「どう休めばいいか分からない」を解決するセルフケアの考え方
こんにちは!ディーキャリア川崎オフィス、生活支援員の伊藤です。
「疲れているのに、どう休んだらいいのか分からない」「気づいたら体調を崩していて、いつもギリギリだった」——そんな経験はありませんか。発達障害や精神障害のある方の中には、ストレスや疲労のサインに気づきにくかったり、気づいても「具体的に何をすればいいのか」が分からず、結果的に無理を重ねてしまう方が少なくありません。
ディーキャリア川崎オフィスでは、こうした「自分の状態に気づき、対処する力」を養うための「セルフケア」の訓練を継続的におこなっています。今回は、実際の訓練の様子をもとに、私たちが大切にしている考え方と、参加者の皆さんから出てきた具体的な工夫をご紹介します。
困りごとは、一人で抱え込まなくて大丈夫です
まず大前提としてお伝えしたいのは、特性による困りごとを「すべて自分一人の努力で乗り越えなければならない」ということはない、という点です。
セルフケアの目的は、根性で乗り切る力をつけることではなく、自分の状態に気づき、その時々に合った対処法を選べるようになることです。そして、セルフケアだけで解決しきれない部分については、職場に「合理的配慮」を相談することも対処法のひとつになります。合理的配慮とは、障害のある方が働く上での支障を取り除くために、事業主に対して配慮を求めることができる仕組みです。「休憩のタイミングを相談したい」「作業環境を調整してほしい」といった内容を伝えることは、法律によって認められています(配慮の内容や程度は、事業主にとって過重な負担にならない範囲で、双方の話し合いによって決まります)。
セルフケアと合理的配慮は、対立するものではありません。自分でできる工夫と、周囲に相談して整えてもらう部分の両方をバランスよく使いこなしていくことが、無理なく働き続けるための土台になります。私たちディーキャリアでは、訓練を通じてこの両方の力を一緒に育てていきます。
セルフケアを考える「3つのタイミング」
訓練では、スタッフから「セルフケアにはいくつかのタイミングがある」という視点を提示し、参加者の皆さんと一緒に整理していきました。
- オンタイムのセルフケア:会社や事業所にいる時間に行うもの。仕事のパフォーマンスを継続して発揮できるペースを把握し、それを維持していくための工夫。
- オフタイムのセルフケア:帰宅後や休日の過ごし方。次の日の自分の状態を整えるためのルーティンづくり。
- 段階に合わせたセルフケア:状態が良いときの「維持」、崩れたときの「回復」、それ以上悪化させないための「ブレーキ」という3段階の対処。
「状態が悪くなってから対処する」だけでなく、「良い状態を保つために普段から行うもの」「悪化を防ぐために早めに動くもの」まで含めて考えることが、セルフケアの幅を広げるポイントです。
オフタイムのセルフケア:帰宅後のルーティンを習慣に
訓練では、参加者の皆さんに「帰宅後、就寝までに必ず行うこと」を挙げてもらいました。出てきた内容を整理すると、次のような基本的な生活動作が中心でした。
- 炊事・食器洗い・洗濯・入浴・歯磨き
- 買い物
- ストレッチ・筋トレ
- 夕飯の準備・ペットの世話・掃除
- テレビ鑑賞・音楽鑑賞
大切なのは、こうした「必ずやること」をある程度決めてしまい、状態の良し悪しに関わらずなるべく習慣化していくことです。「今日は疲れすぎたから入浴は明日でいい」という日があってもかまいませんが、生活リズムを大きく崩しすぎないことが、次の日のパフォーマンスにつながります。
1時間で立て直す「短期のセルフケア」
仕事や訓練の途中で「今日はちょっと調子が悪いな」と感じたとき、すぐに使える短期的なセルフケアも訓練のテーマになりました。ポイントは、集中する時間と回復する時間を明確に分けることです。
まず、参加者の皆さんに「1時間のセルフケアが必要な体調」を具体的に書き出してもらいました。
- 体が疲れやすい、気持ちが消耗しやすい状態
- 午前中のエネルギーを消耗した状態
- 頭が重く、目も若干疲れている状態
- 気持ちが落ち着かない状態
そして、それぞれの状態に対して、実際におこなっている(あるいは試している)セルフケアも共有してもらいました。
- 休憩時間に好きな音楽を流し、お気に入りのアイテムを眺める。周囲の人と情報を共有して話す
- 休憩時間のうち最低15分は一人で休息し、簡単なストレッチを行う。散歩で気分転換をする
- 昼食後、目の疲れが落ち着いたら短時間の読書で気分を切り替え、その後は何も考えずぼーっとする時間をつくる
- 音楽を聴きながら外の空気を吸う。周囲の人とゲームなどで気分転換をする
目の疲れについては、目の周りを軽く温める、首や肩を軽く動かすなど、その場でできる身体の休め方も参加者同士で共有しました。「効果があるかどうかは、やってみないと分からない」というのも事実です。まずは試してみて、自分に合うものを見つけていく姿勢が大切です。
連休中に崩れやすい生活リズムへの備え
訓練の後半では、ゴールデンウィークなどの連休を見据えて「自分が避けたい状態」と「そのためにできること」を整理しました。連休中は生活リズムが乱れやすく、休み明けに体調や気分への影響が出やすい時期でもあります。
参加者から挙げられた「避けたい状態」には、次のようなものがありました。
- 1日中寝てしまう状態
- 無駄に暇な時間ができてしまうこと
- 就寝時間が遅くなり、生活リズムが大きく乱れること
- 趣味や外出に没頭しすぎて目が疲れる、姿勢が悪くなること
- 活動しすぎて疲れてしまうこと
- 食べ過ぎてしまうこと
- 昼夜逆転
これに対して、参加者からは次のような具体的な対策が出てきました。
- 計画をあらかじめ立てておく
- 適度に予定を入れ、夜遅くまで活動せず朝はいつも通りに起きる
- 家事はやることをある程度決めておき、やりすぎないようにする
- 日中に活動し、夜はいつも通りの時間に眠る
- 目標の時間にはベッドに入る
- 温かいタオルなどで目元を休める時間をつくる
- 食事や睡眠など、基本的な生活習慣を意識して整える
- 姿勢が悪くならないよう適宜ストレッチやマッサージをする
「予定を立てて終わり」ではなく、避けたいことと、それを避けるための行動をセットで考えておくことが、連休を心身ともに気持ちよく過ごすコツです。
「気持ちよく過ごせている状態」も言葉にしてみる
訓練ではもう一つ、「自分にとって気持ちよく過ごせている状態とはどんな状態か」を言語化するワークも行いました。出てきた言葉を整理すると、次のような状態が挙げられています。
- マイペースでやりたいことができている状態
- 不安などを考えず、リラックスできている状態
- やりたいこと・行きたい場所・着たい服を選べて、気分の浮き沈みなく過ごせること
- 楽しい・幸せだと思えることに没頭できる状態
- ネガティブな感情がなく、心にゆとりが持てる状態
- 心身ともにリフレッシュできている状態
- 自分がやりたいことをやれている状態
「避けたい状態」だけでなく「目指したい状態」も具体的に言葉にしておくことで、休日の過ごし方の指針がより明確になります。生活リズムを守ることと、自分が心地よいと感じる過ごし方とのバランスを取ることが、連休明けのモチベーションを保つカギになります。
状態を把握するための「チェックポイント」を持つ
休日中はどうしても体調管理の意識が抜けがちになります。そこで訓練では、自分の状態を把握するためのチェックポイントを持つことも提案しました。
- 朝起きたときの気分をチェックする
- 基本的な生活リズムが保てているかを確認する
- 趣味やイベントを楽しめているかを振り返る
- 1日の中で笑顔になった瞬間があったかを思い出す
こうしたポイントは人によって異なります。自分にとって「ここが崩れると調子も崩れやすい」というポイントを一つでも知っておくことが、セルフケアの第一歩です。
大切なのは「自分に合った方法」を見つけ続けること
今回ご紹介したセルフケアの工夫は、あくまで参加者の皆さんが今の時点で見つけている方法です。効果があるかどうかは、実際に試してみないと分かりませんし、状態によって必要なセルフケアも変わっていきます。「まだ自分に合う方法が分からない」という状態は、決して特別なことではありません。
ディーキャリア川崎オフィスの訓練では、スタッフが「どんな状態のときに、どんなセルフケアが効果的か」を一緒に振り返り、検証していくプロセスを大切にしています。これは、実際に就職した後、休憩の取り方や疲労のサインを自分の言葉で伝える力にもつながっていきます。たとえば「集中が続く時間とそうでない時間がある」と自分で把握できていれば、職場での相談や合理的配慮の依頼も、より具体的に行えるようになります。
そして、繰り返しになりますが、すべてを自分一人の工夫だけで乗り越える必要はありません。セルフケアで対応しきれない部分は、職場や事業所に相談しながら、自分にとって無理のない働き方・過ごし方を一緒に組み立てていくことができます。
ディーキャリア川崎オフィスでは、こうしたセルフケアの視点を一人で抱え込まず、スタッフや他の利用者の方と一緒に考え、言葉にしていく機会を大切にしています。「自分の特性とどう付き合っていけばいいか分からない」という方も、ぜひ一度、私たちと一緒に考えてみませんか。
まずは見学・相談から始めませんか?
ディーキャリア川崎オフィスでは、見学・相談を随時受け付けています。訓練の様子を実際に見ていただくことも可能です。お気軽にお問い合わせください。


