注意欠如・多動症(ADHD)の記事一覧

【発達障害当事者が解説】「仕事がうまくいかない」対策と継続のコツ

「仕事がうまくいかない…」を乗り越えるための対策を筆者の実体験をまじえご紹介。対策を立てた後に『継続』するためのコツもお伝えします。

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「仕事がうまくいかない」「同じようなミスを繰り返してしまう」 発達障害の特性がある方にとって、「仕事がうまくいくかどうか」はかなり大きなテーマでしょう。注意欠如・多動性障害(ADHD)の当事者である筆者も、過去に仕事でミスや失敗をして落ち込み、不安感にさいなまれる経験をしてきました。 平成29年に発表された厚生労働省の発表によると、精神障害者の障害者雇用の離職理由について「仕事内容があわない」「作業、能率面で適応できなかった」という項目が上位にきています。また、日本国内の企業の99.7%を占める中小企業のうち、障害者雇用の定着の理由として「作業を遂行する能力」を挙げる企業が一番多いという調査結果も出ています。 参考文献:障害者雇用の現状等|厚生労働省 発達障害特性への対策は世にたくさん発信されています。一方で、発達障害のある方の離職率が劇的に低くなったという話は聞きません。つまり、対策を知ったとしても、それを実際の自分の業務に生かすことが難しいのではないでしょうか。 今回の記事では、発達障害のある方によくある失敗とその対策、そして、対策を継続し習慣化していった筆者の体験談をお伝えします。皆さんが少しでも職場で長く違和感なく働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害当事者によくある失敗 発達障害の特性があると、以下のような失敗をしがちです。それぞれについて、原因と対策を挙げてみます。今回ご紹介をする【原因】は、あくまでも一例です。特性は一人ひとり異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。 ① ケアレスミスが多い 【原因】 一般に、「記憶の抜け漏れ・忘れ」はケアレスミスにつながりやすいと考えられます。発達障害の特性の有無と、「ワーキングメモリ」と呼ばれる作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力の間には関連性があることが指摘されています。 参考文献:「ワーキングメモリと実行機能の発達」|発達心理学研究 2019,第30巻,第4号,173-175 【対策】 ワーキングメモリの働きを自分でコントロールすることはなかなかできません。頭の中だけで覚えておこうとするのではなく、紙のノートやPCのメモ帳に書き出して保存することが、簡単ながら一番効果的な対策です。電話を受けたらメモをする、口頭で指示を受けたらToDoリストに書き出すなど、確実に残る記録としていつでも参照できるようにしておくことが大切です。 ② 納期を守れない 【原因】 発達障害の特性の1つとして、不安が強く心配性であるため、失敗・挫折への恐怖が強いという傾向があり、仕事(やるべきこと)の先延ばしをして納期を破ってしまいがちだとされています。 参考文献:ひきこもり支援者読本 第2章「ひきこもりと発達障害」|内閣府 【対策】 「できないかもしれない」と思ってしまう仕事は「失敗せずやれる」と思えるような細かい作業手順に分解することでその不安や恐怖を取り除きます。すると、とりあえず手を付けることができるようになります。その結果、先延ばしを避けて納期通りにやるべきことを終わらせることができます。 ③ 優先順位を間違える 【原因】 やるべきことが複数あり、そのどれから着手するかを決める、いわゆる「優先順位づけ」についてもまた、発達障害当事者は困難を抱えがちです。それは、目の前の作業に没頭するあまり、全体と部分の把握を適切に切り替えることが難しかったり、先々の展開を想像することが苦手だったりすることが原因といっても良いでしょう。 参考文献:注意欠陥/多動性障害児を対象とした課題解決場面におけるメタ認知を促すための支援方法に関する事例的研究|上越教育大学大学院 【対策】 「手を付けなければいけない順番」の指標として締切を意識します。締切を意識することで、早く終わらせなければいけないのはどれかが分かり、正しく優先順位づけをすることができます。 このように、それぞれ原因を知り対策を講じることで、よくある失敗を事前に避け、仕事の質を上げることができます。しかし、対策を講じたは良いが続かなかった、飽きて途中で辞めてしまったといった経験がある方も多いのではないでしょうか。 そこで、筆者の「挫折してしまった(継続できなかった)経験」と「うまく継続できた経験」を対比して、対策を習慣化するコツをお伝えします。 うまくいかなかった「ToDoリスト」 筆者は「タスク管理ツール」を使うことで仕事のクオリティーを上げて長く安定して働き続ける力をつけました。しかし、最初からうまくいったわけではありません。 はじめての会社で先輩や上司から言われたのが「ToDoリストを作りなさい」というものでした。それまで「自分のやるべきことを書いて管理する」ということを一切してこなかった筆者は、ただ「作りなさい」と言われ、見よう見まねでやらなきゃいけないと思うことをノートに列挙して仕事をするようになりました。 増殖し続けるリスト ToDoリストに自分の仕事を書き出すだけでうまくいく......わけではありませんでした。むしろ書き出せば書き出すほど仕事の悩みは大きくなりました。「書いても消えない」のです。 例えば、ある日に10個の仕事を書き出したとします。そのうち7個くらいこなしたとして、残りの3個の仕事は翌日のページに繰り越されます。翌日新しい仕事がまた10個発生したら、合計13個の仕事がリストに並びます。そんな調子で数日経過すると、書き出す気がなえるほど膨大な数の仕事を毎日リストに書くことになってしまいます。 なにから手を付ければ良いかが分からない また、ToDoリストに書き出した仕事の数々を眺めて、「あれ?これ何から手を付ければいいんだろう?」と手が止まることも頻繁に起こりました。ある仕事について手が止まると、別の仕事に目がいきます。ところが、別の仕事も同じく手が止まる。また別の仕事に目が向く。またどう着手すれば良いかが分からない。その繰り返しで、結局リスト上の仕事を減らすことが難しくなってしまい、リスト上の仕事が増えることに拍車をかけてしまいました。 優先順位が分からない さらに、目の前におびただしい数の仕事があるとどうしても目移りしてしまい、「あれもやらなければ」「これもやらなければ」と混乱してしまいました。その結果、本当なら最優先で取り組むべき仕事を後回しにしてしまったり、逆にすぐにやらなくてもいい仕事をなぜかすぐにやらないといけないと思い込んでしまったりと、優先順位をきちんとつけることができていませんでした。 ToDoリストによる管理が崩壊 そうしたことが重なり、ToDoリストを更新することが面倒くさくなって、仕事の基本である「自分がやるべきことを客観的に把握する」のをやめてしまいました。 なお、当時の筆者は上記のように細かく分析できていたわけではなく、「なぜか仕事がうまくいかない」という大雑把な認識しかありませんでした。したがって、「ToDoリストを使いやすくするように改善していこう」という考えが微塵もなく、ToDoリストを更新する作業が「仕事を邪魔する面倒くさいこと」としてしか認識できなかったのです。 こうして、筆者の「仕事をうまくこなす」ための作戦は完全に挫折して終わりました。 うまくいった「特性対策ツール」 ただやるべきことを列挙しただけのToDoリストだけでは仕事がうまく管理できなかった私に足りなかったもの。それは「ToDoリストを自分用に変えていこう」という考えでした。 ここに、対策を講じた後にやるべきことのヒントがあると筆者は考えています。それは、「実践」「検証」「改善」を繰り返すことです。以前のToDoリストでの失敗を糧にこの3つを繰り返すことで、ただのToDoリストを「自分ならではの特性対策ツール」へ変えることができ、仕事がうまく回るようになりました。 ①まずはToDoリストにやるべきことを書き出す 実は、ToDoリストを使うことには失敗だけでなく、良い部分もありました。それは、「書いたことは忘れない」という安心感です。むしろ、「書いたから安心して忘れることができる」と言っても良いかもしれません。やるべきことをToDoリストに書き出すことにより、少なくとも「覚えたはずなのに忘れる」「抜け漏れが発生する」といったことによるケアレスミスは減らすことができました。 しかし、以前にToDoリストを使ったときは、「書き出すだけ」で終わっていたのです。そのため「議事録の作成」や「企画の立案」といったざっくりした内容の項目が並ぶToDoリストを眺めては、「議事録を作るためには、何からとりかかればいいのだろうか」「どのような手順を踏めば企画書を作成できるのだろうか」と考えてしまい、いつまでたっても着手できずにいました。 ②仕事の手順を付け加える そこで、書き出したToDoリストに「より具体的で分かりやすい作業手順」を付け加えるようにしてみました。例えば「議事録の作成」の場合、まずは「議事録のフォーマットを先輩から手に入れる」ことが必要ですので、これが最初の作業手順となります。これをToDoリストに書き足しておけば、「まず最初に何をすれば良いか」が分かるので、作業に着手しやすくなります。 これにより、手が付けられず無駄に時間が過ぎていくことを予防でき、結果的に先延ばしを回避することができて納期を守りやすくなりました。ただ、いくら「着手しやすい手順」が目の前に並んでいても、「では、どの作業から着手しよう」というところで迷いが生じます。つまり「優先順位の問題」を考えなければならないのです。 ③自分が進めている仕事かどうかを付け加える 優先順位の問題の対策としてまず考えられるのは、「優先順位をつける対象の数を減らす」ことです。誰かが進めているのを待っているだけの仕事は、自分がすぐに手を付けられないので、そもそも「着手すべき仕事」の優先度を判断する対象から外すことができます。 さらに、「自分が進めている仕事」と、「誰かが進めていて自分はそれが終わるのを待っているだけの仕事」を区別できるように、ToDoリストに「自分」「相手」などと付け加えました。その結果、優先順位をつける対象を絞り込むことができ、どの作業から手を付けたらいいのかが分かりやすくなりました。 ただし、優先順位をつける対象をある程度絞り込めたとしても、最終的にはその中から「今、自分が進めるべき仕事」をどれか1つ選ばなければなりません。その選択基準がなければ、結局、優先順位がつけられていないのと同じことになってしまいます。 ④手順の締切を付け加える そこで、「今、自分が進めるべき仕事」を1つ選びやすくするために、その手順の締切を付け加えました。締切の日付があれば、「これは早めにやっておいた方が良さそうだ」「これは締切が随分あとだから、まだ寝かせていても大丈夫」ということが分かるので、「今、自分が進めるべき仕事」を選びやすくなります。 このようにして、「ケアレスミス」「納期を守れない」「優先順位がつけられない・間違える」という困りごとへの対策を、自分のものにすることができました。また、実践→検証→改善というサイクルを繰り返すことによる「手間暇かけた感」が、この特性対策ツールへの愛着を湧かせ、この仕事の管理方法を継続させる土台となりました。 対策を継続させるための仕組み ここまででも十分に仕事で活用できる管理ツールにはなったのですが、さらに継続させるための仕組みとして、「適切に自分に報酬を与える」ようにしました。 国立精神・神経医療研究センターの研究によると、ADHDのある方には「後で手に入る高額の報酬よりも、すぐに手に入る少額の報酬を選ぶ傾向がある」と言われています。 参考文献:報酬はヒトの行動抑制機能を高めるか?神経心理学的アプローチによる報酬効果の検討と展望|日本生理人類学会誌 Vol.27,  No.2  2022, 5 38 - 45 ここでいう「報酬」とは、仕事が進んだり、完了できたりすることによる「満足感」と考えていただければと思います。ADHDである筆者も例に漏れず、大きなプロジェクトを終わらせたときの満足感のような「後で手に入る高額の報酬」までは待てません。そこで、「すぐに手に入る少額の報酬」を自分で設定するようにしたのです。 完了数の表示 今までご説明した「特性対策ツール」を、私はExcelで作っています。そのExcel上で、「完了した仕事の数」を表示させるようにしました。ロールプレイングゲームでは、経験値が一定数たまるとレベルが上がります。現実の世界では数字がたまっても何も変わらないのですが、Excel上の数値が上がるだけでも「やった!」と満足感を覚えます。仕事を1つ1つ終わらせるごとに「仕事の経験値をためる」という感覚を自分に起こさせるようにしたのです。 毎日の仕事の発生数/完了数の表示 Excel上でその日発生した仕事の数と、完了させた仕事の数とを比較できるようにしました。例えば、ある日仕事が5つ発生して、4つ完了させていたとします。その時点で「1負け」です。そこで、なんとかすぐに完了できる仕事がないか探します。運よくすぐに終わる仕事が見つかると「引き分け」になります。さらにもう1つ仕事が完了できたら「1勝ち」となります。 「発生数/完了数の勝ち負け」の仕組みは最初はお遊び程度だったのですが、これもロールプレイングゲームのような満足感を味わうことができ、仕事を進めるよい燃料になりました。 仕事が画面から消える これはもう筆者の個人的な趣味のような領域になってしまうのですが、完了させた仕事は記録には残るものの、Excelの画面上では見えなくするようにしました。Excelの「フィルタ機能」を使うとことで、完了させたToDoがスッと消える(正確には、画面から見えなくなる)のです。 この瞬間がたまらなく好きになり、この消える際の「スッ」というExcel上の動きを見るだけで一種の快感のようなものを覚えるようになりました。 まずは自己理解から 以上、筆者の失敗事例とうまくいった事例から、「実践」→「検証」→「改善」というサイクルを回すことでより自分に合ったやり方を見つけることで継続できることをお伝えしました。 ただ、筆者とまったく同じことをしましょうと言うつもりはまったくありません。この事例からお伝えしたいことは、「実践・検証・改善を繰り返すことでより習慣化しやすくなる」「改善には、自己理解が助けになる」ということです。 特に、自己理解を深めておくことが大事だと筆者は考えています。抜け漏れしやすかったり、先延ばしぐせがあったり、優先順位がつけにくかったりする特性を認識していないと、そもそも対策を立てること自体ができないからです。 自己の障害特性を理解し、仮説レベルでもいいので対策を立てて実践し、その結果を検証し、自分の特性に照らして「特性のある自分でも対応できそうな」改善策を付け加え、それを実践して......という繰り返しをすることが、発達障害の特性を持つ私たちがより生きやすくなる道だと筆者は考えます。 ただ、正直なことをお話すると、何から何まで自分でやろうとするのは、とても時間と手間がかかります。筆者自身も特性を把握するまでには数年の時間がかかりました。今、この記事をお読みの方は「そこまで時間と手間をかけていられない」とお考えだと思います。 そんなときには、自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 編集担当 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【発達障害当事者が解説】無理なく働き続けるための特性理解と対策

長く健康的に働き続けるためにはどうすればいいのか。筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。

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「仕事がうまくいかず長続きしない」「職場の環境と合わなくて、短期離職を繰り返してしまう」 令和2年に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害のある方が1年間就労を継続できている割合は50%を切っており、定着が困難な方が多いと解説されています。 参考文献:障害者雇用の促進について関係資料|厚生労働省 発達障害の注意欠如・多動性障害(以下ADHDと表記)の当事者である筆者の就労経験からしても、最後に勤めた会社を除き、思ったほど長続きしなかった印象があります。障害者雇用枠で就労していた会社は4年強で休職し、一般雇用枠で就労していた会社は2年と持たずに休職してしまいました。実際は休職に至るまでかなり長い期間をかけて「就労環境とのミスマッチ」が生じていたので、適切な環境で就労できていた年数は、それよりもずっと短いという印象です。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。皆さんが健康で長く働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害のある方が仕事が長続きしない原因とは 仕事が長続きしない原因は「①仕事内容とのミスマッチ」「②職場環境とのミスマッチ」の2つと考えられます。 仕事内容とのミスマッチ 曖昧な内容が理解できないことで空気が読めなかったり、衝動的に思いついたことをしゃべったりといった発達障害の傾向は、周囲の人たちとのコミュニケーションがうまくいかなくなることにつながりがちで、仕事内容とのミスマッチが発生する可能性があります。 例えば、接客業はお客様とのコミュニケーションありきの仕事なので、お客様とのやりとりがうまくいかなければ、そもそもその仕事にマッチしないということになります。 職場環境とのミスマッチ さらに、せっかく仕事内容とはマッチしていても、例えば遠隔地にあるオフィスに通うための長時間の満員電車の混雑に耐えられなかったり、騒がしいオフィス内で発達障害の特性による聴覚過敏から集中できなかったりといった、職場環境とのミスマッチを生んでしまうこともあります。 筆者の事例 筆者も発達障害の特性によるミスマッチに悩まされた一人です。 「先延ばしグセ」がもとで期日に厳しい公共機関へ提出する報告書に手を付けずクレームを受ける 「段取り下手」で社内イベントの準備がうまくできない 「マルチタスクが苦手」なあまり名刺発注業務と社内備品の発注と来客対応の優先順位がうまくつけられない 「抜け漏れ」でついさっき頼まれた仕事を忘れる 「自己関連付け」(何か良くないことが起こったとき自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう)で通常どおりに使用していたプリンターが壊れた際に自分が原因があると考えてしまう このようなことが多発し仕事がうまくいかなくなる→ストレスが溜まりその傾向に拍車がかかる→より仕事がうまくいかなくなる、という悪循環に陥りました。 また、仕事がうまくいかないことで、周囲の方々との関係も悪化し、あるいはそう自分が勝手に思い込んでしまい、居場所感のようなものがだんだんなくなっていき、「これ以上仕事を続けられない」という心理状態になっていきました。 この悪循環を断ち切るには、自らの特性に応じた対策を打つことが必要です。そのためには、自分にはどういった特性があるのかをまず知ることが大事です。 発達障害の特性を理解するメリット 前述したように、自らが持つ発達障害の特性を知ることはその対策を打つためにとても大事です。ここでは、自分の障害特性を知るメリットについてお伝えします。 「続かない」仕事を避け、「続けられる」仕事を選べる 自分の特性が分かると、その特性にあった職業を選ぶことができます。 例えば、「臨機応変に段取って仕事を進めるのが苦手」であれば、プロジェクトの進行管理をするWebディレクターや、複数の顧客とやり取りをする必要のある営業職などは難しいでしょう。また、ケアレスミスを多くしてしまう傾向があるのであれば、税理士や司法書士など正確な事務作業が要求されるような職業はあらかじめ候補から外しておくのが得策です。 逆に、細かい事務作業は苦手だけど人と接するのが得意という方は、飲食やサービス業などの接客業が向いている可能性が高いと言えます。細かいチェックなどの作業に集中できるのであれば、経理などの事務職が向いている可能性が高いと言えます。 このように、自分の特性を理解していれば、仕事を選ぶときに当たりをつけることができるようになります。 「できない」仕事について周囲がサポートしやすくなる ただし、どんな仕事でも「100%自分の得意なことだけやっていればいい」ということはほとんどありません。 例えば、接客業であっても出勤シフトを組んだり、一日の売上の計算をしたりするときには、どうしても事務作業が必要になります。また事務職であっても自分の業務のみ黙々とおこなうのは難しく、少なくとも仕事を協力し合う同僚とはコミュニケーションを取らなければなりません。 そこで「この仕事のこういう部分が苦手です/得意ではありません」といったことを把握し、自分から周囲に伝えておけば、「あの人は、事務処理が苦手だから手伝おう」「コミュニケーションが苦手だから、分かりやすく話してあげよう」とサポートしてもらえる可能性が高くなります。 「できる」仕事について能力を発揮し、自己肯定感を高められる 得意な仕事が分かっていれば、「それやります!」と率先して引き受けることができます。 得意なことなので当然その仕事はうまくいきやすく、成功体験を積むことができます。成功体験を積むと、自己肯定感が上がります。すると、もっと積極的に仕事に取り組むことができるようになります。 この好循環により、安定して仕事を続けられるようになります。 対策の具体的な手順と事例 自分の障害特性を知ればその対策を打つことができます。対策が打てれば、働きやすさは格段に上がります。ここでは、自分の障害特性を知り対策を打つところまでの筆者の具体的な経験をお伝えします。 自分の障害特性を知る 筆者は、2007年にADHDの診断を受けました。しかし、診断を受けただけで終わってしまいました。「自分はADHDである」ことを“知った”だけで、「では、自分にはどのような障害特性があるのか」までは考えようとしなかったのです。 その後、会社に就職して働き始めるのですが、具体的にどのような障害特性があるのかまで分かっていないので、当然仕事はうまくいきません。入社 → やみくもに頑張って仕事をするも次第に息切れ → 休職という流れがお決まりになってしまいました。 その流れを断ち切ったのは、2社目での休職からの復職後のことでした。 それまでの経緯を振り返り、自分の特性を知ろうと考えたのです。厳密に言うと「うすうす自分の特性には気づきながらも認められずにいたが、ついに意識せざるを得なくなった」といったところでしょうか。 このとき、「自分の障害特性を知ること」と同時にやったのは「諦めること」でした。 「忘れない自分になるのを諦める」「段取りよく仕事を進められる自分になるのを諦める」「先送りしない自分になるのを諦める」 諦めることで、特性ありきの自分を受け入れることができ、「そんな自分でもなんとかできるためにはどうすれば良いか」というスタート地点に立つことができたのです。診断を受けてから7年の月日が経っていました。 特性に対する対策を知る 自身の障害特性を知って受け入れた後は、その対策を立てることになります。復職直後は時間的余裕があったので、目の前にあるPCでExcelの練習も兼ねて、自分の特性をカバーするようなものを作ろうと考えました。 忘れっぽさに対しては、とにかく依頼を受けた仕事は全部Excelに書くことで対処していくことに決めました。 段取りが苦手なことや先送り癖に対しては、受けた仕事を細かい手順にあらかじめ分解して、その手順ごとに細かく締切を設定することで対処しようと考えました。 全部自分の責任だと考えてしまう「自己関連付け」という思考に対しては、それぞれの手順の担当者は誰かを追記することで、自分が進める段階か相手が進める段階かを明確にして、必要以上に自分が責任を背負い込み過ぎないような表示にしました。 マルチタスクになると気が散って集中できなくなってしまうのは、それぞれの仕事について「今やるべき手順」のみを表示させることで、「今自分が取り組むべきことはこれ!」と集中できるようにしました。 こうしてできたExcelの自分用仕事ツールによって、仕事の質・量が劇的に改善し、そして何より仕事をする自信を持つことができるようになりました。 余談ですが、このようなやり方をしている人が他にいないかと調べてみると、「タスク管理」という仕事術に非常に似ていることが分かり、その瞬間思わず感動して抑えきれず声が出たのを覚えています。 タスク管理に限らず、特性を受け容れて対策を打ち出すときに大切なことは、自分が頑張って「できるようになる」ではなく、他人や物に頼って「自分はできないけど、結果的になんとかする」という考え方です。このように考えると、無理なく仕事が続けられる、自分に合った対策を立てることができるようになります。 (自己対処できない場合)自分に必要な合理的配慮を知る 合理的配慮とは、「障害による困りごとへの配慮を、企業や自治体、教育機関等の事業主に求めることができる」という制度です。合理的配慮について職場と調整をすることは、発達障害のある方が安定して長く働いていくために大切なポイントとなります。 ※合理的配慮について、詳しくは関連記事をご参照ください 筆者はタスク管理でかなり状況が改善されましたが、それでも仕事上うまくいかないことはあります。筆者の場合は、否定的な態度でコミュニケーションをとられると、それだけで萎縮して頭が真っ白になってしまい、しばらくの間まともな判断ができなくなってしまいます。 復職後しばらくして別の会社に障害者雇用で転職した筆者は、社長面接で「ではあなたの求める合理的配慮を教えてください」と言われました。 そこで、「怒らないでください。仕事についてはタスク管理でカバーしてなんとかしますが、もし私に落ち度があって改善する必要があれば、普通のトーンで変更の提案をしてください」と伝えました。 実際、ほとんど怒られずに済み、精神的にも安定して長期間就労を継続することができました。 逆にタスク管理部分を配慮してもらって、「自分のメンタルは自分でなんとかします」でも良いと思います。実際、厚生労働省から出ている合理的配慮指針にこのような内容があります。 「業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと」 出典:合理的配慮指針|厚生労働省 できる限り対策を考えてやってみて、それと同時並行で対処しきれないところについては合理的配慮を求めるという姿勢が大事なのではないかと考えています。 筆者の事例はあくまで個人的なものですが、「自分の特性を知り受け入れる」「その対策を立てる」「それでも必要な部分を合理的配慮として求める」ということは、どんな方にも共通する大事なことではないでしょうか。 ただ、筆者のように自分の特性を受け入れるまで何年もかけるのは現実的ではありません。また、その対処法についても、筆者は幸運なことにExcelを使ったタスク管理に出会ったわけですが、人それぞれ違うであろう対処法を自分だけで探し当てるのは難しいかもしれません。 そんなときには、自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 編集担当 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【発達障害当事者が実践】職場の対人関係を円滑にするビジネスマナー3選

ASDのある方が困りごとを感じやすい「職場でのコミュニケーション」。筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコツをお伝えします。

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「普通に振る舞っているつもりなのに、周囲の人たちとの壁を感じることがある」「日頃の行動について注意されたが、どうしたら良いか分からない」 多かれ少なかれ、どんな人でも職場に溶け込むための悩みはあるものでしょう。ただ、周囲の様子や反応から、職場における適切な振る舞いを学ぶのは、発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(以下、ASDと表記)の特性がある方にとって苦手なことではないでしょうか。 筆者は、診断として受けているのは注意欠如・多動性障害(以下、ADHDと表記)のみですが、発達障害はスペクトラム(連続性)のあるものであり、ASDに由来する(と思われる)困りごとも体験してきました。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコミュニケーションのコツを3つお伝えします。 今回は「職場のコミュニケーション」のなかでも社会人として問われる機会の多い「ビジネスマナー」に絞ってお届けします。 皆さんが少しでも働きやすくなるように、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 ASDのある方が、ビジネスマナーが苦手な原因とは ASDの特性がある方は、場の空気を読むなどして暗黙のルールを認識することが苦手とされています。 参考文献:発達障害者の就労上の困難性と具体的対策 ─ASD 者を中心に|独立行政法人労働政策研究・研修機構 なぜ、ASDの特性がある方は、暗黙のルールを認識するのが苦手なのでしょうか。 一般に、発達障害の特性がない定型発達の方は、「①理解できていない」状態から「②なんとなく分かる」という段階を経て「③理由が説明できて分かる」という順番で理解が進みます。 しかし、ASDの特性がある方は、「②なんとなく分かる」というプロセスがないことが研究で分かっています。つまり、「①理解できていない」の次が「③理由が説明できて分かる」なのです。 これは、言葉で分かるようにならないと理解ができないということと、一度理解したことを「なんとなく」変更する柔軟な対応が難しい(マイルールへのこだわりがある)ことを意味します。 参考文献:他者理解の発達再考―直感的他者理解をめぐるASD(自閉症スペクトラム)研究を通して―|東洋大学 どの職場でも「これは言わなくても守って当たり前」と思う「暗黙のルール」は存在します。そして、色々な職場に共通する暗黙のルールが「ビジネスマナー」としてまとめられ、明文化されないまま社会全体に広まっていったと考えて良いでしょう。これは、言葉以外の意味合いを重要視する日本ならではの文化かもしれません。 ただし、ASDの特性がある方がこのような文化の中でうまくコミュニケーションをとっていくのは、上記の内容から分かる通り、難しいと言わざるを得ません。 そんな発達障害の、特にASDの特性がある方が、職場でのコミュニケーションを円滑にするためにはどうすればいいのでしょうか。具体的な対策としてのビジネスマナーを、筆者の失敗事例を通してお伝えしていきます。 対策①報連相ができない→ひと言テンプレートを用意 筆者の体験談 「報告」「連絡」「相談」をまとめて「報連相」といいます。職場でのコミュニケーションの第一歩でありビジネスマナーの基本ですが、筆者が一番最初にぶちあたった壁でもありました。 働き始めた当初、私にはそもそも報告や連絡、相談などをするという考え自体がありませんでした。しかし、当時の上司や先輩社員にとっては、仕事をする上で報連相をすることは当たり前であり「教えるまでもないこと」だったのです。 その結果、「ある程度進んでいるのなら、きちんと報告して欲しい」「分からないことがあるなら、相談するように」と言われるまで、一人でウンウンうなって何も仕事が進まない、進まない状況すら上司などに共有しないという状況になってしまいました。 さらに、「報連相をしなければいけない」と分かっても、どのように報告や連絡、相談をすれば良いかが分からないという問題が出てきました。 「実は、名刺を作っているんですけど、昨日営業部のAさんが、名刺作成依頼の申請を上げてきて、それで...」 と、思いつくまま話し始めると、 「で、いったい小鳥遊くんは何を言いたいの?」 と上司に怒られてしまう。それで心を折られて「すみません、出直してきます」と自席へ戻り、なかなか話すきっかけがつかめない。そんな場面がしょっちゅうありました。 対策 「喋りだしの一言テンプレート」を準備しておきましょう。 報連相をするためには、まずどう喋りだすかが重要です。いきなり本題に入るのではなく、「報告」なのか「連絡」なのか「相談」なのかを最初に明確にすれば、聞く方も聞きやすくなります。 「●●の件について、『報告』or『連絡』or『相談』なのですが、今よろしいでしょうか?」 こういった「喋りだしの一言テンプレート」を最初に言うだけで、相手の反応が違ってきます。仮に、それに続く内容があまり要領を得ないものであっても、「小鳥遊くんが今いっているのは、相談だったよな。であれば、話の内容から自分が何かしら返答する必要があるはず。まずはじっくり聞いてみよう」などと、相手側から歩み寄ってくれます。 私はこれで「何を言っているか分からない」と言われてすごすごと退散することはなくなり、安心して報連相ができるようになりました。 対策②雑談が苦手→共通の話題を選ぶ&避けた方がよい話題もあり 筆者の体験談 誰も教えてくれないビジネスマナーの中に「適切な話題を選んで雑談する」というものがあります。 筆者はクラシック音楽が趣味なのですが、正直言って「誰でも知っている」という話題ではありません。しかし、会話の中でちょっとでもクラシックの話が出てくると「これは自分の出番!」とばかりに、その話に熱中して話し続けてしまっていたのです。 会話をしていた相手にとっては、あまりよく知らない話題について延々と話されて、さぞ閉口したことと思います。 対策 雑談は、共通する話題を選び、タブーの話題を控えましょう。 雑談の目的の一つは、相手との共通点を見いだし、距離を縮めて関係性を良くするところにあります。したがって、自分が好きな話題を繰り出して一方的に話すのではなく、多少興味は薄くてもお互いが分かる共通の話題をピックアップすることが大切です。 同時に、以下のような一般的にタブーとされている話題は控えましょう。個人の思想や信条にダイレクトに関わることであったり、あまり人に言いたくない話であったりする可能性が高いからです。 政治 宗教 収入 学歴 家庭や家族の問題 対策③暗黙のルールが理解できない→自分の考えをいったん脇に置く 筆者の体験談 ある日、私は直属の上司である副部長から指示を受けて仕事をしていました。それを見ていた係長が猛然と「そんなことを今していてはダメだ!もっと他にやるべきことがあるだろう!」と筆者に指導をしはじめました。 当然、係長よりも副部長の方が上なので、「いや、でも副部長の指示なので...」と答えたところ、「上の人が言うからといって、そのまま鵜呑みにしてはダメだ!」となお一層怒られてしまいました。 後で先輩社員がこっそり教えてくれたのですが、その係長は、会社が何度もお願いをして社員になってもらったので、職位は係長でも発言力はとても大きい例外的な方だったのです。「いや、副部長が...」と返答したことは、そういった事情から考えると、取ってはいけない行動だったのでしょう。 対策 あれ?と思ったら、自分の考えをいったん脇に置きましょう。 副部長の指示に係長が反対の意見を言ってくる時点で「あれ?」と思うタイミングがあったはずです。そこで自分の考えを優先せず、周囲に「副部長からの指示とまったく逆のことを係長から言われて迷っているんですが...」と素直に聞いていれば、「ああ、それはね...」と内情を話してくれたかもしれません。 このように、一般的な常識とは異なる、その職場だけの「暗黙のルール」があることは珍しくありません。本を読んだり、過去の経験から学んだことが通用せず、「実際にその職場の人に聞いてみないと分からないこと」はどうしても存在するのです。 そのような場合、自分の中の「こうあるべき」はいったん脇に置き、周囲の人たちの行動を観察してその真似をしたり、以前に同様の仕事をした人に「どう進めたか」を聞いたりしてみましょう。そうすることで職場に溶け込んでいくことができます。 なぜビジネスマナーが必要なのか 仕事仲間とはいえ、良い関係を構築する「努力」が必要 どれだけ同じ場にいて一緒の時間を過ごしている「仲間」であっても、あくまで上司は上司、部下は部下、同僚は同僚です。一緒にいれば勝手に良い関係が構築されたり、いったん構築された良い関係が自動的に継続できたりするとは限りません。むしろ、意図的に「良好な人間関係」を築き、それを継続させるための努力が必要と言えます。 その努力を集約したものが、例えば、「雑談をして、ある程度お互いのことを知ってサポートし合う」や「報連相を適切にして余計な人間関係の摩擦をなくす」といったビジネスマナーなのです。 一般的には無意識に実践されているこの「ビジネスマナー」ですが、これを意識的に身に付けるようにすれば、職場での円滑なコミュニケーションに大いに寄与するのではないでしょうか。 努力するのと同時に、合理的配慮でより良い関係性を ただし、どれだけ職場で周囲とうまくやっていけるよう努力しても、自分一人では限界があるかもしれません。そのような場合には、会社と「合理的配慮」を相談することも検討しましょう。 例えば、報連相の喋り出しをテンプレート化しながら、仕事上のコミュニケーションをより円滑にするために「言葉になっていない意図は、汲み取ることが難しいので、できるだけ言葉や文章にして伝えてください」といった配慮を求めることができれば、より仕事がやりやすくなることでしょう。 ビジネスマナーを実践しながら、職場との合理的配慮を調整することで、より健康で安定的に働き続けることが可能になります。 しかし、自身の特性を過不足なく把握し、必要な合理的配慮を伝えられるようになるのには、また別の大変さがともないます。そんなときには、自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 編集担当 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
働きやすい職場の探し方|発達障害のある方の「求人検索」ポイント

「自分に合った職場を選びたい」発達障害のある方が就職・転職時に求人検索をするときのチェックポイントを、当事者の体験談を交えてご紹介します。

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「転職しようと思っているけど、自分に合った職場をどうやって見つければいいんだろう」 誰にとっても、自分に合った職場を見つけるのは難しいもの。特に発達障害のある方の場合、仕事の経験やスキルだけでなく、自分の障害の特性も考慮して選ばないと、転職先で働きづらさを感じる原因となってしまいます。 実際に、筆者も転職の際に自分とは合わない職場を選んでしまったことで二次障害になり、1年もたたない間に離職することになってしまった経験があります。 そこで今回は、発達障害のある方が就職・転職活動で求人を検索する際に、調べておいた方がいいポイントをご紹介します。皆さんが自分にあった働きやすい職場を見つけるために、この記事がお役に立てれば幸いです。 [toc] 自分に合わない職場を選んでしまうとどうなる? もしも、自分に合わない職場を選んでしまったら、どのような困りごとが起こるのでしょうか。まずは失敗例として、筆者の体験談をご紹介します。 私は、注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)と自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受けています。失敗経験をしたのは、35歳で2度目の転職をしたときでした。 職場の環境が合わなかった 転職前はオフィスが比較的広く、デスクが一人ひとりパーテーションで区切られていました。黙々と作業するタイプの業務をおこなっている企業でしたので、職場は比較的静かで、電話が鳴ることもあまりありませんでした。 しかし、転職後は小さな会社だったので、一つの部屋で10名弱の社員全員が働いており、個人のスペースはほとんどありませんでした。誰かが話していれば耳に入りますし、電話もしょっちゅう鳴っていました。 私はADHDの特性から、周囲の様子がとても気になってしまい、自分の作業にうまく集中することができませんでした。 仕事の進め方が合わなかった 転職前の職場は人数が多く、チームで仕事を進めることが多かったため、困ったときにも相談しやすく、自分からヘルプを出さなくてもサポートを受けやすい環境でした。 しかし、転職後の職場は人数が少なく、個人で仕事を進めることが多かったため、誰かの協力が必要な場合には周囲に対して自分から積極的にコミュニケーションを取り、巻き込んでいく必要がありました。 私はASDの特性から、コミュニケーションを取ることが苦手だったため、周囲を巻き込めずに一人で問題を抱え込んでしまい、うまく仕事を進めることができませんでした。 社内制度(福利厚生)が合わなかった 転職前の職場は社員が50名以上でしたので、産業医を設置する義務があり、いつでも相談できました。また、従業員へ定期的なアンケートをおこなったり相談窓口が置かれたりしており、従業員の健康を管理する制度が整っていました。 しかし、転職後の職場は人数が少なかったため産業医の設置義務がなく、また、設立から数年の若い会社だったため、社内制度(福利厚生)がまだ十分に整備されていませんでした。 一概には言えませんが、一般的には会社規模が大きくなるほど社内制度(福利厚生)は手厚くなると言われています。そのため、小さな会社ではメンタルヘルスケアや障害者雇用に詳しい担当者がいないこともあるのです。 ※もちろん、会社規模が小さくても社内制度(福利厚生)が整っている会社もたくさんあります。 当時の上司は親身に相談に乗ってくれたのですが、特別に専門知識があるわけではありませんでした。私も、当時はまだ自分の障害について理解が浅かったため、合理的配慮の調整がうまくできず、お互いにとって負担だけが大きい状態に陥ってしまいました。結果的に、私は仕事を辞めることになってしまったのです。 自分に合った職場を選ぶ大切さ 就職・転職活動において、自分の持っているスキルや経験に合った職場を見つけることはもちろん大切です。それに加えて、発達障害のある方の場合は「自分の特性に合っているか」という観点がとても重要です。 筆者の場合、転職前も後も営業職で、同じ職種での転職でした。しかし、転職前はどうにか仕事ができていたのに、転職後に困りごとが表面化しました。つまり、同じ職種であったとしても、職場の環境が変わるだけで大きな影響があるのです。 自己分析を行って自分の特性を理解したうえで、どのような職場であれば自分に合うのかを考え、求人を検索することが大切です。 なお、発達障害のある方向けの自己分析や、企業研究については、以下の記事もご参照ください。 就活HACK|発達障害のある方のためのお役立ちコラム 発達障害のある方向け「求人検索のポイント」 それでは、実際に求人を検索する際のポイントを4つご紹介します。 今回は、「実際に求人へ応募する前に、企業ホームページや求人サイトを見て情報を集める段階」を想定しています。 本当は、インターネットなどで情報を集めるだけでなく、面接や実習など「実際に企業の担当者と話せる場面」で聞いてみることも大切ですが、応募する前の段階では、実際に話を聞くことはなかなかできません。 ですが、インターネット上の情報でも、ポイントを押さえればある程度の見通しを立てることは可能です。 特に、“障害者雇用枠”ではなく“一般雇用枠”で働くことを希望する場合には、障害者雇用に関する情報が書かれていない可能性もありますので、いくつかの情報から総合的に考え、自分に合いそうな職場かどうかを判断するとよいでしょう。 1. 障害者雇用の実績がどれだけあるか まずは直接的に、障害者雇用の実績が公開されていないかを確認しましょう。大企業の場合は、CSRやSDGsの取り組みをPRするために、障害者雇用の実績やどのような取り組みをしているかを公開していることが多いです。 障害者の“採用人数”が多ければ、受け入れ体制が整っていると考えられます。“平均勤続年数”が長ければ、障害のある方にとっても働きやすい環境であると言えるでしょう。 また、従業員に対して“ダイバーシティ教育”を実施していれば、障害に対する周囲からの理解も得やすいだろうと予想できます。 なお、一般雇用枠ではなく障害者雇用枠での採用に応募する場合は、求人に以下の情報が書いてあるかどうかをチェックすると良いでしょう。 障害者雇用の過去の実績(採用人数、定着率、雇用者の障害種別など) 実際に提供している合理的配慮の事例 障害者の支援体制(専門部署や相談窓口の設置状況など) 発達障害(ADHD、ASD、SLD)の採用実績 2. 福利厚生が充実しているか 福利厚生が充実していれば、それだけ企業が社員を大切にしていると考えられます。以下のような制度があるかどうかを確認すると良いでしょう。 健康保険・厚生年金の加入(特に、有期雇用契約や短時間勤務の場合) 退職金制度の有無 健康診断のオプション(人間ドックなど)の実施、カウンセラーの設置 産休・育児休暇制度 フレックスタイム制度や時短勤務制度の有無 テレワーク・在宅勤務の実施 各種手当(通勤手当、住宅手当、家族手当など)の有無 慶弔見舞金制度の有無 特別休暇制度(生理休暇、リフレッシュ休暇など)の有無 食事に対する補助(社員食堂、食事手当など)の有無 スポーツクラブや習い事、自主学習への補助(資格取得支援制度など) 3. ハラスメント防止の取り組みがおこなわれているか ハラスメント防止の取り組みがある企業は、社員が働きやすい環境を整備しているという点で、発達障害のある方にとっても働きやすい職場だろうと予想できます。 ハラスメントを防ぐためには、社員に対して適切な教育や研修を行い、労働環境を整備することが必要です。また、被害者が安心して相談できるよう、相談窓口やホットラインなども設置しなければなりません。 これらの取り組みがある企業なら、実際に働いてから何か困りごとがあった場合にも相談しやすい環境であると言えるでしょう。 なお、法律では、障害者差別解消法や障害者雇用促進法などで、企業が障害のある方に対し「合理的配慮を提供すること」や「障害を理由に、仕事内容や昇格・昇給などの待遇面で不当な扱いをしないこと」を定めています。 ただ、すべての企業が、上記の法律にそった社内制度や相談体制を整備できているわけではなく、追いついていない企業も少なくありません。そういった面からも、「なにか困りごとがあったときに、対応してもらいやすいかどうか」は、チェックしておきたいポイントです。 4. 働き方改革に取り組んでいるか 近年、企業の「働き方改革」は大きな注目を集めています。働き方改革に熱心な企業であれば、従業員の“ワークライフバランス”を重視していると言えますので、発達障害のある方にとっても働きやすい職場である可能性が高いと考えられます。 例えば、“フレックスタイム”や“テレワーク”の制度があれば、時間や場所を柔軟に調整できることで、障害の特性にも対応しやすくなります。 “テレワーク”は、コロナ禍によって実施している会社は増えていますが、以下のような取り組みがあるかを確認することで、その企業が「どれだけ本気でテレワークを推進しているか」を予想することができます。 ノートPCやルーターなど、テレワークに必要な備品の貸与がある Google WorkspaceやSlack、Microsoft Teamsなど、場所を問わず業務がスムーズにおこなえるようクラウドサービスを活用している 在宅勤務時に、自宅の電気代やインターネット通信料への補助がある テレワーク時に、カフェやコワーキングスペースなどの利用への補助がある 会社がコワーキングスペースなどをレンタルして、「サテライト・オフィス」を用意している 自己分析を行って、自分に合った職場を選ぶことが大 発達障害のある方にとって働きやすい、自分に合った職場を選ぶためには、まず自分をよく知ることが大切です。 どのような業務が得意/不得意か どのような環境が働きやすい/働きづらいと感じるか 自分で対処(セルフケア)できる/周囲にサポートしてもらいたいことは、どのようなことか これらを理解できていれば、どんな職場を選べばよいかも少しずつ見えてきます。 しかし、障害の有無にかかわらず、客観的に自分を分析するのはとても難しいことです。 「考えれば考えるほど、頭がグルグルしてしまって答えにたどり着けない」 「一人だと途中で投げ出してしまう」 「結局、自分に合う働き方がよく分からない」 ……と悩んでしまう方も、少なくありません。そんな方々のサポートを行っているのが、就労移行支援事業所ディーキャリアです。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「就労移行支援事業所ってどう?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「就労移行支援事業所」をテーマに、実際に通った立場/通わなかった立場から「当事者のリアル」をお伝えします。

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  • #注意欠如・多動症(ADHD)
今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 第3回となる今回は、障害のある方が働くための支援をおこなう障害福祉サービス、『就労移行支援事業所』の利用をテーマに対談をおこないました。 対談した2名のうち、1名は事業所を利用し、もう1名は利用せず現在に至ります。なぜ就労移行支援事業所を利用した/利用しなかったのか、実際に利用してみてどうだったのかなど、当事者のリアルな体験談が、何か皆さまのお役に立てれば幸いです。 参考記事 第1回・第2回の対談記事は、以下よりご覧いただけます。 本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 就労移行支援事業所のことをどうやって知ったの? 私は、インターネットや書籍で発達障害についてかなり調べていたつもりだったのですが、『就労移行支援事業所』についてはまったく知らなくて。再就職活動をしていたときに偶然、就労移行支援事業所を運営している会社の求人を見つけて、「こんな障害福祉サービスがあるんだ!」と驚いたんです。とりさんは実際に就労移行支援事業所をご利用されたそうですが、最初に知ったきっかけは何でしたか? 私は診断を受けたあと、障害者手帳を取得したり仕事を休職したりするタイミングで、まず『障害者雇用』について知り、そこから広がって、就労移行支援事業所の情報にもたどりつきました。実は、診断を受ける前から「障害者専用のハローワークみたいな障害福祉サービスがあるらしい」ということを何となく知っていたのですが、自分が診断を受けるまでは、調べてみようとは思わなかったですね。 就労移行支援事業所を利用した/しなかった決め手は? 私が就労移行支援事業所の利用を決めたのは、「発達障害への配慮が受けられる会社へ再就職するために、準備をしたい」と思ったからです。私は、今の会社が3社目なのですが、1社目を退職したときは、退職後に生活リズムがどんどん崩れて、メンタルの調子も悪くなってしまいました。その後、なんとか再就職はしたものの、まだ自分の障害について理解が浅く配慮を受けながら働ける会社を探したわけではなかったので、2社目でも結局、体調を崩して休職することになってしまいました。1社目を退職したときの経験から、今度はちゃんと通院・服薬をし、自分の特性についても勉強していました。そして、「次は障害に対する配慮を受けながら働ける会社に再就職したい。休職期間を、そのための準備期間にしたい」と考えて、就労移行支援事業所を利用しようと思ったのです。 私が就労移行支援事業所を利用しなかったのは、「働きながら利用することはできない」というルールがあったからです。家族を養うためには、収入がない期間を作るわけにはいかなかったんですよね…。「通っている期間の生活費がまかなえないから、就労移行支援事業所を利用したくてもできない」というお悩みを、当事者の方からときどき耳にすることがあります。とりさんは通っている間、生活費をどのように工面されていましたか? 養うべき家族がいるのといないのとでは、状況はガラッと変わりますよね……。私はまだ20代前半で、ありがたいことに家賃は親に出してもらいました。家賃以外の生活費は自分で出していましたが、休職中で“傷病手当金※”を受給していたので、節約してどうにかしのぎました。私は職歴も浅く、ある意味、“失う物は何もない状態”だったと思うんです。だからこそ、「ここで一度立ち止まってもいいから、しっかりと自分に向き合い対策をして、その先のキャリアプランを整えよう」という判断ができたのだと思いますね。 ※補足:就労移行支援事業所を利用中の生活費を工面する方法としては、傷病手当金のほか、「障害者年金を受給する」という方法もあります。障害者年金については、以下の記事もご参照ください。 就労移行支援事業所の選び方は?どのように選んだの? とりさんは、いくつか就労移行支援事業所を比較・検討したうえで実際に通う事業所を決めたとうかがいました。どのように選んだのでしょうか? はい。見学したのは4か所で、選び方のポイントは大まかに以下の3つです。 ポイント1. 希望する職種の就職実績があるか 私は学生のころからイラストやマンガを描くのが趣味だったので、それを生かして、Webデザイナーとして再就職したいと思っていました。1つめの事業所は、就職先の実績が”事務系”や”作業系"だけで、自分が目指したい職種というよりは「障害があってもやれそうな仕事」をおすすめされている印象を受け、私の希望と合いませんでした。 ポイント2. 自分に合った訓練が受けられるか 私はすでに2社で働いた経験がありましたので、「社会人としてのビジネスの基礎的な訓練」よりも、もう少し技術的な訓練を受けたいと考えていました。2つめの事業所は、「働いたことがない/働いた経験が少ない人」を主な対象としていて、基本的なビジネスマナーや事務作業のスキルを身に付けるための訓練が中心ということで、私が受けたい訓練と合いませんでした。 ポイント3. 発達障害の特性への考え方が自分と合っているか 最終的にどちらにしようか迷った事業所が2つあったのですが、最後の決め手になったのは、「発達障害の特性への考え方」でした。3つめの事業所は、訓練で教わる技術のレベルも高く魅力的ではありました。ただ、「発達障害のある方々は、みんな特別な能力を持っているはずだ」という考え方に少し違和感がありました。私は、就労移行支援事業所への期待として、就職のための技術的な訓練だけじゃなくて、メンタルケアやセルフケア(自己対処)の方法も学びたかったんですよね。まずは基礎として自分の心と体、生活リズムを整えた上で、就職するための技術を学びたかったんです。なので、発達障害を“特殊能力”のように扱うよりも、何か、もっと“ありのままの姿”を基準にして、現実的な対策を教えてくれる方がいいなと感じたんです。4つめの事業所では、支援員の方が「障害者だからといって、何か特別な人、のような扱いはしません」とおっしゃっていたのがいいなと思って、『ディーキャリア』という就労移行支援事業所へに通うことを決めました。 とりさんの「選び方の3つのポイント」をお伺いして、自分に合った事業所を選ぶには、自分が就労移行支援事業所に何を求めるのか、最終的にどのような仕事をしたいのかという目的の設定が大切なのかな、と感じました。インターネットを見ていると「就労移行支援事業所に通ってみたけれど意味なかった」という意見を見かけることがあります。通う目的がハッキリせず、自分に合わない事業を選んでしまうと「通っても意味ない」と感じてしまうのかもしれませんね。 私のように「Webデザイナーになりたい」と明確な目的を持てていなくても、「配慮を受けながら障害者雇用で働きたい」とか「生活とメンタルを整えてから就職したい」というように、最初は大まかでもいいので、何かしらの“目的”を持っていた方がいいと思いますね。目的が何もない状態で手当たり次第に事業所を見学したとしても、自分に合う事業所はなかなか見つけられないんじゃないかなという気がします。 就労移行支援事業所に通って良かったこと/悪かったこと 私は、就労移行支援事業所に実際に通ってみて、結論としては「期待以上」だったかなと思っています。 おぉ、「期待どおり」を超えて「期待以上」だったのはどのような部分でしょう? まず1つめは「自分の考えを整理できたこと」ですね。支援員の方が定期的に面談してくれる中で、過去の出来事や自分の考えをいろいろ話すうちに、整理が進んでいった感じです。そして2つめは「セルフケアを学べたこと」です。特に印象的で、今もやっているセルフケアが“日記”です。体調や1日の過ごし方を記録するだけでなく、「頭の中で考えていることを、いったん頭の外に書き出す」というのがすごく良かったんですよ。私はモヤモヤした気持ちを自分の中にため込んでしまう傾向があって、それが原因で家族に当たってしまったり、ストレスを感じたりすることがありました。でも、心の中の見えないモヤモヤを、“言葉”という見える形にして日記に書き出すことで、すごくスッキリしたんです。ずっと頭の中を占領していたモヤモヤから解放されたような。注意欠如・多動性障害(ADHD)のある方は、脳の一時的な記憶の置き場である“ワーキングメモリ”に弱みがあると言われていますよね。モヤモヤを言語化し書き出すことで、このワーキングメモリを解放してラクにしてくれるような、そんな感覚がありますね。 逆に、「期待とちょっと違った」というような点は何かありましたか? 私の希望するWebデザイナーでは、実習を受け入れている企業の数や、障害者雇用の求人数が思ったよりも少なかったことですね。企業側も、クリエイティブ系の職種では“経験・実績あり”の人を求めているので、訓練を積んだだけで未経験で採用されるのはハードルが高いのかもしれません。企業の求める人材と、求職者の希望とのマッチングが難しい職種なのかもしれないですね。最近は「IT・Web系の職種専門の就労移行支援事業所」も増えてきましたが、当時はどちらかと言えばプログラミングの方が中心で、私の希望するWebデザインの実績がある事業所は、まだ少ない印象でしたね。 とりさんは、就労移行支援事業所に1年3か月ほど通っていらっしゃったと聞きました。周りには「先に就職が決まって退所していく方」もいらっしゃったと思いますが、“焦り”は感じませんでしたか? 私は感じなかったですね。学校と違って、入る時期も出る時期もみんなバラバラなので、誰かと競争するような雰囲気ではなかったからだと思います。もし、先に就職される方がいても、「話を聞かせてもらい参考にしよう」と思っていました。支援員の方も、特に就職をせかす感じではなかったので、自分のペースで通うことができたのだと思います。 第三者に助けてもらうことの大切さ 当時を思い返すと、私は就労移行支援事業所に限らず、“福祉”に対してまったく関心がなかった気がします。発達障害の特性や、どう対策するのか、どう働くのかといった情報ばかりを集めていて、「障害福祉サービスを利用する」という観点が抜けていたなと。 私も最初のころは「自分も障害福祉サービスを利用できる」なんて想像もしませんでした。でも、役所で障害者手帳の手続きをしたときに案内の紙をもらって、「自分が利用できる障害福祉サービスが、こんなにいくつもあるんだ」ということを初めて知ったんです。役所の方から「あなたも使っていいんですよ」と言ってくれているのなら、せっかくだからいつか利用してみようかな、と思うようになりましたね。 私は「自分が障害福祉サービスを利用すること」に対して、どこかネガティブな気持ちがあった気がします……。自分が障害の当事者であるということが受け入れられなくて。 たしかに、実際に自分がその立場になってみると、“障害者”という言葉の重さをとても感じますよね……。私も、いまだに悩むことがあります。・「障害福祉サービスを使っていいと言ってくれてるんだから、使わせてもらおう」という気持ち・「もっと苦労している人はたくさんいるから、障害者手帳を返納して、一般雇用枠で働いた方がいいんじゃないか」という気持ちこの2つの間で、気持ちがゆれ動くんです。「使わせてもらおう」という気持ちは、極限まで追い詰められないとなかなか持てないかもしれないですね。「生活するお金がもうない」とか「次の働き口がどうしても見つからない」とか。でも本当は、食うに困って命に関わるような状況に追い込まれる前の、「何とか生活はできているけれど、生きづらさを感じていて毎日が苦しい」という段階で、うまく障害福祉サービスを利用して生活を改善できる方がいいと思うんです。その方が、自分も周囲も楽になるというか。 たしかに、福祉に頼ることへ罪悪感を感じて、「まず身内に頼る」ことをしがちですよね。身内の中だけで悩みを抱え込み、周囲を巻き込んでどんどん苦しい方へ落ちて言ってしまうという……。 そう。なので、困ったときほど、身内を頼るんじゃなく制度とか障害福祉サービスとか、第三者を頼った方が、結果的には本人の自立にもつながるし、周囲の負担も減る。罪悪感を感じる必要なんてないんじゃないかと思います。そう思えるようになるのは、なかなか難しいですけどね。 終わりに:相談窓口のご紹介 筆者は就労移行支援事業所を利用しなかった立場ですが、「発達障害の診断を受け悩んでいたあの頃に、もっとうまく第三者を頼れていたら、何か変わっていたかもしれないな」と思うことがあります。 福祉サービスを利用するかどうかは人それぞれですが、生きづらさ・働きづらさを感じている皆さんが、次のステップへ進むための参考として、本記事がお役に立てれば幸いです。 本メディアは、今回の対談テーマでもあった就労移行支援事業所が運営しております。 「発達障害のある方が支援を受けられる窓口」の一つとして、就労移行支援事業所ディーキャリアをご紹介いたします。 就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 もちろん、今の時点でサービスを利用する目的をが決めていなくても大丈夫です。 「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」「自分に合っているか分からない」 …と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【発達障害当事者が解説】「不安な気持ち」の原因とその対処法

発達障害のある方は「不安な気持ち」が強くなりやすいと言われています。当事者である筆者が実践している「不安への対処法」について紹介します。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
「いやな出来事がずっと頭の中でぐるぐる回って、落ち込んでしまう」「仕事でミスをしていないか心配で夜も眠れない」 発達障害のある方はその特性から、不安な気持ちが強くなりやすいと言われており、このようなお悩みをお持ちの方も多いかもしれません。 何を隠そう、筆者もその一人です。発達障害の当事者として、過去のしくじり体験や仕事上のミスによる不安を抱え、それが原因で自分を追い詰め仕事ができなくなるという経験をしてきました。 そこで今回は、筆者の体験談を交えながら、発達障害のある方に向けて「不安な気持ち」になってしまう原因と対処法をご紹介します。 不安を完全になくすことは難しいですが、原因と対策を知れば、うまく付き合っていくことはできます。皆さんが不安な気持ちとの折り合いをうまく付けられるように、この記事がお役に立てれば幸いです。 [toc] 1. 「不安な気持ち」の原因とは 「大丈夫かなぁ」「うまくいくかなぁ」 このような『不安な気持ち』は、多くの人がごく自然に持っている感情です。人間は何かストレスにさらされたときに不安を感じてその原因を避けようとします。「不安を感じる」ということは、本来は自分の身を守るために必要な機能なのです。 しかし、行き過ぎた不安は、身を守るどころか逆に心身のバランスを崩してしまいます。なぜ、発達障害のある方は行き過ぎた不安を感じやすくなるのでしょうか。原因は大きく分けて3つあります。 原因① 反すう思考(反芻思考) 「反すう思考」とは、嫌な出来事や自分の欠点などを繰り返し考えてしまうことでネガティブな感情がどんどん強まってしまう思考のことです。「頭の中で同じことをぐるぐると考えてしまう」という様子から『ぐるぐる思考』と呼ばれることもあります。 筆者の例をご紹介しましょう。 私は、特に週末になると、よく反すう思考になっていました。本当は仕事のことなど忘れてリフレッシュすればいいのに、ふとしたタイミングで 「あの仕事、もっとこうしておけばよかった」「あのミスが地雷になって、休み明けに爆発するじゃないか」 と仕事のことを考えはじめてしまうのです。いったん考え出すと、友人と遊んでいても、家族と美味しいものを食べていても、何をしていても上の空。夜になりベッドに入っても過去の失敗経験が思い出され、ぐるぐると頭の中を回って寝付けず、睡眠不足のまま月曜の朝を迎えることも多くありました。 発達障害、特に、自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)のある方は、脳の特性から反すう思考に陥りやすいと言われており、それが原因でうつ病や適応障害などの二次障害を起こしてしまう場合もあります。 参考文献:反芻思考に焦点づけた認知行動療法の自閉スペクトラム症への効果とその脳基盤の検討(浜松医科大学)|科学研究費助成事業データベース 原因②ストレスを感じやすい 先ほど「不安な気持ちとは、ストレスを回避し自分の身を守るための機能」であることをご紹介しました。発達障害のある方の場合、脳の特性が原因となってストレスを感じやすく、その回避のために不安な気持ちを感じやすくなる傾向があります。 例えばASDのある方の場合、変化が苦手という特性があるため、「予想外の場面」に遭遇したときに強いストレスを感じやすくなります。また、ADHDのある方の場合、衝動性の特性により「欲しいものが手に入らない・やりたいのにできない」ときに感情が抑えきれず、ストレスとなってしまうことがあります。 原因③ 認知の歪み 認知の歪み(ゆがみ)とは、何かの出来事に遭遇したときに、偏ったとらえ方をしてしまうことです。 筆者の例をご紹介しましょう。 私は仕事で上司や同僚からミスを指摘されると「またやってしまった。自分はなんてダメな人間なんだ…」といつも落ち込んでいました。 落ち着いて考えれば、上司や同僚にミスを責める気持ちはなく、アドバイスのつもりだったのかもしれません。あるいは、「すみません、次回から○○の対策をして気を付けます。ご指摘ありがとうございます」と、もう少し前向きな返事ができたかもしれません。しかし、私の場合は不安な気持ちが自動的に湧き上がってきて、どうしてもネガティブな方向に考えてしまったのです。 このように、ネガティブな方向に偏って出来事をとらえたり、一度のことで「自分はダメな人間だ」と決めつけてしまったりするのが認知の歪みであり、発達障害のある方は脳の特性から認知の歪みが起こりやすいと言われています。 「不安な気持ち」への対処法 では、不安な気持ちにはどのように対処をすればいいのでしょうか。今回は「自分でできる対処」として筆者が実践している方法と、「第三者の力を借りておこなう対処」として認知行動療法の二つをご紹介します。 ①筆者の対処法「書き出して見通しを立てることで、不安な気持ちをやわらげる」 私は不安な気持ちになったときに、書き出して見通しを立てることで対処をおこなっています。特に、仕事において有効な方法ですが、プライベートへの応用も可能です。具体的な手順と、どのような効果があるのかを3つに分けてご紹介します。 効果① 次にやるべき「行動」がハッキリすると不安がやわらぐ まずは、不安なことが頭に浮かんで来たら、それを「やるべきこと」として名前を付けて書き出します。書き出したら、その「やるべきこと」を達成するための「行動」に置き換えます。 例えば仕事で、部長から「会議の資料を準備しておいて」と頼まれたとしましょう。「準備と言われたけど、どうしよう…うまくできるかな」という不安が浮かんで来たら、 会議で使う資料を作成し、部長へ提出する というように「やるべきこと」として書き出します。書き出したら、次はその「やるべきこと」を達成するために必要な行動を、順を追って書き出します。 やるべきことの名前「会議で使う資料を作成し、部長へ提出する」 行動①:資料の下書きを作成する 行動②:先輩に、下書きのチェックをお願いする 行動③:先輩から、チェック結果を受け取る 行動④:チェック結果を下書きに反映させ、資料を仕上げる 行動⑤:部長に、資料を提出する 「会議の準備をしないと…」とだけ考えていても、具体的に何をすれば良いのかが分からず、不安な気持ちがふくらんでしまいます。しかし、上記のように「次に何をする」という行動をハッキリとさせるだけで、不安な気持ちをやわらげることができます。 効果② 書き出しておくと、予想外の事態が起きても対処しやすくなる 私は「予想外の事態」が起こってしまうとパニックになってしまいがちなのですが、あらかじめ「次に何をする」という行動を書き出しておくことで、予想外の事態が起きても対処がしやすくなります。 例えば、先ほど書き出した「行動②」ではチェックを先輩に頼むつもりでしたが、先輩が急に休んでしまって頼めなかったとしましょう。行動をあらかじめ書き出しておけば、先輩の他にチェックを頼めそうな人を探して、 行動②:先輩に下書きのチェックをお願いする ↓ 行動②:課長に下書きのチェックをお願いする …と少し修正するだけで対応が可能なことが分かります。 もし、書き出さずに頭の中だけで考えていたら、「先輩に頼めなくなってしまった!どうしよう、また一から考え直さなければ!」とパニックになっていたでしょう。しかし、書き出しておくことで「変わったのは一部分だけだから、大きな変更じゃないぞ」と分かるので、気持ちを落ち着けて対処がしやすくなるのです。 効果③ 小さな成功体験を積み重ねることができる 私は、発達障害の特性が原因で、過去に失敗した経験が多く、自分にあまり自信が持てませんでした。しかし、書き出して見通しを立てるようになり、少しずつ成功体験を積み重ねることができました。 「次に何をする」という行動を書き出しておけば、それはそのまま、仕事でやるべき手順のチェックリストとして使うことができます。終わった行動から順に消していけば、「ここまで仕事を終わらせることができたぞ」ということが分かります。 とても小さなことですが、私にとっては大きな成功体験だったのです。 過去の失敗体験から、私は「どうせ自分はうまくいかない」「今まで失敗ばかりだったから、きっと今度も失敗する」と、不安な気持ちになることが多くありました。これは先ほどご紹介した「認知の歪み」に近いと言えます。 しかし、「次に何をする」という行動を書き出し、終わったら一つずつ消していくことで、「自分はこれだけの仕事をちゃんと終わらせることができたんだ」と思えるようになりました。自信が足りなくなってきたときには、終わらせた行動の一覧を見返して、自信を取り戻すようにしています。 小さな成功体験を積み重ねることで、私は不安な気持ちにも少しずつ自分で対処ができるようになりました。あくまで筆者個人の体験ではありますが、紙とペンさえあればどなたでもできる方法ですので、ぜひ一度お試しください。 ②認知行動療法による不安な気持ちへの対処 認知行動療法とは 認知行動療法とは、心理療法(精神的な働きかけによる治療法)の一種です。アメリカで開発され、英語名(Cognitive Behavior Therapy)を略して「CBT」とも呼ばれます。 例えば、仲が良い同僚にあいさつをしたのに、返事がなかったとしましょう。これを悪い方に偏ったとらえ方をしてしまうと、 「何で返事をくれなかったのだろう…もしかして嫌われてるのかな」「自分なんて、きっとこの会社では嫌われ者なんだ」「あの人は仲が良いフリをしていただけの、うそつきだったんだ」 …というように、極端で否定的な考えにとらわれてしまい、なんでも自分(あるいは他者)が悪いと考えたり、自分が攻撃されていると思い込んだりすることで、「生きづらさ」を感じてしまうのです。 このような、ものごとの極端なとらえ方を見直すことにより、そこから生まれる“感情”や“行動”に働きかけ、生きづらさやストレスを軽くしていく治療法が認知行動療法です。 先ほど、不安な気持ちの原因としてご紹介した「認知の歪み」に対しても効果があるとされています。 認知行動療法について、より詳しくは以下の記事もご参照ください。 参考:認知行動療法とは|発達障害あるある「認知の歪み」の対策 認知行動療法はどうすれば受けられる? 認知行動療法は、基本的に医師やカウンセラーの指導のもとでおこなわれます。精神科や心療内科で相談してみましょう。すべての病院・クリニックで認知行動療法をおこなっているわけではないので、診察前に問い合わせてみることをおすすめします。 病院だけでなく「就労移行支援事業所」などの福祉施設でも、認知行動療法に基づいた支援プログラムを提供していることがあります。 自分で対処してみてうまくいかないときには、専門家に相談を 不安な気持ちは、私たちにとってとても身近な感情です。そのため不安を感じていても「自分の性格や気分の問題ではないか」と考えてしまいがちです。 しかし、不安な気持ちを抱く背景にはさまざまな原因があり、特に発達障害のある方にとっては、脳の特性によって不安が強まってしまう傾向もありますので、適切にケアをしていきましょう。 今回は対処法として、筆者が実践している方法を一例としてご紹介しましたが、もし「自分で対処してみたが、なかなかうまくいかない」という場合には、一人で抱え込まずに、専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
【2023年最新】発達障害者が押さえておきたい「法改正」

発達障害当事者が押さえておきたい法改正のポイントを紹介します。今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」について分かりやすく説明します。

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  • #障害者雇用
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
  • #限局性学習症(SLD)
近年、発達障害がある方を支援するための、国の制度が強化されているのをご存じでしょうか。 2023年1月、厚生労働省は「障害者雇用率」の引き上げをおこなう方針を発表しました。また、2024年4月1日から施行される法律(改正 障害者総合支援法)では、「就労選択支援」という制度が新たに盛り込まれる予定です。 これらの制度は、「だまっていても自動的に助けてくれる」というものではありません。障害者の側も「どのような支援を・どうすれば受けられるのか」を知り、自分に必要な支援が受けられるよう、適切な窓口に相談することが必要になってきます。 今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」の2つの制度について、当事者として押さえておきたいポイントを解説します。 [toc] ポイント① 障害者雇用率が引き上げられます 障害者雇用率制度とは? 障害者雇用率制度とは、「障害者が能力を発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指す」ことを目的として、事業主に一定の割合で障害者の雇用を義務づける制度です。障害者雇用促進法という法律で定められています。 企業や公的機関など、すべての事業主は、常時雇用する従業員のうち、一定の割合以上の障害者を雇用することが法律で義務付けられています。この「法律で義務づけられた、障害者を雇用しなければならない割合」のことを法定雇用率と言います。 法定雇用率を満たしていない企業等は、国に納付金を納めなければなりません(満たしている企業には、国から調整金を支給)。厚生労働省の発表[1] によると、2022年12月時点での法定雇用率達成企業の割合は48.3%でした。半数以上の事業主が法律上の義務を達成できず、納付金を支払っているのが現状です。 納付金の支払いだけでなく、実雇用率(実際に雇用されている障害者の割合)が低い企業に対しては指導が行われ、改善が見られない場合には企業名が公表されるという罰則もあります。 制度についてのより詳しい内容は、以下のコラムもご参照ください。 参考:障害者雇用とは?オープン就労を目指す方に向け、基礎情報をまとめました。 実績の数字だけを見ると、日本における障害者雇用の推進はまだ道半ばです。ただ、近年は「CSR(企業の社会的責任)」や「SDGs」の観点から、障害者雇用に力を入れる企業が増えています。毎年9月には「障害者雇用月間」に合わせて民間メディアから「『障害者雇用率が高い会社』ランキング TOP100社」が発行[2] されるなど、社会的な注目度も高まり続けています。 参考 [1] 令和4年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省 [2] 「障害者雇用率が高い会社」ランキングTOP100社 | CSR企業総覧 | 東洋経済オンライン どう変わるの? 法定雇用率は、事業主の区分によって割合が定められています。例えば、民間企業(従業員45.5人以上)の法定雇用率の割合は、2.7%(現在より0.4ポイントアップ)に、以下の2段階で引き上げられることが予定されています。 現在は2.3% → 2024年4月から2.5%に引き上げ(現在より0.2ポイントアップ) → さらに、2026年度中に2.7%に引き上げ(現在より0.4ポイントアップ) これまで、法定雇用率の引き上げが発表された際の上げ幅は0.1または0.2ポイントずつでしたしかし、今回は合計0.4ポイントが引き上げられることが発表されており、国の障害者雇用率に対する姿勢が、より積極的になっている様子がうかがえます。 さらに、今回は法定雇用率の引き上げと合わせて「障害者を積極的に雇用する事業主」への新たな支援も発表されました。支援の概要は以下のとおりです。 ・障害者を雇用するための助成金を設立 ・中小企業などには助成金を上乗せ ・短い労働時間(週10〜20時間)で働く障害者も、法定雇用率の計算に含めて良い 詳しい内容は、厚生労働省が公開している以下の資料で確認できます。 参考:令和5年度からの障害者雇用率の設定等について 発達障害の当事者にどんな影響があるの? 法定雇用率の引き上げにより、事業主には「法定雇用率を満たすために、今よりも多くの障害者を雇用しよう」というモチベーションが生まれます。これにより、発達障害のある方にとっても働く機会が増えることが期待されます。障害者を雇用したい事業主が増えることで競争が生まれ、雇用条件(給与や福利厚生など)がより良くなる可能性もあります。 また、中小企業に対する新たな支援がつくられることで、これまでは大企業中心だった障害者雇用が、今後は中小企業でも広がっていくことが期待できます。 ポイント② 「就労選択支援」の制度が新しく作られます 就労選択支援とは? 就労選択支援とは、障害のある方が就職先や働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して本人の希望・能力・適性などに合った「仕事の選択」を支援する新たな制度のことです。障害者総合支援法という法律に、2024年の4月から新たに盛り込まれる予定です。 補足:就労アセスメントとは? 就労アセスメントとは、働くために必要な能力や適性を客観的に評価し、本人の強みや課題を明らかにして、働くために必要な支援や配慮を整理することです。アセスメント(assessment)は「評価する」という意味です。 就労アセスメントは、これまでも就労系障害福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援B型)の利用を始める際におこなわれていました。障害のある方が本人の希望や仕事の能力、適性に合った仕事をするためにとても大切なものですが、以下のような課題もありました。 ・障害のある方が必ずしも就労系障害福祉サービスを利用するとは限らず、アセスメントを受ける機会がないまま、就職・転職活動をしてしまう ・せっかくアセスメントをおこなったのに、実際の就職・転職活動で十分に活用されず、結局、自分の能力や適性に合った仕事を選べていないケースがある 参考:改訂版・就労移行支援事業所による就労アセスメント実施マニュアル(厚生労働省) 制度ができるとどうなるの? 障害のある方が、「就労系障害福祉サービスの利用」や「ハローワークでの就職・転職活動」をする前に、就労選択支援サービスを利用できるようになります。イメージとしては以下の図のとおりです。 画像引用元:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案の概要(https://www.mhlw.go.jp/content/001000995.pdf)5ページ「2-① 就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等」より このサービスでは、支援者と障害者本人が共同で、以下のような内容を評価・整理します。 どのような職種で働きたいか どのような雇用条件を望むか 仕事に対して、どのような能力・適性があるか 実際に働き始めたあと、どのような合理的配慮*が必要か(*合理的配慮について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください) これらを評価・整理して作成された就労アセスメントは、就労系障害福祉サービスの利用を希望する際に活用され、自治体の審査の参考資料として扱われます。福祉サービスを利用せず就職を目指す場合にも、就労アセスメントの内容がハローワークへ連携され、職業指導などをおこなう際に活用されます。 このように、就労アセスメントを活用することで、障害のある方がより自分の能力・適性に合った仕事を選べる可能性が高まります。 なお、これまでは就労系障害福祉サービスを利用できるのは「現在働くことができていない人」だけでした。この制度の開始に合わせて、現在働いている人が、一時的に就労系障害福祉サービスを利用できるようになります。一時的に利用できるのは、以下のような場合です。 ・働き始めに、最初は短い時間から始め、少しずつ勤務時間を増やしていく場合 ・働いている人が休職し、そこから復職を目指す場合 詳しい内容は、厚生労働省が公開している以下の資料で確認できます。 参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案の概要 発達障害の当事者にどんな影響があるの? 発達障害のある方にとっては、自分の能力・適性だけではなく、障害による特性に合った仕事を選びやすくなることが期待されます。 大人の発達障害がある方の場合、障害による特性が原因で離職・転職されているケースもあるため、以下のように悩んでしまうケースが少なくありません。 ・特性や適性に合う仕事が見つかるか不安 ・自分の強みややりたいことが分からない ・就職先にどんな「合理的配慮」を依頼すべきか分からない 皆さんの中には、学生時代に就職活動で「自己分析」をした方もいらっしゃると思いますが、障害の有無にかかわらず客観的に自分を見つめ直して分析するのは難しいもの。就労選択支援のサービスが利用できれば、支援者の力を借り、一人でやるよりも客観的に自己分析=就労アセスメントをすることができます。 一人で悩まず、専門の機関に相談を この記事の冒頭でも述べたように、今回ご紹介した制度は、「だまっていても自動的に助けてくれる」というものではありません。障害者の側も「どのような支援を・どうすれば受けられるのか」を知っておく必要があります。 しかし、現に今、仕事や生活で生きづらさ・働きづらさを感じている方にとっては、制度を調べるだけでもとても大変なものです。自分一人で悩むよりも専門家の手を借りることも検討してみましょう。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
認知行動療法とは|発達障害あるある「認知の歪み」の対策

認知とは「ものごとのとらえ方」です。認知行動療法は、とらえ方を見直していくことで、生きづらさやストレスを軽減させる治療法です。仕組みや効果を分かりやすく解説します。

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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
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認知行動療法とは、心理療法(精神的な働きかけによる治療法)の一種です。アメリカで開発され、英語名(Cognitive Behavior Therapy)を略して「CBT」とも呼ばれます。  “認知”とは、私たちの「ものごとのとらえ方」のこと。とらえ方を見直すことにより、そこから生まれる“感情”や“行動”に働きかけ、生きづらさやストレスを軽くしていく治療法が認知行動療法です。 注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)など「発達障害」の特性に対するアプローチとして、認知行動療法を取り入れることがあります。 また、近年は精神科の治療としてだけでなく、教育やスポーツ、ビジネスでも認知行動療法の考え方が取り入れられているものもあります。 [toc] 認知行動療法の仕組み 認知・感情・行動の関係性 私たちの“行動”は、感情によって左右されます。そして私たちの“感情”は、ものごとのとらえ方、すなわち“認知”によって左右されます。 例えば「Aさんが朝、会社へ行く準備をしている場面」を想像してみましょう。ふと時計を見ると7:00。出発予定の7:30まで残り30分です。 「あと30分しかない!」と思ったAさんは、頭の中に「遅刻してしまうかもしれない」という考えが浮かび、焦って不安な気持ちになりました。不安にあおられるように慌てて準備し出かけたせいで、財布を忘れたまま出かけることになってしまいました。 もしも、Aさんが「まだ30分ある」と思ったとしたらどうだったでしょう。「残り時間が30分」という状況は同じですが、「もう○○しかない」ではなく「まだ○○もある」と考えられる人であれば、落ち着いて出かける準備をすることができるため、財布を忘れずに済んだかもしれません。 このように「出発時間まで残り30分だと気付いた」というできごとに対して「あと30分しかない!」と認知するか「まだ30分もある」と認知するかにより、湧いてくる感情はだいぶかわります。結果として、そのあとの行動も変わってきます。認知・感情・行動は互いに影響を与え合っているのです。 この仕組みに働きかけをおこなって、凝り固まってしまった認知を解きほぐし、そこから受けるストレスを減らして、自由に考え行動できるようにする。それが認知行動療法です。 詳しくは後述しますが、発達障害のある方はその脳の特性から認知の歪みが起こりやすいと言われており、それに対するアプローチとしても認知行動療法が取り入れられる場合もあります。 認知のもととなる「スキーマ」 スキーマとは、「生まれ持った気質(性格)」と「過去の経験」や「記憶の影響」を受けて作り上げられた、個人の考え方のクセのようなものです。 例えば、「電車に乗り遅れると遅刻をする」「鼻が高くて目が青い人は外国人だ」などがあります。 スキーマは日常生活を送るときや、危険や失敗を回避するときに役立つものですが、過度な思い込みをしたり、過去の失敗経験だけに注目してネガティブ思考になったりすることがあります。 不適切なスキーマによって認知が歪む例としては、「電車に乗り遅れると、絶対に遅刻をする。遅刻をすると会社をクビになる」「鼻が高いから、外国の方である。日本語を話せない可能性が高い」などがあります。つまり、情報不足のまま拡大解釈をしてしまうのです。 発達障害の特性による困りごとに有効だと言われている理由 先ほども触れましたが、発達障害のある方はその脳の特性から、ものごとを偏った捉え方をする認知の歪みが起こりやすいと言われています。この原因となっているのが、先ほど紹介をした「スキーマ」です。認知行動療法によって自分の認知の歪みの原因となっている「不適切なスキーマ」に気付き、適切なスキーマを使うことによって、発達障害のある方が抱えやすい「生きづらさ」を軽減する効果が期待できます。 不適切なスキーマの例 認知の歪みの原因となる、不適切なスキーマの主な例を紹介します。 1. 白黒思考(全か無か思考)すべての物事に対して、白か黒か、0か100かで完全に分けて考えようとする 2. 過度な一般化(行き過ぎた一般化、極端な一般化)自分のわずかな経験や出来事を、すべてのこととして結論づけようとする 3. 認知のフィルター(心のフィルター)物事のネガティブな面ばかりを見てしまう  4. マイナス思考(肯定的なものの否認)良いことがあっても、良いと思えないばかりか、悪いことにすりかえてしまう 5. 破局的な解釈根拠がないのに、「最悪な結果」を想定し、ネガティブな結論を出してしまう。下記の2つがある・読唇術思考:周りの人の気持ちを勝手に悪いように決めるつける・先読みの誤り:まだ分かりようがない将来のことを悪いように決めつける  6. 過大解釈と矮小化自分の短所を必要以上に大きく、長所を極端に小さく考える。他人に対しては、逆に良いところが大きく、悪いところが小さく見える 7. 感情の理由づけ(感情的決めつけ)自分の感情を根拠に、ものごとを決めつけてしまう  8. 「~すべき」思考何かをやろうとするときに「〜すべきだ」「〜すべきでない」とかたくなに決めつけて考える。自分に向くと、できなかった場合に罪の意識を感じる。他人に向くと、その通りに動いてくれなかった場合にストレスを感じる 9. レッテル貼り(ラベリング)一度のできごと・一部の性質だけで、自分や他人のイメージを作り上げ、そのイメージを固定化させてしまう。「過度な一般化」が極端に行き過ぎた状態 10. 自己関連付け何かが起こったときに、すべて自分によるものだと思い込む。悪いことが起こった場合は、自分に責任がないのにすべて自分のせいだと考える 認知の歪みの例 認知の歪みには、複数の不適切なスキーマが影響していることがあります。「自分が失敗したとき」「他者が失敗したとき」のそれぞれについて、具体例に沿って説明します。 【例① 自分が失敗したとき】 寝坊をして、いつもの電車に乗り遅れてしまい、1本あとの電車に乗った ▼▼▼ 不適切なスキーマ・白黒思考・認知のフィルター:走って向かえば間に合うかもしれないが、絶対に遅刻すると考える・肯定的なものの否認:過去に1本あとの電車で間に合ったことがあったが、今回は遅刻するに違いないと考える・破局的な解釈:「解雇」という最悪の結果を考える ▼▼▼ 認知の歪み「絶対に遅刻をしてしまう。遅刻したら会社を解雇される」 【例② 他者が失敗したとき】 同僚が誤って自分のデータを消去してしまった ▼▼▼ 不適切なスキーマ ・過度な一般化・レッテル貼り:同僚に悪気がなかったとしても、一度のミスで「悪い人間」だと判断する・破局的な解釈:自分が嫌いだから、悪意を持って故意にやったと思い込む・感情の決めつけ:感情が現実に影響すると信じる ▼▼▼ 認知の歪み「同僚は悪いやつで、わざとやった。落ち込んだから、今日は仕事で失敗するだろう」 このように不適切なスキーマによって、極端で否定的な考えにとらわれてしまい、なんでも自分・他者が悪いと考えたり、自分が攻撃されていると思い込んだりすることで、「生きづらさ」を感じることが少なくありません。 自分の「考え方のクセ」を見つめなおし、適切なスキーマを習得していくのが、認知行動療法なのです。 認知行動療法で用いられる手法 認知行動療法で用いられる主な手法は、以下の5種類です。 1. エクスポージャー法(暴露療法) 不安を感じる状況や刺激から逃げるのではなく、段階的に向き合うことで、少しずつ不安に慣れて克服する方法【例】高所恐怖症がある場合に、ビルの2階→3階…と少しずつ高いところにつれていき、段階的に高いところに慣れさせる 2. リラクゼーション法 心身をリラックスさせて不安を和らげる方法。深呼吸や瞑想などをするなど 3. セルフモニタリング法 ワークシートや手帳等に1週間の自分の行動と感情の記録をつけることで、自分がいつ・どこで・どのようなストレスを感じているのかを明確化し、それに基づいてストレスへの対処法を選択する方法 4. コラム法(カラム法、認知再構成法) ワークシートを用い、自分の感情や行動が発生した流れを明らかにすることで、認知(考え方のクセ)に気づき、適切なスキーマを習得する方法 5. 問題解決法 問題となっている状況に対し、課題を整理し、どのような対処ができるのかを探して、改善するための具体的な計画を立てる方法 認知行動療法の受け方 認知行動療法は医師やカウンセラーのもとで受けることが基本のため、病院・クリニックで相談してみましょう。診療科目は精神科、または心療内科です。 ただし、すべての病院・クリニックで認知行動療法をおこなっているわけではないので、事前に問い合わせたりWebサイトで調べたりしてから、診察を受ける方がよいでしょう。 なお、発達障害の特性に応じたサポートをおこなっている就労移行支援事業所でも、この認知行動療法に基づいたプログラムを提供していることがあります。 参考:発達障害のある方の「働く」をサポート|就労移行支援事業所ディーキャリア 以下は医療機関で認知行動療法を受ける場合の期間・費用の例をご紹介します。 治療にかかる期間は? 相談内容やその人の状況により異なりますが、数か月〜1年程度の期間をかけるのが一般的です。1回30分〜1時間程度の面談を1〜2週間ごとにおこないます。 治療にかかる費用は? 内容により異なりますが、1回あたりの費用は数千円かかります。健康保険が適用されず、全額自己負担となる場合もあるので、事前に病院・クリニックに確認しておいた方がいいでしょう。 自分でやる方法はある? 「かかりつけの病院で認知行動療法をおこなっていない」「費用をなるべく抑えたい」などの理由で、自分で試してみたいという方もいらっしゃるかもしれません。 先ほどご紹介した手法のなかで「セルフモニタリング法」や「コラム法」は、個人でも比較的おこないやすいと言われています。 書籍やWebサイトなどでやり方が紹介されていますので、調べてからおこなうと良いでしょう。Webサイトでは、個人でおこなうときに使えるワークシートを配布しているところもあります。また、最近はスマートフォンのアプリもあります。 参考サイトは以下のとおりです。 厚生労働省|心の健康|認知行動療法 国立研究開発法人 公立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター(CBTセンター) 認知行動療法活用サイト「こころのスキルアップ・トレーニング(ここトレ)」 心をケアするスキルが身につく - デジタル認知行動療法アプリ「Awarefy」 Webサービス・アプリ提供プロジェクト|東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース下山研究室 障害福祉サービスでは認知行動療法を取り入れたプログラムも 障害の有無にかかわらず、自分のことを客観的にとらえることは難しいものです。もし「病院に相談するのは敷居が高い」「自分でやってみたけど、どうも上手くいかない」という場合には、障害福祉サービスに相談するという方法もあります。 就労移行支援事業所・ディーキャリアでは、仕事を続ける上での体調管理やストレスコントロールをおこなうために、認知行動療法の考え方を取り入れたプログラムを提供しています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「特性対策、どうしてる?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「障害特性への対策(自己対処)はどのようなことを行っているか」をテーマに「当事者のリアル」をお伝えします。

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  • #合理的配慮
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  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。著名人が自身の発達障害について告白する記事や動画を見かけることもあります。 そうした情報を見て「自分は発達障害ではないか」あるいは「自分の子どもは発達障害ではないか」と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 人は誰しも「自分がよく知らないものごと」については不安を感じるもの。当事者同士のリアルな事例を知ることで、少しでも不安が和らいだり、誰かに相談するなど「次のステップ」を踏み出したりするためのお力になれれば幸いです。 第2回は「自分の特性にどんな対策をしているのか」をテーマに、対談をおこないました。 参考記事 「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマにした第1回の対談記事は、以下よりご覧いただけます。 本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 対策①片付けができない → 細かな管理は諦めてザックリ整理 私は片付けがとても苦手で、仕事机の上がいつも書類だらけになってしまうんですよね。とりさんはどんな対策をされていますか? 私は「自分の視界から外れると、すぐに存在を忘れてしまう」という傾向があるので、その対策として、自宅ではコルクボードを活用しています。例えば“免許証の更新ハガキ”や“定期健診の案内”のように「期限があり忘れてはいけないもの」は、すぐ目に入るよう広げた状態にしてコルクボードに貼るようにしているんです。ボードは仕事机の前に置いてあるので目に入りやすいですし、次のアクション(例:免許の更新に行くスケジュールを立てる)にもつなげやすいんですよ。 なるほど、片付けるだけでなく「次にどんなアクションをすべきか」ということも大切ですよね。私も忘れちゃいけない用事は、その場ですぐにスマホのリマインダーアプリに入れるようにしています。一方で、書類の管理はあまりうまくできてなくて…書類をスキャナーで読み取りPCで整理してるんですが、「スキャンする」というアクション自体が面倒になってしまって、結局、書類トレーにがさっと全部放り込んでいるだけになりがちですね…。 分かります…私もスキャナを使っていたことがありますが、面倒で心が折れました。だから、アクションが起こしやすいかどうかって重要だと思います。私は細かくキレイに整理するのが苦手なので、ファイルにガムテープを貼り、中に入ってるものを油性ペンで書いて、ザックリ整理してます。アナログだしぜんぜんスマートじゃないんですが、特性への対策だと割り切ってやっていますね。これってある意味、世間一般の「こうあるべき」っていうイメージをどこまで捨てられるか、だと思うんです。例えば、女性の場合だと「かわいく・オシャレに整理整頓するのが当たり前」のようなイメージがありませんか? たしかに。雑誌やCMなんかでも「オシャレに整理整頓しよう」みたいな売り出し方がされてますよね。かわいいファイルや手帳を使って、マスキングテープでデコって…みたいな。 そう。「それが女子のたしなみ」みたいなイメージがある。でも、それって企業側がマーケティングのために作ってるイメージなんですよね。私もキレイに整理されたオシャレな部屋に憧れますけど、たとえザックリだったとしても、自分の特性に合う方法で整理ができている方が大事だなって思うんです。その結果、特性対策優先の部屋になっているので、お客さんが呼びづらいという難点はありますが(笑) なるほど。ちゃんと特性への対策ができて、自分に最適化されていればいいんだって割り切ると、気持ちも楽になりそうですね。 対策②忘れ物・失くし物が多い → 忘れる前提で、デジタルも活用して対策 私はもう「何をしても絶対忘れる」という前提で対策しています。例えば、ハンカチやティッシュ、ペンなどの小物類は「バッグを替えたときに移し替えし忘れる前提で、全部のバッグに同じモノを入れておく」という感じです。 私も、小物類や化粧品は同じような対策をしています。そう言えば、先日スマートウォッチのおかげで、スマホを忘れずに済んだことがありました。スーパーで買い物して、袋詰めしたときにスマホを置き去りにしちゃったんですが、駐車場でスマートウォッチに「スマホと距離が離れています」って通知が来て、気が付くことができました。 最近は便利なツールが増えましたよね。「忘れ物防止タグ」を使えば、財布の置き忘れなんかにも対策ができそうです。財布やスマホのような「一つしかないもの」は、デジタルツールをうまく使って対策すると良さそうですね。そういえば私、財布やスマホを忘れたことがあまりないんです。何でだろうって考えたんですが、「男性ならでは」の理由があるのかもしれません。 というと? 男性の服って、ポケットがいっぱいあるじゃないですか。私はいつも、スマホはズボンの左ポケットに、財布はジャケットの内ポケットに入れるようにしているので、入ってないと逆に違和感があるんですよ。「あれ?いつもと重さが違うぞ」みたいな。 なるほど、「重さで気づける」っていいですね。たしかにそれは、男女の差があるかもしれない。私の父も、いつもズボンのお尻ポケットに財布を入れていたなぁ。女性の服装だと、そういうのはなかなか難しいですからね。“身に付けるもの”って、働く環境によっても取れる対策が変わってきそうですよね。例えば、無くし物をしないように「財布をベルトにチェーンで付ける」「スマホをネックストラップで首から下げる」といった対策は、学生時代ならファッションだと見てもらえますが、社会人になったらマナー上NGな場面もありますし。 スーツを着なきゃいけない職業だったらチェーンをぶら下げるわけにはいきませんし、私用のスマートフォンを首から下げておくのも、職場によってOK・NGが別れそうです。 合理的配慮として、身に付けることを許可してもらえるよう会社に相談する、という方法もなくはないと思いますが、そんなことまで合理的配慮を求めていいのか、とも思いますしね…。いくら「特性への対策だ」と言っても、“社会人としてマナー”や“職場環境”、“周囲の人たちとの関係性”など、いろんな理由でできないこともありそうです。 対策③段取りよく物事を進めるのが苦手 → ツールを活用して管理、仕事では手間がかかりすぎない方法を相談 お仕事だと、タスクやスケジュールの管理をPCのツールで行うことが多いと思いますが、とりさんはいかがですか? はい、仕事では会社から指定されたツールを使ってタスクやスケジュールの管理をしています。個人的には、管理のために手間をかけ過ぎないよう、会社側と合理的配慮の調整をすることが大切じゃないかと思っています。 「管理のために手間をかけすぎない」とは、具体的にどういうことでしょう? 管理が複雑すぎると、それだけで脳のエネルギーを無駄に使ってしまうと思うんです。例えば、誰かから仕事を依頼されたとき、忘れないよう手元にメモしておくだけなら大きな手間ではありません。でも、タスク管理ツールに登録しようとすると1. タスクのタイトルを決める2. 担当者を設定する3. 期限を設定する4. 依頼内容をメモする…というように、タスクを登録し終わるまでにいくつものステップが必要です。これでは仕事をする以前に、仕事の管理をするだけで脳のエネルギーをたくさん使ってしまいます。 なるほど。段取りよく物事を進めるのが苦手だからといって、キッチリ管理しようとし過ぎると、それはそれでエネルギーを余分に使っている状態になってしまう、ということですね。 はい。もちろん、ツールはうまく使えば便利ですし、会社ではチームで仕事をしているので、指定されたツールを使う必要もあります。でも、本当に大切なのは、依頼された仕事を抜け漏れなく行うことのはず。抜け漏れをなくすために、「難しいツールではなく、簡単なツールを使えるようにしてもらう」「タスクやスケジュールの管理そのものを、誰かに助けてもらう」といった合理的配慮を、会社側と相談してもいいんじゃないかと思います。 「管理そのものを、誰かに助けてもらう」というのは、年齢が上がれば上がるほど、ちゃんと会社側と相談しておいた方が良さそうですね。20代のころは「上司の指示に従って仕事を行う」ことが当たり前ですが、30代になれば自己管理して仕事を進めることが求められますし、世間の一般的なイメージからも「年齢を重ねた大人として、自己管理ができることは当然だ」と見られがちな気がします。 もしかしたら、30代というのは「自分の障害特性」と「社会的に求められる役割」とがかみ合わなくなってくる年代なのかもしれませんね。 たしかに、30代は仕事で責任の範囲が広がるだけでなく、家庭においても結婚や子育てをする人が多い年代です。若いころとは求められる役割が変わっていきますよね。私も30代のころは、「自分の特性としてはちょっとしんどいけど、家族のために無理してがんばらなきゃいけない」っていうシーンがありました。でも40歳を過ぎると、今度はちょっと楽になったような気もするんです。例えば、30代で初めて部下ができたときは「頼りになる上司」にならなきゃいけないと思っていて、部下が困っていたら「後はオレに任せとけよ」って仕事を巻き取っていました。自分の仕事の段取りもうまくできないのに、さらに仕事を抱え込むことになって、結果的に体調を崩してしまいました。でも、年齢とともにいろんな経験を積むうちに「上司のあるべき姿は一つじゃない」って分かったんです。みんなをグイグイ引っ張っていくタイプの上司もいれば、一見すると大人しくて頼りないけど、まわりをうまく巻き込んで物事を成し遂げていくタイプの上司もいる。そういうことが分かってくると「理想とはちょっと違うけど、自分ができる方法で一生懸命がんばればいいんだ」って思えるようになってきて。30代から40代へと年を重ねるうちに、自分の中で理想と現実とのすり合わせが少しずつできたんじゃないかと思うんです。 なるほど。「年齢とともに、うまい気の抜き方がつかめてくる」っていうことなのかもしれないですね。私はまだ20代なんですが、一生懸命「社会になじもう」として「障害への対策を完璧にやらなきゃいけない」ってどこかで思っている気がします。でも、年齢を重ねることで自分に対する理解が進んで、完璧じゃない自分も許容できるようになる、みたいな。私は「これから30代になったときに、自分のライフプラン(結婚や育児)をどうすればいいんだろう」っていう不安があったんですが、「40代になってちょっと楽になった」っていうお話を聞けて、少し気が楽になりました。 私はとりさんと対談させていただいて、年齢を重ねると良くも悪くも落ち着いてしまい、新しい情報を積極的に取ろうとしていなかったと気が付きました。とりさんから自分の知らない知識や対策方法をお伺いできたのが、とても良かったです。今回は対談にご協力いただき、ありがとうございました。 終わりに:相談窓口のご紹介 発達障害の当事者同士による対談、いかがでしたか。 今回の2回の対談を通じ、筆者自身も、年齢や環境の変化に応じて障害の知識をアップデートしていかなければならないと感じました。 「ハタらくナビ」は、発達障害のある方の 「はたらく」をもっと「らく」にするをテーマに掲げ、働きづらさを感じている発達障害のある方に向け働くことをもっとラクに、働くことをもっとタノシクするためのちょっとしたコツや、知っておくべき知識を発信しています。 これからも読者の皆さまの「発達障害に関する知識のアップデート」に役立つような情報を発信していけるよう、努めてまいります。本メディアは、就労移行支援事業所ディーキャリアが運営しております。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。
当事者対談企画「発達障害、いつ分かった?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマに「当事者のリアル」をお伝えします。

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  • #はたラクHACK
  • #自閉スペクトラム症(ASD)
  • #注意欠如・多動症(ADHD)
今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。著名人が自身の発達障害について告白する記事や動画を見かけることもあります。 そうした情報を見て「自分は発達障害ではないか」あるいは「自分の子どもは発達障害ではないか」と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 人は誰しも「自分がよく知らないものごと」については不安を感じるもの。当事者同士のリアルな事例を知ることで、理解が深まり、誰かに相談するなど「次のステップ」を踏み出したりするためのお力になれれば幸いです。 第1回は「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマに、対談をおこないました。 なお本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 参考:大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 環境が変わって「どうにかごまかせていた」ことが困難になり気づく とりさんが「もしかして私、発達障害かも…?」と、初めて気がついたのはいつでしたか? 私は大学生のときでした。インターネットで発達障害に関する記事を見かけて、書いてあることが「これはもう、私のことだ」って。でもその時点では「自分の困りごとの原因って、発達障害だったんだ」くらいにしか思ってなかったんです。たしかに困りごとはいろいろありましたが、学生時代は「どうにかごまかせていた」という感じでした。 私も、とりさんと順番は違いますが状況は似ています。36歳で転職して仕事の内容がガラッと変わったことで、転職する前は「どうにかごまかせていた」ことが通用しなくなってしまったんです。上司から何度注意されても改善できないし、中途で即戦力として入ったのに期待に応えられないプレッシャーもあり、心身ともに疲れ果ててしまって。そんなときにふと目にとまったのが、芸能人の方がご自身の発達障害について打ち明けているインターネットの記事でした。読んだ瞬間に「これはもう、私のことだ」と。わらにもすがる思いですぐに病院を受診しました。病院に行けば助かるんじゃないかって思ったんです。 私も「発達障害の診断さえ受ければ、今のこの苦しい状況が改善できるだろう」って、診断=免罪符みたいなものだって思っていましたね。 そう、まさに免罪符。「仕事ができないことは自分が悪いんじゃない、発達障害のせいなんだ」っていう。でも、たとえ障害があり苦手な仕事があったとしても、「じゃあ自分はどんなことなら会社に貢献できるのか」というものを見つけ出さなきゃいけない。給料をもらうためには、その対価として自分が何か価値を提供しなきゃいけないって、よくよく考えれば当然なんですが、当時はそこまで考える余裕がありませんでした。 メンタルが落ちているときに、冷静には考えられないですよね…。しかも会社が、必ずしも発達障害の知識や理解があるとも限らないですし。私は診断を受けたことを会社に相談した後の方が、理解が得られず辛かったです。 今になって思えば「これは発達障害の特性だったんだな」と思うこと 子どものころを振り返ってみて「今になって思えば『これは発達障害の特性だったんだな』」というエピソードはありますか? 本当に必要だったのは「Why」ではなく「Action」のサポート 小学校時代は「次の日の学校の準備」がとても苦手でした。前日の夜に準備することがどうしてもできず、当日の朝になって慌ててやり、母親から注意される…ということを繰り返していました。でも注意されても直せないんですよね。「なんでできないの?」と言われても、とにかくできないんです。 分かります…そして今、親の立場になってみて、自分の子どもに対して「なんでできないの?」という言葉をかけてしまいがちだなと気がつきました。 発達障害の方の脳の特性として、実行機能の障害があると言われていますよね。「なんでできないの?」という理由(Why)を問われても、どうやって実行(Action)したらいいのかが分からない。理由をたずねるだけでなく、もっと具体的に「まずは時間割から確認してみよう。次に教科書とノートを入れて、その次に鉛筆を削って…」という実行のためのアドバイスをしてくれていたら、もう少し上手にできたのかもしれません。 なるほど。私は小学生時代、夏休みの宿題を計画どおりに終えられたことが一度もなくて。それはADHDの「計画を立て、段取りよくものごとを進めることが苦手」という特性だなと思っていたんですが、問題は計画を立てる部分だけでなく、実行する部分にもありそうですね。ただ、親の立場として「本当は実行までサポートしてあげたいけど、なかなかできない」っていう事情もありそうです。例えば平日の朝「この時間の電車に乗らなきゃ大事な会議に間に合わない!」っていうときに、子どもが「学校の準備ができない」って言いだしたら…もし自分がその状況に置かれたら、冷静にサポートするのは難しいなと。 そうですよね。親だって仕事に家事に忙しい。そのなかでどこまで子どもと向き合えるのか、とても難しいと思います。なので「自分の親に、当時こういうサポートをして欲しかった」という思いはありますが、自分が大人になって親の立場から考えると、サポートが十分にできないのも仕方ないことだよなって、理解できます。 自己肯定感を下げないために 〜それは本当に、性格の問題?〜 中学・高校のときは「今日の授業で使うものを用意して持って行く」ことが苦手で、しょっちゅう忘れ物をしていたので、“置き勉”(教科書やノートなどの勉強道具を持ち帰らず、学校に置きっぱなしにすること)が多かったです。 あるあるですね…私もよく教科書や資料集を忘れて、貸してくれる友だちを探すのに苦労していました。「忘れる」と言えば、お弁当や薬の容器のフタを閉め忘れ、カバンの中でぶちまけることがよくありました。香りがキツいものをぶちまけたときは教室中に臭ってしまって…もう最悪で(苦笑) 分かる!それ、やっちゃいますよね。私もここでは言えないような“だらしないエピソード”が他にもありますよ(笑) “だらしないエピソード”を繰り返していると、「いったい自分は何をやってるんだろう、なんでうまくできないんだろう」という考えになって、自己肯定感が下がっちゃいますよね。 そうなんです。私も当時は「自分がだらしない性格だから、こういうことしちゃうんだ」って考えていました。でも今になって思えば、忘れ物などの不注意は、ADHDの特性によって起こっていたんじゃないかと思います。中学・高校生になってくると、少しずつ自分で困りごとへの対策をするようになるんですが、「自分の性格が悪いんだ」と考えたままでは、対策できたとしても自己肯定感は上がらないですからね。もし当時、困りごとの原因が自分の性格ではなく発達障害の特性によるものだと知っていたら、精神的にもう少し楽だったのかもしれません。 「性格や気力の問題」ではなく「能力の問題」 「もしかして私、発達障害かも…?」と気がついたのは大学時代だった、とお話ししましたが、それを強く自覚したエピソードがあって。 おぉ、それはどんなエピソードですか? 藤森: 部活で、卒業する先輩方にお礼状を書くことになって、部員みんなで手分けして書いていたんです。自分の割り当てを書き終わった人から帰っていいことになってたんですが、私は最後まで取り残されてしまったんですよね。お世話になった先輩へ感謝の気持ちを伝えればいいだけなのに、短い文章でいいのに、書くことにどうしても集中できない。ほかの友だちはすぐに書き終わって続々と帰っていくのに、私だけがぜんぜん筆が進まない…。そのときに「もしかして、私はまわりの人たちと何かが根本的に違うんじゃないか」って気がついたんです。 学生生活では、他にも自分とまわりを比べる機会がたくさんあると思いますが、そのエピソードのときは何が違ったんでしょう? それ以前はまわりと比べてできないことがあっても、自分の性格や気力の問題だと考えていました。例えば・忘れ物が多い → 私の性格ががだらしないからだ・テストの成績が悪い → 私の気力が足りず、十分勉強できなかったからだ…という感じで。だから「自分はまわりと何かが違う」とまでは、気づかなかったんです。でも「誰がやっても同じような結果が出せそうな作業なのに、明らかに自分一人だけができない」っていう場面に遭遇して、これは自分の性格や気力の問題じゃなく、そもそも“能力”として自分が持ち合わせていないのではって気づいたんです。 なるほど。例えるなら「自分が野球チームに所属していて、野球が下手なのは自分の性格のせいだ、気力が足りないせいだと思ってきた。でも、野球に必要な能力はそもそも持っておらず、実はサッカーに必要な能力を持っていたんだと、あるとき気づいた」みたいな感じでしょうか? そう。野球チームは野球をやることが当たり前の環境ですから「ボールを蹴ってみる機会」なんてないですよね。だから自分は野球が苦手で、サッカーの方が得意なんだと気づくことができない。でも環境を変えてサッカーチームに行けば、大活躍できる可能性がある。そういうことが実生活でもあるんじゃないかと。 たしかに、私もオフィスに通勤していたときはまわりの話し声が気になり、ぜんぜん集中できなかったんですが、リモートワークするようになったら「あれ、意外と私、環境が変われば集中できるじゃん」って気がつきました。「衝動的にいろいろなことに手を出してしまう」という特性も、会社員のときはまったく評価されませんでしたが、フリーランスとして自分で仕事を創意工夫しなければならない環境では、むしろ役に立っている気がします。 同じ環境の中で、同じことを繰り返していると気づかないですよね。もちろん、何でもかんでもすぐに環境のせいにするのではなく、「まわりに合わせて、苦手なことでもがんばる」ということが必要なときもあります。でもそれだけにとらわれず、環境そのものを変えることで「自分が本当に得意なこと」が見えてくるのかもしれません。 支援につながる方法を知っていることが大切 大学生活がうまくいくかどうかは、就職にも影響する 大学生活での困りごとって、学生生活のみならず、卒業後の仕事にも影響が出てしまうと思うんですよ。 というと? 私はADHDの「計画を立て、段取りよくものごとを進めることが苦手」という特性から、卒業単位を取るのにとても苦労しました。まず「授業の履修登録」が難しい。高校までは学校側がカリキュラムを組んでくれますが、大学に入ると自分ですべての計画を立てなきゃいけません。授業の提出課題や定期テストも管理は自己責任で、赤点を取ったとしても自動で補習や追試がおこなわれるわけでもない。単位を落としたくなければ自分で教授に相談しに行く…なんてことも必要ですよね。しかも一人暮らしする人は、プライベートも自分でやらなきゃいけないことが増えるので、超・マルチタスク状態になってしまう。これも発達障害の特性と相性が悪いのではないかと思います。その結果、4年生になったとき・まわりは、卒業単位に足りるメドが立ち就職活動に打ち込んでいる・ところが自分は、卒業単位を満たすため必死に授業を受け続けている…という状況になって、十分な就職活動ができず、結果、自分にあった仕事や会社をちゃんと選べない、ということがあるんじゃないかと。 たしかに…。私も最初の履修計画がボロボロでしたし、テスト勉強の計画を立てるのも、友だちや教授にヘルプを出すのも苦手だったので、卒業単位を満たすのにとても苦労しました。その結果、就職活動ではまわりの友人が続々と内定をもらう中で「自分だけ取り残された」と感じ、自己肯定感がどんどん下がっていって。4年生の秋頃には自分に合う仕事がなんなのか考える余裕もなくなり、「私のような者を雇ってくれるなら、もうどんな会社でもいい」なんて思っていましたね…。 正しい情報や支援をどこで得られるのかを知っておく 今では発達障害のある学生のサポート窓口を設置している大学も増えていますが、本人が自分の特性に気づいていなければ相談しようと思わないですしね。サポートを受けるためには、自分で自分の特性に気がついていることと、相談できる窓口を知っていることの両方がマッチする必要があるんですよね。 何が正しい情報なのか見分けることも重要ですよね。今はインターネットでさまざまな情報を入手できるので、発達障害のことを見聞きする機会も増えてきました。ブログやYouTubeなどで、当事者の方が情報発信しているのもよく見かけます。でも、その情報が本当に正しいかどうかは分からない。例えば芸能人の方が「私、実は発達障害で、この病院で○○という検査を受けて…」と発信していたとする。そうすると「有名人が通ってるから、きっといい病院なんだな」「○○の検査を受ければ、すぐ発達障害かどうか分かるんだな」って思ってしまうんじゃないかと。 発達障害について学んでいれば「あれ、この情報はちょっとおかしいぞ」ということが分かりますが、知識がないと有名人の発信や、お金をかけた宣伝広告のような“見栄えのいい情報”をうのみにしちゃいますよね。特に発達障害について知ったばかりの頃は、困りごとがピークで、メンタルも落ちた状態であることが多いと思うんです。だから余計に、わらにもすがる思いで“見栄えのいい情報”に飛びついてしまいそうです。 私も「この状態から抜け出したい、助けて欲しい」と切羽詰まっていましたが、必死に情報を探して運よく支援の窓口を見つけることができました。でも運が悪かったら、そこにはたどり着けなかったかもしれません。今、実際に自分が困りごとや生きづらさを抱えていなかったとしても、大学や行政の支援窓口、公的な福祉サービスなど「どこに行けば、正しい情報や支援を得られるのか」を知っておくことが大切だと思います。 終わりに:相談窓口のご紹介 第2回では、当事者2名が日々の生活のなかでおこなっている特性への対策(セルフケアや、合理的配慮についての会社との調整)について対談します。こちらもどうぞご期待ください。 終わりに、対談の中でも登場した「発達障害のある方が支援を受けられる窓口」の一つとして、就労移行支援事業所ディーキャリアをご紹介いたします。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 執筆者 藤森ユウワ(ライター・編集) ベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。 これまで5社を転職し、営業、営業企画、カスタマーサポート、マーケティングなどさまざまな職種を経験。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 36 歳で ADHD・ASD と診断される。 診断後、「就労移行支援事業所 ディーキャリア」を運営するデコボコベース株式会社でアルバイトしたことをきっかけに自分に合う仕事や働き方を模索し、現在の形に辿り着く。 誰かの「なるほど!」を作るライティングがモットー。 さまざまな職種を転々とする中、苦手を補うため自分用の業務マニュアルを自作してきた経験を活かして、記事や企画書、プレゼン資料、製品マニュアルなど、幅広く執筆の仕事を行っている。 自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。