしょう。 例えば事務職の場合、いくらExcelで複雑な表を作成できたり、PowerPointですぐに資料を作ることができたとしても、上司や同僚と内容をすり合わせたり、完成後に報告をしなければ、仕事の評価を得ることは難しいでしょう。 どんな仕事であっても、組織の一員として働くためには最低限のコミュニケーションスキルは必要不可欠です。実際、今も昔も、多くの企業の人事担当が採用時に重視するポイントのひとつに「円滑なコミュニケーションがとれること」があげられています。 職場でよくあるコミュニケーションの課題 その一方で、職場でのコミュニケーションの苦手に悩む方は少なくありません。特に、発達障害のある方は以下のような課題を抱えがちではないでしょうか。 指示を正しく理解できず、誤った作業をしてしまう 相談をすることが苦手で、トラブルを抱えこむことがある 意見を伝えたり説明したりするのが苦手 相手の話に集中することができず、聞き洩らしが多い 相手や場面に応じたコミュニケーションが取れない 考えがまとまるまで報告を先送りする こうしたコミュニケーションの問題は、仕事の質に直接影響を与えるだけでなく、職場の人間関係にも悪影響を及ぼします。 コミュニケーションがうまくいかないと起こるリスク コミュニケーションがうまくいかないと、次のようなリスクが発生します。 ミスの発生:指示を正しく理解できなかったり、確認不足が原因で業務ミスが発生しやすくなる。 チームワークの低下:仕事の進め方や認識がずれてしまい、チーム全体の業務が滞る。 信頼関係の損失:必要な報告や相談がなされず、「頼りない」「協力的でない」と思われる可能性がある。 いずれも、どの職場でも必要とされる「チームで仕事をやっていくための土台」が揺らいでしまう原因となります。もしこれらのリスクがあると判断されれば、いくら業務スキルを頑張って磨いたとしても、なかなか評価されにくいというのが現実ではないでしょうか。 発達障害のある方がコミュニケーションが苦手な理由 ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と課題 ASDの特性のある人の中には、「曖昧な表現が理解できない」「相手の気持ちを察することが苦手」「空気を読めない」といった特徴がある人が多く、職場でのコミュニケーションに影響を与えかねません。 筆者はADHDの診断を受けていますが、日々のコミュニケーションを通じて、ASDの傾向もあるのではないかと感じています。そんな筆者が実感するコミュニケーション上の特性としては、以下の3点が挙げられます。 言葉を文字通りに受け取ってしまう 「いい感じに資料をまとめておいて」と言われても、「いい感じって、具体的にどういうこと?」と疑問に思ってしまいます。「いい感じ」という曖昧な言葉を言われても、それが具体的なイメージとして理解できなければ動けないのです。仮に「A4の紙1枚に、要点を3つに絞って箇条書きで書いて欲しい」などと言ってもらえればスムーズに動けます。これは、言葉を文字通りに受け取るという傾向の表れではないかと自分を分析しています。 「いい感じに」や「なるべく早く」など曖昧で抽象的な表現を理解するのが苦手というのはASDあるあるです。 雑談や社交的な会話が苦手 筆者は、野球やサッカーなど自分が興味のない話題になると、とたんに仏頂面になってしまうのだそうです。「だそうです」と伝聞系で書いたのは、自覚していないからです。普通に会話の場に溶け込んでいると思っているのに、「あ、今興味ないでしょ?」と言われて「なんでばれたのだろう」と思うことが多々ありました。これは、雑談や社交的な会話が苦手だと認識していない分、より問題は深いと考えています。 ASD特性のひとつに「興味の幅が狭い(限定されている)」というものがありますが、悪気なくそれが態度に出てしまっているのかもしれません。 相手の表情や空気を読み取るのが難しい 相手が冗談で言ったことを本気だと思い真剣に受け止めてしまう傾向も、筆者にはあります。社交辞令で「今度飲みに行きましょう」と言われたとしても、それを本気に受け取って「じゃあ、いつにします?」とスマホでスケジュールアプリを開いて検討に入ってしまい、「いや、その、まぁまた近いうちに......」とやんわりはぐらかされた経験が多々あります。 「空気が読めない・冗談が通じない」もASD特性の代表的な特徴です。 ADHD(注意欠如・多動症)の特徴と課題 ADHDの特性のある人の中には、「注意の持続が難しい」「衝動的に発言してしまう」といった特徴がある人が多く、これもまた職場でのやりとりに影響を与えます。 筆者はADHDの診断を受けており、以下のようなことがよくあります。 話を最後まで聞かずに反応してしまう 相手の話が終わる前に相手の言いたいことがおよそ予測でき、自分の話をしたい気持ちが抑えられずに、相手の話にかぶせて自分の話を始めてしまう癖が筆者にはあります。よくないことだと分かっているのですが、その場ではうまく制御できないことが多く、あとから反省することしきりです。 ADHD特性の衝動性によって、早合点をしたり、相手の話を遮ってしまったりして失敗をした経験がある方も多いのではないでしょうか。 集中が続かず、指示を聞き逃す 口頭での指示を受けている最中であっても、たとえば周囲の会話に耳が持っていかれてしまうことがよくあります。せっかく上司が説明をしてくれていて、自分でもその説明を理解しようと思っているのに、瞬間的に周囲で話されている会話の方に注意がいってしまうことがよくあります。 「注意力が散漫」はADHDの代表的な特性のひとつです。メモをとっているのに聞き洩らしをしてしまう、とったメモを失くしてしまうというのもあるあるです。 思いついたことをすぐに口に出してしまう 筆者は以前の職場で取引先へ配信する職員インタビューのメルマガを書いていました。そのインタビューをしている際に、「前職では仕事が多くて過労で倒れる寸前にまでなってしまって......」という体験談を話してもらっているときに、「分かる!自分もそういった経験がある!」と共感してしまい、「ええ、自分も同じような体験がありましてね......」と、それから延々と自分語りを始めてしまい、インタビューの流れを止めてしまったことがありました。 つい場面にそぐわない発言をしてしまったり、一方的に話し続けてしまったりした場合でも、ADHD特性によって自分の言動をコントロールできないことがあります。 コミュニケーションのトレーニング方法 コミュニケーションが苦手だと感じる人の中には、そもそも「どのようにしたら円滑なコミュニケーションがとれるのか」が分からない方も多いかもしれません。一方で、コミュニケーションもスキルの一つであり、体系的に学ぶことが可能です。 特に、「何をどう伝えればいいのか分からない」「相手の気持ちを察するのが苦手」「言葉の意図を誤解しやすい」といった悩みを持つ場合、コミュニケーションの基本を知識として学ぶことが有効です。 知識として学ぶ コミュニケーションを学ぶ方法の一つとして、書籍やセミナーを活用することが挙げられます。たとえば、以下のようなジャンルの本を読むことで、基礎を理解しやすくなります。 ビジネスコミュニケーションの本→ 職場での報告・連絡・相談の方法や、上司・同僚との適切な関わり方を学べる。 傾聴スキルの本→ 相手の話を上手に聞く技術を学び、信頼関係を築く力を養える。 会話のロジックを学ぶ本→ 話がまとまらない、伝えたいことが伝わらないといった悩みを解決するヒントが得られる。 大きな書店だと、「ビジネス」「コミュニケーション」といった棚があると思います。お勧めの選び方としては、自分が読みやすそうだと感じる本を選ぶことです。ネットで調べて評判の高い、有名な著者の本を選ぶのも良いですが、まずは自分が取っつきやすいと感じる本から始めるのが良いと思います。 また、書籍だけでなく、コミュニケーションスキルを学べるセミナーも有効です。セミナーでは、講師の解説を直接聞けるだけでなく、ロールプレイやワークショップを通じて実践的に学ぶことができるため、実際の場面に活かしやすくなります。 このような学びを通して、ビジネスマナーや会話の典型的な流れ、よくあるNG行動などを知り、適切な対応を知ることができます。本やセミナーで教わった内容をすべていっぺんにやろうとはせず、できることから1つずつやっていくのが、最短のスキルアップにつながります。 実践的な対策 コミュニケーションスキルを向上させるためには、知識を学ぶだけでなく、実際に練習しながら身につけることも重要です。代表的な対策として、ミラーリング、アクティブリスニングといった手法があります。 ミラーリング ミラーリング(Mirroring)は、相手の言葉や仕草をさりげなく真似ることで、親しみやすさや共感を生む手法です。例えば、 相手:「最近、忙しくて疲れてるんですよね」 自分:「そうなんですね、忙しくて大変なんですね」 このように、相手の言葉を繰り返すだけでも、「話をしっかり聞いてくれている」という安心感を与えることができます。また、相手の姿勢やジェスチャー、話すスピードを自然に合わせることで、無意識に「この人は自分と波長が合う」と感じてもらえる効果もあります。ただし、やりすぎると不自然に感じられるため、さりげなく取り入れるのがポイントです。 アクティブリスニング アクティブリスニング(Active Listening)は、ただ相手の話を聞くだけでなく、適切な相槌や質問を交えて、積極的に会話に関与する方法です。 具体的には、 相手の話を遮らずに最後まで聞く 「それは大変でしたね」「なるほど、面白いですね」といった共感の言葉を入れる 「それって具体的にはどういうことですか?」と質問して話を広げる といった工夫をすることで、相手は「しっかり話を聞いてもらえている」「この人とは話しやすい」と感じるようになります。アクティブリスニングを身につけることで、より円滑なコミュニケーションが可能になり、信頼関係の構築にも役立ちます。 筆者は、特に感情面で共感することが多いので、それを強く打ち出すことが多いです。「それは大変でしたね」という言葉を入れ、「自分も同じような○○ということがあったので、自分なりにですが、分かります」と寄り添う形でコミュニケーションを取ることがよくあります。 特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために ここまでコミュニケーションスキルを上げるための方法などをご紹介しましたが、特に発達障害のある方の場合は、そもそも「特性」としてコミュニケーションが苦手であることが多く、いずれも単に知識を得るだけでは足りず、実際の場面で活かすのが難しいことが多いです。 そこで、実践的な方法が必要となります。代表的なものとしては、SST(Social Skills Training)というトレーニングがあります。適切な言葉の選び方や、表情・態度・ジェスチャーを意識しながら会話の練習を行うことで、社会的スキルを上げ、実際の場面での対応力を高めるものです。 例えば、 上司への報告の仕方 初対面の人とのスムーズな会話の進め方 断るときの伝え方 といったテーマごとに、ロールプレイを通じて練習しながら学ぶことができます。「頭では分かっているけど、実際にやるのは難しい」と感じる人にとって、SSTは実践力を養うのに最適なトレーニングです。 このように実際の職場の状況を想定してロールプレイを行い、その結果のフィードバックを受けながら、練習を重ねることで、自分の特性による「苦手」への理解を深めながら、より実践的に活用できるコミュニケーションスキルを身につけられます。 また、それでも克服が難しい場合は、「合理的配慮」として職場に伝える選択肢もあります。障害者雇用枠ではない一般雇用枠でも、診断がある場合には企業に相談をすることができます。 合理的配慮とは、就職先の企業が、障害による業務上の困難を改善・軽減するために必要なサポートを提供することです。 例えば「具体的な指示が欲しい」「周囲の音が気になるので、耳栓の使用を許可して欲しい」「メモを取る時間を与えて欲しい」といった、業務指示の仕方や職場環境の調整などです。どうすれば仕事が円滑に進められるかを企業側と一緒にすり合わせていく必要があります。 その際には、以下のポイントを説明すると、スムーズに交渉が進みます。 障害の特性や症状 特性による業務上の困難や苦手な業務内容 自分自身で取り組む工夫や対策 企業に依頼をしたい配慮内容 企業に「合理的」だとみなされない場合にはサポートを受けられないケースもあるため、どれだけ困っているか・どうすれば解決できるのかを具体的に説明することはもちろん、自分自身で取り組む対策や配慮を受けることでできるようになることを伝えることも大切です。 詳しくは「発達障害のある方の合理的配慮事例|職場コミュニケーション編」でお伝えしています。 特性によって、一人ひとりに合う対策法は異なります。また、性格や働き方の好みによっても、どのような工夫が効果を発揮するかは変わってきます。そのため、自分自身に合った方法を見つけることが重要です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
仕事の不安が軽くなる!発達障害がある方のうつの乗り越え方

ADHD当事者で抑うつ状態を経験した筆者が、特性による「働きづらさ」と二次障害である「うつ」を乗り越えるためのヒントを紹介します。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
  • #限局性学習症(SLD)
「頑張っているのになぜか仕事がうまくいかない」「ミスや失敗ばかりで、職場に行くのが怖い」 発達障害の特性による困難や苦手のある人で、「どれだけ頑張ってもうまくいかない」「人一倍、努力しているのに成果がでない」という悩みを抱える方は少なくありません。このような状況が続くと、仕事への不安や自己肯定感の低下によって、うつなどの精神障害につながることもあります。 実は、発達障害とうつの間に密接な関係性がある場合が多いのです。一般に、発達障害のASDやADHDの特性があることを「一次障害」、そして一次障害が原因で引き起こされる「うつ」などを「二次障害」といいます。 筆者は、一次障害として主にADHDと診断され、二次障害として抑うつ状態と診断されました。この記事では、そんな筆者の執筆した書籍『「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方』の内容を引用しつつ、障害による困りごとに向き合い、乗り越えるためのヒントをお届けします。日常の工夫や考え方を見直すことで、新たな一歩を踏み出すきっかけになることを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害がうつを招く理由 発達障害(この記事ではASDとADHDのことを指して「発達障害」と書きます)とうつは、密接なつながりがあります。この項では、発達障害の説明と二次障害の説明をすることで、両者は密接なつながりがあることをお伝えします。 ASDとADHDの特徴と主な症状 ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係やコミュニケーションが苦手で、特定の興味や感覚の敏感さが特徴的な発達障害です。具体的には以下のような症状がみられます。 他人の気持ちや状況を理解するのが苦手 特定の物事への強い関心やこだわり 感覚過敏(音や匂いなど)がある 臨機応変な対応や複数作業の同時進行が苦手 ADHD(注意欠如・多動症)は、集中力の維持が難しく衝動的な行動をとりやすい特性を持つ発達障害です。具体的には以下のような症状がみられます。 注意が散漫でミスが多い 落ち着きがなく衝動的な行動をする 整理整頓、スケジュール管理、約束を守ることが苦手 筆者は、ADHDの診断を受けており、以下のような症状があります。 私は、発達障害の当事者です。ADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けました。 ■不注意によるミス・抜けもれがひどい■先送りグセがなおらず、締め切りが守れない■ミスを必要以上に深刻に受け止めてしまう■他人のミスも自分のせいかもと考えてしまう■仕事の段取りがつけられない■マルチタスクに思考停止してしまう■思考やものの整理ができない これらは、私の特性による「傾向」をまとめたものです。このうちのいくつかは、自分にも当てはまるという人がいるのではないでしょうか。 筆者の著書『「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方』より引用。以降、引用は同書からのものとなります。 二次障害とは 二次障害とは、発達障害の特性による困難やストレスが原因で、心や身体、行動に不調や問題が現れる状態を指します。これにより日常生活に支障をきたすことが少なくありません。主な例として、うつ病や不安障害といった精神的な不調、頭痛や不眠などの身体的な不調、さらには暴言や引きこもりといった行動面の問題が挙げられます。 二次障害については、こちらの記事でより詳細に説明しています。あわせてご覧ください。 筆者は、下記のような経緯をたどって「抑うつ状態」の診断を受けて休職を余儀なくされ、最終的に退職することになりました。 しかし、与えられた仕事は忘れる、締め切りも守れない、つい先送りをして怒られる…。その連続で自信をなくしていき、大きな不安に苛まれるようになり、それに耐え切れず休職、退職。現実は、仕事の充実どころの話ではありませんでした。 友人が仕事でどんどん活躍していくのを横目に、いつしか、「どうせ、これが自分の限界なんだ」「仕事の充実? 自分がそんなことを考えてはいけない」と思うようになっていきました。 むしろ、自分が思う「人並みの生活」すらも、自分にはできないのだと、完全に自信を失ってしまいました。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 発達障害がうつにつながってしまう3つ理由 発達障害の特性が二次障害であるうつや不安障害などの精神疾患につながる主な理由として、「生きづらさ」「自己肯定感の低下」「不安やストレス」などの要因が挙げられます。それぞれの要因を詳しく解説します。 特性による「生きづらさ」や「働きづらさ」 発達障害のある人は、その特性による困難や苦手によって社会で生きづらさを感じることがあります。 たとえば、筆者は「ミスをしたときには上長に報告をする」というビジネスマナーは知っていたものの、「お金など重要なものに関するミスは、早急に報告をする」「重要な問題にならなかったときであっても、ミスは必ず報告する」という考えに至らないことがありました。 あるとき、アルバイト先で、お客様のお金を届けるという依頼を受けた際に、お金を忘れて出かけたことがありました。すぐに同僚から連絡をもらって、最終的には事なきを得たため、そのことを上長に報告しませんでした。ミスを隠すつもりはなかったものの、信頼を失うことに繋がってしまい、解雇を言い渡されてしまいました。 ビジネスマナーなどの「暗黙の了解」の苦手はASD特性がある方に多いケースで、仕事上のコミュニケーションで失敗につながることがあります。 特性による失敗は、気を付けようとしてもなかなか回避できないことが多いです。その結果、「なぜ自分はこんなこともできないのか」と自己否定に陥ったり、他者から否定的な反応をされたりすることで精神的な不調を抱えたりするなど、社会での生きづらさを感じる要因になります。 過去の失敗体験の積み重ねによる自己肯定感の低下 先述した通り、発達障害のある方は特性による困難や苦手によって失敗体験をすることがあります。さらに、特性への自己対処や周囲への配慮(サポート)依頼をしない限り、その失敗を繰り返してしまいがちです。 仕事における失敗は一人ひとりさまざまで、たとえば、コミュニケーションがうまくいかない、ケアレスミスや遅刻が多いなどがあります。そういった失敗が積み重なると、自己肯定感が低下し、「自分はダメな人間だ」「誰からも理解されない」と感じることが増えます。 筆者は、全国に営業所のある企業の総務で社用車の管理をしていたことがあります。全国から社用車に関する相談事や報告への対処を一手に引き受けていました。前任者はその対応をそつなく臨機応変にこなしていましたが、私はそういった要領があまり良くありませんでした。そのため、営業所の担当の方とのコミュニケーションがうまくいかないことがあり、あまりに目に余ったときには、電話口で強い調子で詰められたり、口汚くののしられたりしました。 そういった経験が重なると、いやおうなしに自己肯定感が低下します。そういったこともまた、うつ病などの精神疾患のリスクを高める要因の1つとなります。 不安やストレスを感じやすい 発達障害のある方は、不安やストレスを感じやすいと言われています。予測できない状況への不安や、他者の気持ちを汲み取れないことによる孤立感が、強いストレスとなることがあります。また、ミスや遅刻、計画の混乱による自己批判や焦りは、不安を引き起こしがちです。 筆者は、物事が予定通りに進まないだけで、すぐに焦って混乱してしまいがちでした。あるとき、人事担当者との面談で、「毎日何かしら『事件』があるのが辛くて......」と話したところ、「え?事件って何のこと?」とポカンとされた経験があります。他人にとっては日常の出来事の範囲内なのに、自分にとってはストレス・不安の源である、ということがよくありました。 こうした不安やストレスが慢性的に続くと、心の負担が大きくなり、自己肯定感の低下や無力感につながることがあります。その結果、うつ病や不安障害などの二次障害につながってしまうのです。 「不安な気持ち」は、発達障害のある方にとっては、切っても切れないテーマです。その原因と対処法については、以下の記事に詳しく書いてあります。ぜひこちらもあわせてご覧ください。 大人になり社会に出てから、発達障害の特性による失敗や困難が増え、うつや不安障害などの二次障害になるケースは少なくありません。幼少期や学生時代には「性格」などとして見過ごされていた特性が、就職活動や職業生活の中で「困りごと」として表出されることがあるためです。 最初は、仕事や対人関係の困難による不安感やうつのような症状を感じて通院する。しかし、実はその奥を探ってみると発達障害が判明する。そんな経緯で、これまでの生きづらさや困難の背景に発達障害があることを理解するようになる方も多いようです。 発達障害の特性との付き合い方について 自分の特性を知って工夫する 発達障害の特性は、予測できない状況に強い不安を感じたり、抜け漏れせず段取りよく仕事を進めるのが苦手で、遅延やミスを繰り返したりなど、一人ひとり異なります。そのため、まずはどのような場面で困難を感じるのかを把握し、それに合う自分なりの工夫をすることが大切です。 たとえば、筆者は、段取りよく仕事を進めるのが難しいときは、目の前の一手を明確にして、それを終わらせることだけ考えるようにしています。 対策:まずは最初にすることだけを書き出す 【1】まずは最初の手順「だけ」書き出す間違っていてもよし。まずは自分なりに思いつく、できるだけ簡単に、すぐできそうな「最初の一歩」となる作業を書き出す 【2】とにかく実行してみる自分なりに書き出した作業を、とにかく一つだけ実行してみる 【3】「一歩」をくり返すうまく行ったら次の一歩も書き出してみる。以後、「書き出し」→「実行」をくり返す どこから手をつければよいかわかりにくい仕事を目の前に、ただただ思考停止してしまう。また、そんなときほど一気に仕事を仕上げたくなり、結局何もできずに時間だけが経ってしまいます。 先走らず、まずは足元を見ましょう。最初の一歩ぐらいは想像できるはずです。そして、その次、その次と、一歩ずつ歩んでいけば、仕事の終わりが近づいてくるはずです。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 さらに、抜け漏れが発生しがちな傾向については、このような対策をとっています。 対策:すぐに着手しようとする気持ちをいったん抑える 【まずはやるべき仕事を確認しよう】 抜けもれしてしまう人の特徴として「すぐに結果が出るものに飛びついてしまう」傾向があります。 言われたことをメモしたり、書き出したりせず、すぐに仕事に着手すれば、「より早く仕事が進む」という結果が得られるかもしれません。しかし、そうすると抜けもれしやすい傾向のある人は、「自分が抱えている仕事の把握」がおろそかになってしまい、はじめに指示されていた仕事を新たな指示によって忘れてしまうという事態につながることも。結局仕事の抜けもれにつながってしまうのです。 手っ取り早く終わらせてしまいたい気持ちをまずは我慢して、いまやるべき仕事を書き出して確認してみましょう。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 もちろん、上記は筆者の一例に過ぎず、人によっては対策がなかなか打てない特性もあるかもしれません。ただ、困りごとの原因となる特性・特徴と向き合い、それをカバーすることができれば、結果的に障害と共存して毎日を送ることができるようになります。 障害の自己受容をし、他者にヘルプを頼む 発達障害の特性と向き合い「自己を受容する」第一歩は、できないことや苦手なことがあっても、それは努力不足ではないと考えるところから始まります。「完璧にこなさなければならない」というプレッシャーから解放されることで、心が少し楽になります。 それが進むと、周囲に助けを求めるハードルも下がります。周囲との協力は、特性を補いながら自分らしく生きる大きな助けとなります。 たとえば、筆者はこのようにして他者へ協力を求めやすくする工夫をしています。 対策:仕事の「ボール持ち」を設定する 【1】作業の手順を書き出す現在抱えている仕事の作業手順を書き出して一覧にする 【2】「自分のボール持ち」を明確にするほかの人の対応待ちの作業(相手のボール持ち)と、自分がボールを持っている(自分がやらなければいけない)作業とを区別する 仕事がうんざりするほど多くても、そのなかで自分が進められる仕事というのは、実はその一部であることが少なくありません。「自分のボール持ち」を書き込んで、「本当に自分が抱えるべき仕事」の量がわかれば、より前向きに仕事に取り組めるようになります。 もし、ほとんどの手順が「自分のボール持ち」だったら、それは自分が抱え込み過ぎる傾向があるということです。仕事の進め方を同僚や上司によく相談してください。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 また、その上で、一人で抱え込みすぎないよう、自己開示するためのフレーズを決めています。 対策:魔法のフレーズ「困ッテイルンデス」を唱える 【仕事での悩みを開示して、ミスのショックをやわらげよう】 仕事では、できるだけ相談して「共犯者」をつくりましょう。一緒に仕事をする人であればだれでもよいです。相談するのが難しければ 、「(〇〇の)仕事で困っているんですが」という「話し出しの魔法のフレーズ」を唱えましょう。 相談することができれば、その仕事は自分とその相談相手が一緒に持つ「荷物」のようなものになり、荷物の重さを二分(にぶん)することができます。そして、ミスがあったとしてもそのショックを「はんぶんこ」することができます。そのために、自分の悩みを開示してみるのがおすすめです。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 ストレスや不安との付き合い方を学ぶ 発達障害の特性を持つ人にとって、日常生活や仕事の中でストレスや不安を感じる場面は多いものです。ストレスと向き合い、上手に付き合う方法を身につけることはとても大切です。 対策:思い浮かぶたくさんのことを受け流す 【1】楽な姿勢で座る【2】意識的にゆっくり呼吸をする【3】目をつぶり思い浮かぶことを考える【4】そのまま3分間 【「全部やらなきゃ」脱却のカギ「マインドフルネス」】 やらなければいけないことが多いと、「全部いっぺんにやらないといけない!」と焦って、結局すべて中途半端になってしまいがちではないでしょうか。まずは、焦りをなくしていったん落ち着くことが大切です。ぜひ、呼吸法など、自分に合った「マインドフルネス」を試してみてください。 頭に思い浮かぶ雑念を無理に否定せず、ただ「ああ、こういうことがあるなぁ」「自分はこれに対して不安を感じているんだな」とありのままの「いま」を認めてそれに集中することで、リラックスすることができ、「焦り」からも解放されるかもしれません。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 対策:自分を大きく肯定することばをわざとつけて話す 【「おれ/私ってすごいから~」と言ってから、本題に】 自己肯定感をキープしたりあげたりするために、「肯定的なことを口に出す」のは大切だと感じています。私はよく妻に、自分を肯定することばを最初に言って話し始めています。「おれってすごいから、今日締め切りの仕事を終わらせたよ」「おれってすごいから、階段だけを使って帰ってきたよ」という具合です。大してすごいことでなくてもよく、むしろ無理矢理な感じがあったほうが、より効果的です。 信頼できる家族や友人などに、ぜひ言ってみてください。くり返すと、ちょっとずつですが自信が湧いてくる気がします。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 ストレスや不安を完全に取り除くことは難しくても、日常のちょっとした工夫から、ストレスとうまく付き合う術を身につけることで、日々を少しでも楽に過ごせるようになります。この方法はすべての人に当てはまるわけではありませんが、できることから少しずつ進めてみましょう。 特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために 特性や性格によって、一人ひとりに合う対策法は異なります。また、性格や働き方の好みによっても、どのような工夫が効果を発揮するかは変わってきます。そのため、自分自身に合った方法を見つけることが重要です。 その参考として、筆者の執筆した書籍『「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方』は、なんらかの参考になることと思います。興味がありましたら、ぜひお手に取ってみてください。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 ただ、就労には、本書でご紹介する仕事術などとあわせて、その他のトレーニングも必要です。独学でそのすべてを習得するのは、膨大な手間と時間がかかります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害と金銭管理】実際に効果があった対策を紹介

金銭管理が苦手な発達障害のある方に向け、ADHD当事者が実際に効果のあった対策を紹介します。特性別の困りごとと支援制度についても解説。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「衝動買いが止められない」「お金がいつの間にか残り少なくなっている」「貯金がどうしてもできない」 発達障害のある方は、金銭管理に関する苦労がついてまわるといっても過言ではありません。筆者も、期限まで払うべきお金を延滞させてしまったり、計画的なお金の使い方ができず月末に翌月分の前借りをしなければならなくなったりと、お金の管理にはだいぶ手を焼いてきました。 今回の記事は、特性別のよくある困りごと、それらに対する対策、さらには相談先や支援制度の紹介をいたします。まずは自分で困りごとを把握して対策を立てることが大事です。しかし、自分だけでどうにかできない可能性もあり、相談先や支援制度も知っておくこともまた大切なこととなります。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、「先天的な脳機能の障害」です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 【特性別】お金の困りごとあるある 本記事では、ASDとADHDにフォーカスして、お金の困りごとを列挙していきます。 ASD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある将来の見通しを立てることへの苦手感計画をもってお金を使うことや、クレジットカードの引き落としなどの管理が難しいこだわりの強さ興味関心があることへの執着から、強い購買意欲を抑えられなくなる他者の気持ちが汲み取りづらい相手の言うことの真偽を見抜くことが苦手で騙されやすく詐欺被害にあうことがある ADHD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある衝動的に行動してしまう「ほしい」という感情や行動の抑制ができず衝動買いしてしまう継続することへの苦手感飽きっぽい・集中力が続かない等の理由で家計簿をつけ続けられない ASDやADHDの特性をお持ちの方は、多かれ少なかれ当てはまるところがあったのではないでしょうか。このような特性由来の「困りごと」を把握することは、対策をとるうえで大事になってきます。まずは、上記の「困りごと」のうち、自分がどれによく当てはまるかを確認してみてください。 実際に効果のあった対策 当てはまる「困りごと」が分かったら、その対策を考えることになります。筆者の経験上、まず失敗するパターンは「意思の力で乗り越えようとする」です。「お金を使うのを我慢する」「頑張って家計簿をつける」といった心がけは立派ですが、うまくいく可能性が高いとは言えません。 筆者は、社会人になってからも親元で生活している期間が長かったこともあり、金銭管理についてもたびたび親から注意を受けていました。その困りごとは、まさに上記で挙げたようなものです。しかし、現在では、フリーランスで生活しているくらい、なんとか破綻なくいけるようになりました。その経験をもとに、実際に効果のあった「お金に関する困りごと」対策を5つほど挙げてみます。 1.金銭管理アプリを使う 筆者は、「毎日の予算」という家計簿アプリを使っています。このアプリを使うようになって、劇的にお金の管理がうまくいくようになりました。 以前は、仮に月3万円の予算があったとして、1,000円使ったら残りは29,000円です。翌日に500円使ったら残りは28,500円です。当たり前の話ですが、ここで大事なのは「把握する残額は、減る一方」になってしまうということです。 それに対してこのアプリは、表示される金額が減らないのです。むしろ、減らないどころか増えていきさえするのです。月3万円であれば、1か月30日だったとして、日割で一日当たりに使える金額を計算して、それを表示してくれます。ある月の1日(ついたち)には、「1,000円」と表示されます。使わなければその1,000円が繰り越され、翌日2日には「2,000円」と表示されます。そこで500円使ったとしたら、残額1,500円が繰り越され、翌日3日の分がプラスされて「2,500円」と表示されます。つまり、「把握する残額は、使わなければ使わないほど増える」のです。 「使わなければ現状維持、使ったらその分だけ残額が減っていく」のではなく、「使わなければ表示される金額が増えていく」という仕組みは非常にうまいと思いました。ただただ減っていく金額のプレッシャーに耐え続けるのではなく、「節約した(使わなかった)」→「表示金額が上がる」という、ある種の精神的な報酬を得られるのです。 特に筆者が診断を受けたADHDは「報酬系が弱い」とされ、何かしらの見返りや満足がないとなかなかその行動を継続できない特性を持ちます。家計簿を継続してつけるモチベーションとして、この仕組みはとても有効だと、身をもって実感しています。 2.絶対使いたい用途を1つだけ決める 「衝動買い」は、ASDでもADHDでも共通する悩みになることが多いと思います。繰り返しになりますが、ただ単に「衝動買いを減らそう!」と心に決めても、なかなかうまくいくとは限りません。そこでお勧めなのが、「これには絶対使いたい」という用途を1つだけ決めて、それにはお金を使うのです。 「それではお金を使う方に振り切ってしまうのではないか」とお思いかもしれませんが、逆に「この用途にこれだけ使いたい」と強く思うことで他の用途に使わないようにもっていくのです。「これ」と決めた1つの用途と、それ以外とで濃淡の差があればあるほど、この対策は効果的です。そういう意味では、特定のことに関心を持ちがちなASDの特性のある方にはうってつけかもしれません。 3.衝動買い用クレジットカードを作る 家で気軽にショッピングができるネット通販は便利ですが、衝動買いをしてしまいがちな人にとっては、諸刃の剣です。とはいえ、「クレジットカードを使わない」「ネットで買い物をしない」と決めたところで、なかなかそれをキープするのは難しいものです。 そこで、「貯めておく用の口座とクレジットカード」と「衝動買い用の口座とクレジットカード」の2つを用意しておくのをお勧めします。そして、「貯めておく用の口座のクレジットカード」は信頼できる人に預け、できれば定期的に「衝動買いしても良い金額」を衝動買い用の口座に入金してもらいます。 預けることができなくても、口座を分けて「衝動買い口座へお金を入金する」という行動が必要になるだけでもある程度お金を使いすぎるハードルを高くすることができます。そうすることで、ネット通販で必要以上にお金を使い込んでしまうといった展開を避けやすくなります。 4.FP(フィナンシャルプランナー)に相談する FPとは、資産状況、収入・支出、家族構成などから将来的な資金計画についてのアドバイスをしてくれる職種です。「収入に応じた月ごとの支出の適切な額」や「今後の将来設計に応じた必要年収」といった計算をしてくれるので、ふわっとした目標や目的レベルではなく、年単位、月単位での身近な金銭管理についてもアドバイスをしてくれます。 FPさんも色々といらっしゃいますが、筆者は「発達障害専門FP」という方に相談しています。ご本人も発達障害当事者ということもあり、上記のような特性を加味して、より適切な資産管理、資産形成、お金との向き合い方を親身になって教えてくれます。 お金に関することを自分だけでどうにかするのも大事ですが、その一方で第三者の、できれば専門的な知識と経験を持つFPさんの意見も取り入れて自分の生活に生かすのも、とても有用です。 5.消費者ホットラインに相談する 実際にお金に関する困りごとが発生したときは、「発達障害情報・支援センター」や「独立行政法人国民生活センター」のホームページを通じて、または直接に、消費者庁の「消費者ホットライン」へ相談することができます。相談は、電話だけでなく、各地域の消費生活センターや消費生活相談窓口で対面で相談することもできます。 代表的な支援制度 最後に、お金に関する発達障害者への支援制度をいくつかご紹介します。これらを知り積極的に使うことで、より快適な生活を送ることが可能になります。 1.自立支援医療制度 所得に応じて、心療内科などの通院費や薬代などの1か月あたりの負担上限額が設定されます。例えば、生活保護受給世帯は負担額が無しになり、年収約290~400万円未満の世帯は1割負担(例外あり)になります。 参考資料:自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み(厚生労働省) 2.医療費の減額 自立支援医療制度の他にも、都道府県ごとに障害者を対象とした医療費についての助成制度があります。 参考資料:重度心身障害者医療費助成制度一覧(一般社団法人日本ALS協会) 3.障害年金 障害によって仕事や生活などが制限されている方は、公的な年金を受給できます。受給できる額は、その障害の程度によります。 障害年金は、「障害基礎年金」「障害厚生年金」に大きく分けられます。障害基礎年金は、障害の状態や納付実績についてクリアしていれば受給できます。さらに、障害に関する初診日が厚生年金保険の被保険者である間であれば、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受給することができます。 参考資料:障害年金(日本年金機構) 4.税金の控除 納税者本人もしくはその家族に障害がある場合、障害者控除を受けることができます。障害者控除は、主に所得税、住民税、相続税などに適用されます。控除される金額は、障害の程度などによります。 参考資料:障害者に関する税制上の特別措置一覧(内閣府) 5.公共サービスの割引 公共交通機関では、一部(都営交通など)で、精神障害者の利用金額割引制度があります。なお、JRの運賃は、現在、身体障害者と知的障害者が障害者割引の対象ですが、2025年4月から精神障害者も一定条件下で対象となります。また、航空についても、大手2社(ANA・JAL)をはじめとする航空各社が、国内線に限り精神障害者への割引を実施しています。 参考資料:精神障害者割引制度の導入について(JRグループ)/国内定期航空において障害者割引運賃を設定している事業者(国土交通省) 自分に合う「金銭管理」方法を! 一言に「発達障害」と言っても、特性や性格によって一人ひとり合う対策法は異なります。「ADHDだからこのサービス」「ASDだからこの助成制度」といった簡単な話ではありません。 まずは困りごとからその対策を考えていくことが大事です。その際、自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。就労移行支援事業所ディーキャリアは、利用者様一人ひとりに合う金銭管理方法を見つけるサポートも行なっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害の治療と薬】実際に服薬してみてどうだった?

発達障害の治療法には服薬と心理療法があります。服薬の体験談と効果についてインタビューしました。薬に頼らず自己対処をすることも大切です。

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「発達障害の特性を治療でどうにかしたい」 「服薬をすることでもっとスムーズに毎日を送りたい」 発達障害と診断を受けた場合、服薬や心理療法を勧められることがあると思います。そこで、発達障害の治療法にはどんなものがあるのか、そして治療薬はどのようなものがあり、どんな効果があるのかをお伝えします。特に治療薬については、体験談を織り交ぜながらご説明していきたいと思います。 皆さんが少しでも過ごしやすい社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、先天的な脳機能の障害です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 発達障害の治療について 一般に、医師から病気であると診断された場合、治療を受けたり薬を処方されたりします。発達障害も同じです。成育歴や日々の行動の聞き取りや、考え方や知能等の心理検査の結果をもとに診断され、治療を受けます。発達障害の治療には、大きく分けて「心理社会的治療」と「薬物療法」の2つがあります。 心理社会的治療 心理社会的治療は、「発達障害は先天的なものであり、障害そのものを『治癒』することは困難である」という見地に立ちます。そのため、本人が自らの特性と向き合い、社会に適応していくためのスキルを身に付けることが目的となります。 心理社会的治療の代表格といえば「認知行動療法」です。自身の「認知(ものごとのとらえ方)」を観察することで、そこから生まれる「感情」「行動」を変化させて生きづらさやストレスを軽くしていく治療法です。 認知行動療法については、下記記事を合わせてお読みください。 その他にも報告・連絡・相談のロールプレイなどをする「ソーシャルスキルトレーニング」、特性による困りごとが発生している状況において、そもそも本人の周囲を調整して困りごとが発生しないようにする「環境調整」というものが挙げられます。 薬物療法 心理社会的治療に対して、直接身体に作用する薬物を用いて困りごとに対処していくのが「薬物療法」です。ただし、現在はADHDの治療薬はあるものの、ASDやSLDへの治療薬はありません。また、症状を根治するものではなく、一時的に症状を抑えるものとなります。 とはいえ、服用した経験のある人からは、「頭の中がスッキリ静まり返ってびっくりした」「集中力が劇的に上がった」といった感想があがることがあり、一定の効果が得られるところは見逃せません。ADHDの治療薬として承認を受けている薬は以下の4つです。 名称内容コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩徐放錠)・即効性あり・約12時間程度で効果が消失・ADHDの子どもの7割に効果・2013年に18歳以上の成人投与承認ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)・効果が現れるまで約8週間ほど・1日2回服用で24時間効果が継続・2012年に18歳以上の成人投与承認インチュニブ(グアンファシン塩酸塩徐放性製剤)・2017年3月に承認・特に多動性・衝動性について新たな治療の選択肢となることが期待されるビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル塩酸)・2019年3月に「小児期におけるADHD」の適応において承認・ADHDの診断治療に精通した医師に限り、薬物依存にも対応できる医療機関薬局においてのみ取り扱い可・他のADHD治療薬が効果不十分のときのみに使用 なお、ASDやSLDの特性を持つ人に対しては何も薬物療法をおこなわないかというとそうではありません。例えば二次障害として不安や不眠などの症状が出ている場合には精神安定剤などの治療薬を用いたりしています。 二次障害については、下記記事を合わせてお読みください。 薬物療法の事例 ここでは、実際にお二人の方の薬物療法の経験談をご紹介します。 ストラテラを服用しているAさん ●診断名:ADHD ①ご自身が感じる服薬のメリットデメリットについて教えてください。 メリットは「衝動性が抑えられること」です。服薬前は「これをやりたい」「これを言いたい」「これを食べたい」という思いつきを即行動に移してしまっていました。特に過食に関しては深刻で、成人してから食欲が抑えられず、食費と体重が上がり続け、自己効力感を著しく下げてしまっていました。 しかし、服薬をしたところ、食欲を感じても、実際に食べ物を購入して口に入れるかどうかをいったん待って考えられるようになりました。すると、食費も下がり適正体重をキープすることもでき、自己効力感も上がりました。そんな自分を好きになることができました。 デメリットは、「自分の持つ特性を『障害』と深刻に捉えてしまうこと」です。服薬をしているということは、「服薬をして抑えなければいけない障害がある」ということだと考えるようになりました。 ②服薬だけでは特性対策は難しいと感じたことはありますか。 服薬し始めた当時は「これで忘れ物もミスも全部なくなるかもしれない」と期待しましたが、なくなりませんでした。服薬は「忘れ物やミスの軽減」をもたらすものではなく、忘れ物やミスをしたときでも落ち着いて「次はこうしたらいいかもしれない」と考えられるきっかけに過ぎませんでした。 ただ、そのきっかけをもとに、対策を考えたりこれからの働き方や生き方を考えたりすることができるようになりました。最初は落ち込んだこともありましたが、結果的に医師に診断書を書いてもらって支援機関に頼ることもでき、そうして成し遂げてきた自分の足跡を振り返ると、前向きに考えるきっかけになったことは大事だったような気がします。 ③「服薬し忘れ」や「飲み忘れ対策」のエピソードがあれば教えてください。 ストラテラは服薬をしていないとき、私は「服薬していない」という感じがあり、自宅での飲み忘れに対しては気付いて服薬することができていました。しかし、外出先で飲み忘れに気付いたときは、手元に薬がないため困ることがありました。 対策としては、絶対にカバンに入れるポーチに1回分のストラテラを入れておいて、外出先でも服薬できるようにしています。ポーチは目立つように金色のものを使用しています。 過去にストラテラ、現在はコンサータを服用しているBさん ●診断名:ADHD、ASD ①ご自身が感じる服薬のメリットデメリットについて教えてください。 個人的には、服薬の効果があまり感じられていません。飲み忘れたとしてもほとんど何も変わらない、というのが正直な感想です。強いてメリットを言えば「お守り的に気休めになる」という程度です。ただ、飲み忘れたことで「薬を飲んでいないから、なんとなくいつもより仕事がはかどらないかもしれない...」と不安になることはあります。 デメリットとしては、「自分に合う薬を見つけるのに時間がかかる」ということです。ストラテラは低用量と高用量の2つを試したのですが、低用量の時は効果が感じられず、逆に高用量になってからは「眠気」「だるさ」という副作用がひどく、仕事に支障が出てしまいました。このことがはっきり分かってコンサータに切り替えるまで1年ほどかかってしまいました。 また、転院したいと思った際に障害になるかもしれない点もデメリットだと感じました。コンサータは登録を受けた患者が、登録を受けた医師や薬剤師から処方してもらわなければいけません。そのため、転院したいと思っても、その手続きが煩雑になるのではないかと思い、転院の足かせになるように思います。 ②服薬だけでは特性対策は難しいと感じたことはありますか。 ①で挙げたとおり、私にはほとんど効果が感じられないので「大いにYES」です。自立支援医療費制度のおかげで金銭的負担を抑えられるため、お守りとして飲み続けていますが、薬以外でなんとか対処するしかないと感じています。 対処法としては、以下2点を実行しています。 【自分の特性を理解する】 インターネットや発達障害関連の書籍、それと私がアルバイトさせてもらっていた就労移行支援事業所で自分の特性への理解を深めることができました。インターネットは玉石混交なので注意が必要ですが、およそ公的機関や大手就労移行支援事業所の発信する情報であれば信頼できると考えています。個人的には、就労移行支援事業所でのアルバイトがとても学びが大きかったです。 【自分に合った自己対処を見つける】 仕事の抜け漏れ防止のためのタスク管理/メモアプリや、スケジュール管理ができるリマインダー/カレンダーアプリなどを使ってきました。ただし、管理の時間がうまくとれず、忙しくなると面倒になって崩壊してしまいがちでした。でも、管理しなければ確実に崩壊してしまうのです。「どちらにせよ崩壊するなら、管理の時間を捻出する方向で頑張ろう」と考えると、ちょっと気持ちが楽になります。 また、自分で管理をしていくのと同時に、環境を調整することも大事だと考えています。ただ、これは本当に難しくて、「もっと努力すればできるのではないか」「対処法を駆使すればできるようになるのではないか」「今の業務に慣れたら、より上位の業務や役割に挑戦すべきではないか」など、ともすれば「自分を変える」方向にいきがちになってしまいます。挑戦と失敗を繰り返しながら少しずつ調整をしていくようなイメージが自分には合っているかなと思います。 また、眠気や集中力低下の予防としてカフェインサプリ「カフェロップ」をたまに飲んでいます。 ③「服薬し忘れ」や「飲み忘れ対策」のエピソードがあれば教えてください。 スマホのリマインダーアプリを使って飲み忘れ防止アラートを鳴らすようにしています。ただ、アラートが鳴っても「どうせ飲んでも変わらないしな…」と思ってスルーしてしまうことも多いです。 薬物療法と心理社会的治療の両軸が鍵! このように、薬物療法による効果には個人差があります。ただし、服薬によって状態が少しでも改善できるのであれば、やらない手はありません。医師の処方にしたがって服薬し、さらに心理社会的治療もやってみるというのがベストなのではないでしょうか。 特に、心理社会的治療の代表格である「認知行動療法」は、自己理解のための王道であると言っても過言ではありません。薬物療法とあわせてやってみることを推奨します。就労移行支援事業所ディーキャリアは、この「認知行動療法」に基づいたプログラムを提供しています。自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が解説】発達障害者のためのマルチタスク対処法

マルチタスクに苦手意識のあった発達障害当事者が、特性をカバーするために編み出した「タスク管理」テクニックを紹介します。

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「仕事が溜まってしまって、どれからやればいいか分からない」「複数の仕事を同時進行するのが難しい」 発達障害、特にASDやADHDのある人は、複数の仕事が目の前にある状態、いわゆる「マルチタスク」に苦手意識を持ちがちではないでしょうか。一方で、現代では、たくさんの仕事を効率よくこなすことが要求されがちです。 発達障害のADHDのある筆者は、自らの特性をカバーする目的で編み出した「タスク管理」をメインに、マルチタスクへの苦手感を大幅に払拭できました。その経験から「発達障害者はいかにマルチタスクに対処すべきか」についてお伝えしたいと思います。この記事が、特性による困りごとのある皆さまにとって「働きやすくなるためのヒント」になることを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 なぜ発達障害者はマルチタスクが苦手なのか まずは、発達障害者、特にASD/ADHDのある人がマルチタスクへ苦手感を持つ理由をご説明したいと思います。 ASDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ASDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の2つの傾向が大きく関わっています。 シングルフォーカス特性一度に注意を向けられる範囲が狭くなる。興味関心の幅が狭くなりがち。シングルレイヤー思考一度に一つの情報しか処理しにくい。複雑な状況の理解が難しく、明記されていないルールを自然と読み取ったり、物事の「裏」を察したり、といったことが苦手になる。優先順位がつけにくくなる。 マルチタスクな職場では、この2つの傾向があるとなかなか難しいです。 ADHDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ADHDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の傾向が大きく関わっています。 ワーキングメモリーの弱み脳の一時的な記憶の置き場であり、作業場でもあるワーキングメモリーの機能低下により、臨機応変な対応が難しくなったり、不注意が起こりやすくなったりする。聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい。複数の作業を同時に進めることが難しい。集中し続けることや、注意し続けることが苦手。複数のことに目を配れない。など。 特に「聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい」「複数の作業を同時に進めることが難しい」「複数のことに目を配れない」といった傾向は、常に複数の仕事を抱える状況だと、困りごとを生みやすくなります。 ※上に挙げた話の詳細は、大人の発達障害とはでご説明しています。ぜひ参考になさってください。 そんなASD/ADHDのある人は、「マルチタスクな職場」にどう対応していけば良いのでしょうか。 マルチタスクへの対処法 そもそも、マルチタスクを避けられればそれに越したことはありません。ASDやADHDの人によくみられがちな「反復作業が得意」「興味のあるものへの高い集中力」といった傾向を生かせる、単純作業のみ求められる仕事に就くことができれば、しっかりと自分のパフォーマンスが発揮できることでしょう。 ただ、仕事が複雑化している現代、マルチタスク対応が必須となる職場は少なくありません。マルチタスクが避けられない場合、どのように対処していくかが必要になります。 対処法の鉄則は、「諦める」「自分ができるような状況に持っていく」の2点です。 「マルチにこなそうとする」のを諦める まず、「パソコンが複数のアプリケーションを同時に処理するように複数の仕事を同時並行でこなす」のは、諦めましょう。目の前に複数のやるべき仕事が並んでいるマルチタスク状態において「マルチにタスクをこなす=同時並行に処理する」ことは原則的に無理なのです。 「自転車を運転しながら、今日の夕飯を考える」「請求書の束に印鑑を押し続けながら、上司と話す」といったことは同時並行でできるじゃないかとお思いかもしれません。それは自転車の運転や請求書への押印のどちらも、「何も考えずにできるようになった行動」だからできるのです。 職場でやる仕事は、ほとんどが「考えることが必要」な仕事ですので、やはりマルチタスクは諦めた方が良い、というのが筆者の考えです。 ところで、まるで一度に3つ4つの仕事を同時にこなしているような印象を受けるような、とんでもなく速いスピードで仕事をこなす人がいます。そういう人は、マルチタスクを可能とする特殊技能の持ち主なのでしょうか。実は違うのです。 ASD/ADHDでも対処可能なシングルタスクへ落とし込む 一度に3つ4つを同時にこなしているようなスピード感で仕事をしている人は、実は小さなシングルタスクへ分解して、そのシングルタスクを完了させてはまた別のシングルタスクへ、という風にタスク管理をして仕事を進めているのです。その結果、他の人からみると「ほぼ同時に複数の仕事タスクを終わらせている」ように見えるのです。 例えば、「カレー」「サラダ」「スープ」の3品の料理を作るとします。もちろん3品同時進行で作ることはできません。カレーの具材を切り、水と共に鍋にいれ煮ます。この時点でサラダ作りもスープ作りも着手していません。その後に初めてサラダ作りに着手し、キャベツを千切りにします。千切りが終わったら、鍋にカレールウを入れます。次に、スープの素をカップにあけます。 このように、3品の作成は同時に進行していないことがお分かりだと思います。最終的には「ほぼ」同時に食卓にカレーとサラダとスープが並びますが、その過程はそれぞれの料理を完成させる細かい手順を1つずつ終わらせていった結果にすぎないのです。 仕事も同じです。仕事タスクがA、B、Cと3つあり、それぞれに3つの手順に分解できるとします。最初にA-1を終わらせ、次にB-1をやり、それが終わったらA-2を完了させ、次にC-1とC-2を一気にやり、B-2を終わらせて、A-3、B-3、C-3と順々に完了させていく。そんな風に「あたかもマルチタスク風に」対処するのです。 複数ある仕事を目の前にすると、つい全部いっぺんに終わらせたくなりがちです。しかし、本当にマルチタスクでもスピーディーにこなせる人は、マルチタスク全部を同時に終わらせるという幻想を捨て、シングルタスクへ分解して1つ1つやるしかないと思えた人です。 前述したASDの傾向の「シングルフォーカス」「シングルレイヤー」は、まさにこの進め方にピッタリだと言えるでしょう。また、ADHDの「複数の作業を同時に進めることが難しい」という傾向も、まさにこの進め方で対処できるものです。 マルチタスクをする上で気を付けること ご説明したマルチタスク対処法をやっていくに際して、以下2点はぜひ気を付けたいところです。 スケジュールを意識する そもそも「時間通りに物事を進める」のは、ASD/ADHD共に苦手です。スケジュールを意識して業務タスクを進めるよう気を付けておくに越したことはありません。マルチタスク環境であればなおさら、それぞれのタスクについてスケジュールを意識しなければなりません。 ASDのある人にとっては、先に挙げた「シングルフォーカス」がネックになりがちです。シングルタスクへ分解した結果、いわゆる「過集中」状態になってしまい、今自分が取り組んでいるタスク以外のことに気がいかなくなり1つのことに時間をかけがちです。そんなときは「これから30分やろう」と決めてタイマーをかけておくなどの対策があります。 また、ADHDの「ワーキングメモリ―の弱み」により、せっかく小分けにしたシングルタスクを実行するのを忘れてしまうことがあります。「いつやるか」をリマインダーを設定して確実にしておくことも大事になってきます。筆者は、ADHD傾向が強いため、将来の予定はリマインダーアプリを活用しています。「忘れない」のではなく、「忘れても支障ない」ようにしておくことが大切です。 適宜休憩を取る 当然ながら、集中してタスクを実行すると疲れます。疲労していると、より特性が強く出る場合があります。そうならないように、タイミングを見ては休憩を取ることもまた大事です。 しかし、自分自身は疲れを認識していなくても、実は心身が疲れていることがあります。筆者も、疲れを感じずにずっとタスクに没頭してしまい、終わって2~3時間後にドーンと大きな疲労感に襲われてしまうことがよくあります。そんなときは、特性がいつもより強く出て自分が使いものにならなくなったり、ひどい時にはタスクを実行するだけの元気がなくなってしまったりします。 特にマルチタスク状態で仕事をこなすような環境では、ただでさえ苦手な状況なうえに、次から次へとやることがあるため、休憩を取ることがおざなりになりがちです。就労は50メートルを全力で走ったら終わりなのではなく、長く続くマラソンのようなものです。継続して安定的に働けるように、体力にまだ余裕があるうちに適宜休憩を取るべき、と自戒を込めて筆者は常に意識しています。 前述したASDの傾向の「シングルフォーカス」「シングルレイヤー」は、まさにこの進め方にピッタリだと言えるでしょう。また、ADHDの「複数の作業を同時に進めることが難しい」という傾向も、まさにこの進め方で対処できるものです。 それでも困難を感じるときは ご紹介した「マルチタスクへの対処法」が難しいときは、合理的配慮を求めることになります。 合理的配慮とは 合理的配慮とは、障害のある人もない人も平等に社会生活を送れるように、障害特性や困りごとに応じておこなわれる対応のことです。 合理的配慮については、合理的配慮とは?基礎知識をまとめました。で詳細にご説明しています。よろしければご覧ください。 合理的配慮を受けるためには、下記①~③の要件が揃っている必要があります。 ① 障害が原因となる困難さ(障壁)であること② 障害者本人が、自己対処(セルフケア)を行おこなっても、対処しきれないものであること③ 企業等の側にとっても、重すぎる負担でなく、提供可能な範囲のものであること 要件それぞれの詳しい解説については、「合理的配慮」申請マニュアル 流れとポイントを紹介にあります。また、合理的配慮の具体的な事例に関しては、発達障害のある方の合理的配慮事例を見ていただきたいと思います。 要件②の「自己対処」が、これまでお伝えした「マルチタスクへの対処法」です。それが難しいときは、要件①と③が揃っていれば「合理的配慮」として企業等の側に対応を求めることが可能になります。 国もマルチタスク対応への配慮を念頭に置いている 合理的配慮として企業側が「マルチタスクへの対処法」をおこなうのであれば、上司がマルチタスクをシングルタスク(手順)へ分かりやすく分解し1つずつ指示出しする、といった形になります。 実は、国もそういった形での合理的配慮を想定しているのです。厚生労働省が公開している「合理的配慮指針」の末尾別表にある合理的配慮事例にこのような内容があります。 「業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと」(厚生労働省|「合理的配慮指針」別表より。太字は筆者による) それほど、マルチタスクへの対処は、取り組むべき課題だと広く認識されているのでしょう。「そのくらい自分でどうにかしなければいけない」と思う必要はありません。 自己対処や合理的配慮申請を専門家に頼ろう これまで、自己対処としての「マルチタスクへの対処法」を中心に、それが難しいときの合理的配慮申請についても書きました。これらのことは、自分一人でおこなうことも可能ですが、自分に合った自己対処の方法を見つけたり適切な合理的配慮の申請は、自分一人でおこなうことはおそらく難しい、あるいは膨大な時間や手間がかかってしまうでしょう。 そんなときは、自分一人で悩んだり、余計に手間をかけてしまうよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者の経験談】「転院」するときに考えておくべきこと

発達障害のある方が心身健康に働くためには「自分に合う医師の選択」が重要です。実体験をもとに医師選びのポイントを紹介します。

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「発達障害で通院しているが、医師と相性が合わない」「転院したいが、どのように考えればいいのか分からない」 発達障害のある方にとって、医師の存在はとても大きいと言えます。そもそも、発達障害の診断書を出せるのは医師だけです。しかも、診断書の記載内容は病名のみならず、病歴や治療の経過、生活能力の状態などにまで及びます。自然と医師の関わりは大きくなるのです。 また、診断書を出してもらって終わりというわけにはいかず、その後も心身の変化によって服薬を調整したり、日々の生活についてアドバイスを受けたりします。したがって、医師の選択は今後の生活を大きく左右すると言っても過言ではありません。 一方で、「医師をどう選んだら良いか」の大きな指標が示されているわけではありません。医師の「食べログ」のようなものはないのです。口コミがネット上にある場合もありますが、それがどの程度信頼できるかは分かりません。 発達障害当事者であり転院の経験がある筆者として、その経緯をお伝えしつつ、医師を選ぶ基準となる考え方などをご説明します。皆さんが少しでも社会生活を安心して送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 筆者の体験談 筆者は、最初の病院を含めて合計3院、2回の転院をしています。それぞれ経緯と所感を書いてみます。 1カ所目:都内某診療所 【経緯】 仕事がうまくいかなかった筆者は、ネットで調べてみて「自分は発達障害ではないか」と考えるようになり、「東京都多摩総合精神保健福祉センター」に相談しました。面談の後、より詳しく調べてみようということになり「東京都発達障害者支援センター(TOSCA)」を紹介され再度面談をしたところ、都内の某診療所を紹介されました。 【所感】 筆者は、自分の「忘れっぽさ」「段取りの悪さ」といった特徴を自覚しており、心の底では「自分は発達障害であろう」と考えていました。結果、その通りの診断をしてもらうことができ、その意味では自分の意図に沿う対応をしてくれたと言えます。 また、当時は障害者が社会生活を送るのに必要なサポートを提供してくれる、いわゆる「社会資源」についての知識が筆者にはなかったのですが、診療所に常駐していたソーシャルワーカーさんに「障害者雇用」という働き方を教えてもらうことができ、その後の就職への足がかりを得ることができました。この点においても、筆者にとって良い選択だったと言えます。 ただ、当時東京都の多摩地方に住んでいた筆者は、23区内にあるこの診療所は自宅から往復3時間近くかかり、通院に苦痛を感じていました。 また、医師とのやりとりに違和感を覚えたことがありました。ある診察時に「私は本当に発達障害なんでしょうか?」と質問したときに、少し強い調子で「だって、それでうまくいっていないんでしょう?!」と少々強く言われたのです。今考えれば、「仕事がうまくいかず社会生活に支障をきたす」という時点で自明なのですが、強く言われるほど変な質問をしていないのではないかと思いました。 【転院のきっかけ】 1社目の会社に就職後、自宅から遠かったこともあり、また「通い続けなくても自分は大丈夫」と思って次第にこの診療所から足が遠のいていきました。 2カ所目:都内某医院 【経緯】 1社目、障害者雇用で就職して一安心していましたが、人員整理や親会社との合併の影響でだんだんと業務負荷が高くなっていき、やがて仕事がうまくいかなくなり休職に至ります。休職するためには医師の診断書が必要なので、自宅の近場で手っ取り早く休職できる診断書を書いてくれる病院を探しました。その結果、自宅から自転車で10分程度のところにあるこの医院を見つけ、通院し始めました。 【所感】 経緯でも書いたとおり、「休職できる診断書をもらう」のが目的でした。「このまま働き続けることは難しい」という状況に陥ったときは、一刻も早く休養を取る必要があります。休職へとスムーズに移行するためには、医師の協力が不可欠となります。そういうときは、休職のための診断書を作成してくれる「装置」として「医師を使う」のも大いにありだと考えています。 この医院の医師は、ある意味機械的に、すぐに休職に必要な診断書を書いてくれました。このときの筆者にとってはとてもニーズにマッチした医院だったと考えています。 【転院のきっかけ】 通所していくうちに、最初はメリットとして感じた「機械的さ」に物足りなさを感じたことと、休職期間が終了してそのまま退職し、2社目に転職するバタバタから通院しなくなりました。そして、2社目でも仕事がうまくいかず休職を考えたときに、別の病院を探すようになります。 3カ所目:都内某クリニック(現在) 【経緯】 2社目でまた仕事がうまくいかず休職を考えたときに、ちょうど知り合いが行っているクリニックが良いと話を聞きました。そこで行ってみたところとても相性が良く、現在でも継続して通っています。 【所感】 2カ所目の医院で感じた物足りなさは、当初それが何なのかがはっきりとは分かっていませんでした。しかし、この3ヶ所目のクリニックの医師と会った瞬間に分かりました。ただ単に薬を出してもらうだけではなく(それも大事ですが)、自分の話をしっかり聞いてくれて、より生活や仕事を考慮して踏み込んだアドバイスをしてくれることを筆者は欲していたのです。また、とにかく声が明るく、ハキハキとしていつでも笑顔で話してくれることも、筆者としても安心感がありました。 このクリニックに通い続けて数年経ちますが、結果的に服薬内容は変わっておらず、月1回の通院の際には、今の生活や仕事の話をして、「頑張ってね」と言われて診察は終わり、ということもあります。「それは本当に良い医者なのか?」というような話ですが、それでも危ない傾向があるときはちゃんと言ってくれる、筆者にとっては良いバロメーターとして頼れる存在になっています。 転院する上で大事なこと 転院するのに大事なことは2つあると筆者は考えています。 まずは基本「家に近い」 どんなに名医でも、自宅から5時間かけて行くような場所にあったら、それは現実的な選択肢からは外れることでしょう。実際、筆者も2ヶ所目の医院を選ぶときには「自宅から近い」という基準で選びました。3ヶ所目も通院に比較的ストレスがない範囲内におさまっています。まずは、自宅から近い、少なくとも自宅から通うことが現実的な距離・時間であることが大切だと考えます。 意外に大事なのが「相性」 さらにもう一つ大事にしたいことが「相性」です。これは、人によってどんな医師が良いのかはケースバイケースですが、まず1回会ってみて「なんか違うな」と思ったら行かないのをお勧めします。 実は、3ヶ所目のクリニックに行く前に、もう1カ所自宅近くの医院へお試しで行ってみたのです。ただ、こちらはなんとなくウマが合わなさそうという印象で、1回で行くのを止めました。その結果、3ヶ所目のクリニックに行くことになり、「この医師とは合いそう」と思えて現在も通院しています。 障害年金や障害者手帳、後述する就労移行支援事業所に通うのに必要な受給者証の申請には「医師の診断書」が必要になります。これらの申請が通るか通らないかは、診断書に医師がどう書くかによります。 自身の障害や状況について、その困りごとを過不足なく適切に書いてもらわないと、障害特性によって生活面や仕事面で支障をきたしていたとしても、「診断書からはその必要はない」と判断されて公的なサポートが受けられなくなる可能性があるのです。 そこで、自分の現況や困りごとをしっかり聞いてくれる姿勢を持つ、自分が話しやすいと感じる関係性、つまり「相性」が大事になってくるのです。 把握しておきたい転院のデメリット 今までは転院ありきの話をしてきましたが、ここで転院のデメリットについてお伝えしたいと思います。 転院に際しては、今までお世話になっていた先生だからと医師に黙って転院するケースがあり得るのですが、転院元と転院先の病院で、自分の診療に関する記録が共有されないというデメリットがあります。 筆者の記憶では、1ヶ所目の診療所から2ヶ所目の医院には、紹介状などである程度の情報共有がなされていたと思います。ただ、2ヶ所目の医院から3ヶ所目のクリニックには、紹介状なしに黙って転院したため、症状や服薬状況などを自分で一から説明する必要がありました。 紹介状がないと、自分がこの記録の代わりに全部伝えなければなりません。この手間はかなり大きいものです。できれば、きちんと転院前の病院に転院する事情を説明して、紹介状を書いてもらうことをお勧めします。 また、筆者が転院で苦労したこととして、最初に発達障害の診断を受けた際に、その診断の根拠となった心理検査の結果の提出を求められたことでした。 筆者は発達障害の傾向のせいか物の整理整頓が非常に苦手です。心理検査の結果の書類を出してと言われて、「……あったはずだけど、どこにしまったのか」と冷や汗をかいたのを覚えています。奇跡的に過去の書類の中から見つけることができましたが、これでつまづく方もいらっしゃるのではないでしょうか。 ただ、転院を考えるに至ったときは、「医師との相性が合わない」「ちゃんと診てくれない」といったそれなりの理由があるときだったと思います。通院や治療が大きなストレス源になっていたり、適切なサポートが得られない場合は、やはり転院が解決の手段になります。 働く上での医師との関わり ここでは、より「働く」ということに焦点をあててお伝えしたいと思います。 医師は大事な伴走者 発達障害のある私たちにとって、心身ともに健康に働くために医療的なサポートを受けることはとても重要です。筆者は最近、「仕事の間引き」を医師から提案されました。 ADHDの特性持ちである筆者は、興味の偏りという傾向があります。興味のないものには徹底的に見向きもしないが、興味のあるものに関しては楽しいのでとことんやってしまうのです。 筆者はフリーランスで働いていますが、自分の時間が会社員と比べて自由に使えることが多いので、仕事に力を入れようとすると自然と「ひとりブラック職場」になりがちです。筆者もその例に漏れず、むしろ「仕事をいただけている!」と嬉しくてスケジュールを詰め込みがちになってしまいました。 定期的に通院している医師が「仕事の間引き」を言ってきたのは、そんな筆者の様子を見てのことでしょう。医師は多くの精神疾患のある方の行動パターンを見てきています。「こういうことを言っている/こういう行動をしていると、次はきっとこうなる」という傾向が分かっていることが多いのです。 実際、筆者は「仕事が楽しいと言って軌道に乗ってきている人は、その後調子を崩しやすい」と言われました。多くの患者を診てきたその知見は、大いに活用した方が良いと考えます。「ちょっとペースが落ちているから上げてみましょう」「もうちょっとスピードを落としても大丈夫」といった、伴走者のような役割を医師に求めてみると良いでしょう。 「働く」ための社会資源も活用しよう ただ、そんな医師でも、どんなところでどう働くかまで面倒を見てくれるとは言えません。特性と向き合いながら長期的に働くためにはどのようにしたら良いかを相談するには、それ相応の社会資源(社会福祉上の支援をしてくれる人や機関)を利用することが大切です。自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が解説】「仕事がうまくいかない」対策と継続のコツ

「仕事がうまくいかない…」を乗り越えるための対策を筆者の実体験をまじえご紹介。対策を立てた後に『継続』するためのコツもお伝えします。

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「仕事がうまくいかない」「同じようなミスを繰り返してしまう」 発達障害の特性がある方にとって、「仕事がうまくいくかどうか」はかなり大きなテーマでしょう。注意欠如・多動性障害(ADHD)の当事者である筆者も、過去に仕事でミスや失敗をして落ち込み、不安感にさいなまれる経験をしてきました。 平成29年に発表された厚生労働省の発表によると、精神障害者の障害者雇用の離職理由について「仕事内容があわない」「作業、能率面で適応できなかった」という項目が上位にきています。また、日本国内の企業の99.7%を占める中小企業のうち、障害者雇用の定着の理由として「作業を遂行する能力」を挙げる企業が一番多いという調査結果も出ています。 参考文献:障害者雇用の現状等|厚生労働省 発達障害特性への対策は世にたくさん発信されています。一方で、発達障害のある方の離職率が劇的に低くなったという話は聞きません。つまり、対策を知ったとしても、それを実際の自分の業務に生かすことが難しいのではないでしょうか。 今回の記事では、発達障害のある方によくある失敗とその対策、そして、対策を継続し習慣化していった筆者の体験談をお伝えします。皆さんが少しでも職場で長く違和感なく働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害当事者によくある失敗 発達障害の特性があると、以下のような失敗をしがちです。それぞれについて、原因と対策を挙げてみます。今回ご紹介をする【原因】は、あくまでも一例です。特性は一人ひとり異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。 ① ケアレスミスが多い 【原因】 一般に、「記憶の抜け漏れ・忘れ」はケアレスミスにつながりやすいと考えられます。発達障害の特性の有無と、「ワーキングメモリ」と呼ばれる作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力の間には関連性があることが指摘されています。 参考文献:「ワーキングメモリと実行機能の発達」|発達心理学研究 2019,第30巻,第4号,173-175 【対策】 ワーキングメモリの働きを自分でコントロールすることはなかなかできません。頭の中だけで覚えておこうとするのではなく、紙のノートやPCのメモ帳に書き出して保存することが、簡単ながら一番効果的な対策です。電話を受けたらメモをする、口頭で指示を受けたらToDoリストに書き出すなど、確実に残る記録としていつでも参照できるようにしておくことが大切です。 ② 納期を守れない 【原因】 発達障害の特性の1つとして、不安が強く心配性であるため、失敗・挫折への恐怖が強いという傾向があり、仕事(やるべきこと)の先延ばしをして納期を破ってしまいがちだとされています。 参考文献:ひきこもり支援者読本 第2章「ひきこもりと発達障害」|内閣府 【対策】 「できないかもしれない」と思ってしまう仕事は「失敗せずやれる」と思えるような細かい作業手順に分解することでその不安や恐怖を取り除きます。すると、とりあえず手を付けることができるようになります。その結果、先延ばしを避けて納期通りにやるべきことを終わらせることができます。 ③ 優先順位を間違える 【原因】 やるべきことが複数あり、そのどれから着手するかを決める、いわゆる「優先順位づけ」についてもまた、発達障害当事者は困難を抱えがちです。それは、目の前の作業に没頭するあまり、全体と部分の把握を適切に切り替えることが難しかったり、先々の展開を想像することが苦手だったりすることが原因といっても良いでしょう。 参考文献:注意欠陥/多動性障害児を対象とした課題解決場面におけるメタ認知を促すための支援方法に関する事例的研究|上越教育大学大学院 【対策】 「手を付けなければいけない順番」の指標として締切を意識します。締切を意識することで、早く終わらせなければいけないのはどれかが分かり、正しく優先順位づけをすることができます。 このように、それぞれ原因を知り対策を講じることで、よくある失敗を事前に避け、仕事の質を上げることができます。しかし、対策を講じたは良いが続かなかった、飽きて途中で辞めてしまったといった経験がある方も多いのではないでしょうか。 そこで、筆者の「挫折してしまった(継続できなかった)経験」と「うまく継続できた経験」を対比して、対策を習慣化するコツをお伝えします。 うまくいかなかった「ToDoリスト」 筆者は「タスク管理ツール」を使うことで仕事のクオリティーを上げて長く安定して働き続ける力をつけました。しかし、最初からうまくいったわけではありません。 はじめての会社で先輩や上司から言われたのが「ToDoリストを作りなさい」というものでした。それまで「自分のやるべきことを書いて管理する」ということを一切してこなかった筆者は、ただ「作りなさい」と言われ、見よう見まねでやらなきゃいけないと思うことをノートに列挙して仕事をするようになりました。 増殖し続けるリスト ToDoリストに自分の仕事を書き出すだけでうまくいく......わけではありませんでした。むしろ書き出せば書き出すほど仕事の悩みは大きくなりました。「書いても消えない」のです。 例えば、ある日に10個の仕事を書き出したとします。そのうち7個くらいこなしたとして、残りの3個の仕事は翌日のページに繰り越されます。翌日新しい仕事がまた10個発生したら、合計13個の仕事がリストに並びます。そんな調子で数日経過すると、書き出す気がなえるほど膨大な数の仕事を毎日リストに書くことになってしまいます。 なにから手を付ければ良いかが分からない また、ToDoリストに書き出した仕事の数々を眺めて、「あれ?これ何から手を付ければいいんだろう?」と手が止まることも頻繁に起こりました。ある仕事について手が止まると、別の仕事に目がいきます。ところが、別の仕事も同じく手が止まる。また別の仕事に目が向く。またどう着手すれば良いかが分からない。その繰り返しで、結局リスト上の仕事を減らすことが難しくなってしまい、リスト上の仕事が増えることに拍車をかけてしまいました。 優先順位が分からない さらに、目の前におびただしい数の仕事があるとどうしても目移りしてしまい、「あれもやらなければ」「これもやらなければ」と混乱してしまいました。その結果、本当なら最優先で取り組むべき仕事を後回しにしてしまったり、逆にすぐにやらなくてもいい仕事をなぜかすぐにやらないといけないと思い込んでしまったりと、優先順位をきちんとつけることができていませんでした。 ToDoリストによる管理が崩壊 そうしたことが重なり、ToDoリストを更新することが面倒くさくなって、仕事の基本である「自分がやるべきことを客観的に把握する」のをやめてしまいました。 なお、当時の筆者は上記のように細かく分析できていたわけではなく、「なぜか仕事がうまくいかない」という大雑把な認識しかありませんでした。したがって、「ToDoリストを使いやすくするように改善していこう」という考えが微塵もなく、ToDoリストを更新する作業が「仕事を邪魔する面倒くさいこと」としてしか認識できなかったのです。 こうして、筆者の「仕事をうまくこなす」ための作戦は完全に挫折して終わりました。 うまくいった「特性対策ツール」 ただやるべきことを列挙しただけのToDoリストだけでは仕事がうまく管理できなかった私に足りなかったもの。それは「ToDoリストを自分用に変えていこう」という考えでした。 ここに、対策を講じた後にやるべきことのヒントがあると筆者は考えています。それは、「実践」「検証」「改善」を繰り返すことです。以前のToDoリストでの失敗を糧にこの3つを繰り返すことで、ただのToDoリストを「自分ならではの特性対策ツール」へ変えることができ、仕事がうまく回るようになりました。 ①まずはToDoリストにやるべきことを書き出す 実は、ToDoリストを使うことには失敗だけでなく、良い部分もありました。それは、「書いたことは忘れない」という安心感です。むしろ、「書いたから安心して忘れることができる」と言っても良いかもしれません。やるべきことをToDoリストに書き出すことにより、少なくとも「覚えたはずなのに忘れる」「抜け漏れが発生する」といったことによるケアレスミスは減らすことができました。 しかし、以前にToDoリストを使ったときは、「書き出すだけ」で終わっていたのです。そのため「議事録の作成」や「企画の立案」といったざっくりした内容の項目が並ぶToDoリストを眺めては、「議事録を作るためには、何からとりかかればいいのだろうか」「どのような手順を踏めば企画書を作成できるのだろうか」と考えてしまい、いつまでたっても着手できずにいました。 ②仕事の手順を付け加える そこで、書き出したToDoリストに「より具体的で分かりやすい作業手順」を付け加えるようにしてみました。例えば「議事録の作成」の場合、まずは「議事録のフォーマットを先輩から手に入れる」ことが必要ですので、これが最初の作業手順となります。これをToDoリストに書き足しておけば、「まず最初に何をすれば良いか」が分かるので、作業に着手しやすくなります。 これにより、手が付けられず無駄に時間が過ぎていくことを予防でき、結果的に先延ばしを回避することができて納期を守りやすくなりました。ただ、いくら「着手しやすい手順」が目の前に並んでいても、「では、どの作業から着手しよう」というところで迷いが生じます。つまり「優先順位の問題」を考えなければならないのです。 ③自分が進めている仕事かどうかを付け加える 優先順位の問題の対策としてまず考えられるのは、「優先順位をつける対象の数を減らす」ことです。誰かが進めているのを待っているだけの仕事は、自分がすぐに手を付けられないので、そもそも「着手すべき仕事」の優先度を判断する対象から外すことができます。 さらに、「自分が進めている仕事」と、「誰かが進めていて自分はそれが終わるのを待っているだけの仕事」を区別できるように、ToDoリストに「自分」「相手」などと付け加えました。その結果、優先順位をつける対象を絞り込むことができ、どの作業から手を付けたらいいのかが分かりやすくなりました。 ただし、優先順位をつける対象をある程度絞り込めたとしても、最終的にはその中から「今、自分が進めるべき仕事」をどれか1つ選ばなければなりません。その選択基準がなければ、結局、優先順位がつけられていないのと同じことになってしまいます。 ④手順の締切を付け加える そこで、「今、自分が進めるべき仕事」を1つ選びやすくするために、その手順の締切を付け加えました。締切の日付があれば、「これは早めにやっておいた方が良さそうだ」「これは締切が随分あとだから、まだ寝かせていても大丈夫」ということが分かるので、「今、自分が進めるべき仕事」を選びやすくなります。 このようにして、「ケアレスミス」「納期を守れない」「優先順位がつけられない・間違える」という困りごとへの対策を、自分のものにすることができました。また、実践→検証→改善というサイクルを繰り返すことによる「手間暇かけた感」が、この特性対策ツールへの愛着を湧かせ、この仕事の管理方法を継続させる土台となりました。 対策を継続させるための仕組み ここまででも十分に仕事で活用できる管理ツールにはなったのですが、さらに継続させるための仕組みとして、「適切に自分に報酬を与える」ようにしました。 国立精神・神経医療研究センターの研究によると、ADHDのある方には「後で手に入る高額の報酬よりも、すぐに手に入る少額の報酬を選ぶ傾向がある」と言われています。 参考文献:報酬はヒトの行動抑制機能を高めるか?神経心理学的アプローチによる報酬効果の検討と展望|日本生理人類学会誌 Vol.27,  No.2  2022, 5 38 - 45 ここでいう「報酬」とは、仕事が進んだり、完了できたりすることによる「満足感」と考えていただければと思います。ADHDである筆者も例に漏れず、大きなプロジェクトを終わらせたときの満足感のような「後で手に入る高額の報酬」までは待てません。そこで、「すぐに手に入る少額の報酬」を自分で設定するようにしたのです。 完了数の表示 今までご説明した「特性対策ツール」を、私はExcelで作っています。そのExcel上で、「完了した仕事の数」を表示させるようにしました。ロールプレイングゲームでは、経験値が一定数たまるとレベルが上がります。現実の世界では数字がたまっても何も変わらないのですが、Excel上の数値が上がるだけでも「やった!」と満足感を覚えます。仕事を1つ1つ終わらせるごとに「仕事の経験値をためる」という感覚を自分に起こさせるようにしたのです。 毎日の仕事の発生数/完了数の表示 Excel上でその日発生した仕事の数と、完了させた仕事の数とを比較できるようにしました。例えば、ある日仕事が5つ発生して、4つ完了させていたとします。その時点で「1負け」です。そこで、なんとかすぐに完了できる仕事がないか探します。運よくすぐに終わる仕事が見つかると「引き分け」になります。さらにもう1つ仕事が完了できたら「1勝ち」となります。 「発生数/完了数の勝ち負け」の仕組みは最初はお遊び程度だったのですが、これもロールプレイングゲームのような満足感を味わうことができ、仕事を進めるよい燃料になりました。 仕事が画面から消える これはもう筆者の個人的な趣味のような領域になってしまうのですが、完了させた仕事は記録には残るものの、Excelの画面上では見えなくするようにしました。Excelの「フィルタ機能」を使うとことで、完了させたToDoがスッと消える(正確には、画面から見えなくなる)のです。 この瞬間がたまらなく好きになり、この消える際の「スッ」というExcel上の動きを見るだけで一種の快感のようなものを覚えるようになりました。 まずは自己理解から 以上、筆者の失敗事例とうまくいった事例から、「実践」→「検証」→「改善」というサイクルを回すことでより自分に合ったやり方を見つけることで継続できることをお伝えしました。 ただ、筆者とまったく同じことをしましょうと言うつもりはまったくありません。この事例からお伝えしたいことは、「実践・検証・改善を繰り返すことでより習慣化しやすくなる」「改善には、自己理解が助けになる」ということです。 特に、自己理解を深めておくことが大事だと筆者は考えています。抜け漏れしやすかったり、先延ばしぐせがあったり、優先順位がつけにくかったりする特性を認識していないと、そもそも対策を立てること自体ができないからです。 自己の障害特性を理解し、仮説レベルでもいいので対策を立てて実践し、その結果を検証し、自分の特性に照らして「特性のある自分でも対応できそうな」改善策を付け加え、それを実践して......という繰り返しをすることが、発達障害の特性を持つ私たちがより生きやすくなる道だと筆者は考えます。 ただ、正直なことをお話すると、何から何まで自分でやろうとするのは、とても時間と手間がかかります。筆者自身も特性を把握するまでには数年の時間がかかりました。今、この記事をお読みの方は「そこまで時間と手間をかけていられない」とお考えだと思います。 そんなときには、自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 編集担当 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。