考えすぎてしまう自分と付き合う方法 〜リフレーミング訓練のご紹介〜
こんにちは!ディーキャリア川崎オフィス、生活支援員の伊藤です。
「夜になると、やらなきゃいけないことが次々と頭に浮かんできて気持ちが沈んでしまう」「何かうまくいかないことがあると、つい自分を責めてしまう」「相手の言動が気になって、そこからずっと考え込んでしまう」——こうした感覚に、心当たりのある方は多いのではないでしょうか。
発達障害・精神障害のある方の中には、物事の受け止め方(考え方の癖)によって、気分の落ち込みや不安、焦りといったネガティブな感情が強く出やすい方がいらっしゃいます。今回は、ディーキャリア川崎オフィスで行っている「リフレーミング」の訓練内容を、実際の訓練の流れに沿ってご紹介します。
リフレーミングとは、ある出来事や状況に対する「考え方の枠組み(フレーム)」を見直し、別の視点から捉え直すことで、気持ちの負担を軽減していくスキルです。出来事そのものを変えることはできなくても、それをどう受け止めるかは、練習によって少しずつ変えていくことができます。
訓練では、いきなり考え方を変えようとするのではなく、次のようなステップを踏んで進めていきます。
- 1状況・気分・自動思考を書き出す
- 2自分の考え方の癖(認知のパターン)に気づく
- 3別の視点から考え方を切り替える(リフレーミング)
- 4気持ちに余裕が生まれたところで、具体的な行動の工夫を考える
まず行うのは、「どんな状況で」「どんな気分になり」「頭の中にどんな考えが浮かんだか」を、事実と気持ちを分けて書き出す作業です。参加者からは、夜になるとやるべきことが一気に頭に浮かび、何も手をつけられないまま気分が落ち込んでしまう、という状況が挙げられました。
ポイントは、「状況」と「気分」を混同しないことです。「何もしなかった」という事実(状況)と、「落ち込む」という気持ち(気分)は、いったん切り分けて書くことで、後の振り返りがしやすくなります。気分については、「悲しい30%・焦り40%・不安30%」のように、感情ごとの割合として捉える練習もあわせて行います。
気分の落ち込みは、状況そのものではなく、その状況をどう解釈したか(自動思考)によって大きく左右されます。訓練の中では、次のような考え方の癖が話題にあがりました。
- 物事を「すべき」「〜しなければならない」と捉えやすい
- 複数のタスクが重なると、優先順位がつけられず、すべてを一度に抱え込んでしまう
- うまくいかないことがあると、自分の責任として捉えやすい
こうした考え方の癖に自分自身で気づけるようになることが、リフレーミングの土台になります。参加者間でも、同じような状況で同じように考え込んでしまうという点への共感がみられました。
考え方の癖に気づいたら、次はそれを別の角度から見直していきます。訓練で紹介された代表的な方法を3つご紹介します。
相手の性格や態度について、一つの見方に固まらず、別の角度から捉え直す方法です。例えば「発言が少ない人」を「何も考えていない」と見るのではなく、「周りをよく見て、慎重に言葉を選んでいる人」と捉え直すことができます。「怒りっぽい人」も、見方を変えれば「それだけ真剣に向き合ってくれている人」と捉えることができるかもしれません。
「もし〜だったら」という仮定を置いて考える方法です。「なかなかうまくいかない」と感じたときに、「もしこの目標をもっと小さく分けたら、どうなるだろう」と考えてみることで、行き詰まりを別の形で捉え直すことができます。
過去・現在・未来という時間の流れを使って、今の出来事の意味づけを変える方法です。訓練では、次の2つの視点が紹介されました。
- 未来から見た現在……今直面している問題を、未来にたどり着くまでの過程の一部、成長の機会として捉える
- 今でよかった……ミスや気づきについて、「もっと後で気づくよりも、今のうちに気づけてよかった」と捉える
訓練の中では、こうした視点を使って気分の変化を数値で振り返り、ネガティブな感情が半分程度まで軽減したという振り返りもみられました。完全になくす必要はなく、少し余裕が生まれる程度でも、その後の行動につなげやすくなります。
考え方を切り替えるうえで、もう一つ大切な視点として紹介されたのが「コントロールフォーカス」という考え方です。ポイントは、「自分は自分、他人は他人」ということ。自分がどう考え、どう行動するかは自分で選べますが、相手がどう考え、どう行動するかは相手次第であり、こちらでコントロールすることはできません。
相手の言動に困ったときも、「相手がなぜそうするのか」を延々と考え続けるのではなく、「自分はこれからどうしたいか」「そのために自分にできる行動は何か」に意識を向けることが、気持ちの切り替えにつながります。実際に困っていることを伝える、距離を置く、相談するなど、選択肢は複数あります。
考え方が整理され、気持ちに少し余裕が生まれたら、最後のステップとして「では実際にどう行動するか」を考えます。訓練では、考え事が頭の中でぐるぐる回ってしまうことへの具体的な工夫として、次のようなものが紹介されました。
- 頭の中にある考え事を、答えを出そうとせず、まずはすべて紙やメモに書き出す
- 1日に取り組むことを1〜3個程度に絞り、残りは翌日以降にまわす
- 急に発生した予定外のタスク(税金の手続きなど)は、期限を決めてその場で処理方法を決めてしまう
- 細かい行動まで管理するかどうかは人によって異なるため、自分に合った粒度で書き出す
考えることそのものに使う心のエネルギー(リソース)を減らすことが、気持ちの負担を軽くする工夫の一つです。全部を頭の中だけで抱えようとせず、「書き出す」「範囲を決める」ことから始めてみるのもおすすめです。
今回ご紹介したリフレーミングやコントロールフォーカスは、考え方の癖に自分で気づき、自分自身で切り替えられる範囲を広げていくための訓練です。ただし、特性による困りごとのすべてを、こうした自己管理だけで解決する必要はありません。
大切なのは、「自分の力で対応できる範囲」を自己管理の方法として少しずつ確立しながら、それでも難しい部分については、職場や周囲に対して合理的配慮を求めていくという視点を持つことです。自己管理と合理的配慮は、どちらか一方を選ぶものではなく、両方を組み合わせて働きやすさをつくっていくものです。ディーキャリア川崎オフィスでは、こうした自己管理の力を養う訓練とあわせて、ご自身に合った配慮の伝え方についても一緒に考えていきます。
「自分の考え方の癖と、どう付き合っていけばいいかわからない」「就職に向けて、自分に合ったやり方を身につけたい」という方は、ぜひ一度、ディーキャリア川崎オフィスにご相談ください。


