発達障害がある方の話し方の特徴|よくある困りごと&対策

「つい話しすぎてしまって、後で一人反省会をする」
「不用意な発言をしまって、相手を傷つけた」

そんな悩みを抱えていませんか。

発達障害であるADHDやASDがある人は、特性によって独特な話し方をすることがあるとされています。たとえば、話が一方的になったり、冗談が通じなかったり、思いつくままに話してしまったり。こういった話し方は、ときに相手に誤解や不快感を与えてしまうこともあります。

そのため、コミュニケーションにおける失敗経験があり、人と話すことに苦手意識を持っている方は少なくありません。

この記事では、ADHDやASDがある人の話し方の特徴と、そこに隠れている特性、そして発達障害(ADHD強め、ASDも若干あり)の筆者の経験から得た具体的な対処法をご紹介します。対処法を知ることで、今の職場や、これからの職場での就労をよりスムーズに続けていくためのヒントになれば幸いです。

執筆者紹介

小鳥遊(たかなし)さん

発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。

発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。

また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。

ADHD、ASDの特性

今回の記事では、発達障害の中でもADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)に関する情報をお伝えします。どちらの障害も、その特性によってコミュニケーションのスタイルに独特な傾向をもたらすことがあります。

まずは、それぞれの代表的な特性について簡単に説明していきます。特性は一人ひとり異なるため、参考としてお読みください。

ADHDの特性

会話をする際に影響を大きく与えると考えられるADHDの主な特性は以下の3つです。

  • 衝動性の高さ
    思いついたことをすぐに口に出したり、行動に移したりしてしまう
  • 注意力の欠如
    相手の話を聞き続けることが難しかったり、集中が途切れて気がそれたりする
  • 脳内多動(注意の転導)
    頭の中に次々とアイデアや思考が浮かび、話が飛びやすくなる

ASDの特性

会話をする際に影響を大きく与えると考えられるASDの主な特性は以下の4つです。

  • こだわりの強さ
    特定のテーマについて非常に深くこだわり、話題が広がりにくくなる
  • 興味の偏り
    自分の興味のある話題には夢中になるが、興味のない話題には関心を持ちにくい
  • 他者視点の低さ
    相手の気持ちや考えを想像することが難しく、自分本位な話し方になることがある
  • 想像力の低さ
    比喩やたとえ話を文字通りに受け取り、ニュアンスや空気感を読み取りにくい

これらの特性が、日常の会話の中でどのように表れるのか、発達障害当事者である筆者の実際の体験をもとにした具体例をもとに見ていきましょう。

ADHDの話し方の代表例とその対処法

話しだすと止まらない、マシンガントーク

筆者はクラシック音楽が大好きなのですが、誰でも興味が湧くようなジャンルではありません。そうだと理解しているものの、「それってなんですか?」などと質問されると、つい嬉しくなって「ベートーベンは交響曲を9つ書いていて、1番は……」と、順々に曲目解説を始めてしまったことがあります。相手が時計を気にしていたりしてもお構いなしで、気が付いたら2,30分経っていたこともあります。

対処法

「ベートーベンは交響曲を9曲書いているんだけど、最後の9番がね……」と、伝えたい内容を絞り込み、話しすぎないように気を付けるようにしています。相手から「他の曲は?」と聞かれたら、またもう1曲、という具合に、「聞かれれば答える」ということに気を付けています。

話にまとまりがない、話が噛み合わない、会話が飛びやすい

先週末に観たYouTubeの話をしていたのに、ふとその後に観たテレビ番組のことを思い出し、さらにそのテレビ番組の出演者のやっていたラジオの話を脈絡なく話し出してしまい、「で、何の話だっけ?」と相手に言われてしまったことが筆者にはありました。

対処法

話を始める前に「まず何について話すか」を心の中で整理してから話すように気を付けています。YouTubeの話をしていたら、いったんそれで話し終えて、相手の反応を見ます。相手が別の話題を出して来たらそれに乗っかります。相手が別の話題を出してこなくても、「そういえば、YouTubeの後に観たテレビがまた面白くてさ……」と、橋渡しになる言葉を挟んでから次の話題に行くようにしています。

早口になる

自分が好きなお笑い芸人の話になり、その魅力を分かってもらいたくて熱を込めて話をしていたら、「もっとゆっくり話して」と言われてしまったことがありました。そこで初めて、自分が早口だったことに気づきました。

対処法

伝えたい内容が頭の中に膨大な量思い浮かぶと、それをできるだけ早く伝えたいと思って早口になりやすくなります。そんなときは、「ゆっくり」を5割増しで意識して話してみるようにしています。また、語尾を丁寧に言うことも効果的です。

話に集中できない(聞き続けられない)

オンラインミーティングで相手が一生懸命にしゃべっているのに、相手の部屋の壁に貼ってあるポスターが気になって、「あれはもしかしたら自分が好きな画家の絵のレプリカじゃないか。そういえば、その画家の展覧会が近々あったな……」などと余計なことを考えていて気づいたら話が終わっていた、ということがありました。

対処法

覚えておく必要がなくても、キーワードをメモしながら話を聞くと、集中しやすくなります。手を動かして話の内容を書いていると、他に思考が飛びにくくなるのか、比較的相手の話が頭に入りやすくなる印象があります。

早とちりして話の内容を解釈する

ある原稿を執筆する仕事について、その仕事を依頼してきた人と電話をしていて、「ということで、明日までには原稿を……」と聞き、「え、明日までには書くのはちょっと難しいんですけど」と即答しました。すると、「いえ、明日までには原稿を仕上げるのは難しいと思うので、締切を1週間延ばそうかと思っていまして……」と話を続けられ、気まずい思いをしました。

対処法

「最後まで聞いてから意見を言う」をできるだけやるようにしています。それでも反射的に口から言葉が出てきてしまうことがありますが、それに気が付いた時点ですぐに止めて、「うん、いや、続けて」と相手の話を聞くようにしています。

思いついたまま話をする

独身の友人から、「今やっているドラマでお勧めはある?」と聞かれ、家事や育児がテーマの人気ドラマの話をしてしまい、「そんなに人気なら私も観てみようかな。それって私も共感できそう?」と言われて、言葉に困ったことがありました。

対処法

まず「今この話題を言うべき?」と心の中でワンクッション置いてから話そうと心がけています。それでも気を抜いたら言ってしまいますが、気を付けるに越したことはありません。

相手の話に割り込む(会話泥棒)、話を被せる

相手が話し始めた瞬間、「それ私も!」と話をかぶせてしまうことがあります。最近出版された話題の本が面白いと相手が話し出したときに、「それね!でも、それって私が表紙を見た感じは、最初は確かにすごいインパクトがあったんだけど、私はあまり面白いと思えなくて……」と、話の主導権を奪って、なおかつ相手の主張の逆方向に話を持っていってしまったことがありました。

対処法

いったん相手が話を一段落させてから、相手との共通点をまずは探して話し出すようにしています。相手と自分の意見が違う場合は、いきなり話し出さずに、いったん「そうだよね」と相手の意見を尊重するクッション言葉を入れてから、「一方で、こんな考えもあるかなと思って……」と、自分の話をするようにしています。

ASDの話し方の代表例とその対処法

一方的に話しを続ける

子供の保育園の謝恩会で、思い出の写真を音楽と共に紹介するムービーを作った際、そのムービーを作ったときにどれだけ大変だったか、写真を出すタイミングと音楽との調整にどれだけ試行錯誤をしたかなどを熱く語りすぎて、気が付いたら相手が反応に困っていたことがありました。

対処法

途中でいったん話を区切って、相手の反応を見るタイミングを作ろうと心がけています。そのため、一気に話を続けるのではなく、まるでYouTubeのチャプター分けのように、「まずは写真を選ぶときに気を付けたことを話そう」「次にどんな音楽を付けようか迷ったときのことを少し話そう」などと、ちょっとずつ分けて考えて話すようにしています。

冗談が通じない

同じく発達障害のある人に、合理的配慮を考えたいと言われたときの話です。「まずは会社にやって欲しいことを10個挙げてみようか」と伝えたら、「まずは、こちらから言わなくても察して欲しい、とか配慮して欲しいかな(笑)」と言われて、「いや、それ言ったら始まらないでしょう」と答えてしまい、「冗談だよ!」と言われたことがありました。

対処法

相手の言葉だけでなく、相手の表情、口調やイントネーションもよく観察して反応するようにしたいと思っています。

相手や場面に応じた話し方や内容の調整ができない

プライベートの飲み会で、友人が家庭の愚痴を言ってきたときに、「洗濯が大変?なら、やってもらえるように交渉しようよ」とか「掃除が面倒くさいなら、もしかしたら掃除機を変えたらやりやすくなって、できるようになるかもね」と、求められてもいないアドバイスをしてしまったことがありました。

対処法

ただたんに会話をしたいだけの場なのか、真剣に解決策を求められている場なのかなど、どのようなことが求められている場なのかを自分なりに決めてからその場に臨むようにしています。

興味のない会話に一切入らない

同僚とランチに行ったときに、みんなが昨日のプロ野球の話をしていて、正直興味ないと思って静観していたら、「小鳥遊くん、目が死んでる(笑)」と言われてしまいました。

対処法

興味が無いのはしょうがないので、せめて「話している人に目を合わせて相づちを打つ」ことだけはしようと考えています。

筆者の発達障害の傾向から、ADHD多め、ASD少なめですが、経験にもとづいた「生きた」対策をぜひ参考にしていただければと思います。

なお、上記も含めた、発達障害によくある話し方の特徴について、分かりやすく解説した動画もご紹介します。

▶ 発達障害の話し方5選(あるある形式でわかりやすく紹介)

▶ 発達障害の話し方の特徴(よくあるすれ違い事例を解説)

▶ 発達障害の話し方(具体的な会話例から解説)

ディーキャリアのコミュニケーションプログラム

ディーキャリアでは、発達障害の特性に応じたコミュニケーションプログラムを用意しています。代表的なプログラム2つを紹介いたします。

「傾聴スキル」プログラム

  • 相手の話をうなずきながら聞く
  • 共感を示しながら聞く
  • こまめに質問をいれる

などのコミュニケーションの技術を身につけることで、相手の話を「しっかり聞いている」という印象を与えることができ、一方的に話すことを防ぐことができるようになります。

「アサーティブコミュニケーション」プログラム

自分の意見を言う際に、攻撃的になったり逆に消極的になりすぎないように適切な主張の仕方を学ぶ訓練です。

自分の意見だけ伝えるだけではなく、相手の意見を聞き、双方を尊重しながらコミュニケーションをとっていきます。

代表例2つをあげましたが、これ以外にも日々の訓練の中で「人前で話すこと・プレゼン」や「意見交換・ディスカッション」、休み時間中の「雑談」などの場でコミュニケーションスキルを高める機会を設けています。

今回ご紹介をした「話し方」に当てはまる方・コミュニケーションに苦手意識のある方は、ぜひ一度ディーキャリアのプログラム体験会にご参加ください。

特性に合った、自分らしい働き方を見つけるために

これまで、ADHDやASDの人がしやすい話し方とその対処法についてお伝えしてきました。その前提となるのは「自己理解」であると筆者は身にしみて感じています。場に合った・相手に合った話し方をしているかを客観的な視点から知る機会が得られると、調整することができるでしょう。

就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっており、発達障害のある方が、自己理解を深められる実践的なプログラムを提供し、また規則正しい生活が送れるトレーニングをおこなっています。

発達障害のある方の特性を理解したうえで、個別に最適なトレーニングを提供することが特徴です。

就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業)

就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。

「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。

ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。

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記事監修:北川 庄治(デコボコベース株式会社 プログラム開発責任者)

東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。

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