合理的配慮の求め方

こんにちは!ディーキャリア川崎オフィス、生活支援員の伊藤です。
「思ったことをつい口に出してしまい、後から『しまった…』と落ち込む」「相手にそんなつもりはなかったのに、失礼な言い方だと受け取られてしまう」——そんな経験に心当たりはありませんか。
就職を考えるとき、「職場でうまくやっていけるだろうか」「自分の特性が周りに迷惑をかけてしまうのではないか」という不安を抱く方は少なくありません。そんなとき鍵になるのが、合理的配慮の求め方を自分の中で整理しておくことです。
今回は、ディーキャリア川崎オフィスで実施している「特性理解」の訓練の中から、参加者同士でおこなったケーススタディの様子をご紹介しながら、職場での困りごとへの向き合い方と、合理的配慮の求め方について一緒に考えてみたいと思います。
ディーキャリアの特性理解の訓練では、単に「自分の特性を知る」だけを目的にはしていません。目指しているのは、次の3つです。
- ご自身の特性が、他者にどのような影響を与えるかが分かること
- その特性への対処ができるようになること
- 対処だけでは難しい部分について、他者への配慮を求められるようになること
この日の訓練では、参加者一人ひとりに「仕事の場面で困っていること・困りそうなこと」を挙げてもらい、その中から一つを選んでみんなで深掘りしていく「ケーススタディ」という形式で進めました。
この日、参加者から挙がった困りごとの例
・思ったことをそのまま口に出してしまい、悪気はなくても相手に失礼な印象を与えてしまう
・気持ちが落ち込んでいるときに自己否定感が強くなり、本来できるはずのことに取り組めなくなる
・面倒に感じることや苦手なことを、つい後回しにしてしまう回避傾向がある
どれも「自分だけの悩み」ではなく、多くの方が共感できる困りごとではないでしょうか。今回は、この中から「思ったことをつい口に出してしまう」というテーマを取り上げ、参加者全員で深掘りしていきました。
ケーススタディでは、まず事例を出した参加者に対して、他の参加者が質問を投げかけていきます。
- それはどんな場面で起きやすいのか(初対面の相手か、関係性ができている相手か)
- 相手の立場や年齢によって変化はあるか
こうした質問を通して見えてきたのは、「関係性が近い相手ほど気が緩み、思ったことを口にしやすくなる」という傾向でした。相手との距離が近いからこそ出てしまう困りごともある——という気づきは、ご自身の特性を客観的に理解し、後ほどご紹介する合理的配慮の求め方を考えるうえでも大切な視点です。
続いて、「この困りごとには、どのような特性が関わっていそうか」を参加者全員で考えました。挙がったのは、次のような視点です。
- その場の空気や相手の感情を読み取ることが苦手で、発言が場にそぐわない形になりやすい
- 「伝えたい」という気持ちが強く働き、発言に対するブレーキがかかりにくい(衝動性)
ここで大切にしているのは、「〇〇障害だから、この特性がある」と決めつけることではありません。あくまで「こういう特性が関係しているかもしれない」という仮説として捉え、事例を出した本人の実感と照らし合わせながら理解を深めていくことです。
特性の背景が見えてきたところで、参加者からはさまざまな対策のアイデアが出されました。
- 周りからフィードバックをもらい、使わない言葉(NGワード)をあらかじめ決めておく
- 発言以外の場面(普段のフォローや手助け、礼儀正しい振る舞いなど)で信頼を積み重ねる
- 睡眠や呼吸、体を動かすことなどで日々のコンディションを整え、衝動的な発言のブレーキを働きやすくする
- 言ってしまった直後に、素早く謝る・訂正することでフォローする
興味深かったのは、「思ったことを口に出すこと自体を、必ずしもマイナスに捉えなくてよい」という意見が出たことです。発言をゼロにすることを目指すのではなく、「自分がとくに困っていると感じる部分」に絞って対処していく——というバランス感覚も、話し合いの中で共有されました。
大切なポイント:自己対処には限界があります。「自分でどうにかしよう」と抱え込みすぎず、事前に自分の特性や取扱説明書(トリセツ)を周囲に伝えておくこと、悪気がないことをあらかじめ伝えておくことも、立派な対処のひとつです。ここでの伝え方の工夫が、次にご紹介する合理的配慮の求め方にもつながっていきます。
今回の訓練を通して、私たちが繰り返しお伝えしているのは、次のことです。
発達障害・精神障害による特性からくる困りごとは、すべてを自分一人の努力だけで克服する必要はありません。ご自身でできる範囲の対処方法(コンディションを整える、事前に特性を伝える、失敗したときのフォローの仕方を決めておく、など)を確立したうえで、それでも対処しきれない部分については、周囲に理解や配慮を求めることができます。
合理的配慮とは、「まず自分でできることをやってみて、それでも難しい部分について、周囲に理解や工夫をお願いすること」です。順番を飛ばして最初から配慮だけを求めるのではなく、「自分の特性を理解する → 自分でできる対処を試す → その先で必要な配慮を伝える」という流れを意識することが、職場で長く安定して働き続けるための土台になります。
実際に支援をしていても、「配慮をお願いすること」に苦手意識を持つ方は少なくありません。「わがままだと思われないか」「甘えだと言われないか」という不安から、つい一人で抱え込んでしまう方もいらっしゃいます。ですが、事前に特性を伝え、必要な配慮を具体的な言葉で伝えることは、決してわがままではなく、お互いが気持ちよく一緒に働くための準備です。ディーキャリアでは、こうした「伝え方」そのものを、今回のような訓練の中で少しずつ練習していきます。
なお、今回の話し合いでは「風通しの良い職場環境を選ぶこと」も意見として挙がりましたが、これは「配慮を求めなくて済む環境を探す」という意味ではありません。どんな職場であっても、自分の特性を理解し、必要な配慮を具体的に伝えられるようにしておくことが土台になります。そのうえで、自分に合った職場を見極める視点の一つとして、環境の相性も意識しておくと安心です。
自己管理と合理的配慮のバランスの見つけ方については、以前の記事「自己管理と合理的配慮、そのバランスの見つけ方——特性理解訓練のご紹介」でも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
ディーキャリア川崎オフィスでは、こうしたケーススタディ形式の訓練を通じて、「自分の特性を知ること」「自分でできる対処法を身につけること」「周囲に配慮を求める伝え方を練習すること」の3つを、段階を踏みながら経験していただいています。
こうした訓練は一度で完結するものではなく、繰り返し取り組むことで、自分の特性への理解も、伝え方も、少しずつ精度が上がっていきます。実際に、訓練を重ねる中で「以前は漠然とした不安だったことが、具体的に何に気をつければよいか分かるようになった」という声や、「配慮の求め方が分かり、就職後も落ち着いて相談できるようになった」という声も聞かれます。就職はゴールではなく、そこから安定して働き続けることこそが大切だと、私たちは考えています。
一人で悩んでいると、「自分だけがこんなことで困っている」と感じてしまいがちですが、実際には多くの方が似たような困りごとを抱え、一緒に考え、練習を重ねています。「自分の特性とどう付き合っていけばいいか分からない」「配慮の求め方が分からない」という方は、ぜひ一度、私たちにお話を聞かせてください。
見学・相談、お気軽にどうぞ
「特性理解の訓練って具体的にどんなことをするの?」「自分に合うか、まずは見学してから考えたい」という方も大歓迎です。ディーキャリア川崎オフィスのスタッフが丁寧にご案内します。
| 見学・相談を予約する | 事業所について知る |


