「障害のことを、誰に、どこまで伝えるべきだろう」—— 家族や友人、恋人など親しい人たちに自分の障害のことを伝えるかどうかは、とても悩ましい問題です。
病院や専門機関は、第三者なので相談してもいいかなと思えます。職場に伝えることは、合理的配慮や障害者雇用に関わることなので必要だと割り切ることもできます。
しかし親しい人たちに対して伝えるかどうかは、それらとは少し事情が異なります。親しいからこそ「もしも関係が悪くなったり、理解してもらえなかったりしたらどうしよう」と不安になるのではないでしょうか。
最近では、著名人が自分に発達障害があることをカミングアウトする記事や動画などを見かけることも増えてきました。そこで今回は、発達障害の当事者の皆さんが「カミングアウト」を実際にどうしているのか、そして障害のことを理解してもらうためにどうすれば良いのかについて、当事者の方へのアンケートや、同じく当事者である筆者の体験談を交えてご紹介します。発達障害のことを親しい人に伝えるかどうか、悩んでいる方のご参考となれれば幸いです。(※「カミングアウト」とは、公にしていなかったことを開示する=周囲に伝えることです。)
なお今回のアンケートによる調査には、11名の当事者の方にご協力をいただきました。この場をお借りして御礼を申し上げます。
目次
1. 誰に・どの範囲までカミングアウトする?
1-1. 家族には基本的に伝える
今回アンケート調査をおこなったところ、家族に対しては11名すべてが発達障害のことを開示しているという結果になりました。
家族の場合、病院への通院や支援機関・職場への相談の際に協力してもらったり、家庭での日常生活のなかで配慮が必要だったりしますので、障害を開示することが基本になるのでしょう。「隠し続けるよりも、カミングアウトした方が精神的に楽だから」という理由は、一緒に過ごす時間が長いからこそではないでしょうか。
「家族」に障害を開示した理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています)
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筆者の場合、パートナーと、自分の親・兄弟に伝えています。
パートナーと親には、診断前は特に相談せず、診断をきっかけに会社を辞めることになったタイミングで話をしました。兄弟とはすでに別々に暮らしているため、診断から数か月たってから、会話のなかで自然に話した、という形です。
一方で親戚やパートナーの両親には伝えていません。
親戚とはあまり交流がなく、なにか支援をお願いするような関係ではないため、伝える必要がないと判断しました。逆にパートナーの親とは普段から交流がありますが、パートナーが伝えることを特に望まなかったため開示しませんでした。
1-2. 友人・恋人には、関わり方や親しさの度合いによって伝える範囲を決める
一方、友人や恋人に対しては11名中2名は障害を開示していないという結果になりました。また11名中5名は特定の相手にだけしているという回答でした。
必ずしもすべての人に伝えるのではなく、関わり方や親しさの度合いによって障害を開示する/しないを決めている方が多いようです。
「友人や恋人」に障害を開示した理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています)
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「友人や恋人」に障害を開示していない理由(記事掲載用に回答内容を一部編集しています)
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筆者の場合、以前は友人・知人に対して発達障害のことをオープンに伝えており、SNSやブログ記事などでも公表していました。しかしある時期から「必要なとき以外は伝えない」という考えに変わりました。
理由は、自分は気にしなくても伝えた相手はどう感じるか分からないと思ったからです。
以前、発達障害のことをオープンに伝えていたときには「障害があることは別に恥じることではなく、私の一部だ」という思いがあり、伝えた相手からどう思われようと気にも留めていませんでした。
しかしあるとき、発達障害とは別の「自分が詳しく知らない障害」を持った知人から開示を受けた際に、私は悩んでしまったのです。
- ・その障害はどれほど苦労があるものなのか、知識がないから分からない。
- ・分からないから、今どんな気持ちで開示しているのかが想像できない。
- ・なぐさめて欲しいのか、助けて欲しいのか、それともただ話を聞いて欲しいのか。何を望んでいるのかが分からない。
どうリアクションをすれば良いのか、とても悩みながら話を聞いたことを今でも鮮明に覚えています。
そして、ふと気が付いたのです。もしかしたら、私が発達障害であることを伝えた相手も、同じような思いをしていたのではないか、と。下手なことを言って傷つけたらいけないが、打ち明けてくれたことをスルーしてもいけない気がする。相手のことを気づかうからこそ、どう対応すればいいのか悩んでしまう。そんな思いを友人にさせていたのではないかと感じたのです。
それから私は、必要なとき(何か支援を求めたり、仕事で関わったりするようなとき)以外は、友人・知人に対して積極的に開示はしないようにしています。
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