ワーキングメモリを鍛えるには?「覚える」より「忘れない仕組み」を作る方法
「仕事の指示を覚えていられない」
「メモを取ったのに、後から見ると何を書いたのか分からない」
「複数のことを頼まれると、何から手をつければよいか分からなくなる」
このような困りごとはありませんか?
もしかすると、その背景にはワーキングメモリの弱みが関係しているかもしれません。
「ワーキングメモリを鍛えるには?」と調べる方も多いと思います。
しかし、仕事の困りごとを減らすためには、ワーキングメモリを鍛えることだけが方法ではありません。
「覚える」ことを減らし、「忘れても大丈夫な仕組み」を作ることも大切です。

ワーキングメモリとは?
ワーキングメモリとは、簡単にいうと、
「今必要な情報を一時的に頭の中に置いて、作業するための機能」
です。
例えば、
「この資料を確認して、間違いがあったら修正して、終わったら○○さんに報告してください」
と言われたとします。
このとき、
- 資料を確認する
- 間違いを探す
- 修正する
- 報告する
という情報を一時的に覚えながら作業する必要があります。
イメージとしては、頭の中にある小さな作業机です。
机の上に置けるものが限られているように、頭の中に一度に保持できる情報にも限界があります。
ADHD(注意欠如・多動症)の特性として、ワーキングメモリの弱みがみられる場合があります。
ただし、ワーキングメモリが弱い=ADHDというわけではありません。
ワーキングメモリが弱いと、仕事でどんなことに困る?
例えば、次のような困りごとがあります。
- 指示を覚えていられない
- 複数の作業を同時に進めるのが苦手
- メモを取りながら話を聞くことが難しい
- 作業途中で別の指示が入ると、元の作業を忘れる
- 臨機応変な対応が苦手
- 文章を組み立てることが難しい
- 頭の中で整理しながら説明することが苦手
- 複数の仕事の優先順位をつけることが難しい
「指示を忘れる」という経験は、誰にでもあります。
ただ、ワーキングメモリの弱みがある場合には、
- メモを取ったこと自体を忘れる
- メモした紙が見つからない
- メモを見ても、何を書いたのか思い出せない
- 誰から指示されたのか分からなくなる
といったこともあります。
単純に「覚えようとする努力が足りない」という問題ではない場合があります。
「メモを取る」だけでは解決しないことも
ワーキングメモリへの対策として、「メモを取りましょう」と言われることがあります。
もちろんメモは有効です。
しかし、
メモを取っただけでは、後から使えないことがあります。
例えば、
「資料を確認して、○○を修正して、終わったら報告する」
と文章でメモするより、
□ 資料を確認する
□ ○○を修正する
□ 保存する
□ 報告する
とチェックリストにした方が、作業しやすい人もいます。
つまり、
「覚えておく」から「見ながら進める」へ変える。
これも大切な対策です。
ワーキングメモリを鍛えるには?
ワーキングメモリを使うトレーニングや記憶課題などはあります。
ただし、
トレーニングをすれば、仕事で困らないほどワーキングメモリの容量が大きくなる
と単純に考えることはできません。
そのため、仕事での困りごとを減らすなら、
「鍛える」だけでなく、「ワーキングメモリへの負担を減らす」ことを考えてみましょう。
「覚える」のではなく「外に出す」
具体的には、次のような方法があります。
① チェックリストを作る
やることを頭の中に置いておかず、チェックリストにします。
- □ メールを確認
- □ データを入力
- □ 入力内容を確認
- □ ファイルを保存
- □ 報告
終わったらチェックします。
② 手順書・マニュアルを作る
作業の手順を自分用にまとめます。
「次は何をするんだっけ?」と毎回考えなくても済むようにします。
自分で手順書を作ることで、どこで迷いやすいのかを整理できる場合もあります。
③ 目に入る場所に置く
- 机のボードに付箋を貼る
- 必要な資料を掲示する
- パソコン画面に必要な情報を表示する
など、
「覚えておく」のではなく「見れば分かる」状態にする方法です。
④ スマートフォンやアプリを使う
紙のメモが続かない場合は、
- リマインダー
- タスク管理アプリ
- カレンダー
- 音声メモ
なども選択肢になります。
特に、
「最初はできるけれど、だんだん面倒になってやらなくなる」
という人は、対策そのものの「とっつきやすさ」も重要です。
良い方法でも、続かなければ仕事では使えません。
自分に合う方法を「検証」する
ADHDなどの特性があっても、困りごとの原因や程度は一人ひとり異なります。
例えば「ケアレスミスが多い」という場合でも、
- 作業手順を忘れている
- 注意がそれてしまう
- 確認方法が分からない
- 急いでしまう
- 複数の情報を同時に処理している
など、さまざまな可能性があります。
そのため、
「自分には何が苦手なのか」だけでなく、「どんな方法ならできるのか」を試すことが大切です。
私たちの支援でも、実際の訓練を通して対策を検証します。
例えば、
復唱 → チェックリスト化 → 作業
という方法でうまくいったケースがあります。
一方で、単純なメモでは、
「見返さない」
「見返しても何を書いたのか分からない」
ということもあります。
その場合は、チェックリストや手順書など、別の方法を試します。
大切なのは、
「できないから、もっと頑張る」ではなく、「どうすれば少ない負担でできるか」を探すことです。
優先順位も「仕組み」にできる
複数の仕事を頼まれたとき、「優先順位をつけて」と言われても、判断が難しいことがあります。
その場合は、
① 自分で優先順位を考える
② 上司や支援者に確認する
③ 必要なら修正する
④ 実行する
という流れにする方法があります。
何でも相手に決めてもらうのではなく、
自分で考える → 確認する → 修正する
という形にすることで、仕事の中で判断する練習にもなります。
疲れているときは、誰でも「覚えにくく」なります
ワーキングメモリの対策というと、脳トレやメモ術に目が向きがちです。
しかし、
- 睡眠不足
- 疲労
- 強いストレス
- 生活リズムの乱れ
などによって、普段より注意や記憶が働きにくくなることは誰にでもあります。
「特性だから仕方がない」と決めつける前に、
最近、疲れていないか?
と振り返ることも大切です。
職場に配慮を相談できる場合もあります
ADHDなどの障害特性があり、仕事上の困りごとがある場合には、状況に応じて職場に合理的配慮を相談できる場合があります。
例えば、
- 自分用のチェックリストを使う
- 手順書を作成して使う
- 必要な情報を見える場所に置く
- 自分で優先順位を考えてから確認する
といった方法です。
大切なのは、
「全部やってもらう」ことではありません。
「何が苦手なのか」「どんな工夫があればできるのか」を整理し、必要なサポートを相談することです。
ADHDではなくても、ワーキングメモリが弱くなることがあります
ワーキングメモリの働きが落ちているからといって、必ずADHDとは限りません。
疲労や睡眠不足、ストレスなどによって、一時的に「頭の中に情報を置いておくこと」が難しくなることもあります。
「最近、急に物忘れが増えた」
「以前はできていたことが、できなくなった」
という場合は、まず自分の生活や体調を振り返ってみることも大切です。
「もっと覚えなければ」と頑張らなくてもいい
ワーキングメモリの弱みがあると、
「もっと注意しなければ」
「忘れないように頑張らなければ」
と考えてしまうことがあります。
しかし、仕事では何でも頭の中に覚えておく必要はありません。
- チェックリストを使う
- 手順書を作る
- 付箋を使う
- リマインダーを設定する
- 音声メモを使う
- 復唱する
- 優先順位を整理して確認する
など、
「頭の中だけで頑張らなくても仕事ができる仕組み」
を作ることが大切です。
そして、その方法が自分に合っているかを実際に試してみる。
これが、私たちが支援の中で行っている「特性検証」の考え方です。
「自分には何が苦手なのか」だけではなく、
「どうすればできるのか」
を一緒に探していきます。
よくあるご質問(FAQ)
Q. ワーキングメモリは鍛えられますか?
ワーキングメモリを使うトレーニングはあります。
ただし、トレーニングだけで仕事上の困りごとが必ず改善するとは限りません。
ワーキングメモリへの負担を減らす仕組みを作ることも重要です。
Q. ワーキングメモリが弱いと、必ずADHDですか?
いいえ。
ADHDの特性としてみられる場合がありますが、疲労や睡眠不足、ストレスなどによって一時的に働きが落ちることもあります。
Q. メモを取っても忘れてしまいます。どうすればよいですか?
「メモを取る」だけでなく、後から見て使える形にすることを考えてみましょう。
チェックリストや手順書、リマインダーなども方法の一つです。
Q. チェックリストを作っても、面倒になって使わなくなります。
その場合は、方法そのものを変えてみましょう。
紙ではなく、スマートフォンのリマインダーやタスク管理アプリなど、自分が続けやすい方法を探すことも大切です。
Q. 職場に配慮をお願いできますか?
障害特性があり、合理的配慮の対象となる場合には、職場に配慮を相談できる可能性があります。
まずは、
- 何に困っているのか
- どんな工夫があればできるのか
を整理してみましょう。
一人で「頑張る」だけではなく、自分に合う方法を探してみましょう
ワーキングメモリの弱みがあると、
「覚えられない自分が悪い」
「もっと頑張らなければ」
と考えてしまうことがあります。
しかし、仕事では「記憶力だけで乗り切る」必要はありません。
覚える量を減らす。
見れば分かるようにする。
忘れても確認できるようにする。
こうした仕組みを作ることで、仕事のしやすさが変わることがあります。
ディーキャリア新潟オフィスでは、実際の訓練を通して、
「どのような場面で困るのか」
「なぜ困るのか」
「どのような対策なら続けられるのか」
を一緒に検証しています。
「仕事はできるけれど、なぜかうまくいかない」
「忘れないように頑張っているのに、仕事でミスが出てしまう」
という方は、自分の努力だけで解決しようとせず、自分に合った仕組みを探すことから始めてみてもよいかもしれません。


