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発達障害×夜型生活 | 「リベンジ夜更かし」の原因と対策

「翌日も仕事なのに、夜中のゲームがやめられない」
「疲れて眠いのに、ただひたすらSNSをスクロールし続けてしまう」
「昼間だらだらしたから、まだ寝たくないと考えてしまう」
睡眠よりも「楽しい時間」を優先してしまい、結果的に睡眠不足が続いてしまう…そんな悩みを抱えていませんか。
日中の活動がうまくいかず、漠然と満たされない思いを抱えてしまう。それを埋めるかのように、ゲームや映画などの趣味・娯楽に没頭して気が付いたら朝方になっている。昼間に何もできず、今日という一日を有意義に過ごすために「何かしなければいけない」と思い、夜になっても寝てしまってはいけないと感じる。しかし、その「何か」が出てこず、ひたすらお菓子を食べたり、動画コンテンツやSNSなどを見たりして過ごしてしまう。
このように就寝時間の先延ばしをすることを「リベンジ夜更かし」と言い、発達障害の特性がある人は特になりやすいとされています。
この記事は「リベンジ夜更かし」が常習化していた発達障害当事者が、自身の経験を交えながら、リベンジ夜更かしとは何か・なぜ発達障害のある人が陥りやすいのか、その原因や対策について紹介しています。
夜更かししてしまうのは、意思が弱いからではなく、発達障害の特性が影響しているケースがあります。つい夜更かしをしてしまう理由やその対処法を理解し、自分に合った対策などを見つけることで、現在または将来の職場での就労をスムーズに継続できる一助になればと願っております。
執筆者紹介

小鳥遊(たかなし)さん
発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。
発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。
また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。
リベンジ夜更かしとは

リベンジ夜更かしとは、「報復性夜更かし」とも言われ、日中に充実感や満足がないため、睡眠を削ってでもなんとかして満足感を得ようとする行為のことをいいます。
筆者は、以前会社員をしているときに、このリベンジ夜更かしを常習していました。残業続きでほぼ毎日終電で帰っており、「帰ってそのまま寝たら、毎日何のために生きているのか分からなくなる!」という感覚がありました。
そのため、自宅最寄り駅の隣にあるコンビニに寄っては、ジャンキーでカロリーの高そうなコンビニ弁当を選んでは帰宅して、弁当を食べつつ特に見たいわけではない深夜のバラエティ番組をボーッと眺め、寝るまでの時間を引き延ばしている自分がいました。そのせいか、体重はうなぎのぼりになってしまいました。
その時の自分は、朝から晩まで仕事に追われ、「充実した余暇」を過ごせず、満たされない思いがありました。その満たされない部分を埋めるために、「カロリーの高いコンビニ弁当」「深夜のバラエティ番組」で夜更かしをしていたと言えます。本当は早く寝たほうがいいと分かっていても、どうしても「自分の時間が欲しい」という気持ちが勝ってしまうのです。
発達障害のある人がリベンジ夜更かししがちな原因

「リベンジ夜更かし」がやめられない原因に発達障害が関係していることがあります。実際に昼夜逆転生活や睡眠不足に悩んでいる発達障害当事者の方は少なくありません。
同じ発達障害でもADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの障害種別、さらに一人ひとり特性が異なるため、原因はそれぞれです。今回は代表的なものを4つ紹介します。
①ストレスを感じやすい
発達障害のある方は、特性による困難によってストレスを抱えやすかったり、生物学的にストレス耐性が弱かったりすることがあります。詳しくは、以下の参考記事もご覧ください。

さらに、リベンジ夜更かしが癖になっている人は、日中にストレスを受けるなどして「マイナス」なことがあった結果、自分にとって「プラス」になるような体験をしなければと考える傾向にあります。日中に仕事でミスをして「マイナス」、それを埋め合わせるように帰宅してから夜中にゲームや動画視聴をし過ぎてしまう、といったことが典型です。この「マイナス」が大きければ大きいほど、その反動としての「プラス」を大きくしなければなりません。
日中にミスをしたとして、それが「まぁ、しょうがないか」とある程度流せるようであれば、夜中に埋め合わせのゲームや動画は少なくて済みます。しかし、私たち発達障害者は、感情の抑制に課題を抱えていることが多く、「マイナス」をより大きく感じてしまうことがあります。そうなると、より強く大きなリベンジをしないと釣り合いません。感情の抑制がうまくいかずストレスを感じやすい私たちは、リベンジが大きくなってしまいがちなのです。
②行動の切り替えが苦手
また、発達障害のある人は、行動の切り替えが苦手な傾向もあるとされています。いったん始めたゲームや動画視聴などを止められず、長時間になってしまいがちなのです。筆者もこの傾向にあると実感しています。
筆者の頭の中では何が起こっているのかというと、「せっかく楽しいゲームをしているんだから、ゲームを止めて(ゲームより楽しくはない)他のことをするなんて嫌だ」という気持ちです。切り替えが上手い人は、この「ゲームを止めるのは嫌だ」という感情を抑えて、翌日のために寝るという行動に素早く切り替えることができます。ここでも、感情の抑制が難しいという傾向が関わっています。
また、筆者が特に顕著に感じている、もう一つの傾向があります。それは、「自分の興味のあることには極端に集中してしまう」というものです。興味のある対象にはすぐ動けるのに、興味が薄いものにはやる気がまったく湧きません。ゲームをしている最中はゲームにしか興味がなくなり、「寝なければいけない」と分かりつつも、ゲームから離れられなくなってしまうのです。
③優先順位が付けられない
知り合いの発達障害のある人の話で、やはり夜中にネットゲームをして睡眠が十分にとれないという悩みがありました。その人が言うには、「一緒にチームを組んでやっている仲間が、どうしても夜中にしか時間が取れない」という理由で、深夜にゲームをせざるを得ないとのことでした。
冷静になって考えれば、「そうではない人とチームを組まないと、いずれ睡眠が不規則になって健康を損なってしまう」ということは分かりそうなものです。しかし、「自分にとって何を優先すべきか」という判断が正しくできない、「あれもやりたい」「これもしたい」となってしまった結果、毎日のように深夜にネットゲームをしてしまっていました。
④睡眠障害になりやすい
一般に、発達障害のある人は、睡眠と覚醒を調節する中枢神経系の機能不全を抱えていることが多いとされています。具体的には、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が遅れるなど、体内時計が後ろにずれやすいのです。その影響で、夜中に覚醒、つまり目が覚めてしまって睡眠にうまく入れないことが多く、ベッドに入っても寝られずに朝を迎えてしまった、という人も少なからずいます。どうせ寝られないなら、好きなことやって夜更かししてしまおう、と考えるのも無理はないのではないでしょうか。
以上が、発達障害のある人がリベンジ夜更かしをしてしまいがちな理由の代表的なものです。
リベンジ夜更かしの悪影響

リベンジ夜更かしによって引き起こされる悪影響のうち、代表的なものを3つ挙げます。
①日中の眠気、集中力の欠如
夜更かしをすれば、十分な睡眠が取れなくなったり、生活サイクルが不規則になったりします。その結果、日中に強い眠気を感じて集中するのが難しくなります。日中の活動中に注意力が散漫になると、仕事でミスなどをしがちになります。
発達障害のADHDがある筆者には、不注意傾向がありました。それに加えて夜更かしが常態化してしまい、ただでさえ不注意によるミスなどをしがちな上に、頭がボーッとしてしまっていました。その影響もあってか、仕事の負荷が強まると、それに耐えきれず休職を余儀なくされました。
さらに、筆者は元来の不注意特性から日中の活動に充実感が得られず、リベンジ夜更かしをしてしまいがちな状況でした。そして、夜更かしをした結果、はっきりしない頭で翌日業務をおこない、さらに満足のいかない日中を過ごし、さらにリベンジ夜更かしをしたくなる、という悪循環に陥っていたのです。
②気分の落ち込みやイライラ
リベンジ夜更かしをすると、十分な睡眠が取れず、次第に心身ともに健康を害していきます。「体」だけでなく「心」の方も気分が落ち込んだり、イライラしたりと影響が出るのです。そうなると、取るに足らないことで大きな精神的ダメージを受けてしまうようになります。
寝不足によるいらつきで、ネガティブな心理状況に陥りやすくなるだけでなく、十分に考えずに早まった決断をしてしまうことにもつながりかねません。
筆者は、休職直前のあるとき、株主からの電話を受けていました。株主がなかなか電話を切らせてくれず、長時間の電話対応となったのですが、目の前にいた同僚の社員から「早く電話を切り上げて!」といったジェスチャーをされました。
電話が終わった瞬間、「もっと早く簡単に電話終わらせられないの?他にもやることあるんだから」と言われ、「自分だって好きで電話を長引かせているわけじゃない」といつもより強い憤りを感じました。このことは、「もう、自分は働き続けられないな」と休職を決断する原因の1つになりました。
③不安障害
不安障害とは、不安や恐怖を過剰に感じて、日常生活に支障をきたす精神疾患のことです。
睡眠不足は、ストレスホルモンの分泌を増加させるため、不安障害やうつなどの精神疾患の原因になることがあります。
筆者は、自身の発達障害(ADHD)の影響と、毎日終電帰りでリベンジ夜更かしをしていた影響、それと会社の業績が伸びずにリストラが増え自分の業務負荷が増大したという背景もあり、次第に会社に行くのが怖くなってしまいました。
別に、理由があるわけではなく、なんとなく「自分は必ず仕事で失敗して叱責を受ける」という確信にも似た気持ちで毎日通勤するようになったのです。
少しでも日常業務でイレギュラーな出来事があると、それを筆者は「事件」と大げさに認識して焦ってしまっていました。たとえば、名刺作成業務で、役員から「至急で対応して欲しい」と言われようものなら、それは立派な「事件」だったのです。
「いつもなら翌々日に納品なのに、至急で明日の朝までに渡さなければいけない……これは事件だ!」と、不安や恐怖が頭の中をグルグル回りはじめます。やることは、名刺印刷会社の担当者に納期を早める依頼をかけるだけなのですが、いつもとちょっと違うだけで、もはやそれは不安を引き起こすのに十分な「事件」でした。
発達障害の傾向とこのような悪影響の相乗効果により、筆者は仕事を続けられず休職という選択を取らざるを得ませんでした。
不安障害について詳しく知りたい方は、以下の参考記事もぜひご覧ください。

このような状況に陥れば、誰しも心身に支障が出て当然です。では、どうすればこの状況から抜け出せるのでしょうか。次はその対処法をお伝えします。
リベンジ夜更かしの対処法

ここでは、リベンジ夜更かしへの対処法を3つお伝えしたいと思います。
①規則正しい生活
当たり前過ぎる話かもしれませんが、毎日規則正しく起きて寝るのを習慣化することが、リベンジ夜更かしの対処法としては最大最強のものと言って良いでしょう。
特に、休職中にリベンジ夜更かしに陥り、社会復帰が難航するケースが少なくありません。
筆者が休職したときはまだ実家に住んでいたのですが、その際の両親の対応に感謝していることがあります。それは、「日中は何をやってもいい、『朝起きて、夜寝る』ことだけは守ろう」と提案してくれたことです。筆者が休職したのは10年程度前のことで、当時は今ほどYouTubeなどの手軽にみられる無料動画コンテンツはありませんでしたが、それでもレンタルビデオやネット上のテキストコンテンツなどはふんだんにありました。
夜更かししようと思えばいくらでもでき、その点では夜更かしする危険性は十分にあったのです。両親はそれを見越していたのかもしれません。規則正しい生活を最優先としてくれたおかげで、昼夜逆転生活や睡眠障害になることなく、復職をすることができました。今振り返ると、両親からの助言には感謝してもしきれません。
②日中にきちんと疲れる
「規則正しい生活」にも通じますが、夜更かしをしないためには、まずは日中の活動でしっかり「疲れる」ことが大切です。
そのために大事な考え方をご紹介します。生活リズムを整えるためには、「早寝早起き」が大事だとよく言われます。実は順序が逆で、「早起き早寝」なのです。眠かろうが疲労が残っていようが、とにかく起きる。そして、就寝するまでは寝ない。起きている間に十分疲れておけば、リベンジ夜更かしをしたくても、体がそれを許してくれません。半強制的に夜寝ることができるのです。
日中にできるだけ用事を入れ、クタクタに疲れて倒れ込むように寝る。その結果翌日はすっきり起きられる。このサイクルに持ち込むことができればこっちのものです。また、適度に疲労を感じて「ああ、やっと寝られる」と布団に入る時の気持ち良さも味わうこともできます。日中の用事は、「疲れる」ことさえできれば、好きなこと、ストレス解消になることであっても構いません。
③環境調整
さらに「リベンジ夜更かし」への対処法として有効なのが、環境調整です。たとえば、寝室へスマートフォンを持ち込まない、寝るときは薄暗い照明にする、ゆっくりぬるめのお風呂に浸かる、などです。
もちろん個人差はありますが、自分が寝入りやすい環境を作ることが大事です。筆者の知り合いの発達障害のある人に、寝入る際にアロマを焚いているという人がいました。室内を無音にして座って瞑想をする、という人もいました。
以上、3つほど対処法を挙げました。全部する必要はありません。「やってみようかな」というものから実践していただければと思います。
特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために

これまで、リベンジ夜更かしについての話をしてきましたが、その前提となるのは「自己理解」であると筆者は身にしみて感じています。そもそも自己理解がされていないと、自身がリベンジ夜更かしをしやすいことを自覚しづらいものです。むしろ、「ハードな生活をしている自分」に酔っていたりします。自分のおこなっている行動が「リベンジ夜更かし」であることに気が付くことすら難しいかもしれません。
就労移行支援事業所ディーキャリアでは、発達障害のある方が自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングもおこなっています。
発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。
就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業)
就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。
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記事監修:北川 庄治(デコボコベース株式会社 プログラム開発責任者)

東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。




