自閉スペクトラム症(ASD)の記事一覧

仕事の不安が軽くなる!発達障害がある方のうつの乗り越え方

ADHD当事者で抑うつ状態を経験した筆者が、特性による「働きづらさ」と二次障害である「うつ」を乗り越えるためのヒントを紹介します。

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「頑張っているのになぜか仕事がうまくいかない」「ミスや失敗ばかりで、職場に行くのが怖い」 発達障害の特性による困難や苦手のある人で、「どれだけ頑張ってもうまくいかない」「人一倍、努力しているのに成果がでない」という悩みを抱える方は少なくありません。このような状況が続くと、仕事への不安や自己肯定感の低下によって、うつなどの精神障害につながることもあります。 実は、発達障害とうつの間に密接な関係性がある場合が多いのです。一般に、発達障害のASDやADHDの特性があることを「一次障害」、そして一次障害が原因で引き起こされる「うつ」などを「二次障害」といいます。 筆者は、一次障害として主にADHDと診断され、二次障害として抑うつ状態と診断されました。この記事では、そんな筆者の執筆した書籍『「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方』の内容を引用しつつ、障害による困りごとに向き合い、乗り越えるためのヒントをお届けします。日常の工夫や考え方を見直すことで、新たな一歩を踏み出すきっかけになることを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害がうつを招く理由 発達障害(この記事ではASDとADHDのことを指して「発達障害」と書きます)とうつは、密接なつながりがあります。この項では、発達障害の説明と二次障害の説明をすることで、両者は密接なつながりがあることをお伝えします。 ASDとADHDの特徴と主な症状 ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係やコミュニケーションが苦手で、特定の興味や感覚の敏感さが特徴的な発達障害です。具体的には以下のような症状がみられます。 他人の気持ちや状況を理解するのが苦手 特定の物事への強い関心やこだわり 感覚過敏(音や匂いなど)がある 臨機応変な対応や複数作業の同時進行が苦手 ADHD(注意欠如・多動症)は、集中力の維持が難しく衝動的な行動をとりやすい特性を持つ発達障害です。具体的には以下のような症状がみられます。 注意が散漫でミスが多い 落ち着きがなく衝動的な行動をする 整理整頓、スケジュール管理、約束を守ることが苦手 筆者は、ADHDの診断を受けており、以下のような症状があります。 私は、発達障害の当事者です。ADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けました。 ■不注意によるミス・抜けもれがひどい■先送りグセがなおらず、締め切りが守れない■ミスを必要以上に深刻に受け止めてしまう■他人のミスも自分のせいかもと考えてしまう■仕事の段取りがつけられない■マルチタスクに思考停止してしまう■思考やものの整理ができない これらは、私の特性による「傾向」をまとめたものです。このうちのいくつかは、自分にも当てはまるという人がいるのではないでしょうか。 筆者の著書『「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方』より引用。以降、引用は同書からのものとなります。 二次障害とは 二次障害とは、発達障害の特性による困難やストレスが原因で、心や身体、行動に不調や問題が現れる状態を指します。これにより日常生活に支障をきたすことが少なくありません。主な例として、うつ病や不安障害といった精神的な不調、頭痛や不眠などの身体的な不調、さらには暴言や引きこもりといった行動面の問題が挙げられます。 二次障害については、こちらの記事でより詳細に説明しています。あわせてご覧ください。 筆者は、下記のような経緯をたどって「抑うつ状態」の診断を受けて休職を余儀なくされ、最終的に退職することになりました。 しかし、与えられた仕事は忘れる、締め切りも守れない、つい先送りをして怒られる…。その連続で自信をなくしていき、大きな不安に苛まれるようになり、それに耐え切れず休職、退職。現実は、仕事の充実どころの話ではありませんでした。 友人が仕事でどんどん活躍していくのを横目に、いつしか、「どうせ、これが自分の限界なんだ」「仕事の充実? 自分がそんなことを考えてはいけない」と思うようになっていきました。 むしろ、自分が思う「人並みの生活」すらも、自分にはできないのだと、完全に自信を失ってしまいました。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 発達障害がうつにつながってしまう3つ理由 発達障害の特性が二次障害であるうつや不安障害などの精神疾患につながる主な理由として、「生きづらさ」「自己肯定感の低下」「不安やストレス」などの要因が挙げられます。それぞれの要因を詳しく解説します。 特性による「生きづらさ」や「働きづらさ」 発達障害のある人は、その特性による困難や苦手によって社会で生きづらさを感じることがあります。 たとえば、筆者は「ミスをしたときには上長に報告をする」というビジネスマナーは知っていたものの、「お金など重要なものに関するミスは、早急に報告をする」「重要な問題にならなかったときであっても、ミスは必ず報告する」という考えに至らないことがありました。 あるとき、アルバイト先で、お客様のお金を届けるという依頼を受けた際に、お金を忘れて出かけたことがありました。すぐに同僚から連絡をもらって、最終的には事なきを得たため、そのことを上長に報告しませんでした。ミスを隠すつもりはなかったものの、信頼を失うことに繋がってしまい、解雇を言い渡されてしまいました。 ビジネスマナーなどの「暗黙の了解」の苦手はASD特性がある方に多いケースで、仕事上のコミュニケーションで失敗につながることがあります。 特性による失敗は、気を付けようとしてもなかなか回避できないことが多いです。その結果、「なぜ自分はこんなこともできないのか」と自己否定に陥ったり、他者から否定的な反応をされたりすることで精神的な不調を抱えたりするなど、社会での生きづらさを感じる要因になります。 過去の失敗体験の積み重ねによる自己肯定感の低下 先述した通り、発達障害のある方は特性による困難や苦手によって失敗体験をすることがあります。さらに、特性への自己対処や周囲への配慮(サポート)依頼をしない限り、その失敗を繰り返してしまいがちです。 仕事における失敗は一人ひとりさまざまで、たとえば、コミュニケーションがうまくいかない、ケアレスミスや遅刻が多いなどがあります。そういった失敗が積み重なると、自己肯定感が低下し、「自分はダメな人間だ」「誰からも理解されない」と感じることが増えます。 筆者は、全国に営業所のある企業の総務で社用車の管理をしていたことがあります。全国から社用車に関する相談事や報告への対処を一手に引き受けていました。前任者はその対応をそつなく臨機応変にこなしていましたが、私はそういった要領があまり良くありませんでした。そのため、営業所の担当の方とのコミュニケーションがうまくいかないことがあり、あまりに目に余ったときには、電話口で強い調子で詰められたり、口汚くののしられたりしました。 そういった経験が重なると、いやおうなしに自己肯定感が低下します。そういったこともまた、うつ病などの精神疾患のリスクを高める要因の1つとなります。 不安やストレスを感じやすい 発達障害のある方は、不安やストレスを感じやすいと言われています。予測できない状況への不安や、他者の気持ちを汲み取れないことによる孤立感が、強いストレスとなることがあります。また、ミスや遅刻、計画の混乱による自己批判や焦りは、不安を引き起こしがちです。 筆者は、物事が予定通りに進まないだけで、すぐに焦って混乱してしまいがちでした。あるとき、人事担当者との面談で、「毎日何かしら『事件』があるのが辛くて......」と話したところ、「え?事件って何のこと?」とポカンとされた経験があります。他人にとっては日常の出来事の範囲内なのに、自分にとってはストレス・不安の源である、ということがよくありました。 こうした不安やストレスが慢性的に続くと、心の負担が大きくなり、自己肯定感の低下や無力感につながることがあります。その結果、うつ病や不安障害などの二次障害につながってしまうのです。 「不安な気持ち」は、発達障害のある方にとっては、切っても切れないテーマです。その原因と対処法については、以下の記事に詳しく書いてあります。ぜひこちらもあわせてご覧ください。 大人になり社会に出てから、発達障害の特性による失敗や困難が増え、うつや不安障害などの二次障害になるケースは少なくありません。幼少期や学生時代には「性格」などとして見過ごされていた特性が、就職活動や職業生活の中で「困りごと」として表出されることがあるためです。 最初は、仕事や対人関係の困難による不安感やうつのような症状を感じて通院する。しかし、実はその奥を探ってみると発達障害が判明する。そんな経緯で、これまでの生きづらさや困難の背景に発達障害があることを理解するようになる方も多いようです。 発達障害の特性との付き合い方について 自分の特性を知って工夫する 発達障害の特性は、予測できない状況に強い不安を感じたり、抜け漏れせず段取りよく仕事を進めるのが苦手で、遅延やミスを繰り返したりなど、一人ひとり異なります。そのため、まずはどのような場面で困難を感じるのかを把握し、それに合う自分なりの工夫をすることが大切です。 たとえば、筆者は、段取りよく仕事を進めるのが難しいときは、目の前の一手を明確にして、それを終わらせることだけ考えるようにしています。 対策:まずは最初にすることだけを書き出す 【1】まずは最初の手順「だけ」書き出す間違っていてもよし。まずは自分なりに思いつく、できるだけ簡単に、すぐできそうな「最初の一歩」となる作業を書き出す 【2】とにかく実行してみる自分なりに書き出した作業を、とにかく一つだけ実行してみる 【3】「一歩」をくり返すうまく行ったら次の一歩も書き出してみる。以後、「書き出し」→「実行」をくり返す どこから手をつければよいかわかりにくい仕事を目の前に、ただただ思考停止してしまう。また、そんなときほど一気に仕事を仕上げたくなり、結局何もできずに時間だけが経ってしまいます。 先走らず、まずは足元を見ましょう。最初の一歩ぐらいは想像できるはずです。そして、その次、その次と、一歩ずつ歩んでいけば、仕事の終わりが近づいてくるはずです。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 さらに、抜け漏れが発生しがちな傾向については、このような対策をとっています。 対策:すぐに着手しようとする気持ちをいったん抑える 【まずはやるべき仕事を確認しよう】 抜けもれしてしまう人の特徴として「すぐに結果が出るものに飛びついてしまう」傾向があります。 言われたことをメモしたり、書き出したりせず、すぐに仕事に着手すれば、「より早く仕事が進む」という結果が得られるかもしれません。しかし、そうすると抜けもれしやすい傾向のある人は、「自分が抱えている仕事の把握」がおろそかになってしまい、はじめに指示されていた仕事を新たな指示によって忘れてしまうという事態につながることも。結局仕事の抜けもれにつながってしまうのです。 手っ取り早く終わらせてしまいたい気持ちをまずは我慢して、いまやるべき仕事を書き出して確認してみましょう。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 もちろん、上記は筆者の一例に過ぎず、人によっては対策がなかなか打てない特性もあるかもしれません。ただ、困りごとの原因となる特性・特徴と向き合い、それをカバーすることができれば、結果的に障害と共存して毎日を送ることができるようになります。 障害の自己受容をし、他者にヘルプを頼む 発達障害の特性と向き合い「自己を受容する」第一歩は、できないことや苦手なことがあっても、それは努力不足ではないと考えるところから始まります。「完璧にこなさなければならない」というプレッシャーから解放されることで、心が少し楽になります。 それが進むと、周囲に助けを求めるハードルも下がります。周囲との協力は、特性を補いながら自分らしく生きる大きな助けとなります。 たとえば、筆者はこのようにして他者へ協力を求めやすくする工夫をしています。 対策:仕事の「ボール持ち」を設定する 【1】作業の手順を書き出す現在抱えている仕事の作業手順を書き出して一覧にする 【2】「自分のボール持ち」を明確にするほかの人の対応待ちの作業(相手のボール持ち)と、自分がボールを持っている(自分がやらなければいけない)作業とを区別する 仕事がうんざりするほど多くても、そのなかで自分が進められる仕事というのは、実はその一部であることが少なくありません。「自分のボール持ち」を書き込んで、「本当に自分が抱えるべき仕事」の量がわかれば、より前向きに仕事に取り組めるようになります。 もし、ほとんどの手順が「自分のボール持ち」だったら、それは自分が抱え込み過ぎる傾向があるということです。仕事の進め方を同僚や上司によく相談してください。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 また、その上で、一人で抱え込みすぎないよう、自己開示するためのフレーズを決めています。 対策:魔法のフレーズ「困ッテイルンデス」を唱える 【仕事での悩みを開示して、ミスのショックをやわらげよう】 仕事では、できるだけ相談して「共犯者」をつくりましょう。一緒に仕事をする人であればだれでもよいです。相談するのが難しければ 、「(〇〇の)仕事で困っているんですが」という「話し出しの魔法のフレーズ」を唱えましょう。 相談することができれば、その仕事は自分とその相談相手が一緒に持つ「荷物」のようなものになり、荷物の重さを二分(にぶん)することができます。そして、ミスがあったとしてもそのショックを「はんぶんこ」することができます。そのために、自分の悩みを開示してみるのがおすすめです。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 ストレスや不安との付き合い方を学ぶ 発達障害の特性を持つ人にとって、日常生活や仕事の中でストレスや不安を感じる場面は多いものです。ストレスと向き合い、上手に付き合う方法を身につけることはとても大切です。 対策:思い浮かぶたくさんのことを受け流す 【1】楽な姿勢で座る【2】意識的にゆっくり呼吸をする【3】目をつぶり思い浮かぶことを考える【4】そのまま3分間 【「全部やらなきゃ」脱却のカギ「マインドフルネス」】 やらなければいけないことが多いと、「全部いっぺんにやらないといけない!」と焦って、結局すべて中途半端になってしまいがちではないでしょうか。まずは、焦りをなくしていったん落ち着くことが大切です。ぜひ、呼吸法など、自分に合った「マインドフルネス」を試してみてください。 頭に思い浮かぶ雑念を無理に否定せず、ただ「ああ、こういうことがあるなぁ」「自分はこれに対して不安を感じているんだな」とありのままの「いま」を認めてそれに集中することで、リラックスすることができ、「焦り」からも解放されるかもしれません。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 対策:自分を大きく肯定することばをわざとつけて話す 【「おれ/私ってすごいから~」と言ってから、本題に】 自己肯定感をキープしたりあげたりするために、「肯定的なことを口に出す」のは大切だと感じています。私はよく妻に、自分を肯定することばを最初に言って話し始めています。「おれってすごいから、今日締め切りの仕事を終わらせたよ」「おれってすごいから、階段だけを使って帰ってきたよ」という具合です。大してすごいことでなくてもよく、むしろ無理矢理な感じがあったほうが、より効果的です。 信頼できる家族や友人などに、ぜひ言ってみてください。くり返すと、ちょっとずつですが自信が湧いてくる気がします。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 ストレスや不安を完全に取り除くことは難しくても、日常のちょっとした工夫から、ストレスとうまく付き合う術を身につけることで、日々を少しでも楽に過ごせるようになります。この方法はすべての人に当てはまるわけではありませんが、できることから少しずつ進めてみましょう。 特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために 特性や性格によって、一人ひとりに合う対策法は異なります。また、性格や働き方の好みによっても、どのような工夫が効果を発揮するかは変わってきます。そのため、自分自身に合った方法を見つけることが重要です。 その参考として、筆者の執筆した書籍『「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方』は、なんらかの参考になることと思います。興味がありましたら、ぜひお手に取ってみてください。 「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた 「生きづらい」がラクになる メンタルを守る仕事術&暮らし方 ただ、就労には、本書でご紹介する仕事術などとあわせて、その他のトレーニングも必要です。独学でそのすべてを習得するのは、膨大な手間と時間がかかります。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害と金銭管理】実際に効果があった対策を紹介

金銭管理が苦手な発達障害のある方に向け、ADHD当事者が実際に効果のあった対策を紹介します。特性別の困りごとと支援制度についても解説。

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「衝動買いが止められない」「お金がいつの間にか残り少なくなっている」「貯金がどうしてもできない」 発達障害のある方は、金銭管理に関する苦労がついてまわるといっても過言ではありません。筆者も、期限まで払うべきお金を延滞させてしまったり、計画的なお金の使い方ができず月末に翌月分の前借りをしなければならなくなったりと、お金の管理にはだいぶ手を焼いてきました。 今回の記事は、特性別のよくある困りごと、それらに対する対策、さらには相談先や支援制度の紹介をいたします。まずは自分で困りごとを把握して対策を立てることが大事です。しかし、自分だけでどうにかできない可能性もあり、相談先や支援制度も知っておくこともまた大切なこととなります。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、「先天的な脳機能の障害」です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 【特性別】お金の困りごとあるある 本記事では、ASDとADHDにフォーカスして、お金の困りごとを列挙していきます。 ASD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある将来の見通しを立てることへの苦手感計画をもってお金を使うことや、クレジットカードの引き落としなどの管理が難しいこだわりの強さ興味関心があることへの執着から、強い購買意欲を抑えられなくなる他者の気持ちが汲み取りづらい相手の言うことの真偽を見抜くことが苦手で騙されやすく詐欺被害にあうことがある ADHD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある衝動的に行動してしまう「ほしい」という感情や行動の抑制ができず衝動買いしてしまう継続することへの苦手感飽きっぽい・集中力が続かない等の理由で家計簿をつけ続けられない ASDやADHDの特性をお持ちの方は、多かれ少なかれ当てはまるところがあったのではないでしょうか。このような特性由来の「困りごと」を把握することは、対策をとるうえで大事になってきます。まずは、上記の「困りごと」のうち、自分がどれによく当てはまるかを確認してみてください。 実際に効果のあった対策 当てはまる「困りごと」が分かったら、その対策を考えることになります。筆者の経験上、まず失敗するパターンは「意思の力で乗り越えようとする」です。「お金を使うのを我慢する」「頑張って家計簿をつける」といった心がけは立派ですが、うまくいく可能性が高いとは言えません。 筆者は、社会人になってからも親元で生活している期間が長かったこともあり、金銭管理についてもたびたび親から注意を受けていました。その困りごとは、まさに上記で挙げたようなものです。しかし、現在では、フリーランスで生活しているくらい、なんとか破綻なくいけるようになりました。その経験をもとに、実際に効果のあった「お金に関する困りごと」対策を5つほど挙げてみます。 1.金銭管理アプリを使う 筆者は、「毎日の予算」という家計簿アプリを使っています。このアプリを使うようになって、劇的にお金の管理がうまくいくようになりました。 以前は、仮に月3万円の予算があったとして、1,000円使ったら残りは29,000円です。翌日に500円使ったら残りは28,500円です。当たり前の話ですが、ここで大事なのは「把握する残額は、減る一方」になってしまうということです。 それに対してこのアプリは、表示される金額が減らないのです。むしろ、減らないどころか増えていきさえするのです。月3万円であれば、1か月30日だったとして、日割で一日当たりに使える金額を計算して、それを表示してくれます。ある月の1日(ついたち)には、「1,000円」と表示されます。使わなければその1,000円が繰り越され、翌日2日には「2,000円」と表示されます。そこで500円使ったとしたら、残額1,500円が繰り越され、翌日3日の分がプラスされて「2,500円」と表示されます。つまり、「把握する残額は、使わなければ使わないほど増える」のです。 「使わなければ現状維持、使ったらその分だけ残額が減っていく」のではなく、「使わなければ表示される金額が増えていく」という仕組みは非常にうまいと思いました。ただただ減っていく金額のプレッシャーに耐え続けるのではなく、「節約した(使わなかった)」→「表示金額が上がる」という、ある種の精神的な報酬を得られるのです。 特に筆者が診断を受けたADHDは「報酬系が弱い」とされ、何かしらの見返りや満足がないとなかなかその行動を継続できない特性を持ちます。家計簿を継続してつけるモチベーションとして、この仕組みはとても有効だと、身をもって実感しています。 2.絶対使いたい用途を1つだけ決める 「衝動買い」は、ASDでもADHDでも共通する悩みになることが多いと思います。繰り返しになりますが、ただ単に「衝動買いを減らそう!」と心に決めても、なかなかうまくいくとは限りません。そこでお勧めなのが、「これには絶対使いたい」という用途を1つだけ決めて、それにはお金を使うのです。 「それではお金を使う方に振り切ってしまうのではないか」とお思いかもしれませんが、逆に「この用途にこれだけ使いたい」と強く思うことで他の用途に使わないようにもっていくのです。「これ」と決めた1つの用途と、それ以外とで濃淡の差があればあるほど、この対策は効果的です。そういう意味では、特定のことに関心を持ちがちなASDの特性のある方にはうってつけかもしれません。 3.衝動買い用クレジットカードを作る 家で気軽にショッピングができるネット通販は便利ですが、衝動買いをしてしまいがちな人にとっては、諸刃の剣です。とはいえ、「クレジットカードを使わない」「ネットで買い物をしない」と決めたところで、なかなかそれをキープするのは難しいものです。 そこで、「貯めておく用の口座とクレジットカード」と「衝動買い用の口座とクレジットカード」の2つを用意しておくのをお勧めします。そして、「貯めておく用の口座のクレジットカード」は信頼できる人に預け、できれば定期的に「衝動買いしても良い金額」を衝動買い用の口座に入金してもらいます。 預けることができなくても、口座を分けて「衝動買い口座へお金を入金する」という行動が必要になるだけでもある程度お金を使いすぎるハードルを高くすることができます。そうすることで、ネット通販で必要以上にお金を使い込んでしまうといった展開を避けやすくなります。 4.FP(フィナンシャルプランナー)に相談する FPとは、資産状況、収入・支出、家族構成などから将来的な資金計画についてのアドバイスをしてくれる職種です。「収入に応じた月ごとの支出の適切な額」や「今後の将来設計に応じた必要年収」といった計算をしてくれるので、ふわっとした目標や目的レベルではなく、年単位、月単位での身近な金銭管理についてもアドバイスをしてくれます。 FPさんも色々といらっしゃいますが、筆者は「発達障害専門FP」という方に相談しています。ご本人も発達障害当事者ということもあり、上記のような特性を加味して、より適切な資産管理、資産形成、お金との向き合い方を親身になって教えてくれます。 お金に関することを自分だけでどうにかするのも大事ですが、その一方で第三者の、できれば専門的な知識と経験を持つFPさんの意見も取り入れて自分の生活に生かすのも、とても有用です。 5.消費者ホットラインに相談する 実際にお金に関する困りごとが発生したときは、「発達障害情報・支援センター」や「独立行政法人国民生活センター」のホームページを通じて、または直接に、消費者庁の「消費者ホットライン」へ相談することができます。相談は、電話だけでなく、各地域の消費生活センターや消費生活相談窓口で対面で相談することもできます。 代表的な支援制度 最後に、お金に関する発達障害者への支援制度をいくつかご紹介します。これらを知り積極的に使うことで、より快適な生活を送ることが可能になります。 1.自立支援医療制度 所得に応じて、心療内科などの通院費や薬代などの1か月あたりの負担上限額が設定されます。例えば、生活保護受給世帯は負担額が無しになり、年収約290~400万円未満の世帯は1割負担(例外あり)になります。 参考資料:自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み(厚生労働省) 2.医療費の減額 自立支援医療制度の他にも、都道府県ごとに障害者を対象とした医療費についての助成制度があります。 参考資料:重度心身障害者医療費助成制度一覧(一般社団法人日本ALS協会) 3.障害年金 障害によって仕事や生活などが制限されている方は、公的な年金を受給できます。受給できる額は、その障害の程度によります。 障害年金は、「障害基礎年金」「障害厚生年金」に大きく分けられます。障害基礎年金は、障害の状態や納付実績についてクリアしていれば受給できます。さらに、障害に関する初診日が厚生年金保険の被保険者である間であれば、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受給することができます。 参考資料:障害年金(日本年金機構) 4.税金の控除 納税者本人もしくはその家族に障害がある場合、障害者控除を受けることができます。障害者控除は、主に所得税、住民税、相続税などに適用されます。控除される金額は、障害の程度などによります。 参考資料:障害者に関する税制上の特別措置一覧(内閣府) 5.公共サービスの割引 公共交通機関では、一部(都営交通など)で、精神障害者の利用金額割引制度があります。なお、JRの運賃は、現在、身体障害者と知的障害者が障害者割引の対象ですが、2025年4月から精神障害者も一定条件下で対象となります。また、航空についても、大手2社(ANA・JAL)をはじめとする航空各社が、国内線に限り精神障害者への割引を実施しています。 参考資料:精神障害者割引制度の導入について(JRグループ)/国内定期航空において障害者割引運賃を設定している事業者(国土交通省) 自分に合う「金銭管理」方法を! 一言に「発達障害」と言っても、特性や性格によって一人ひとり合う対策法は異なります。「ADHDだからこのサービス」「ASDだからこの助成制度」といった簡単な話ではありません。 まずは困りごとからその対策を考えていくことが大事です。その際、自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。就労移行支援事業所ディーキャリアは、利用者様一人ひとりに合う金銭管理方法を見つけるサポートも行なっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害の治療と薬】実際に服薬してみてどうだった?

発達障害の治療法には服薬と心理療法があります。服薬の体験談と効果についてインタビューしました。薬に頼らず自己対処をすることも大切です。

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「発達障害の特性を治療でどうにかしたい」 「服薬をすることでもっとスムーズに毎日を送りたい」 発達障害と診断を受けた場合、服薬や心理療法を勧められることがあると思います。そこで、発達障害の治療法にはどんなものがあるのか、そして治療薬はどのようなものがあり、どんな効果があるのかをお伝えします。特に治療薬については、体験談を織り交ぜながらご説明していきたいと思います。 皆さんが少しでも過ごしやすい社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、先天的な脳機能の障害です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 発達障害の治療について 一般に、医師から病気であると診断された場合、治療を受けたり薬を処方されたりします。発達障害も同じです。成育歴や日々の行動の聞き取りや、考え方や知能等の心理検査の結果をもとに診断され、治療を受けます。発達障害の治療には、大きく分けて「心理社会的治療」と「薬物療法」の2つがあります。 心理社会的治療 心理社会的治療は、「発達障害は先天的なものであり、障害そのものを『治癒』することは困難である」という見地に立ちます。そのため、本人が自らの特性と向き合い、社会に適応していくためのスキルを身に付けることが目的となります。 心理社会的治療の代表格といえば「認知行動療法」です。自身の「認知(ものごとのとらえ方)」を観察することで、そこから生まれる「感情」「行動」を変化させて生きづらさやストレスを軽くしていく治療法です。 認知行動療法については、下記記事を合わせてお読みください。 その他にも報告・連絡・相談のロールプレイなどをする「ソーシャルスキルトレーニング」、特性による困りごとが発生している状況において、そもそも本人の周囲を調整して困りごとが発生しないようにする「環境調整」というものが挙げられます。 薬物療法 心理社会的治療に対して、直接身体に作用する薬物を用いて困りごとに対処していくのが「薬物療法」です。ただし、現在はADHDの治療薬はあるものの、ASDやSLDへの治療薬はありません。また、症状を根治するものではなく、一時的に症状を抑えるものとなります。 とはいえ、服用した経験のある人からは、「頭の中がスッキリ静まり返ってびっくりした」「集中力が劇的に上がった」といった感想があがることがあり、一定の効果が得られるところは見逃せません。ADHDの治療薬として承認を受けている薬は以下の4つです。 名称内容コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩徐放錠)・即効性あり・約12時間程度で効果が消失・ADHDの子どもの7割に効果・2013年に18歳以上の成人投与承認ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)・効果が現れるまで約8週間ほど・1日2回服用で24時間効果が継続・2012年に18歳以上の成人投与承認インチュニブ(グアンファシン塩酸塩徐放性製剤)・2017年3月に承認・特に多動性・衝動性について新たな治療の選択肢となることが期待されるビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル塩酸)・2019年3月に「小児期におけるADHD」の適応において承認・ADHDの診断治療に精通した医師に限り、薬物依存にも対応できる医療機関薬局においてのみ取り扱い可・他のADHD治療薬が効果不十分のときのみに使用 なお、ASDやSLDの特性を持つ人に対しては何も薬物療法をおこなわないかというとそうではありません。例えば二次障害として不安や不眠などの症状が出ている場合には精神安定剤などの治療薬を用いたりしています。 二次障害については、下記記事を合わせてお読みください。 薬物療法の事例 ここでは、実際にお二人の方の薬物療法の経験談をご紹介します。 ストラテラを服用しているAさん ●診断名:ADHD ①ご自身が感じる服薬のメリットデメリットについて教えてください。 メリットは「衝動性が抑えられること」です。服薬前は「これをやりたい」「これを言いたい」「これを食べたい」という思いつきを即行動に移してしまっていました。特に過食に関しては深刻で、成人してから食欲が抑えられず、食費と体重が上がり続け、自己効力感を著しく下げてしまっていました。 しかし、服薬をしたところ、食欲を感じても、実際に食べ物を購入して口に入れるかどうかをいったん待って考えられるようになりました。すると、食費も下がり適正体重をキープすることもでき、自己効力感も上がりました。そんな自分を好きになることができました。 デメリットは、「自分の持つ特性を『障害』と深刻に捉えてしまうこと」です。服薬をしているということは、「服薬をして抑えなければいけない障害がある」ということだと考えるようになりました。 ②服薬だけでは特性対策は難しいと感じたことはありますか。 服薬し始めた当時は「これで忘れ物もミスも全部なくなるかもしれない」と期待しましたが、なくなりませんでした。服薬は「忘れ物やミスの軽減」をもたらすものではなく、忘れ物やミスをしたときでも落ち着いて「次はこうしたらいいかもしれない」と考えられるきっかけに過ぎませんでした。 ただ、そのきっかけをもとに、対策を考えたりこれからの働き方や生き方を考えたりすることができるようになりました。最初は落ち込んだこともありましたが、結果的に医師に診断書を書いてもらって支援機関に頼ることもでき、そうして成し遂げてきた自分の足跡を振り返ると、前向きに考えるきっかけになったことは大事だったような気がします。 ③「服薬し忘れ」や「飲み忘れ対策」のエピソードがあれば教えてください。 ストラテラは服薬をしていないとき、私は「服薬していない」という感じがあり、自宅での飲み忘れに対しては気付いて服薬することができていました。しかし、外出先で飲み忘れに気付いたときは、手元に薬がないため困ることがありました。 対策としては、絶対にカバンに入れるポーチに1回分のストラテラを入れておいて、外出先でも服薬できるようにしています。ポーチは目立つように金色のものを使用しています。 過去にストラテラ、現在はコンサータを服用しているBさん ●診断名:ADHD、ASD ①ご自身が感じる服薬のメリットデメリットについて教えてください。 個人的には、服薬の効果があまり感じられていません。飲み忘れたとしてもほとんど何も変わらない、というのが正直な感想です。強いてメリットを言えば「お守り的に気休めになる」という程度です。ただ、飲み忘れたことで「薬を飲んでいないから、なんとなくいつもより仕事がはかどらないかもしれない...」と不安になることはあります。 デメリットとしては、「自分に合う薬を見つけるのに時間がかかる」ということです。ストラテラは低用量と高用量の2つを試したのですが、低用量の時は効果が感じられず、逆に高用量になってからは「眠気」「だるさ」という副作用がひどく、仕事に支障が出てしまいました。このことがはっきり分かってコンサータに切り替えるまで1年ほどかかってしまいました。 また、転院したいと思った際に障害になるかもしれない点もデメリットだと感じました。コンサータは登録を受けた患者が、登録を受けた医師や薬剤師から処方してもらわなければいけません。そのため、転院したいと思っても、その手続きが煩雑になるのではないかと思い、転院の足かせになるように思います。 ②服薬だけでは特性対策は難しいと感じたことはありますか。 ①で挙げたとおり、私にはほとんど効果が感じられないので「大いにYES」です。自立支援医療費制度のおかげで金銭的負担を抑えられるため、お守りとして飲み続けていますが、薬以外でなんとか対処するしかないと感じています。 対処法としては、以下2点を実行しています。 【自分の特性を理解する】 インターネットや発達障害関連の書籍、それと私がアルバイトさせてもらっていた就労移行支援事業所で自分の特性への理解を深めることができました。インターネットは玉石混交なので注意が必要ですが、およそ公的機関や大手就労移行支援事業所の発信する情報であれば信頼できると考えています。個人的には、就労移行支援事業所でのアルバイトがとても学びが大きかったです。 【自分に合った自己対処を見つける】 仕事の抜け漏れ防止のためのタスク管理/メモアプリや、スケジュール管理ができるリマインダー/カレンダーアプリなどを使ってきました。ただし、管理の時間がうまくとれず、忙しくなると面倒になって崩壊してしまいがちでした。でも、管理しなければ確実に崩壊してしまうのです。「どちらにせよ崩壊するなら、管理の時間を捻出する方向で頑張ろう」と考えると、ちょっと気持ちが楽になります。 また、自分で管理をしていくのと同時に、環境を調整することも大事だと考えています。ただ、これは本当に難しくて、「もっと努力すればできるのではないか」「対処法を駆使すればできるようになるのではないか」「今の業務に慣れたら、より上位の業務や役割に挑戦すべきではないか」など、ともすれば「自分を変える」方向にいきがちになってしまいます。挑戦と失敗を繰り返しながら少しずつ調整をしていくようなイメージが自分には合っているかなと思います。 また、眠気や集中力低下の予防としてカフェインサプリ「カフェロップ」をたまに飲んでいます。 ③「服薬し忘れ」や「飲み忘れ対策」のエピソードがあれば教えてください。 スマホのリマインダーアプリを使って飲み忘れ防止アラートを鳴らすようにしています。ただ、アラートが鳴っても「どうせ飲んでも変わらないしな…」と思ってスルーしてしまうことも多いです。 薬物療法と心理社会的治療の両軸が鍵! このように、薬物療法による効果には個人差があります。ただし、服薬によって状態が少しでも改善できるのであれば、やらない手はありません。医師の処方にしたがって服薬し、さらに心理社会的治療もやってみるというのがベストなのではないでしょうか。 特に、心理社会的治療の代表格である「認知行動療法」は、自己理解のための王道であると言っても過言ではありません。薬物療法とあわせてやってみることを推奨します。就労移行支援事業所ディーキャリアは、この「認知行動療法」に基づいたプログラムを提供しています。自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が解説】発達障害者のためのマルチタスク対処法

マルチタスクに苦手意識のあった発達障害当事者が、特性をカバーするために編み出した「タスク管理」テクニックを紹介します。

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「仕事が溜まってしまって、どれからやればいいか分からない」「複数の仕事を同時進行するのが難しい」 発達障害、特にASDやADHDのある人は、複数の仕事が目の前にある状態、いわゆる「マルチタスク」に苦手意識を持ちがちではないでしょうか。一方で、現代では、たくさんの仕事を効率よくこなすことが要求されがちです。 発達障害のADHDのある筆者は、自らの特性をカバーする目的で編み出した「タスク管理」をメインに、マルチタスクへの苦手感を大幅に払拭できました。その経験から「発達障害者はいかにマルチタスクに対処すべきか」についてお伝えしたいと思います。この記事が、特性による困りごとのある皆さまにとって「働きやすくなるためのヒント」になることを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 なぜ発達障害者はマルチタスクが苦手なのか まずは、発達障害者、特にASD/ADHDのある人がマルチタスクへ苦手感を持つ理由をご説明したいと思います。 ASDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ASDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の2つの傾向が大きく関わっています。 シングルフォーカス特性一度に注意を向けられる範囲が狭くなる。興味関心の幅が狭くなりがち。シングルレイヤー思考一度に一つの情報しか処理しにくい。複雑な状況の理解が難しく、明記されていないルールを自然と読み取ったり、物事の「裏」を察したり、といったことが苦手になる。優先順位がつけにくくなる。 マルチタスクな職場では、この2つの傾向があるとなかなか難しいです。 ADHDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ADHDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の傾向が大きく関わっています。 ワーキングメモリーの弱み脳の一時的な記憶の置き場であり、作業場でもあるワーキングメモリーの機能低下により、臨機応変な対応が難しくなったり、不注意が起こりやすくなったりする。聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい。複数の作業を同時に進めることが難しい。集中し続けることや、注意し続けることが苦手。複数のことに目を配れない。など。 特に「聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい」「複数の作業を同時に進めることが難しい」「複数のことに目を配れない」といった傾向は、常に複数の仕事を抱える状況だと、困りごとを生みやすくなります。 ※上に挙げた話の詳細は、大人の発達障害とはでご説明しています。ぜひ参考になさってください。 そんなASD/ADHDのある人は、「マルチタスクな職場」にどう対応していけば良いのでしょうか。 マルチタスクへの対処法 そもそも、マルチタスクを避けられればそれに越したことはありません。ASDやADHDの人によくみられがちな「反復作業が得意」「興味のあるものへの高い集中力」といった傾向を生かせる、単純作業のみ求められる仕事に就くことができれば、しっかりと自分のパフォーマンスが発揮できることでしょう。 ただ、仕事が複雑化している現代、マルチタスク対応が必須となる職場は少なくありません。マルチタスクが避けられない場合、どのように対処していくかが必要になります。 対処法の鉄則は、「諦める」「自分ができるような状況に持っていく」の2点です。 「マルチにこなそうとする」のを諦める まず、「パソコンが複数のアプリケーションを同時に処理するように複数の仕事を同時並行でこなす」のは、諦めましょう。目の前に複数のやるべき仕事が並んでいるマルチタスク状態において「マルチにタスクをこなす=同時並行に処理する」ことは原則的に無理なのです。 「自転車を運転しながら、今日の夕飯を考える」「請求書の束に印鑑を押し続けながら、上司と話す」といったことは同時並行でできるじゃないかとお思いかもしれません。それは自転車の運転や請求書への押印のどちらも、「何も考えずにできるようになった行動」だからできるのです。 職場でやる仕事は、ほとんどが「考えることが必要」な仕事ですので、やはりマルチタスクは諦めた方が良い、というのが筆者の考えです。 ところで、まるで一度に3つ4つの仕事を同時にこなしているような印象を受けるような、とんでもなく速いスピードで仕事をこなす人がいます。そういう人は、マルチタスクを可能とする特殊技能の持ち主なのでしょうか。実は違うのです。 ASD/ADHDでも対処可能なシングルタスクへ落とし込む 一度に3つ4つを同時にこなしているようなスピード感で仕事をしている人は、実は小さなシングルタスクへ分解して、そのシングルタスクを完了させてはまた別のシングルタスクへ、という風にタスク管理をして仕事を進めているのです。その結果、他の人からみると「ほぼ同時に複数の仕事タスクを終わらせている」ように見えるのです。 例えば、「カレー」「サラダ」「スープ」の3品の料理を作るとします。もちろん3品同時進行で作ることはできません。カレーの具材を切り、水と共に鍋にいれ煮ます。この時点でサラダ作りもスープ作りも着手していません。その後に初めてサラダ作りに着手し、キャベツを千切りにします。千切りが終わったら、鍋にカレールウを入れます。次に、スープの素をカップにあけます。 このように、3品の作成は同時に進行していないことがお分かりだと思います。最終的には「ほぼ」同時に食卓にカレーとサラダとスープが並びますが、その過程はそれぞれの料理を完成させる細かい手順を1つずつ終わらせていった結果にすぎないのです。 仕事も同じです。仕事タスクがA、B、Cと3つあり、それぞれに3つの手順に分解できるとします。最初にA-1を終わらせ、次にB-1をやり、それが終わったらA-2を完了させ、次にC-1とC-2を一気にやり、B-2を終わらせて、A-3、B-3、C-3と順々に完了させていく。そんな風に「あたかもマルチタスク風に」対処するのです。 複数ある仕事を目の前にすると、つい全部いっぺんに終わらせたくなりがちです。しかし、本当にマルチタスクでもスピーディーにこなせる人は、マルチタスク全部を同時に終わらせるという幻想を捨て、シングルタスクへ分解して1つ1つやるしかないと思えた人です。 前述したASDの傾向の「シングルフォーカス」「シングルレイヤー」は、まさにこの進め方にピッタリだと言えるでしょう。また、ADHDの「複数の作業を同時に進めることが難しい」という傾向も、まさにこの進め方で対処できるものです。 マルチタスクをする上で気を付けること ご説明したマルチタスク対処法をやっていくに際して、以下2点はぜひ気を付けたいところです。 スケジュールを意識する そもそも「時間通りに物事を進める」のは、ASD/ADHD共に苦手です。スケジュールを意識して業務タスクを進めるよう気を付けておくに越したことはありません。マルチタスク環境であればなおさら、それぞれのタスクについてスケジュールを意識しなければなりません。 ASDのある人にとっては、先に挙げた「シングルフォーカス」がネックになりがちです。シングルタスクへ分解した結果、いわゆる「過集中」状態になってしまい、今自分が取り組んでいるタスク以外のことに気がいかなくなり1つのことに時間をかけがちです。そんなときは「これから30分やろう」と決めてタイマーをかけておくなどの対策があります。 また、ADHDの「ワーキングメモリ―の弱み」により、せっかく小分けにしたシングルタスクを実行するのを忘れてしまうことがあります。「いつやるか」をリマインダーを設定して確実にしておくことも大事になってきます。筆者は、ADHD傾向が強いため、将来の予定はリマインダーアプリを活用しています。「忘れない」のではなく、「忘れても支障ない」ようにしておくことが大切です。 適宜休憩を取る 当然ながら、集中してタスクを実行すると疲れます。疲労していると、より特性が強く出る場合があります。そうならないように、タイミングを見ては休憩を取ることもまた大事です。 しかし、自分自身は疲れを認識していなくても、実は心身が疲れていることがあります。筆者も、疲れを感じずにずっとタスクに没頭してしまい、終わって2~3時間後にドーンと大きな疲労感に襲われてしまうことがよくあります。そんなときは、特性がいつもより強く出て自分が使いものにならなくなったり、ひどい時にはタスクを実行するだけの元気がなくなってしまったりします。 特にマルチタスク状態で仕事をこなすような環境では、ただでさえ苦手な状況なうえに、次から次へとやることがあるため、休憩を取ることがおざなりになりがちです。就労は50メートルを全力で走ったら終わりなのではなく、長く続くマラソンのようなものです。継続して安定的に働けるように、体力にまだ余裕があるうちに適宜休憩を取るべき、と自戒を込めて筆者は常に意識しています。 前述したASDの傾向の「シングルフォーカス」「シングルレイヤー」は、まさにこの進め方にピッタリだと言えるでしょう。また、ADHDの「複数の作業を同時に進めることが難しい」という傾向も、まさにこの進め方で対処できるものです。 それでも困難を感じるときは ご紹介した「マルチタスクへの対処法」が難しいときは、合理的配慮を求めることになります。 合理的配慮とは 合理的配慮とは、障害のある人もない人も平等に社会生活を送れるように、障害特性や困りごとに応じておこなわれる対応のことです。 合理的配慮については、合理的配慮とは?基礎知識をまとめました。で詳細にご説明しています。よろしければご覧ください。 合理的配慮を受けるためには、下記①~③の要件が揃っている必要があります。 ① 障害が原因となる困難さ(障壁)であること② 障害者本人が、自己対処(セルフケア)を行おこなっても、対処しきれないものであること③ 企業等の側にとっても、重すぎる負担でなく、提供可能な範囲のものであること 要件それぞれの詳しい解説については、「合理的配慮」申請マニュアル 流れとポイントを紹介にあります。また、合理的配慮の具体的な事例に関しては、発達障害のある方の合理的配慮事例を見ていただきたいと思います。 要件②の「自己対処」が、これまでお伝えした「マルチタスクへの対処法」です。それが難しいときは、要件①と③が揃っていれば「合理的配慮」として企業等の側に対応を求めることが可能になります。 国もマルチタスク対応への配慮を念頭に置いている 合理的配慮として企業側が「マルチタスクへの対処法」をおこなうのであれば、上司がマルチタスクをシングルタスク(手順)へ分かりやすく分解し1つずつ指示出しする、といった形になります。 実は、国もそういった形での合理的配慮を想定しているのです。厚生労働省が公開している「合理的配慮指針」の末尾別表にある合理的配慮事例にこのような内容があります。 「業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと」(厚生労働省|「合理的配慮指針」別表より。太字は筆者による) それほど、マルチタスクへの対処は、取り組むべき課題だと広く認識されているのでしょう。「そのくらい自分でどうにかしなければいけない」と思う必要はありません。 自己対処や合理的配慮申請を専門家に頼ろう これまで、自己対処としての「マルチタスクへの対処法」を中心に、それが難しいときの合理的配慮申請についても書きました。これらのことは、自分一人でおこなうことも可能ですが、自分に合った自己対処の方法を見つけたり適切な合理的配慮の申請は、自分一人でおこなうことはおそらく難しい、あるいは膨大な時間や手間がかかってしまうでしょう。 そんなときは、自分一人で悩んだり、余計に手間をかけてしまうよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者の経験談】「転院」するときに考えておくべきこと

発達障害のある方が心身健康に働くためには「自分に合う医師の選択」が重要です。実体験をもとに医師選びのポイントを紹介します。

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「発達障害で通院しているが、医師と相性が合わない」「転院したいが、どのように考えればいいのか分からない」 発達障害のある方にとって、医師の存在はとても大きいと言えます。そもそも、発達障害の診断書を出せるのは医師だけです。しかも、診断書の記載内容は病名のみならず、病歴や治療の経過、生活能力の状態などにまで及びます。自然と医師の関わりは大きくなるのです。 また、診断書を出してもらって終わりというわけにはいかず、その後も心身の変化によって服薬を調整したり、日々の生活についてアドバイスを受けたりします。したがって、医師の選択は今後の生活を大きく左右すると言っても過言ではありません。 一方で、「医師をどう選んだら良いか」の大きな指標が示されているわけではありません。医師の「食べログ」のようなものはないのです。口コミがネット上にある場合もありますが、それがどの程度信頼できるかは分かりません。 発達障害当事者であり転院の経験がある筆者として、その経緯をお伝えしつつ、医師を選ぶ基準となる考え方などをご説明します。皆さんが少しでも社会生活を安心して送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 筆者の体験談 筆者は、最初の病院を含めて合計3院、2回の転院をしています。それぞれ経緯と所感を書いてみます。 1カ所目:都内某診療所 【経緯】 仕事がうまくいかなかった筆者は、ネットで調べてみて「自分は発達障害ではないか」と考えるようになり、「東京都多摩総合精神保健福祉センター」に相談しました。面談の後、より詳しく調べてみようということになり「東京都発達障害者支援センター(TOSCA)」を紹介され再度面談をしたところ、都内の某診療所を紹介されました。 【所感】 筆者は、自分の「忘れっぽさ」「段取りの悪さ」といった特徴を自覚しており、心の底では「自分は発達障害であろう」と考えていました。結果、その通りの診断をしてもらうことができ、その意味では自分の意図に沿う対応をしてくれたと言えます。 また、当時は障害者が社会生活を送るのに必要なサポートを提供してくれる、いわゆる「社会資源」についての知識が筆者にはなかったのですが、診療所に常駐していたソーシャルワーカーさんに「障害者雇用」という働き方を教えてもらうことができ、その後の就職への足がかりを得ることができました。この点においても、筆者にとって良い選択だったと言えます。 ただ、当時東京都の多摩地方に住んでいた筆者は、23区内にあるこの診療所は自宅から往復3時間近くかかり、通院に苦痛を感じていました。 また、医師とのやりとりに違和感を覚えたことがありました。ある診察時に「私は本当に発達障害なんでしょうか?」と質問したときに、少し強い調子で「だって、それでうまくいっていないんでしょう?!」と少々強く言われたのです。今考えれば、「仕事がうまくいかず社会生活に支障をきたす」という時点で自明なのですが、強く言われるほど変な質問をしていないのではないかと思いました。 【転院のきっかけ】 1社目の会社に就職後、自宅から遠かったこともあり、また「通い続けなくても自分は大丈夫」と思って次第にこの診療所から足が遠のいていきました。 2カ所目:都内某医院 【経緯】 1社目、障害者雇用で就職して一安心していましたが、人員整理や親会社との合併の影響でだんだんと業務負荷が高くなっていき、やがて仕事がうまくいかなくなり休職に至ります。休職するためには医師の診断書が必要なので、自宅の近場で手っ取り早く休職できる診断書を書いてくれる病院を探しました。その結果、自宅から自転車で10分程度のところにあるこの医院を見つけ、通院し始めました。 【所感】 経緯でも書いたとおり、「休職できる診断書をもらう」のが目的でした。「このまま働き続けることは難しい」という状況に陥ったときは、一刻も早く休養を取る必要があります。休職へとスムーズに移行するためには、医師の協力が不可欠となります。そういうときは、休職のための診断書を作成してくれる「装置」として「医師を使う」のも大いにありだと考えています。 この医院の医師は、ある意味機械的に、すぐに休職に必要な診断書を書いてくれました。このときの筆者にとってはとてもニーズにマッチした医院だったと考えています。 【転院のきっかけ】 通所していくうちに、最初はメリットとして感じた「機械的さ」に物足りなさを感じたことと、休職期間が終了してそのまま退職し、2社目に転職するバタバタから通院しなくなりました。そして、2社目でも仕事がうまくいかず休職を考えたときに、別の病院を探すようになります。 3カ所目:都内某クリニック(現在) 【経緯】 2社目でまた仕事がうまくいかず休職を考えたときに、ちょうど知り合いが行っているクリニックが良いと話を聞きました。そこで行ってみたところとても相性が良く、現在でも継続して通っています。 【所感】 2カ所目の医院で感じた物足りなさは、当初それが何なのかがはっきりとは分かっていませんでした。しかし、この3ヶ所目のクリニックの医師と会った瞬間に分かりました。ただ単に薬を出してもらうだけではなく(それも大事ですが)、自分の話をしっかり聞いてくれて、より生活や仕事を考慮して踏み込んだアドバイスをしてくれることを筆者は欲していたのです。また、とにかく声が明るく、ハキハキとしていつでも笑顔で話してくれることも、筆者としても安心感がありました。 このクリニックに通い続けて数年経ちますが、結果的に服薬内容は変わっておらず、月1回の通院の際には、今の生活や仕事の話をして、「頑張ってね」と言われて診察は終わり、ということもあります。「それは本当に良い医者なのか?」というような話ですが、それでも危ない傾向があるときはちゃんと言ってくれる、筆者にとっては良いバロメーターとして頼れる存在になっています。 転院する上で大事なこと 転院するのに大事なことは2つあると筆者は考えています。 まずは基本「家に近い」 どんなに名医でも、自宅から5時間かけて行くような場所にあったら、それは現実的な選択肢からは外れることでしょう。実際、筆者も2ヶ所目の医院を選ぶときには「自宅から近い」という基準で選びました。3ヶ所目も通院に比較的ストレスがない範囲内におさまっています。まずは、自宅から近い、少なくとも自宅から通うことが現実的な距離・時間であることが大切だと考えます。 意外に大事なのが「相性」 さらにもう一つ大事にしたいことが「相性」です。これは、人によってどんな医師が良いのかはケースバイケースですが、まず1回会ってみて「なんか違うな」と思ったら行かないのをお勧めします。 実は、3ヶ所目のクリニックに行く前に、もう1カ所自宅近くの医院へお試しで行ってみたのです。ただ、こちらはなんとなくウマが合わなさそうという印象で、1回で行くのを止めました。その結果、3ヶ所目のクリニックに行くことになり、「この医師とは合いそう」と思えて現在も通院しています。 障害年金や障害者手帳、後述する就労移行支援事業所に通うのに必要な受給者証の申請には「医師の診断書」が必要になります。これらの申請が通るか通らないかは、診断書に医師がどう書くかによります。 自身の障害や状況について、その困りごとを過不足なく適切に書いてもらわないと、障害特性によって生活面や仕事面で支障をきたしていたとしても、「診断書からはその必要はない」と判断されて公的なサポートが受けられなくなる可能性があるのです。 そこで、自分の現況や困りごとをしっかり聞いてくれる姿勢を持つ、自分が話しやすいと感じる関係性、つまり「相性」が大事になってくるのです。 把握しておきたい転院のデメリット 今までは転院ありきの話をしてきましたが、ここで転院のデメリットについてお伝えしたいと思います。 転院に際しては、今までお世話になっていた先生だからと医師に黙って転院するケースがあり得るのですが、転院元と転院先の病院で、自分の診療に関する記録が共有されないというデメリットがあります。 筆者の記憶では、1ヶ所目の診療所から2ヶ所目の医院には、紹介状などである程度の情報共有がなされていたと思います。ただ、2ヶ所目の医院から3ヶ所目のクリニックには、紹介状なしに黙って転院したため、症状や服薬状況などを自分で一から説明する必要がありました。 紹介状がないと、自分がこの記録の代わりに全部伝えなければなりません。この手間はかなり大きいものです。できれば、きちんと転院前の病院に転院する事情を説明して、紹介状を書いてもらうことをお勧めします。 また、筆者が転院で苦労したこととして、最初に発達障害の診断を受けた際に、その診断の根拠となった心理検査の結果の提出を求められたことでした。 筆者は発達障害の傾向のせいか物の整理整頓が非常に苦手です。心理検査の結果の書類を出してと言われて、「……あったはずだけど、どこにしまったのか」と冷や汗をかいたのを覚えています。奇跡的に過去の書類の中から見つけることができましたが、これでつまづく方もいらっしゃるのではないでしょうか。 ただ、転院を考えるに至ったときは、「医師との相性が合わない」「ちゃんと診てくれない」といったそれなりの理由があるときだったと思います。通院や治療が大きなストレス源になっていたり、適切なサポートが得られない場合は、やはり転院が解決の手段になります。 働く上での医師との関わり ここでは、より「働く」ということに焦点をあててお伝えしたいと思います。 医師は大事な伴走者 発達障害のある私たちにとって、心身ともに健康に働くために医療的なサポートを受けることはとても重要です。筆者は最近、「仕事の間引き」を医師から提案されました。 ADHDの特性持ちである筆者は、興味の偏りという傾向があります。興味のないものには徹底的に見向きもしないが、興味のあるものに関しては楽しいのでとことんやってしまうのです。 筆者はフリーランスで働いていますが、自分の時間が会社員と比べて自由に使えることが多いので、仕事に力を入れようとすると自然と「ひとりブラック職場」になりがちです。筆者もその例に漏れず、むしろ「仕事をいただけている!」と嬉しくてスケジュールを詰め込みがちになってしまいました。 定期的に通院している医師が「仕事の間引き」を言ってきたのは、そんな筆者の様子を見てのことでしょう。医師は多くの精神疾患のある方の行動パターンを見てきています。「こういうことを言っている/こういう行動をしていると、次はきっとこうなる」という傾向が分かっていることが多いのです。 実際、筆者は「仕事が楽しいと言って軌道に乗ってきている人は、その後調子を崩しやすい」と言われました。多くの患者を診てきたその知見は、大いに活用した方が良いと考えます。「ちょっとペースが落ちているから上げてみましょう」「もうちょっとスピードを落としても大丈夫」といった、伴走者のような役割を医師に求めてみると良いでしょう。 「働く」ための社会資源も活用しよう ただ、そんな医師でも、どんなところでどう働くかまで面倒を見てくれるとは言えません。特性と向き合いながら長期的に働くためにはどのようにしたら良いかを相談するには、それ相応の社会資源(社会福祉上の支援をしてくれる人や機関)を利用することが大切です。自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
【発達障害当事者が解説】「仕事がうまくいかない」対策と継続のコツ

「仕事がうまくいかない…」を乗り越えるための対策を筆者の実体験をまじえご紹介。対策を立てた後に『継続』するためのコツもお伝えします。

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「仕事がうまくいかない」「同じようなミスを繰り返してしまう」 発達障害の特性がある方にとって、「仕事がうまくいくかどうか」はかなり大きなテーマでしょう。注意欠如・多動性障害(ADHD)の当事者である筆者も、過去に仕事でミスや失敗をして落ち込み、不安感にさいなまれる経験をしてきました。 平成29年に発表された厚生労働省の発表によると、精神障害者の障害者雇用の離職理由について「仕事内容があわない」「作業、能率面で適応できなかった」という項目が上位にきています。また、日本国内の企業の99.7%を占める中小企業のうち、障害者雇用の定着の理由として「作業を遂行する能力」を挙げる企業が一番多いという調査結果も出ています。 参考文献:障害者雇用の現状等|厚生労働省 発達障害特性への対策は世にたくさん発信されています。一方で、発達障害のある方の離職率が劇的に低くなったという話は聞きません。つまり、対策を知ったとしても、それを実際の自分の業務に生かすことが難しいのではないでしょうか。 今回の記事では、発達障害のある方によくある失敗とその対策、そして、対策を継続し習慣化していった筆者の体験談をお伝えします。皆さんが少しでも職場で長く違和感なく働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害当事者によくある失敗 発達障害の特性があると、以下のような失敗をしがちです。それぞれについて、原因と対策を挙げてみます。今回ご紹介をする【原因】は、あくまでも一例です。特性は一人ひとり異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。 ① ケアレスミスが多い 【原因】 一般に、「記憶の抜け漏れ・忘れ」はケアレスミスにつながりやすいと考えられます。発達障害の特性の有無と、「ワーキングメモリ」と呼ばれる作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力の間には関連性があることが指摘されています。 参考文献:「ワーキングメモリと実行機能の発達」|発達心理学研究 2019,第30巻,第4号,173-175 【対策】 ワーキングメモリの働きを自分でコントロールすることはなかなかできません。頭の中だけで覚えておこうとするのではなく、紙のノートやPCのメモ帳に書き出して保存することが、簡単ながら一番効果的な対策です。電話を受けたらメモをする、口頭で指示を受けたらToDoリストに書き出すなど、確実に残る記録としていつでも参照できるようにしておくことが大切です。 ② 納期を守れない 【原因】 発達障害の特性の1つとして、不安が強く心配性であるため、失敗・挫折への恐怖が強いという傾向があり、仕事(やるべきこと)の先延ばしをして納期を破ってしまいがちだとされています。 参考文献:ひきこもり支援者読本 第2章「ひきこもりと発達障害」|内閣府 【対策】 「できないかもしれない」と思ってしまう仕事は「失敗せずやれる」と思えるような細かい作業手順に分解することでその不安や恐怖を取り除きます。すると、とりあえず手を付けることができるようになります。その結果、先延ばしを避けて納期通りにやるべきことを終わらせることができます。 ③ 優先順位を間違える 【原因】 やるべきことが複数あり、そのどれから着手するかを決める、いわゆる「優先順位づけ」についてもまた、発達障害当事者は困難を抱えがちです。それは、目の前の作業に没頭するあまり、全体と部分の把握を適切に切り替えることが難しかったり、先々の展開を想像することが苦手だったりすることが原因といっても良いでしょう。 参考文献:注意欠陥/多動性障害児を対象とした課題解決場面におけるメタ認知を促すための支援方法に関する事例的研究|上越教育大学大学院 【対策】 「手を付けなければいけない順番」の指標として締切を意識します。締切を意識することで、早く終わらせなければいけないのはどれかが分かり、正しく優先順位づけをすることができます。 このように、それぞれ原因を知り対策を講じることで、よくある失敗を事前に避け、仕事の質を上げることができます。しかし、対策を講じたは良いが続かなかった、飽きて途中で辞めてしまったといった経験がある方も多いのではないでしょうか。 そこで、筆者の「挫折してしまった(継続できなかった)経験」と「うまく継続できた経験」を対比して、対策を習慣化するコツをお伝えします。 うまくいかなかった「ToDoリスト」 筆者は「タスク管理ツール」を使うことで仕事のクオリティーを上げて長く安定して働き続ける力をつけました。しかし、最初からうまくいったわけではありません。 はじめての会社で先輩や上司から言われたのが「ToDoリストを作りなさい」というものでした。それまで「自分のやるべきことを書いて管理する」ということを一切してこなかった筆者は、ただ「作りなさい」と言われ、見よう見まねでやらなきゃいけないと思うことをノートに列挙して仕事をするようになりました。 増殖し続けるリスト ToDoリストに自分の仕事を書き出すだけでうまくいく......わけではありませんでした。むしろ書き出せば書き出すほど仕事の悩みは大きくなりました。「書いても消えない」のです。 例えば、ある日に10個の仕事を書き出したとします。そのうち7個くらいこなしたとして、残りの3個の仕事は翌日のページに繰り越されます。翌日新しい仕事がまた10個発生したら、合計13個の仕事がリストに並びます。そんな調子で数日経過すると、書き出す気がなえるほど膨大な数の仕事を毎日リストに書くことになってしまいます。 なにから手を付ければ良いかが分からない また、ToDoリストに書き出した仕事の数々を眺めて、「あれ?これ何から手を付ければいいんだろう?」と手が止まることも頻繁に起こりました。ある仕事について手が止まると、別の仕事に目がいきます。ところが、別の仕事も同じく手が止まる。また別の仕事に目が向く。またどう着手すれば良いかが分からない。その繰り返しで、結局リスト上の仕事を減らすことが難しくなってしまい、リスト上の仕事が増えることに拍車をかけてしまいました。 優先順位が分からない さらに、目の前におびただしい数の仕事があるとどうしても目移りしてしまい、「あれもやらなければ」「これもやらなければ」と混乱してしまいました。その結果、本当なら最優先で取り組むべき仕事を後回しにしてしまったり、逆にすぐにやらなくてもいい仕事をなぜかすぐにやらないといけないと思い込んでしまったりと、優先順位をきちんとつけることができていませんでした。 ToDoリストによる管理が崩壊 そうしたことが重なり、ToDoリストを更新することが面倒くさくなって、仕事の基本である「自分がやるべきことを客観的に把握する」のをやめてしまいました。 なお、当時の筆者は上記のように細かく分析できていたわけではなく、「なぜか仕事がうまくいかない」という大雑把な認識しかありませんでした。したがって、「ToDoリストを使いやすくするように改善していこう」という考えが微塵もなく、ToDoリストを更新する作業が「仕事を邪魔する面倒くさいこと」としてしか認識できなかったのです。 こうして、筆者の「仕事をうまくこなす」ための作戦は完全に挫折して終わりました。 うまくいった「特性対策ツール」 ただやるべきことを列挙しただけのToDoリストだけでは仕事がうまく管理できなかった私に足りなかったもの。それは「ToDoリストを自分用に変えていこう」という考えでした。 ここに、対策を講じた後にやるべきことのヒントがあると筆者は考えています。それは、「実践」「検証」「改善」を繰り返すことです。以前のToDoリストでの失敗を糧にこの3つを繰り返すことで、ただのToDoリストを「自分ならではの特性対策ツール」へ変えることができ、仕事がうまく回るようになりました。 ①まずはToDoリストにやるべきことを書き出す 実は、ToDoリストを使うことには失敗だけでなく、良い部分もありました。それは、「書いたことは忘れない」という安心感です。むしろ、「書いたから安心して忘れることができる」と言っても良いかもしれません。やるべきことをToDoリストに書き出すことにより、少なくとも「覚えたはずなのに忘れる」「抜け漏れが発生する」といったことによるケアレスミスは減らすことができました。 しかし、以前にToDoリストを使ったときは、「書き出すだけ」で終わっていたのです。そのため「議事録の作成」や「企画の立案」といったざっくりした内容の項目が並ぶToDoリストを眺めては、「議事録を作るためには、何からとりかかればいいのだろうか」「どのような手順を踏めば企画書を作成できるのだろうか」と考えてしまい、いつまでたっても着手できずにいました。 ②仕事の手順を付け加える そこで、書き出したToDoリストに「より具体的で分かりやすい作業手順」を付け加えるようにしてみました。例えば「議事録の作成」の場合、まずは「議事録のフォーマットを先輩から手に入れる」ことが必要ですので、これが最初の作業手順となります。これをToDoリストに書き足しておけば、「まず最初に何をすれば良いか」が分かるので、作業に着手しやすくなります。 これにより、手が付けられず無駄に時間が過ぎていくことを予防でき、結果的に先延ばしを回避することができて納期を守りやすくなりました。ただ、いくら「着手しやすい手順」が目の前に並んでいても、「では、どの作業から着手しよう」というところで迷いが生じます。つまり「優先順位の問題」を考えなければならないのです。 ③自分が進めている仕事かどうかを付け加える 優先順位の問題の対策としてまず考えられるのは、「優先順位をつける対象の数を減らす」ことです。誰かが進めているのを待っているだけの仕事は、自分がすぐに手を付けられないので、そもそも「着手すべき仕事」の優先度を判断する対象から外すことができます。 さらに、「自分が進めている仕事」と、「誰かが進めていて自分はそれが終わるのを待っているだけの仕事」を区別できるように、ToDoリストに「自分」「相手」などと付け加えました。その結果、優先順位をつける対象を絞り込むことができ、どの作業から手を付けたらいいのかが分かりやすくなりました。 ただし、優先順位をつける対象をある程度絞り込めたとしても、最終的にはその中から「今、自分が進めるべき仕事」をどれか1つ選ばなければなりません。その選択基準がなければ、結局、優先順位がつけられていないのと同じことになってしまいます。 ④手順の締切を付け加える そこで、「今、自分が進めるべき仕事」を1つ選びやすくするために、その手順の締切を付け加えました。締切の日付があれば、「これは早めにやっておいた方が良さそうだ」「これは締切が随分あとだから、まだ寝かせていても大丈夫」ということが分かるので、「今、自分が進めるべき仕事」を選びやすくなります。 このようにして、「ケアレスミス」「納期を守れない」「優先順位がつけられない・間違える」という困りごとへの対策を、自分のものにすることができました。また、実践→検証→改善というサイクルを繰り返すことによる「手間暇かけた感」が、この特性対策ツールへの愛着を湧かせ、この仕事の管理方法を継続させる土台となりました。 対策を継続させるための仕組み ここまででも十分に仕事で活用できる管理ツールにはなったのですが、さらに継続させるための仕組みとして、「適切に自分に報酬を与える」ようにしました。 国立精神・神経医療研究センターの研究によると、ADHDのある方には「後で手に入る高額の報酬よりも、すぐに手に入る少額の報酬を選ぶ傾向がある」と言われています。 参考文献:報酬はヒトの行動抑制機能を高めるか?神経心理学的アプローチによる報酬効果の検討と展望|日本生理人類学会誌 Vol.27,  No.2  2022, 5 38 - 45 ここでいう「報酬」とは、仕事が進んだり、完了できたりすることによる「満足感」と考えていただければと思います。ADHDである筆者も例に漏れず、大きなプロジェクトを終わらせたときの満足感のような「後で手に入る高額の報酬」までは待てません。そこで、「すぐに手に入る少額の報酬」を自分で設定するようにしたのです。 完了数の表示 今までご説明した「特性対策ツール」を、私はExcelで作っています。そのExcel上で、「完了した仕事の数」を表示させるようにしました。ロールプレイングゲームでは、経験値が一定数たまるとレベルが上がります。現実の世界では数字がたまっても何も変わらないのですが、Excel上の数値が上がるだけでも「やった!」と満足感を覚えます。仕事を1つ1つ終わらせるごとに「仕事の経験値をためる」という感覚を自分に起こさせるようにしたのです。 毎日の仕事の発生数/完了数の表示 Excel上でその日発生した仕事の数と、完了させた仕事の数とを比較できるようにしました。例えば、ある日仕事が5つ発生して、4つ完了させていたとします。その時点で「1負け」です。そこで、なんとかすぐに完了できる仕事がないか探します。運よくすぐに終わる仕事が見つかると「引き分け」になります。さらにもう1つ仕事が完了できたら「1勝ち」となります。 「発生数/完了数の勝ち負け」の仕組みは最初はお遊び程度だったのですが、これもロールプレイングゲームのような満足感を味わうことができ、仕事を進めるよい燃料になりました。 仕事が画面から消える これはもう筆者の個人的な趣味のような領域になってしまうのですが、完了させた仕事は記録には残るものの、Excelの画面上では見えなくするようにしました。Excelの「フィルタ機能」を使うとことで、完了させたToDoがスッと消える(正確には、画面から見えなくなる)のです。 この瞬間がたまらなく好きになり、この消える際の「スッ」というExcel上の動きを見るだけで一種の快感のようなものを覚えるようになりました。 まずは自己理解から 以上、筆者の失敗事例とうまくいった事例から、「実践」→「検証」→「改善」というサイクルを回すことでより自分に合ったやり方を見つけることで継続できることをお伝えしました。 ただ、筆者とまったく同じことをしましょうと言うつもりはまったくありません。この事例からお伝えしたいことは、「実践・検証・改善を繰り返すことでより習慣化しやすくなる」「改善には、自己理解が助けになる」ということです。 特に、自己理解を深めておくことが大事だと筆者は考えています。抜け漏れしやすかったり、先延ばしぐせがあったり、優先順位がつけにくかったりする特性を認識していないと、そもそも対策を立てること自体ができないからです。 自己の障害特性を理解し、仮説レベルでもいいので対策を立てて実践し、その結果を検証し、自分の特性に照らして「特性のある自分でも対応できそうな」改善策を付け加え、それを実践して......という繰り返しをすることが、発達障害の特性を持つ私たちがより生きやすくなる道だと筆者は考えます。 ただ、正直なことをお話すると、何から何まで自分でやろうとするのは、とても時間と手間がかかります。筆者自身も特性を把握するまでには数年の時間がかかりました。今、この記事をお読みの方は「そこまで時間と手間をかけていられない」とお考えだと思います。 そんなときには、自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 編集担当 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【発達障害当事者が解説】無理なく働き続けるための特性理解と対策

長く健康的に働き続けるためにはどうすればいいのか。筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。

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「仕事がうまくいかず長続きしない」「職場の環境と合わなくて、短期離職を繰り返してしまう」 令和2年に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害のある方が1年間就労を継続できている割合は50%を切っており、定着が困難な方が多いと解説されています。 参考文献:障害者雇用の促進について関係資料|厚生労働省 発達障害の注意欠如・多動性障害(以下ADHDと表記)の当事者である筆者の就労経験からしても、最後に勤めた会社を除き、思ったほど長続きしなかった印象があります。障害者雇用枠で就労していた会社は4年強で休職し、一般雇用枠で就労していた会社は2年と持たずに休職してしまいました。実際は休職に至るまでかなり長い期間をかけて「就労環境とのミスマッチ」が生じていたので、適切な環境で就労できていた年数は、それよりもずっと短いという印象です。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。皆さんが健康で長く働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害のある方が仕事が長続きしない原因とは 仕事が長続きしない原因は「①仕事内容とのミスマッチ」「②職場環境とのミスマッチ」の2つと考えられます。 仕事内容とのミスマッチ 曖昧な内容が理解できないことで空気が読めなかったり、衝動的に思いついたことをしゃべったりといった発達障害の傾向は、周囲の人たちとのコミュニケーションがうまくいかなくなることにつながりがちで、仕事内容とのミスマッチが発生する可能性があります。 例えば、接客業はお客様とのコミュニケーションありきの仕事なので、お客様とのやりとりがうまくいかなければ、そもそもその仕事にマッチしないということになります。 職場環境とのミスマッチ さらに、せっかく仕事内容とはマッチしていても、例えば遠隔地にあるオフィスに通うための長時間の満員電車の混雑に耐えられなかったり、騒がしいオフィス内で発達障害の特性による聴覚過敏から集中できなかったりといった、職場環境とのミスマッチを生んでしまうこともあります。 筆者の事例 筆者も発達障害の特性によるミスマッチに悩まされた一人です。 「先延ばしグセ」がもとで期日に厳しい公共機関へ提出する報告書に手を付けずクレームを受ける 「段取り下手」で社内イベントの準備がうまくできない 「マルチタスクが苦手」なあまり名刺発注業務と社内備品の発注と来客対応の優先順位がうまくつけられない 「抜け漏れ」でついさっき頼まれた仕事を忘れる 「自己関連付け」(何か良くないことが起こったとき自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう)で通常どおりに使用していたプリンターが壊れた際に自分が原因があると考えてしまう このようなことが多発し仕事がうまくいかなくなる→ストレスが溜まりその傾向に拍車がかかる→より仕事がうまくいかなくなる、という悪循環に陥りました。 また、仕事がうまくいかないことで、周囲の方々との関係も悪化し、あるいはそう自分が勝手に思い込んでしまい、居場所感のようなものがだんだんなくなっていき、「これ以上仕事を続けられない」という心理状態になっていきました。 この悪循環を断ち切るには、自らの特性に応じた対策を打つことが必要です。そのためには、自分にはどういった特性があるのかをまず知ることが大事です。 発達障害の特性を理解するメリット 前述したように、自らが持つ発達障害の特性を知ることはその対策を打つためにとても大事です。ここでは、自分の障害特性を知るメリットについてお伝えします。 「続かない」仕事を避け、「続けられる」仕事を選べる 自分の特性が分かると、その特性にあった職業を選ぶことができます。 例えば、「臨機応変に段取って仕事を進めるのが苦手」であれば、プロジェクトの進行管理をするWebディレクターや、複数の顧客とやり取りをする必要のある営業職などは難しいでしょう。また、ケアレスミスを多くしてしまう傾向があるのであれば、税理士や司法書士など正確な事務作業が要求されるような職業はあらかじめ候補から外しておくのが得策です。 逆に、細かい事務作業は苦手だけど人と接するのが得意という方は、飲食やサービス業などの接客業が向いている可能性が高いと言えます。細かいチェックなどの作業に集中できるのであれば、経理などの事務職が向いている可能性が高いと言えます。 このように、自分の特性を理解していれば、仕事を選ぶときに当たりをつけることができるようになります。 「できない」仕事について周囲がサポートしやすくなる ただし、どんな仕事でも「100%自分の得意なことだけやっていればいい」ということはほとんどありません。 例えば、接客業であっても出勤シフトを組んだり、一日の売上の計算をしたりするときには、どうしても事務作業が必要になります。また事務職であっても自分の業務のみ黙々とおこなうのは難しく、少なくとも仕事を協力し合う同僚とはコミュニケーションを取らなければなりません。 そこで「この仕事のこういう部分が苦手です/得意ではありません」といったことを把握し、自分から周囲に伝えておけば、「あの人は、事務処理が苦手だから手伝おう」「コミュニケーションが苦手だから、分かりやすく話してあげよう」とサポートしてもらえる可能性が高くなります。 「できる」仕事について能力を発揮し、自己肯定感を高められる 得意な仕事が分かっていれば、「それやります!」と率先して引き受けることができます。 得意なことなので当然その仕事はうまくいきやすく、成功体験を積むことができます。成功体験を積むと、自己肯定感が上がります。すると、もっと積極的に仕事に取り組むことができるようになります。 この好循環により、安定して仕事を続けられるようになります。 対策の具体的な手順と事例 自分の障害特性を知ればその対策を打つことができます。対策が打てれば、働きやすさは格段に上がります。ここでは、自分の障害特性を知り対策を打つところまでの筆者の具体的な経験をお伝えします。 自分の障害特性を知る 筆者は、2007年にADHDの診断を受けました。しかし、診断を受けただけで終わってしまいました。「自分はADHDである」ことを“知った”だけで、「では、自分にはどのような障害特性があるのか」までは考えようとしなかったのです。 その後、会社に就職して働き始めるのですが、具体的にどのような障害特性があるのかまで分かっていないので、当然仕事はうまくいきません。入社 → やみくもに頑張って仕事をするも次第に息切れ → 休職という流れがお決まりになってしまいました。 その流れを断ち切ったのは、2社目での休職からの復職後のことでした。 それまでの経緯を振り返り、自分の特性を知ろうと考えたのです。厳密に言うと「うすうす自分の特性には気づきながらも認められずにいたが、ついに意識せざるを得なくなった」といったところでしょうか。 このとき、「自分の障害特性を知ること」と同時にやったのは「諦めること」でした。 「忘れない自分になるのを諦める」「段取りよく仕事を進められる自分になるのを諦める」「先送りしない自分になるのを諦める」 諦めることで、特性ありきの自分を受け入れることができ、「そんな自分でもなんとかできるためにはどうすれば良いか」というスタート地点に立つことができたのです。診断を受けてから7年の月日が経っていました。 特性に対する対策を知る 自身の障害特性を知って受け入れた後は、その対策を立てることになります。復職直後は時間的余裕があったので、目の前にあるPCでExcelの練習も兼ねて、自分の特性をカバーするようなものを作ろうと考えました。 忘れっぽさに対しては、とにかく依頼を受けた仕事は全部Excelに書くことで対処していくことに決めました。 段取りが苦手なことや先送り癖に対しては、受けた仕事を細かい手順にあらかじめ分解して、その手順ごとに細かく締切を設定することで対処しようと考えました。 全部自分の責任だと考えてしまう「自己関連付け」という思考に対しては、それぞれの手順の担当者は誰かを追記することで、自分が進める段階か相手が進める段階かを明確にして、必要以上に自分が責任を背負い込み過ぎないような表示にしました。 マルチタスクになると気が散って集中できなくなってしまうのは、それぞれの仕事について「今やるべき手順」のみを表示させることで、「今自分が取り組むべきことはこれ!」と集中できるようにしました。 こうしてできたExcelの自分用仕事ツールによって、仕事の質・量が劇的に改善し、そして何より仕事をする自信を持つことができるようになりました。 余談ですが、このようなやり方をしている人が他にいないかと調べてみると、「タスク管理」という仕事術に非常に似ていることが分かり、その瞬間思わず感動して抑えきれず声が出たのを覚えています。 タスク管理に限らず、特性を受け容れて対策を打ち出すときに大切なことは、自分が頑張って「できるようになる」ではなく、他人や物に頼って「自分はできないけど、結果的になんとかする」という考え方です。このように考えると、無理なく仕事が続けられる、自分に合った対策を立てることができるようになります。 (自己対処できない場合)自分に必要な合理的配慮を知る 合理的配慮とは、「障害による困りごとへの配慮を、企業や自治体、教育機関等の事業主に求めることができる」という制度です。合理的配慮について職場と調整をすることは、発達障害のある方が安定して長く働いていくために大切なポイントとなります。 ※合理的配慮について、詳しくは関連記事をご参照ください 筆者はタスク管理でかなり状況が改善されましたが、それでも仕事上うまくいかないことはあります。筆者の場合は、否定的な態度でコミュニケーションをとられると、それだけで萎縮して頭が真っ白になってしまい、しばらくの間まともな判断ができなくなってしまいます。 復職後しばらくして別の会社に障害者雇用で転職した筆者は、社長面接で「ではあなたの求める合理的配慮を教えてください」と言われました。 そこで、「怒らないでください。仕事についてはタスク管理でカバーしてなんとかしますが、もし私に落ち度があって改善する必要があれば、普通のトーンで変更の提案をしてください」と伝えました。 実際、ほとんど怒られずに済み、精神的にも安定して長期間就労を継続することができました。 逆にタスク管理部分を配慮してもらって、「自分のメンタルは自分でなんとかします」でも良いと思います。実際、厚生労働省から出ている合理的配慮指針にこのような内容があります。 「業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと」 出典:合理的配慮指針|厚生労働省 できる限り対策を考えてやってみて、それと同時並行で対処しきれないところについては合理的配慮を求めるという姿勢が大事なのではないかと考えています。 筆者の事例はあくまで個人的なものですが、「自分の特性を知り受け入れる」「その対策を立てる」「それでも必要な部分を合理的配慮として求める」ということは、どんな方にも共通する大事なことではないでしょうか。 ただ、筆者のように自分の特性を受け入れるまで何年もかけるのは現実的ではありません。また、その対処法についても、筆者は幸運なことにExcelを使ったタスク管理に出会ったわけですが、人それぞれ違うであろう対処法を自分だけで探し当てるのは難しいかもしれません。 そんなときには、自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 編集担当 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【発達障害当事者が実践】職場の対人関係を円滑にするビジネスマナー3選

ASDのある方が困りごとを感じやすい「職場でのコミュニケーション」。筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコツをお伝えします。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
  • #限局性学習症(SLD)
「普通に振る舞っているつもりなのに、周囲の人たちとの壁を感じることがある」「日頃の行動について注意されたが、どうしたら良いか分からない」 多かれ少なかれ、どんな人でも職場に溶け込むための悩みはあるものでしょう。ただ、周囲の様子や反応から、職場における適切な振る舞いを学ぶのは、発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(以下、ASDと表記)の特性がある方にとって苦手なことではないでしょうか。 筆者は、診断として受けているのは注意欠如・多動性障害(以下、ADHDと表記)のみですが、発達障害はスペクトラム(連続性)のあるものであり、ASDに由来する(と思われる)困りごとも体験してきました。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコミュニケーションのコツを3つお伝えします。 今回は「職場のコミュニケーション」のなかでも社会人として問われる機会の多い「ビジネスマナー」に絞ってお届けします。 皆さんが少しでも働きやすくなるように、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 ASDのある方が、ビジネスマナーが苦手な原因とは ASDの特性がある方は、場の空気を読むなどして暗黙のルールを認識することが苦手とされています。 参考文献:発達障害者の就労上の困難性と具体的対策 ─ASD 者を中心に|独立行政法人労働政策研究・研修機構 なぜ、ASDの特性がある方は、暗黙のルールを認識するのが苦手なのでしょうか。 一般に、発達障害の特性がない定型発達の方は、「①理解できていない」状態から「②なんとなく分かる」という段階を経て「③理由が説明できて分かる」という順番で理解が進みます。 しかし、ASDの特性がある方は、「②なんとなく分かる」というプロセスがないことが研究で分かっています。つまり、「①理解できていない」の次が「③理由が説明できて分かる」なのです。 これは、言葉で分かるようにならないと理解ができないということと、一度理解したことを「なんとなく」変更する柔軟な対応が難しい(マイルールへのこだわりがある)ことを意味します。 参考文献:他者理解の発達再考―直感的他者理解をめぐるASD(自閉症スペクトラム)研究を通して―|東洋大学 どの職場でも「これは言わなくても守って当たり前」と思う「暗黙のルール」は存在します。そして、色々な職場に共通する暗黙のルールが「ビジネスマナー」としてまとめられ、明文化されないまま社会全体に広まっていったと考えて良いでしょう。これは、言葉以外の意味合いを重要視する日本ならではの文化かもしれません。 ただし、ASDの特性がある方がこのような文化の中でうまくコミュニケーションをとっていくのは、上記の内容から分かる通り、難しいと言わざるを得ません。 そんな発達障害の、特にASDの特性がある方が、職場でのコミュニケーションを円滑にするためにはどうすればいいのでしょうか。具体的な対策としてのビジネスマナーを、筆者の失敗事例を通してお伝えしていきます。 対策①報連相ができない→ひと言テンプレートを用意 筆者の体験談 「報告」「連絡」「相談」をまとめて「報連相」といいます。職場でのコミュニケーションの第一歩でありビジネスマナーの基本ですが、筆者が一番最初にぶちあたった壁でもありました。 働き始めた当初、私にはそもそも報告や連絡、相談などをするという考え自体がありませんでした。しかし、当時の上司や先輩社員にとっては、仕事をする上で報連相をすることは当たり前であり「教えるまでもないこと」だったのです。 その結果、「ある程度進んでいるのなら、きちんと報告して欲しい」「分からないことがあるなら、相談するように」と言われるまで、一人でウンウンうなって何も仕事が進まない、進まない状況すら上司などに共有しないという状況になってしまいました。 さらに、「報連相をしなければいけない」と分かっても、どのように報告や連絡、相談をすれば良いかが分からないという問題が出てきました。 「実は、名刺を作っているんですけど、昨日営業部のAさんが、名刺作成依頼の申請を上げてきて、それで...」 と、思いつくまま話し始めると、 「で、いったい小鳥遊くんは何を言いたいの?」 と上司に怒られてしまう。それで心を折られて「すみません、出直してきます」と自席へ戻り、なかなか話すきっかけがつかめない。そんな場面がしょっちゅうありました。 対策 「喋りだしの一言テンプレート」を準備しておきましょう。 報連相をするためには、まずどう喋りだすかが重要です。いきなり本題に入るのではなく、「報告」なのか「連絡」なのか「相談」なのかを最初に明確にすれば、聞く方も聞きやすくなります。 「●●の件について、『報告』or『連絡』or『相談』なのですが、今よろしいでしょうか?」 こういった「喋りだしの一言テンプレート」を最初に言うだけで、相手の反応が違ってきます。仮に、それに続く内容があまり要領を得ないものであっても、「小鳥遊くんが今いっているのは、相談だったよな。であれば、話の内容から自分が何かしら返答する必要があるはず。まずはじっくり聞いてみよう」などと、相手側から歩み寄ってくれます。 私はこれで「何を言っているか分からない」と言われてすごすごと退散することはなくなり、安心して報連相ができるようになりました。 対策②雑談が苦手→共通の話題を選ぶ&避けた方がよい話題もあり 筆者の体験談 誰も教えてくれないビジネスマナーの中に「適切な話題を選んで雑談する」というものがあります。 筆者はクラシック音楽が趣味なのですが、正直言って「誰でも知っている」という話題ではありません。しかし、会話の中でちょっとでもクラシックの話が出てくると「これは自分の出番!」とばかりに、その話に熱中して話し続けてしまっていたのです。 会話をしていた相手にとっては、あまりよく知らない話題について延々と話されて、さぞ閉口したことと思います。 対策 雑談は、共通する話題を選び、タブーの話題を控えましょう。 雑談の目的の一つは、相手との共通点を見いだし、距離を縮めて関係性を良くするところにあります。したがって、自分が好きな話題を繰り出して一方的に話すのではなく、多少興味は薄くてもお互いが分かる共通の話題をピックアップすることが大切です。 同時に、以下のような一般的にタブーとされている話題は控えましょう。個人の思想や信条にダイレクトに関わることであったり、あまり人に言いたくない話であったりする可能性が高いからです。 政治 宗教 収入 学歴 家庭や家族の問題 対策③暗黙のルールが理解できない→自分の考えをいったん脇に置く 筆者の体験談 ある日、私は直属の上司である副部長から指示を受けて仕事をしていました。それを見ていた係長が猛然と「そんなことを今していてはダメだ!もっと他にやるべきことがあるだろう!」と筆者に指導をしはじめました。 当然、係長よりも副部長の方が上なので、「いや、でも副部長の指示なので...」と答えたところ、「上の人が言うからといって、そのまま鵜呑みにしてはダメだ!」となお一層怒られてしまいました。 後で先輩社員がこっそり教えてくれたのですが、その係長は、会社が何度もお願いをして社員になってもらったので、職位は係長でも発言力はとても大きい例外的な方だったのです。「いや、副部長が...」と返答したことは、そういった事情から考えると、取ってはいけない行動だったのでしょう。 対策 あれ?と思ったら、自分の考えをいったん脇に置きましょう。 副部長の指示に係長が反対の意見を言ってくる時点で「あれ?」と思うタイミングがあったはずです。そこで自分の考えを優先せず、周囲に「副部長からの指示とまったく逆のことを係長から言われて迷っているんですが...」と素直に聞いていれば、「ああ、それはね...」と内情を話してくれたかもしれません。 このように、一般的な常識とは異なる、その職場だけの「暗黙のルール」があることは珍しくありません。本を読んだり、過去の経験から学んだことが通用せず、「実際にその職場の人に聞いてみないと分からないこと」はどうしても存在するのです。 そのような場合、自分の中の「こうあるべき」はいったん脇に置き、周囲の人たちの行動を観察してその真似をしたり、以前に同様の仕事をした人に「どう進めたか」を聞いたりしてみましょう。そうすることで職場に溶け込んでいくことができます。 なぜビジネスマナーが必要なのか 仕事仲間とはいえ、良い関係を構築する「努力」が必要 どれだけ同じ場にいて一緒の時間を過ごしている「仲間」であっても、あくまで上司は上司、部下は部下、同僚は同僚です。一緒にいれば勝手に良い関係が構築されたり、いったん構築された良い関係が自動的に継続できたりするとは限りません。むしろ、意図的に「良好な人間関係」を築き、それを継続させるための努力が必要と言えます。 その努力を集約したものが、例えば、「雑談をして、ある程度お互いのことを知ってサポートし合う」や「報連相を適切にして余計な人間関係の摩擦をなくす」といったビジネスマナーなのです。 一般的には無意識に実践されているこの「ビジネスマナー」ですが、これを意識的に身に付けるようにすれば、職場での円滑なコミュニケーションに大いに寄与するのではないでしょうか。 努力するのと同時に、合理的配慮でより良い関係性を ただし、どれだけ職場で周囲とうまくやっていけるよう努力しても、自分一人では限界があるかもしれません。そのような場合には、会社と「合理的配慮」を相談することも検討しましょう。 例えば、報連相の喋り出しをテンプレート化しながら、仕事上のコミュニケーションをより円滑にするために「言葉になっていない意図は、汲み取ることが難しいので、できるだけ言葉や文章にして伝えてください」といった配慮を求めることができれば、より仕事がやりやすくなることでしょう。 ビジネスマナーを実践しながら、職場との合理的配慮を調整することで、より健康で安定的に働き続けることが可能になります。 しかし、自身の特性を過不足なく把握し、必要な合理的配慮を伝えられるようになるのには、また別の大変さがともないます。そんなときには、自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 編集担当 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
働きやすい職場の探し方|発達障害のある方の「求人検索」ポイント

「自分に合った職場を選びたい」発達障害のある方が就職・転職時に求人検索をするときのチェックポイントを、当事者の体験談を交えてご紹介します。

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  • #障害者雇用
  • #クローズ就労
  • #オープン就労
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
  • #限局性学習症(SLD)
「転職しようと思っているけど、自分に合った職場をどうやって見つければいいんだろう」 誰にとっても、自分に合った職場を見つけるのは難しいもの。特に発達障害のある方の場合、仕事の経験やスキルだけでなく、自分の障害の特性も考慮して選ばないと、転職先で働きづらさを感じる原因となってしまいます。 実際に、筆者も転職の際に自分とは合わない職場を選んでしまったことで二次障害になり、1年もたたない間に離職することになってしまった経験があります。 そこで今回は、発達障害のある方が就職・転職活動で求人を検索する際に、調べておいた方がいいポイントをご紹介します。皆さんが自分にあった働きやすい職場を見つけるために、この記事がお役に立てれば幸いです。 [toc] 自分に合わない職場を選んでしまうとどうなる? もしも、自分に合わない職場を選んでしまったら、どのような困りごとが起こるのでしょうか。まずは失敗例として、筆者の体験談をご紹介します。 私は、注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)と自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受けています。失敗経験をしたのは、35歳で2度目の転職をしたときでした。 職場の環境が合わなかった 転職前はオフィスが比較的広く、デスクが一人ひとりパーテーションで区切られていました。黙々と作業するタイプの業務をおこなっている企業でしたので、職場は比較的静かで、電話が鳴ることもあまりありませんでした。 しかし、転職後は小さな会社だったので、一つの部屋で10名弱の社員全員が働いており、個人のスペースはほとんどありませんでした。誰かが話していれば耳に入りますし、電話もしょっちゅう鳴っていました。 私はADHDの特性から、周囲の様子がとても気になってしまい、自分の作業にうまく集中することができませんでした。 仕事の進め方が合わなかった 転職前の職場は人数が多く、チームで仕事を進めることが多かったため、困ったときにも相談しやすく、自分からヘルプを出さなくてもサポートを受けやすい環境でした。 しかし、転職後の職場は人数が少なく、個人で仕事を進めることが多かったため、誰かの協力が必要な場合には周囲に対して自分から積極的にコミュニケーションを取り、巻き込んでいく必要がありました。 私はASDの特性から、コミュニケーションを取ることが苦手だったため、周囲を巻き込めずに一人で問題を抱え込んでしまい、うまく仕事を進めることができませんでした。 社内制度(福利厚生)が合わなかった 転職前の職場は社員が50名以上でしたので、産業医を設置する義務があり、いつでも相談できました。また、従業員へ定期的なアンケートをおこなったり相談窓口が置かれたりしており、従業員の健康を管理する制度が整っていました。 しかし、転職後の職場は人数が少なかったため産業医の設置義務がなく、また、設立から数年の若い会社だったため、社内制度(福利厚生)がまだ十分に整備されていませんでした。 一概には言えませんが、一般的には会社規模が大きくなるほど社内制度(福利厚生)は手厚くなると言われています。そのため、小さな会社ではメンタルヘルスケアや障害者雇用に詳しい担当者がいないこともあるのです。 ※もちろん、会社規模が小さくても社内制度(福利厚生)が整っている会社もたくさんあります。 当時の上司は親身に相談に乗ってくれたのですが、特別に専門知識があるわけではありませんでした。私も、当時はまだ自分の障害について理解が浅かったため、合理的配慮の調整がうまくできず、お互いにとって負担だけが大きい状態に陥ってしまいました。結果的に、私は仕事を辞めることになってしまったのです。 自分に合った職場を選ぶ大切さ 就職・転職活動において、自分の持っているスキルや経験に合った職場を見つけることはもちろん大切です。それに加えて、発達障害のある方の場合は「自分の特性に合っているか」という観点がとても重要です。 筆者の場合、転職前も後も営業職で、同じ職種での転職でした。しかし、転職前はどうにか仕事ができていたのに、転職後に困りごとが表面化しました。つまり、同じ職種であったとしても、職場の環境が変わるだけで大きな影響があるのです。 自己分析を行って自分の特性を理解したうえで、どのような職場であれば自分に合うのかを考え、求人を検索することが大切です。 なお、発達障害のある方向けの自己分析や、企業研究については、以下の記事もご参照ください。 就活HACK|発達障害のある方のためのお役立ちコラム 発達障害のある方向け「求人検索のポイント」 それでは、実際に求人を検索する際のポイントを4つご紹介します。 今回は、「実際に求人へ応募する前に、企業ホームページや求人サイトを見て情報を集める段階」を想定しています。 本当は、インターネットなどで情報を集めるだけでなく、面接や実習など「実際に企業の担当者と話せる場面」で聞いてみることも大切ですが、応募する前の段階では、実際に話を聞くことはなかなかできません。 ですが、インターネット上の情報でも、ポイントを押さえればある程度の見通しを立てることは可能です。 特に、“障害者雇用枠”ではなく“一般雇用枠”で働くことを希望する場合には、障害者雇用に関する情報が書かれていない可能性もありますので、いくつかの情報から総合的に考え、自分に合いそうな職場かどうかを判断するとよいでしょう。 1. 障害者雇用の実績がどれだけあるか まずは直接的に、障害者雇用の実績が公開されていないかを確認しましょう。大企業の場合は、CSRやSDGsの取り組みをPRするために、障害者雇用の実績やどのような取り組みをしているかを公開していることが多いです。 障害者の“採用人数”が多ければ、受け入れ体制が整っていると考えられます。“平均勤続年数”が長ければ、障害のある方にとっても働きやすい環境であると言えるでしょう。 また、従業員に対して“ダイバーシティ教育”を実施していれば、障害に対する周囲からの理解も得やすいだろうと予想できます。 なお、一般雇用枠ではなく障害者雇用枠での採用に応募する場合は、求人に以下の情報が書いてあるかどうかをチェックすると良いでしょう。 障害者雇用の過去の実績(採用人数、定着率、雇用者の障害種別など) 実際に提供している合理的配慮の事例 障害者の支援体制(専門部署や相談窓口の設置状況など) 発達障害(ADHD、ASD、SLD)の採用実績 2. 福利厚生が充実しているか 福利厚生が充実していれば、それだけ企業が社員を大切にしていると考えられます。以下のような制度があるかどうかを確認すると良いでしょう。 健康保険・厚生年金の加入(特に、有期雇用契約や短時間勤務の場合) 退職金制度の有無 健康診断のオプション(人間ドックなど)の実施、カウンセラーの設置 産休・育児休暇制度 フレックスタイム制度や時短勤務制度の有無 テレワーク・在宅勤務の実施 各種手当(通勤手当、住宅手当、家族手当など)の有無 慶弔見舞金制度の有無 特別休暇制度(生理休暇、リフレッシュ休暇など)の有無 食事に対する補助(社員食堂、食事手当など)の有無 スポーツクラブや習い事、自主学習への補助(資格取得支援制度など) 3. ハラスメント防止の取り組みがおこなわれているか ハラスメント防止の取り組みがある企業は、社員が働きやすい環境を整備しているという点で、発達障害のある方にとっても働きやすい職場だろうと予想できます。 ハラスメントを防ぐためには、社員に対して適切な教育や研修を行い、労働環境を整備することが必要です。また、被害者が安心して相談できるよう、相談窓口やホットラインなども設置しなければなりません。 これらの取り組みがある企業なら、実際に働いてから何か困りごとがあった場合にも相談しやすい環境であると言えるでしょう。 なお、法律では、障害者差別解消法や障害者雇用促進法などで、企業が障害のある方に対し「合理的配慮を提供すること」や「障害を理由に、仕事内容や昇格・昇給などの待遇面で不当な扱いをしないこと」を定めています。 ただ、すべての企業が、上記の法律にそった社内制度や相談体制を整備できているわけではなく、追いついていない企業も少なくありません。そういった面からも、「なにか困りごとがあったときに、対応してもらいやすいかどうか」は、チェックしておきたいポイントです。 4. 働き方改革に取り組んでいるか 近年、企業の「働き方改革」は大きな注目を集めています。働き方改革に熱心な企業であれば、従業員の“ワークライフバランス”を重視していると言えますので、発達障害のある方にとっても働きやすい職場である可能性が高いと考えられます。 例えば、“フレックスタイム”や“テレワーク”の制度があれば、時間や場所を柔軟に調整できることで、障害の特性にも対応しやすくなります。 “テレワーク”は、コロナ禍によって実施している会社は増えていますが、以下のような取り組みがあるかを確認することで、その企業が「どれだけ本気でテレワークを推進しているか」を予想することができます。 ノートPCやルーターなど、テレワークに必要な備品の貸与がある Google WorkspaceやSlack、Microsoft Teamsなど、場所を問わず業務がスムーズにおこなえるようクラウドサービスを活用している 在宅勤務時に、自宅の電気代やインターネット通信料への補助がある テレワーク時に、カフェやコワーキングスペースなどの利用への補助がある 会社がコワーキングスペースなどをレンタルして、「サテライト・オフィス」を用意している 自己分析を行って、自分に合った職場を選ぶことが大 発達障害のある方にとって働きやすい、自分に合った職場を選ぶためには、まず自分をよく知ることが大切です。 どのような業務が得意/不得意か どのような環境が働きやすい/働きづらいと感じるか 自分で対処(セルフケア)できる/周囲にサポートしてもらいたいことは、どのようなことか これらを理解できていれば、どんな職場を選べばよいかも少しずつ見えてきます。 しかし、障害の有無にかかわらず、客観的に自分を分析するのはとても難しいことです。 「考えれば考えるほど、頭がグルグルしてしまって答えにたどり着けない」 「一人だと途中で投げ出してしまう」 「結局、自分に合う働き方がよく分からない」 ……と悩んでしまう方も、少なくありません。そんな方々のサポートを行っているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「就労移行支援事業所ってどう?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「就労移行支援事業所」をテーマに、実際に通った立場/通わなかった立場から「当事者のリアル」をお伝えします。

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  • #就労移行支援事業所
  • #はたラクHACK
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 第3回となる今回は、障害のある方が働くための支援をおこなう障害福祉サービス、『就労移行支援事業所』の利用をテーマに対談をおこないました。 対談した2名のうち、1名は事業所を利用し、もう1名は利用せず現在に至ります。なぜ就労移行支援事業所を利用した/利用しなかったのか、実際に利用してみてどうだったのかなど、当事者のリアルな体験談が、何か皆さまのお役に立てれば幸いです。 参考記事 第1回・第2回の対談記事は、以下よりご覧いただけます。 本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 就労移行支援事業所のことをどうやって知ったの? 私は、インターネットや書籍で発達障害についてかなり調べていたつもりだったのですが、『就労移行支援事業所』についてはまったく知らなくて。再就職活動をしていたときに偶然、就労移行支援事業所を運営している会社の求人を見つけて、「こんな障害福祉サービスがあるんだ!」と驚いたんです。とりさんは実際に就労移行支援事業所をご利用されたそうですが、最初に知ったきっかけは何でしたか? 私は診断を受けたあと、障害者手帳を取得したり仕事を休職したりするタイミングで、まず『障害者雇用』について知り、そこから広がって、就労移行支援事業所の情報にもたどりつきました。実は、診断を受ける前から「障害者専用のハローワークみたいな障害福祉サービスがあるらしい」ということを何となく知っていたのですが、自分が診断を受けるまでは、調べてみようとは思わなかったですね。 就労移行支援事業所を利用した/しなかった決め手は? 私が就労移行支援事業所の利用を決めたのは、「発達障害への配慮が受けられる会社へ再就職するために、準備をしたい」と思ったからです。私は、今の会社が3社目なのですが、1社目を退職したときは、退職後に生活リズムがどんどん崩れて、メンタルの調子も悪くなってしまいました。その後、なんとか再就職はしたものの、まだ自分の障害について理解が浅く配慮を受けながら働ける会社を探したわけではなかったので、2社目でも結局、体調を崩して休職することになってしまいました。1社目を退職したときの経験から、今度はちゃんと通院・服薬をし、自分の特性についても勉強していました。そして、「次は障害に対する配慮を受けながら働ける会社に再就職したい。休職期間を、そのための準備期間にしたい」と考えて、就労移行支援事業所を利用しようと思ったのです。 私が就労移行支援事業所を利用しなかったのは、「働きながら利用することはできない」というルールがあったからです。家族を養うためには、収入がない期間を作るわけにはいかなかったんですよね…。「通っている期間の生活費がまかなえないから、就労移行支援事業所を利用したくてもできない」というお悩みを、当事者の方からときどき耳にすることがあります。とりさんは通っている間、生活費をどのように工面されていましたか? 養うべき家族がいるのといないのとでは、状況はガラッと変わりますよね……。私はまだ20代前半で、ありがたいことに家賃は親に出してもらいました。家賃以外の生活費は自分で出していましたが、休職中で“傷病手当金※”を受給していたので、節約してどうにかしのぎました。私は職歴も浅く、ある意味、“失う物は何もない状態”だったと思うんです。だからこそ、「ここで一度立ち止まってもいいから、しっかりと自分に向き合い対策をして、その先のキャリアプランを整えよう」という判断ができたのだと思いますね。 ※補足:就労移行支援事業所を利用中の生活費を工面する方法としては、傷病手当金のほか、「障害者年金を受給する」という方法もあります。障害者年金については、以下の記事もご参照ください。 就労移行支援事業所の選び方は?どのように選んだの? とりさんは、いくつか就労移行支援事業所を比較・検討したうえで実際に通う事業所を決めたとうかがいました。どのように選んだのでしょうか? はい。見学したのは4か所で、選び方のポイントは大まかに以下の3つです。 ポイント1. 希望する職種の就職実績があるか 私は学生のころからイラストやマンガを描くのが趣味だったので、それを生かして、Webデザイナーとして再就職したいと思っていました。1つめの事業所は、就職先の実績が”事務系”や”作業系"だけで、自分が目指したい職種というよりは「障害があってもやれそうな仕事」をおすすめされている印象を受け、私の希望と合いませんでした。 ポイント2. 自分に合った訓練が受けられるか 私はすでに2社で働いた経験がありましたので、「社会人としてのビジネスの基礎的な訓練」よりも、もう少し技術的な訓練を受けたいと考えていました。2つめの事業所は、「働いたことがない/働いた経験が少ない人」を主な対象としていて、基本的なビジネスマナーや事務作業のスキルを身に付けるための訓練が中心ということで、私が受けたい訓練と合いませんでした。 ポイント3. 発達障害の特性への考え方が自分と合っているか 最終的にどちらにしようか迷った事業所が2つあったのですが、最後の決め手になったのは、「発達障害の特性への考え方」でした。3つめの事業所は、訓練で教わる技術のレベルも高く魅力的ではありました。ただ、「発達障害のある方々は、みんな特別な能力を持っているはずだ」という考え方に少し違和感がありました。私は、就労移行支援事業所への期待として、就職のための技術的な訓練だけじゃなくて、メンタルケアやセルフケア(自己対処)の方法も学びたかったんですよね。まずは基礎として自分の心と体、生活リズムを整えた上で、就職するための技術を学びたかったんです。なので、発達障害を“特殊能力”のように扱うよりも、何か、もっと“ありのままの姿”を基準にして、現実的な対策を教えてくれる方がいいなと感じたんです。4つめの事業所では、支援員の方が「障害者だからといって、何か特別な人、のような扱いはしません」とおっしゃっていたのがいいなと思って、『ディーキャリア』という就労移行支援事業所へに通うことを決めました。 とりさんの「選び方の3つのポイント」をお伺いして、自分に合った事業所を選ぶには、自分が就労移行支援事業所に何を求めるのか、最終的にどのような仕事をしたいのかという目的の設定が大切なのかな、と感じました。インターネットを見ていると「就労移行支援事業所に通ってみたけれど意味なかった」という意見を見かけることがあります。通う目的がハッキリせず、自分に合わない事業を選んでしまうと「通っても意味ない」と感じてしまうのかもしれませんね。 私のように「Webデザイナーになりたい」と明確な目的を持てていなくても、「配慮を受けながら障害者雇用で働きたい」とか「生活とメンタルを整えてから就職したい」というように、最初は大まかでもいいので、何かしらの“目的”を持っていた方がいいと思いますね。目的が何もない状態で手当たり次第に事業所を見学したとしても、自分に合う事業所はなかなか見つけられないんじゃないかなという気がします。 就労移行支援事業所に通って良かったこと/悪かったこと 私は、就労移行支援事業所に実際に通ってみて、結論としては「期待以上」だったかなと思っています。 おぉ、「期待どおり」を超えて「期待以上」だったのはどのような部分でしょう? まず1つめは「自分の考えを整理できたこと」ですね。支援員の方が定期的に面談してくれる中で、過去の出来事や自分の考えをいろいろ話すうちに、整理が進んでいった感じです。そして2つめは「セルフケアを学べたこと」です。特に印象的で、今もやっているセルフケアが“日記”です。体調や1日の過ごし方を記録するだけでなく、「頭の中で考えていることを、いったん頭の外に書き出す」というのがすごく良かったんですよ。私はモヤモヤした気持ちを自分の中にため込んでしまう傾向があって、それが原因で家族に当たってしまったり、ストレスを感じたりすることがありました。でも、心の中の見えないモヤモヤを、“言葉”という見える形にして日記に書き出すことで、すごくスッキリしたんです。ずっと頭の中を占領していたモヤモヤから解放されたような。注意欠如・多動性障害(ADHD)のある方は、脳の一時的な記憶の置き場である“ワーキングメモリ”に弱みがあると言われていますよね。モヤモヤを言語化し書き出すことで、このワーキングメモリを解放してラクにしてくれるような、そんな感覚がありますね。 逆に、「期待とちょっと違った」というような点は何かありましたか? 私の希望するWebデザイナーでは、実習を受け入れている企業の数や、障害者雇用の求人数が思ったよりも少なかったことですね。企業側も、クリエイティブ系の職種では“経験・実績あり”の人を求めているので、訓練を積んだだけで未経験で採用されるのはハードルが高いのかもしれません。企業の求める人材と、求職者の希望とのマッチングが難しい職種なのかもしれないですね。最近は「IT・Web系の職種専門の就労移行支援事業所」も増えてきましたが、当時はどちらかと言えばプログラミングの方が中心で、私の希望するWebデザインの実績がある事業所は、まだ少ない印象でしたね。 とりさんは、就労移行支援事業所に1年3か月ほど通っていらっしゃったと聞きました。周りには「先に就職が決まって退所していく方」もいらっしゃったと思いますが、“焦り”は感じませんでしたか? 私は感じなかったですね。学校と違って、入る時期も出る時期もみんなバラバラなので、誰かと競争するような雰囲気ではなかったからだと思います。もし、先に就職される方がいても、「話を聞かせてもらい参考にしよう」と思っていました。支援員の方も、特に就職をせかす感じではなかったので、自分のペースで通うことができたのだと思います。 第三者に助けてもらうことの大切さ 当時を思い返すと、私は就労移行支援事業所に限らず、“福祉”に対してまったく関心がなかった気がします。発達障害の特性や、どう対策するのか、どう働くのかといった情報ばかりを集めていて、「障害福祉サービスを利用する」という観点が抜けていたなと。 私も最初のころは「自分も障害福祉サービスを利用できる」なんて想像もしませんでした。でも、役所で障害者手帳の手続きをしたときに案内の紙をもらって、「自分が利用できる障害福祉サービスが、こんなにいくつもあるんだ」ということを初めて知ったんです。役所の方から「あなたも使っていいんですよ」と言ってくれているのなら、せっかくだからいつか利用してみようかな、と思うようになりましたね。 私は「自分が障害福祉サービスを利用すること」に対して、どこかネガティブな気持ちがあった気がします……。自分が障害の当事者であるということが受け入れられなくて。 たしかに、実際に自分がその立場になってみると、“障害者”という言葉の重さをとても感じますよね……。私も、いまだに悩むことがあります。・「障害福祉サービスを使っていいと言ってくれてるんだから、使わせてもらおう」という気持ち・「もっと苦労している人はたくさんいるから、障害者手帳を返納して、一般雇用枠で働いた方がいいんじゃないか」という気持ちこの2つの間で、気持ちがゆれ動くんです。「使わせてもらおう」という気持ちは、極限まで追い詰められないとなかなか持てないかもしれないですね。「生活するお金がもうない」とか「次の働き口がどうしても見つからない」とか。でも本当は、食うに困って命に関わるような状況に追い込まれる前の、「何とか生活はできているけれど、生きづらさを感じていて毎日が苦しい」という段階で、うまく障害福祉サービスを利用して生活を改善できる方がいいと思うんです。その方が、自分も周囲も楽になるというか。 たしかに、福祉に頼ることへ罪悪感を感じて、「まず身内に頼る」ことをしがちですよね。身内の中だけで悩みを抱え込み、周囲を巻き込んでどんどん苦しい方へ落ちて言ってしまうという……。 そう。なので、困ったときほど、身内を頼るんじゃなく制度とか障害福祉サービスとか、第三者を頼った方が、結果的には本人の自立にもつながるし、周囲の負担も減る。罪悪感を感じる必要なんてないんじゃないかと思います。そう思えるようになるのは、なかなか難しいですけどね。 終わりに:相談窓口のご紹介 筆者は就労移行支援事業所を利用しなかった立場ですが、「発達障害の診断を受け悩んでいたあの頃に、もっとうまく第三者を頼れていたら、何か変わっていたかもしれないな」と思うことがあります。 福祉サービスを利用するかどうかは人それぞれですが、生きづらさ・働きづらさを感じている皆さんが、次のステップへ進むための参考として、本記事がお役に立てれば幸いです。 本メディアは、今回の対談テーマでもあった就労移行支援事業所が運営しております。 「発達障害のある方が支援を受けられる窓口」の一つとして、就労移行支援事業所ディーキャリアをご紹介いたします。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。