自己管理と合理的配慮、そのバランスの見つけ方——特性理解訓練のご紹介
こんにちは!ディーキャリア川崎オフィス、生活支援員の伊藤です。
「自分の特性のこと、頭では分かっているつもりなんだけど、いざ仕事の場面になるとうまく説明できない」「困りごとを人に伝えるのが苦手で、結局ひとりで抱え込んでしまう」——そんなふうに感じたことはありませんか。発達障害や精神障害のある方にとって、自分自身の特性を理解し、それを相手に分かりやすく伝えることは、働き続けるうえでとても大切なテーマです。
ディーキャリア川崎オフィスでは「特性理解」という訓練の時間を設けており、先日も参加者の皆さんと一緒に、自己理解の深め方や、特性による困りごととの向き合い方について学びました。今回はその訓練の様子をもとに、就労移行支援での取り組みをご紹介したいと思います。
自己理解とは? 3つの視点から自分を知る
「自己理解」と聞くと、なんとなく漠然としたイメージを持たれる方も多いかもしれません。訓練の中では、自己理解を深めていくために、大きく3つの視点があるとお伝えしています。
自己理解を構成する3つの視点
- 自分から見た自分——体調やメンタルの波、特性による困りごと、得意・苦手なこと
- 他者から見た自分——周りからのフィードバック、自分では気づきにくい傾向
- データが語る自分——検査結果やテストなど、客観的な情報
このうち「自分から見た自分」だけで判断してしまうと、実は見落としている部分が出てきやすいと言われています。自分ではこう思っていても、周りから見ると違う要因が働いていた、というケースは決して珍しくありません。ナビゲーションシートや特性プレゼンなどを作成する際にも、この3つの視点をまんべんなく拾えているかを確認することが、働きやすさや安定した就労につながっていくと考えられています。
診断名だけに惑わされない
特性理解の訓練でまず大切にしているのが「診断名だけに惑わされないこと」です。同じ診断名がついていても、実際にどんなことで困っているかは人によって差があります。診断名の一部は当てはまるけれど一部は違う、逆に診断名はついていないけれど似た性質が見られる、ということも自然に起こります。
大事なのは診断名そのものではなく、「実際に自分はどんなことで困っているか」を、事実に基づいて一つひとつ丁寧に整理していくことです。
具体的にどんな困りごとがある?
言葉を使わないコミュニケーションの難しさ
訓練では、対人関係やコミュニケーションの面で起きやすい困りごとについても取り上げました。特に難しさを感じやすいのが、表情や身振り手振りといった「言葉を使わないコミュニケーション」の部分です。
参加者から挙がった声
- 空気を読むのが難しい/話しかけていいタイミングが分からない
- 相手の見た目や第一印象だけで、その人がどんな人か決めつけてしまいやすい
- 言葉にしてもらわないと、相手の状態を汲み取るのが難しい
相手の気持ちに反応する力は「共感力」と呼ばれますが、この感じ取り方は人によってさまざまです。ただし、この力は経験を積むことでカバーできる要素でもあります。相手の様子を観察し、「こういう時はこう動けばよいのだな」と一つずつ理屈として学び、確認しながら身につけていくことができます。
こだわりや考え方のクセ——3つの脳機能特性
仕事や生活のパターンにこだわりがあり、それが崩れると強いストレスを感じてしまう——という背景には、脳機能の特性が関わっていると言われています。訓練では代表的な3つの特性を紹介しました。
脳機能特性の例
- シングルフォーカス——情報の取り入れ方が限定的になりやすい。特定のことにしか関心が向かず、細部にこだわりすぎて納期に間に合わなくなることも
- シングルレイヤー——情報を一つずつ丁寧に処理するため、パッと見て判断するのが苦手。丁寧さという強みの一方、判断に時間がかかりやすい
- ハイコントラスト(白黒思考)——物事を極端に善悪や0か100かで判断しやすく、間のグレーゾーンの考え方が苦手になりやすい
これらの特性は、リフレーミングなど考え方の訓練を通じて、自分の中で少しずつ補正をかけていくことができるとお伝えしています。
多動性・衝動性、不注意について
貧乏ゆすりや手遊びなど、じっとしていられない動きが出てしまう背景には、脳の前頭前野の働きが関係していると言われています。判断を司るこの部分の活性が低い状態を、体を動かすことで補おうとしているのではないかと考えられています。周りからは落ち着きがないように見えてしまうこともありますが、本人にとっては集中を保つための工夫の一つと捉えることもできます。
また、予定をうっかり忘れてしまう、やりたいことに意識が向いて本来の予定からずれてしまうといった不注意の特性が見られることもあります。同じ「うっかりミス」でも、周囲の音による気の散りやすさが原因なのか、考え事によってチェックが漏れやすいのかなど、背景はさまざまです。自分にとってどの要素が強く出やすいのかを確認していくことが、対策を考える第一歩になります。
特性は変わらなくても、付き合い方は変えられる
大切なポイント
生まれ持った特性そのものを大きく変えることは難しいと言われています。だからこそ大切なのは、「特性による困りごとを、すべて自分の努力だけで克服しようとしないこと」です。
自分でできる範囲については、リフレーミングのスキルや、自分に合ったセルフケアの方法など、少しずつ工夫やスキルを身につけて対応していく。そのうえで、「どうしてもここが難しい」という部分については、無理をせず配慮として周囲にお願いする——この二段構えが、働きやすさにつながっていきます。
たとえば、集中が続きにくい時にはスタンディングデスクで作業できる環境を整えてもらったり、手元で使える道具を使って気持ちを切り替えたりと、周りから見ても「対策をきちんと行っているのだな」と伝わる形を整えておくことも一つの方法です。また、衝動的な判断で失敗しやすい場合は、行動する前に一度周囲に確認をとる「ワンクッション」を入れることも、有効な対策になります。
自分の得意・苦手を理解し、それを相手に分かりやすく説明できるようにする。そのうえで、自己管理でできる部分と、配慮をお願いしたい部分のバランスを見つけていく。これが、特性理解の訓練を通じて目指しているゴールです。一人で抱え込まず、少しずつで大丈夫ですので、ぜひ自分のペースで取り組んでいただければと思います。
なお、今回ご紹介した困りごとや特性の現れ方はあくまで一例です。同じ診断名であっても感じ方や困りごとの度合いには個人差があり、ここに書いたことがすべての方に当てはまるわけではありません。ご自身に当てはまるかどうかは、訓練の中でスタッフと一緒に確認しながら整理していくことができます。
ディーキャリア川崎オフィスでは、こうした特性理解の訓練のほか、自己管理スキルやビジネスマナー、業務スキルなど、就労に向けたさまざまな訓練プログラムをご用意しています。「自分の特性についてもっと知りたい」「どんな配慮をお願いすればいいのか分からない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
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